(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】桟付コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/40 20060101AFI20240730BHJP
B65G 15/42 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65G15/40
B65G15/42 Z
(21)【出願番号】P 2024533297
(86)(22)【出願日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2024014493
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023066173
(32)【優先日】2023-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新居 俊男
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸介
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-2216(JP,A)
【文献】中国実用新案第208103086(CN,U)
【文献】特開2010-70286(JP,A)
【文献】実開昭57-190154(JP,U)
【文献】特開2011-162276(JP,A)
【文献】特開2004-238156(JP,A)
【文献】実開昭55-54218(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/40
B65G 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面を有するベルト本体と、前記搬送面から立ち上がる一対の波桟と、前記一対の波桟の間に延びる複数の横桟とを備え、
各横桟を前記一対の波桟のそれぞれに固定する固定部材と、前記固定部材によって前記横桟とともに前記一対の波桟のそれぞれに取り付けられる取付部材とを有し、
前記取付部材の少なくとも一部が、RFIDタグを収容する収容部を形成する、桟付コンベヤベルト。
【請求項2】
前記収容部は、前記RFIDタグを着脱可能とするための開口を有する、請求項1に記載の桟付コンベヤベルト。
【請求項3】
前記固定部材は、前記開口が前記波桟で閉塞されるように前記取付部材と前記波桟とを締結している、請求項2に記載の桟付コンベヤベルト。
【請求項4】
前記波桟は、ベルト幅方向の内方に延びる複数の凹部を有し、
前記取付部材が、前記凹部に配されている、請求項3に記載の桟付コンベヤベルト。
【請求項5】
前記ベルト本体は、1の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第1の接合部を有し、
各波桟は、1の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第2の接合部を有し、
前記RFIDタグが、前記第1の接合部又は前記第2の接合部のいずれかと近接する前記取付部材に収容されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の桟付コンベヤベルト。
【請求項6】
2以上の前記取付部材のそれぞれに前記RFIDタグが収容されており、
各RFIDタグは、異なる識別番号を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の桟付コンベヤベルト。
【請求項7】
前記RFIDタグの交信周波数帯がUHF帯である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の桟付コンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2023-66173号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、桟付コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0003】
桟付コンベヤベルトは、搬送面を有するベルト本体と、前記搬送面から立ち上がる一対の波桟と、波桟の間に延びる複数の横桟とを備えている。桟付コンベヤベルトは、波桟及び横桟を備えることによって、粉体、土砂、石炭等の搬送物を急傾斜な面又は垂直な面に沿って搬送する用途に好適なものである。
【0004】
搬送装置における桟付コンベヤベルトは、進行方向を転換させるための複数のプーリーに巻きかけられて用いられる。このため、走行中の桟付コンベヤベルトは、プーリーによる曲げ伸ばしを受けることとなり、特にベルト本体及び波桟は、大きな曲げ伸ばしを受けることとなる。加えて、波桟及び横桟は、搬送物による負荷を受けることとなる。よって、桟付コンベヤベルトの正常な搬送のためには、維持管理が重要となる。維持管理としては、例えば、定期的な点検、損傷への対応等が挙げられる。
【0005】
複数の横桟等を備える桟付コンベヤベルトは、他のコンベヤベルトと比較して多くの部品を有する。このため、点検すべき箇所が多く、全体的な点検のためには多くの時間を要する。よって、桟付コンベヤベルトの点検では、部分的な点検を定期的に実施する方法が採用される場合がある。例えば、桟付コンベヤベルトを長さ方向に複数の区域に区分けし、点検日毎に定められた区域を点検する方法が採用され得る。
【0006】
上記のような点検では、重複した点検や点検漏れを防止するために、点検すべき区域を適切に把握することが重要となる。また、損傷時には、早期復旧のために損傷個所の速やかな発見が望まれる。しかしながら、桟付コンベヤベルトは各区域において同様の形状を有するため、点検すべき区域及び損傷個所のある区域の把握が困難となり得る。
【0007】
そこで、特許文献1では、各区域を色によって視覚的に識別することが提案されている。具体的には、各区域に必然的に備えられる部品を区域ごとに着色し、色の違いによって点検すべき区域を識別することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1の提案は、作業者の視覚による識別に基づいている。よって、特許文献1の桟付コンベヤベルトでは、搬送装置を構成した際に視認可能な部品に着色が施されている。このため、着色箇所が、搬送装置が設置された環境に露出した状態となる。そして、露出した着色箇所は、設置環境や搬送物等に起因する汚れ、色あせ等によって劣化し、作業者が識別しにくいものとなり、延いては、識別機能をほとんど有さない状態となり得る。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、各区域を容易に識別することができ、識別可能な状態を比較的長期にわたって維持することができる桟付コンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る桟付コンベヤベルトは、
搬送面を有するベルト本体と、前記搬送面から立ち上がる一対の波桟と、前記一対の波桟の間に延びる複数の横桟とを備え、
各横桟を前記一対の波桟のそれぞれに固定する固定部材と、前記固定部材によって前記横桟とともに前記一対の波桟のそれぞれに取り付けられる取付部材とを有し、
前記取付部材の少なくとも一部が、RFIDタグを収容する収容部を形成する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、
前記収容部は、前記RFIDタグを着脱可能とするための開口を有する。
【0013】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、
前記固定部材は、前記開口が前記波桟で閉塞されるように前記取付部材と前記波桟とを締結している。
【0014】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、
前記波桟は、ベルト幅方向の内方に延びる複数の凹部を有し、
前記取付部材が、前記凹部に配されている。
【0015】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、
前記ベルト本体は、1の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第1の接合部を有し、
各波桟は、1の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第2の接合部を有し、
前記RFIDタグが、前記第1の接合部又は前記第2の接合部のいずれかと近接する前記取付部材に収容されている。
【0016】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、
2以上の前記取付部材に前記RFIDタグが収容されており、
各RFIDタグは、異なる識別番号を有する。
【0017】
また、本発明の一態様に係る桟付コンベヤベルトは、前記RFIDタグの交信周波数帯がUHF帯である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る桟付コンベヤベルトを備える搬送装置の斜視図である。
【
図2】
図1の桟付コンベヤベルトにおける波桟及び横桟の固定構造の拡大図である。
【
図3】
図2の取付部材の概略斜視図であり、RFIDタグが収容された状態を示す。
【
図4】
図1の桟付コンベヤベルトのベルト本体における接合部(第1の接合部)の概略断面図である。
【
図5】
図1の桟付コンベヤベルトの波桟における接合部(第2の接合部)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る桟付コンベヤベルトについて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、急傾斜な面又は垂直な面に沿って搬送物を搬送するための搬送装置Xの構成要素である。本実施形態に係る搬送装置Xは、無端状の桟付コンベヤベルト1と、桟付コンベヤベルト1を周回させるように構成された複数のプーリーPとを備えている。
【0021】
前記搬送物としては、例えば、火力発電等で用いられる石炭、オイルコークス、木屑、RPF、RDF等の燃料;火力発電等で副生するボトムアッシュ、クリンカアッシュ、フライアッシュ等の灰分;水処理における篩渣、沈砂、汚泥等;廃棄物処理における粗大ゴミ、資源ゴミ、生ゴミ等;製鉄における鉄鉱石、焼結鉱、粉鉱石、鉱石ペレット等が挙げられる。これらの搬送物は、粉状、粒状、又は塊状のものを含み得る。また、これらの搬送物は、金属又は水分を含み得る。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、搬送面11を有するベルト本体10と、搬送面11から立ち上がる一対の波桟20と、一対の波桟20の間に延びる複数の横桟30とを備えている。本実施形態のベルト本体10、一対の波桟20、及び複数の横桟30のそれぞれは、ゴム組成物によって構成されている。以下では、
図2に示すように、桟付コンベヤベルト1の長さ方向及び幅方向のそれぞれを長さ方向D1及び幅方向D2と称することがある。また、長さ方向D1及び幅方向D2のそれぞれに直交する方向を高さ方向D3と称することがある。
【0023】
前記ゴム組成物のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、シリコンゴム(SR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(ACR)、フッ素ゴム(FR)等が挙げられる。前記ゴム組成物は、1種のみのゴム成分を含んでいてもよく、複数種のゴム成分を含んでいてもよい。
【0024】
前記ゴム組成物は、ゴム成分以外の成分を含有していてもよい。かかる成分としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の難燃剤、硫黄、有機過酸化物等の架橋剤、酸化亜鉛等の加硫促進剤、ジオクチルアジペート等の可塑剤、パラフィンオイル等の硬さ調整剤、ベンズイミダゾール系化合物等の老化防止剤、ステアリン酸等の滑剤等が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のベルト本体10は、帯状であり、複数のプーリーPに巻きかけられた際に該プーリーPに当接される内周面と、該内周面とは反対側の外周面たる搬送面11とを有する。本実施形態のベルト本体10は、各プーリーPによって直接的に曲げ伸ばしを受ける部分である。例えば、ベルト本体10の搬送面11は、プーリーPを通過する際に平坦状態から湾曲状態に変化する。そして、湾曲状態の搬送面11は、平坦状態よりも長さ方向D1に沿って伸長した状態となる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の一対の波桟20は、ベルト本体10における両側縁部に沿って且つベルト1の全周にわたって形成されている。
図2に示すように、本実施形態の一対の波桟20のそれぞれは、ベルト本体10の搬送面11と接着された帯状の接着部21と、接着部21から高さ方向D3に沿って立ち上がる波形状の易伸縮部22とを有する。本実施形態では、接着部21と易伸縮部22とは一体的に成形されている。
【0027】
本実施形態の接着部21は、ベルト本体10(具体的には搬送面11)の曲げ伸ばしに追従して伸縮するように構成されている。
【0028】
本実施形態の易伸縮部22は、高さ方向D3の一方側から見たときに(すなわち平面視において)長さ方向D1に沿って進行する波形状を有する。かかる易伸縮部22を有することによって、一対の波桟20のそれぞれは、幅方向D2の内方に凹入し且つ高さ方向D3に沿って延びる凹条に形成された複数の凹部23を有する。複数の凹部23は、長さ方向D1に沿って並んでいる。本実施形態の凹部23の数は、100以上である。このように構成された易伸縮部22は、接着部21(ベルト本体10)の伸縮に追従して伸縮可能である。
【0029】
易伸縮部22を高さ方向D3に二等分したときの下側の領域を基端領域とし、上側の領域を先端領域としたときに、ベルト走行中、前記先端領域は、ベルト本体10の搬送面11に近い側に位置する前記基端領域と比べて易伸縮部22の伸縮による変位が大きい領域である。より具体的には、易伸縮部22の伸縮時、前記先端領域は、前記基端領域と比べて長さ方向D1における広がりが大きくなる領域である。
【0030】
複数の凹部23のそれぞれは、波形の変曲点を含む底部231と、底部231から幅方向D2の外方に沿って延びる一対の側面部232とを有する。易伸縮部22の伸縮時、底部231は、ほとんど変位しない部分である。一方、一対の側面部232は、長さ方向D1に沿った変位が大きい部分である。より具体的には、易伸縮部22の伸縮時、一対の側面部232は、一方と他方とが離反及び接近を繰り返す部分である。
【0031】
本実施形態の複数の横桟30のそれぞれは、ベルト本体10の搬送面11から高さ方向D3に沿って立ち上がる板状の仕切部31と、仕切部31の先端(立ち上がり方向の先端)からベルト進行方向に沿って延びる延出部32とを有する。
【0032】
本実施形態の仕切部31は、高さ方向D3に延びる一対の側端縁部311を有する。各側端縁部311は、一対の波桟20の凹部23の凸面(幅方向D2の内方を向く面であって幅方向D2の外方を向く凹面とは反対側の面)に接している。本実施形態の仕切部31の立ち上がり方向における先端は、波桟20の先端よりも低い位置に且つ波桟20における易伸縮部22の前記基端領域よりも高い位置に配されている。
【0033】
図2に示すように、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、複数の横桟30のそれぞれをベルト本体10に支持する支持部材40と、複数の横桟30のそれぞれを波桟20に固定する固定部材50と、固定部材50によって複数の横桟30のそれぞれとともに波桟20に取り付けられる取付部材60とを有する。
【0034】
本実施形態の各支持部材40は、各横桟30の仕切部31を長さ方向D1の一方側及び他方側から支持するように配されている。具体的には、各支持部材40は、仕切部31を長さ方向D1の一方側及び他方側から支持する一対の支持体41を有する。一対の支持体41のそれぞれは、L字状であり、ベルト本体10の搬送面11に接着された第1接着部411と、仕切部31の表面に接着された第2接着部412とを有する。第2接着部412は、第1接着部411の長さ方向D1における一端(仕切部31を向く端)から高さ方向D3に沿って延びている。第2接着部412は、ビス留めによって仕切部31に固定されている。なお、横桟30は、仕切部31と支持体41とが一体的に成形されたものであってもよい。
【0035】
本実施形態の各支持部材40は、前記ゴム組成物によって構成されている。
【0036】
次に、
図2に示すように、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、複数の横桟30のそれぞれを各波桟20に固定する対をなす固定部材50を有する。本実施形態の固定部材50は、複数の横桟30のそれぞれを各波桟20に締結する締結部材51である。複数の横桟30のそれぞれと一方の波桟20とは、1の締結部材51によって固定されていてもよく、2以上の締結部材51によって固定されていてもよい。本実施形態の各締結部材51は、波桟20に対して幅方向D2の内方への押圧力を作用させる円形状の頭部511と、頭部511から幅方向D2の内方へ延びる軸部512とを有する。頭部511は、軸部512の外径よりも大きい外径を有する。軸部512は、波桟20を貫通して横桟30にまで到達し得る長さを有する。各締結部材51は、軸周りの回転によって軸部512を波桟20乃至は横桟30の内部に進行可能に構成されている。本実施形態の締結部材51は、具体的には、金属製のタッピングネジである。
【0037】
本実施形態の各取付部材60は、波桟20の(凹条の)凹部23に配置可能な突条に形成されている。
図3に示すように、各取付部材60は、搬送装置Xの設置環境(外部環境)に露出し得る表面部61と、凹部23の前記凸面に当接する突条部62とを有する。また、各取付部材60は、締結部材51の軸部512が挿通される1又は2以上の貫通孔63を有する。本実施形態の各取付部材60は、波桟20に取り付けられたときに、波桟20からはみ出さずに全体が凹部23内に収まる大きさを有する。
【0038】
各取付部材60が波桟20に取り付けられたとき、表面部61は、幅方向D2の一方側から視認可能に凹部23に配される。本実施形態の表面部61は、矩形状の外縁を有する。
【0039】
突条部62は、表面部61の前記外縁から突き出すように形成されている。突条部62は、波桟20の凹部23における底部231及び一対の側面部232のそれぞれに当接し得るように形成されている。
【0040】
1又は2以上の貫通孔63は、締結部材51の頭部511が配される頭部収容領域と、締結部材51の軸部512が配される軸部収容領域とを有する。前記軸部収容領域は、頭部511の外径よりも小さく且つ軸部512の外径よりも小さい孔径を有する。これによって、各取付部材60は、締結部材51の頭部511に当接される被当接面部64を有する。被当接面部64は、締結部材51による押圧力を直接受ける部分である。
【0041】
各締結部材51が2以上の貫通孔63を有する場合、これらの貫通孔63は、取付部材60の長さ方向に沿って並んでいる。すなわち、波桟20に取り付けられた各取付部材60は、高さ方向D3に並ぶ2以上の貫通孔63を有するものとなる。
【0042】
本実施形態の各固定部材50は、幅方向D2の外方から内方に向かう順に配置された各取付部材60と、片方の波桟20と、各横桟30とを締結部材51による締結によって、各横桟30とともに各取付部材60を波桟20に固定する。このとき、各取付部材60の被当接面部64が締結部材51の頭部511に当接され、各取付部材60を介して波桟20及び各横桟30に締結部材51による押圧力(圧縮力)が作用する。すなわち、本実施形態の各取付部材60は、締結部材51の押圧力を波桟20に作用させる押圧部材である。本実施形態の各取付部材60は、サイドワッシャとも呼ばれるワッシャ部材であり、締結部材51の緩み止め等の機能も有する。
【0043】
そして、
図3に示すように、本実施形態の各取付部材60の少なくとも一部は、RFIDタグTを収容するための収容部65を有する。
【0044】
本実施形態の収容部65は、突条部62に形成された穴部である。これによって、取付部材60が波桟20に取り付けられた際に、収容部65は、長さ方向D1及び高さ方向D3の両方に沿って延在する底面651と、底面651の外縁から幅方向D2の内方に沿って立ち上がる側面652と、側面652の(立ち上がり)先端縁で画定される開口653とを有するものとなる。底面651は、RFIDタグTが曲げられることなく、すなわち、RFIDタグTの全体が底面651に沿って延在可能な面積を有する。また、開口653は、RFIDタグTが通過可能な大きさを有する。そして、収容部65は、突条部62の表面が凹部23の前記凹面に接したときに、収容部65の底面651と側面652と凹部23の前記凹面とで区画される収容空間を形成する。前記収容空間は、RFIDタグTを収容可能な大きさを有する。前記収容空間の形成時、開口653は、凹部23の前記凹面(すなわち波桟20)に閉塞された状態となる。
【0045】
本実施形態の収容部65は、2つの貫通孔63の間に形成されている。よって、取付部材60が波桟20に取り付けられた状態においては、収容部65の上方及び下方(高さ方向D3の一方及び他方)に金属製のタッピングネジが配されることとなる。
【0046】
ところで、上記のように、ベルト走行中の易伸縮部22の伸縮時、前記先端領域は、前記基端領域と比べて長さ方向D1の外方への広がりが大きくなる。よって、開口653の閉塞性、言い換えれば収容部65の密閉性を高めるために、本実施形態の各取付部材60は、易伸縮部22における前記基端領域に配されており、より具体的には、収容部65の開口653が前記基端領域に配されている。
【0047】
また、上記のように、ベルト走行中、凹部23における一対の側面部232は、一方と他方とが離反及び接近を繰り返すこととなる。よって、開口653の閉塞性、言い換えれば収容部65の密閉性を高めるために、本実施形態の取付部材60は、側面652の(立ち上がり)先端縁が凹部23における底部231と対向するよう凹部23に配されている。すなわち、取付部材60は、開口653が底部231によって閉塞されるように配されている。
【0048】
さらに、各取付部材60が波桟20に取り付けされている状態において、少なくともRFIDタグTが配される各収容部65は、高さ方向D3において互いに位置ずれすることなく配されている。すなわち、この状態において、各収容部65は、長さ方向D1に沿って並んでいる。
【0049】
本実施形態の各取付部材60のうち少なくとも収容部65を有する取付部材60は、UHF帯(860~960MHz)に属する電波を通過させ得る樹脂で構成されている。取付部材60の材質による電波の減衰を防止する観点から、取付部材60の比誘電率は、10以下であることがより好ましい。なお、前記比誘電率は、909MHzにおける比誘電率を意味するものとし、次の測定方法によって測定することができる。まず、測定装置としては、インピーダンスアナライザ(HEWLETT PACKARD製、型番4291B RF)を用いる。そして、取付部材60から切り出した試験片(厚み3mm以下、φ15mm以上)の厚み(マイクロメータで測定)を測定装置に入力する。次に、試験片を高インピーダンステストヘッド測定部にセットし、1MHzから1GHzにわたる比誘電率のグラフを得る。このグラフから909MHzにおける比誘電率を読み取り、前記比誘電率とする。
【0050】
本実施形態の取付部材60は、RFIDリーダから発信されたUHF帯の電波が収容部65にまで到達し易くなるように、搬送装置Xの設置環境(外部環境)に露出し得るように配されている。例えば、桟付コンベヤベルトを備える搬送装置として、桟付コンベヤベルトを覆うコンベヤカバーを備えるものが知られている。また、前記コンベヤカバーは、桟付コンベヤベルトの点検を容易にするための点検口を形成する点検ハッチを有する。そして、
図3に示すようにRFIDタグTが収容部65の底面651に接着された場合には、前記点検ハッチは、表面部61を介して前記収容空間に電波を到達させることが可能な点検口を有することが好ましい。また、前記点検ハッチの近傍には、点検や修理等の作業をさらに容易にするための作業スペースが形成されることが好ましい。なお、収容部65の側面652を介して前記収容空間に電波を到達させようとすると、金属製のタッピングネジによって該電波が減衰するおそれがあるため、表面部651に向けて電波を発信することが好ましい。
【0051】
図4及び
図5に示すように、本実施形態のベルト本体10は、複数の帯状部材12が接合されることによって構成されている。また、本実施形態の一対の波桟20のそれぞれは、複数の波形状部材24が接合されることによって構成されている。すなわち、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、長さ方向D1に隣り合う帯状部材12の端部領域どうしが接合されることによって形成された複数の第1の接合部71と、長さ方向D1に隣り合う波形状部材24の端部領域どうしが接合されることによって形成された複数の第2の接合部72とを備えている。
【0052】
図4に示すように、隣り合う帯状部材12は、それぞれの端部領域が接着されることによって接合されて第1の接合部71を形成している。各帯状部材12は、長さ方向D1における先端領域及び後端領域が階段状に形成されており、前記先端領域が隣り合う帯状部材12の前記後端領域との重ね合わせ部分を構成している。前記先端領域は、長さ方向D1において位置ずれした複数の先端面と、前記複数の先端面の間に延在する少なくとも1つの先端側延在面とを有する。前記後端領域は、長さ方向D1において位置ずれした複数の後端面と、前記複数の後端面の間に延在する少なくとも1つの後端側延在面とを有する。そして、長さ方向D1に隣り合う帯状部材12は、前記複数の先端面の少なくとも一つと前記複数の後端面の少なくとも一つとが突き合わせられたときに、前記先端側延在面と前記後端側延在面とが重なり合うようにして第1の接合部71を形成している。すなわち、
図4に示す第1の接合部71は、オーバーラップ構造を含む。隣り合う帯状部材12は、厚み方向D3において対応する位置関係となる前記先端領域の前記先端面と前記後端領域の前記後端面とが突合せられた状態で接合されていてもよい。すなわち、第1の接合部71は、突合せ構造を含むものであってもよい。また、隣り合う帯状部材12は、前記先端領域における最も先端側に位置する前記先端側延在面が前記後端領域における搬送面11(前記外周面)を形成する表面に重ね合わせられ、且つ、前記後端領域における最も後端側に位置する前記後端側延在面が前記先端領域における前記内周面を形成する裏面に重ね合わせられてもよい。前記先端領域と前記後端領域とは、クッションゴムEを介して接着剤によって接着されている。
【0053】
隣り合う帯状部材12の重ね合わせによって形成された第1の接合部71は、長さ方向D1における所定の長さを有する。これによって、本実施形態の第1の接合部71は、幅方向D2において2以上20以下の凹部23と隣り合っている。これらの凹部23に配される取付部材60は、第1の接合部71と近接することとなる。第1の接合部71は、重点的な点検が必要となる領域であり、且つ、損傷が生じ易い領域であると考えられる。
【0054】
図5に示すように、各波形状部材24は、重ね合わせられた部分が締結されることによって接合されて第2の接合部72を形成している。具体的には、各波形状部材24は、ベルト進行方向の最も先端側に位置する側面部232及び最も後端側に位置する側面部232のそれぞれに、接合部材たる締結部材を構成する1又は2以上のボルトを挿通可能な1又は2以上の貫通孔241を有する。これによって、隣り合う波形状部材24は、後側の側面部232と前側の側面部232とが重ね合わせられた状態で貫通孔241に挿通された前記ボルト及び該ボルトと螺合可能なナットによって締結されている。本実施形態では、前記ボルトと側面部232との間及び前記ナットと前記側面部232とのそれぞれの間にワッシャが配されている。
【0055】
重ね合わせられた側面部232は、2つの凹部23の形成に関わっている。これによって、本実施形態の第2の接合部72は、2つの凹部23を含むものとなる。これらの凹部23に配される取付部材60は、第2の接合部72と近接することとなる。第2の接合部72は、重点的な点検が必要となる領域であり、且つ、損傷が生じ易い領域であると考えられる。
【0056】
そして、本実施形態では、複数の第1の接合部71のいずれかと隣り合う複数の凹部23のうちの少なくとも1つの凹部23に配された取付部材60の収容部65にRFIDタグが収容されている。また、本実施形態では、複数の第2の接合部72のそれぞれに含まれる凹部23のうちの少なくとも1つの凹部23に配された取付部材60の収容部65にRFIDタグが収容されている。
【0057】
このように、本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、2以上の取付部材60にRFIDタグを収容している。各RFIDタグは、搬送面11を基準とした高さ方向D3における位置が揃うように収容部65に収容されることとなる。これによって、1つのRFIDタグと送受信可能に設置されたRFIDリーダは、その他のRFIDタグとも送受信可能なものとなる。
【0058】
本実施形態の各RFIDタグは、異なる識別番号を有する。
【0059】
本実施形態に用いられるRFIDタグとしては、矩形状の基材シートと、前記基材シートの中央部に設けられたICチップと、前記ICチップから前記基材シートの両端に向かって延びる一対のアンテナとを備えたものであってもよい。
【0060】
また、RFIDタグとしては、誘電体層と、前記誘電体層の表面から裏面にかけてループ状に形成された放射素子と、前記誘電体層の表面に搭載され且つ前記放射素子に接続されたICチップとを備えたものであってもよい。
【0061】
また、RFIDタグとしては、誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された板状の放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成された板状の接地導体と、前記放射素子に接続されたICチップとを備えたものであってもよい。
【0062】
また、RFIDタグとしては、誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された放射素子と、前記誘電体層の裏面に形成されて誘電体層の表面側からの電磁波を前記放射素子に向かって反射する金属層とを備えたものであってもよい。
【0063】
前記RFIDタグは、パッシブ型であることが好ましい。
【0064】
RFIDタグは、RFIDリーダが発信する電波の指向性が考慮されて収容部65内の所定箇所に固定されることが好ましい。例えば、RFIDタグは、収容部65の底面651に沿って延在するように固定されることが好ましく、底面651に接着されることがより好ましい。RFIDタグの固定手段としては、接着剤による接着が好ましい。また、前記誘電体層を備えるRFIDタグを収容部65に固定する際には、該誘電体層の表面が幅方向D2の外方を向くように固定されることが好ましい。
【0065】
前記ICチップは、当該RFIDタグの識別情報等を格納するためのメモリを有する。すなわち、本実施形態で用いられるRFIDタグは、少なくとも当該RFIDタグの識別情報を前記メモリに格納している。前記識別情報は、例えば、当該RFDIタグを他のRFIDタグと識別可能にする識別番号(コード)である。本実施形態で用いられるRFIDタグは、RFIDリーダから発信された電波を受信して、前記メモリに格納された前記識別情報を信号としてRFIDリーダへ送信可能に構成されている。そして、本実施形態で用いられるRFIDタグは、前記識別情報を介して、桟付コンベヤベルト1に関するベルト情報と関連付けられている(紐付けられている)。
【0066】
前記ベルト情報としては、RFIDタグの設置区域に関する情報、点検に関する情報、補修又は修理に関する情報、ベルトの状態に関する情報が挙げられる。点検に関する情報としては、点検予定日や点検区域等の実施予定情報、点検完了日や点検結果等の履歴情報が挙げられる。補修又は修理に関する情報としては、補修予定日や補修区域等の補修予定情報、補修又は修理完了日等の履歴情報等が挙げられる。ベルトの状態に関する情報としては、ベルト本体10、一対の波桟20、及び複数の横桟30のそれぞれにおける摩耗及び変形等の劣化状態、支持部材40における支持体41の摩耗及び変形等の劣化状態、支持体41におけるビスの緩み等の固定の状態、固定部材50における締結の緩み等の固定の状態、第1の接合部71及び第2の接合部72における接合の状態等の各種状態に関する情報が挙げられる。
【0067】
本実施形態の桟付コンベヤベルトによれば、複数の取付部材60のそれぞれの収容部65に収容されたRFIDタグは、収容部65の表面部61に向けて発信されたRFIDリーダからの電波を受信することができ且つRFIDリーダに向けて電波(信号)を発信することができる。かかる電波の送受信によって、RFIDタグとRFIDリーダとは、前記識別情報をやり取りすることができる。そして、前記識別情報は、RFIDタグの設置区域に関する情報を含むベルト情報と関連付けられているため、これらの情報に基づいて、桟付コンベヤベルト1における各区域を識別することができる。なお、本実施形態では、収容部65の上方及び下方に金属製のタッピングネジが配されており、このタッピングネジによって電波が減衰されるおそれがあるため、表面部61に向かって幅方向D2の内方に進行する電波が発信されることが好ましい。
【0068】
また、複数の凹部23のうち、取付部材60が配された凹部23は、幅方向D2において横桟30(上記範囲の比誘電率を有する)と隣り合わせとなる。一方、複数の凹部23のうち、横桟30との関わり合いがない凹部23は、幅方向D2において前記搬送物と隣り合わせとなる。仮に、横桟30との関わり合いのない凹部23にRFIDタグを取り付けたとすると、当該RFIDタグは、水や金属を含み得る前記搬送物に起因する電波の減衰や吸収により感度が低下し得る。よって、RFIDタグが所望の感度で電波を送受信可能とするためには、幅方向D2において横桟30と隣り合う取付部材60にRFIDタグを収容することが好ましいと考えられる。
【0069】
また、凹部23に配置可能な取付部材60によって、既設の搬送装置に組み込まれた桟付コンベヤベルトであってもRFIDタグを収容可能なものに変更することができる。
【0070】
次に、本実施形態に係る桟付コンベヤベルト1の維持管理方法について、より具体的に説明する。
【0071】
本実施形態の維持管理方法では、複数の第1の接合部71のいずれかと隣り合う複数の凹部23のうちの少なくとも1つの凹部23に配された取付部材60の収容部65にRFIDタグを収容し、且つ、複数の第2の接合部72のそれぞれに含まれる凹部23のうちの少なくとも1つの凹部23に配された取付部材60の収容部65にRFIDタグを収容する。これによって、各RFIDタグを基準に、桟付コンベヤベルト1が長さ方向D1に沿って複数の区域に区分けされる。すなわち、上記のようにしてRFIDタグが備えられた桟付コンベヤベルト1は、各RFIDタグで区画される複数の区域を有するものとなる。
【0072】
本実施形態の維持管理方法では、さらに、各RFIDタグがいずれの区域を管理するものかを把握するために、当該RFIDタグの識別情報と当該RFIDタグが管理する区域に関するベルト情報とを関連付ける。また、各RFIDタグがいずれの取付部材60に収容されているかを把握するために、当該RFIDタグの識別情報と当該RFIDタグを収容する取付部材60に関するベルト情報とを関連付ける。
【0073】
ここで、ベルト進行方向の任意の位置のRFIDタグをM番目のRFIDタグとする。また、M番目のRFIDタグとベルト進行方向の先端側で隣り合うRFIDタグをM+1番目のRFIDタグとし、M番目のRFIDタグとベルト進行方向の後端側で隣り合うRFIDタグをM-1番目のRFIDタグとする。また、M+1番目、M番目、及びM-1番目のRFIDタグを収容する取付部材60のそれぞれを、N+1番目の取付部材60、N番目の取付部材60、及びN-1番目の取付部材60とする。すなわち、M番目のRFIDタグをN番目の取付部材60に収容し、M+1番目のRFIDタグをN+1番目の取付部材60に収容し、且つM-1番目のRFIDタグをN-1番目の取付部材60に収容する。
【0074】
そして、M番目のRFIDタグの識別情報は、N+1番目の取付部材60とともに波桟20に固定される横桟30から、N番目の取付部材60とともに波桟20に固定される横桟30までの上流側区域に関連付けられてもよい。あるいは、M番目のRFIDタグの識別情報は、N番目の取付部材60とともに波桟20に固定される横桟30から、N-1番目の取付部材60とともに波桟20に固定される横桟30までの下流側区域に関連付けられてもよい。
【0075】
M番目のRFIDタグの識別情報は、前記上流側区域及び前記下流側区域の両区域に関連付けられることが好ましい。また、M+1番目又はM-1番目のRFIDタグの識別情報も同様に関連付けられることがより好ましい。これによって、M番目、M+1番目、又はM-1番目のいずれかのRFIDタグが故障したとしても、その他のRFIDタグによって当該区域を識別可能な状態を維持することができる。
【0076】
各区域に含まれる横桟30の数は、20以下であることが好ましい。これによって、特に桟付コンベヤベルト1に異常が発生した場合に、各区域における異常個所の探索に要する労力及び時間を低減することができる。そして延いては、搬送装置Xの復旧までの時間を短縮し得る。
【0077】
実際の点検の際には、桟付コンベヤベルト1を走行させながら、RFIDリーダから各収容部65に向かって電波を発信し、各RFIDタグからRFIDリーダに送信される識別情報と前記ベルト情報とに基づいて、点検しようとする区域を識別してもよい。点検しようとする区域に関連付けられた識別情報をRFIDリーダが受信したと判断した場合、当該区域が作業スペース(例えば、前記点検ハッチ近傍)に位置するまで桟付コンベヤベルト1を走行させ、当該区域の点検を実施してもよい。
【0078】
点検後、前記識別情報は、点検に関する履歴情報と関連付けられてもよい。点検結果に関する履歴情報は、各部材の劣化状態の評価結果を含むことが好ましく、該評価結果に基づく当該区域の総合評価を含むことがより好ましい。総合評価としては、例えば、数値が高いほど状態が悪いことを表す加算方式による評価、又は、数値が低いほど状態が悪いことを表す減点方式による評価であってもよい。
【0079】
桟付コンベヤベルト1に異常が発生した際には、前記総合評価に基づいて異常箇所を探索してもよい。例えば、前記総合評価が悪い区域(すなわち劣化が比較的進んだ区域)を優先して異常箇所を探索してもよい。より具体的には、RFIDリーダから各収容部65に向かって電波を発信し、前記総合評価が悪い区域に関連付けられた識別情報をRFIDリーダが受信した場合、当該区域が前記点検ハッチ近傍に位置するまで桟付コンベヤベルト1を走行させる。そして、当該区域において異常の有無を確認し、異常が認められれば補修又は修理を実施する。異常が認められなければ、前記総合評価が悪い順に上記のステップを繰り返してもよい。
【0080】
本実施形態の桟付コンベヤベルト1は、維持管理システムによって維持管理されてもよい。前記維持管理システムは、例えば、上記のようにして桟付コンベヤベルト1に取り付けられた複数の前記RFIDタグと、各RFIDタグの前記識別情報を読み取る読み取り部と、前記識別情報及び前記ベルト情報に基づいて点検等を実施すべき区域を決定する情報処理部と、前記情報処理部からの指示に基づいて桟付コンベヤベルト1を制御するベルト制御部とを備えている。
【0081】
本実施形態の読み取り部は、前記RFIDリーダである。前記RFIDリーダは、前記RFIDタグの識別情報を含む信号を非接触で読み取り可能に構成されている。
【0082】
本実施形態の情報処理部は、サーバに備えられている。前記サーバは、前記情報処理部を制御するプログラムと、各RFIDタグの前記識別情報を前記ベルト情報に関連付けて保存するデータベースと、前記情報処理部が決定した結果を前記ベルト制御部に送信する通信インターフェースとを有する。前記サーバは、サーバマシンによって実現されてもよく、クラウドによって実現されてもよい。また、前記データベースは、前記サーバに備えられてもよく、クラウドに備えられてもよい。前記通信インターフェースは、有線又は無線通信によって、ネットワークを介して前記ベルト制御部と情報の送受信を行う。
【0083】
本実施形態のベルト制御部は、桟付コンベヤベルト1を駆動するためのモータ等の駆動部を制御するように構成されている。かかるベルト制御部は、搬送装置Xに備えられたタブレットやパーソナルコンピュータ等の端末に備えられてもよい。
【0084】
そして、点検に際しては、本実施形態の情報処理部は、前記データベースから取得した前記識別情報と点検の実施予定情報とに基づいて点検を実施すべき区域を決定する。次に、かかる決定の結果は、前記通信インターフェースによって前記ベルト制御部に送信される。前記ベルト制御部は、該結果に基づいて、点検を実施すべき区域が点検ハッチに位置するまで桟付コンベヤベルト1を駆動させる。点検完了後、本実施形態の情報処理部は、点検に関する履歴情報を前記データベースに保存する。
【0085】
また、桟付コンベヤベルト1の異常時には、本実施形態の情報処理部は、前記データベースから取得した前記識別情報と点検の履歴情報とに基づいて、異常発生の可能性に関する順位付けを行う。順位付けとしては、例えば、異常発生の可能性の高い順から低い順への順位付けが挙げられる。順位付けの結果は、前記通信インターフェースによって前記ベルト制御部に送信される。前記ベルト制御部は、該結果に基づいて、異常発生の確認を優先すべき区域が点検ハッチに位置するまで桟付コンベヤベルト1を駆動させる。
【0086】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係る桟付コンベヤベルトは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る桟付コンベヤベルトは、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係る桟付コンベヤベルトは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0087】
例えば、収容部65がタッピングネジよりも上方又は下方に(取付部材60における端部側に)位置するように形成されてもよい。この場合、RFIDタグは側面652に接着されてもよい。また、電波は側面652に向かって発信されてもよい。
【0088】
また、より多くの取付部材60にRFIDタグを収容してもよい。
【0089】
収容部65へのRFIDタグの固定手段に関し、上記実施形態では収容部65(底面651)への接着剤による接着を例示したが、かかる接着とともに又はかかる接着に代えて、収容部65の開口653を樹脂製のシートで閉塞してもよく、RFIDタグを配した収容部65にゴム組成物等で構成される充填剤を充填してもよい。これによって、RFIDタグの故障をさらに抑制することができる。また、前記シート及び前記充填剤の比誘電率は、1以上30以下であることが好ましく、10以上30以下であることがより好ましい。
【0090】
ベルト本体10は、1つの帯状部材12の両端部領域どうしが接合されて、無端状とされてもよい。同様に、一対の波桟20のそれぞれは、1つの波形状部材24の両端部領域どうしが接合されて、無端状とされてもよい。
【0091】
本明細書の開示は、以下のものを含む。
【0092】
(1)
搬送面を有するベルト本体と、前記搬送面から立ち上がる一対の波桟と、前記一対の波桟の間に延びる複数の横桟とを備え、
各横桟を前記一対の波桟のそれぞれに固定する固定部材と、前記固定部材によって前記横桟とともに前記一対の波桟のそれぞれに取り付けられる取付部材とを有し、
前記取付部材の少なくとも一部が、RFIDタグを収容する収容部を形成する、桟付コンベヤベルト。
【0093】
かかる構成によれば、取付部材にRFIDタグを収容することによって、当該取付部材を含む区域をRFIDタグの無線通信を用いて容易に識別することができる。また、RFIDタグを取付部材の収容部に収容した状態で用いることができるため、露出した状態と比較して長期にわたってその性能を維持することができる。すなわち、RFIDタグによる識別可能な状態を比較的長期にわたって維持することができる。
【0094】
(2)
前記収容部は、前記RFIDタグを着脱可能とするための開口を有する、上記(1)に記載の桟付コンベヤベルト。
【0095】
かかる開口によって、識別しようとする区域に属する取付部材にRFIDタグを容易に収容することができる。また、RFIDタグに故障が生じた場合には容易にRFIDタグを取り換えることができる。
【0096】
(3)
前記固定部材は、前記開口が前記波桟で閉塞されるように前記取付部材と前記波桟とを締結している、上記(2)に記載の桟付コンベヤベルト。
【0097】
かかる構成によれば、異物の収容部への侵入口となり得る開口が波桟に閉塞されており、この閉塞状態を固定部材による取付部材と波桟との締結によって維持されるため、異物に起因するRFIDタグの故障を抑制することができる。
【0098】
(4)
前記波桟は、ベルト幅方向の内方に延びる複数の凹部を有し、
前記取付部材が、前記凹部に配されている、上記(1)~(3)のいずれかに記載の桟付コンベヤベルト。
【0099】
かかる構成によれば、取付部材が凹部に配されているため、開口を介した収容部への異物の侵入をさらに抑制することができる。
【0100】
(5)
前記ベルト本体は、1の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の帯状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第1の接合部を有し、
各波桟は、1の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成されるか、又は複数の波形状部材の端部領域どうしが接合されることによって形成される1又は2以上の第2の接合部を有し、
前記RFIDタグが、前記第1の接合部又は前記第2の接合部のいずれかと近接する前記取付部材に収容されている、上記(1)~(4)のいずれかに記載の桟付コンベヤベルト。
【0101】
かかる構成によれば、重点的な点検が必要となり又は損傷が生じ易いと想定される第1の接合部又は第2の接合部が属する区域を容易に識別することができる。
【0102】
(6)
2以上の前記取付部材のそれぞれに前記RFIDタグが収容されており、
各RFIDタグは、異なる識別番号を有する、上記(1)~(5)のいずれかに記載の桟付コンベヤベルト。
【0103】
かかる構成によれば、各RFIDタグの識別番号を各区域と関連付けることができるため、各区域をさらに容易に識別することができる。
【0104】
(7)
前記RFIDタグの交信周波数帯がUHF帯である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の桟付コンベヤベルト。
【0105】
かかる構成によれば、異なる周波数を採用する複数の地域における適用可能性を高めることができる。
【符号の説明】
【0106】
1:桟付コンベヤベルト、10:ベルト本体、11:搬送面、12:帯状部材、20:波桟、21:接着部、22:易伸縮部、23:凹部、231:底部、232:側面部、24:波形状部材、241:貫通孔、30:横桟、31:仕切部、311:側端縁部、32:延出部、40:支持部材、41:支持体、411:第1接着部、412:第2接着部、50:固定部材、51:締結部材、511:頭部、512:軸部、60:取付部材、61:表面部、62:突条部、63:貫通孔、64:被当接面部、65:収容部、651:底面、652:側面、653:開口、71:第1の接合部、72:第2の接合部、T:RFIDタグ、E:クッションゴム、D1:長さ方向、D2:幅方向、D3:高さ方向、P:プーリー、X:搬送装置
【要約】
搬送面を有するベルト本体と、前記搬送面から立ち上がる一対の波桟と、前記一対の波桟の間に延びる複数の横桟とを備え、各横桟を前記一対の波桟のそれぞれに固定する固定部材と、前記固定部材によって前記横桟とともに前記一対の波桟のそれぞれに取り付けられる取付部材とを有し、前記取付部材の少なくとも一部が、RFIDタグを収容する収容部を形成する、桟付コンベヤベルト。