(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】シート体験システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240731BHJP
G06F 3/0484 20220101ALI20240731BHJP
G06F 3/0487 20130101ALI20240731BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20240731BHJP
A63F 13/428 20140101ALI20240731BHJP
A63F 13/24 20140101ALI20240731BHJP
A63F 13/55 20140101ALI20240731BHJP
A63F 13/21 20140101ALI20240731BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/0484
G06F3/0487
G06F3/0346 424
A63F13/428
A63F13/24
A63F13/55
A63F13/21
(21)【出願番号】P 2023097417
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2019223430の分割
【原出願日】2019-12-11
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】東 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 吉一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-020656(JP,A)
【文献】特開平11-056818(JP,A)
【文献】国際公開第2015/157790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/0484
G06F 3/0487
G06F 3/0346
A63F 13/428
A63F 13/24
A63F 13/55
A63F 13/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得する複数のセンサを有するシートと、
前記センサから情報を取得するとともに、画面を有する端末と、を備えたシート体験システムであって、
前記端末は、
前記センサから取得した情報に基づいて、着座者の前後左右の傾き姿勢を判定し、
前記着座者の傾き姿勢に基づいて、前記画面上の操作対象を移動させ
、
前記センサから取得した情報に基づいて、着座者の通常時の着座姿勢を標準姿勢として設定する標準姿勢設定モードを実行可能であり、
前記着座者の前後左右の傾き姿勢を判定しようとする際に、前記標準姿勢が設定されていない場合には、前記標準姿勢設定モードを開始し、
前記標準姿勢設定モードを開始してから所定時間の間、前記情報を取得せず、
前記所定時間の経過後に、前記情報を取得することを特徴とするシート体験システム。
【請求項2】
シート本体と、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得する複数のセンサを有するシートと、
前記センサから情報を取得するとともに、画面を有する端末と、を備えたシート体験システムであって、
前記シート本体は、シートクッション、シートバック、ヘッドレスト、電動リクライニングのモータおよびヒータを有し、
前記シートクッションと前記シートバックには、表皮の下に複数の前記センサが設けられ、
前記シート体験システムは、前記モータまたは前記ヒータを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
複数の前記センサから情報を取得可能に、複数の前記センサと接続され、
前記センサから取得した情報を、前記端末に送信し、
前記端末は、
前記センサから取得した情報に基づいて、着座者の前後左右の傾き姿勢を判定し、
前記着座者の傾き姿勢に基づいて、前記画面上の操作対象を移動させることを特徴とするシート体験システム。
【請求項3】
前記センサは、着座者からの圧力値を取得する圧力センサであり、
前記端末は、前記圧力値に基づいて、前記着座者の前後左右の傾き姿勢を判定することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のシート体験システム。
【請求項4】
前記シート本体は、複数の前記圧力センサを有するシートクッションを有し、
複数の前記圧力センサは、
着座者の坐骨に対応する位置に設けられた後側クッションセンサであって、前記シートの左右の中心に対して左右対称に配置された1対の後側クッションセンサと、
着座者の大腿に対応する位置に設けられた前側クッションセンサであって、前記シートの左右の中心に対して左右対称に配置された1対の前側クッションセンサと、を含むことを特徴とする請求項
3に記載のシート体験システム。
【請求項5】
前記後側クッションセンサと前記前側クッションセンサの間には、圧力センサが設けられていることを特徴とする請求項
4に記載のシート体験システム。
【請求項6】
前記シート本体は、複数の前記圧力センサを有するシートバックを有し、
複数の前記圧力センサは、
着座者の腰の後ろに対応する位置に設けられた下側圧力センサであって、前記シートの左右の中心に対して左右対称に配置された1対の下側圧力センサと、
着座者の肩に対応する位置に設けられた上側圧力センサであって、前記シートの左右の中心に対して左右対称に配置された1対の上側圧力センサと、を含むことを特徴とする請求項
3から請求項
5のいずれか1項に記載のシート体験システム。
【請求項7】
前記下側圧力センサと前記上側圧力センサの間には、圧力センサが設けられていることを特徴とする請求項
6に記載のシート体験システム。
【請求項8】
前記端末は、前記標準姿勢に対応した情報と、前記センサから取得した情報とを比較して前記着座者の傾き姿勢を判定することを特徴とする請求項
1に記載のシート体験システム。
【請求項9】
前記端末は、
前記センサから取得した情報に基づいて、着座者の通常時の着座姿勢を標準姿勢として設定する標準姿勢設定モードを実行可能であり、
前記着座者の前後左右の傾き姿勢を判定しようとする際に、前記標準姿勢が設定されていない場合には、前記標準姿勢設定モードを開始することを特徴とする請求項
2に記載のシート体験システム。
【請求項10】
前記端末は、
前記標準姿勢設定モードを開始してから所定時間の間、前記情報を取得せず、
前記所定時間の経過後に、前記情報を取得することを特徴とする請求項
9に記載のシート体験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサを有するシートを備えたシート体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の着座姿勢を検出するために、シート上に複数の圧力センサを配置した車両用シートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の車両用シートは、運転者の着座姿勢を評価して提示するだけであるので、あまり有効に利用できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、シートの新たな価値を提案するべく、端末の画面上の操作対象をシートで操作することができるシート体験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決する本発明に係るシート体験システムは、シート本体と、前記シート本体に座っている着座者の動作を検出するための情報を取得する複数のセンサを有するシートと、前記センサから情報を取得するとともに、画面を有する端末と、を備える。
前記端末は、前記情報に基づいて、前記画面上の操作対象の速度を変更する。
【0007】
この構成によれば、端末がセンサから取得した情報に基づいて画面上の操作対象の速度を変更するので、シート上の着座者の動きに応じて、端末の画面上の操作対象を着座者の意図に沿った速度で操作することができる。
【0008】
また、前記センサは、着座者からの圧力値を取得する圧力センサであり、前記端末は、前記圧力値に基づいて、前記画面上の操作対象の速度を変更してもよい。
【0009】
また、前記端末は、前記圧力値が大きいほど、前記操作対象の速度を大きくしてもよい。
【0010】
また、前記端末は、前記圧力値が大きいほど、前記操作対象の速度を小さくしてもよい。
【0011】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第1標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも前に体重をかけた前傾姿勢であるときに前記第1標準圧力値よりも大きな第1高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも後ろに体重をかけた後傾姿勢であるときに前記第1標準圧力値よりも小さな第1低圧力値を出力する第1圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第2標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも前に体重をかけた前傾姿勢であるときに前記第2標準圧力値よりも小さな第2低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも後ろに体重をかけた後傾姿勢であるときに前記第2標準圧力値よりも大きな第2高圧力値を出力する第2圧力センサを備え、前記端末は、前記第1圧力センサから前記第1高圧力値を取得した場合、または、前記第2圧力センサから前記第2低圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記前傾姿勢であると判定し、前記前傾姿勢と判定したときの前記第1高圧力値が大きいほど、または、前記前傾姿勢と判定したときの前記第2低圧力値が小さいほど、前記操作対象の前記画面の上に向かう移動速度を大きくしてもよい。
【0012】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第1標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも前に体重をかけた前傾姿勢であるときに前記第1標準圧力値よりも大きな第1高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも後ろに体重をかけた後傾姿勢であるときに前記第1標準圧力値よりも小さな第1低圧力値を出力する第1圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第2標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも前に体重をかけた前傾姿勢であるときに前記第2標準圧力値よりも小さな第2低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも後ろに体重をかけた後傾姿勢であるときに前記第2標準圧力値よりも大きな第2高圧力値を出力する第2圧力センサを備え、前記端末は、前記第1圧力センサから前記第1低圧力値を取得した場合、または、前記第2圧力センサから前記第2高圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記後傾姿勢であると判定し、前記後傾姿勢と判定したときの前記第1低圧力値が小さいほど、または、前記後傾姿勢と判定したときの前記第2高圧力値が大きいほど、前記操作対象の前記画面の下に向かう移動速度を大きくしてもよい。
【0013】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第3標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも大きな第3高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも小さな第3低圧力値を出力する第3圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第4標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも小さな第4低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも大きな第4高圧力値を出力する第4圧力センサを備え、前記端末は、前記第3圧力センサから前記第3高圧力値を取得した場合、または、前記第4圧力センサから前記第4低圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記左傾姿勢であると判定し、前記左傾姿勢と判定したときの前記第3高圧力値が大きいほど、または、前記左傾姿勢と判定したときの前記第4低圧力値が小さいほど、前記操作対象の前記画面の左に向かう移動速度を大きくしてもよい。
【0014】
複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第3標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも大きな第3高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも小さな第3低圧力値を出力する第3圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第4標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも小さな第4低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも大きな第4高圧力値を出力する第4圧力センサを備え、前記端末は、前記第3圧力センサから前記第3低圧力値を取得した場合、または、前記第4圧力センサから前記第4高圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記右傾姿勢であると判定し、前記右傾姿勢と判定したときの前記第3低圧力値が小さいほど、または、前記右傾姿勢と判定したときの前記第4高圧力値が大きいほど、前記操作対象の前記画面の右に向かう移動速度を大きくしてもよい。
【0015】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の右脚から荷重を受ける第5圧力センサを備え、前記操作対象は、前記画面上に表示された背景に対して移動する移動体であり、前記端末は、前記第5圧力センサから取得した圧力値が大きいほど、前記移動体の前方への移動速度を大きくしてもよい。
【0016】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の左脚から荷重を受ける第6圧力センサを備え、前記操作対象は、前記画面上に表示された背景に対して移動する移動体であり、前記端末は、前記第6圧力センサから取得した圧力値が大きいほど、前記移動体の前方への移動速度を小さくしてもよい。
【0017】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第3標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも大きな第3高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも小さな第3低圧力値を出力する第3圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第4標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも小さな第4低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも大きな第4高圧力値を出力する第4圧力センサを備え、前記操作対象は、前記画面上に表示された背景に対して移動する移動体であり、前記端末は、前記第3圧力センサから前記第3高圧力値を取得した場合、または、前記第4圧力センサから前記第4低圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記左傾姿勢であると判定し、前記左傾姿勢と判定したときの前記第3高圧力値が大きいほど、または、前記左傾姿勢と判定したときの前記第4低圧力値が小さいほど、前記移動体の左への旋回速度を大きくしてもよい。
【0018】
また、複数の前記圧力センサは、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第3標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも大きな第3高圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第3標準圧力値よりも小さな第3低圧力値を出力する第3圧力センサ、または、前記着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第4標準圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも小さな第4低圧力値を出力し、前記着座者の姿勢が前記標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるときに前記第4標準圧力値よりも大きな第4高圧力値を出力する第4圧力センサを備え、前記操作対象は、前記画面上に表示された背景に対して移動する移動体であり、前記端末は、前記第3圧力センサから前記第3低圧力値を取得した場合、または、前記第4圧力センサから前記第4高圧力値を取得した場合に、前記着座者の姿勢が前記右傾姿勢であると判定し、前記右傾姿勢と判定したときの前記第3低圧力値が小さいほど、または、前記右傾姿勢と判定したときの前記第4高圧力値が大きいほど、前記移動体の右への旋回速度を大きくしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御部がセンサから取得した情報に基づいて画面上の操作対象の速度を変更するので、シート上の着座者の動きに応じて、端末の画面上の操作対象を着座者の意図に沿った速度で操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るシート体験システムを示す図である。
【
図2】コマンド設定処理を示すフローチャートである。
【
図3】感電迷路ゲームを実行するときの処理を示すフローチャートである。
【
図4】スタート画面を示す図(a)と、標準姿勢を設定する画面を示す図(b)である。
【
図5】レベルを選択する画面を示す図(a)と、感電迷路ゲーム中の画面を示す図(b)である。
【
図7】コマンド設定処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のシート体験システム1は、シートSと、シート体験装置10とを含んでなる。
シートSは、シート本体S10と、圧力センサ21~26とを備えてなる。シート本体S10は、一例として、車両などの乗物に設置される乗物用シートであり、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を有する。シートクッションS1とシートバックS2には、表皮の下に複数の圧力センサ21~26が設けられている。圧力センサ21~26は、シート本体S10に座っている着座者の動作を検出するためのセンサである。
【0022】
圧力センサ21~26は、シート本体S10に着座する着座者に対向する座面の状態を検知可能に配置され、シート本体S10に座っている着座者からの圧力値を取得する。ECU(電子制御ユニット)100は、シート本体S10の動作(例えば、図示しない電動リクライニングのモータやヒータなど)を制御する装置であり、各圧力センサ21~26から、測定値を取得可能に圧力センサ21~26と接続されている。
【0023】
各圧力センサ21~26は、シートSの左右の中心に対して左右対称に1対ずつ設けられている。なお、以下の説明や図面においては、左側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「L」を付し、右側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「R」を付して区別することもある。
【0024】
シートクッションS1には、圧力センサ21~23が設けられている。
圧力センサ21は、着座者の坐骨の最下部に対応する位置に設けられている。この位置では、着座者の荷重が最も大きくかかる。
【0025】
圧力センサ22は、圧力センサ21の少し前に配置されている。
【0026】
圧力センサ21および圧力センサ22は、いずれも、着座者の臀部からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0027】
圧力センサ23は、圧力センサ21および圧力センサ22から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサ23は、着座者の大腿の下に位置し、着座者の大腿からの圧力値を測定可能である。
【0028】
シートバックS2には、圧力センサ24~26が設けられている。圧力センサ24は、着座者の腰の後ろに対応する位置に設けられている。
【0029】
圧力センサ25は、圧力センサ24の少し上に配置されている。
【0030】
圧力センサ24および圧力センサ25は、いずれも、着座者の腰からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0031】
圧力センサ26は、圧力センサ24および圧力センサ25から上方に大きく離れて配置されている。圧力センサ26は、着座者の肩に対応して位置し、着座者の肩からの圧力値を測定可能である。
【0032】
本実施形態においては、シート体験システム1は、各圧力センサ21~26を使用した感電迷路ゲームを提供するものとする。本実施形態においては、各圧力センサ21~26は、シート本体S10に座っている着座者の動作を検出するための測定値を取得するセンサの一例である。感電迷路ゲームは、シート本体S10に座った着座者が、スマートフォンSPの画面であるディスプレイDSP上に表示された操作アイコンIC(
図5(b)参照)を、迷路を構成する壁Wに接触させずに、ゴールまで移動させるゲームとする。
【0033】
シート本体S10には、スマートフォンSPを保持するためのホルダ4が設けられている。ホルダ4は、ワイヤを屈曲させて形成され、一端がシートバックS2に固定され、他端にスマートフォンSPを固定する固定部4Aが設けられている。固定部4AにスマートフォンSPを固定することで、着座者は、スマートフォンSPを手に持たなくても、スマートフォンSPのディスプレイDSPを見ることができる。このため、着座者は、ディスプレイDSPを見ながら、感電迷路ゲームにおける操作アイコンICを、全身を使って操作することができる。
【0034】
シート体験装置10は、ECU100と、端末の一例としてのスマートフォンSPとを有してなる。
ECU100には、ブルートゥース(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を可能にする近距離通信機3Aが接続されている。また、ECU100は、圧力センサ21~26と接続されている。本実施形態では、ECU100と近距離通信機3Aは、シート本体S10に設けられている。
【0035】
ECU100およびスマートフォンSPは、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行する。なお、スマートフォンSPは、ディスプレイDSPをさらに備えている。スマートフォンSPは、プログラムに従って動作することで、感電迷路ゲームを実行するための各手段として機能する。
【0036】
ECU100は、各圧力センサ21~26から取得した測定値を、近距離通信機3Aを介してスマートフォンSPに送信する機能を有している。スマートフォンSPは、各圧力センサ21~26からECU100等を介して測定値を取得し、測定値に基づいて、ディスプレイDSP上の操作対象を動作させる機能を有している。詳しくは、スマートフォンSPは、各圧力センサ21~26から取得した情報に基づいて、操作対象を動作させるためのコマンドを設定し、設定したコマンドに基づいてスマートフォンSPのディスプレイDSP上の操作対象を動作させる。また、スマートフォンSPは、各圧力センサ21~26から取得した情報に基づいて、操作対象の速度を変更する。
【0037】
具体的に、スマートフォンSPは、各圧力センサ21~26からの測定値に基づいて、着座者の姿勢が、標準姿勢よりも前に体重をかけた前傾姿勢、または、標準姿勢よりも後ろに体重をかけた後傾姿勢であるかを判定可能となっている。また、スマートフォンSPは、各圧力センサ21~26からの測定値に基づいて、着座者の姿勢が、標準姿勢よりも左に体重をかけた左傾姿勢、または、標準姿勢よりも右に体重をかけた右傾姿勢であるかを判定可能となっている。
【0038】
スマートフォンSPは、シートクッションS1の前側に配置された2つの圧力センサ23(以下、「前側クッションセンサSE1」とも称する。)から取得した測定値に基づいて、着座者の姿勢が前傾姿勢であるか否かを判断する。ここで、前側クッションセンサSE1は、第1センサの一例であり、着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第1標準圧力値を出力し、着座者の姿勢が前傾姿勢であるときに第1標準圧力値よりも大きな第1高圧力値を出力し、着座者の姿勢が後傾姿勢であるときに第1標準圧力値よりも小さな第1低圧力値を出力する。
【0039】
ここで、第1標準圧力値は、ある程度幅を持った値である。詳しくは、後述するような感電迷路ゲーム中における標準姿勢の設定処理、つまりキャリブレーション時において、圧力センサ23から出力された値に対してプラス側とマイナス側とにマージンをとった標準範囲内に入る値を、第1標準圧力値とする。また、第1高圧力値は、標準範囲よりも大きい値であり、第1低圧力値は、標準範囲よりも小さな値である。なお、後述するその他の標準圧力値、高圧力値、低圧力値(例えば第2標準圧力値、第2高圧力値、第2低圧力値)も同様である。
【0040】
スマートフォンSPは、前側クッションセンサSE1から第1高圧力値を取得した場合には、着座者の姿勢が前傾姿勢であると判定する。ここで、本実施形態において、前側クッションセンサSE1から取得した圧力値とは、複数の前側クッションセンサSE1から取得した測定値のうち大きい方の値とする。なお、前側クッションセンサSE1から取得した圧力値としては、例えば、複数の前側クッションセンサSE1から取得した複数の測定値の平均値などであってもよい。なお、なお、後述するその他のセンサ(例えば、後述する後側クッションセンサSE2)から取得した圧力値も同様である。
【0041】
スマートフォンSPは、シートクッションS1の後側に配置された2つの圧力センサ21(以下、「後側クッションセンサSE2」とも称する。)から取得した測定値に基づいて、着座者の姿勢が後傾姿勢であるか否かを判断する。ここで、後側クッションセンサSE2は、第2センサの一例であり、着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第2標準圧力値を出力し、着座者の姿勢が前傾姿勢であるときに第2標準圧力値よりも小さな第2低圧力値を出力し、着座者の姿勢が後傾姿勢であるときに第2標準圧力値よりも大きな第2高圧力値を出力する。スマートフォンSPは、後側クッションセンサSE2から第2高圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が後傾姿勢であると判定する。
【0042】
スマートフォンSPは、シートバックS2の左側に配置された3つの圧力センサ24L,25L,26L(以下、「左側バックセンサSE3」とも称する。)から取得した測定値に基づいて、着座者の姿勢が左傾姿勢であるか否かを判断する。ここで、左側バックセンサSE3は、第3センサの一例であり、着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第3標準圧力値を出力し、着座者の姿勢が左傾姿勢であるときに第3標準圧力値よりも大きな第3高圧力値を出力し、着座者の姿勢が右傾姿勢であるときに第3標準圧力値よりも小さな第3低圧力値を出力する。スマートフォンSPは、左側バックセンサSE3から第3高圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が左傾姿勢であると判定する。
【0043】
ここで、左傾姿勢とは、着座者の重心が身体の中心よりも左にずれた姿勢をいい、例えば着座者が身体を左に捻った姿勢も含む。後述する右傾姿勢も同様であり、右傾姿勢は、着座者の重心が身体の中心よりも右にずれた姿勢をいい、例えば着座者が身体を右に捻った姿勢も含む。
【0044】
スマートフォンSPは、シートバックS2の右側に配置された3つの圧力センサ24R,25R,26R(以下、「右側バックセンサSE4」とも称する。)から取得した測定値に基づいて、着座者の姿勢が右傾姿勢であるか否かを判断する。ここで、右側バックセンサSE4は、第4センサの一例であり、着座者の姿勢が標準姿勢であるときに第4標準圧力値を出力し、着座者の姿勢が左傾姿勢であるときに第4標準圧力値よりも小さな第4低圧力値を出力し、着座者の姿勢が右傾姿勢であるときに第4標準圧力値よりも大きな第4高圧力値を出力する。スマートフォンSPは、右側バックセンサSE4から第4高圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が右傾姿勢であると判定する。
【0045】
スマートフォンSPは、前傾姿勢であると判定した場合に、第1コマンドを設定し、後傾姿勢であると判定した場合に、第2コマンドを設定する。また、スマートフォンSPは、左傾姿勢であると判定した場合に、第3コマンドを設定し、右傾姿勢であると判定した場合に、第4コマンドを設定する。
【0046】
各コマンドは、スマートフォンSPのディスプレイDSP上で実行される感電迷路ゲームにおける操作対象を動かすための指令である。具体的に、第1コマンドは、ディスプレイDSP上の操作対象に対して上向きの操作がなされたことを示すコマンドである。第2コマンドは、ディスプレイDSP上の操作対象に対して下向きの操作がなされたことを示すコマンドである。第3コマンドは、ディスプレイDSP上の操作対象に対して左向きの操作がなされたことを示すコマンドである。第4コマンドは、ディスプレイDSP上の操作対象に対して右向きの操作がなされたことを示すコマンドである。以下の説明では、第1コマンドを「上コマンド」、第2コマンドを「下コマンド」、第3コマンドを「左コマンド」、第4コマンドを「右コマンド」とも称する。
【0047】
スマートフォンSPは、前傾姿勢であると判定した場合には、前傾姿勢と判定したときの第1高圧力値が大きいほど、操作対象の画面の上に向かう移動速度を大きくする。スマートフォンSPは、後傾姿勢であると判定した場合には、後傾姿勢と判定したときの第2高圧力値が大きいほど、操作対象の画面の下に向かう移動速度を大きくする。
【0048】
スマートフォンSPは、左傾姿勢であると判定した場合には、左傾姿勢と判定したときの第3高圧力値が大きいほど、操作対象の画面の左に向かう移動速度を大きくする。スマートフォンSPは、右傾姿勢であると判定した場合には、右傾姿勢と判定したときの第4高圧力値が大きいほど、操作対象の画面の右に向かう移動速度を大きくする。
【0049】
スマートフォンSPは、設定したコマンドおよび移動速度に基づいて、感電迷路ゲームにおける操作対象を移動させる機能を有している。ここで、感電迷路ゲームにおける操作対象は、
図5(a)に示す感電迷路ゲームでのレベル(難易度)を選択する画面においては、レベルを選択するためのカーソルCSであり、
図5(b)に示す感電迷路ゲーム実行中の画面(以下、「ゲーム画面」ともいう。)においては、操作アイコンICである。
【0050】
スマートフォンSPは、レベルを選択する画面を表示している際に、シートSから下コマンドを受信するとカーソルCSを画面の下に移動させ、シートSから上コマンドを受信するとカーソルCSを画面の上に移動させる。この際、スマートフォンSPは、圧力値の大きさに応じてカーソルCSの移動速度を変更する。
【0051】
ゲーム画面においては、操作アイコンICと、迷路を構成する壁Wと、操作アイコンICが壁Wに接触するたびに減っていくライフゲージLGが表示されている。スマートフォンSPは、感電迷路ゲームの実行中には、操作アイコンICをコマンドに応じた方向に移動させるとともに、圧力値の大きさに応じて操作アイコンICの移動速度を変更する。
【0052】
次に、スマートフォンSPの動作について詳細に説明する。スマートフォンSPは、感電迷路ゲームの実行中において
図2に示す処理を常時繰り返し実行している。
【0053】
図2に示すように、スマートフォンSPは、各センサSE1~SE4から圧力値を取得する(S11)。ステップS11の後、スマートフォンSPは、左側バックセンサSE3から取得した第3検出値が、第3標準圧力値よりも大きいか否か、つまり第3高圧力値であるか否かを判定する(S12)。
【0054】
ステップS12において第3検出値が第3標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が左傾姿勢であると判定する(S13)。ステップS13の後、スマートフォンSPは、第3コマンドとしての左コマンドを設定する(S14)。
【0055】
ステップS14の後、スマートフォンSPは、左傾姿勢であると判定したときの第3検出値が大きいほど、画面の左への操作アイコンICの移動速度を大きく設定して(S15)、本処理を終了する。
【0056】
ステップS12において第3検出値が第3標準圧力値よりも大きくないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、右側バックセンサSE4から取得した第4検出値が、第4標準圧力値よりも大きいか否か、つまり第4高圧力値であるか否かを判定する(S16)。
【0057】
ステップS16において第4検出値が第4標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が右傾姿勢であると判定する(S17)。ステップS17の後、スマートフォンSPは、第4コマンドとしての右コマンドを設定する(S18)。
【0058】
ステップS18の後、スマートフォンSPは、右傾姿勢であると判定したときの第4検出値が大きいほど、画面の右への操作アイコンICの移動速度を大きく設定して(S19)、本処理を終了する。
【0059】
ステップS16において第4検出値が第4標準圧力値よりも大きくないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、前側クッションセンサSE1から取得した第1検出値が、第1標準圧力値よりも大きいか否か、つまり第1高圧力値であるか否かを判定する(S20)。
【0060】
ステップS20において第1検出値が第1標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が前傾姿勢であると判定する(S21)。ステップS21の後、スマートフォンSPは、第1コマンドとしての上コマンドを設定する(S22)。
【0061】
ステップS22の後、スマートフォンSPは、前傾姿勢であると判定したときの第1検出値が大きいほど、画面の上への操作アイコンICの移動速度を大きく設定して(S23)、本処理を終了する。
【0062】
ステップS20において第1検出値が第1標準圧力値よりも大きくないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、後側クッションセンサSE2から取得した第2検出値が、第2標準圧力値よりも大きいか否か、つまり第2高圧力値であるか否かを判定する(S24)。
【0063】
ステップS24において第2検出値が第2標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が後傾姿勢であると判定する(S25)。ステップS25の後、スマートフォンSPは、第2コマンドとしての下コマンドを設定する(S26)。
【0064】
ステップS26の後、スマートフォンSPは、後傾姿勢であると判定したときの第2検出値が大きいほど、画面の下への操作アイコンICの移動速度を大きく設定して(S27)、本処理を終了する。ステップS24において第2検出値が第2標準圧力値よりも大きくないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、そのまま本処理を終了する。
【0065】
スマートフォンSPは、着座者が感電迷路ゲームを行うためのアプリケーションを立ち上げると、
図3に示す処理を開始する(START)。この処理において、スマートフォンSPは、まず、シートSと通信可能な状態であるか否かを判断する(S41)。
【0066】
ステップS41において通信可能な状態でないと判断した場合には(No)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。ステップS41において通信可能な状態であると判断した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、感電迷路ゲームのスタート画面(
図4(a)参照)をディスプレイDSP上に表示する(S42)。
【0067】
なお、
図4(a)に示すスタート画面では、感電迷路ゲームを開始するためのスタートボタンB1と、感電迷路ゲームを終了するためのボタンB2とが表示されている。
【0068】
ステップS42の後、スマートフォンSPは、スタートボタンB1が選択されたか否かを判断する(S43)。ステップS43においてスタートボタンB1が選択されたと判断した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、感電迷路ゲームにおける標準姿勢設定モードが過去に既に実行されているかを示すフラグFが0であるか否かを判断する(S44)。
【0069】
ここで、標準姿勢設定モードとは、着座者の通常時の着座姿勢を標準姿勢として設定するモードである。スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードにおいて、着座者の標準姿勢における各圧力値を取得し、各圧力値から、感電迷路ゲームにおける各コマンドを設定するための各標準圧力値を設定する。なお、スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードで設定した各標準圧力値に基づいて、前述した
図2の処理を実行する。
【0070】
ステップS44においてF=0でないと判定した場合(No)、つまり標準姿勢設定モードが過去に実行されている場合には、スマートフォンSPは、標準姿勢設定モード(S45~S47)を飛ばして、感電迷路ゲームを開始する(S48)。ステップS44においてF=0と判定した場合(Yes)、つまり標準姿勢設定モードが過去に一度も実行されていない場合には、スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードを開始する(S45)。
【0071】
スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードを開始すると、
図4(b)に示す画面を、ディスプレイDSP上に表示する。
図4(b)の画面では、「シートに深く座りましょう。腿、尻、腰、背中、肩をシートにくっつけましょう」というメッセージと、各センサSE1~SE4から圧力値を取得するための時間を表示するカウントダウン表示とが、表示されている。本実施形態では、16拍のカウントダウンを示す「16」という数字が、標準姿勢設定モード開始時のカウントダウン表示として表示される。
【0072】
スマートフォンSPは、16拍のカウントダウンの実行中において、各センサSE1~SE4から圧力値を取得する。詳しくは、スマートフォンSPは、最初の8拍においては圧力値を取得せず、残りの8拍をカウントダウンする間に圧力値を取得する。つまり、スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードを開始してから所定時間の間、圧力値を取得せず、所定時間の経過後に圧力値を取得する。このように、スマートフォンSPが、標準姿勢設定モードの開始から所定時間の間、圧力値を取得しないことで、例えば着座者がシートSに座り直している際の不安定な圧力値を排除することができ、より正確な圧力値を取得することが可能となっている。
【0073】
詳しくは、スマートフォンSPは、8拍をカウントダウンする間に、各センサSE1~SE4から所定の周期で圧力値を取得する。ここで、例えば、スマートフォンSPが圧力値を取得する周期が20Hzであり、1拍が1秒である場合には、1つの圧力センサから取得される圧力値の数は、161個となる。
【0074】
図3に示すように、スマートフォンSPは、各センサSE1~SE4で取得した各圧力値の平均値に対してプラス側とマイナス側とにマージンをとった数値範囲を、各センサSE1~SE4での各標準圧力値として設定する(S46)。
【0075】
スマートフォンSPは、ステップS46の後、フラグFを1にして(S47)、感電迷路ゲームを開始する(S48)。感電迷路ゲームにおいては、スマートフォンSPは、まず、
図5(a)に示すレベル選択画面を表示する。レベル選択画面を表示している際において、スマートフォンSPは、圧力値に基づいて上コマンドまたは下コマンドを設定すると、画面上のカーソルCSを画面の上または下に移動させる。また、スマートフォンSPは、圧力値に応じた移動速度でカーソルCSを移動させる。
【0076】
なお、カーソルCSで選択したレベルを決定する方法は、どのような方法であってもよい。例えば、スマートフォンSPは、圧力値に基づいて左コマンドまたは右コマンドを設定した場合に、カーソルCSで選択したレベルを感電迷路ゲームに使用するレベルとして決定することができる。
【0077】
レベルを選択した後、スマートフォンSPは、
図5(b)に示すゲーム画面を表示する。ゲーム画面においては、前述した操作アイコンICおよび壁Wの他、操作アイコンICが壁Wに接触するたびに減少するライフゲージLGなどを表示する。ゲーム画面において、スマートフォンSPは、各センサSE1~SE4から出力されてくる圧力値に基づいてコマンドを設定し、操作アイコンICを、圧力値に応じた移動速度で、コマンドに対応した方向に移動させる。
【0078】
感電迷路ゲームが終了すると、スマートフォンSPは、
図4(a)に示すスタート画面を表示する。
図3に戻って、ステップS48の後、または、ステップS43においてNoと判断した場合には、スマートフォンSPは、感電迷路ゲームを終了するためのボタンB2が選択されたか否かを判断する(S49)。ステップS49においてボタンB2が選択されていないと判断した場合には(No)、スマートフォンSPは、ステップS42の処理に戻る。ステップS49においてボタンB2が選択されたと判断した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。
【0079】
次に、シート体験システム1の具体的な動作の一例を詳細に説明する。
図1に示すように、シート体験システム1を構成する各機器(S,SP)が通信可能な状態において、着座者がスマートフォンSPを操作して感電迷路ゲームを立ち上げると、
図3に示す処理において、ステップS41:Yes→ステップS42の処理が順次実行される。これにより、
図4(a)に示すスタート画面が、ディスプレイDSP上に表示される。
【0080】
着座者がスタートボタンB1を選択すると、ステップS43でYesと判断されて、ステップS44の処理に移行する。ここで、着座者が標準姿勢設定モード等を過去に一度も行っていない場合には、ステップS44でYesと判断されて、標準姿勢設定モードが実行される(S45~S47)。
【0081】
標準姿勢設定モードにおいては、
図4(b)に示す画面がディスプレイDSP上に表示される。着座者は、画面の指示に従って、身体全体をシートSに密着させるように座り直す。そして、画面中のカウントダウン表示が16から0までカウントダウンされる間、着座者が姿勢を保つことで、各センサSE1~SE4から圧力値がスマートフォンSPで取得される。
【0082】
スマートフォンSPは、標準姿勢設定モードにおいて取得した圧力値に基づいて、感電迷路ゲームにおける各コマンドを設定するための各標準圧力値を設定する。スマートフォンSPは、各標準圧力値を設定した後、
図5(a)に示すレベル選択画面をディスプレイDSP上に表示する(S48)。
【0083】
レベル選択画面においては、シートSに座っている着座者が身体を前傾させるとカーソルCSが画面の上に移動し、前傾の角度が大きいほどカーソルCSの移動速度が大きくなる。また、着座者が身体を後傾させるとカーソルCSが画面の下に移動し、後傾の角度が大きいほどカーソルCSの移動速度が大きくなる。この際、カーソルCSの移動方向および移動速度と、着座者の姿勢とが、人間の感覚に合っているので、着座者が直感的にカーソルCSの操作を行うことができる。
【0084】
レベルが選択された後、スマートフォンSPは、
図5(b)に示すゲーム画面をディスプレイDSPに表示する。ゲーム画面において、着座者が例えば身体を右傾させると操作アイコンICが画面の右に移動し、右傾の角度が大きいほど操作アイコンICの移動速度が大きくなる。同様に、着座者がその他の方向に身体を傾けると、身体を傾けた方向に対応した方向に操作アイコンICが移動するとともに、傾けた角度の大きさに応じた移動速度で操作アイコンICが移動する。
【0085】
このようにして、着座者は、身体を前傾、後傾、左傾、右傾させることで、感電迷路ゲームをシートSに座った状態で楽しむことができる。そのため、例えば脚力の弱い老人などであっても、身体を十分に動かして、感電迷路ゲームを楽しむことができる。また、感電迷路ゲーム中における操作アイコンICの移動方向および移動速度と、着座者の姿勢とが、人間の感覚に合っているので、着座者が直感的に感電迷路ゲームを楽しむことができる。
【0086】
以上のような本実施形態の車両用シートにおいて、次の各効果を奏することができる。
スマートフォンSPが各センサSE1~SE4から取得した情報に基づいて画面上の操作対象の速度を変更するので、シートS上の着座者の動きに応じて、スマートフォンSPの画面上の操作対象を着座者の意図に沿った速度で操作することができる。
【0087】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。なお、以下の説明において、前記実施形態と略同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0088】
前記実施形態では、操作対象を、感電迷路ゲームにおけるカーソルCSまたは操作アイコンICとしたが、本発明はこれに限定されず、操作対象はどのようなものであってもよい。例えば、
図6に示すように、カーレースゲームにおいては、操作対象は、車両CRとすることができる。
【0089】
車両CRは、画面上に表示された背景に対して移動する移動体の一例である。カーレースゲームでは、道路RDを含む背景が車両CRの後方に自動的に流れていくことで、車両CRが道路RD上を前進する。また、車両CRは、着座者の操作に応じて右旋回または左旋回の姿勢をとることが可能であり、これにより、カーブした道路RDに沿って車両CRが走行することが可能となっている。
【0090】
このようなカーレースゲームにおいては、複数の圧力センサ21~26のうち、着座者の右脚から荷重を受ける右側の圧力センサ23Rを、車両CRのアクセルに相当する第5圧力センサSE5とすることができる。また、着座者の左脚から荷重を受ける左側の圧力センサ23Rを、車両CRのブレーキに相当する第6圧力センサSE6とすることができる。なお、車両CRの左旋回、右旋回を行うためのセンサは、前記実施形態と同様の左側バックセンサSE3、右側バックセンサSE4とすることができる。
【0091】
この形態では、スマートフォンSPは、カーレースゲームにおいて、
図7に示すコマンド設定処理を実行する。なお、カーレースゲームが立ち上げられたときのスマートフォンSPの処理は、
図3の処理におけるステップS48の処理を、カーレースゲームを実行する処理に置き換えるだけで、その他の処理は略同様である。
【0092】
コマンド設定処理において、スマートフォンSPは、まず、各センサSE3~SE6から圧力値を取得する(S61)。ステップS61の後、スマートフォンSPは、第5圧力センサSE5で検出した第5検出値が、第5標準圧力値よりも大きいか否かを判定する(S62)。ここで、第5標準圧力値および後述する第6標準圧力値は、第3標準圧力値等と同様の方法で設定する。
【0093】
ステップS62において第5検出値が第5標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、車両CRを道路RDに対して相対的に前進させるための第1コマンドを設定する(S63)。ステップS63の後、スマートフォンSPは、第5検出値が大きいほど、車両CRの前方への移動速度を大きくする(S64)。
【0094】
ステップS64の後、または、ステップS62においてNoと判定した場合には、スマートフォンSPは、第6圧力センサSE6で検出した第6検出値が、第6標準圧力値よりも大きいか否かを判定する(S65)。ステップS65において第6検出値が第6標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、車両CRにブレーキをかけるための第2コマンドを設定する(S66)。ステップS66の後、スマートフォンSPは、第6検出値が大きいほど、車両CRの前方への移動速度を小さくする(S67)。
【0095】
なお、第5検出値と第6検出値が両方とも各標準圧力値よりも大きい場合には、スマートフォンSPは、第5検出値と第6検出値の大きさに応じて移動速度を設定する。例えば、スマートフォンSPは、第5検出値に対応した移動速度から第6検出値に対応した移動速度を減算することで、車両CRの前方への移動速度を設定する。
【0096】
ステップS67の後、スマートフォンSPは、左側バックセンサSE3で検出した第3検出値が、右側バックセンサSE4で検出した第4検出値よりも大きいか否かを判定する(S68)。ステップS68において第3検出値が第4検出値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、第3検出値が第3標準圧力値よりも大きいか否かを判定する(S69)。
【0097】
ステップS69において第3検出値が第3標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が左傾姿勢であると判定して(S70)、車両CRを左旋回させるための第3コマンドを設定する(S71)。
【0098】
ステップS71の後、スマートフォンSPは、第3検出値が大きいほど、左への旋回速度を大きく設定する(S72)。ステップS72の後、または、ステップS69でNoと判定した場合には、スマートフォンSPは、本処理を終了する。
【0099】
ステップS68において第3検出値が第4検出値よりも大きくないと判定した場合には(No)、スマートフォンSPは、第4検出値が第4標準圧力値よりも大きいか否かを判定する(S73)。ステップS73において第4検出値が第4標準圧力値よりも大きいと判定した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、着座者の姿勢が右傾姿勢であると判定して(S74)、車両CRを右旋回させるための第4コマンドを設定する(S74)。
【0100】
ステップS75の後、スマートフォンSPは、第4検出値が大きいほど、右への旋回速度を大きく設定する(S76)。ステップS76の後、または、ステップS73でNoと判定した場合には、スマートフォンSPは、本処理を終了する。
【0101】
この形態でも、車両CRのアクセル操作、ブレーキ操作および旋回操作と、着座者の姿勢とが、人間の感覚に合っているので、着座者が直感的にカーレースゲームを楽しむことができる。
【0102】
シートSに設けた複数の圧力センサ21~26から取得される圧力値を利用した着座者の姿勢判定および操作対象の速度設定は、前述した各実施形態の方法に限定されるものではない。例えば、スマートフォンSPは、右側バックセンサSE4から第4低圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が左傾姿勢であると判定し、左傾姿勢と判定したときの第4低圧力値が小さいほど、操作対象の左への速度(移動・旋回)を大きくしてもよい。また、スマートフォンSPは、左側バックセンサSE3から第3低圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が右傾姿勢であると判定し、右傾姿勢と判定したときの第3低圧力値が小さいほど、操作対象の右への速度(移動・旋回)を大きくしてもよい。
【0103】
スマートフォンSPは、後側クッションセンサSE2から第2低圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が前傾姿勢であると判定し、前傾姿勢と判定したときの第2低圧力値が小さいほど、操作対象の画面上方への移動速度を大きくしてもよい。また、スマートフォンSPは、前側クッションセンサSE1から第1低圧力値を取得した場合に、着座者の姿勢が後傾姿勢であると判定し、後傾姿勢と判定したときの第1低圧力値が小さいほど、操作対象の画面下方への移動速度を大きくしてもよい。
【0104】
また、1つのセンサからの圧力値に基づいて、前傾と後傾の判定をしてもよいし、左傾と右傾の判定をしてもよい。例えば、前側クッションセンサSE1から第1高圧力値を取得した場合に前傾と判定し、前側クッションセンサSE1から第1低圧力値を取得した場合に後傾と判定してもよい。なお、この場合であっても、前傾と判定したときの第1高圧力値が大きいほど操作対象の画面上方への移動速度を大きくし、後傾と判定したときの第1低圧力値が小さいほど操作対象の画面下方への移動速度を大きくすることができる。
【0105】
また、第1センサ、第2センサ、第3センサおよび第4センサは、前述した各実施形態に限定されない。例えば、シートバックS2に設けたセンサを、第2センサとしてもよいし、シートクッションS1に設けたセンサを、第3センサまたは第4センサとしてもよい。
【0106】
コマンドの内容は、前述した各実施形態に限定されない。例えば、第1コマンドを、シューティングゲームにおける戦闘機から弾丸を発射させるためのコマンドとしてもよい。
【0107】
前述した各ゲームの結果は、クラウドにあげてもよい。この場合、クラウドを介して、世界ランキングなどを見ることができる。また、自分の記録をクラウドに蓄積し、後で振り返ることができる。さらに、他人の記録を見ることもできる。また、自分と他人の記録を比較することができる。
【0108】
前述したシート体験システムは、自動運転車にも適用することができる。この場合、自動運転時に、シート体験システムを使用可能な設定にするとよい。また、シート体験システムの使用中においては、自動運転解除前に、シート体験システムの使用を制限するとよい。なお、この場合、突然に使用制限とならないように、事前案内手段を作動させて、音声案内や表示案内によって、所定時間後に使用制限となる旨を通知してもよい。
【0109】
また、車両の停車時のみに、シート体験システムを使用可能に設定してもよい。なお、停車の判定は、車速が0であるかや、シフトレバーがパーキングレンジに位置するかなどで、判定すればよい。
【0110】
シート体験システムの制御部は、外部環境やシート体験システム自体の異常を取得可能となっていてもよい。この場合、異常を取得したときに、シート体験システムの使用を制限するとよい。シート体験システム自体の異常としては、例えば、センサの異常、ハーネスの異常(断線)、ECU異常、通信異常(端末の異常を含む)、シートに設けたヒータやファンなどの温度調整装置の異常や、シートの一部または全部を動かすアクチュエータの異常や、シートウェイトセンサや温度センサなどの他のセンサの異常や、シートに用いられる芳香剤の容量が少ないなど、消耗品の残量や使用状況に関する異常や、シート制御部自体の異常等が含まれる。また、外部環境の異常としては、例えば、アプリを実行するのに望ましくない状況であり、他の車が接近しているとか、道路状況が悪い、車速が高い、地震が発生した、目的地が近い、目的地に着いた、目的地に着くまでゲームが終わらないことが予測される、残燃料が少ない、バッテリーの残容量が少ない、車内または車外の温度や湿度が高い、等が含まれる。
【0111】
使用を制限する方法は、一度の異常で制限する方法や、複数回の異常で制限する方法などが挙げられる。制限の仕方も何段階か設定可能である。例えば、第1段階では、使用を止めたほうが好ましいことを勧めることをメッセージや音声等で報知し、第2段階では、使用の禁止を強く提案することをメッセージや音声等で報知し、第3段階では、システムを強制終了する。
【0112】
また、所定箇所のセンサの異常を検出したときには、異常が検出されていないセンサを使ったゲームを推奨するように、シート体験システムを構成することもできる。例えば、シートクッションの座面のセンサが異常である場合には、シートクッションの座面の左右両側にある座面から盛り上がった側部のセンサを使ったゲームを推奨する。
【0113】
前記実施形態では、センサとして圧力センサ21~26を例示したが、本発明はこれに限定されず、センサは、例えば光センサ、静電容量センサ、音の大きさを検出するセンサなどであってもよい。例えば、光センサまたは静電容量センサを利用する場合には、センサと着座者の身体との距離に応じて、操作対象の速度を設定することができ、音の大きさを検出するセンサでは、例えば検出した音の大きさに応じて、操作対象の速度を設定することができる。
【0114】
また、センサは、シートクッションまたはシートバックの左右の側部(座面から突出した部分)、ヘッドレスト、アームレスト、または、シート周りの部品(インパネ、ドア、フロア)などに設けられていてもよい。
【0115】
前記実施形態では、シートSとして、自動車で使用される車両用シートを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。また、シートは、乗物用シートに限らず、例えば、座椅子などであってもよい。
【0116】
前記実施形態では、端末としてスマートフォンSPを例示したが、本発明はこれに限定されず、端末は、例えばタブレットなどのスマートフォンSP以外の携帯端末であってもよい。また、端末は、シートに備え付けの端末であり、シートに一体に設けられていてもよい。また、端末は、カーナビゲーションシステムを構成する端末であってもよい。
【0117】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 シート体験システム
21~26 圧力センサ
DSP ディスプレイ
S シート
S10 シート本体
SP スマートフォン