(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】雄端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/04 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
H01R13/04 B
(21)【出願番号】P 2024011952
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-30
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510007045
【氏名又は名称】町田 幸文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 博文
(72)【発明者】
【氏名】町田 幸文
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-065775(JP,U)
【文献】特開2012-195228(JP,A)
【文献】特開2003-036909(JP,A)
【文献】特開2013-065500(JP,A)
【文献】特開2003-036910(JP,A)
【文献】特開平10-040986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記底板と前記上板との間に略平行に挟まれている平板状の前記補強板部
は、前記他方の側板の端部からの前記補強板部の長さを短く形成することを特徴とする請求項1
に記載の雄端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄端子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコネクタは、ハウジングに複数のキャビティを形成し、その各キャビティ内に電線を圧着した端子が装着されて構成されている。例えば、雄端子では一定の厚さの導電性の金属板を所定形状に打ち抜いた後、曲げ加工等を施して成形されるものが広く知られている。この種の雄端子では、先端のタブ部について、金属板を折り返し状に曲げて厚さを確保している。このように金属板を折り返し状に曲げたタブ部の厚さは、底板に上板を両端から180°の密着曲げとし、金属板の2倍の厚さにできるようにしている。
【0003】
さらに、雄端子と雌端子を結合させる接続構造においては、雄端子のタブ部の厚さ寸法と幅寸法が規格化され、厳密に定められている。一方、端子と電線との接続に際しては、端子に形成したバレル部に電線を圧着する方法としてアプリケータが使用されている。アプリケータは、金属板の板厚寸法毎に区分されていて、雄端子に比べ雌端子の板厚が薄くなる場合が多く、この場合には、雄端子及び雌端子はそれぞれ別々のアプリケータを準備している。このような事情の下でアプリケータの種類数を減らしてコスト低減を図ろうとすると、金属板の板厚を雄端子と雌端子ともに同一の板厚にするタブ部への設計工夫が必要となる。
【0004】
一方では、自動車の機能性向上に向けて、回路数の増加が益々顕著になっており、更なる端子の小型化と軽量化に加え、コネクタ結合数の増加についての対策も進めなければならない状況にある。そこで、下記特許文献1では、雄端子の素材となる金属板をより薄いものへと移行できる技術が展開されている。さらに、下記特許文献2では、複数の端子をハウジング内に収納した多極のコネクタを接続する場合、コネクタ結合作業が悪くなるという不具合に対して、雄端子が雌端子への挿入を始めた直後に最も高い挿入力になる点に着目し、その対策として、挿入力の分散を実現させて低減する雌端子を展開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【発明の概要】
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、導電性の金属板の板厚寸法は、雌端子Fに対して雄端子Mを厚くせざるを得ない構造であったものの、雌端子Fと統一することができるだけでなく、金属板の硬度を含めた仕様を統一することができるから、電線Wを圧着する方法として使用するアプリケータの統合、使用する金属板の板厚及び硬度等の仕様統合ができるようになり、管理費や材料費での原価低減効果が見込まれる。さらに、耐振動特性の改善にも繋がり、微摺動摩耗による雄端子Mのタブ部1への削れを減少させて、耐振動性への寿命を延ばすことができる。また、ハーネス作業での雄端子Mと電線Wとの絡みもなくなり、雄端子Mがハウジングの所定のキャビティへとスムーズな端子挿入作業ができる他、電線Wの被覆への切り傷などの不具合に対する懸念やワイヤハーネス組立作業者の指等への切り傷防止など、多くの効果が見込まれる。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、雄端子Mの導電性の金属板の板厚寸法は、雌端子Fよりもさらに薄くすることが可能となる。アプリケータの統合はできなくなってしまうものの、例えば、請求項1の雄端子Mの板厚寸法に対して50%減とすることも可能となる構造が実現でき、雄端子Mの原価構成の中で、最も比率の高い導電性の金属板の材料費低減により、製造原価を大幅に下げることができる。
【0009】
また、請求項3の発明によれば、雄端子Mにあるガイド頂点11の内側に穴10を設けることにより、雄端子Mにあるガイド頂点11は、雌端子Fに設けられた接触板部50及び固定接点部51の間に挿入した時に、穴10を圧縮する形でガイド頂点11が内側に一定程度に変形できる構造としていることから、雄端子Mが雌端子Fへの挿入を始めた直後に最大となる挿入力を一つのピーク値としながら、低減することができる。
【0010】
上記実施形態では電線の圧着によって接続する雄端子Mについて説明したが、本発明は、電線を圧接することによって接続する雄端子Mやタブ部1の構成が前側と後側の双方で構成される基板直付け用のコネクタに使用する端子にも活用することができる雄端子Mである。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、特許文献1の雄端子では、金属板の板厚寸法に影響されずに所望の厚さのタブ部を形成することを目的とし、例えば0.25ミリメートルの板厚の金属板を考えている。但し、曲げられた箇所からは、0.15ミリメートル立上げ寸法としており、屈曲加工後に戻りを生じるスプリングバックを生じ易くする寸法関係にある。その抑制策として、金属板の材料硬度は1/2Hグレード以下を使用せざるを得ない。尚、従来の雄端子でのタブ部は、底板に上板を両端から180°の密着曲げにて重ねている為、クラック抑制対策から、金属板の材料硬度は、同様に柔らかい1/2Hグレード以下を使用している。
一方、雌端子は接触板部の接触圧力により瞬断を防ぐ必要があり、強い圧力を得るため材料硬度はスプリングバックや曲げによるクラックが起こしやすくなるHグレード以上を使用している。尚、金属板の材料硬度が異なる組合せにおける端子接続の場合、振動による微摺動の影響を強く受け、硬度の高いHグレード材に対して、硬度が低い1/2Hグレード材の摩耗量は著しく大きくなる。ところで、雄端子が雌端子に挿入された状態で車両振動により電線が振動すると、電線の振動が端子に伝わって雄端子と雌端子間での接点摺動を引き起こし、接点摩耗による抵抗値の増加を招くおそれがある。
【0012】
特許文献1では、雄端子の金属板の板厚を雌端子と同じ厚みにし、同じアプリケータを使用することができるようになるものの、金属材料の硬度は統一することができない。その結果、製造原価低減効果としては金属材料の板厚が薄くなった分の材料費とアプリケータの種類数が減る効果に留まることになる。一方、金属材料の厚みが同じで硬度が異なる金属材料となる場合、使用材料の管理を厳重に実施しなければならなくなる。例えば、耐振動性が求められる雌端子に雄端子の材料が取り付けられ製造されてしまうことも想定しなければならない。
【0013】
仮に、雌端子に硬度1/2Hグレードの金属材が誤って使用されてしまった場合、雌端子の接触板部の接触圧力は規定値を満たすことができず、瞬断などの問題を起こしやすい雌端子となり、突然の機能停止等の重大な電気的不具合が懸念される。尚、雄端子と雌端子の双方ともに金属材料の硬さをHグレードに統一できた場合、より多くの削れが雌端子との接触面に生じていた雄端子は、雌端子と同レベルの削れに改善され、振動環境下での耐久寿命を長くすることができる。
【0014】
また、特許文献2では、雌端子に設けられた接触板部及び固定接点部の間に雄端子を挿入すると、まず、雄端子の挿入方向に沿って離れた位置の2つの接点のうちの一方が雄端子と接触し、接点が設けられている接触板部が弾性変形することにより、雄端子が接触板部と固定接点部との間に挟まれる。次いで、挿入が進行すると、雄端子は他方の接点に接触し、接点が設けられている接触板部を弾性変形させることにより、接触板部と固定接点部との間に挟まれる。従って、雄端子の雌端子への挿入力のピーク値が2つに分けられ、かつ、各々のピーク値が小さくなることで、挿入力を分散させることになるとしている。
【0015】
しかしながら、挿入力のピーク値を2つに分けてしまうと、作業者がコネクタを結合する際の触感として、コネクタの結合が完了していない位置にも係わらず、完了したと誤った認識をしてしまう場合があり、瞬断や導通不良などの重大な接触不具合を発生しかねないので、コネクタ結合における挿入曲線は、ピーク値から凹凸がなく、なだらかに下降する曲線が望ましい。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、雄端子及び雌端子に使用する導電性の金属板の板厚及び硬度等の仕様を統一可能とする雄端子のタブ部構造とすることにより、コスト面では管理費や材料費が抑制されて原価低減を実現し、性能面では微摺動からの金属同士の摩耗を抑制して、電気接続寿命を延ばせるものであり、安全機能やセンサー回路等により端子数が増加の一途を辿る中で、更なる小型化及び軽量化と共に、多極化するコネクタに向けて、雄端子が雌端子へと挿入が始まった直後に最大となる挿入力を低下させるとともに、一つのピーク値とする雄端子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、導電性の金属板を曲げ加工して成形される雄端子において、筒状の箱部と、前記箱部から前方へ突出して、相手側の雌端子と電気的に接触する板状のタブ部とを備え、前記タブ部は、底板と、前記底板の一方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角に形成された一方の側板と、前記一方の側板の立ち上がり端から幅方向に延びて、前記底板に対して所定間隔を開けた平行姿勢をなして折り重なるように曲げ形成された上板と、前記上板の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角下方に形成された横板が前記底板に当接し、前記底板の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて立ち上がり略U字形に折返して形成された他方の側板が構成され、前記他方の側板の端部から横方向に延設された平板状の補強板部が前記底板と前記上板との間に略平行に挟まれている構成としたので、底板と上板は180度の密着曲げから、90度曲げへと緩和させる構造とすることで、金属板の硬度を雌端子と同じHグレードに変更しても、雄端子のタブ部にクラックを発生させることはない。また、他方の側板には雄端子の上下反転等、ハウジングにあるキャビティへの誤挿入を防止するスタビライザーの機能を有している。
【0018】
この雄端子では、導電性の金属板の板厚が薄い場合でも端子のタブ部の厚さが規格値を満足するように構成できる。その結果、これまでは導電性の金属板の板厚寸法は、雌端子に対して雄端子を厚くせざるを得ない構造であったものから、雌端子と同一にすることができるようになり、電線の圧着に使用するアプリケータは、雄端子及び雌端子ともに同じものを使用できる。さらに、使用する導電性の金属材料は雄端子及び雌端子の使用量を合算でき、管理費や材料費での原価低減効果が見込まれる。また、耐振動特性としての寿命を延ばすこともできる。
【0019】
さらに、請求項1に記載のものにおいて、前記上板の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角下方に形成された横板が前記底板に当接して構成するとした。この結果、規格値が定められているタブ部の幅寸法について、上板によって厳密に寸法を設定できる様になる。さらに、平坦な他方の側面を実現することもできる。また、雄端子の金属板の厚さ寸法を雌端子よりもさらに薄くすることが可能となる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記底板と前記上板との間に略平行に挟まれている平板状の前記補強板部を長さ方向に曲げて形成させ、正面からの前記タブ部の前記補強板部の形状は、直線状または円弧状あるいはL字状を形成する構成とした。この結果、規格値が定められているタブ部の厚さ寸法については、底板と上板及び補強板部に加え、補強板部では、材料の厚み方向から幅方向の加工寸法とすることができる様になり、厳密にタブ部の厚さ寸法を設定することができる。また、雄端子の金属板の厚さ寸法を雌端子よりもさらに薄くすることが可能となる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記底板と前記上板との間に略平行に挟まれている平板状の前記補強板部は、前記他方の側板の端部からの前記補強板部の長さを前記底板と前記上板よりも短く形成した。この結果、タブ部の前方端部にある上板及び底板のガイド頂点の中心部には穴が構成される。穴により、雄端子が雌端子への挿入を始めた直後に最大となる挿入力をガイド頂点の内側に穴を設けることにより、雄端子にあるガイド頂点は、雌端子に設けられた接触板部及び固定接点部の間に挿入した直後に、穴を圧縮する形で内側に一定程度の変形をし、挿入力を低減させ、さらに一つのピーク値を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1に係る雄端子を正面右上方側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る雄端子を背面右上方側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る雄端子を正面右下方側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る雄端子の展開状態を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る雄端子を背面左上方側から見た製造説明用の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る電線を圧着した雄端子を正面右上方側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る電線を圧着した複数本の雄端子を正面右上方側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る雄端子が雌端子との挿入前の斜視図である。
【
図11】雄端子と雌端子の挿入過程における端子同士の挿入距離と挿入力を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施形態1に係る雄端子が雌端子との挿入距離が
図11におけるP0位置の状態を示した
図10に係るC-C断面図である。
【
図13】本発明の実施形態1に係る雄端子が雌端子との挿入距離が
図11におけるP1位置の状態を示した
図10に係るC-C断面図である。
【
図14】本発明の実施形態1に係る雄端子が雌端子との挿入距離が
図11におけるP4位置の状態を示した
図10に係るC-C断面図である。
【
図15】本発明の実施形態2に係る雄端子を背面左上方側から見た製造説明用の斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態3に係る雄端子を背面左上方側から見た製造説明用の斜視図である。
【
図19】従来の雄端子に電線を圧着した状態にて正面右上方側から見た斜視図である。
【
図21】従来の雄端子が雌端子との挿入距離が
図11におけるP0位置となる斜視図である。
【
図22】従来の雄端子が雌端子との挿入距離が
図11におけるP0位置の状態を示した
図21に係るH-H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態1を
図1から
図10により説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る雄端子Mを正面右上方側から見た斜視図であり、
図4は背面右上方側から見た斜視図。
図5は正面右下方側から見た斜視図である。この実施形態1では、雄端子Mを例示する。この雄端子Mは、母材となる導電性の金属板から
図6に示す展開形状に打ち抜いたものに曲げ加工や叩き加工を施すことで、
図7に示す形状に成形されている。この雄端子Mは、前側から相手の雌端子Fと導通接続可能なタブ部1から傾斜部8を経て筒状の箱部2となり、連結部12から、電線Wの芯線部と圧着するワイヤバレル13aと電線Wの被覆部を固定するインシュレーションバレル13bのバレル部13が構成されている。
【0024】
タブ部1については、
図1及び
図2と
図3により説明する。平坦状の底板6の一方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角に形成された一方の側板4の立ち上がり端から幅方向に延び、底板6に対して所定間隔を開けた平行姿勢をなして折り重なるように曲げ形成された上板7と、
上板の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角下方に形成された横板が底板に当接し、底板6の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて立ち上がり略U字形に折返して形成された他方の側板5が構成され、他方の側板5の端部から横方向に延設された平板状の補強板部3が底板6と上板7との間に略平行に挟まれている。尚、底板6と上板7は略平行となっており、丁度板厚分の空間があり、その空間に補強板部3が嵌められている形となる為、タブ部1の厚さ寸法は、金属板の板厚の約3倍となっている。
【0025】
図8は、本発明の実施形態1に係る電線Wを圧着した雄端子Mを正面右上方側から見た斜視図であり、雄端子Mに電線Wが圧着された状態を示している。
図9は、本発明の実施形態1に係る電線Wを圧着した複数本の雄端子Mを正面右上方側から見た斜視図である。電線Wを圧着した雄端子Mは、方向を揃えて多数本が束ねられ、その状態でアッセンブリ工程の作業場に搬送され、適合する各ハウジングの所定キャビティに挿入される。しかしながら、この種の構成での雄端子Mは、
図9の様に多数本が並べられ、一本毎に引抜き作業を行う中で、雄端子Mに形成される凹凸によって、雄端子Mが電線Wと絡み合い、スムーズな作業を行えない状況を引き起してしまうことがある。
【0026】
この要因としては、例えば
図17にある従来の雄端子30に構成される電線W側にある凸形状のスタビライザー35にある。従来の雄端子30では、
図20に示すように0.32ミリメートルの板厚の金属板を180°の密着曲げにて、0.64ミリメートル厚さとなるタブ部31としている。尚、従来の雄端子30に構成されるスタビライザー35は、上下反転等、ハウジングにある複数のキャビティへの誤挿入を防止する機能を有している。しかしながら、スタビライザー35の凸形状は、ハーネス組立作業において雄端子Mと電線Wとの絡みの原因や電線Wの被覆への切り傷による水侵入や断線不具合に対する懸念。あるいは、ワイヤハーネス組立作業者の指等への切り傷など、不具合における多くの起因となっている。一方、従来の雄端子30におけるスタビライザー35に相当する雄端子Mに形成される他方の側板5は、ハウジングにある複数のキャビティへの誤挿入を防止する機能を持ちながら、
図8に示す様に雄端子Mの電線W側からの著しい凸形状や金属板の板厚がそのまま残る形状もなく、アッセンブリ工程での不具合を大幅に抑制することができる。
【0027】
図10は、本発明の実施形態1に係る雄端子Mが雌端子Fとの挿入前の斜視図である。また、雄端子Mが雌端子Fに挿入される過程での挿入位置と挿入力の関係について、
図11に示す。
図12は、雄端子Mが雌端子Fの内側に挿入され、タブ部1の先端にあるガイド部9が接触板部50と固定接点部51に接触している状態であり、さらに雄端子Mが雌端子Fの奥に入り込む中で、接触板部50の曲げ角度が開きながら、雄端子Mのタブ部1に負荷を与え、
図14の状態で耐振動特性の規定圧力が確保された状態へと移行する。
【0028】
しかしながら、雄端子Mと雌端子Fの挿入過程で、
図13のP1位置では、ガイド頂点11によって接触板部50が変形しはじめ、最も高い挿入力となるのは、ガイド頂点11が接触板部50にあるバネ接点52と、固定接点部51にある固定接点53とが重なった挿入位置P2となる。この挿入位置P2での、本発明の実施形態1の雄端子Mと雌端子Fの場合の挿入力はF3。対して、従来の雄端子30と雌端子Fの場合の挿入力はF4となり、従来の雄端子30の方が本発明の実施形態1の雄端子Mよりも挿入力が高くなる。
【0029】
その要因としては2つある。
図20及び
図22にて説明する。一つ目の要因としては、タブ部31の先端をプレスにて大きな荷重を加えて変形させていることからガイド頂点41はエッジのある形状となり、タブ部31の先端が雌端子Fの接触板部50にあるバネ接点52や固定接点部51にある固定接点53にキズをつけながら挿入される。従来の雄端子30において、底板36と上板37を180°密着曲げ構造としている為、ガイド頂点41は剛体となっており、変位するのは接触板部50のみとなり、従来の雄端子30のガイド頂点41は変形しないことから、挿入力が高くなる。
【0030】
図13は本発明の実施形態1に係る雄端子Mが雌端子Fとの挿入位置が
図11におけるP1位置の状態を示した
図10に係るC-C断面図である。本発明の実施形態1の場合は、雌端子Fの接触板部50が雄端子Mのタブ部1の先端にあるガイド部9によって所定の挿入口に入り込み、ガイド頂点11が接触板部50に接触しはじめている状況となっている。尚、上下のガイド頂点11の内側には、穴10があり、接触板部50に押される力によってガイド頂点11が内側にある穴10側に僅かに動き、挿入力を低減することができるようになっている。
【0031】
二つ目の要因としては、ガイド頂点11は、板状をなす導電性の金属板を曲げ加工して構成している為、そのガイド頂点11には板厚以上のR寸法が施されるので、タブ部1の先端が雌端子Fの接触板部50にあるバネ接点52や固定接点部51にある固定接点53にキズを付けたり、突き当たることもなく、
図11に示す様に、従来の雄端子30を使用した時のF4値よりも、雄端子Mでの挿入力F3値は低い数値となる。
【0032】
尚、この雄端子Mと雌端子Fとの一本あたりの挿入力を、ハウジング内のキャビティ数に掛けることで、概ねのコネクタ結合力となる。自動車や二輪車あるいは建機等の車両へのワイヤハーネス取付作業において、より軽い力でコネクタ結合をスムーズに実現した場合、コネクタ結合作業での時間の短縮や、ハウジング内のキャビティ数を増やしての一括結合などが可能となり、大きな効果が得られるものである。尚、バネ接点52や固定接点53へのキズが防止できる構造は、コネクタ結合作業時の挿入力のバラツキにも一定程度の抑えが可能となり、コネクタ結合の確実性を向上させ、導電性の金属板の表面に施されたメッキ処理への削れ防止など、品質面においても良好な結果を得ることができる。
【0033】
図15は、本発明の実施形態2に係る雄端子を背面左上方側から見た製造説明用の斜視図である。尚、図の左から右へと導電性の金属板の曲げ加工等が進められる。左は金属板の抜き加工が行われた状態であり、中央はタブ部1の上板7のみが90°曲げ加工を行う前の状態であり、右は雄端子Mの製造が完成した状態である。
図16は、
図15に係るD-D断面図である。本発明の実施形態1では、補強板部3の厚みは導電性の金属板の板厚寸法となることから、本発明の実施形態1に係る雄端子Mのタブ部1の厚さは、板厚寸法の概ね3倍となり、所望の厚さ寸法の導電性の金属板を選ぶことはできない。しかしながら、本発明の実施形態2では、雄端子Mのタブ部1を構成する底板6と上板7に略平行に挟まれ構成された補強板部3aは、平板状の補強板部3の一方の側面の端部を略直角に折曲げをした嵩上げ部18により、厳密に定められている雄端子Mのタブ部1の厚さ寸法の規格を維持しながら、導電性の金属板の板厚寸法について一定の範囲で自由に選定でき、且つ、金属板の板厚寸法を薄くした場合でも、雌端子Fの接触板部50から受ける接触圧力によるタブ部1のタブ厚寸法の変化を防止することができるので、耐振動特性を維持することができる。
【0034】
図17は、本発明の実施形態3に係る雄端子を背面左上方側から見た製造説明用の斜視図である。尚、図の左から右へと導電性の金属板の曲げ加工等が進められる。左は金属板の抜き加工が行われた状態であり、中央はタブ部1の上板7のみが90°曲げ加工を行う前の状態であり、右は雄端子Mの製造が完成した状態である。
図18は、
図17に係るE-E断面図である。本発明の実施形態1では、補強板部3の厚みは導電性の金属板の板厚寸法となることから、本発明の実施形態1に係る雄端子Mのタブ部1の厚さは、板厚寸法の概ね3倍となり、所望の厚さ寸法の導電性の金属板を選ぶことはできない。しかしながら、本発明の実施形態3では、雄端子Mのタブ部1を構成する底板6と上板7が略平行に構成された間の補強板部3bには、平板状の補強板部3を略直角に折曲げることにより、材料の厚み方向から幅方向への寸法とすることができ、厳密に定められている雄端子Mのタブ部1の厚さ寸法の規格を維持しながら、導電性の金属板の板厚寸法について一定の範囲で自由に選定でき、且つ、金属板の板厚寸法を薄くした場合でも、雌端子Fの接触板部50から受ける接触圧力によるタブ部1のタブ厚寸法の変化を防止することができる。
【0035】
一方、実施形態2及び実施形態3に係る雄端子は、請求項1の雄端子Mの板厚寸法に対して、50%減としており、導電性の金属板への薄肉化に向けて、強度面についての設計工夫の他、許容電流値低下への対策が必要となる。尚、従来の雄端子30では黄銅材を採用している場合が多く、黄銅材の導電率に対して2倍程度に向上する固溶強化型銅合金や析出強化型銅合金等に材料変更することで、同等レベルの許容電流値を実現することが可能と考える。
【0036】
また、車両への搭載において、回路数の増加によるコネクタ容積拡大への対策は大きな課題であり、コネクタの小型・軽量及び省スペース化への実現は一段と重要なものになっている。尚、雄端子Mのタブ部1の厚さ寸法Yと幅寸法Xは規格化され、厳密に定められているが、今後はさらに小さな規格値が追加されることが予想される。この対策として、
図16及び
図18におけるタブ部1内には空間19のスペースを狭めることにより、タブ部1は、もう一段の小型化を進められることができ、回路の増大に対応する超小型コネクタ構造を実現できる。
【符号の説明】
【0037】
1,31…タブ部
2,32…箱部
3,3a,3b…補強板部
4…一方の側板
5…他方の側板
6,36…底板
7,37…上板
9,39…ガイド部
10…穴
11, 41…ガイド頂点
15…キャリア
16…ガイド穴
17…防壁部
18…嵩上げ部
19…空間
20…横板
35…スタビライザー
50…接触板部
51…固定接点部
52…バネ接点
53…固定接点
F…雌端子
M…雄端子
【要約】 (修正有)
【課題】小型・軽量化と共に原価低減が図れ、端子挿入力ピーク値の低減やハーネス製造性向上等の効果を得られる雄側端子を提供する。
【解決手段】雄端子Mは、導電性の金属板を曲げ加工して造られ、雌端子Fに挿入されるタブ部1を構成している。タブ部1は、平坦状の底板6の一方の側板4の立ち上がり端から幅方向に延び、底板6に対して所定間隔を開けた平行姿勢をなして折り重なるように曲げ形成された上板7と、上板7の他方の側縁5から幅方向と直交する高さ方向に延びて略直角下方に形成された横板20が底板6に当接し、底板6の他方の側縁から幅方向と直交する高さ方向に延びて立ち上がり略U字形に折返して形成された他方の側板5が構成され、他方の側板5の端部から横方向に延設された平板状の補強板部3が底板6と上板7との間に略平行に挟まれて、タブ部1の強度を確保する。外力によって不用意に変形することを防止でき、金属板の板厚を薄肉化できる。
【選択図】
図15