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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】噴流はんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240731BHJP
   B23K 1/08 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H05K3/34 506K
B23K1/08 320Z
H05K3/34 506D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024528827
(86)(22)【出願日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2023021647
(87)【国際公開番号】W WO2023243575
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2022094828
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023008559
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰司
(72)【発明者】
【氏名】田口 寛
(72)【発明者】
【氏名】倉本 恭子
(72)【発明者】
【氏名】半澤 編理
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 智丈
(72)【発明者】
【氏名】市川 広一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克宏
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-111472(JP,A)
【文献】特開2002-329956(JP,A)
【文献】特開2001-308507(JP,A)
【文献】特開平9-186451(JP,A)
【文献】特開2000-340938(JP,A)
【文献】特開2002-118353(JP,A)
【文献】特開2005-294671(JP,A)
【文献】特開2007-258487(JP,A)
【文献】実開平1-96259(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
溶融はんだを基板に供給するための供給口と、
前記供給口よりも基板の搬送方向における下流側に位置し、前記貯留槽の上方位置に設けられ、気体を供給する冷却部と、
を備え、
前記冷却部は、気体を供給するためのスリット状の第一供給口と、気体を供給するための複数の開口又はノズルからなる第二供給口と、を有する、噴流はんだ付け装置。
【請求項2】
前記冷却部は、搬送される基板に下方から気体を供給する下方側冷却部と、搬送される基板に上方から気体を供給する上方側冷却部と、を有する、請求項1に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項3】
前記下方側冷却部は、前記上方側冷却部よりも基板の搬送方向における下流側に位置する、請求項2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項4】
前記冷却部は、基板が搬送される方向の下流側に気体が流れるように気体を供給する、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項5】
前記冷却部は、搬送される基板に下方から気体を供給する下方側冷却部と、搬送される基板に上方から気体を供給する上方側冷却部と、を有し、
前記上方側冷却部は、基板の搬送方向に沿った斜め下方に向かって気体を供給し、
前記下方側冷却部は、基板の搬送方向に沿った斜め上方に向かって気体を供給する、請求項4に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項6】
前記冷却部は、基板に供給されたはんだを冷却するための第一冷却部と、基板を冷却するための第二冷却部とを有する、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項7】
前記冷却部は、常温の空気を気体として供給する、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項8】
前記供給口は、第一筐体に設けられ、溶融はんだを供給するための第一供給口と、第二筐体に設けられ、溶融はんだを供給するための第二供給口と、を有し、
基板搬送方向に沿った前記第一供給口と前記第二供給口と間には、溶融はんだが下方に落下する箇所が設けられていない、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項9】
前記冷却部によって冷却した後の基板の温度を測定する測定部を備える、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項10】
前記測定部によって測定された基板の温度を表示する表示部を備える、請求項9に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項11】
前記測定部によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、基板の搬入を停止するための信号を送信する、請求項9に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項12】
前記測定部によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、基板の温度が所定の温度範囲外であることを報知する報知部を備える、請求項9に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項13】
前記第一供給口から供給される気体を基板搬送方向の下流側に向かって流す返し部が設けられる、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項14】
前記冷却部は、搬送される基板に下方から気体を供給するためのスリット状の第一下方側供給口と、搬送される基板に下方から気体を供給するための複数の開口又はノズルからなる第二下方側供給口と、を有する、又は搬送される基板に上方から気体を供給するためのスリット状の第一上方側供給口と、搬送される基板に上方から気体を供給するための複数の開口又はノズルからなる第二上方側供給口と、を有する、請求項1又は2に記載の噴流はんだ付け装置。
【請求項15】
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
溶融はんだを基板に供給するための供給口と、
前記供給口よりも基板の搬送方向における下流側に位置し、前記貯留槽の上方位置に設けられ、気体を供給する冷却部と、
を備え、
前記冷却部は、複数の開口又はノズルからなる第二供給口を有し、搬送される基板に下方から気体を供給する下方側冷却部と、スリット状の第一供給口を有し、搬送される基板に上方から気体を供給する上方側冷却部と、を有する、噴流はんだ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを基板に供給する噴流はんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融はんだを基板に対して供給するための噴流はんだ付け装置が知られており、基板を冷却するための冷却ゾーンが設置されている。例えば、特開2011-222783号公報ではプリヒータ52及び噴流はんだ槽80にならんで冷却機56が設置されており、冷却機56で基板を冷却することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明者らが検討したところ、特開2011-222783号公報で示される冷却機が設置されている冷却ゾーンまで基板を冷却しない場合には、はんだの硬化として不十分な場合があることがあることを見出した。特に低温溶融はんだの場合には、はんだの硬化が不十分であることにより、はんだの脆化が生じ得る。
【0004】
本発明は、はんだの冷却をより早期のタイミングで行うことで、従来の冷却ゾーンだけを用いた態様と比較して、はんだの脆化をより確実に防止できる噴流はんだ付け装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概念1]
本発明による噴流はんだ付け装置は、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
溶融はんだを基板に供給するための供給口と、
前記供給口よりも基板の搬送方向における下流側に位置し、前記貯留槽の上方位置に設けられ、気体を供給する冷却部と、
を備えてもよい。
【0006】
[概念2]
概念1による噴流はんだ付け装置において、
冷却部は、搬送される基板に下方から気体を供給する下方側冷却部と、搬送される基板に上方から気体を供給する上方側冷却部と、を有してもよい。
【0007】
[概念3]
概念2による噴流はんだ付け装置において、
下方側冷却部は、上方側冷却部よりも基板の搬送方向における下流側に位置してもよい。
【0008】
[概念4]
概念1乃至3のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置において、
前記冷却部は、基板が搬送される方向の下流側に気体が流れるように気体を供給してもよい。
【0009】
[概念5]
概念4による噴流はんだ付け装置において、
冷却部は、搬送される基板に下方から気体を供給する下方側冷却部と、搬送される基板に上方から気体を供給する上方側冷却部と、を有し、
上方冷却部は、基板の搬送方向に沿った斜め下方に向かって気体を供給し、
下方冷却部は、基板の搬送方向に沿った斜め上方に向かって気体を供給してもよい。
【0010】
[概念6]
概念1乃至5のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置において、
前記冷却部は、基板に供給されたはんだを冷却するための第一冷却部と、基板を冷却するための第二冷却部とを有してもよい。
【0011】
[概念7]
概念1乃至6のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置において、
冷却部は、常温の空気を気体として供給してもよい。
【0012】
[概念8]
概念1乃至7のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置において、
供給口は、第一筐体に設けられ、溶融はんだを供給するための第一供給口と、第二筐体に設けられ、溶融はんだを供給するための第二供給口と、を有し、
基板搬送方向に沿った前記第一供給口と前記第二供給口と間には、溶融はんだが下方に落下する箇所が設けられていなくてもよい。
【0013】
[概念9]
概念1乃至8のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置は、
前記冷却部によって冷却した後の基板の温度を測定する測定部を備えてもよい。
【0014】
[概念10]
概念9による噴流はんだ付け装置において、
前記測定部によって測定された基板の温度を表示する表示部を備えてもよい。
【0015】
[概念11]
概念9又は10による噴流はんだ付け装置は、
前記測定部によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、基板の搬入を停止するための信号を送信してもよい。
【0016】
[概念12]
概念9乃至11のいずれか1つによる噴流はんだ付け装置は、
前記測定部によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、基板の温度が所定の温度範囲外であることを報知する報知部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、はんだの冷却をより早期のタイミングで行うことで、従来の冷却ゾーンだけを用いた態様と比較して、はんだの脆化をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施の形態によるはんだ付け装置を示した上方平面図である。
図2図2は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の上方平面図である。
図3図3は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の第一態様を示した概略側方断面図である。
図4図4は、本実施の形態による下方側冷却部の一例を示した斜視図である。
図5図5は、本実施の形態による上方側冷却部の一例を示した斜視図である。
図6図6は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の第二態様を示した概略図である。
図7図7は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の第三態様を示した概略図である。
図8図8は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の第四態様を示した概略側方断面図である。
図9図9は、本実施の形態において2つのスリット状の第二開口部が設けられた態様を示した上方平面図である。
図10図10は、本実施の形態による噴流はんだ付け装置の第五態様を示した概略側方断面図である。
図11図11は、本実施の形態によるはんだ付け装置において冷却ゾーンを設置しない態様を示した概略図である。
図12図12は、上方側冷却部の上方側本体部及び下方側冷却部の下方側本体部が取り換え可能となっている態様を示した概略側方断面図である。
図13図13は、上方側冷却部の上方側本体部が水平方向及び上下方向に移動可能となり、下方側冷却部の下方側本体部が水平方向及び上下方向に移動可能となっている態様を示した概略側方断面図である。
図14図14は、測定部や案内部等を斜視図で示し、測定部が表示部及び報知部と通信可能であることを示した図である。
図15A図15Aは、測定部を拡大して示した斜視図である。
図15B図15Bは、測定部を拡大して示した斜視図であって、図15Aとは反対側を示した斜視図である。
図16図16は、案内部及び表示部を設置した態様を示した概略側方断面図である。
図17図17は、測定部及び案内部を設置したはんだ付け装置を示した上方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態
《構成》
図1に示すはんだ付け装置は、例えば、半導体素子、抵抗、コンデンサ等の電子部品を回路上に搭載した基板200に対して、はんだ付け処理する装置である。典型的には電子部品等は基板200の下方側に位置付けられることになる。はんだ付け装置は、本体部1と、基板200を搬送する搬送部5とを有している。本体部1は、基板200を搬入する搬入口2と、基板200を搬出する搬出口3とを有している。基板200の搬送は、側方から見て所定の角度、例えば3~6度程度の傾斜をもって行われてもよい(図3参照)。この場合、基板搬送方向Aの上流と比較して下流の方が高い位置に位置付けられることになる。但し、これに限られることはなく、基板200の搬送が例えば水平に行われるようにしてもよい。搬送部5は、駆動力を付与する搬送駆動部(図示せず)と、基板200を案内する搬送レール6とを有してもよい。搬送レール6としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等が使用されてもよい。
【0020】
図1に示すように、本体部1には、基板200にフラックスを塗布するフラクサ10と、フラックスを塗布された基板200を予備加熱するプリヒータ部15と、溶融したはんだを噴流して基板200に接触させる噴流はんだ付け装置100と、はんだ付けされた基板200を冷却する冷却機20と、が設けられてもよい。搬送部5の搬送レール6に沿って搬送される基板200は、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100及び冷却機20を順に通過することになる。冷却機20が設けられる箇所が冷却ゾーンとなるが、後述するように、本実施の形態では上方側冷却部310や下方側冷却部330等の冷却部を設けることから、図11で示すように、冷却機20を設置せずに冷却ゾーンを設けなくてもよい。噴流はんだ付け装置100は、各構成要素に指令を与えて制御する制御部50と、様々な情報を記憶する記憶部60と、を有してもよい。なお、図1では、制御部50、記憶部60及び後述する操作部70以外について、はんだ付け装置が上方平面図で示されている。
【0021】
フラクサ10は、搬送された基板200にフラックスを塗布するために用いられる。フラックスは溶剤及び活性剤等を含んでもよい。フラクサ10は、複数の塗布装置を設けてもよい。はんだの種類や基板200の品種に応じて、フラックスの種類を使い分けるようにしてもよい。
【0022】
プリヒータ部15は、基板200を加熱することで、基板200を均一に所定の温度まで上昇させる。このように基板200を加熱すると、基板200の所定の箇所にはんだが付着されやすくなる。プリヒータ部15は、例えば、ハロゲンヒータが用いられる。ハロゲンヒータは、基板200を設定した温度まで急速に加熱させることができる。また。ヒータによって加熱された気体(熱風)をファンによって基板200に吹き付けて、基板200を加熱するようにしてもよい。また、プリヒータ部15としては、遠赤外線パネルヒータ等を用いてもよい。
【0023】
冷却機20は、図示しない冷却ファンを有し、噴流はんだ付け装置100ではんだ付け処理された基板200を冷却する。冷却ファンの制御はON及びOFFだけでもよいが、風速を調整する等するようにしてもよい。また、冷却機20としては、基板200が所定の温度となるまで冷却するようにチラー等を用いてもよい。
【0024】
図1に示す制御部50は、搬送レール6を含む搬送部5、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ付け装置100、冷却機20、操作部70及び記憶部60に通信可能に接続されている。通信可能な接続には有線によるものと無線によるものの両方が含まれている。操作部70は、液晶表示パネルやテンキー等を有してもよく、典型的にはパソコン、スマートフォン、タブレット、タッチパネル等である。作業者が操作部70を操作することで、制御部50は、搬送部5による搬送速度や基板200を搬送するタイミング、フラクサ10でのフラックスの温度、フラックスの塗布量、プリヒータ部15の温度、噴流はんだ付け装置100の溶融はんだSの温度や、噴流量、噴流速度、冷却機20が有する冷却ファンのONやOFF等を制御するようにしてもよい。記憶部60は、操作部70で入力された情報や、制御部50の指示、噴流はんだ付け装置100の稼働時間等を記憶するようにしてもよい。なお、基板200の搬送速度は毎秒1~3cm程度である。
【0025】
次に、本実施の形態の噴流はんだ付け装置100について説明する。
【0026】
図3に示すように、噴流はんだ付け装置100は、溶融はんだSを貯留する貯留槽110と、溶融はんだSを基板200に供給するための供給口と、供給口よりも基板200の搬送方向における下流側(図3の右側)に位置し、貯留槽110の上方位置に設けられ、基板200に供給されて基板200に付着したはんだを冷却するための気体を供給する下方側冷却部330及び/又は上方側冷却部310を含む冷却部と、を有してもよい。供給口は、2種類の第一供給口125及び第二供給口135を有してもよい。そして、第一駆動部である第一ポンプ141からの駆動力を受けて、第一供給口125から溶融はんだSが噴出され、第二駆動部である第二ポンプ146からの駆動力を受けて、第二供給口135から溶融はんだSが噴出されてもよい。
【0027】
第一供給口125及び第二供給口135から噴出される溶融はんだSは下方から上方に向けて噴流される。第一ポンプ141からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。同様に、第二ポンプ146からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴流させ、基板200の所定の箇所にはんだを付着させる。溶融はんだSは図示しないヒータで例えば160℃~260℃程度の温度に溶融はんだSを加熱する。第一供給口125及び第二供給口135から供給された溶融はんだは、循環されて利用されてもよい。この場合には、図示しないフィルターを通過して循環されるようにしてもよい。第一ポンプ141及び第二ポンプ146は典型的には各々1つのポンプで構成されるが、第一ポンプ141及び第二ポンプ146は各々が複数のポンプで構成されるようにしてもよい。
【0028】
図2及び図3に示す噴流はんだ付け装置100の第一供給口125は複数の第一開口部126を有しており、第一開口部126は一次噴流ノズルを構成する。複数の第一開口部126は大量の溶融はんだSを勢いよく基板200に供給するために用いられる。第二供給口135の第二開口部136は二次噴流ノズルであり、第一供給口125と比較して弱い勢いで溶融はんだSを基板200に供給するために用いられる。第一供給口125から供給される噴流はんだは勢いよく溶融はんだSを基板200に衝突させる動的な供給であって、溶融はんだSを基板200の隅々まで行きわたらせるための供給である。他方、第二供給口135から供給される噴流はんだは静的な供給であり、静かな流れからなる溶融はんだS内を通過させることで、基板200の電極等にはんだを綺麗に付けるための供給である。なお、前記噴流はんだ付け装置の構成及び溶融はんだの噴流の勢い等の条件は一例であり、本願は前記構成に限定されない。
【0029】
図3に示すように、第一供給部120は、第一筐体121と、第一筐体121の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1つ又は複数の第一開口部126を有する第一供給口125と、を有している。第一開口部126は第一筐体121の上面から上方に突出して設けられてもよい。第二供給部130は、第二筐体131と、第二筐体131の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1又は複数の第二開口部136を有する第二供給口135と、を有している。第一筐体121と第二筐体131とは離間して設けられてもよいが(図3参照)、これらは一体となって設けられてもよい(図6及び図7参照)。第一筐体121と第二筐体131が一体となる場合には、壁面の一部が共有されるようにしてもよい。本実施の形態では、一例として、複数の円形状の第一開口部126を有する第一供給口125と、1つのスリット状の第二開口部136を有する第二供給口135とを用いて説明する。但し、このような態様に限られることはなく、例えばスリット状の第二開口部136は複数設けられてもよく、この場合には、平行して延在する態様で複数のスリット状の第二開口部136が設けられてもよい(図9参照)。
【0030】
溶融はんだSの温度は一般的にははんだの溶融温度+30℃となっている。近年、部品ダメージの低減及び機械電力消費量削減から、作業温度を下げたいというニーズが高まってきている。また、SnやAgの相場が高騰しており、これらを使わないはんだを用いることも検討されてきており、典型的にはSAC305(Ag:3質量%、Cu:0.5質量%、残部Snからなるはんだ合金。融点217℃、引張強度53.3MPs、伸び46%)の代わりに、Sn-58Bi(Bi:58質量%、残部Snからなるはんだ合金。融点139℃、引張強度76.5MPs、伸び27%)が用いられることが検討されている。Sn-58Biは低温の共晶はんだである。なお、Sn-58Biを使うと、はんだ付けを200℃以下の温度で行うことができる。他方、Sn-58Biは硬くてもろいという性質もあるので、その取扱いが難しい素材ではある。
【0031】
溶融はんだSを供給している間、第一供給口125から供給される溶融はんだSと、第二供給口135から供給される溶融はんだSは混合される。このようにして混合された溶融はんだは、第一供給口125と第二供給口135との間において、搬送部5によって搬送される基板200から離間しない構成になってもよい(図6及び図7参照)。このような構成を採用することで、溶融はんだSが酸化すること(酸化くずの発生)を防止できることができる。この結果、利用できなくなるはんだの量を抑えることができ、材料コストを下げることができる。
【0032】
基板200は搬送レール6に支えられて搬送されることになるが、混合された溶融はんだSの上面は、第一供給口125と第二供給口135との間の基板搬送方向Aに沿った全長さ領域において、側方から見た場合に基板200を搬送する搬送レール6の下端よりも下方に位置付けられないようになってもよい。本実施の形態において「第一供給口125と第二供給口135との間」とは、第一供給口125の基板搬送方向Aにおける下流側の端部と、第二供給口135の基板搬送方向Aにおける上流側の端部との間のことを意味している(図2及び図3の「G」参照)。なお、図6及び図7では、第一ポンプ141及び第二ポンプ146以外は、側方から見た断面図として示されている。
【0033】
第二供給口135の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z2は、第一供給口125の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z1よりも小さくなってもよい。このような態様を採用する場合には、第二供給口135から供給される溶融はんだSの量を第一供給口125から供給される溶融はんだSの量よりも容易に少なくすることができる。この結果として、第一供給口125から供給される溶融はんだSの複数の波(凸形状)が第二供給口135から供給される溶融はんだSによって潰されてしまうことを防止でき、第一供給口125からの溶融はんだSの動的な供給と第二供給口135からの溶融はんだSの静的な供給の両方をバランスよく提供することができる。なお、図7に示すように第二供給口135の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z2が大きい場合には、供給される溶融はんだSの量が多くなり過ぎないように調整しつつ、基板200が第二供給口135と第一供給口125との間で溶融はんだSに接触し続けるように調整しなければならい点で、その調整が困難になる。この観点からすると、第二供給口135の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z2が第一供給口125の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z1よりも小さくなる態様を採用することは有益である。
【0034】
第一開口部126から供給される単位時間あたりの溶融はんだSの総量及び二次噴流ノズルである第二開口部136から供給される単位時間あたりの溶融はんだSの総量は、基板200の種類に応じて変更できてもよい。基板200の識別情報が操作部70から入力されると、記憶部60から対応する溶融はんだSの供給量が制御部50によって読み出され、読み出された供給量に調整されて溶融はんだSが第一開口部126及び第二開口部136から供給されるようにしてもよい。操作部70はバーコードといったコード情報を読み取り可能となってもよく、基板200のコード情報を読み取ることで、制御部50が当該基板200に対する溶融はんだSの供給量を自動で調整するようにしてもよい。
【0035】
一次噴流ノズルである第一開口部126から供給される溶融はんだSは、二次噴流ノズルである第二開口部136から供給される溶融はんだSの面よりも高い位置まで噴出されてもよい。噴出される溶融はんだSの高さは第一開口部126の先端から例えば10mm程度である。第二供給口135から供給される溶融はんだSは第一供給口125から供給される溶融はんだSによって押し上げられるというような状態となる。但し、溶融はんだSは同じ種類の液体であることから、第一開口部126から供給される溶融はんだSと第二供給口135から供給される溶融はんだSとは混じり合った状態となる。
【0036】
第二供給口135の基板搬送方向Aの下流側には、水平方向に延在する又は下流側に向かうにつれて下方に下がる下流側調整部182が設けられてもよい(図3参照)。この下流側調整部182の高さは適宜変更できるようにしてもよい。第一供給口125の基板搬送方向Aの上流側には、水平方向に延在する又は下流側に向かうにつれて上方に上がる上流側調整部181が設けられてもよい。上流側調整部181及び下流側調整部182は直線状に傾斜してもよいし、縦断面において円弧を描くようにして傾斜してもよい(図6参照)。上流側調整部181及び下流側調整部182の高さ調整は手動で行われてもよいし、制御部50からの指令を受けて自動で行われてもよい。制御部50からの指令は基板200の識別情報に基づいて行われてもよい。このように上流側調整部181及び下流側調整部182の高さを調整することによっても、基板200に対して供給される溶融はんだSの量を調整できる点で有益である。
【0037】
搬送レール6の高さ位置も調整可能となってもよい(図3参照)。このような態様を採用した場合には、第一ポンプ141及び第二ポンプ146の駆動力を制御することに加え又はその代わりに、搬送レール6の高さ位置を調整することでも、基板200が第一供給口125と第二供給口135との間で溶融はんだSに接触し続ける構成を実現することができる点で有益である。搬送レール6の高さ位置は手動で行われてもよいし、制御部50からの指令を受けて自動で行われてもよい。制御部50からの指令は基板200の識別情報に基づいて行われてもよい。
【0038】
搬送レール6の延在する方向に沿った(基板搬送方向Aに沿った)第一供給口125と第二供給口135との間の距離Gは、第一供給口125の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z1よりも小さくなってもよい。このような態様を採用する場合には、第一供給口125と第二供給口135との間の距離を短くすることができる。このため、第二供給口135から供給される溶融はんだSの量を少なくしながら、第一供給口125と第二供給口135との間において、溶融はんだSが搬送部5によって搬送される基板200から離間しない態様を実現できる点で有益である。
【0039】
搬送レール6の延在する方向に沿った第一供給口125と第二供給口135との間の距離Gは、第二供給口135の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅(搬送レール6の延在する方向に沿った距離)Z2よりも小さくなってもよい。本実施の形態では、一例として、第二供給口135の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z2が第一供給口125の基板搬送方向Aに沿った設置領域の幅Z1よりも小さいことを想定している(図3及び図6参照)。このため、この態様を採用する場合には、第一供給口125と第二供給口135との間の距離はかなり近接するものとできる(図8参照)。このような態様を採用する場合には、第一供給口125と第二供給口135との間の距離をさらに短くすることができる。このため、第二供給口135から供給される溶融はんだSの量をさらに少なくしながら、第一供給口125と第二供給口135との間において、溶融はんだSが搬送部5によって搬送される基板200から離間しない態様を実現できる点で有益である。
【0040】
冷却部は、基板200の搬送レール6よりも低い位置であって、貯留槽110の上方側に位置する下方側冷却部330と、搬送レール6よりも高い位置であって、貯留槽110の上方位置に設けられる上方側冷却部310と、を有してもよい。本願において「貯留槽110の上方位置に設けられる」とは、貯留槽110の端部から上方向(鉛直方向)に直線を引いて領域を区切った際に、直線で区切られた領域α内に少なくとも一部が存在することを意味している。このため、下方側冷却部330が貯留槽110の上方位置に設けられるというのは、貯留槽110から上方向(鉛直方向)に直線を引いて領域を区切った際に、当該領域α内に下方側冷却部330の少なくとも一部が存在することを意味する。同様に、上方側冷却部310が貯留槽110の上方位置に設けられるというのは、貯留槽110から上方向(鉛直方向)に直線を引いて領域を区切った際に、当該領域α内に上方側冷却部310の少なくとも一部が存在することを意味する。
【0041】
なお、下方側冷却部330は基板200に付着したはんだを直接冷却することになるので、冷却効果の観点からは大きくなる。このため、上方側冷却部310及び下方側冷却部330のいずれかだけを設置するということであれば、下方側冷却部330を設置することが第一候補として考えられる。
【0042】
また従来の構成であれば、貯留槽110に溜まっている溶融はんだSからの熱を基板200が受けることになるが、本実施の形態のように貯留槽110の上方位置に下方側冷却部330を設けることで、溶融はんだSからの熱による影響を遮断しつつ、下方側冷却部330から供給される気体ではんだを冷却できる点で有益である。
【0043】
貯留槽110の上方側に位置する下方側冷却部330や上方側冷却部310を設けることで、溶融はんだSが基板200に供給された直後(一例としては2~5秒後)に、はんだを冷却することができ、はんだを硬化することができるようになる。このため、はんだの強度が低下してしまうこと(はんだの脆化)を防止できる。特にSn-58Bi等の融点が低温である低温溶融はんだの場合には、この効果がかなり大きい。なお、はんだの硬化までに時間がかかると、はんだが硬化し終えていない柔らかい状態で、搬送中に振動が加わることになるが、当該振動が一つの原因となってはんだが脆化してしまうと考えられる。ちなみに、従来から存在する冷却ゾーンに至るまでには10秒以上の時間がかかるが、本実施の形態では、当該時間と比較してかなり短い時間ではんだの硬化を開始できる点で異なっている。なお、本実施の形態において、低温溶融はんだとは180℃以下の融点を有するはんだを意味している。
【0044】
また、第一供給口125及び第二供給口135といった供給口の設置された位置に冷却部を設けるのではなく、第一供給口125及び第二供給口135よりも基板200の搬送方向における下流側の位置(図3に示す態様では右側の位置)に下方側冷却部330及び/又は上方側冷却部310を設けることで、第一供給口125及び第二供給口135から供給されている最中の溶融はんだSが冷却されてしまうことを防止できる。
【0045】
上方側冷却部310及び/又は下方側冷却部330は、気体を供給するスリット状の開口を有してもよいし、複数の小径の開口を有してもよい。上方側冷却部310及び/又は下方側冷却部330から供給される気体の風速は毎秒数メートルから数十メートル程度としてもよい。上方側冷却部310及び下方側冷却部330は、常温の空気を気体として供給してもよい。下方側冷却部330と上方側冷却部310の両方を設けることで、基板200の上下から冷却を素早く行うことができ、はんだの強度が低下してしまうこと(はんだの脆化)をより確実に防止できる。また常温の空気を気体として供給する場合には、はんだの溶融温度と比較してかなり低い温度である空気を基板200に供給できる点で有益である。また、窒素等ではなく空気を供給することで、窒素等を供給する際に必要となる密閉構造を採用する必要がなくなり、装置構成を簡易なものとし、低コストで製造することができる点で有益である。また密閉構造とすると熱がこもりやすくなることから、その観点からも開放型の装置構成とすることが有益である。また窒素を供給する場合には溶融はんだの跳ね返りが大きくなる傾向にあるが、空気を採用することでそのような跳ね返りが発生することを防止することができる。また窒素を利用する場合には、装置を稼働するためのエネルギーを下げることができ、カーボンニュートラルに向けた装置とすることができる。上方側冷却部310及び/又は下方側冷却部330から供給される空気はチラー等の冷却機構によって冷却されたものとなってもよいし、冷却機構を設けずにそのまま外気を供給するようにしてもよい。冷却機構を設けない場合には、装置で利用するエネルギーを減らすことができる。
【0046】
上方側冷却部310は、基板搬送方向に直交して延在した上方側本体部311と、上方側本体部311の側面に設けられ、空気等の気体を噴出して供給する上方側供給口315とを有してもよい(図5参照)。上方側供給口315は図5で示すような直線状のスリットであってもよいが、複数の小型の開口や突出ノズルが設けられてもよい(図6及び図7参照)。上方側本体部311は、図9で示すように一対の搬送レール6をまたがって延在してもよいし、図2で示すように一対の搬送レール6の間で延在してもよい。このような上方側冷却部310を設けることで、基板200を全体にわたって素早く冷却することができる。特に上方側供給口315が直線状のスリットとなっている場合には、より均一に基板200を上方側から冷却することができる。上方側供給口315としてノズルを採用する場合には、気体の供給方向を定めることができ、基板200にはんだを付着させている最中に当該はんだを冷やしてしまうことを防止でき、はんだつららの発生をより確実に防止できる。
【0047】
下方側冷却部330は、下方側本体部331と、基板200の搬送レール6の下方側から上方に向かって設けられ、空気等の気体を噴出して供給する下方側供給口335a,335bとを有してもよい(図2図4及び図9参照)。下方側供給口335a,335bは直線状のスリットであってもよいし、複数の小型の開口や突出ノズルが設けられてもよい。このような下方側冷却部330を設けることで、溶融はんだが付着している側から基板200を直接冷却することができ、高い冷却効率を実現することができる。下方側供給口335a,335bとしてノズルを採用する場合にも、気体の供給方向を定めることができ、基板200にはんだを付着させている最中に当該はんだを冷やしてしまうことを防止でき、はんだつららの発生をより確実に防止できる。
【0048】
図2及び図9に示す態様では、スリット状の第一下方側供給口335aと、複数のノズルからなる第二下方側供給口335bが設けられている。第一下方側供給口335aは面ではんだを冷却する効果をもち、はんだを冷却して硬化させる機能を主に有している。この場合には、第一下方側供給口335aがはんだを冷却するための第一冷却部としての機能を果たすことになる。他方、複数のノズルからなる第二下方側供給口335bは基板200を冷却する機能を主に担っており、従来であれば冷却ゾーンで行われていた効果を発揮するものである。この場合には、第二下方側供給口335bが基板200を冷却するための第二冷却部としての機能を果たすことになる。このような態様を採用することで、第一下方側供給口335aによってはんだを早期に硬化させつつ、第二下方側供給口335bによって基板を冷却することができるようになる点で有益である。
【0049】
第一下方側供給口335aには基板搬送方向Aの下流側に向かい、第一下方側供給口335aから供給される気体を基板搬送方向Aの下流側に向かって流す、返し部333が設けられてもよく(図4参照)、このような態様を採用することで、第一下方側供給口335aから供給される空気等の気体が基板200にはんだを付着されている最中に供給されてしまうことをより確実に防止できる。図2及び図9に示す態様では、返し部333は示されていないが、図2及び図9において返し部333が設けられる場合には、第一下方側供給口335aの上方全体を覆うようにして、返し部333が設置されることになる。
【0050】
上方側供給口315もまた、スリット状の第一上方側供給口315aと、複数のノズルからなる第二上方側供給口315bとを有してもよい(図6参照)。第一上方側供給口315aは面ではんだを冷却する効果をもち、はんだを冷却して硬化させる機能を主に有してもよい。この場合には、第一上方側供給口315aがはんだを冷却するための第一冷却部としての機能を果たすことになる。他方、複数のノズルからなる第二上方側供給口315bは基板200を冷却する機能を主に担っており、従来であれば冷却ゾーンで行われていた効果を発揮するようにしてもよい。この場合には、第二上方側供給口315bが基板200を冷却するための第二冷却部としての機能を果たすことになる。第一上方側供給口315aにも基板搬送方向Aの下流側に向かい、第一上方側供給口315aから供給される気体を基板搬送方向Aの下流側に向かって流す返し部(図示せず)が設けられてもよい。
【0051】
なお、はんだを冷却して硬化させるという観点からすると、第一下方側供給口335aや第一上方側供給口315aだけが設けられ、第二下方側供給口335bや第二上方側供給口315bは設けられていなくてもよい(図7参照)。
【0052】
上方側供給口315及び下方側供給口335の各々の全体が貯留槽110の上方位置である領域α内に位置付けられてもよい。また、第二上方側供給口315bや第二下方側供給口335bが設けられる場合には、第一上方側供給口315a及び第一下方側供給口335aの各々の全体が貯留槽110の上方位置である領域α内に位置付けられ、第二上方側供給口315bや第二下方側供給口335bについては少なくとも一部が貯留槽110の上方位置である領域α内に位置付けられてもよい。
【0053】
下方側冷却部330は、上方側冷却部310よりも基板200の搬送方向における下流側に位置してもよい。下方側冷却部330が第二供給口135に近づきすぎると、第一供給口125及び第二供給口135から供給される溶融はんだSを被ってしまう可能性があることから、下方側冷却部330を第二供給口135のかなり近接して設置することはできない。他方、上方側冷却部310については、第一供給口125及び第二供給口135から供給される溶融はんだSを被ってしまう可能性は低いことから、基板200の搬送方向に沿って見たときに第二供給口135に近接して設置させることができる。このため、下方側冷却部330が上方側冷却部310よりも基板200の搬送方向における下流側に位置する態様とすることで、基板200にはんだが付着した直後に上方側冷却部310から気体を供給しつつ、下方側冷却部330については溶融はんだSが被らない程度の位置から気体を供給できるようになる。なお、下方側冷却部330が上方側冷却部310よりも基板200の搬送方向における下流側に位置するというのは、上方側冷却部310の上流側端部(図3で言えば左端)が、下方側冷却部330の上流側端部(図3で言えば左端)よりも上流側(図3で言えば左側)に位置することを意味している。
【0054】
冷却部は、基板200が搬送される方向に沿って気体が流れるように供給してもよい。一例として、上方側冷却部310の上方側供給口315は、基板200の斜め上から基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出するように設置されてもよい。このような態様を採用することで、基板200に付着させる最中に溶融はんだの温度が下がってしまうことを防止できる。基板200に溶融はんだを付着させている最中に溶融はんだの温度が急激に下がると、溶融はんだが表面張力によって丸まる前に溶融はんだが固まってしまうことから、はんだつららができてしまうことがある。この点、本態様では、このようなはんだつららができてしまうことを防止できる。特に本実施の形態では、貯留槽110上に冷却部が設けられる構造となっており、溶融はんだを基板200に付着させるエリアと極めて近接した位置で溶融はんだが冷却されることになる。このため、溶融はんだに基板200を付着させる領域での温度低下を避けることが必要となり、本態様のように基板200の斜め上から基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出させる態様をとすることは有益である。また、前述したように上方側冷却部310が下方側冷却部330よりも基板200の搬送方向の上流側に位置する場合には、上方側冷却部310から供給される空気等の気体が基板200に溶融はんだを付着させている最中に溶融はんだに吹き付けられることを防止するために、上方側供給口315が、基板200の斜め上から基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出するように設置されることは有益である。
【0055】
同様の理由から、下方側冷却部330の下方側供給口335a,335bも、基板200の斜め下から基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出するように設置されてもよい。但し、下方側冷却部330が、上方側冷却部310よりも基板200の搬送方向における下流側に位置しており、下方側冷却部330が溶融はんだを基板200に付着させるエリアから上方側冷却部310よりも離れている場合には、このような態様を採用しないようにしてもよい。すなわち、上方側冷却部310の上方側供給口315は基板200の斜め上から基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出するように設置されるが、下方側冷却部330の下方側供給口335a,335bは基板200に対して鉛直方向に気体を噴出するように設置されてもよい(図10参照)。
【0056】
このように基板200の搬送方向の下流側に向かって気体を噴出するようにするために、前述した返し部333(上方側冷却部310に設置されうる返し部は図示せず。)を利用するようにしてもよい。
【0057】
第一筐体121及び第二筐体131の上面であって基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135との間には、溶融はんだSが下方に落下する開口や間隙が設けられていない態様を採用してもよい。溶融はんだSが下方に落下する開口や間隙が設けられている場合には、溶融はんだSが酸素に触れてしまう表面積が大きくなってしまい、酸化物が生成されてしまう。他方、本態様のように基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135と間に開口や間隙といった溶融はんだSが落下する箇所が設けられていない態様を採用した場合には、基板搬送方向Aに沿った第一供給口125と第二供給口135と間で溶融はんだSが落下することがないことから、溶融はんだSの酸化物が生成されることを防止できる。また溶融はんだSが下方に落下する開口や間隙が設けられていない場合には、溶融はんだSが基板200に供給される領域を短くすることができ、その結果として、貯留槽110上で上方側冷却部310及び下方側冷却部330によるはんだの冷却を開始するタイミングを早めることができる点でも有益である。
【0058】
次に、基板200の処理方法の一例について、図11を主に用いて説明する。
【0059】
作業者が基板200を搬送レール6上に載せると、搬送部5が基板200を搬送し、基板200が、搬入口2から本体部1内に搬入される。基板200がフラクサ10上に到達すると、フラクサ10が、基板200の所定の箇所にフラックスを塗布する。
【0060】
搬送部5は、フラクサ10でフラックスが塗布された基板200をプリヒータ部15に搬送する。プリヒータ部15は、基板200を所定の温度まで加熱する。
【0061】
次に、搬送部5は、プリヒータ部15で所定の温度まで加熱された基板200を噴流はんだ付け装置100に搬送する。噴流はんだ付け装置100が、基板200の所定の箇所にはんだ付けを行う。噴流はんだ付け装置100が溶融はんだSを供給している間、第一供給口125から供給される溶融はんだSと、第二供給口135から供給される溶融はんだSは混じり合った状態となるとともに、搬送レール6よりも上方まで溶融はんだSが供給される態様となる。そして一例として、溶融はんだSは、第一供給口125と第二供給口135との間において、搬送部5によって搬送される基板200から離間しない構成になっている。なお、基板200が存在しない状態では、第二供給口135から供給される溶融はんだSを第一供給口125から供給される溶融はんだSが押し上げるようになり、第一開口部126に対応する複数の凸形状が溶融はんだSによって形成されることになる。
【0062】
このように溶融はんだSが基板200に供給された直後(一例としては3~5秒後)に、当該基板200に対して上方側冷却部310及び下方側冷却部330の各々から空気等の気体が供給され、はんだが硬化されることになる。このように溶融はんだSが基板200に供給された直後にはんだが硬化されることから、はんだの脆化が生じることを防止できる。
【0063】
その後、搬送部5が、基板200を搬出口3から排出すると、基板200へのはんだ付け処理が完了となる。なお、冷却ゾーンが設けられている態様では、上方側冷却部310及び下方側冷却部330の各々から供給される気体による冷却の後で、冷却機20による冷却が行われ、その後で、基板200が搬出口3から排出されることになる(図1参照)。
【0064】
変形例としては、図10に示すように、一つのポンプ140が設けられ、第一供給口125へと繋がる第一通路161へ流入される溶融はんだSの量と、第二供給口135へと繋がる第二通路162へ流入される溶融はんだSの量とが調整可能となってもよい。第一通路161へ流入される溶融はんだSの量は第一調整バルブ166によって調整され、第二通路162へ流入される溶融はんだSの量は第二調整バルブ167によって調整されるようにしてもよい。第一調整バルブ166の開度と第二調整バルブ167の開度の相対的な比率によって、第一通路161へ流入される溶融はんだSの量と第二通路162へ流入される溶融はんだSの量とが調整されるようにしてもよい。この態様を採用する場合には、一つのポンプ140だけを用いつつ、第一供給口125から供給される溶融はんだSの量と第二供給口135から供給される溶融はんだSの量が調整可能となる。第一調整バルブ166及び第二調整バルブ167の開度は、操作部70(図1及び図11参照)で入力された又は操作部70で読み取られた基板200の識別情報に基づいて、記憶部60から読み出された情報に基づく制御部50からの指令を受けて、自動で調整されるようにしてもよい。
【0065】
但し、一つのポンプ140だけを用いて溶融はんだSの量を調整することは一定程度の困難性を伴うことから、多数の種類の基板200を1日に処理しなければならない一般的な噴流はんだ付け装置100においては、前述したように2つ以上のポンプを用いて第一供給口125及び第二供給口135から供給される溶融はんだSの量を調整できることは有益である。
【0066】
また別の態様としては、一つのポンプ140だけを用いつつ、第一通路161と第二通路162の流入口の大きさが適宜調整できるようにしてもよい。この場合には、第一通路161と第二通路162の流入口の大きさを手動又は自動で調整することで、第一供給口125から供給される溶融はんだSの量と第二供給口135から供給される溶融はんだSの量が調整可能となる。
【0067】
この変形例においても複数のポンプ140が設けられてもよい。この場合にも、第一調整バルブ166及び第二調整バルブ167の開度や第一通路161と第二通路162の流入口の大きさを調整することで、第一供給口125から供給される溶融はんだSの量と第二供給口135から供給される溶融はんだSの量が調整可能となってもよい。
【0068】
上方側冷却部310及び下方側冷却部330のいずれか又は両方は取り換え方式となり、取り換えることによって、その大きさ等を変更できるようになってもよい(図12参照)。このような態様を採用することで、上方側供給口315や下方側供給口335a,335bの位置を必要に応じて変更することができる。また、上方側冷却部310及び下方側冷却部330のいずれか又は両方は水平方向に沿って移動可能としてもよい(図13参照)。また、上方側冷却部310及び下方側冷却部330の風向が変更できるようになってもよい。例えば上方側冷却部310が水平方向において基板搬送方向Aに直交する方向で延在する軸に沿って回転可能になることで上方側冷却部310からの風の向きが変更可能となってもよい。また下方側冷却部330の突出ノズルの向きが変更可能となることで下方側冷却部330からの風の向きが変更可能となってもよい。このような態様を採用することで、上方側供給口315や下方側供給口335a,335bの位置を適宜変更することができる。なお、下方側冷却部330に関しては、水平方向に沿って伸縮自在(移動可能な態様の一態様である。)となることで、下方側供給口335a,335bの水平方向の位置が調製可能となってもよい。また、上方側冷却部310及び下方側冷却部330のいずれか又は両方は上下方向にも移動可能となってもよい。本願において「水平方向に沿って」とは、水平方向の成分を含む方向であればよく、水平方向に対して斜め方向に沿って移動する態様も含んでいる。同様に「上下方向に沿って」とは、上下方向の成分を含む方向であればよく、上下方向に対して斜め方向に沿って移動する態様も含んでいる。
【0069】
上方側冷却部310及び下方側冷却部330によって冷却した後の基板200の温度を測定する測定部400が設けられてもよい(図14乃至図17参照)。このように測定部400によって搬送されている基板200の温度を測定することで、はんだの硬化又ははんだの硬化を達成するためのはんだ付け直後の冷却が適正になされているかを確認及び管理できるようになる。冷却器20が設置される態様の場合には、測定部400は基板200が冷却機20で冷却される前の位置に設置されてもよい。一例として、測定部400は下方側冷却部330の基板搬送方向Aの下流側の直後に設置されてもよい(図16及び図17参照)。ここで「基板搬送方向Aの下流側の直後」とは、上方側冷却部310及び下方側冷却部330のうち基板搬送方向Aの下流側に位置する部材の下流側端部から30cm以内の領域を意味している。測定部400は例えば温度計センサであってもよい。
【0070】
測定部400によって測定された基板200の温度を表示する表示部410が設けられてもよい(図14及び図16参照)。表示部410は例えば温度計表示器であってもよい。このような表示部410を設けることで、操作者が基板200の温度を容易に確認できるようになる。
【0071】
一例として、上方側冷却部310及び下方側冷却部330よりも基板搬送方向Aの下流側に設置された測定部400によって冷却後の基板200のはんだ付け面側(下方側)の温度を測定する。そして、その温度測定結果を温度計アンプ405へ送信する(図14参照)。そして、温度計アンプ405より、表示部410に温度測定結果を送信し、当該表示部410に温度測定結果が表示される。但し、このような態様に限られることはなく、測定部400による測定結果が表示部410に直接送信され、当該測定結果が表示部410で表示されるようにしてもよい。なお、温度計アンプ405の機能は、典型的には測定部400の計測信号を、表示部410が理解できる信号に変換するものである。このため、測定部400から表示部410に対して表示部410が理解できる信号を送信できる場合には、温度計アンプ405を特に設置する必要はない。
【0072】
測定部400は、基板搬送方向Aに直交する方向であって、水平方向に延在するスライドレール等からなる案内部440に取付けられてもよい(図14及び図15A参照)。この場合には、測定部400は案内部440に沿って移動可能となる。また、案内部440に対して測定部400の角度調整及び上下高さ調整が可能となってもよい(図15B参照)。また、スライドレール等からなる案内部440の上下方向の位置が変更可能なってもよい。また、案内部440の基板搬送方向Aに沿った位置が変更可能となってもよい。
【0073】
図14図15A及び図15Bは一例を示すものである。図14に示す態様では、一対の第一上下調整用アジャストボルト460が示されているが、この第一上下調整用アジャストボルト460を緩めることで案内部440が上下方向延在部470に設けられた縦長の案内孔470aに沿って上下方向に移動可能となり、第一上下調整用アジャストボルト460を締めることで案内部440の上下方向延在部470に対する上下方向の位置が固定されることになる。図15Aに示す態様では、ローレットノブ441が示されているが、このローレットノブ441を緩めることで測定部400が取り付けられた測定部固定部材443が案内部440に沿って移動可能となり、ローレットノブ441を締めることで測定部固定部材443の案内部440に対する水平方向の位置が固定されることになる。図15Bに示す態様では、第二上下調整用アジャストボルト442が示されているが、この第二上下調整用アジャストボルト442を緩めることで測定部固定部材443が当該測定部固定部材443に設けられた縦長の案内孔443aで案内される形で上下方向に移動可能となり(案内部440に対して移動可能となり)、第二上下調整用アジャストボルト442を締めること測定部固定部材443の案内部440に対する上下方向の位置が固定されることになる。
【0074】
また、測定部400によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、制御部50が、基板200の搬入を停止するための制御信号等の信号を部品搭載装置等の噴流はんだ付け装置100の上流側に位置する外部装置500(図17参照)へ送信するようにしてもよい。このような態様を採用した場合には、はんだの硬化又ははんだの硬化を達成するためのはんだ付け直後の冷却が適正になされていない可能性が高い場合に、噴流はんだ付け装置100の上流側に位置する外部装置500から当該基板200が搬入されてしまうことを強制的に停止させることができる。所定の温度範囲は操作部70から入力されるようにしてもよいし、記憶部60で記憶されている情報から読み出されてもよい。
【0075】
測定部400によって測定された基板の温度が所定の温度範囲外である場合に、基板200の温度が所定の温度範囲外であることを報知する警報器等の報知部430が設けられてもよい(図14参照)。このような態様を採用した場合には、はんだの硬化又ははんだの硬化を達成するためのはんだ付け直後の冷却が適正になされていない可能性が高い場合に、そのことを作業者等に報知することができる。報知部430への情報の送信は測定部400から直接行われてもよいし、温度計アンプ405等を介して行われてもよい。なお、報知部としての機能を表示部410が果たしてもよく、その場合には、基板200の温度が所定の温度範囲外であるときに、表示部410が警告表示をするようにしてもよい。
【0076】
上述した変形例を含むあらゆる実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0077】
6 搬送レール
100 噴流はんだ付け装置
110 貯留槽
121 第一筐体
125 第一供給口
131 第二筐体
135 第二供給口
200 基板
310 上方側冷却部
330 下方側冷却部
S 溶融はんだ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17