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特許7529954地盤改良工法及びその工法に使用するモニタの流路構造
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  • 特許-地盤改良工法及びその工法に使用するモニタの流路構造 図1
  • 特許-地盤改良工法及びその工法に使用するモニタの流路構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】地盤改良工法及びその工法に使用するモニタの流路構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022164993
(22)【出願日】2022-10-13
(65)【公開番号】P2024057968
(43)【公開日】2024-04-25
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505125071
【氏名又は名称】有限会社大翔化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正明
(72)【発明者】
【氏名】土屋 尚典
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 諒平
(72)【発明者】
【氏名】長崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】羽田 大樹
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034774(JP,A)
【文献】特開2012-031992(JP,A)
【文献】特開平10-061268(JP,A)
【文献】特開2007-262699(JP,A)
【文献】特開2005-083289(JP,A)
【文献】特開2002-048032(JP,A)
【文献】特開平10-168870(JP,A)
【文献】特開2022-111965(JP,A)
【文献】特開2021-046827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良する地盤へ鉛直方向に挿入され流体を高圧で噴出するモニタを使用し、
前記モニタは、材質がクロムモリブデン鋼であり切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材を前記接合面が密着した状態で接合し構成した柱状体により形成される噴出部を備え、
前記噴出部は、前記柱状体を貫通し前記柱状体の頂面に開口する流入口と前記柱状体の側面に開口する流出口を連通する、前記切削加工により設けられた凹部で形成された流路を有し、
前記流路の壁面を含め、前記柱状体が、830℃で焼き入れされ、更に400℃で焼き戻しされている、
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
材質がクロムモリブデン鋼であり切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材を前記接合面が密着した状態で接合し構成した柱状体において、前記切削加工により設けられた凹部により、前記柱状体を貫通し前記柱状体の頂面に開口する流入口と前記柱状体の側面に開口する流出口を連通する流路が形成され、前記流路の壁面を含め、前記柱状体が、830℃で焼き入れされ、更に400℃で焼き戻しされていることを特徴とする流路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に硬化剤を噴射して撹拌混合し改良体を造成することにより地盤を改良する工法と、その工法において地盤内に高圧の流体を噴射するモニタの流路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤を改良する手法としては、例えば、特許3750065号公報及び特許3750066号公報に開示されている地盤改良工法が知られている。この地盤改良工法は、改良する地盤内に、切削液や固化剤などの流体を高圧で噴出し、円柱形状の固化改良体を造成することにより地盤を固結させるものである。
【0003】
そして、この地盤改良工法では、流体の噴射に用いられるモニタが地盤へ鉛直方向に挿入され、地盤内に噴出される流体は、地上からモニタ内に鉛直方向に供給される。一方、モニタ内に供給された流体はモニタから地盤内へ水平方向に噴出されるため、流体の流路には鉛直方向から水平方向へ向きを変える湾曲部を設ける必要がある。
【0004】
そこで、湾曲部を備えた流路を形成する手法として、特開2014-34774公報には、湾曲した流路の内壁面の一部を形成するための凹部を有する接合面を備えている第一の部材と、湾曲した流路の内壁面の残部を形成するための凹部を有する接合面を備えている第二の部材の接合面同士を当接し固着させた噴射構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許3750065号公報
【文献】特許3750066号公報
【文献】特開2014-34774公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モニタ内の流路は、流れの作用で受ける圧力や摩擦力に対し十分な耐久性を備えることが必要となり、十分な耐久性を備えるためには、流路内面の硬度を高める必要がある。
【0007】
しかしながら、流路を切削加工により形成する場合、硬度の高い材質を用いることができず、切削加工により形成された流路は、耐久性に問題があった。
【0008】
そのため、従来のモニタを使用した地盤改良工法では、改良する地盤内に噴出する切削液や固化剤などの流体の噴出圧、及び、噴出量を制限せざるを得ず、施工効率が低下するおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、従来よりも施工効率を向上させることができる地盤改良工法と、その地盤改良工法に使用するモニタの流路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る地盤改良工法は、改良する地盤へ鉛直方向に挿入され流体を高圧で噴出するモニタを使用する。そして、前記モニタは、切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材を前記接合面が密着した状態で接合し構成した柱状体により形成される噴出部を有し、前記噴出部は、前記柱状体を貫通し前記柱状体の頂面に開口する流入口と前記柱状体の側面に開口する流出口を連通する流路を有し、前記流路の壁面が焼き入れされている。
【0011】
また、本発明に係る流路構造では、切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材を前記接合面が密着した状態で接合し構成した柱状体において、前記柱状体を貫通し前記柱状体の頂面に開口する流入口と前記柱状体の側面に開口する流出口を連通する流路が形成され、前記流路の壁面が焼き入れされている。
【0012】
本発明において、前記流出口にノズル部材が配置され、前記流路と前記ノズル部材は、前記柱状体を構成する部材よりも硬度の高い材質で形成された口元部材を介して連通しているものであってもよい。
【0013】
本発明において、前記口元部材の内壁面に螺旋形状の溝が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材を接合面が密着した状態で接合することにより構成した柱状体に形成される流路の壁面が焼き入れされるため、流路壁面の硬度が高く耐久性に優れたものとなる。そして、改良する地盤内に噴出する流体の噴出圧、及び、噴出量の上限は従来よりも高くなるため、従来よりも施工効率を向上させることができる。
【0015】
また、流出口に噴出ノズルを構成するノズル部材が配置される形態では、ノズル部材と流路の接続部分は、流路勾配の急な変化により流体衝撃圧が最も大きくなる部位となるが、ノズル部材と流路を、柱状体を構成する部材よりも硬度の高い材質で形成された口元部材を介して連通させることにより、流体衝撃圧が最も大きくなる部位の耐久性の向上を図ることができる。そのため、更なる施工効率の向上を図ることができる。
【0016】
更にまた、口元部材の配置される、湾曲部から直線状の流出口への接続部分では、湾曲部を通り遠心力の働いている高圧・高流量の流体が流路内でのはく離により乱流となって流路への局所的な応力集中を発生させ、摩擦抵抗が大きくなることから、耐久性が損なわれやすくなっている。加えて、流体を噴出させるために流路径が絞られることから、圧力も増加し、耐久性において不利な部位となっている。そこで、口元部材の内壁面に螺旋形状の溝を設けることにより、内壁面の界面に流体の極小渦流を作り出し、摩擦抵抗の高い鋼部材表面との積極的な縁切りを行い局所的な応力集中を低減し、口元部材とその近傍の流路の耐久性の向上を図ることができる。そのため、更なる施工効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る地盤改良工法に使用されるモニタの噴出部を形成する柱状体の外観を示す斜視図である。
図2】ノズル部材と口元部材が配置された状態の流出口を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を参照しながら、本発明に係る地盤改良工法に使用されるモニタの流路構造の実施形態を説明する。
図1に示す柱状体1は、改良する地盤内に高圧の流体を噴射するモニタにおいて、高圧の流体を噴射するノズルを備える噴出部を形成するものである。
【0019】
柱状体1の頂面2には、噴出する流体の流入口3が設けられており、地上から流体を導く図示しない導入管が接続される。また、柱状体1の側面4には、流体を噴出するノズルを構成するノズル部材を配置するための流出口5が設けられている。
【0020】
柱状体1は、切削加工により凹部が設けられた接合面を有する一組の部材11、12を、接合面が密着した状態で接合することにより構成されている。そして、これら一組の部材11、12に形成された凹部が向かい合わせで配置され、柱状体1を貫通し流入口3と流出口5を連通する流路6が形成されている。
【0021】
流路6は、その壁面が焼き入れされている。この実施形態では、柱状体1を830℃で焼き入れし、更に400℃で焼き戻しすることにより、流路6の壁面の焼き入れがされている。なお、この実施形態の流路6の内径は16mmとされているが、流路6の内径が3mm以上であればその壁面の焼き入れが可能である。
【0022】
柱状体1には、また、流出口5の空隙に圧縮空気を導入する第一の導管7の複数が設けられている。更にまた、柱状体1の底面側に接続される別の流体の噴出部に流体を導入するための、柱状体1を軸線方向に貫通する第二の導管8の複数が設けられている。なお、第一の導管7及び第二の導管8は、柱状体1を構成する一組の部材11、12に流路6を形成する凹部を設ける加工作業時に、併せて設けられている。
【0023】
柱状体1を構成する一組の部材11、12には、また、各接合面の縁辺部を削って形成した図示しない溶接代が設けられている。そして、柱状体1を構成する一組の部材11、12は、これら溶接代を使用した溶接により接合されている。
【0024】
この実施形態において、柱状体1を構成する一組の部材11、12の材質には、SCM440が採用されている。切削加工が可能で、かつ、熱処理による割れの生じにくい材質であれば、その他の材質としてもよいが、クロムモリブデン鋼が好ましい。
【0025】
流出口5の開口部には、図2に示すように、ノズル部材9が配置されている。そして、流路6とノズル部材9は、口元部材10を介して連通するものとなっている。
【0026】
口元部材10は、柱状体1を構成する一組の部材11、12よりも硬度の高い材質で形成され、噴出ノズル9から噴出される高圧流体の衝撃圧が最も大きくなる部位の耐久性の向上が図られている。なお、この実施形態では、口元部材10を形成する材質として、タングステンカーバイドとコバルトの合金が採用されている。
【0027】
なお、口元部材10の内壁面に螺旋形状の溝を設けることにより、口元部材10とその近傍に生じる局所的な応力集中を低減し、口元部材10とその近傍の流路6の耐久性の向上を図ることができる。
【0028】
溝を設けるために、口元部材10の内壁面の構造を、流路方向に5~10°傾斜した溝が、口元部材10の周方向に等間隔で複数彫られたものとしてもよい。溝の数は、使用条件等に応じ10~30の範囲で適宜決めてもよい。溝の形状は、例えば、溝と溝の間の凸部の断面形状が台形となるものとすることができる。この場合、凸部頂面の幅は0.003~0.1mmとし、凸部側壁面の傾斜角度は、流路阻害が生じ難いように45°以上とすることが好ましい。また、凸部の高さは、口元部材10の基端(流路6に接続される側)で1.0mm以下、先端(ノズル部材9に接続される側)で0とし、先端での流路阻害が生じないものとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 柱状体
2 頂面
3 流入口
4 側面
5 流出口
6 流路
7 第一の導管
8 第二の導管
9 ノズル部材
10 口元部材
11、12 柱状体を構成する一組の部材
図1
図2