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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/032 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
F16L23/032
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020083199
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021179218
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲郎
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-171191(JP,A)
【文献】特開2002-267062(JP,A)
【文献】特開平11-093656(JP,A)
【文献】特開平08-021576(JP,A)
【文献】特表平07-504021(JP,A)
【文献】特開2013-190003(JP,A)
【文献】特開2004-044798(JP,A)
【文献】特開2018-044563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0046391(US,A1)
【文献】中国実用新案第205978898(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け面に当接するヘッドと、前記ヘッドを押圧するフランジ部と、前記フランジ部を貫通して前記取付け面に螺合する固定ボルトとを有して、前記ヘッド、前記フランジ部および前記固定ボルトは金属部材により形成されていて、
前記ヘッドは円筒状の基部と円筒状の挿入部とが連接された一体物であり、前記基部は前記挿入部よりも外径が大きく、前記基部および前記挿入部の平面視の中央部を流路が貫通していて、前記基部の前記挿入部との反連接側となる一方面が前記取付け面との接触面になっていて、前記基部の前記挿入部との連接側となる他方面が前記フランジ部の一方面との接触面になっていて、
前記フランジ部は前記基部よりも外径が大きくて前記基部よりも外側に突出する部分は前記取付け面とはすき間をあけて対向するとともに、この外側に突出する部分には前記固定ボルトが貫通していて、前記フランジ部の平面視の中央部には貫通穴が貫通していて、前記貫通穴には前記挿入部が挿入されて、
前記固定ボルトを前記取付け面に螺合して生じる締付け力によって前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に直接接触して前記ヘッドを押圧して前記基部の前記一方面が前記取付け面に直接接触した状態で前記ヘッドが固定され、前記ヘッドを貫通する前記流路と前記取付け面に開口する流路とが連通する状態になる継手構造において、
前記基部の前記他方面と前記フランジ部の前記一方面のうち、前記フランジ部の前記一方面のみが前記取付け面に向かって予め凸状に湾曲していて、前記締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって変形して前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に沿った状態で前記フランジ部が前記ヘッドを押圧していることを特徴とする継手構造。
【請求項2】
取付け面に当接するヘッドと、前記ヘッドを押圧するフランジ部と、前記フランジ部を貫通して前記取付け面に螺合する固定ボルトとを有して、前記ヘッド、前記フランジ部および前記固定ボルトは金属部材により形成されていて、
前記ヘッドは円筒状の基部と円筒状の挿入部とが連接された一体物であり、前記基部は前記挿入部よりも外径が大きく、前記基部および前記挿入部の平面視の中央部を流路が貫通していて、前記基部の前記挿入部との反連接側となる一方面が前記取付け面との接触面になっていて、前記基部の前記挿入部との連接側となる他方面が前記フランジ部の一方面との接触面になっていて、
前記フランジ部は前記基部よりも外径が大きくて前記基部よりも外側に突出する部分は前記取付け面とはすき間をあけて対向するとともに、この外側に突出する部分には前記固定ボルトが貫通していて、前記フランジ部の平面視の中央部には貫通穴が貫通していて、前記貫通穴には前記挿入部が挿入されて、
前記固定ボルトを前記取付け面に螺合して生じる締付け力によって前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に直接接触して前記ヘッドを押圧して前記基部の前記一方面が前記取付け面に直接接触した状態で前記ヘッドが固定され、前記ヘッドを貫通する前記流路と前記取付け面に開口する流路とが連通する状態になる継手構造において、
前記基部の前記他方面と前記フランジ部の前記一方面のうち、前記基部の前記他方面のみが前記取付け面とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲していて、
前記締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって変形して前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に沿った状態で前記フランジ部が前記ヘッドを押圧していることを特徴とする継手構造。
【請求項3】
前記締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって塑性変形している請求項1または2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記基部の前記他方面の外縁部分近傍が、前記フランジ部の前記一方面とすき間をあけて対向している請求項1~3のいずれかに記載の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造に関し、さらに詳しくは、管体を取付け面に固定するに際して、軽量化を図りつつ、ヘッドとフランジ部との接触面での局部的な過大な圧縮応力を是正して耐久性をより向上させることができる継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプやホース等の管体を対象機器等に固定する継手構造には様々な種類がある(例えば、特許文献1参照)。図7、8に例示するように、油圧配管などにはヘッド2とフランジ部3と固定ボルト4とを備えた継手構造1Pが使用されることがある。この継手構造1Pでは、管体の長手方向端部に位置するヘッド2は、対象機器等の取付け面5に当接する基部2Aと基部2Aに連接された挿入部2Bとを有している。挿入部2Bがフランジ部3に形成された貫通穴3aを貫通した状態で、ヘッド2はフランジ部3によって押圧されて取付け面5に固定され、ヘッド2に形成された流路2aと取付け面5に開口する流路5aとが連通する。固定ボルト4は、基部2Aよりも外側の位置でフランジ部3のボルト貫通穴3bを貫通して取付け面5に形成されたボルト穴5bに螺合することで、フランジ部3をヘッド2に押圧する。
【0003】
固定ボルト4を強く締めることで、基部2Aとフランジ部3の対向する接触面2S、3Sどうしがより強く接触して、ヘッド2はより強固に取付け面5に固定される。この時のフランジ部3の変形を抑制するために、フランジ部3は厚肉の剛構造にされているので継手構造1を軽量化するには不利になっている。また、フランジ部3は剛構造にしても固定ボルト4を締めることで若干湾曲するため、接触面2Sの外縁部近傍では局部的に圧縮応力が高くなり、この部分には損傷が生じ易い。それ故、継手構造の軽量化を図りつつ、局部的に生じる過大な圧縮応力を是正して耐久性を向上させるには改善の余地がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-163798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、管体を取付け面に固定するに際して、軽量化を図りつつ、ヘッドとフランジ部との接触面での局部的な過大な圧縮応力を是正して耐久性をより向上させることができる継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の継手構造は、取付け面に当接するヘッドと、前記ヘッドを押圧するフランジ部と、前記フランジ部を貫通して前記取付け面に螺合する固定ボルトとを有して、前記ヘッド、前記フランジ部および前記固定ボルトは金属部材により形成されていて、前記ヘッドは円筒状の基部と円筒状の挿入部とが連接された一体物であり、前記基部は前記挿入部よりも外径が大きく、前記基部および前記挿入部の平面視の中央部を流路が貫通していて、前記基部の前記挿入部との反連接側となる一方面が前記取付け面との接触面になっていて、前記基部の前記挿入部との連接側となる他方面が前記フランジ部の一方面との接触面になっていて、前記フランジ部は前記基部よりも外径が大きくて前記基部よりも外側に突出する部分は前記取付け面とはすき間をあけて対向するとともに、この外側に突出する部分には前記固定ボルトが貫通していて、前記フランジ部の平面視の中央部には貫通穴が貫通していて、前記貫通穴には前記挿入部が挿入されて、前記固定ボルトを前記取付け面に螺合して生じる締付け力によって前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に直接接触して前記ヘッドを押圧して前記基部の前記一方面が前記取付け面に直接接触した状態で前記ヘッドが固定され、前記ヘッドを貫通する前記流路と前記取付け面に開口する流路とが連通する状態になる継手構造において、前記基部の前記他方面と前記フランジ部の前記一方面のうち、前記フランジ部の前記一方面のみが前記取付け面に向かって予め凸状に湾曲していて、前記締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって変形して前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に沿った状態で前記フランジ部が前記ヘッドを押圧していることを特徴とすることを特徴とする。
【0007】
本発明の別の継手構造は、取付け面に当接するヘッドと、前記ヘッドを押圧するフランジ部と、前記フランジ部を貫通して前記取付け面に螺合する固定ボルトとを有して、前記ヘッド、前記フランジ部および前記固定ボルトは金属部材により形成されていて、前記ヘッドは円筒状の基部と円筒状の挿入部とが連接された一体物であり、前記基部は前記挿入部よりも外径が大きく、前記基部および前記挿入部の平面視の中央部を流路が貫通していて、前記基部の前記挿入部との反連接側となる一方面が前記取付け面との接触面になっていて、前記基部の前記挿入部との連接側となる他方面が前記フランジ部の一方面との接触面になっていて、前記フランジ部は前記基部よりも外径が大きくて前記基部よりも外側に突出する部分は前記取付け面とはすき間をあけて対向するとともに、この外側に突出する部分には前記固定ボルトが貫通していて、前記フランジ部の平面視の中央部には貫通穴が貫通していて、前記貫通穴には前記挿入部が挿入されて、前記固定ボルトを前記取付け面に螺合して生じる締付け力によって前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に直接接触して前記ヘッドを押圧して前記基部の前記一方面が前記取付け面に直接接触した状態で前記ヘッドが固定され、前記ヘッドを貫通する前記流路と前記取付け面に開口する流路とが連通する状態になる継手構造において、前記基部の前記他方面と前記フランジ部の前記一方面のうち、前記基部の前記他方面のみが前記取付け面とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲していて、前記締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって変形して前記フランジ部の前記一方面における前記基部の前記他方面に対向する部分が前記基部の前記他方面に沿った状態で前記フランジ部が前記ヘッドを押圧していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記固定ボルトを前記取付け面に螺合して生じる締付け力によって前記フランジ部が前記取付け面に向かって積極的に変形する柔構造にしている。そのため、フランジ部を剛構造にしている従来に比して、軽量化するには有利な継手構造になる。そして、前記フランジ部の前記接触面が前記取付け面に向かって予め凸状に湾曲している仕様、または、前記ヘッドの前記接触面が前記取付け面とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲している仕様にして、前記締付け力によって前記フランジ部の前記接触面が前記ヘッドの前記接触面に沿った状態で前記フランジ部が前記ヘッドを押圧しているので、互いの接触面での圧縮応力が均等化され易くなっている。その結果、互いの接触面では局部的な過大な圧縮応力が是正されて、継手構造の耐久性を向上させるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の継手構造を側面視で例示する説明図である。
図2図1の継手構造を平面視で例示する説明図である。
図3図1の継手構造を構築する工程を側面視で例示する説明図である。
図4】固定ボルトの締付け量と継手構造に付与される締付け力(軸力)との関係を例示するグラフ図である。
図5】継手構造の別の実施形態を側面視で例示する説明図である。
図6図5の継手構造を構築する工程を側面視で例示する説明図である。
図7】従来の継手構造を側面視で例示する説明図である。
図8図7の継手構造を構築する工程を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の継手構造を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図2に例示する継手構造1の実施形態は、パイプやホース等の管体の長手方向一端部に配置されて、管体を対象機器などの取付け面5に固定する。この継手構造1は金属部材で構成されていて、ヘッド2と、フランジ部3と、固定ボルト4とを有している。
【0012】
ヘッド2は、取付け面5に当接する基部2Aと、基部2Aに連接された挿入部2Bとを有している。円筒状の基部2Aは円筒状の挿入部2Bよりも外径が大きく、基部2Aおよび挿入部2Bの平面視の中央部を流路2aが貫通している。基部2Aの一方面が取付け面5に当接し、他方面がフランジ部3との接触面2Sになっている。
【0013】
円筒状のフランジ部3は、基部2Aよりも外径が大きく、平面視の中央部に貫通穴3aが貫通している。この貫通穴3aに挿入部2Bが挿入されて、フランジ部3は基部2Aを覆った状態になっている。貫通穴3aの直径は、挿入部2bの外径よりも若干大きい程度である。
【0014】
基部2Aとフランジ部3とは互いの対向する接触面2S、3Sで接触している。図3に例示するように、ヘッド2およびフランジ部3に締付け力Fが作用していない時点での当初の接触面2Sは単純な平坦面であるが、当初の接触面3Sは取付け面5に向かって予め凸状に湾曲している。
【0015】
フランジ部3の基部2Aよりも外側の位置には、複数のボルト貫通穴3bが周方向に間隔をあけて形成されている。この実施形態では4個のボルト貫通穴3bが形成されているが、ボルト貫通穴3bは複数であればよく3個以上がより好ましく、周方向に等間隔で配置される。
【0016】
固定ボルト4は、それぞれのボルト貫通穴3aに挿入されてフランジ部3を貫通して取付け面5に形成されているボルト穴5aに螺合している。この固定ボルト4をボルト穴5aに螺合して生じる締付け力Fによってフランジ部3を基部2Aに押圧している。これに伴い、ヘッド2は取付け面5に押圧されて取付け面5に固定されている。そして、ヘッド2を貫通する流路2aと取付け面5に開口する流路5aとが連通している。
【0017】
この継手構造1の構築工程の一例を説明すると、図3に示すように流路2a、5aの位置を一致させてヘッド2を取付け面5に位置決めする。次いで、貫通穴3aに挿入部2Bを挿入させてフランジ部3を配置して、それぞれのボルト貫通穴3bに固定ボルト4を挿入する。それぞれの固定ボルト4をボルト穴5bに螺合させてフランジ部3に締付け力Fを付与する。
【0018】
この締付け力Fによってフランジ部3が取付け面5に向かって凹状になるように弾性変形または塑性変形している。これに伴い、図1に例示するように、予め湾曲している接触面3Sが、ヘッド2の接触面2Sに沿った状態になって接触面2Sに接触して、フランジ部3が基部2Aを押圧することで継手構造1が取付け面5に固定されている。
【0019】
この継手構造1は、上述した締付け力Fによってフランジ部3を取付け面5に向かって積極的に変形させる柔構造になっている。そのため、従来のようにフランジ部3を厚肉にして変形し難くした剛構造に比してフランジ部3が薄くなる。したがって、軽量化するには有利な継手構造1になっている。
【0020】
そして、接触面3Sが取付け面5に向かって予め凸状に湾曲していて、締付け力Fによってフランジ部3を変形させて接触面3Sを対向する接触面2Sに沿った状態しているので、接触面2sの外縁部近傍に圧縮応力が集中することがなく、互いの接触面2S、3Sでの圧縮応力が均等化され易くなっている。即ち、互いの接触面2S、3Sでは局部的な過大な圧縮応力が是正されて、過大な圧縮応力が生じ難くなっている。その結果、過大な圧縮応力に起因するヘッド2、フランジ部3の損傷が回避され、継手構造1の耐久性を向上させるには有利になっている。
【0021】
図4に固定ボルト4の締付け量Tと締付け力Fとの関係を例示する。固定ボルト4の螺合深さをより大きくして締付け量Tを増大させるに連れて、継手構造1(フランジ部3)に付与される締付け力Fの大きさも増大する。ここで、固定ボルト4の締付け量Tに応じたフランジ部3の変形は、弾性域(弾性変形)と塑性域(塑性変形)とに区分される。弾性域と塑性域とでは同じ締付け量tの場合、生じる締付け力Fの大きさはそれぞれf1、f2となる(f1>f2)。即ち、同じ締付け量tであれば、フランジ部3を弾性変形させる場合の方が、塑性変形させる場合よりも締付け力Fの変化量が大きい。
【0022】
換言すると、所定の締付け力Fに維持、管理するには、フランジ部3を塑性変形させる場合の方が、締付け力Fは締付け量Tの変化に影響を受け難いので有利になる。したがって、この継手構造1では、締付け力Fによってフランジ部3が取付け面5に向かって塑性変形させて、接触面3Sが接触面2Sに沿った状態でフランジ部3がヘッド2を押圧している構成にするとよい。
【0023】
また、この実施形態では、接触面2Sの全範囲が対向する接触面3Sに接触しているが、接触面2Sの外縁部分近傍が、接触面3Sとすき間をあけて対向している構成にすることもできる。即ち、接触面2Sの外縁部分近傍以外の範囲だけを対向する接触面3Sに接触させる。例えば、接触面2Sの外縁から半径方向内側に1mm~3mm程度の範囲を外縁部分近傍として、接触面3Sと1mm程度のすき間をあけて対向させる。
【0024】
このようにすき間を設けて、フランジ部3が弾性変形した場合に、接触面2Sの外縁部分近傍と対向する接触面3Sが、接触面2Sの外縁部分近傍と接触するようにする。この構成にすると、ヘッド2や固定ボルト4などの部材間に線膨張係数の違いがあって温度変化によって部材の熱変形量に差異がある場合にも、接触面2Sの外縁部分近傍に過大な圧縮応力が生じることを回避できるメリットがある。
【0025】
図5図6に例示する継手構造1の別の実施形態では、ヘッド2とフランジ部3の対向する互いの接触面2S、3Sのうち、接触面2Sが取付け面5とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲している。即ち、図6に例示するように、ヘッド2およびフランジ部3に締付け力Fが作用していない時点での当初の接触面3Sは単純な平坦面であるが、当初の接触面2Sは取付け面5とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲している。
【0026】
そして、締付け力Fによってフランジ部3が取付け面5に向かって凹状になるように弾性変形または塑性変形している。これに伴い、図5に例示するように、接触面3Sが、予め湾曲している接触面2Sに沿った状態になって接触面2Sに接触して、フランジ部3が基部2Aを押圧することで継手構造1が取付け面5に固定されている。その他の構成は先の実施形態と同じである。
【0027】
この実施形態も先の実施形態と同様、上述した締付け力Fによってフランジ部3を取付け面5に向かって積極的に変形させる柔構造になっている。そのため、従来のようにフランジ部3を厚肉にして変形し難くした剛構造に比してフランジ部3が薄くなる。したがって、軽量化するには有利な継手構造1になっている。
【0028】
また、接触面2Sが取付け面5とは反対方向に向かって予め凸状に湾曲していて、締付け力Fによってフランジ部3を変形させて接触面3Sを対向する接触面2Sに沿った状態しているので、互いの接触面2S、3Sでの圧縮応力が均等化され易くなっている。そのため、互いの接触面2S、3Sでは局部的な過大な圧縮応力が是正されて、過大な圧縮応力が生じ難くなっている。その結果、過大な圧縮応力に起因するヘッド2、フランジ部3の損傷が回避され、継手構造1の耐久性を向上させるには有利になっている。
【0029】
この実施形態においても、先の実施形態で説明した種々のアレンジを適用することができる。尚、本発明において接触面2S、3Sを予め湾曲させる程度は、継手構造1を取付け面5に確実に固定する締付け力Fがフランジ部3に付与された際に、接触面2S、3Sどうしに生じる圧縮応力が許容範囲になるように、事前テストやシミュレーション解析などの結果に基づいて決定される。
【符号の説明】
【0030】
1 継手構造
1P 従来の継手構造
2 ヘッド
2A 基部
2B 挿入部
2a 流路
2S 接触面
3 フランジ部
3a 貫通穴
3b ボルト貫通穴
3S 接触面
4 固定ボルト
5 取付け面
5a 流路
5b ボルト穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8