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特許7530036媒体給送装置、画像読取装置及び媒体給送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】媒体給送装置、画像読取装置及び媒体給送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B65H7/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020079439
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172508
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】潮田 尚之
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122950(JP,A)
【文献】特開2016-050068(JP,A)
【文献】特開2019-077513(JP,A)
【文献】特開平11-286351(JP,A)
【文献】米国特許第06422554(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第109715538(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送部と、
前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、
前記計測部から出力された検出信号を受信可能であるともに、前記給送部による前記媒体の給送を制御する制御部と、
を備えた媒体給送装置であって、
前記制御部は、前記距離の時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かの判断処理を行い、
前記処理後距離データは、前記時系列データを移動平均した値である第1データと、
前記時系列データを前記第1データよりも長期で移動平均した値である第2データと、を含み、
前記制御部は、前記第1データが、前記第2データに閾値を加えて得られる許容範囲から外れた場合、前記給送部による前記媒体の給送を停止させる、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体給送装置において、
前記計測部は、前記載置部に対して前記載置方向の上方に位置する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の媒体給送装置において、
前記計測部は、前記載置方向から見て、前記媒体の幅方向における前記給送部に対する一方と他方とに配置されている、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の媒体給送装置において、
前記計測部は、前記載置方向から見て、前記媒体の給送方向における前記載置部の中央に対する下流に配置されている、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の媒体給送装置において、
前記載置部に載置された給送前の前記媒体の総厚を計測する総厚計測部が設けられ、
前記給送部は、前記載置部に載置された複数の前記媒体のうち最も下方に位置する前記媒体を給送し、
前記制御部は、前記媒体の総厚が第1の厚さにある場合の前記閾値を、前記第1の厚さより薄い第2の厚さにある場合の前記閾値よりも小さくする、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の媒体給送装置において、
前記給送部は、前記載置部に載置された複数の前記媒体のうち最も下方に位置する前記媒体を給送し、
前記載置部に載置された前記媒体の上に媒体を追加する追加操作を検知する操作検知部が設けられ、
前記制御部は、前記操作検知部の検出信号に基づき前記追加操作または前記追加操作の虞があると判断する場合、前記計測部における計測の結果に関わらず前記媒体の給送を継続させる、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の媒体給送装置において、
前記載置部には、前記媒体の有無を検知する媒体検知部が設けられ、
前記制御部は、前記載置部上に媒体が無い状態から前記媒体検知部により媒体を検知すると、前記給送部による媒体の給送を自動で開始する自動給送モードを実行可能であり、
前記制御部は、前記自動給送モードの実行中において、前記給送部が前記媒体の給送を開始した後の前記距離の時系列データを統計処理することで前記処理後距離データを得る、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の媒体給送装置において、
前記載置部には、前記媒体の有無を検知する媒体検知部が設けられ、
前記制御部は、前記媒体検知部が前記媒体を検知した後の前記距離の時系列データを統計処理することで前記処理後距離データを得る、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項9】
媒体を読み取る読取部と、
前記読取部に向けて前記媒体を給送する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の媒体給送装置と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
媒体が載置される載置部と、
前記載置部に載置された複数の前記媒体を1枚ずつ給送する給送部と、
前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、
を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、
前記距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得る第1ステップと、
前記処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かを判断する第2ステップと、を含み、
前記処理後距離データは、前記時系列データを移動平均した値である第1データと、
前記時系列データを前記第1データよりも長期で移動平均した値である第2データと、を含み、
前記第1データが、前記第2データに閾値を加えて得られる許容範囲から外れた場合、前記第2ステップにおいて、前記給送部による前記媒体の給送を停止させる、
ことを特徴とする媒体給送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体給送装置、画像読取装置及び媒体給送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のシート給送装置は、原稿トレイに積載された最上位の原稿の厚み方向への移動に追従可能な移動部と、移動部の位置を検知する測距部とを備える。測距部は、予め決められた所定間隔で移動部までの距離をモニターしている。移動部が最上位の原稿の面に当接した状態において、ピックアップローラーが原稿の給送を開始する。そして、原稿給送中の測距部の検知結果が判定基準値を超えると、搬送異常が発生したと判断してピックアップローラーによる原稿の給送が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-122948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、所定間隔で移動部までの距離をモニターしているが、1つの計測時点における移動部の位置の計測結果に基づいて原稿の給送の可否を判定しているので、当該計測時点において偶発的に生じた誤差要因により、実際には搬送異常が生じていないにも拘わらず搬送異常が生じたと誤判定する虞がある。その結果、原稿の給送を停止させる必要がないにも拘わらず、原稿の給送を停止させてしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の本発明に係る媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送部と、前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、前記計測部から出力された検出信号を受信可能であるともに、前記給送部による前記媒体の給送を制御する制御部と、を備えた媒体給送装置であって、前記制御部は、前記距離の時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かの判断処理を行うことを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する為の本発明に係る媒体給送方法は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された複数の前記媒体を1枚ずつ給送する給送部と、前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、前記距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得るステップと、前記処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かを判断するステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係るスキャナーの外観を示す斜視図。
図2】実施形態1に係るスキャナーの原稿搬送経路の縦断面図。
図3】実施形態1に係るスキャナーの原稿搬送経路の平面図。
図4】実施形態1に係るスキャナーの制御系統を示すブロック図。
図5】原稿の下給送において一部が綴じられた原稿が誤って給送された場合に起こりうる現象を示す概略図。
図6】実施形態1に係るスキャナーにおける原稿の下給送状態を示す概略図。
図7】実施形態1に係るスキャナーにおける原稿までの距離の測定状態を示す概略図。
図8】実施形態1に係るスキャナーにおける給送速度の切り替えと原稿検出結果と計測距離とを示すタイミングチャート。
図9】実施形態1に係るスキャナーにおける給送異常判定処理の流れを示すフローチャート。
図10】実施形態1に係るスキャナーにおける測距センサーで得られた時間と検出距離との関係を示すグラフ。
図11】実施形態1に係るスキャナーにおける原稿の積載量が変わった場合の距離測定の状態を示す概略図。
図12】実施形態2に係るスキャナーの概略図。
図13】原稿の上給送において一部が綴じられた原稿が誤って給送された場合に起こりうる現象を示す概略図。
図14】実施形態2に係るスキャナーにおける原稿の上給送状態を示す概略図。
図15】変形例に係るスキャナーの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体給送装置は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された前記媒体を給送する給送部と、前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、前記計測部から出力された検出信号を受信可能であるともに、前記給送部による前記媒体の給送を制御する制御部と、を備えた媒体給送装置であって、前記制御部は、前記距離の時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かの判断処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記制御部は、前記距離の時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かの判断処理を行うので、1つの時点における前記距離のデータに基づいて前記媒体の給送を停止させる構成に比べて偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。その結果、誤判定を招き難く、ひいては媒体の給送を停止させる必要がないにも拘わらず、給送を停止させてしまう虞を抑制できる。
【0010】
第2の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様において、前記計測部は、前記載置部に対して前記載置方向の上方に位置することを特徴とする。
本態様によれば、前記計測部が前記載置方向の上方に位置しない構成に比べて、前記載置部に載置された前記媒体と前記計測部との距離が近づくので、前記計測部における前記距離の計測精度の低下を抑制することができる。
【0011】
第3の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記計測部は、前記載置方向から見て、前記媒体の幅方向における前記給送部に対する一方と他方とに配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記媒体が給送されるときに、前記幅方向における前記媒体の一方の部位と、前記媒体の他方の部位とが異なる変形状態となっても、この変形状態の違いが、一方及び他方の前記計測部において計測されるので、前記媒体の給送状態を精度良く計測することができる。
【0012】
第4の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、前記計測部は、前記載置方向から見て、前記媒体の給送方向における前記載置部の中央に対する下流に配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記媒体の変形状態が比較的顕著となる前記給送部に近い場所において、前記計測部による計測が行われるので、前記給送部から遠い場所において計測した場合に比べて、早い時点で前記媒体の給送を停止させることができる。
【0013】
第5の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記処理後距離データは、前記時系列データを移動平均した値である第1データと、前記時系列データを前記第1データよりも長期で移動平均した値である第2データと、を含み、前記制御部は、前記第1データが、前記第2データに閾値を加えて得られる許容範囲から外れた場合、前記給送部による前記媒体の給送を停止させることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2データは前記第1データよりも長期で移動平均した値であるので、前記第1データよりも、偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。また逆に前記第第1データは前記第2データよりも短期で移動平均した値であるので、実際に生じた給送異常に対して前記第1データよりも感度が高くなる。この様な第1データと第2データとを比較して給送異常を判断するので、給送異常を精度良く判定することができる。
【0014】
第6の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、前記載置部に載置された給送前の前記媒体の総厚を計測する総厚計測部が設けられ、前記給送部は、前記載置部に載置された複数の前記媒体のうち最も下方に位置する前記媒体を給送し、前記制御部は、前記媒体の総厚が第1の厚さにある場合の前記閾値を、前記第1の厚さより薄い第2の厚さにある場合の前記閾値よりも小さくすることを特徴とする。
前記給送部が、最も下方に位置する前記媒体を給送する構成である場合、給送される媒体はその上に積載される媒体に押さえ付けられる為、前記載置部に積載される前記媒体の枚数が多く、即ち、前記媒体の総厚が厚いほど、給送異常を発見し難くなる。
そこで本態様では、前記媒体の総厚が第1の厚さにある場合の前記閾値を、前記第1の厚さより薄い第2の厚さにある場合の前記閾値よりも小さくする。つまり、給送異常を発見し難い状態においては異常発見の感度を高める。これにより、給送異常を適切に判定することができる。
【0015】
第7の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、前記載置部に載置された前記媒体の上に媒体を追加する追加操作を検知する操作検知部が設けられ、前記制御部は、前記操作検知部の検出信号に基づき前記追加操作または前記追加操作の虞があると判断する場合、前記計測部における計測の結果に関わらず前記媒体の給送を継続させることを特徴とする。
前記給送部が、最も下方に位置する前記媒体を給送する構成である場合、ユーザーが前記載置部に載置された前記媒体の上に媒体を追加する追加操作、換言すれば、媒体の継ぎ足し操作を行い易い構成であると言える。この様に給送される前記媒体の上に他の前記媒体が追加されると、前記距離の計測の誤差要因となる。
ここで、本態様によれば前記制御部が前記操作検知部の検出信号に基づき前記追加操作または前記追加操作の虞があると判断する場合、前記計測部における計測の結果に関わらず前記媒体の給送が継続される。これにより、前記追加操作による前記距離の変動が前記媒体の変形として誤計測されることで前記媒体の給送が誤って停止されるのを、抑制することができる。
【0016】
第8の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記載置部には、前記媒体の有無を検知する媒体検知部が設けられ、前記制御部は、前記載置部上に媒体が無い状態から前記媒体検知部により媒体を検知すると、前記給送部による媒体の給送を自動で開始する自動給送モードを実行可能であり、前記制御部は、前記自動給送モードの実行中において、前記給送部が前記媒体の給送を開始した後の前記距離の時系列データを統計処理することで前記処理後距離データを得ることを特徴とする。
前記自動給送モードでは、媒体の給送開始前の前記距離が大きく変動する為、その様な状態での前記距離を給送異常の判定に用いると、給送異常の判定を正しく行うことができない。そこで本態様では、前記制御部は、前記自動給送モードの実行中において、前記給送部が前記媒体の給送を開始した後の前記距離の時系列データを統計処理することで前記処理後距離データを得るので、給送異常をより正しく判定することができる。
【0017】
第9の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記載置部には、前記媒体の有無を検知する媒体検知部が設けられ、前記制御部は、前記媒体検知部が前記媒体を検知した後の前記距離の時系列データを統計処理することで前記処理後距離データを得ることを特徴とする。
本態様によれば、前記媒体が前記載置部に載置されていない場合の前記計測部での計測結果が、前記媒体の給送停止の判定に用いられることが防止されるので、給送異常をより正しく判定することができる。
【0018】
第10の態様に係る画像読取装置は、媒体を読み取る読取部と、前記読取部に向けて前記媒体を給送する第1から第9の態様のいずれかに記載の媒体給送装置とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上述した第1の態様から第9の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0019】
第11の態様に係る媒体給送方法は、媒体が載置される載置部と、前記載置部に載置された複数の前記媒体を1枚ずつ給送する給送部と、前記載置部に載置された前記媒体のうち載置方向における最も上方に位置する前記媒体までの距離を計測する計測部と、を備えた媒体給送装置における媒体給送方法であって、前記距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得るステップと、前記処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かを判断するステップと、を含むことを特徴とする。
本態様によれば、前記距離の時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、前記給送部による前記媒体の給送を停止させるか否かの判断処理を行うので、1つの時点における前記距離のデータに基づいて前記媒体の給送を停止させる構成に比べて偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。その結果、誤判定を招き難く、ひいては媒体の給送を停止させる必要がないにも拘わらず、給送を停止させてしまう虞を抑制できる。
【0020】
[実施形態1]
以下、本発明に係る媒体給送装置、画像読取装置及び媒体給送方法の実施形態1について、添付図面を参照して説明する。
図1には、画像読取装置の一例としてのスキャナー10が示されている。スキャナー10は、媒体の一例としての原稿Gの表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能に構成されている。
なお、各図において示すX-Y-Z座標系は、直交座標系である。X方向は、装置幅方向であり、原稿Gの搬送方向と交差する原稿幅方向である。Y方向は、原稿搬送方向である。なお、Y方向は不図示の水平面及び鉛直面に対して交差する方向に傾斜している。Z方向は、Y方向と直交する方向であって、原稿Gの面と直交する方向である。また、Z方向は、水平面及び鉛直面に対して交差する方向に傾斜している。
原稿Gの給送方向及び搬送方向の下流は+Y方向となり、搬送方向の上流は-Y方向となる。
【0021】
スキャナー10は、装置本体12と、原稿Gを読み取る読取部20(図2)と、読取部20に向けて原稿Gを給送する後述する原稿給送装置30(図2)とを備える。
装置本体12は、下部ユニット13及び上部ユニット14を備える。上部ユニット14は、不図示のヒンジ部を中心に下部ユニット13に対して回転することで開閉可能に設けられている。上部ユニット14が装置前面方向に開かれることで内部が露呈され、原稿Gのジャム処理が可能となっている。
【0022】
装置本体12の背部には、後述する原稿載置部31が設けられている。
上部ユニット14の前面には、後述する操作パネル37が設けられている。上部ユニット14の上部には、装置本体12内部に連なる給送口19が形成されている。原稿載置部31に載置される原稿Gは、後述する原稿給送装置30によって、読取部20に向けて送られる。読取部20において読み取りが行われた原稿Gは、上部ユニット14の下部の排出口22から排紙トレイ24に向けて排出される。
【0023】
図2に示されるように、読取部20は、上部ユニット14に設けられた上部読取センサー20Aと、下部ユニット13に設けられた下部読取センサー20Bとを備える。上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bは、一例として、密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。なお、符号Tで示される実線は、原稿Gの搬送経路を示している。搬送経路Tは、下部ユニット13と、上部ユニット14とによって挟まれた空間で形成される。
【0024】
原稿給送装置30は、媒体給送装置の一例である。また、原稿給送装置30は、要部として、原稿載置部31と、給送ローラー32と、分離ローラー33と、測距センサー34と、載置部センサー36と、操作パネル37と、制御部40とを備える。
図4に示されるように、原稿給送装置30は、さらに、搬送センサー35と、複数の搬送ローラー対38(図2)と、重送センサー39と、総厚センサー44と、人感センサー45と、給送モーター47と、搬送モーター48とを備える。
【0025】
図2に示されるように、原稿載置部31は、載置部の一例であり、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成され、Y方向に延びている。また、原稿載置部31は、給送される原稿Gが載置される載置面31Aを有する。原稿載置部31には、載置された原稿Gの幅方向の側縁をガイドするエッジガイド16A、16Bが設けられている。エッジガイド16A、16Bは、X方向に変位可能に設けられている。なお、載置面31Aにおいて、X方向及びY方向の中央となる位置を中心点C(図3)と称する。また、中心点Cを通りY方向に延びる仮想線を中心線CL(図3)とする。
【0026】
給送ローラー32は、給送部の一例であり、原稿載置部31に載置された原稿Gを1枚ずつ給送する。なお、給送ローラー32は、載置面31Aに載置された原稿Gのうち、最も下方に位置する原稿Gと接する。従って、スキャナー10において複数の原稿Gを原稿載置部31にセットした場合、載置面31Aと接触している原稿Gから順に下流に向けて給送される。このように、給送ローラー32は、原稿載置部31に載置された複数の原稿Gのうち最も下方に位置する原稿Gを給送する。下方の原稿Gから順に給送される方式を、下給送方式と称する。
【0027】
図3に示されるように、給送ローラー32は、中心線CLに対して線対称に配置されており、+X方向の給送ローラー32Aと、-X方向の給送ローラー32Bとを有する。
給送ローラー32は、給送モーター47(図4)により回転駆動されることで、原稿Gを下流へ給送する。
給送ローラー32よりもY方向の下流には、搬送ローラー対38が設けられている。
分離ローラー33(図2)は、給送ローラー32と同様にX方向に線対称に配置された2つのローラーで構成されており、給送ローラー32A、32BとZ方向に対向している。なお、図3において、仮想線N1は、給送ローラー32と分離ローラー33とによる原稿Gのニップ位置を示している。
また、分離ローラー33は、原稿Gの給送動作中において不図示のモーターにより回転駆動されることで、原稿Gの重送を防止する。
【0028】
図2に示されるように、搬送センサー35は、一例として検出光を発する発光部35Aと前記検出光を受光可能な受光部35Bとを備えて成る光学式センサーとして構成されている。前記発光部と前記受光部は、搬送経路Tを挟んで設けられている。制御部40(図4参照)は、搬送センサー35から受信する検出信号に基づき、検出位置での原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
複数の搬送ローラー対38は、給送ローラー32によって給送された原稿Gを搬送経路Tに沿って搬送する。
重送センサー39(図4)は、一例として超音波方式のセンサーであり、超音波を発する発信部39A及び前記超音波を受信可能な受信部39Bを備えて成る。前記発光部と前記受光部は、搬送経路Tを挟んで設けられている。制御部40(図4参照)は、重送センサー39から受信する検出信号に基づき、検出位置での原稿の重送を検知することができる。
【0029】
測距センサー34は、計測部の一例である。また、測距センサー34は、上部ユニット14に設けられており、原稿載置部31に対してZ方向の上方に位置している。測距センサー34は、一例として、超音波式のセンサーとして構成されており、超音波を発する発信部(不図示)及び前記超音波を受信可能な受信部(不図示)を備えて成る。前記発信部と前記受信部は、原稿載置部31に載置された原稿Gのうち最も上の原稿Gと対向する位置に設けられており、前記発信部は原稿Gに向けて超音波を発し、前記受信部は原稿Gにおいて反射された超音波の反射成分を受信する。測距センサー34からの検出信号を受信する制御部40(図4参照)は、超音波の発信から受信までに要した時間に基づいて、原稿載置部31に載置された原稿GのうちZ方向における最も上方に位置する原稿Gまでの距離を算出することができる。尚、詳しくは後述するが、この距離の取得は複数の時点において行われる。
【0030】
図3に示されるように、測距センサー34は、Z方向から見て、原稿Gの幅方向としてのX方向における給送ローラー32に対する一方と他方とに配置されている。換言すると、測距センサー34は、中心線CLに対する+X方向に配置された左センサー34Aと、中心線CLに対する-X方向に配置された右センサー34Bとで構成されている。左センサー34Aと右センサー34Bの構成および機能は同じとされている。
ここで、原稿載置部31の-Y方向の上流端から測距センサー34による計測位置までのY方向の距離は、原稿載置部31の+Y方向の下流端から測距センサー34による計測位置までのY方向の距離よりも長い。
また、原稿載置部31の-Y方向の上流端から測距センサー34による計測位置までのY方向の距離は、給送ローラー32のローラー軸(不図示)から測距センサー34による計測位置までのY方向の距離よりも長い。
【0031】
原稿Gのうち、スキャナー10において扱われる最大サイズのものを原稿GAと称し、最小サイズのものを原稿GBと称する。左センサー34A及び右センサー34Bは、原稿GA及び原稿GBのそれぞれに対して計測可能となるように、原稿載置部31の上方に位置している。
また、測距センサー34は、Z方向から見て、Y方向における中心点Cに対する下流で且つ給送ローラー32に対する上流に配置されている。
【0032】
図4に示される載置部センサー36は、媒体検知部の一例であり、制御部40(図4参照)は載置部センサー36からの検出信号をもとに、原稿Gの有無を検知する。換言すると、載置部センサー36は、原稿載置部31に原稿Gが載置されているか否かを検知する為のセンサーである。載置部センサー36は、一例として、反射式の光学式のセンサーにより構成されている。載置部センサー36は、原稿載置部31に原稿Gが載置されている場合、高レベルの検知信号を制御部40に出力し、原稿載置部31に原稿Gが載置されていない場合、低レベルの検知信号を制御部40に出力する。
【0033】
操作パネル37は、入力部の一例である。また、操作パネル37は、一例として、タッチパネルで構成されており、スキャナー10における各種の読み取り設定や読み取り実行の操作等が可能とされている。操作パネル37では、原稿Gを読み取るモードとして自動給送モードを選択可能である。以下では便宜上、自動給送モードを「待ち受けモード」と称する。より詳しくは、制御部40(図4参照)は待ち受けモード以外のモードでは、ユーザーから操作パネル37或いはスキャナー10に接続された外部コンピューター49(図4参照)を介してスキャン開始指示を受けた場合にのみ給送ローラー32の回転を開始する。
【0034】
これに対し待ち受けモードでは、制御部40は載置部センサー36の検出信号に基づき原稿載置部31上の原稿Gが無くなったと判断する場合、つまり現在給送している原稿Gが最後の原稿であると判断する場合、その原稿Gの給送が終わったら給送ローラー32の回転を停止させ、原稿載置部31に原稿Gが載置されるのを待つ。そして載置部センサー36の検出信号に基づき原稿載置部31上に原稿Gが載置されたと判断すると、給送ローラー32の回転を再開し、原稿Gを給送する。つまり待ち受けモードにおいては、原稿載置部31に原稿Gを載置すると自動で給送が行われ、ユーザーは原稿載置部31に原稿Gを載置する度にスキャン開始指示を行う必要がない。
【0035】
図4に示されるように、制御部40は、CPU41及びフラッシュROM42を備える。CPU41は、フラッシュROM42に格納されたプログラムに従って各種の演算処理を行い、スキャナー10全体の動作を制御する。具体的には、制御部40は、原稿Gの給送、原稿Gの搬送、原稿Gの排出及び読取部20の読み取りを含め、スキャナー10の各種の制御を行う。操作パネル37を介してユーザーが入力した各種の設定情報は、フラッシュROM42に記憶される。
また、制御部40は、外部コンピューター49と接続可能に構成されており、外部コンピューター49から各種の情報が入力される。
【0036】
制御部40は、給送モーター47と搬送モーター48とを制御する。給送モーター47は、給送ローラー32の駆動源である。搬送モーター48は、分離ローラー33、複数の搬送ローラー対38(図2参照)の駆動源である。給送モーター47と搬送モーター48は、いずれもDCモーターである。
制御部40には、読取部20からの読み取りデータが入力される。読取部20を制御する為の信号は、制御部40から読取部20に送信される。
また、制御部40には、測距センサー34、搬送センサー35、載置部センサー36、重送センサー39、総厚センサー44、人感センサー45からの信号も入力される。
【0037】
総厚センサー44は、総厚計測部の一例であり、上部ユニット14(図2)に設けられている。総厚センサー44は、原稿載置部31に載置された給送前の原稿Gの総厚を計測する為のセンサーである。原稿Gの総厚とは、1枚の原稿Gであれば、原稿G自体の厚さを意味し、複数の原稿Gであれば、積層された複数の原稿Gの全体の厚さ、つまり原稿束の厚さを意味する。
原稿Gの総厚の計測において、測距センサー34を総厚センサーとして用いてもよい。
他には、総厚センサー44は一例として、オートフォーカスカメラ等に用いられる光学的な三角測距原理を用いたセンサーとして構成することもできる。この場合図示は省略するが、総厚センサー44は、原稿Gに光を照射すると共に原稿Gからの反射光を受光素子で受光し、受光素子におけるスポットの移動量に基づいて、原稿載置部31上に載置された原稿GのZ方向の総厚(mm)を計測する。
【0038】
人感センサー45は、操作検知部の一例であり、下部ユニット13の外装カバーに設けられている。また、人感センサー45は、一例として、赤外線センサーとして構成されており、ユーザーから放射された赤外線を検知することで、スキャナー10の周辺にユーザーが存在することを検知する。
スキャナー10の周辺にユーザーが存在すると判断できる場合、原稿載置部31に載置された原稿Gに他の原稿Gを追加する追加操作、換言すれば、原稿Gの継ぎ足し操作が行われる虞が高いと判断できる。
なお、詳しくは後述するが、人感センサー45の検知結果は、原稿Gの給送が行われている場合、制御部40によって利用される。原稿Gの給送が行われていない場合、スキャナー10の周辺にユーザーが存在していても問題無いためである。但し、例えば省電力モードの状態において人感センサー45によりユーザーを検知した場合、省電力モードを解除する様にしても良い。
人感センサー45の他の方式としては、例えば、静電容量方式、光学方式等の方式がある。
【0039】
図5には、綴じ針Nによって角部が綴じられた2枚の原稿G1、G2のうち、下給送方式において下方の原稿G1のみが給送された場合の原稿G1、G2の変形状態の一例が示されている。綴じ針NがY方向の下流の角部にあるか、上流の角部にあるかによって、原稿G1、G2の変形状態は異なるが、いずれの場合においても、給送される原稿G1の上に位置する原稿G2の一部が、+Z方向に膨らむこととなる。そしてこの原稿G2の膨らみは、原稿G1の給送が進むに従って成長する。なお、綴じ針Nの位置に関わらず、給送ローラー32からX方向に離れるほど、即ち、原稿G1、G2のX方向端部に近づくほど、Z方向の変形量は大きくなる傾向が見られる。
【0040】
図6に示されるように、原稿GのX方向端のY方向に沿った線を仮想線K1とする。給送ローラー32のローラー部分のX方向の外端位置において、Y方向に沿った線を仮想線K2とする。既述の原稿GB(図3)のY方向における上流端位置を通り、X方向に沿った線を仮想線K3とする。原稿載置部31に積載された原稿GのY方向における下流端位置を通り、X方向に沿った線を仮想線K4とする。給送ローラー32の回転中心を通りX方向に沿った線を仮想線K5とする。
ここで、仮想線K1、K2、K3、K5で囲まれた領域を領域SAと称する。領域SAは、Z方向から見て既述の中心線CL(図3)に対してX方向に対称に配置されている。
測距センサー34(図3)は、Z方向から見て、領域SA内に位置することが好ましい。更に好ましくは、領域SA内であって且つスキャナー10において扱われる最小サイズの原稿GBと対向可能な場所に位置することが好ましい。
【0041】
図7に示されるように、原稿載置部31上で且つZ方向の最も下位に位置する原稿G1及び原稿G1の1枚上の原稿G2が綴じられているとする。また、3枚目以降の原稿Gについては、綴じられていないものとする。
ここで、原稿Gが給送ローラー32によって給送される場合、最下位の原稿G1は給送される。
2枚目の原稿G2は、最下位の原稿G1と綴じられているため、最下位の原稿G1に引っ張られて給送される状態となるが、分離ローラー33との接触により給送が抑制されるため、Z方向に変形する。この変形によって、3枚目以上の原稿GがZ方向に持ち上げられることとなり、最も上位に位置する原稿GのZ方向の位置が変化する。この変化が、測距センサー34を用いて検出可能な距離の変化として計測される。
【0042】
図8には、時点t1から時点t14までを含む各時点における原稿Gの給送速度、搬送センサー35における原稿Gの検出の有無、及び測距センサー34による計測距離のタイミングチャートが示されている。時点t1から時点t14までについては、数字が大きくなるほど後の時点であることを意味する。各時点の間隔は一定ではない。
給送速度は、V0<V1<V2<V3として、時点t1、t8において速度V0から速度V1に変わり、時点t2、t9において速度V1から速度V2に変わり、時点t4、t11において速度V2から速度V3に変わり、時点t6、t13において速度V3から速度V0に変わっている。
【0043】
搬送センサー35による原稿Gの検出については、時点t3から時点t7までと、時点t10から時点t14までとにおいて、原稿Gが有り(ON)と判定されている。時点t3までと、時点t7から時点t10までとにおいては、原稿Gが無し(OFF)と判定されている。
測距センサー34による計測距離については、L1<L2<L3として、時点t5までが距離L1、時点t5から時点12までが距離L2、時点t12以降が距離L3となっている。
給送異常が生じない場合、図8に示す様に測距センサー34による計測距離は、原稿Gが一枚給送されるごとに、段階的に増えていく。給送異常、例えば図5を参照しつつ説明した原稿G2の+Z方向の膨らみが生じた場合は、測距センサー34による計測距離は、給紙を開始した直後から連続的に減っていくこととなる。
【0044】
図4に示される制御部40による各種制御について、図1から図4までを参照して説明する。
制御部40は、測距センサー34の検出信号に基づく距離の算出処理を一定の時間間隔、例えば10msごとに行い、複数の距離データを時系列データとして取得する。そしてこの時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データに基づき、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させるか否かの判断処理を行う。
ここで本明細書における統計処理とは、時系列データに対し統計処理を行うことでノイズの影響を減らしたデータを得る処理である。具体的には、統計処理の一例として、時系列データのうちの或る一定区間の平均値を、区間をずらしながら求める移動平均法を採用することができる。この移動平均法としては、公知の単純移動平均法、加重移動平均法、指数移動平均法などを用いることができる。
【0045】
本実施形態では、一例として単純移動平均法を用いることとし、また処理後距離データとして、時系列データを移動平均した値である第1データDAと、時系列データを第1データDAよりも長期で移動平均した値である第2データDBとを採用する。第2データDBは第1データDAより長期で移動平均した値であるため、第2データDBを時系列でプロットしたグラフは、第1時データDAを時系列でプロットしたグラフよりも緩やかな変化となる。
そして第1データDAが、第2データDBに閾値Sを加えて得られる許容範囲から外れた場合、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させる。
第1データDA、第2データDB、及び閾値Sについては、後に図10を参照しつつ詳述する。
【0046】
制御部40は、原稿Gの総厚が第1の厚さにある場合の閾値Sを、前記第1の厚さより薄い第2の厚さにある場合の閾値Sよりも小さくする。
制御部40は、人感センサー45の検出信号に基づき原稿Gの追加操作または前記追加操作の虞があると判断する場合、測距センサー34における計測の結果に関わらず、原稿Gの給送を継続させる。
制御部40は、載置部31上に原稿Gが無い状態から載置部センサー36が原稿Gを検知すると、給送ローラー32による原稿Gの給送を自動で開始する待ち受けモードを実行可能であり、この待ち受けモードの実行中において、給送ローラー32が原稿Gの給送を開始した後の前記距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得る。
制御部40は、給送ローラー32が原稿Gの給送を開始した後の時点において、測距センサー34が計測した距離が閾値Sを超えたか否かを判定する。
以上、説明した通り、制御部40は、測距センサー34において計測された複数の時点における距離の時系列データを統計処理し、該統計処理によって得られた処理後距離データに基づき、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させるか否かの判断を行う。
【0047】
次に、図9を参照して給送異常の判定の流れについて説明する。図9は、スキャナー10における給送異常判定処理の基本的な流れを示すフローチャートである。各処理は、制御部40のCPU41がフラッシュROM42から処理プログラムを読み出して、不図示のRAMに展開して実行することにより行われる。
【0048】
ステップS10において、制御部40は、測距センサー34を用いて原稿Gまでの距離を計測する。このデータを距離Zとする。距離Zを所定のサンプリング間隔(例えば、10ms)で取得して得られた複数の距離Zのデータが、時系列データとなる。そして、ステップS12に移行する。
ステップS12において、制御部40は、現在の状態が給送継続中であるか否かを判定する。具体的には、本実施例において給送継続中とは図8の時点t1から時点t6までの間や、時点t8から時点t13までの間を意味する。また、非給送継続中とは、図8の時点t1までの間や、時点t6から時点t8までの間を意味する。
給送継続中の場合(S12:YES)には、ステップS16に移行する。
一方、制御部40は、非給送継続中の場合(S12:NO)には、ステップS14に移行する。
【0049】
ステップS14において、制御部40は、所定のサンプリング間隔(例えば、10ms)で得られた距離Zの時系列データを初期化する。つまり、それまでに前記時系列データを得ていた場合にはそれを破棄し、前記時系列データを改めて最初から構築するのである。そして、ステップS16に移行する。
ステップS16において、制御部40は、時系列データを移動平均して第1データDAを取得し、また時系列データを第1データDAよりも長期で移動平均して第2データDBを取得する。第1データDAは、例えば直近の4個の距離Zの値を単純平均することで得ることができ、第2データDBは、例えば直近の64個の距離Zの値を単純平均することで得ることができる。そして、ステップS18に移行する。
【0050】
ステップS18において、制御部40は、第1データDAが、第2データDBを中心値とする許容範囲内の場合(S18:YES)、ステップS20に移行する。第2データDBを中心値とする許容範囲とは、本実施形態では第2データDBに閾値Sを加算した値(図10のグラフGd参照)以下、且つ、第2データDBから閾値Sを減算した値(図10のグラフGc参照)以上の範囲である。
一方、制御部40は、第1データDAが第2データDBを中心値とする許容範囲を超えた場合、異常な給送が行われていると判断して、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させる。そして、プログラムを終了する。
【0051】
ステップS20において、制御部40は、距離Zのサンプリングを継続する。そして、ステップS22に移行する。
ステップS22において、制御部40は、原稿Gの給送が終了したか否かを判定する。上述した待ち受けモードを除くモードでは、原稿載置部31に原稿Gが無くなった場合、原稿Gの給送が終了したことになる。また、上述した待ち受けモードでは、ユーザーによって待ち受けモードの終了指示がされた場合、原稿Gの給送が終了したことになる。
給送を継続する場合(S22:NO)、制御部40は、ステップS12に移行する。給送を終了する場合(S22:YES)、制御部40は、プログラムを終了する。このようにして、スキャナー10における原稿Gの給送異常判定が行われる。
【0052】
図10には、一例として、時間と計測距離との関係を示すグラフGa、Gb、Gc、Gdが示されている。
グラフGaは、加工されていない生データの変化、つまり距離Zの時系列データを表している。
グラフGbは、第1データDA、即ち短期移動平均を表している。
グラフGcは、第2データDB即ち長期移動平均から、閾値Sを引いた値、つまり許容範囲の下限を表している。
グラフGdは、第2データDB即ち長期移動平均に、閾値Sを加えた値、つまり許容範囲の上限を表している。
ここで、本実施形態では、第1データDAがグラフGcとグラフGdとの間の設定範囲を超えた場合に、給送ローラー32を停止させる。
【0053】
図11の左図に示されるように、スキャナー10において、原稿載置部31上に積層された原稿Gが多く、給送ローラー32による給送開始前後の原稿高さが高い場合、即ち、原稿Gの総厚が厚い場合の閾値Sを閾値S1(不図示)とする。また図11の右図に示されるように、スキャナー10において、原稿載置部31上に積層された原稿Gが少なく、給送ローラー32による給送開始前後の原稿高さが低い場合、即ち、原稿Gの総厚が薄い場合の閾値Sを閾値S2(不図示)とする。そして制御部40は、閾値S1を、閾値S2より小さく設定する。これは、原稿Gの総厚が厚い場合に、これより相対的に総厚が薄い場合に比べ、給送異常が生じた際の原稿Gの浮きが小さくなるためである。このため、閾値Sを小さくして、異常判定の感度を上げることで、給送不良を検出し易くしている。
【0054】
以上、説明したように、原稿給送装置30によれば、原稿載置部31には原稿Gが載置されている。測距センサー34は、最も上方に位置する原稿Gまでの距離を複数の時点において計測する。給送ローラー32は、原稿載置部31に載置された原稿Gを、制御部40によって制御されることで給送する。
ここで、制御部40は、測距センサー34により複数の距離データを時系列データとして取得し、この時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データが許容範囲から外れた場合、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させる。これにより、1つの時点における距離データに基づいて原稿Gの給送を停止させる構成に比べて偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。その結果、誤判定を招き難く、ひいては原稿Gの給送を停止させる必要がないにも拘わらず、給送を停止させてしまう虞を抑制できる。
【0055】
原稿給送装置30によれば、測距センサー34がZ方向の上方に位置しない構成に比べて、原稿載置部31に載置された原稿Gと測距センサー34との距離が近づくので、測距センサー34における距離の計測精度の低下を抑制することができる。
また、原稿給送装置30によれば、原稿Gが給送されるときに、X方向における中心線CLに対する原稿Gの一方の部位と、原稿Gの他方の部位とが異なる変形状態となっても、この変形状態の違いが、一方及び他方の測距センサー34において計測されるので、原稿Gの給送状態を精度良く計測することができる。
【0056】
原稿給送装置30によれば、原稿Gの変形状態が比較的顕著となる給送ローラー32に近い場所において、測距センサー34による計測が行われるので、給送ローラー32から遠い場所において計測した場合に比べて、早い時点で原稿Gの給送を停止させることができる。
また、原稿給送装置30によれば、時系列データを移動平均した値である第1データDAと、時系列データを第1データDAよりも長期で移動平均した値である第2データDBとを用い、第1データDAが、第2データDBに閾値Sを加えて得られる許容範囲から外れた場合、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させるので、給送異常を精度良く判定することができる。
【0057】
最も下方に位置する原稿Gを給送する構成では、原稿載置部31に積載される原稿Gの枚数が多く、即ち、原稿Gの総厚が厚いほど、給送異常を発見し難くなる。ここで、原稿給送装置30によれば、総厚が厚くなるほど、閾値Sを小さくする、より具体的には閾値Sの絶対値を小さくする。つまり、給送異常を発見し難い状態においては異常発見の感度を高める。これにより、給送異常を適切に判定することができる。
【0058】
給送ローラー32が、最も下方に位置する原稿Gを給送する構成では、ユーザーが原稿載置部31に載置された媒体Gの上に原稿Gを追加する追加操作、換言すれば、原稿Gの継ぎ足し操作を行い易い構成であると言える。従ってこの様な構成では、距離の計測の誤差が生じ易い。ここで、原稿給送装置30によれば、人感センサー45の検出情報に基づき追加操作または追加操作の虞があると判断する場合、測距センサー34における計測の結果に関わらず原稿Gの給送が継続される。これにより、追加操作による距離Zの変動が原稿Gの変形として誤計測されることで原稿Gの給送が誤って停止されるのを、抑制することができる。
【0059】
原稿給送装置30によれば、原稿Gが原稿載置部31に載置されている場合の測距センサー34での計測結果のみが、原稿Gの給送停止の判定に用いられるので、測距センサー34が計測した距離が閾値Sを超えたか否かを誤判定するのを抑制することができる。
また、原稿給送装置30によれば、原稿Gが原稿載置部31に載置されていない場合の測距センサー34での計測結果が、原稿Gの給送停止の判定に用いられることが防止されるので、測距センサー34が計測した距離が閾値Sを超えたか否かを誤判定するのを抑制することができる。
また、原稿給送装置30によれば、自動給送モード即ち待ち受けモードを実行可能であり、待ち受けモードの実行中において、原稿Gの給送を開始した後の距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得るので、給送異常をより正しく判定することができる。
【0060】
スキャナー10によれば、上述した原稿給送装置30のいずれかの作用効果が得られる。
媒体給送方法の一例としての原稿給送方法によれば、測距センサー34により距離の時系列データを統計処理することで処理後距離データを得るステップ(図9のステップS16)と、処理後距離データに基づき、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させるか否かを判断するステップ(ステップSS18)と、を含むので、1つの時点における距離データに基づいて原稿Gの給送を停止させる構成に比べて偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。その結果、誤判定を招き難く、ひいては原稿Gの給送を停止させる必要がないにも拘わらず、給送を停止させてしまう虞を抑制できる。
【0061】
[実施形態2]
以下、本発明に係る媒体給送装置、画像読取装置及び媒体給送方法の実施形態2について、添付図面を参照して説明する。なお、スキャナー10と同様の構成については、スキャナー10と同じ符号を付して説明を省略する。
図12には、画像読取装置の一例としてのスキャナー50が示されている。
スキャナー50は、原稿Gの表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能に構成されている。
なお、各図において示すX-Y-Z座標系は、直交座標系である。X方向は、装置幅方向であり、原稿Gの搬送方向と交差する原稿幅方向である。Y方向は、原稿搬送方向である。なお、実施形態2において、Y方向は、不図示の水平面に沿っている。Z方向は、X方向及びY方向と直交する方向であって、原稿Gの面と直交する方向である。また、Z方向は、鉛直面に沿っている。
【0062】
スキャナー50は、読取部20と、読取部20に向けて原稿Gを給送する原稿給送装置60とを備える。
原稿給送装置60は、媒体給送装置の一例である。また、原稿給送装置60は、要部として、原稿載置部62と、原稿案内部63と、給送ローラー32と、分離ローラー33と、ピックアップローラー64と、アーム部材65と、昇降機構部66と、測距センサー34と、載置部センサー36と、制御部40とを備える。さらに、原稿給送装置60は、不図示の給送モーターを備える。
【0063】
原稿載置部62は、載置部の一例であり、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成され、Y方向に延びている。また、原稿載置部62は、給送される原稿Gが-Z方向に向けて載置される載置面62Aを有する。原稿載置部62には、載置された原稿Gの幅方向の側縁をガイドするエッジガイド16A、16Bが設けられている。さらに、原稿載置部62は、昇降機構部66によって、+Z方向への上昇及び-Z方向への下降が可能とされている。なお、載置面62Aにおいて、X方向及びY方向の中央となる位置を中心点Cと称する。
昇降機構部66は、原稿載置部62の下面に設けられたラック部67と、ラック部67を昇降させるピニオン68とを備える。ピニオン68は、不図示のモーターによって駆動される。不図示のモーターの駆動は、制御部40によって制御される。
【0064】
原稿案内部63は、原稿載置部62の+Y方向の端部と隣り合う位置から、給送ローラー32と分離ローラー33とのニップ部Nに向けて、斜め上方に延びている。そして、原稿案内部63は、原稿Gをニップ部Nに向けて案内する。
ピックアップローラー64は、アーム部材65によって、X方向を軸方向として回転可能に支持されている。ピックアップローラー64の外周面は、最もZ方向の上方に位置する原稿Gと接触する。
アーム部材65は、X方向を軸方向として揺動可能に設けられている。これにより、ピックアップローラー64は、原稿載置部62上の原稿Gの総厚が変化しても、最も上方に位置する原稿Gとの接触が可能となっている。
【0065】
給送ローラー32は、載置面62Aに載置された原稿Gのうち、最も上方に位置する原稿Gと接する。従って、スキャナー50において複数の原稿Gを原稿載置部62にセットした場合、最も上方に位置する原稿Gから順に下流に向けて給送される。このように、給送ローラー32は、原稿載置部62に載置された複数の原稿Gのうち最も上方に位置する原稿Gを給送する。上方の原稿Gから順に給送される方式を、上給送方式と称する。
【0066】
図13には、綴じ針Nによって角部が綴じられた2枚の原稿G1、G2のうち、上給送方式において上方の原稿G1のみが給送された場合の原稿G1、G2の変形状態の一例が示されている。綴じ針NがY方向の下流の角部にあるか、上流の角部にあるかによって、原稿G1、G2の変形状態は異なるが、いずれの場合においても、給送される原稿G1の一部が、+Z方向に膨らむこととなる。そしてこの原稿G1の膨らみは、の給送が進むに従って成長する。なお、綴じ針Nの位置に関わらず、給送ローラー32及びピックアップローラー64からX方向に離れるほど、即ち、原稿G1、G2のX方向端部に近づくほど、Z方向の変形量は大きくなる傾向が見られる。
【0067】
図14に示されるように、原稿載置部62(図12)に積載された原稿GのY方向における下流端位置を通り、X方向に沿った線を仮想線K6とする。ピックアップローラー64の回転中心を通りX方向に沿った線を仮想線K7とする。ここで、測距センサー34(図12)は、Z方向から見て、領域SA内に位置することが好ましい。
【0068】
図12に示される原稿載置部62上で且つZ方向の最も上位に位置する原稿G1及び原稿G1の1枚下の原稿G2が綴じられているとする。また、上位から3枚目以降の原稿Gについては、綴じられていないものとする。ここで、原稿Gが給送ローラー32によって給送される場合、ピックアップローラー64によって送り出された最上位の原稿G1は給送される。
2枚目の原稿G2は、最上位の原稿G1と綴じられているため、最上位の原稿G1に引っ張られて給送される状態となるが、ピックアップローラー64から受ける荷重によって生じる摩擦力により給送が抑制される。このため、結果的に、最も上位に位置する原稿G1のZ方向の位置が変化する。この変化が、測距センサー34による距離の変化として計測される。
【0069】
次に、実施形態2のスキャナー50及び原稿給送装置60の作用について、図12から図14までを参照して説明する。なお、基本的な作用を除いて、スキャナー10及び原稿給送装置30と同様の作用については、説明を省略する。さらに、個別の図番の記載を省略する。
原稿給送装置60によれば、原稿載置部62には原稿Gが載置されている。測距センサー34は、最も上方に位置する原稿Gまでの距離を複数の時点において計測する。ピックアップローラー64及び給送ローラー32は、原稿載置部62に載置された原稿Gを、制御部40によって制御されることで給送する。
ここで、制御部40は、測距センサー34により複数の距離データを時系列データとして取得し、この時系列データを統計処理することで得られた処理後距離データが許容範囲から外れた場合、給送ローラー32による原稿Gの給送を停止させる。これにより、1つの時点における距離データに基づいて原稿Gの給送を停止させる構成に比べて偶発的に生じた誤差要因に左右され難くなる。その結果、誤判定を招き難く、ひいては原稿Gの給送を停止させる必要がないにも拘わらず、給送を停止させてしまう虞を抑制できる。
スキャナー50によれば、上述した原稿給送装置60の作用効果が得られる。
【0070】
実施形態1の変形例であるスキャナー70について、図15を参照して説明する。
スキャナー70は、画像読取装置の一例である。なお、スキャナー10(図3)と同様の構成については、スキャナー10と同じ符号を付して説明を省略する。
スキャナー70は、スキャナー10のエッジガイド16A、16Bに測距センサー34が設けられた構成となっている。具体的には、エッジガイド16A、16Bの+Z方向の端部にアーム部材72A、72Bが取り付けられている。
【0071】
アーム部材72Aは、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成され、エッジガイド16Aから-X方向に向けて直線状に延びている。アーム部材72AのX方向の一部には、左センサー34Aが取り付けられている。左センサー34Aは、最も上方に位置する原稿Gまでの距離を計測する。
アーム部材72Bは、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成され、エッジガイド16Bから+X方向に向けて直線状に延びている。アーム部材72BのX方向の一部には、右センサー34Bが取り付けられている。右センサー34Bは、最も上方に位置する原稿Gまでの距離を計測する。
このように、測距センサー34をエッジガイド16A、16Bに設けることで、原稿GのX方向の幅に合わせて測距センサー34をX方向に移動させることができるので、変形が比較的大きくなる原稿GのX方向の端部までの距離の計測を行い易くなる。
【0072】
本実施形態に係る媒体給送装置及び画像読取装置の一例は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0073】
原稿給送装置30において、測距センサー34は、原稿載置部31の上方以外の場所に位置していてもよい。この場合、測距センサー34は、原稿Gに対して斜め方向の距離を測定すればよい。また、測距センサー34は、中心線CLに対して一方のみ又は他方のみに設けられていてもよい。さらに、測距センサー34は、原稿載置部31の中心点Cに対して+Y方向の上流に配置されていてもよい。また、測距センサー34は、図12に想像線で示されるように、+Y方向における中心点Cよりも下流で且つピックアップローラー64よりも上流に配置されていてもよい。
【0074】
制御部40は、第1データDA及び第2データDBを用いずに、計測によって得られたデータを統計処理によってスムージングして、該データが許容範囲を超えた場合に、給送ローラー32を停止させてもよい。また、制御部40は、原稿Gの総厚や追加操作の有無に関わらず、給送ローラー32の停止を判定してもよい。
制御部40は、時系列データを、給送ローラー32の回転が開始される前から取得しても良いし、給送ローラー32の回転が開始された時点、或いは給送ローラー32の回転が開始された後から取得しても良い。
制御部40は、給送ローラー32の回転が開始された時点よりも後で且つ給送ローラー32による原稿Gの給送が開始される前の時点において、測距センサー34が計測した距離が閾値Sを超えたか否かを判定してもよい。
【0075】
上記実施形態において制御部40は、図10で示した様に第1データDAの許容範囲として、第2データDBに閾値Sを加算した値(図10のグラフGd参照)以下、且つ、第2データDBから閾値Sを減算した値(図10のグラフGc参照)以上の範囲とした。しかしながら例えば、第2データDBに閾値Sを加算した値は採用せず、第2データDBから閾値Sを減算した値以上を許容範囲としても良い。図5を参照して説明した原稿の浮き上がりは、第1データDAの値の低下として現れるからである。
【0076】
原稿給送装置30は、載置部センサー36、総厚センサー44、人感センサー45を有していなくてもよい。
また上記実施形態において操作検知部を人感センサー45で構成したが、これに限らず、例えば原稿載置部31に原稿Gが継ぎ足しされたことを検知するセンサーで操作検知部を構成しても良い。この様なセンサーは、例えば原稿載置部31上の原稿の最大積載高さより高い位置においてX軸方向に平行に検出光を発する光学センサーで構成できる。
またスキャナー10は、上述の変形例の原稿給送装置30を有するものであってもよい。
【0077】
載置面31Aは、平面に限らず、一部に凹凸があってもよい。なお、凹凸が位置する部位と測距センサー34が位置する部位とがZ方向に並ぶ場合は、凹凸による原稿Gの変位量を予めオフセット値として設定しておき、得られた距離データに対して該オフセット値を加算又は減算すればよい。
測距センサー34は、光学式のものであってもよい。
【0078】
統計処理の他の例として、得られた距離データのモードやメジアンを求めて判定に用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…スキャナー、12…装置本体、13…下部ユニット、14…上部ユニット、
16A…エッジガイド、16B…エッジガイド、19…給送口、20…読取部、
20A…上部読取センサー、20B…下部読取センサー、22…排出口、
24…排紙トレイ、30…原稿給送装置、31…原稿載置部、31A…載置面、
32…給送ローラー、32A…給送ローラー、32B…給送ローラー、
33…分離ローラー、34…測距センサー、34A…左センサー、34B…右センサー、
35…搬送センサー、35A…発光部、35B…受光部、36…載置部センサー、
37…操作パネル、38…搬送ローラー対、39…重送センサー、39A…発信部、
39B…受信部、40…制御部、41…CPU、42…フラッシュROM、
44…総厚センサー、45…人感センサー、47…給送モーター、48…搬送モーター、
49…外部コンピューター、50…スキャナー、60…原稿給送装置、62…原稿載置部、
62A…載置面、63…原稿案内部、64…ピックアップローラー、65…アーム部材、
66…昇降機構部、67…ラック部、68…ピニオン、70…スキャナー、
72A…アーム部材、72B…アーム部材、G1…原稿、Ga…グラフ、Gb…グラフ、
Gc…グラフ、Gd…グラフ、h1…高さ、K1…仮想線、K2…仮想線、K3…仮想線、
K4…仮想線、K5…仮想線、K6…仮想線、K7…仮想線、L1…距離、L2…距離、
L3…距離、N1…破線、S…閾値、S1…閾値、S2…閾値、V1…速度、V2…速度、
V3…速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
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図15