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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】治水構造物用補助部材
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/10 20060101AFI20240731BHJP
   E02B 7/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E02B3/10
E02B7/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020198814
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086668
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-001536(JP,Y1)
【文献】特開2019-143291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/10
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製中空二重構造の一方側の壁部に、屈曲面を有して側面視L字状に形成される水受面が設けられ
前記樹脂製中空二重構造の他方側の壁部に設置面が設けられ、前記設置面は屈曲面を有して側面視L字状に形成されると共に凹溝部を有し、前記樹脂製中空二重構造の内部には前記凹溝部の底板と前記一方側の壁部とを接続するリブが設けられることを特徴とする治水構造物用補助部材。
【請求項2】
前記屈曲面は、鈍角に形成されることを特徴とする請求項1に記載の治水構造物用補助部材。
【請求項3】
前記水受面は平滑に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の治水構造物用補助部材。
【請求項4】
さらに、連結凸部と、前記連結凸部と係合する連結凹部を備えて連結可能に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の治水構造物用補助部材。
【請求項5】
前記連結凹部は、前記水受面の背面側に形成され、前記連結凸部は前記連結凹部の背面側に配置されて前記連結凸部と前記連結凹部が係合することを特徴とする請求項4に記載の治水構造物用補助部材。
【請求項6】
線対称に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れかに記載の治水構造物用補助部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤防やダム等の治水構造物に取り付けて使用される補助部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、堤防等を嵩上げして水害を低減するための治水構造物用補助部材が開示されている。特許文献1には、堤防を幅方向で挟み込むようにして堤防の上に配置することができる治水構造物用補助部材が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-122532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
堤防等の治水構造物は、幅方向の両側に法面を有することが多く、また、堤防等の幅寸法は、堤防等が設けられる河川等によって異なる。従って、堤防を挟み込むようにして設置する場合には、設置する堤防等に応じた大きさの補助部材を個別に作る必要があり、汎用性が乏しいものとなる。
【0005】
本発明は、汎用性を有する治水構造物用補助部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の治水構造物用補助部材は、樹脂製中空二重構造の一方側の壁部に、屈曲面を有して側面視L字状に形成される水受面が設けられ、前記樹脂製中空二重構造の他方側の壁部に設置面が設けられ、前記設置面は屈曲面を有して側面視L字状に形成されると共に凹溝部を有し、前記樹脂製中空二重構造の内部には前記凹溝部の底板と前記一方側の壁部とを接続するリブが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汎用性を有する治水構造物用補助部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材を一方側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る治水構造用物補助部材を他方側から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材の図1のIII-III断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材の図3のIV-IV断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材のリブ及び凹溝部を形成する工程を示す、図1のIII-III端面に相当する要部模式図であり、(a)は型締め状態を示し、(b)はスライドコアを移動させた状態を示し、(c)はスライドコアを金型内に没入させた状態を示し、(d)エアブローを行った後の状態を示す。
図6】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材を複数連結して使用した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る治水構造物用補助部材を河川の堤防に取り付けた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1図4に示す治水構造物用補助部材10は、二重の壁部21,22間を中空に形成した樹脂製中空二重構造20を有する。治水構造物用補助部材10は、熱可塑性樹脂のブロー成形により線対称に形成される。熱可塑性樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂あるいは変性PPOなどのエンジニアリングプラスチックおよびこれらのブレンド体を用いることができる。
【0010】
治水構造物用補助部材10は、側面視において略L字の板状に形成されて、略L字形の側面に垂直な方向(図4の紙面に垂直な方向)に長尺状に形成される。治水構造物用補助部材10は、図6に示すように、河川等の堤防の法面に設置して使用される。
【0011】
図1に示すように、樹脂製中空二重構造20の一方側の壁部21の外表面(換言すれば、側面視略L字状の内側の面又は正面側)には、水受面11が設けられる。水受面11は、略長矩形状の2つの水受本体面11aが屈曲面11bで接続されて、側面視略L字状に形成される。水受本体面11a間の角度(すなわち、屈曲面11bの角度)は、鈍角に設定される。屈曲面11bは、湾曲して形成される。水受面11は、側面視略L字状の2か所の端部において、他方の壁部22側に折れ曲がり、縁面11cが形成される。縁面11cと水受本体面11aは、角R状に滑らかに接続される。このようにして、水受面11は、全体に亘って平滑に形成される。
【0012】
図2に示すように、樹脂製中空二重構造20の他方側の壁部22の外表面(換言すれば、側面視略L字状の外側の面)には、設置面12が設けられる。設置面12は、略長矩形状の2つの設置本体面12aが屈曲面12bで接続されて、側面視略L字状に形成される。屈曲面12bは、設置本体面12aと接続する部分は湾曲して接続するが、設置本体面12aとの接続部の間の面は略平坦状に形成される。
【0013】
設置面12には、設置面12の短尺方向のほぼ全域に亘って(換言すれば、屈曲面12bにまたがって)凹溝部23及びリブ24が設けられる。ここで、図4に示すように、凹溝部23の底板23aにおける、屈曲面12bに対応する屈曲部の中心Pから底板23aの突端部Qまでの距離L1は、中心Pから設置面12の突端部までの距離L2に対して3割以上に設定され、好ましくは5割以上、より好ましくは7割以上に設定される。凹溝部23は、図3に示すように、外側に向かって拡幅するように設けられる。図3及び図4に示すように、凹溝部23の底板23aと壁部21とは、樹脂製中空二重構造20の中空の内部でリブ24により接続される。なお、凹溝部23の深さ寸法とリブ24の高さ寸法は、治水構造物用補助部材10の厚さ寸法に応じて適宜設定される。本実施形態においては、凹溝部23の深さ寸法とリブ24の高さ寸法は略同一に設定される。凹溝部23とリブ24とにより、治水構造物用補助部材10は、側面視略L字の内側が開く方向の力に対する剛性が高くされている。
【0014】
ここで、凹溝部23の成形時には、凹溝部23と設置本体面12aとの接続部分(凹溝部23の開口部分)における壁部22の肉厚が薄くなりやすい。そして、凹溝部23の間隔W1(図3参照)が近いと、当該部分の肉厚がさらに薄くなりやすい。しかしながら、治水構造物用補助部材10の補強としては、凹溝部23同士を近付けると好ましい。また、全体の肉厚を厚くすることも考えられるが、製品重量も重くなり、コストも増大するため好ましくない。そこで、本実施形態に示すように、補強部として凹溝部23とリブ24とを併用することにより、樹脂の厚みを厚くすることなく、図3に示す凹溝部23の間隔W1(すなわち、該補強部の間隔W1)を狭くすることができる。補強部の間隔W1と凹溝部23の深さW2との関係は、1.5≦W1/W2とすると好適であり、さらに好ましくは2≦W1/W2である。
【0015】
ここで、リブ24は、図5(a)~(d)に示すように、治水構造物用補助部材10のブロー成形において形成される。なお、図5(a)~(d)は、図3の切断箇所の端面と金型50を模式的に示す図である。図5(a)~(d)に示す金型50は、キャビティ51aを備える雌型としての第1金型51と、キャビティ51aに対応する雄型として形成される第2金型52とを有する。第1金型51は、凹溝部23を形成するための凸部51bを備える。第2金型52は、リブ24を形成するための、図示しない油圧シリンダに接続されたスライドコア55を備える。スライドコア55は、薄板状に形成されて、第1金型51の凸部51bに対向して配置される。スライドコア55は、該油圧シリンダによりキャビティ51aに向かって移動可能に形成される。図5(a)は、内部が中空に形成されたパリソン60の内圧を維持しながら金型50により型締めした状態である。型締めにより、パリソン60には凸部51bによる凹溝部23が形成される。パリソン60の型締め後、図5(b)に示すように、第2金型52の内部に位置していたスライドコア55をキャビティ51aに向けて移動させる。なお、スライドコア55は、型締めする前に予めキャビティ51aに向けて移動させておいてもよい。パリソン60には、スライドコア55の移動により、パリソン60の内部に突出する変形部61が形成される。スライドコア55の移動は、変形部61と凹溝部23とが当接するまで移動する。パリソン60は溶融しているため、変形部61と凹溝部23は接続する。その後、図5(c)に示すように、スライドコア55を元の位置(第2金型52の内部)に戻し、パリソン60の内部にエアブローを吹き込む。すると、パリソン60の内部の圧力が高くなり、変形部24aにおいてスライドコア55が抜けた箇所の空間Nが消滅して、図5(d)に示すようにリブ24が形成される。
【0016】
また、図1に示すように、治水構造物用補助部材10は、長手方向の一方端に連結凸部13が設けられる。連結凸部13における一方の壁部21は、水受面11における一方の壁部21と段部14を介して接続される。連結凸部13は、側面視略L字状に形成される。連結凸部13は、段部14を介して水受本体面11aと接続する連結面13a、屈曲面11bと接続する屈曲面13b、縁面11cと接続する縁面13cを有する。連結面13a、屈曲面13b、縁面11cは、水受本体面11a、屈曲面11b、縁面11cよりも中空の内部側に形成される面である。また、図3にも示すように、連結凸部13の一方端は、側板25が形成されて、連結端面13dが設けられる。連結凸部13の他方の壁部22の外表面は、設置面12と連続した面が形成される。
【0017】
また、図2図3に示すように、治水構造物用補助部材10は、長手方向の他方端に、他方側の壁部22から略矩形凹状とされる連結凹部15が設けられる。連結凹部15は、壁部21と、壁部21,22を連結する側板16とにより形成される凹部である。従って、連結凹部15は、長手方向の他方端側の側方と、壁部22側が開放されている。側板16の一方側は、中空の内部側となる。なお、側板16は、壁部21から壁部22に向かうに従って中空の内部側に傾斜するように形成される。
【0018】
図3に示すように、連結凸部13と連結凹部15は、係合して連結可能に形成される。連結凸部13は、水受面11の壁部22側(換言すれば背面側)に配置される。治水構造物用補助部材10の長手方向における連結凸部13の長さは、治水構造物用補助部材10の長手方向における連結凹部15の長さと同一に形成される。連結凸部13の側板25は、壁部21に対して垂直に設けられるが、側板16は傾斜して設けられるので、連結凸部13と連結凹部15の連結時には、側板25,16との間に隙間sが生じる。治水構造物用補助部材10の長手方向における連結凸部13の長さの寸法公差を治水構造物用補助部材10の長手方向における連結凹部15の長さからマイナス公差に設定しておくことで、側板16の成形時の反り等の影響を考慮することなく、水受面11の他方端側の側縁11dと段部14とを確実に当接させることができる。すなわち、連結凸部13と連結凹部15の連結時において、側板25(連結端面13d)と側板16とが干渉することがない。なお、連結された治水構造物用補助部材10の水受面11は、水受面11の他方端側の側縁11dと段部14が当接する部位においても平滑とされる。
【0019】
このように連結される複数の治水構造物用補助部材10は、図5に示すように連結する。破線矢印Dは、川の流れる方向を示す。治水構造物用補助部材10は、連結凹部15が上流側に配置されるように、連結凸部13と連結する。これにより、連結凹部15に対応する壁部21が水の流れによる水圧を受けて連結凸部13側に撓むので、連結凹部15における壁部21の背面と、連結凸部13における壁部21の外表面とが密着し、連結凸部13と連結凹部15の連結が強固なものとなり、連結部分からの水漏れが低減される。
【0020】
このように連結した複数の治水構造物用補助部材10は、河川の堤防Tに取り付けることができる。このとき、水受面11の水受本体面11a間の角度を堤防Tの法面の傾斜角度に合わせて設定することで、法面に設置していない設置面12に対応する水受本体面11aを水面に対して垂直とすることができる。堤防Tの法面の傾斜角は、多くの堤防でほぼ同じ傾斜角とされているので、河川ごとに治水構造物用補助部材10を製造する必要がなく、汎用性が高い治水構造物用補助部材10とすることができる。なお、堤防Tへの固定は、適宜アンカーボルト等を用いることができる。また、堤防Tに設置する設置面12に対応する水受面11は水圧を受けることで、より確実に治水構造物用補助部材10が堤防Tに固定される。
【0021】
治水構造物用補助部材10を堤防Tに取り付けることで、限界水位がH1であった河川をH2までかさ上げすることができる。これにより、家屋L等への水害を低減することができる。
【0022】
以上、本発明は本実施形態によって限定されることはなく、適宜変更して実施することができる。例えば、治水構造物用補助部材10は、堤防だけではなく、ダム等の他の治水構造物に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 治水構造物用補助部材 11 水受面
11a 水受本体面 11b 屈曲面
11c 縁面 11d 側縁
12 設置面 12a 設置本体面
12b 屈曲面 13 連結凸部
13a 連結面 13b 屈曲面
13c 縁面 13d 連結端面
14 段部 15 連結凹部
16 側板 20 樹脂製中空二重構造
21 壁部 22 壁部
23 凹溝部 23a 底板
24 リブ25 側板
50 金型 51 第1金型
51a キャビティ 51b 凸部
52 第2金型 55 スライドコア
60 パリソン 241 変形部
N 空間
L 家屋
T 堤防
s 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7