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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】チェーン伝動システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/18 20060101AFI20240731BHJP
   F16G 13/02 20060101ALI20240731BHJP
   C10M 103/06 20060101ALI20240731BHJP
   C10M 103/04 20060101ALI20240731BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240731BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20240731BHJP
【FI】
F16H7/18 B
F16G13/02 B
C10M103/06 A
C10M103/04
C10N40:02
C10N40:32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019169064
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021046889
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】小山 雅博
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-21598(JP,A)
【文献】特開2017-101602(JP,A)
【文献】特開平7-102277(JP,A)
【文献】独国実用新案第202012007568(DE,U1)
【文献】特開2007-245806(JP,A)
【文献】特開2010-190282(JP,A)
【文献】特開2004-255522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/18
F16G 13/02
C10M 103/06
C10M 103/04
C10N 40/02
C10N 40/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチェーンプレートを有するチェーンと、前記チェーンが掛け回される複数のスプロケットと、前記チェーンを潤滑油の存在下で摺動案内する1つ以上のガイドとを備え、
前記ガイドが、チェーン走行面を有した合成樹脂製の案内シューを一体又は別体に備えたチェーン伝動システムであって、
前記複数のチェーンプレートの少なくとも1つが、粒子状の固体潤滑剤を保持した潤滑領域を有し、
前記潤滑剤領域は、前記固体潤滑剤を前記複数のチェーンプレートの少なくとも1つに機械的に付着させたショットピーニング層またはショットブラスト層により構成され、
前記固体潤滑剤は、前記チェーンプレートと前記案内シューとの摺動により前記潤滑剤領域から脱落して前記チェーン走行面に移着することでトライボフィルムを形成可能に構成されていることを特徴とするチェーン伝動システム。
【請求項2】
前記固体潤滑剤が、金属あるいは金属酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載のチェーン伝動システム。
【請求項3】
前記潤滑領域が、前記チェーン走行面に摺接する前記チェーンプレートの端面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーン伝動システム。
【請求項4】
前記案内シューが、前記チェーンプレートと幅方向で接触可能な壁面を有し、
前記潤滑領域が、前記壁面に摺接する前記チェーンプレートの側面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーン伝動システム。
【請求項5】
前記壁面が、前記チェーン走行面の幅方向端部に設けられたガイド壁の前記チェーン走行面側の面を含むことを特徴とする請求項4に記載のチェーン伝動システム。
【請求項6】
前記壁面が、前記チェーン走行面に形成された溝の両側面を含むことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のチェーン伝動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチェーンプレートを有するチェーンと、前記チェーンが掛け回される複数のスプロケットと、チェーンを摺動案内する1つ以上のガイドとを備え、ガイドがチェーン走行面を有した案内シューを一体又は別体に備えたチェーン伝動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを案内するガイドを備え、ガイドがチェーンを摺動案内する案内シューを一体又は別体に備えたチェーン伝動システムは慣用されている。
【0003】
例えば、自動車等の内燃機関のタイミングシステム用いられるチェーン伝動システムでは、騒音の低減、駆動力のロスの低減等の観点から、チェーンと案内シューとの間の摺動抵抗の低減および案内シューの摩耗低減を両立することが求められる。このような事情に鑑みて、チェーンが金属製で案内シューが樹脂製であること、使用時にチェーンと案内シューとの間に潤滑油が供給されること、および高温に曝される環境であることを前提に、チェーンや案内シューの形状、材質の工夫や表面処理の適用等、様々な対策が採られている。
【0004】
しかしながら、例えば、チェーンや案内シューの形状をチェーンと案内シューとの間の摺動抵抗が低減されるように変更すると、チェーンと案内シューとの接触面積が小さくなるので、高張力環境下等では、案内シューの摩耗が増大してしまうこととなる。
一方、チェーンや案内シューの形状を案内シューの摩耗が低減されるように変更すると、チェーンと案内シューとの接触面積が大きくなるので、チェーンと案内シューとの間の摺動抵抗が大きくなる。
このように、チェーンや案内シューの形状を工夫するだけでは、チェーンと案内シューとの摺動抵抗の低減および案内シューの摩耗低減というトレードオフの課題を同時に解決することは困難であった。
【0005】
また、案内シューにおけるチェーン走行面に、案内シューの摩耗低減効果の得られる表面処理を予め実施することが提案されている(特許文献1参照。)。
特許文献1には、図10に示すように、合成樹脂からなるシュー本体部312の表面314にセラミックス材からなる溶射皮膜318を形成し、これによりチェーン走行面313を構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-266141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、特許文献1に示されるように、案内シュー311のチェーン走行面313に表面処理を施した場合には、初期摩耗を低減することができるものと考えられる。しかしながら、チェーン120と案内シュー311との摺動により溶射皮膜318が経時的に摩耗し、しかも、溶射皮膜318の摩耗粉は潤滑油によって速やかに排出されてしまうため、持続的な摩耗低減効果および摺動抵抗低減効果を期待することはできない。
また、特許文献1では、摺動抵抗低減効果および摩耗低減効果が得られるのは、シュー本体部312の表面処理が施された表面のみであって、例えば、図11に示すように、チェーン120の内リンクプレート131および外リンクプレート135と案内シュー311との摺動により溶射皮膜318が摩耗することで露出したシュー本体部312の表面314や、更なる摩耗によりシュー本体部312に新たに形成されチェーン120と摺接し得る壁面315においては、金属製のチェーン120が案内シュー311の樹脂部分と摺動することとなるため、摺動抵抗低減効果および摩耗低減効果を得ることはできない。さらにまた、チェーン走行面313の幅方向端部に設けられたガイド壁部316のチェーン走行面313側の側面317においても、金属製のチェーン120が案内シュー311の樹脂部分と摺動することとなるため、摺動抵抗低減効果および摩耗低減効果を得ることはできない。
【0008】
本発明は、公知のチェーン伝動システムの問題点を解決するものであって、チェーンと案内シューとの摺動抵抗を低下させるとともに経時的な摺動抵抗の増加を抑制し、しかも案内シューの摩耗を低減することが可能なチェーン伝動システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のチェーンプレートを有するチェーンと、前記チェーンが掛け回される複数のスプロケットと、前記チェーンを潤滑油の存在下で摺動案内する1つ以上のガイドとを備え、前記ガイドが、チェーン走行面を有した合成樹脂製の案内シューを一体又は別体に備えたチェーン伝動システムであって、前記複数のチェーンプレートの少なくとも1つが、粒子状の固体潤滑剤を保持した潤滑領域を有し、前記潤滑剤領域は、前記固体潤滑剤を前記複数のチェーンプレートの少なくとも1つに機械的に付着させたショットピーニング層またはショットブラスト層により構成され、前記固体潤滑剤は、前記チェーンプレートと前記案内シューとの摺動により前記潤滑剤領域から脱落して前記チェーン走行面に移着することでトライボフィルムを形成可能に構成されることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係るチェーン伝動システムによれば、チェーンと案内シューとの摺動によりチェーンプレートの潤滑領域の表面から脱落する固体潤滑剤が案内シューのチェーン摺接領域に付着して保持されるので、チェーン走行面を含むチェーン摺接領域に固体潤滑剤自体の潤滑効果が得られる。また、固体潤滑剤はチェーンと案内シューとの摺動によってチェーンプレートの潤滑領域の表面から少しずつ脱落することとなるので、固体潤滑剤を案内シューに対して持続的に供給することができる。従って、チェーンと案内シューとの摺動抵抗を大幅に低下させるとともに経時的な摺動抵抗の増加を抑制し、しかも案内シューの摩耗を低減することができる。
さらにまた、従来のチェーン伝動システムであれば、案内シューの摩耗が増大するような高接触面圧条件下においても、本請求項1に係るチェーン伝動システムによれば、案内シューの摩耗を低減することができる。このため、チェーン及び案内シューを、チェーンプレートと案内シューとの接触面積を小さくしてチェーンと案内シューとの間の摺動抵抗が小さくなるような形状とすることが可能となり、高い設計自由度を得ることができる。
【0011】
本請求項2に記載の構成によれば、固体潤滑剤を通常樹脂により構成される案内シューに対して埋め込ませるように確実に保持させることができる。しかも、チェーンと案内シューとの摺動により、固体潤滑剤を保持するチェーン摺接領域に潤滑油の添加剤成分由来のトライボフィルムの形成を促進させることができる。このため、固体潤滑剤による所期の潤滑効果を確実に得ることができるともにトライボフィルムによる潤滑効果を得ることができ、摺動抵抗低減効果及び摩耗低減効果を一層確実に得ることができる。
【0012】
本請求項3に記載の構成によれば、チェーンと案内シューとの摺動により固体潤滑剤をチェーン走行面におけるチェーン摺接領域に確実に移着させることができる。
本請求項4乃至請求項6に記載の構成によれば、摩耗により案内シューに形成された新たな壁面やチェーン走行面の幅方向端部に設けられたガイド壁のチェーン走行面側の面に対しても、チェーンと案内シューとの摺動により固体潤滑剤を移着させることができるので、通常金属により構成されるチェーンと通常樹脂により構成される案内シューとが直接的に摺動することを回避することができて摺動抵抗が増大することを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るチェーン伝動システムの全体図である。
図2】本発明の一実施形態に係る案内シューの外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るチェーンの一部を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るチェーンと固定ガイドにおける案内シューとの接触状態を概略的に示す断面図である。
図5図4の二点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
図6】案内シューが摩耗したときのチェーンと固定ガイドにおける案内シューと接触状態を概略的に示す断面図である。
図7】チェーンプレートと案内シューとの摺動による固体潤滑剤の案内シューへの移着現象を示す模式図である。
図8図5の二点鎖線で囲まれた領域を概略的に示す断面図であって、チェーン駆動時におけるチェーン走行面の状態を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る固定ガイドにおける案内シューの構成を概略的に示す断面図である。
図10】従来のチェーン伝動システムに係るチェーンと案内シューとの接触状態を概略的に示す断面図である。
図11】案内シューが摩耗したときのチェーンと固定ガイドにおける案内シューと接触状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0014】
本発明の実施形態に係るチェーン伝動システムについて図面に基づいて説明する。
チェーン伝動システム100は、自動車用エンジンのタイミングシステムに適用されるものであり、図1に示すように、クランク軸に設けられた駆動スプロケット101と2本のカム軸の夫々に設けたられた2つの従動スプロケット102にチェーン130が掛け回されており、駆動スプロケット101と従動スプロケット102との間を走行するチェーン130を揺動レバーガイド105と固定ガイド110とによってガイドしている。
【0015】
揺動レバーガイド105は、合成樹脂材料で例えば射出成形等によって成形されたものであり、走行するチェーン130を潤滑油の存在下で摺動案内する案内シュー106が一体に設けられている。案内シュー106は、チェーン走行方向に延びるチェーン走行面を有する。
揺動レバーガイド105は、駆動スプロケット101側の揺動軸部107がエンジンに揺動可能に取り付けられ、従動スプロケット102側に設けられたテンショナTによってチェーン130側に押圧され、チェーン130に所定のテンションを与えている。
【0016】
固定ガイド110は、走行するチェーン130を潤滑油の存在下で摺動案内する案内シュー111と、案内シュー111をチェーン走行方向に沿って支持するベース部材120とを備えている。ベース部材120は取付対象であるエンジンブロック(不図示)に固定するための取付部121を有する。
案内シュー111は、合成樹脂材料で例えば射出成形等によって成形されたものであり、図2に示すように、エンジンルーム側に面する面に、チェーン走行方向に延びるチェーン走行面113を有する。また、チェーン走行面113のシュー幅方向両外側には、ガイド壁部116がそれぞれ形成されている。
ベース部材120は金属材料で例えば金属プレートから打抜き、折り曲げ等の加工で成形されたものである。
【0017】
本実施形態のチェーン130は、例えばローラチェーンとして構成されているが、チェーンは、案内シュー106、111に摺動案内されるチェーンプレートを有するものであれば如何なるものでもよく、ブシュチェーンやサイレントチェーンであってもよい。
チェーン130は、図3および図4に示すように、前後一対の円筒状のブシュ140の両端を左右一対の内リンクプレート131のブシュ孔に固定してなる複数の内リンクと、前後一対の連結ピン141の両端を左右一対の外リンクプレート135のピン孔に固定してなる複数の外リンクと、ブシュ140に外嵌されるローラ142とを備えている。これら複数の内リンクおよび複数の外リンクは、ブシュ140内に連結ピン141を挿入することで、チェーン長手方向に交互に連結されている。本実施形態では、内リンクプレート131は、外リンクプレート135よりも大きく形成されているが、同じ大きさに形成されていてもよい。以下、内リンクプレート131および外リンクプレート135をチェーンプレートと総称する。
【0018】
而して、本実施形態に係るチェーン伝動システム100においては、すべてのチェーンプレートが固体潤滑剤を保持した潤滑領域145を有している。
内リンクプレート131には、図5にも示すように、案内シュー111におけるチェーン走行面113に摺接する摺接端面132および側面133における案内シュー111と幅方向で摺接し得る領域に、潤滑領域145が設けられている。
外リンクプレート135には、案内シュー111のチェーン走行面113に面する端面136および側面137における案内シュー111と幅方向で摺接し得る領域に、潤滑領域145が設けられている。外リンクプレート135の外側面における潤滑領域145は、ガイド壁部116のチェーン走行面113側の側面117に摺接し得る領域に設けられている。
内リンクプレート131の側面133および外リンクプレート135の側面137にも潤滑領域145が設けられていることにより、図6に示すように、チェーン130との摺動により案内シュー111が摩耗して内リンクプレート131または外リンクプレート135と幅方向で摺接し得る新たな壁面115が期せずして形成されてしまった場合であっても、摺動抵抗が増大することを有効に防止することができる。
【0019】
潤滑領域145は、図7示すように、粒子状の固体潤滑剤Pをチェーンプレートに付着させることで構成されている。なお、図7においては、理解を容易にするために、チェーン走行面113を内リンクプレート131における潤滑領域145の表面146と離間させた状態で示してある。また、固体潤滑剤Pの粒子径を極めて大きく記載しているが、実際の寸法を示すものではない。
固体潤滑剤Pとしては、潤滑油中に含まれる添加剤成分を吸着してあるいは添加剤成分と反応してトライボフィルムを形成することが可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウムなどの金属またはその合金、アルミナなどの金属酸化物を例示することができる。
【0020】
潤滑領域145は、例えば、固体潤滑剤Pを投射材としたショットピーニングやショットブラストにより形成することができる。固体潤滑剤Pとしては、粒子径が例えば1~200μmの範囲内の大きさであるものを用いることが好ましい。このような方法によって固体潤滑剤Pをチェーンプレートに付着させることによれば、固体潤滑剤Pは機械的な凹凸による噛み合いによってチェーンプレートに密着するため、チェーンプレートと案内シュー111との摺動により固体潤滑剤Pを潤滑領域145の表面から揺動レバーガイド105のチェーン走行面および固定ガイド110のチェーン走行面113に移着させることができる。また、固体潤滑剤Pが固相状態のままチェーンプレートに衝突するので、固体潤滑剤Pの変質がなく、固体潤滑剤P本来の特性を発揮させることができる。
【0021】
而して、本実施形態に係るチェーン伝動システム100によれば、チェーン130と案内シュー111との摺動により固体潤滑剤Pがチェーンプレートの潤滑領域145の表面から脱落し合成樹脂からなる案内シュー111のチェーン走行面113に埋め込まれるようにして保持される。このため、チェーン130と案内シュー111との間に供給される潤滑油によって外部に排出されることがなく、図8に示すように、潤滑油の添加剤成分由来のトライボフィルム147の形成を促進させやすい状態を得ることができ、案内シュー111のチェーン摺接領域に固体潤滑剤自体の潤滑効果およびトライボフィルム147による潤滑効果が得られる。
さらにまた、チェーンプレートの表面には微細な凹凸138が存在しており、固体潤滑剤Pはチェーンプレートの表面の凹凸138に付着して保持されるため、固体潤滑剤Pのチェーン走行面113に対する持続的な供給が可能となる。揺動レバーガイド105のチェーン走行面においても同様に潤滑効果が得られる。
従って、本実施形態に係るチェーン伝動システム100によれば、チェーン130と案内シュー106、111との摺動抵抗を大幅に低下させるとともに経時的な摺動抵抗の増加を抑制し、しかも案内シュー106、111の摩耗を低減することができる。
【0022】
以上説明した実施形態では、すべてのチェーンプレートが潤滑領域145を有する構成とされているが、複数のチェーンプレートのうちの少なくとも1つが潤滑領域145を有していればよい。また、潤滑領域145はチェーンプレートの側面に設けられている必要はなく、少なくともチェーン走行面との摺接面に設けられていればよい。
さらにまた、図9に示すように、案内シュー211は、チェーン走行方向に沿って延びるプレート案内溝225がチェーン走行面213に設けられた構成とされていてもよい。本実施形態では、プレート案内溝225は、内リンクプレート131および外リンクプレート135を案内するものとして構成されているが、プレート案内溝の具体的態様はこれに限定されず、例えば、内リンクプレート131のみを案内するようにプレート案内溝を形成してもよい。本実施形態においては、チェーンプレートと摺接するプレート案内溝225の底面だけでなく、チェーンプレートと幅方向で接触するプレート案内溝225の両側面に対しても、チェーン130と案内シュー211との摺動により固体潤滑剤Pを移着させることができる。このため、金属により構成されるチェーン130と合成樹脂により構成される案内シュー211とが直接的に摺動することを回避することができて摺動抵抗が増大することを有効に防止することができる。
【0023】
以上説明した実施形態は、自動車等の内燃機関のタイミングシステムで用いられるチェーン伝動システムを想定したものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーン伝動システムとしたが、材質や摺接状態が同様のものであれば、ベルト、ロープ等の類似の伝動システムに適用することも可能であり、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
100 ・・・ チェーン伝動システム
101 ・・・ 駆動スプロケット
102 ・・・ 従動スプロケット
105 ・・・ 揺動レバーガイド
106 ・・・ 案内シュー
107 ・・・ 揺動軸部
110 ・・・ 固定ガイド
111,211,311 ・・・ 案内シュー
312 ・・・ シュー本体部
113,213,313 ・・・ チェーン走行面
314 ・・・ 表面
115, 315 ・・・ 壁面
116, 316 ・・・ ガイド壁部
117, 317 ・・・ 側面
318 ・・・ 溶射皮膜
120 ・・・ ベース部材
121 ・・・ 取付部
225 ・・・ プレート案内溝
130 ・・・ チェーン
131 ・・・ 内リンクプレート
132 ・・・ 摺接端面
133 ・・・ 側面
135 ・・・ 外リンクプレート
136 ・・・ 端面
137 ・・・ 側面
138 ・・・ 凹凸
140 ・・・ ブシュ
141 ・・・ 連結ピン
142 ・・・ ローラ
145 ・・・ 潤滑領域
146 ・・・ 表面
147 ・・・ トライボフィルム
P ・・・ 固体潤滑剤
T ・・・ テンショナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11