(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】冷媒輸送ホース用樹脂組成物および冷媒輸送ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20240731BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240731BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F16L11/04
C08L21/00
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2020009902
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-145425(JP,A)
【文献】特開平06-294485(JP,A)
【文献】特開平06-294484(JP,A)
【文献】特開2007-032725(JP,A)
【文献】特開2007-009171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
C08L 21/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂とエラストマーを含む冷媒輸送ホース用樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂がマトリックス、エラストマーがドメインの海島構造を形成し、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O
2)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]、温度25℃における10%モジュラスM10[MPa]ならびに温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H
2O)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]が、式1
25.74≦P(O
2)×M10≦
104.90 (式1)
および式2
0.16≦log(P(H
2O)/P(O
2))≦
0.69 (式2)
を満た
し、
樹脂組成物は、
ナイロン6とナイロン6/12共重合体と臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体との組み合わせ、
ナイロン6とナイロン6/12共重合体とスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせ、
ナイロン6とナイロン6/12共重合体とスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体と無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせ、
エチレン-ビニルアルコール共重合体とスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせ、
エチレン-ビニルアルコール共重合体とスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体とポリエステルエラストマーとの組み合わせ、
エチレン-ビニルアルコール共重合体と臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体と無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体との組み合わせ、
エチレン-ビニルアルコール共重合体と臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体と無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体との組み合わせ、
ポリブチレンテレフタレートとスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせ、
ポリケトンとスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体との組み合わせ、
ナイロン6とポリケトンと臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体との組み合わせ
からなる群から選ばれる少なくとも1種の組み合わせを含むことを特徴とする冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項2】
温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H
2O)が
17.8×10
-12
~44.9×10
-12
cm・cm
3
/(cm
2
・s・cmHg)であることを特徴とする請求項1に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項3】
温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O
2)が
3.96×10
-12
~18.27×10
-12
cm・cm
3
/(cm
2
・s・cmHg)であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項4】
温度25℃における10%モジュラスM10が
5.3~8.2MPaであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂の温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P
R(O
2)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P
R(H
2O)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]が式3
0.32≦log(P
R(H
2O)/P
R(O
2))≦
3.54 (式3)
を満たすことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項6】
エラストマーの温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P
E(O
2)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P
E(H
2O)[cm・cm
3/(cm
2・s・cmHg)]が式4
-1.07≦log(P
E(H
2O)/P
E(O
2))≦
0.25 (式4)
を満たすことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項7】
さらに脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の加工助剤を含む請求項1~
6のいずれか1項に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の層を含む冷媒輸送ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒輸送ホース用樹脂組成物および冷媒輸送ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化要求が高まる中、これまで自動車に使われていたゴム製のホースを、ゴムに代えてバリア性の高い樹脂で作製し、薄肉化することにより、軽量化を実現しようとする取り組みがある。特に、現行の自動車のエアコンディショナーの冷媒輸送用ホースは主材料がゴムであり、その主原料をバリア性の高い樹脂で置き換えることができれば、軽量化が実現できる。
【0003】
たとえば、特許第3208920号公報(特許文献1)は、最内層が、ナイロン樹脂を主体とする海相と、イソブチレンと分子中の水素原子の一部がハロゲン化されたパラメチルスチレンとの共重合体を含む島相との海島構造を有する樹脂層から形成されたことを特徴とする冷媒輸送用ホースを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バリア性の高い樹脂としてはエチレン-ビニルアルコール共重合体やポリアミドが挙げられるが、エチレン-ビニルアルコール共重合体単体やポリアミド単体は、酸素は透過しにくいが、水蒸気は透過しやすい。
本発明は、冷媒輸送ホースに要求される低ガス透過性、柔軟性、低水蒸気透過性をバランスできる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(I)は、熱可塑性樹脂とエラストマーを含む冷媒輸送ホース用樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂がマトリックス、エラストマーがドメインの海島構造を形成し、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]、温度25℃における10%モジュラスM10[MPa]ならびに温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、式1
0<P(O2)×M10≦150 (式1)
および式2
log(P(H2O)/P(O2))≦0.9 (式2)
を満たすことを特徴とする。
本発明(II)は、本発明(I)の樹脂組成物の層を含む冷媒輸送ホースである。
【0007】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]熱可塑性樹脂とエラストマーを含む冷媒輸送ホース用樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂がマトリックス、エラストマーがドメインの海島構造を形成し、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]、温度25℃における10%モジュラスM10[MPa]ならびに温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、式1
0<P(O2)×M10≦150 (式1)
および式2
log(P(H2O)/P(O2))≦0.9 (式2)
を満たすことを特徴とする冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[2]温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)が60×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であることを特徴とする[1]に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[3]温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)が20×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[4]温度25℃における10%モジュラスM10が10MPa以下であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[5]熱可塑性樹脂の温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数PR(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数PR(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が式3
log(PR(H2O)/PR(O2))≦5.0 (式3)
を満たすことを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[6]熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリケトン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[7]エラストマーの温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数PE(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数PE(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が式4
log(PE(H2O)/PE(O2))≦1.5 (式4)
を満たすことを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[8]エラストマーがブチルゴム、変性ブチルゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[9]さらに脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の加工助剤を含む[1]~[8]のいずれかに記載の冷媒輸送ホース用樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の層を含む冷媒輸送ホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、冷媒輸送ホースに要求される低ガス透過性および柔軟性を有するとともに、低水蒸気透過性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明(I)は、熱可塑性樹脂とエラストマーを含む冷媒輸送ホース用樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂がマトリックス、エラストマーがドメインの海島構造を形成し、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]、温度25℃における10%モジュラスM10[MPa]ならびに温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、式1
0<P(O2)×M10≦150 (式1)
および式2
log(P(H2O)/P(O2))≦0.9 (式2)
を満たすことを特徴とする。
【0010】
本発明(I)は、熱可塑性樹脂とエラストマーを含む冷媒輸送ホース用樹脂組成物に関する。冷媒輸送ホースとは、エアコンディショナー等の冷媒を輸送するためのホースをいう。本発明の樹脂組成物は、特に、自動車のエアコンディショナーの冷媒を輸送するためのホースを作製するのに好適に使用することができる。冷媒輸送ホースは、通常、内管と補強層と外管からなるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特に、冷媒輸送ホースの内管を作製するのに好適に使用することができる。エアコンディショナーの冷媒としてはハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素、二酸化炭素、アンモニアなどを挙げることができ、HFCとしてはR410A、R32、R404A、R407C、R507A、R134aなどが挙げられ、HFOとしてはR1234yf、R1234ze、1233zd、R1123、R1224yd、R1336mzzなどが挙げられ、炭化水素としてはメタン、エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ペンタンなどが挙げられる。本発明において、低ガス透過性とは、上記冷媒等のガスを透過しにくい性質をいう。
【0011】
自動車等のエアーコンディショナーに用いられる冷媒輸送用ホースにおいて、ホース外側から水および/または水蒸気の透過は、エアーコンディショナー内部での水分の凍結を生じる原因となるため、水および/または水蒸気の低透過性に優れる材料が必要とされ、従来は、ブチル系ゴムあるいはエチレン・プロピレン共重合ゴムなどが使用されていた。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とエラストマーを含み、熱可塑性樹脂がマトリックス、エラストマーがドメインの海島構造を形成している。換言すれば、本発明の樹脂組成物は、マトリックスとマトリックス中に分散したドメインとからなる。マトリックスとドメインの比率は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは、樹脂組成物中に占めるマトリックスの体積比率が25~50体積%であり、ドメインの体積比率が50~75体積%である。樹脂組成物中に占めるマトリックスの体積比率は、より好ましくは25~40体積%であり、さらに好ましくは30~40体積%である。マトリックスの体積比率が少なすぎると、マトリックスとドメインの相反転が生じ海島構造が逆転する虞がある。マトリックスの体積比率が多すぎると、マトリックスを構成する熱可塑性樹脂の含有量が多くなるため所望の柔軟性を得られない虞がある。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]および温度25℃における10%モジュラスM10[MPa]が、次式
0<P(O2)×M10≦150 (式1)
を満たし、好ましくは、
5≦P(O2)×M10≦130 (式1′)
を満たし、より好ましくは、
10≦P(O2)×M10≦110 (式1″)
を満たす。
樹脂組成物のP(O2)およびM10が式1を満たすことにより、低ガス透過性を有しながら、柔軟で取り回し性に優れたホースを得られる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]および温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、次式
log(P(H2O)/P(O2))≦0.9 (式2)
を満たし、好ましくは、
0.1≦log(P(H2O)/P(O2))≦0.8 (式2′)
を満たし、より好ましくは、
0.2≦log(P(H2O)/P(O2))≦0.7 (式2″)
を満たす。
樹脂組成物のP(H2O)およびP(O2)が式2を満たすことにより、低ガス透過性を有しながら、水蒸気透過による内部への水分混入が抑制されたホースが得られる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数P(O2)が、好ましくは20×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であり、より好ましくは18×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であり、さらに好ましくは15×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下である。P(O2)の下限は限定されないが、通常、P(O2)は0.001×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以上である。P(O2)が上記範囲内にあることにより、冷媒ガスを通しにくいホースが得られる。
【0016】
酸素透過係数は、低ガス透過性の尺度であり、酸素透過係数が小さいほど低ガス透過性が優れ、酸素透過係数が大きいほど低ガス透過性が劣る。
酸素透過係数の測定方法は、特に限定されないが、たとえば、MOCON社製OXTRAN1/50を用いて測定することができる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数P(H2O)が、好ましくは60×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であり、より好ましくは50×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下であり、さらに好ましくは40×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以下である。P(H2O)の下限は限定されないが、通常、P(H2O)は0.1×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)以上である。P(H2O)が上記範囲内にあることにより、水蒸気透過によるホース内部への水分混入を抑制できる。
【0018】
水蒸気透過係数の測定方法は、特に限定されないが、たとえば、GTRテック株式会社製水蒸気透過試験機を用いて測定することができる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、温度25℃における10%モジュラスM10が、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは9MPa以下であり、さらに好ましくは8MPa以下である。M10の下限は限定されないが、通常、M10は0.1MPa以上である。M10が上記範囲内にあることにより、柔軟で取り回し性に優れたホースを得られる。
【0020】
10%モジュラスは、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して測定することができる。
【0021】
マトリックスを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数PR(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数PR(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、好ましくは、
log(PR(H2O)/PR(O2))≦5.0 (式3)
を満たし、より好ましくは、
0.1≦log(PR(H2O)/PR(O2))≦4.5 (式3′)
を満たし、さらに好ましくは、
0.2≦log(PR(H2O)/PR(O2))≦4.0 (式3″)
を満たす。
熱可塑性樹脂のPR(O2)と水蒸気透過係数PR(H2O)が式3を満たすことにより、エラストマーと複合化して得られる樹脂組成物の低ガス透過性と低水蒸気透過性を両立させやすい。
【0022】
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物が式1および式2を満たし、かつ熱可塑性樹脂が式3を満たす限り限定されないが、好ましくは、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂およびポリケトン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0023】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6/12共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66共重合体、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンMXD6などが挙げられるが、好ましくはナイロン6、ナイロン6/12共重合体、ナイロン12である。
【0024】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられるが、好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0025】
ビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、エチレン-ブテンジオール共重合体などが挙げられるが、なかでもエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレンとビニルアルコールの共重合割合に依存して、融点および酸素透過係数が変化する。好ましいエチレンの共重合割合は25~48モル%である。なかでも、エチレンの共重合割合が48モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレンの共重合割合が38モル%のエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0026】
ポリケトン系樹脂としては、ケトン-エチレンコポリマー、ケトン-エチレン-プロピレンターポリマーなどが挙げられるが、好ましくはケトン-エチレン-プロピレンタ―ポリマーである。
【0027】
マトリックスは、本発明の効果を阻害しない範囲で、式3を満たさない熱可塑性樹脂や、各種添加剤を含んでもよい。
【0028】
ドメインを構成するエラストマーは、好ましくは、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数PE(O2)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]と温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数PE(H2O)[cm・cm3/(cm2・s・cmHg)]が、好ましくは、
log(PE(H2O)/PE(O2))≦1.5 (式4)
を満たし、より好ましくは、
-2.5≦log(PE(H2O)/PE(O2))≦1.0 (式4′)
を満たし、さらに好ましくは、
-2.0≦log(PE(H2O)/PE(O2))≦0.5 (式4″)
を満たす。
エラストマーのPE(O2)と水蒸気透過係数PE(H2O)が式4を満たすことにより、熱可塑性樹脂と複合化して得られる樹脂組成物の低ガス透過性と低水蒸気透過性を両立させやすい。
【0029】
エラストマーは、樹脂組成物が式1および式2を満たし、かつエラストマーが式4を満たす限り限定されないが、好ましくは、ブチルゴム、変性ブチルゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0030】
ブチルゴム(IIR)は、イソブテン-イソプレン共重合体であり、イソブテンと少量のイソプレンをフリーデルクラフト触媒を用い、塩化メチル溶媒中で-95℃前後の低温で共重合することにより製造できる。
【0031】
変性ブチルゴムは、ブチルゴムを変性して得られるゴムをいうが、具体的には、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体などが挙げられる。なかでも臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体が好ましい。
【0032】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン-α-オレフィン共重合体、またはエチレン-不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体などが挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ペンテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体およびそれらの酸変性物などが挙げられる。エチレン-不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0033】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、およびそれらの無水マレイン酸変性品などが挙げられるが、なかでもスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0034】
エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルメタクリレート共重合体、およびそれらの酸変性物などが挙げられるが、なかでも無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体が好ましい。
【0035】
ポリアミドエラストマー(TPA)は、ハードセグメントがポリアミド(たとえばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12)であり、ソフトセグメントがポリエーテル(たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)である熱可塑性エラストマーである。ポリアミドエラストマーは市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリアミドエラストマーの市販品としては、宇部興産株式会社製「UBESTA」(登録商標)XPAシリーズ、アルケマ社製「PEBAX」(登録商標)などが挙げられる。
【0036】
ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ハードセグメントがポリエステル(たとえばポリブチレンテレフタレート)であり、ソフトセグメントがポリエーテル(たとえばポリテトラメチレングリコール)またはポリエステル(たとえば脂肪族ポリエステル)である熱可塑性エラストマーである。ポリエステルエラストマーは市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリエステルエラストマーの市販品としては、東洋紡株式会社製「ペルプレン」(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)などが挙げられる。
【0037】
ドメインは、本発明の効果を阻害しない範囲で、式4を満たさないエラストマー、各種添加剤を含んでもよい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、さらに、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の加工助剤を含む。前記加工助剤を含むことにより、樹脂組成物の押出加工性をさらに向上させることができる。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などが挙げられるが、ステアリン酸が好ましい。
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウムなどが挙げられるが、なかでもステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
脂肪酸エステルとしては、やし油、ひまし油、パーム油、牛脂などの加水分解から得られた高級脂肪酸と低級アルコール、高級アルコール、多価アルコールとのエステル化反応により得られる脂肪酸エステルなどが挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、ステアリルアミド、パミチルアミド、オレイルアミドなどが挙げられる。
前記加工助剤の含有量は、樹脂組成物中のエラストマー100質量部を基準として、好ましくは0.5~5質量部であり、より好ましくは1~4質量部であり、さらに好ましくは1~3.5質量部である。含有量が多すぎると、樹脂組成物のバリア性が悪化する虞がある。
前記加工助剤は、マトリックスとドメインのどちらに存在してもよく、マトリックスとドメインの両方に存在してもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤としては、通常のゴムの架橋剤が使用可能であり、硫黄、2価金属酸化物、ジアミン、過酸化物、変性アルキルフェノール等の加硫用樹脂などが挙げられるが、なかでも酸化亜鉛が好ましい。架橋剤は、樹脂組成物中のエラストマーが架橋し、海島構造を安定化することで加工性向上の役割を果たす。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、老化防止剤を含むことができる。老化防止剤としては、アミン系老化防止剤のアミン・ケトン系、ジアリルアミン系、p-フェニレンジアミン系化合物、フェノール系老化防止剤のモノフェノール系、ポリフェノール系、ハイドロキノン系化合物などが挙げられが、なかでもp-フェニレンジアミン系化合物のN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)が好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂およびエラストマー、必要に応じて、加工助剤、架橋剤、老化防止剤などの添加剤を、二軸混練押出機などで混錬することにより、製造することができる。
【0042】
本発明(II)は、本発明(I)の樹脂組成物の層を含む冷媒輸送ホースである。
本発明の冷媒輸送ホースは、好ましくはエアコンディショナーの冷媒を輸送するためのホースとして使用され、より好ましくは自動車のエアコンディショナーの冷媒を輸送するためのホースとして使用される。
冷媒輸送ホースは、好ましくは、内管と補強層と外管からなる。本発明の冷媒輸送ホースは、内管の少なくとも1層が前記熱可塑性樹脂組成物からなる。
冷媒輸送ホースの製造方法は、特に限定されないが、次のようにして製造することができる。まず内管を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強層となる繊維を編組し、さらにその繊維上に外管を押出成形により被覆することで製造することができる。
【実施例】
【0043】
[原材料]
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
(熱可塑性樹脂)
Ny6: ナイロン6、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」1022B、PR(O2):1.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):65.1×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=1.81
Ny6/12: ナイロン6/12共重合体、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」7024B、PR(O2):3.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):62.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=1.32
Ny11: ナイロン11、アルケマ社製「RILSAN」(登録商標)BESNO TL、PR(O2):17.2×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):42.6×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=0.39
Ny12: ナイロン12、宇部興産株式会社製「UBESTA」(登録商標)3012U、PR(O2):20.2×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):41.8×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=0.32
EVOH-1: エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン量48モル%)、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B、PR(O2):0.07×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):31.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=2.64
EVOH-2: エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン量38モル%)、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)E3808、PR(O2):0.01×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):34.9×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=3.54
PBT: ポリブチレンテレフタレート、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ノバデュラン」(登録商標)5010R5、PR(O2):4.67×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):46.1×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=0.99
POK: ポリケトン、HYOSUNG社製「POKETONE」(登録商標)M330A、PR(O2):0.7×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PR(H2O):34.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PR(H2O)/PR(O2))=1.72
【0044】
(エラストマー)
Br-IPMS: 臭素化イソブチレン-パラメチルスチレン共重合体、エクソンモービル・ケミカル社製「EXXPRO」(登録商標)3745、PE(O2):87×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):18×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-0.68
SIBS: スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、株式会社カネカ社製「SIBSTAR」(登録商標)102T、PE(O2):91×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):17×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-0.73
Mah-EP: 無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、三井化学株式会社製「タフマー」(登録商標)MP0620、PE(O2):940×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):81.3×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-1.06
Mah-EB: 無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体、三井化学株式会社製「タフマー」(登録商標)MH7010、PE(O2):990×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):83.7×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-1.07
Mah-EEA: 無水マレイン酸変性エチレン-アクリル酸エチル共重合体、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「HPR AR201」、PE(O2):910×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):87.0×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-1.02
Mah-SEBS: 無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、旭化成株式会社製「タフテック」(登録商標)M1913、PE(O2):920×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):91.5×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-1.00
TPA: ポリアミドエラストマー、宇部興産株式会社製「UBESTA」(登録商標)XPA 9063X1、PE(O2):39.3×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):70.5×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=0.25
TPEE: ポリエステルエラストマー、東洋紡株式会社製「ペルプレン」(登録商標)P40B、PE(O2):113×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、PE(H2O):50.3×10-12cm・cm3/(cm2・s・cmHg)、log(PE(H2O)/PE(O2))=-0.34
【0045】
(加工助剤)
St-Ca: ステアリン酸カルシウム、堺化学工業株式会社製「SC-PG」
St-Mg: ステアリン酸マグネシウム、堺化学工業株式会社製「SM-PG」
(架橋剤)
ZnO: 酸化亜鉛、正同化学工業社製「酸化亜鉛3種」
(老化防止剤)
6PPD: N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、Solutia社製「SANTOFLEX」(登録商標)6PPD
【0046】
[比較例1]
表1に示す配合にて、バンバリーミキサーにてゴム組成物(a)を調製し、予め離型剤を塗布したマンドレル上に、押出機により肉厚1.5mmのチューブを押出した。これを内層材として、その上に編組機を使用してポリエステルの補強糸を編組し、その上に、表2に示す配合にてバンバリーミキサーにて調製したゴム組成物(b)を押出した。その後、160℃で60分間スチーム加硫を行い、マンドレルを抜き取ることで、内層/補強層/保護層からなるホースを作製した。
調製したゴム組成物および作製したゴムホースについて、酸素透過係数および水蒸気透過係数を測定した。測定結果を表3に示す。
【0047】
[実施例1~13、比較例2~6]
表3および表4に示す配合にて、ポリマー成分のうち最も融点の高い原料の融点より20℃高いシリンダー温度に設定した二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に導入し、滞留時間約3~6分間に設定された混練ゾーンに搬送して溶融混練し、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、酸素透過係数および水蒸気透過係数を測定した。測定結果を表3および表4に示す。
酸素透過係数の測定結果から、比較例1のゴム組成物の厚さ1.5mmと同等のガス透過量となるであろう厚みを各実施例・比較例について算出し、その肉厚となるようマンドレル上にチューブを押出した。これを内層材として、その上に編組機を使用してポリエステルの補強糸を編組し、その上に、押出機にてポリエステルエラストマーを押出して、内層/補強層/保護層からなるホースを作製した。作製したホースについて、内層質量(軽量化効果)、曲げ力(柔軟性)、ホース水分透過性を測定した。比較例1を100とした指数で表示し、次のとおり判定した。
内層質量:低いほど良い。90以下を軽量化とする。
曲げ力:低いほど良い。200以下は使用上問題ない取り回し性。
水蒸気透過性:低いほどよい。樹脂ホースとしては700以下であれば軽量化を加味して効果あり。
結果を表3および表4に示す。
【0048】
[酸素透過係数の測定]
樹脂組成物の試料を、550mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を試料の融点(試料が組成物の場合は、組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点)+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。熱可塑性樹脂の試料は、同様の温度条件とし、押出時の吐出量と引き取り速度を調整し、厚さ0.05mmのフィルムに成形した。エラストマー、ゴム組成物については、温度180℃で10分間、熱プレスをすることにより厚さ。0.5mmのシートを作製した。
得られたシートおよびフィルムを切り出し、MOCON社製OXTRAN1/50を用いて、温度21℃、相対湿度50%で測定した。
【0049】
[10%モジュラスの測定]
酸素透過係数の測定において作製したシートまたはフィルムを、JIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して、温度25℃、速度500mm/minで引張試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力(10%モジュラス)を求めた。
【0050】
[水蒸気透過係数の測定]
酸素透過係数の測定において作製したシートまたはフィルムを切り出し、GTRテック株式会社製水蒸気透過試験機を用いて、温度60℃、相対湿度100%で測定した。
【0051】
[ホース水分透過性の測定]
50℃オーブン中に5時間放置したホースに、そのホースの内容積の80%に相当する体積の乾燥剤(モレキュラーシーブス3A)を投入し、密閉する。そのホースを、50℃、相対湿度95%の雰囲気下に放置し、120時間毎に400時間まで、乾燥剤の重量を測定し、平衡状態での吸湿量を求めた。
【0052】
[曲げ力の測定]
長さ45cmのホース2本を、所定の曲率半径を有する円弧に沿って曲げ、曲げ力を測定した。曲率半径は、ホース外径の10倍(10D)から3倍の間である。得られた曲げ力と曲率半径との関係をプロットした曲線より、規定の半径(4D)のときの曲げ力を求めた。
曲げ力は、柔軟性の尺度であり、曲げ力の値が小さいほど柔軟性に優れ、曲げ力の値が大きいほど柔軟性に劣る。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂組成物は冷媒輸送ホースを製造するのに好適に利用することができる。