(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】産業用制御装置の出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
G05B19/05 L
(21)【出願番号】P 2020193141
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴昭
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の負荷に対してアナログの電圧または電流を出力する産業用制御装置の出力モジュールであって、
前記負荷の高電位側端子に接続される第1接続端子と、
前記負荷の低電位側端子に接続される第2接続端子と、
外部電源が与えられる電源端子と、
制御部と、
前記外部電源または前記外部電源に基づいて生成される電源の供給を受けて動作するものであり且つ前記制御部から指示された値のアナログの電圧または電流を前記第1接続端子に向けて出力する出力部と、
前記第2接続端子とグランドとの間を開閉するものであり且つ前記制御部により開閉が制御される第1遮断スイッチと、
を備え
、
前記制御部は、
前記第1接続端子が電源に短絡する異常である天絡異常を検出する異常検出部と、
前記第1遮断スイッチの開閉を制御する開閉制御部と、
を備え、
前記開閉制御部は、
前記異常検出部により前記天絡異常が検出されると前記第1遮断スイッチを開放するように制御する産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項2】
さらに、前記出力部に対する電源供給の経路を開閉するものであり且つ前記制御部により開閉が制御される第2遮断スイッチを備える請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常を検出
し、
前記開閉制御部は、
前記第2遮断スイッチの開閉を制御し、
前記異常検出部により前記地絡異常が検出されると前記第2遮断スイッチを開放するように制御する請求項2に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項4】
さらに、前記出力部の出力端子から前記第1接続端子へと至る経路を開閉するものであり且つ前記制御部により開閉が制御される第3遮断スイッチを備える請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項5】
前記異常検出部は、前記第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常を検出
し、
前記開閉制御部は、
前記第3遮断スイッチの開閉を制御し、
前記異常検出部により前記地絡異常が検出されると前記第3遮断スイッチを開放するように制御する請求項4に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の負荷に対してアナログの電圧または電流を出力する産業用制御装置の出力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、例えばプログラマブルロジックコントローラなどの産業用制御装置では、その産業用制御装置の動作全般を制御するCPUモジュールから与えられる指令に基づいて外部の負荷に対してアナログの電圧または電流を出力するアナログの出力モジュールが設けられている。なお、本明細書では、プログラマブルロジックコントローラのことをPLCと省略することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PLCのアナログの出力モジュールでは、機能安全の観点から、自身が故障していることを自己診断し、異常検出時に出力を安全状態にする必要がある。そこで、従来では、指示された値の電圧または電流を出力する出力部として機能するD/A変換器と負荷の高電位側端子に接続される接続端子との間を開閉する遮断スイッチを設け、その遮断スイッチを異常検出時にオフすることで出力を安全状態にするようになっている。なお、本明細書では、D/A変換器のことをDACと省略することがある。
【0005】
しかし、上記構成では、配線短絡などが原因となって接続端子が外部電源などの電源に短絡する異常である天絡異常が発生した場合には、遮断スイッチをオフにしたとしても負荷に対する電源供給が遮断されずに、負荷に電流が流れてしまう。つまり、上記構成では、天絡異常が発生した場合、負荷をオフすること、すなわち出力を安全状態にすることができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷に接続される接続端子が電源に短絡する異常が生じた場合に出力を安全状態にすることができる産業用制御装置の出力モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、外部の負荷に対してアナログの電圧または電流を出力するものであり、負荷の高電位側端子に接続される第1接続端子、負荷の低電位側端子に接続される第2接続端子、外部電源が与えられる電源端子、制御部、出力部および第1遮断スイッチを備える。出力部は、外部電源または外部電源に基づいて生成される電源の供給を受けて動作するものであり且つ制御部から指示された値のアナログの電圧または電流を第1接続端子に向けて出力する。
【0008】
第1遮断スイッチは、第2接続端子とグランドとの間を開閉するものであり且つ制御部により開閉が制御されるスイッチである。制御部は、第1接続端子が電源に短絡する異常である天絡異常を検出する異常検出部と、第1遮断スイッチの開閉を制御する開閉制御部と、を備える。開閉制御部は、異常検出部により天絡異常が検出されると第1遮断スイッチを開放するように制御する。上記構成では、配線短絡などが原因となって第1接続端子が外部電源などの電源に短絡する異常である天絡異常が発生した場合、制御部が第1遮断スイッチを開放するように制御することにより負荷に対する電源供給を遮断することができる。そのため、上記構成によれば、天絡異常が発生した場合に、負荷をオフすること、つまり出力を確実に安全状態にすることができる。
【0009】
請求項1に記載の構成では、配線短絡などが原因となって第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常が発生した場合には、第1遮断スイッチを開放したとしても負荷に対する電源供給が遮断されずに、負荷に電流が流れるおそれがある。そこで、請求項2に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、さらに、出力部に対する電源供給の経路を開閉するものであり且つ制御部により開閉が制御される第2遮断スイッチを備える。このような構成によれば、地絡異常が発生した場合でも、制御部が第2遮断スイッチを開放するように制御することにより、出力部の動作が停止されるため、負荷に対する電圧または電流の出力を遮断すること、つまり出力を確実に安全状態にすることができる。
【0010】
上記構成および従来技術の構成において、出力部としては、制御部から指示された値の電圧または電流を出力するため、その出力をフィードバック制御する構成を採用することが想定される。また、上記構成の第1遮断スイッチ、第2遮断スイッチおよび従来技術の構成の遮断スイッチとしては、FETなどの半導体スイッチング素子を採用することが想定される。このような点を踏まえると、上記構成によれば、従来技術の構成に対し、次のようなメリットがある。
【0011】
すなわち、従来技術の構成では、出力のフィードバック制御のために遮断スイッチの出力部側の端子の電圧または電流をモニタすることになるが、遮断スイッチのオン抵抗などの影響によりモニタした電圧または電流の値よりも実際に負荷に与えられる電圧または電流の値が低下することになり、その出力を精度良く制御することができない可能性がある。これに対し、上記構成では、第1遮断スイッチおよび第2遮断スイッチのいずれについても、出力のフィードバック制御のための電圧または電流のモニタ経路には介在していない。そのため、上記構成によれば、第1遮断スイッチおよび第2遮断スイッチのオン抵抗などの影響を受けることなく、負荷に与えられる電圧または電流を正確にモニタすることが可能となり、その結果、その出力を精度良く制御することができる。
【0012】
請求項3に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、異常検出部は、第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常を検出し、開閉制御部は、第2遮断スイッチの開閉を制御する。開閉制御部は、異常検出部により地絡異常が検出されると第2遮断スイッチを開放するように制御する。このような構成および制御によれば、天絡異常および地絡異常のいずれが生じた場合であっても、その異常を検出するとともに、異常検出時に出力を確実に安全状態にすることができる。
【0013】
請求項1に記載の構成では、配線短絡などが原因となって第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常が発生した場合には、第1遮断スイッチを開放したとしても負荷に対する電源供給が遮断されずに、負荷に電流が流れるおそれがある。そこで、請求項4に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、さらに、出力部の出力端子から第1接続端子へと至る経路を開閉するものであり且つ制御部により開閉が制御される第3遮断スイッチを備える。このような構成によれば、地絡異常が発生した場合でも、制御部が第3遮断スイッチを開放するように制御することにより、負荷に対する電圧または電流の出力を遮断すること、つまり出力を確実に安全状態にすることができる。
【0014】
請求項5に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、異常検出部は、第2接続端子がグランドに短絡する異常である地絡異常を検出し、開閉制御部は、第3遮断スイッチの開閉を制御する。開閉制御部は、異常検出部により地絡異常が検出されると第3遮断スイッチを開放するように制御する。このような構成および制御によれば、天絡異常および地絡異常のいずれが生じた場合であっても、その異常を検出するとともに、異常検出時に出力を確実に安全状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る天絡異常が発生した状態のPLCの構成を模式的に示す図
【
図3】第2実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図4】第2実施形態に係る地絡異常が発生した状態のPLCの構成を模式的に示す図
【
図5】第3実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図6】第3実施形態に係る地絡異常が発生した状態のPLCの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1および
図2を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、産業用制御装置であるPLC1は、その動作全般を制御するCPUモジュール2、出力モジュール3、図示しない入力モジュールなどを備えている。PLC1は、例えば工場などに設けられた設備4におけるソレノイドバルブ5の動作を制御する。CPUモジュール2および出力モジュール3を含めたPLC1を構成する各モジュールは、バス通信ラインを介して、それぞれの間で通信可能に構成されている。
【0018】
出力モジュール3は、外部の負荷であるソレノイドバルブ5が接続される接続端子P1、P2、例えば+24Vの電圧を有する外部電源が与えられる電源端子P3、電源回路6、マイクロコンピュータ7、DAC8、遮断スイッチ9などを備えている。なお、本明細書では、マイクロコンピュータのことをマイコンと省略することがある。出力モジュール3は、CPUモジュール2から与えられる指令に基づいて、外部の負荷であるソレノイドバルブ5に対してアナログの電圧を出力するアナログの出力モジュールである。
【0019】
ソレノイドバルブ5は、出力モジュール3の接続端子P1、P2の間に接続されたコイル5aと、コイル5aに流れる電流に応じて開閉されるバルブ5bと、を備えている。この場合、接続端子P1は、負荷であるソレノイドバルブ5のコイル5aの高電位側端子に接続される第1接続端子として機能し、接続端子P2は、負荷であるソレノイドバルブ5のコイル5aの低電位側端子に接続される第2接続端子として機能する。
【0020】
電源回路6は、電源端子P3を介して外部電源の供給を受け、その外部電源に基づいて、出力モジュール3の内部の各構成において用いられる内部電源を生成する。内部電源は、外部電源を降圧して生成されるものであり、その電圧値は例えば+5Vとなっている。マイコン7は、内部電源の供給を受けて動作するものであり、出力モジュール3の動作全般を制御する。
【0021】
マイコン7は、CPUモジュール2から与えられる指令に基づいて、DAC8に対し、出力する電圧の指示値を表す指示信号Saを出力する。マイコン7は、DAC8から指示通りの電圧が出力されているかどうかを監視する機能を有する。そのため、マイコン7は、DAC8の出力端子と接続端子P1との間を接続する信号線L1の電圧をモニタするようになっている。この場合、マイコン7は、制御部として機能する。
【0022】
DAC8は、アナログの電圧を出力する電圧出力型のDACである。DAC8は、内部電源の供給を受けて動作するものであり、マイコン7から指示信号Saにより指示された値のアナログの電圧を接続端子P1に向けて出力する。この場合、DAC8は、出力部として機能する。DAC9は、信号線L1の電圧をモニタし、そのモニタした電圧の値がマイコン7から指示された値に一致するように、出力する電圧をフィードバック制御する構成となっている。
【0023】
遮断スイッチ9は、例えばFETなどの半導体スイッチング素子であり、接続端子P2と、回路の基準電位であるグランドとの間に接続されている。遮断スイッチ9は、マイコン7から与えられる2値の開閉信号Sbに基づいて開閉される。具体的には、遮断スイッチ9は、開閉信号Sbが開放を指令するレベルであるときに開放、つまりオフされるとともに、開閉信号Sbが閉鎖を指令するレベルであるときに閉鎖、つまりオンされる。本実施形態では、開閉信号Sbは、ロウレベルのときに開放を指令するとともに、ハイレベルのときに閉鎖を指令するようになっている。
【0024】
このように、遮断スイッチ9は、接続端子P2とグランドとの間を開閉するものであり且つマイコン7により開閉が制御される第1遮断スイッチとして機能する。マイコン7は、異常検出部11および開閉制御部12を備えている。異常検出部11および開閉制御部12は、マイコン7のCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、異常検出部11および開閉制御部12は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0025】
異常検出部11は、接続端子P1が外部電源などの電源に短絡する異常である天絡異常を検出する。このような天絡異常は、例えば、
図2に示すように、接続端子P1と電源端子P3との間が配線を介して短絡する配線短絡などが原因で生じる。異常検出部11は、信号線L1の電圧などに基づいて、次のようにして天絡異常を検出することができる。すなわち、異常検出部11は、信号線L1の電圧がDAC8の出力の範囲よりも高い電圧になっている場合に天絡異常が発生したと判断することができる。
【0026】
開閉制御部12は、遮断スイッチ9の開閉を制御するものであり、前述した開閉信号Sbを生成する。開閉制御部12は、天絡異常を含む各種の異常が生じていない通常時、ハイレベルの開閉信号Sbを生成して出力する。つまり、開閉制御部12は、通常時、遮断スイッチ9を閉鎖するように制御する。これにより、通常時、遮断スイッチ9は、閉鎖された状態となる。また、開閉制御部12は、異常検出部11により天絡異常が検出されると、ロウレベルの開閉信号Sbを生成して出力する。つまり、開閉制御部12は、天絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ9を開放するように制御する。これにより、天絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ9は、開放された状態となる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の出力モジュール3は、負荷であるソレノイドバルブ5のコイル5aの低電位側端子に接続される接続端子P2とグランドとの間を開閉する遮断スイッチ9を備えている。そして、出力モジュール3の動作全般を制御するマイコン7は、天絡異常を検出することができる異常検出部11および異常検出部11により天絡異常が検出されると遮断スイッチ9を開放するように制御する開閉制御部12を備えている。このような構成によれば、配線短絡などが原因となって天絡異常が発生した場合、その天絡異常を検出するとともに、異常検出時にコイル5aに対する通電を遮断すること、つまり出力を安全状態にすることができる。
【0028】
また、本実施形態の構成によれば、従来技術の構成に対し、次のようなメリットがある。すなわち、従来技術の構成では、出力のフィードバック制御のために遮断スイッチの出力部側の端子の電圧をモニタすることになるが、遮断スイッチのオン抵抗などの影響によりモニタした電圧の値よりも実際に負荷に与えられる電圧の値が低下することになり、その出力を精度良く制御することができない可能性がある。これに対し、本実施形態の構成では、遮断スイッチ9は、出力のフィードバック制御のための電圧のモニタ経路に介在していない。そのため、本実施形態の構成によれば、遮断スイッチ9のオン抵抗などの影響を受けることなく、ソレノイドバルブ5に与えられる電圧を正確にモニタすることが可能となり、その結果、その出力を精度良く制御することができる。
【0029】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図3および
図4を参照して説明する。
図3に示すように、本実施形態のPLC21の出力モジュール22は、第1実施形態の出力モジュール3に対し、遮断スイッチ23が追加されている点、マイコン7に代えてマイコン24を備えている点などが異なっている。遮断スイッチ23は、例えばFETなどの半導体スイッチング素子であり、電源回路6からDAC8に対する電源供給の経路に直列に介在している。
【0030】
遮断スイッチ23は、マイコン24から与えられる2値の開閉信号Scに基づいて開閉される。具体的には、遮断スイッチ23は、開閉信号Scが開放を指令するレベルであるときに開放、つまりオフされるとともに、開閉信号Scが閉鎖を指令するレベルであるときに閉鎖、つまりオンされる。本実施形態では、開閉信号Scは、ロウレベルのときに開放を指令するとともに、ハイレベルのときに閉鎖を指令するようになっている。このように、遮断スイッチ23は、DAC8に対する電源供給の経路を開閉するものであり且つマイコン24により開閉が制御される第2遮断スイッチとして機能する。
【0031】
マイコン24は、マイコン7と同様、制御部として機能するものであり、異常検出部25および開閉制御部26を備えている。異常検出部25および開閉制御部26は、異常検出部11および開閉制御部12と同様、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することができる。異常検出部25は、異常検出部11と同様の機能に加え、接続端子P2がグランドに短絡する異常である地絡異常を検出する機能を有している。
【0032】
このような地絡異常は、例えば、
図4に示すように、接続端子P2とグランドとの間が配線を介して短絡する配線短絡などが原因で生じる。この場合、マイコン24は、地絡異常の検出を可能にするため、DAC8の信号線L1に流れる電流を検出するようになっている。異常検出部25は、信号線L1に流れる電流などに基づいて、次のようにして地絡異常を検出することができる。すなわち、異常検出部25は、遮断スイッチ9を開放するように制御されたにもかかわらず、信号線L1に電流が流れていることが確認された場合に地絡異常が発生したと判断することができる。なお、地絡異常の検出のために遮断スイッチ9を開放する時間は、通常の動作に影響の無い範囲の比較的短い時間となっている。
【0033】
開閉制御部26は、開閉制御部12と同様の機能に加え、遮断スイッチ23の開閉を制御する機能を備えており、前述した開閉信号Scを生成する。開閉制御部26は、地絡異常を含む各種の異常が生じていない通常時、ハイレベルの開閉信号Scを生成して出力する。つまり、開閉制御部26は、通常時、遮断スイッチ23を閉鎖するように制御する。これにより、通常時、遮断スイッチ23は、閉鎖された状態となる。また、開閉制御部26は、異常検出部25により地絡異常が検出されると、ロウレベルの開閉信号Scを生成して出力する。つまり、開閉制御部26は、地絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ23を開放するように制御する。これにより、地絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ23は、開放された状態となる。
【0034】
第1実施形態の構成では、接続端子P2がグランドに短絡する異常である地絡異常が発生した場合には、遮断スイッチ9をオフにしたとしてもソレノイドバルブ5のコイル5aに対する通電が遮断されずに、コイル5aに電流が流れるおそれがある。そこで、本実施形態の出力モジュール22は、DAC8に対する電源供給の経路を開閉する遮断スイッチ23を備えている。そして、出力モジュール22の動作全般を制御するマイコン24は、地絡異常を検出する異常検出部25および異常検出部25により地絡異常が検出されると遮断スイッチ23を開放するように制御する開閉制御部26を備えている。
【0035】
このような構成によれば、配線短絡などが原因となって地絡異常が発生した場合、その地絡異常を検出することができ、また、異常検出時には、遮断スイッチ23が開放されることからDAC8の動作が停止され、それによりコイル5aに対する通電を遮断すること、つまり出力を安全状態にすることができる。本実施形態の構成では、遮断スイッチ9、23のいずれについても、出力のフィードバック制御のための電圧のモニタ経路には介在していない。そのため、本実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成と同様、遮断スイッチ9、23のオン抵抗などの影響を受けることなく、ソレノイドバルブ5に与えられる電圧を正確にモニタすることが可能となり、その結果、その出力を精度良く制御することができる。
【0036】
本実施形態の異常検出部25は、第1実施形態の異常検出部11と同様の機能を備えている。つまり、異常検出部25は、天絡異常および地絡異常の双方を検出することができる。また、本実施形態の開閉制御部26は、第1実施形態の開閉制御部12と同様の機能を備えている。つまり、開閉制御部26は、異常検出部25により天絡異常が検出されると遮断スイッチ9を開放するように制御するとともに、異常検出部25により地絡異常が検出されると遮断スイッチ23を開放するように制御する。このような本実施形態の構成および制御によれば、天絡異常および地絡異常のいずれが生じた場合であっても、その異常を検出するとともに、異常検出時に出力を確実に安全状態にすることができる。
【0037】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図5および
図6を参照して説明する。
図5に示すように、本実施形態のPLC31の出力モジュール32は、第1実施形態の出力モジュール3に対し、遮断スイッチ33が追加されている点、マイコン7に代えてマイコン34を備えている点などが異なっている。遮断スイッチ33は、例えばFETなどの半導体スイッチング素子であり、DAC8の出力端子から接続端子P1へと至る経路、つまり信号線L1に直列に介在している。
【0038】
遮断スイッチ33は、マイコン34から与えられる2値の開閉信号Sdに基づいて開閉される。具体的には、遮断スイッチ33は、開閉信号Sdが開放を指令するレベルであるときに開放、つまりオフされるとともに、開閉信号Sdが閉鎖を指令するレベルであるときに閉鎖、つまりオンされる。本実施形態では、開閉信号Sdは、ロウレベルのときに開放を指令するとともに、ハイレベルのときに閉鎖を指令するようになっている。このように、遮断スイッチ33は、DAC8の出力端子から接続端子P1へと至る経路を開閉するものであり且つマイコン34により開閉が制御される第3遮断スイッチとして機能する。
【0039】
マイコン34は、マイコン7と同様、制御部として機能するものであり、異常検出部35および開閉制御部36を備えている。異常検出部35および開閉制御部36は、異常検出部11および開閉制御部12と同様、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することができる。異常検出部35は、異常検出部11と同様の機能に加え、第2実施形態の異常検出部25と同様の機能、つまり地絡異常を検出する機能を有している。
【0040】
このような地絡異常は、例えば、
図6に示すように、接続端子P2とグランドとの間が配線を介して短絡する配線短絡などが原因で生じる。この場合、マイコン34は、地絡異常の検出を可能にするため、第2実施形態のマイコン24と同様、DAC8の信号線L1に流れる電流を検出するようになっている。異常検出部35は、第2実施形態の異常検出部25と同様、信号線L1に流れる電流などに基づいて地絡異常を検出することができる。
【0041】
開閉制御部36は、開閉制御部12と同様の機能に加え、遮断スイッチ33の開閉を制御する機能を備えており、前述した開閉信号Sdを生成する。開閉制御部36は、地絡異常を含む各種の異常が生じていない通常時、ハイレベルの開閉信号Sdを生成して出力する。つまり、開閉制御部36は、通常時、遮断スイッチ33を閉鎖するように制御する。これにより、通常時、遮断スイッチ33は、閉鎖された状態となる。また、開閉制御部36は、異常検出部35により地絡異常が検出されると、ロウレベルの開閉信号Sdを生成して出力する。つまり、開閉制御部36は、地絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ33を開放するように制御する。これにより、地絡異常が検出された異常検出時、遮断スイッチ33は、開放された状態となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の出力モジュール32は、DAC8の出力端子から接続端子P1へと至る経路を開閉する遮断スイッチ33を備えている。そして、出力モジュール32の動作全般を制御するマイコン34は、地絡異常を検出する異常検出部35および異常検出部35により地絡異常が検出されると遮断スイッチ33を開放するように制御する開閉制御部36を備えている。このような構成によれば、配線短絡などが原因となって地絡異常が発生した場合、その地絡異常を検出するとともに、異常検出時にコイル5aに対する通電を遮断すること、つまり出力を安全状態にすることができる。
【0043】
本実施形態の異常検出部35は、第1実施形態の異常検出部11と同様の機能を備えている。つまり、異常検出部35は、天絡異常および地絡異常の双方を検出することができる。また、本実施形態の開閉制御部36は、第1実施形態の開閉制御部12と同様の機能を備えている。つまり、開閉制御部36は、異常検出部35により天絡異常が検出されると遮断スイッチ9を開放するように制御するとともに、異常検出部35により地絡異常が検出されると遮断スイッチ33を開放するように制御する。このような本実施形態の構成および制御によれば、天絡異常および地絡異常のいずれが生じた場合であっても、その異常を検出するとともに、異常検出時に出力を確実に安全状態にすることができる。
【0044】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0045】
本発明は、外部の負荷に対してアナログの電圧を出力するPLC1の出力モジュール3などに限らず、外部の負荷に対してアナログの電圧または電流を出力する産業用制御装置の出力モジュール全般に適用することができる。なお、外部の負荷に対してアナログの電流を出力する産業用制御装置の出力モジュールの場合、出力部としては、電圧出力型のDAC8に代えて、アナログの電流を出力する電流出力型のDACなどを採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、21、31…PLC、3、22、32…出力モジュール、5…ソレノイドバルブ、5a…コイル、7、24、34…マイコン、8…DAC、9…遮断スイッチ、11、25、35…異常検出部、12、26、36…開閉制御部、23…遮断スイッチ、33…遮断スイッチ。