(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】電話装置
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20240731BHJP
H04M 3/00 20240101ALI20240731BHJP
H04Q 3/58 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H04M3/42 B
H04M3/00 B
H04Q3/58 106
(21)【出願番号】P 2020079927
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】平田 章紘
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-165951(JP,A)
【文献】特開平03-049451(JP,A)
【文献】特開2005-294909(JP,A)
【文献】特開2015-046652(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0063695(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
H04Q3/58-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者からの指示に応じて、相手先を呼び出すようにする発信情報を電話網に送出し、前記相手先に対して電話をかけるようにする発信処理手段と、
前記発信処理手段を通じて前記発信情報を送出してからオンフック操作を受け付けるまでの時間を計測する計時手段と、
前記計時手段により計測された時間が、所定時間以内か否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により、前記計時手段により計測された時間が、前記所定時間以内であると判別され、相手先が応答していない場合には、間違い電話である旨のメッセージを前記電話網に送出し、前記相手先の電話端末に対して提供するメッセージ提供手段と、
前記メッセージ提供手段を通じて前記メッセージを送出した後、前記発信情報の送出を契機とする通話回線を接続するための一連の接続処理を取り消す取消手段と
を備えることを特徴とする電話装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電話装置であって、
前記取消手段は、一連の前記接続処理を取り消す前に、前記相手先の電話端末から応答が返信されてきた場合には、通話回線の確保を行うことなく、一連の前記接続処理を取り消すことを特徴とする電話装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電話装置であって、
1以上の電話端末を収容し、前記電話端末ごとに呼制御を行う電話制御装置の構成とされており、
前記発信処理手段と、前記計時手段と、前記メッセージ提供手段と、前記取消手段とは、1以上の前記電話端末ごとに機能するものであり、
前記発信処理手段は、前記電話端末からの発信要求を受け付けた場合に、前記発信情報を形成して前記電話網に送出し、
前記計時手段は、前記発信処理手段を通じて前記発信情報を送出してから、前記発信要求を送信してきた前記電話端末からのオンフックされたことを示す情報を受け付けるまでの時間を計測することを特徴とする電話装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電話装置であって、
1以上の前記電話端末ごとに、間違い電話であると判別された回数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段でカウントされた前記回数を、1以上の前記電話端末ごとに記憶する記憶手段と、
前記発信要求を受け付けた場合に、前記発信要求の送信元の電話端末についての前記記憶手段に記憶されている前記回数を参照し、
所定期間の間違い電話の回数が、所定回数より多いか否かを判別する回数判別手段と、
前記回数判別手段により、前記所定回数より多いと判別された場合に、前記発信要求の送信元の電話端末に対して、注意喚起メッセージを提供する注意喚起提供手段と
を備えることを特徴とする電話装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電話装置であって、
前記注意喚起提供手段を通じて、前記注意喚起メッセージを提供した後、提供先の前記電話端末から通話回線を接続するための一連の接続処理の継続を指示する指示情報を受け付ける受付手段を備え、
前記発信処理手段は、前記受付手段を通じて前記指示情報を受け付けた場合に、前記発信情報を前記電話網に送出することを特徴とする電話装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電話装置であって、
前記注意喚起提供手段が提供する前記注意喚起メッセージは、電話をかける前記相手先の電話番号と名称との一方あるいは両方を含むことを特徴とする電話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、間違い電話をしてしまった場合に、発信元と着信先との双方にとって便利な機能を提供する電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電話をかけた際に間違い電話をしてしまうことがある。間違い電話は、相手が応答して気付く場合もあるが、相手が応答する前に気付く場合も多々ある。このとき、ハンドセットからリングバックトーン(呼出音)が聞こえる前であれば、相手先においても呼出音が放音される前であるので、オンフックして呼を切断しても問題はない。しかし、間違い電話をしてしまったことに気が付いていても、リングバックトーンが聞こえてしまってからオンフックして切断するのは、相手先においても呼出し音が放音されてしまっているので気が引ける。しかも現在では非通知で電話をかけないと、相手先に発信者の電話番号が残ってしまう場合もありなおさらである。
【0003】
その反面、間違い電話をかけてしまったことを自覚しており、相手先に謝る必要があると分かっていても、相手先が応答するまで待ち続けるも精神的に良いものではない。このため、後に記す特許文献1に開示されているように、相手先が未応答だった場合に、間違い電話である旨のメッセージを残すようにすることが考えられる。特許文献1に開示された発明は、着信先の電話端末や電話システムが留守応答機能に対応していない場合においても、伝言を伝達することができるIP電話端末に関する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、相手先が留守番電話機能に対応しておらず、しかも応答しない場合にメッセージを残すようにするものであり、相手先が即座に応答する場合もあり間違い電話をした場合には適用できるものではない。すなわち、電話をかけ、間違い電話をしたことに気が付き、既にリングバックトーンが聞こえている状態で、かつ、相手先が応答していない場合に、発信元がオンフックすることにより呼を切断しても、相手先に対して失礼にならないようにすることが望まれる。
【0006】
以上のことに鑑み、この発明は、相手先が応答する前に間違い電話をかけてしまったことに気付いた場合に、呼を切断しても相手先に失礼とならず、しかも通話料金も発生することがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の電話装置は、
使用者からの指示に応じて、相手先を呼び出すようにする発信情報を電話網に送出し、前記相手先に対して電話をかけるようにする発信処理手段と、
前記発信処理手段を通じて前記発信情報を送出してからオンフック操作を受け付けるまでの時間を計測する計時手段と、
前記計時手段により計測された時間が、所定時間以内か否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により、前記計時手段により計測された時間が、前記所定時間以内であると判別され、相手先が応答していない場合には、間違い電話である旨のメッセージを前記電話網に送出し、前記相手先の電話端末に対して提供するメッセージ提供手段と、
前記メッセージ提供手段を通じて前記メッセージを送出した後、前記発信情報の送出を契機とする通話回線を接続するための一連の接続処理を取り消す取消手段と
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明の電話装置によれば、発信処理手段により、発信情報を電話網に送出して電話をかけるようにするが、計時手段によって、発信情報を電話網に送出してから、オンフック操作がされるまでに時間が計測される。判別手段により、計時手段により計測された時間が所定時間内であると判別され、相手先が応答していない場合には、メッセージ提供手段によって間違い電話である旨のメッセージが電話網に送出され、相手先の電話端末に対して提供される。この後、取消手段によって、発信情報の送出を契機とする通話回線を接続するための一連の接続処理が取消され、呼が切断される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、発信情報の送出からオンフックまでの時間が所定時間以内である場合には、間違い電話である旨のメッセージを相手先に送信して呼が切断される。これにより、相手先が応答する前に切断しても、間違い電話である旨のメッセージを相手先に提供できるので、失礼になることがない。しかも、通話回線を確保することなく呼を解放することができるので、通話料金が発生することもないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態のビジネスホンシステムの構成例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態の電話制御装置であるSIPサーバの構成例を説明するためのブロック図である。
【
図3】SIPサーバのアドレス管理DBの格納データの例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態のIP電話端末の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】実施の形態のビジネスホンシステムで行われる間違い電話時の処理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】実施の形態のビジネスホンシステムで行われる間違い電話時の他の処理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】実施の形態のSIPサーバで行われる間違い電話時の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しながら、この発明の装置の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、この発明による電話装置を、例えば会社のオフィスなどに構築されるビジネスホンシステム(ボタン電話システム)で用いられる電話制御装置としてのSIPサーバに適用した場合を例にして説明する。
【0012】
[ビジネスホンシステムの構成例]
図1は、この実施の形態のビジネスホンシステムの構成例を説明するための図である。
図1に示すように、SIPサーバ1に対して、LAN(Local Area Network)2を通じて、複数のIP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…が接続されることにより、ビジネスホンシステムが構成される。また、SIPサーバ1は、広域ネットワーク4にも接続されている。この実施の形態において、広域ネットワーク4は、主にはIP電話網であるが、公衆交換電話網、携帯電話網をも含む。
【0013】
SIPサーバ1は、この発明による電話装置が適用されたものであり、自機に接続された(配下の)IP電話端末の呼制御を行う。なお、呼制御は、電話をかけたり、電話を受けたりして、通話回線(電話回線)を接続して通話を可能にしたり、接続した通話回線を切断したりするなど、電話をかけたり、切ったりするための一連の制御を意味する。IP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…のそれぞれは、相手先の電話端末との間に接続される通話回線を通じて通話を行う機能を実現する。
【0014】
すなわち、IP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…のそれぞれは、SIPサーバ1を介して、広域ネットワーク4に接続されているIP電話端末5や携帯電話端末(図示せず)などと外線通話を行える。また、IP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…のそれぞれは、SIPサーバ1を介して、LAN2に接続されている他のIP電話端末と内線通話を行うことができる。なお、外線電話としてのIP電話端末5は、単独で広域ネットワーク4に接続されている場合もあれば、他のビジネスホンシステムの電話端末として広域ネットワーク4に接続される場合もある。
【0015】
この実施の形態のビジネスホンシステムにおいては、従来にない間違い電話に関する新たな機能を利用可能にしている。間違い電話は、2つの場合に分けることができる。1つは、電話を掛けた場合に、間違い電話をしたことに気が付かないで相手先が応答し、相手先の応答によって初めて間違い電話をしてしまったことに気が付く場合である。この場合には、相手先に対して間違い電話をしてしまったことを直接謝罪できる。
【0016】
もう1つは、電話を掛けた場合に、直ぐに間違い電話をしたことに気が付き、相手先が応答する前に、即座にオンフックしてしまう場合である。この場合には、通話回線が接続されることはないので、相手先に直接に謝罪することができないので、相手先に対して失礼である。この実施の形態のビジネスホンシステムは、後者の場合においても、相手先に対してできるだけ失礼にならないように対応できるようにするものである。
【0017】
具体的には、SIPサーバ1は、配下のIP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…からの要求に応じて、相手先の電話番号などを含む発信情報を広域ネットワーク4に送出して相手先を呼び出すようにした後から、オンフックされるまでの時間を計測する。この時間の計測は、相手先が応答した場合には中止される。接続された通話回線を通じて直接に謝罪できるためである。しかし、相手先が応答せず、計測した時間が所定時間以内(予め決められた一定の時間以内)、例えば、3秒以内である場合には、間違い電話をかけた蓋然性が高い。このため、SIPサーバ1は、間違い電話である旨のメッセージを、自動で相手先に送信した後に、一連の接続処理を取消し、発呼元からの呼を解放する(発呼元との接続を解放する)。
【0018】
これにより、電話をかけた直後に間違い電話に気付き、即座にオンフック操作したとしても、間違い電話である旨を知らせるメッセージが相手先に提供されるので、相手先に対して失礼にならないようにできる。しかも、通話回線を確保(接続)することもないので、通話料金が発生することもない。このように、この実施の形態において、間違い電話は、相手が応答する前に、自ら間違い電話に気が付き、発信情報の送信から所定時間以内にオンフックしたために、通話回線が接続されずに直接に謝罪できない場合を意味する。
【0019】
以下においては、この実施の形態のビジネスホンシステムのSIPサーバ1とIP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…の構成例について説明する。なお、IP電話端末3(1)、3(2)、3(3)、…のそれぞれは、同様に構成されるものであるので、特に区別して示す必要がる場合を除き、IP電話端末3と総称する。
【0020】
[SIPサーバ1の構成例]
図2は、実施の形態のビジネスホンシステムにおいて、電話制御装置として機能するSIPサーバ1の構成例を説明するためのブロック図である。接続端101Tは、広域ネットワーク4への接続端を構成する。通信I/F(Interface)101は、広域ネットワーク4を通じての通信処理を行う部分である。すなわち、通信I/F101は、広域ネットワーク4を介して送信されて来る自機宛ての信号を、自機において処理可能な形式の信号に変換してこれを取り込む。また、通信I/F101は、自機から目的とする相手先に送信する信号を、送信用の形式の信号に変換してこれを広域ネットワーク4に送出して相手先に送信する。
【0021】
制御部102は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えたマイクロプロセッサであり、SIPサーバ1の各部を制御する。また、制御部102は、パケット化されて送受される制御データや音声データなどの種々のデータの分解処理や生成処理をも行うことができるものである。
【0022】
記憶装置103は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの、記録媒体とそのドライバとからなる装置部であり、種々のデータの記録、変更、削除、読み出しなどを行う。記憶装置103は、必要となるデータやプログラムを記憶保持する他、種々の処理において生じる中間データを一時記憶する作業領域としても用いられる。
【0023】
アドレス管理DB104は、HDDやSSDなどの記録装置部に作成され、自機に収容されたIP電話端末3についてのアドレス情報やその他の管理情報を記憶保持する。
図3は、SIPサーバ1のアドレス管理DB104の格納データの例を説明するための図である。
図3に示すように、アドレス管理DB104には、SIPサーバ1に収容されるIP電話端末3ごとに、「内線番号」、「IP(Internet Protocol)アドレス」、「ポート番号」、「間違い回数」、「その他」の各情報が記憶保持される。
【0024】
「内線番号」は、SIPサーバ1に収容される全てのIP電話端末3に割り当てられる内線電話用の番号である。IPアドレスは、インターネットに接続可能な機器に対して、例えばDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバなどにより付与され、インターネットに接続可能な機器のそれぞれを一意に特定できる情報である。この実施の形態において、SIPサーバ1に収容されるIP電話端末3のそれぞれには、IPアドレスが割り当てられている。
【0025】
「ポート番号」は、IP電話端末3のそれぞれが用いるポートの番号である。「間違い回数」は、電話をかけた場合に、発信情報を送出して相手先を呼び出すようにしてからオンフック操作されるまでの時間が所定時間以内、例えば3秒以内で、かつ、相手先が応答しなかった場合の回数である。すなわち、「間違い回数」は、IP電話端末3を通じて電話をかけた場合であって、相手が応答することなく、発信情報を送出して相手先を呼び出してからオンフック操作されるまでの時間が所定時間以内である間違い電話である蓋然性が高い場合の回数である。ここで、「蓋然性が高い場合」としたのは、実際には相手先を間違っていなくても、何等かの原因により相手先が応答する前に自らオンフックした場合には相手先に対しては失礼になるので、この場合をも間違い電話に含め趣旨である。
【0026】
なお、「間違い回数」の欄は、
図3に示したように、例えば、31日(1か月)分の各日ごとの回数の格納エリア(1日から31日までの31個の格納エリア)を備えている。これに当日を含め直近の31日分の各日ごとの間違い電話の回数を格納するようになっている。これにより、例えば、昨日の間違い電話の回数、昨日と今日の間違い電話回数、直近の7日分の間違い電話の回数というように、1日から31日の範囲で所定期間の間違い電話の回数の把握が可能になる。
【0027】
「その他」としては、例えば、IP電話端末3のMACアドレス(Media Access Control address)、URL(Uniform Resource Locator)など、必要となる種々の情報を付加することが可能である。アドレス管理DB104の格納データにより、SIPサーバ1は、自機に収容するようにされたIP電話端末3のそれぞれについて把握できる。
【0028】
接続端105Tは、LAN2への接続端を構成する。LANI/F(Interface)105は、SIPサーバ1と、LAN2を通じてSIPサーバ1に収容されるIP電話端末3のそれぞれとの間の通信を可能にする。従って、SIPサーバ1からIP電話端末3への信号は、LANI/F105において送信用の形式の信号に変換されて、IP電話端末3に送信される。また、IP電話端末3からの信号は、LANI/F105において自機において処理可能な形式の信号に変換されて取り込まれる。
【0029】
呼制御部106は、制御部102の制御の下、アドレス管理DB104の管理情報を用い、配下のIP電話端末3の発信、着信、応答、切断等の呼制御を行う。呼制御部106は、
図2に示すように、発信制御部1061と、着信制御部1062とを備えている。配下のIP電話端末3から発信(発信要求)を受け付けると、発信制御部1061が機能して、指示された相手先に対して発信情報を送出して当該相手先を呼び出すようにし、当該相手先が応答してきたら通話回線を接続して通話を可能にする。また、発信制御部1061は、発信要求に応じて通話回線の接続処理を行うようにしている場合に、オンフックされた場合には、当該接続処理をキャンセルする処理(取消す処理)も行う。
【0030】
また、自機宛ての着信(相手先からの発信通知)を受け付けた場合には、着信制御部1062が機能して、配下のIP電話端末3に着信通知を行う。これにより、IP電話端末3では、呼び出し音が放音され、着信の発生が通知される。IP電話端末3において、着信に応答する操作(オフフック操作)がされると、着信制御部1062は、これを検知して、着信に応答し、オフフックがされた配下のIP電話端末3との間に通話回線を接続して通話を可能にする。
【0031】
なお、この実施の形態のSIPサーバ1において、接続した通話回線を保留にしたり、転送したり、解放したりする処理は、配下のIP電話端末3からの要求に応じて、制御部102の制御の下に処理される。また、着信通知後に代理応答機能が用いるようにされた場合にも、配下のIP電話端末3からの要求に応じて、制御部102の制御の下に処理される。この他、制御部102は、配下のIP電話端末3が備えるLED(Light Emitting Diode)の点灯/消灯制御やディスプレイへの表示制御なども行う。
【0032】
タイマー回路107は、配下のIP電話端末3から発信要求を受け付けて、発信情報を広域ネットワーク4に送出して相手先を呼び出すようにした時点から、当該発信要求元のIP電話端末3からオンフック信号が送信されてきた時点までの時間を計測する。すなわち、配下のIP電話端末3から発信要求を受け付けて、発信制御部1061が機能することにより形成した発信情報を広域ネットワーク4に送出して相手先を呼び出すようにした時点を始点とする。この後、当該発信元のIP電話端末3においてオンフック操作がされて、オンフック信号がSIPサーバ1に送信されてきた時点を終点とする。タイマー回路107は、当該始点から当該終点までの時間を計測し、計測結果を間違い電話判別部108に通知する。
【0033】
なお、タイマー回路107は、電話をかけた相手先が応答操作を行うことにより、当該相手先より応答メッセージが送信され、これを接続端101T及び通信I/F101を通じて受信した時には、時間の計測(計時)を終了する。タイマー回路107は、発信情報を送出して相手先を呼び出すようにしてから、相手先が応答することなく、配下のIP電話端末3でオンフック操作行われるまでの時間を計測することにより、間違い電話をしてしまった蓋然性が高い場合を検出するためである。従って、電話を掛けた相手先が応答した時には、計測された時間に意味はなく、間違い電話判別部108に通知されることはない。
【0034】
間違い電話判別部108は、タイマー回路107によって計測された時間が、予め決められた所定時間以内、例えば3秒以内か否かを判別し、所定時間以内であると判別した場合にその判別結果を謝罪メッセージ提供部109に提供する。謝罪メッセージ提供部109は、間違い電話判別部108からタイマー回路107の計測時間が所定時間以内であることを示す判別結果が提供された場合に機能する。この場合、謝罪メッセージ提供部109は、例えば、「間違えました。失礼しました。」といった、間違い電話である旨のメッセージ(間違い電話を謝罪する謝罪メッセージ)を形成し、これを通信I/F101及び接続端101Tを通じて相手先に送信する。当該謝罪メッセージは、相手先の電話端末の表示部に表示され、相手先の使用者に提供される。
【0035】
このように、タイマー回路107、間違い電話判別部108、謝罪メッセージ提供部109の機能によって、電話をかけ、相手先が応答する前であって、発信情報の送出から所定時間以内にオンフックした場合には、間違い電話である蓋然性が高い。この場合に、上述したように謝罪メッセージを相手先に送信できる。この謝罪メッセージの送信後に、発信制御部1061の制御により、通話回線の接続処理をキャンセルし(取消し)、通話回線を接続しないようにする。これにより、通話料金が発生することもない。
【0036】
間違い電話カウント部110は、謝罪メッセージ提供部109が謝罪メッセージを提供した場合に、アドレス管理DB104の発信元のIP電話端末3についての「間違い回数」をカウントアップする。上述したように、アドレス管理DB104の「間違い回数」の欄は、31個の格納エリアを備えており、間違い電話カウント部110は、「間違い回数」の欄の対応する日の格納エリアのカウント値をカウントアップする。
【0037】
もちろん、間違い電話カウント部110は、謝罪メッセージ提供部109と同様に機能するように構成することもできる。すなわち、間違い電話判別部108での判別結果が所定時間以内であることを示している場合に、アドレス管理DB104の「間違い回数」をカウントアップするように間違い電話カウント部110を構成してもよい。
【0038】
間違い電話頻度判定部111は、配下のIP電話端末3からの発信要求を受信した場合に、アドレス管理DB104の当該IP電話端末3についての「間違い回数」を参照し、所定期間の間違い電話の回数が所定回数以上であるか否かを判別する。この実施の形態において、間違い電話頻度判定部111は、発信元のIP電話端末3について、例えば、直近の7日間における間違い回数が5回以上か否かを判別し、5回以上である場合に、これを注意喚起提供部112に通知する。
【0039】
注意喚起提供部112は、間違い電話頻度判定部111より、発信元のIP電話端末3について、所定期間における間違い回数が所定回以上であるとの判別結果の通知を受けた場合に機能する。具体的には、上述したように、発信元のIP電話端末3について、直近の7日間における間違い回数が5回以上であるとの判別結果の通知を受けた場合に、注意喚起提供部112が機能する。
【0040】
注意喚起提供部112は、制御部102を通じて発信制御部1061の発信処理を一時的に停止させるようにする。この後、注意喚起提供部112は、発信元のIP電話端末3に対して、注意喚起メッセージをLANI/F105及び接続端105Tを通じて提供し、発信処理を継続するか否かの確認入力を求めるようにする。注意喚起メッセージは、例えば、「間違い電話が多くなっています。相手先の電話番号に間違いはないですか?よければ「*」を押して下さい。」といったものとなる。
【0041】
この他、注意喚起提供部112は、相手先の電話番号を含めて発信元のIP電話端末3に提供し、電話番号を確認できるようにすることも可能である。また、注意喚起提供部112は、発信元のIP電話端末3が、SIPサーバ1が備える電話帳メモリの蓄積データを用いて電話をかけるようにしている場合には、相手先の名前(名称)を含めて提供し、相手先の名前を確認できるようにすることも可能である。もちろん、相手先の電話番号と名前の両方を含めて通知し、これを出力するようにすることもできる。
【0042】
注意喚起メッセージの送出後、この実施の形態では、発信元のIP電話端末3から「*」が操作されたことを示す操作信号が送信されてきたとする。この場合、注意喚起提供部112は、制御部102を通じて発信制御部1061を制御し、一時的に停止させている発信処理を続行させ、発信情報を送出して相手先を呼び出すようにする。一方、注意喚起メッセージの送出後、発信元のIP電話端末3からオンフック信号が送信されてきたとする。この場合、注意喚起提供部112は、制御部102を通じて発信制御部1061を制御し、一時的に停止させている発信処理を終了させ、配下のIP電話端末3からの次の発信要求の到来を待つようになる。
【0043】
このように、間違い電話カウント部110、間違い電話頻度判定部111、注意喚起提供部112の機能により、間違い電話の頻度が多いIP電話端末3を用いて電話をかけるようにした場合には、間違い電話をしないように注意喚起ができる。会社のオフィスに形成されたビジネスホンシステムの場合、IP電話端末3は決められた位置に配置されている場合が多く、使用者はある程度固定されるので、間違い電話の多い使用者に対して注意喚起を促し、間違い電話を抑止することができる。
【0044】
[IP電話端末3の構成例]
図4は、実施の形態のSIPサーバ1に収容されるIP電話端末3の構成例を説明するためのブロック図である。制御部310は、図示しないが、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリなどを備えたマイクロプロセッサであり、IP電話端末3の各部を制御する。また、制御部310は、パケット化されて送受される制御データや音声データなどの種々のデータの分解処理や生成処理も行う。
【0045】
接続端301Tは、LAN2への接続端を構成する。LANI/F301は、LAN2を通じたSIPサーバ1との接続を実現する。すなわち、LANI/F301は、自機宛てに送信されてきた信号を、自機において処理可能な形式の信号に変換して自機に取り込む処理を行う。また、LANI/F301は、自機から送信する信号を、送信用の信号に変換し、これを送出する処理を行う。この実施の形態のIP電話端末3は、接続端301T及びLANI/F301を通じてSIPサーバ1に対して有線接続されている。
【0046】
ハンドセット302は、スピーカ(受話器)とマイクロホン(送話器)とを備えたものである。また、IP電話端末3は、ハンドセット302がIP電話端末3の筐体の定位置に置かれているときにはオンフック状態となり、IP電話端末3の筐体の定位置から取り上げるとオフフック状態となるようにさている。このため、IP電話端末3においては、これらのフック状態を制御部310が把握できる構成が整えられている。
【0047】
コーデック303は、制御部310においてパケット分解された音声データの供給を受けて、これを圧縮伸長してアナログ音声信号に変換し、オフフック状態のハンドセット302のスピーカに供給する。これにより、相手先からの音声がハンドセット302のスピーカから放音される。また、コーデック303は、オフフック状態のハンドセット302のマイクロホンにより収音されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換し、これをデータ圧縮して制御部310に供給する。制御部310は、コーデック303からの音声データをパケット化して、これをLANI/F301及び接続端301Tを通じて相手先に送信する。
【0048】
操作入力部304は、使用者からの操作入力を受け付けて、受け付けた情報を制御部310に提供する。操作入力部304には、テンキーや複数のファンクションキーが設けられている。この他にも、外線キー、内線キー、パーク保留キーなどの設定が可能ないわゆるラインキーなどが設けられている場合もある。
【0049】
LED(Light Emitting Diode)部305は、例えば、ファンクションキーやテンキーに対応して設けられた複数のLEDからなり、制御部310の制御により、点灯、点滅、消灯の制御がされる。例えば、外線キーや内線キーが設定されたラインキーに対応するLEDは、当該ラインキーに対応付けて、通話回線が保留状態にされたら点滅するように制御される。また、パーク保留キーが設定されたラインキーに対応するLEDは、当該ラインキーに対応付けて、通話回線が保留状態にされたら点灯するように制御される。なお、ここで説明した制御の内容は、一例であり、点灯、点滅、消灯の制御は、種々の態様で行うことができる。
【0050】
リンガ306は、制御部310の制御の下、着信時において着信音を放音させるものである。リンガ306は、その他にも、制御部310の制御の下、例えば、誤操作の場合の警告音を放音したり、音声メッセージなどを放音したりすることもできるものである。ディスプレイ307は、ディスプレイコントローラを備え、制御部310の制御の下、例えば、
図1に示したように、IP電話端末3の前面の例えば右上端側に設けられるディスプレイ307の表示画面に、種々の情報を表示する処理を行う。表示される情報には、入力した相手先の電話番号、発信元の電話番号、ガイダンスメッセージ、警告メッセージ、また、上述した注意喚起メッセージなど種々の情報がある。
【0051】
このような構成のIP電話端末3が、
図1に示したように、SIPサーバ1に収容され、SIPサーバ1を介して、外線電話を掛けたり、外線電話を受けたり、内線電話を掛けたり、内線電話を受けたりすることができるようになっている。
【0052】
[ビジネスホンシステムの動作]
IP電話端末3から間違い電話を掛けてしまった場合にこの実施の形態のビジネスホンシステムにおいて行われる処理について説明する。なお、上述もしたように、この実施の形態において、間違い電話は、相手が応答する前に、自ら間違い電話に気が付き、発信情報の送信から所定時間以内にオンフックした場合を意味している。
【0053】
<基本的な処理>
図5は、実施の形態のビジネスホンシステムで行われる間違い電話時の処理を説明するためのタイミングチャートである。
図5の左上端に示すように、SIPサーバ1に収容されたIP電話端末3に対した発信操作が行われると(ステップS1)、当該IP電話端末3は、発信要求を形成し、LAN2を通じてSIPサーバ1に送信する(ステップS2)。SIPサーバ1は、IP電話端末3からの発信要求を受け付けると、「INVITE」リクエスト(セッション確立要求)を形成し、これを広域ネットワーク4に送出して、相手先を呼び出すようにする(ステップS3)。「INVITE」リクエストは、SIPサーバ1から送出される発信情報に相当する。
【0054】
この後、SIPサーバ1は、計時処理(時間の計測処理)を開始する(ステップS4)。また、広域ネットワーク4からは、セッションの確立要求中であることを示す応答コード「100Trying」が提供されるので、これがSIPサーバ1を通じて発信要求元のIP電話端末3に提供される(ステップS5)。一方、この実施の形態において、着信先(電話の相手先)である外線のIP電話端末5では、「INVITE」リクエストを受信すると、着信鳴動を開始させ(ステップS6)、呼び出し中であることを示す応答コード「180Ringing」を送信する(ステップS7)。当該応答コード「180Ringing」は、広域ネットワーク4、SIPサーバ1を通じて、発信元のIP電話端末3に提供される。
【0055】
この場合に、発信要求元のIP電話端末3の使用者が、間違い電話をかけたことに気が付いて、オンフック操作を行ったとする(ステップS8)。当該IP電話端末3は、オンフック操作を受け付けると、オンフック通知を形成し、LAN2を通じてSIPサーバ1に通知する(ステップS9)。SIPサーバ1は、発信元のIP電話端末3からのオンフック通知を受け付けると、ステップS4において開始させた時間の計測処理(計時処理)を終了させ、計測した時間を確定する(ステップS10)。
【0056】
この後、SIPサーバ1は、ステップS10において確定した計測時間(INVITEリクエストを送出してからオンフック通知を受信するまでの時間)は、所定時間以内(例えば3秒以内)か否かを判別する(ステップS11)。ステップS11の判別処理において、確定した計測時間は所定時間以内であると判別したとする。この場合には、今回の発信要求は間違い電話であった蓋然性が高い。このため、SIPサーバ1は、例えば、「間違えました。失礼しました。」という謝罪メッセージを形成し、これをセッション内の情報通知リクエストである「INFO」リクエストによって相手先に送信する(ステップS12)。これにより、当該謝罪メッセージが相手先(着信先)に送信されて、相手先の使用者に提供される。
【0057】
更に、SIPサーバ1においては、間違い電話の回数K(n)に1を加算する処理を行って、これをアドレス管理DB104の今回の発信元のIP電話端末3の「間違い回数」の欄に更新する処理を行う(ステップS13)。ここで、K(n)の文字nは、1~31までの整数であり、アドレス管理DB104の「間違い回数」の欄の対応する回数格納エリアを示す情報(添え字)である。
【0058】
この後、SIPサーバ1は、セッションの確立キャンセルリクエストである「CANCEL」リクエストを、広域ネットワーク4を通じて、今回の電話をかけた相手先であるIP電話端末5に送信する(ステップS14)。この後、SIPサーバ1は、発信元のIP電話端末3からの呼を解放する(ステップS15)。これにより、発信元のIP電話端末3は、新たな発信が可能になる。なお、
図5において、点線の四角形で囲んで示したように、「応答操作」が行われても、発信元のIP電話端末3はオンフックされているので、通話回線が接続されることもない。
【0059】
なお、発信元のIP電話端末3がオンフック後に電話をかけた相手先でありIP電話端末5の使用者が応答操作を行った場合には、特開2015-46653号公報に開示の技術を用いることも可能である。すなわち、発信元のIP電話端末3がオンフック後に電話をかけた相手先でありIP電話端末5の使用者が応答操作を行った場合には、応答メッセージがSIPサーバ1に提供される。このため、SIPサーバ1は、発信元のIP電話端末3を呼び出して、通話回線を接続し通話を行うようにすることもできる。しかし、この場合には、例え相手先が応答し、発信元がオンフックした直後であっても、既に謝罪メッセージを送信した後なので、通話回線を接続することなく、「CANCEL」リクエストを送信して、接続処理を取消すことができる。
【0060】
また、ステップS11の判別処理において、確定した計測時間は所定時間以内ではない、すなわち、確定した計測時間は所定時間よりも長いと判断したとする。この場合には、間違い電話ではなく、相手先が不在或いは何等かの理由で電話に出ることができなかったと考えられるため、謝罪メッセージは送信することなく、通常通りのキャンセル処理(接続処理を取消す処理)を行う。この場合には、間違い電話ではなく、電話をかけた相手先と通話を行いたい場合であるので、上述の特開2015-46653号公報に開示の技術を用いうようにしてもよい。すなわち、発信元のIP電話端末3がオンフック後に電話をかけた相手先でありIP電話端末5の使用者が応答操作を行った場合には、オンフック直後の発信元のIP電話端末3を呼び出して、通話回線を接続し通話を行うようにしてもよい。
【0061】
<間違い電話の警告を伴う処理>
図5のステップS13に示したように、SIPサーバ1は、間違い電話の回数をカウントし、これをアドレス管理DB104の「間違い回数」の欄に更新するようにしている。このため、この「間違い回数」を利用し、「間違い回数」が多いIP電話端末3から発信要求があった場合には、当該IP電話端末3を通じて使用者に注意喚起を行い、間違い電話の発生を抑制するようにできる。
【0062】
図6は、実施の形態のビジネスホンシステムで行われる間違い電話時の他の処理を説明するためのタイミングチャートである。
図5を用いて説明した場合と同様に、SIPサーバ1に収容されたIP電話端末3に対して発信操作が行われると(ステップS1)、当該IP電話端末3は、発信要求を形成し、LAN2を通じてSIPサーバ1に送信する(ステップS2)。SIPサーバ1は、IP電話端末3からの発信要求を受け付けると、アドレス管理DB104の発信元のIP電話端末3の「間違い回数」の欄を参照し、所定期間の間違い電話の回数が多いか否かを判別する(ステップS21)。この実施の形態では、ステップS21の判別処理において、例えば、直近の7日間における間違い回数が5回以上か否かを判別する。
【0063】
ステップS21の判別処理において、直近の7日間における間違い回数が5回以上である(間違い多い)と判別したとする。この場合、SIPサーバ1は、注意喚起メッセージを形成し、これをセッション内の情報通知リクエストである「INFO」リクエストによって発信元のIP電話端末3に送信する(ステップS22)。この注意喚起メッセージは、上述もしたように、「間違い電話が多くなっています。相手先の電話番号に間違いはないですか?よければ「*」を押して下さい。」といったものとなり、注意喚起を行うと共に、IP電話端末3を通じて確認入力を求めるものとなる。
【0064】
このため、発信元のIP電話端末3では、SIPサーバ1からの指示に応じて、使用者からの確認入力(操作入力)を受け付ける(ステップS23)。IP電話端末3の使用者は、電話をかける相手先に間違いがないと判断すれば、「*」キーを押下操作し、相手先が間違っていると判断すればオンフック操作を行うことになる。いずれの操作を行った場合にも、その操作を示す信号(操作通知)が発信元のIP電話端末3からSIPサーバ1に送信される(ステップS24)。
【0065】
SIPサーバ1は、発信元のIP電話端末3からの操作通知を確認し、「*」キーが操作されて続行が指示されたか否かを判別する(ステップS25)。ステップS25の判別処理において、「*」キーは操作されていない(続行が指示されていない)と判別した場合(「N」の場合)には、発信元のIP電話端末3からの呼を解放する(ステップS26)。これにより、発信元のIP電話端末3は、新たな発信が可能になる。
【0066】
また、ステップS25の判別処理において、「*」キーが操作されて続行が指示されたと判別した場合(「Y」の場合)には、
図6に示したように、
図5に示したステップS3以降の通話回線の接続処理が継続して行われる。同様に、ステップS21の判別処理において、直近の7日間における間違い回数が5回未満である(間違いは多くない)と判別した場合においても、
図6に示したように、
図5に示したステップS3以降の通話回線の接続処理が継続して行われる。
【0067】
このように、SIPサーバ1は、間違い電話の回数をカウントし、これをアドレス管理DB104の「間違い回数」の欄に更新するようにしている。このため、これを利用し、間違い電話の多いIP電話端末3から発信要求が到来した場合には、注意喚起を行い、間違い電話を抑制することができる。
【0068】
[SIPサーバ1の処理のまとめ]
次に、
図2を用いて説明した構成を有し、
図5、
図6を用いて説明したビジネスホンシステムにおける処理を実現するための主要な役割を有するこの実施の形態のSIPサーバ1で行われる処理についてまとめる。
図7、
図8は、実施の形態のSIPサーバで行われる間違い電話時の処理を説明するためのフローチャートである。
【0069】
図7、
図8に示す処理は、LAN2を通じて接続された配下のIP電話端末3から発信要求が到来した場合に、制御部102によって実行される処理である。制御部102は、まず、間違い電話頻度判定部111を制御し、アドレス管理DB104の発信元のIP電話端末3の「間違い回数」を参照し(ステップS101)、間違い回数が多いか否かを判別する(ステップS102)。この実施の形態にいては、上述もしたように、例えば、直近の7日間における間違い回数が5回以上か否かを判別する処理である。
【0070】
ステップS102の判別処理において、間違い電話頻度判定部111が、直近の7日間における間違い回数が5回以上である(間違い電話が多い)と判別した場合には、これを注意喚起提供部112に通知する。注意喚起提供部112は、間違い電話頻度判定部111から間違い電話が多いことを示す判別結果を受け付けると、発信元のIP電話端末3に対して注意喚起メッセージを提供すると共に、確認入力を要求する(ステップS103)。
【0071】
この後、制御部102は、LAN2を通じて送信されて来る発信元のIP電話端末3からの操作通知を受け付け(ステップS104)、発信を行って通話回線の接続処理の続行を指示する操作通知を受け付けたか否かを判別する(ステップS105)。ステップS105の判別処理において、発信を行って通話回線の接続処理の続行を指示する操作通知は受け付けていないと判別したとする。この場合には、制御部102は、発信元のIP電話端末3からの呼を解放する処理を行い(ステップS106)、この
図7、
図8に示す処理を終了する。
【0072】
ステップS102の判別処理において、間違い電話頻度判定部111が、直近の7日間における間違い回数が5回以上ではない(間違い電話は多くない)と判別した場合には、ステップS107の処理に進む。また、ステップS105の判別処理において、発信を行って通話回線の接続処理の続行を指示する操作通知を受け付けたと判別した場合にも、ステップS107の処理に進む。この場合、制御部102は、発信制御部1061を制御し、INVITEリクエスト(発信情報)を形成して、送信することにより、相手先を呼び出すようにする(ステップS107)。
【0073】
この後、制御部102は、タイマー回路107を制御し、INVITEリクエストを送信してからの時間の計測を開始する(ステップS108)。次に、制御部102は、発信元のIP電話端末3からのオンフック操作が行われたことの通知を受け付けるようにし(ステップS109)、オンフック操作が行われたことの通知を受け付けたか否かを判別する(ステップS110)。ステップS110の判別処理において、オンフック操作が行われたことの通知は受け付けていないと判別したとする。この場合、制御部102は、電話をかけた相手先において、応答操作(オフフック操作)が行われることにより送信されてくる応答成功コード(200OK)を、接続端101T及び通信I/F101を通じて受信したか否かを判別する(ステップS111)。
【0074】
ステップS111の判別処理において、応答成功コードは受信していないと判別したときには、制御部102は、ステップS109からの処理を繰り返すようにする。また、ステップS110の判別処理において、応答成功コードを受信したと判別したとする。この場合、制御部102は、タイマー回路107を制御して時間の計測を終了させると共に、発信制御部1061を制御して、発信元のIP電話端末3と着信先との間に通話回線を接続して通話行うようにする通話処理を実行する(ステップS112)。なお、通話が終了すると、接続した通話回線が解放されて、一連の通話処理が終了する。このようにして、ステップS112の通話処理が終了すると、制御部102は、この
図7、
図8に示す処理を終了する。
【0075】
また、ステップS110の判別処理において、オンフック操作が行われたことの通知を受け付けたと判別したとする。この場合、制御部102は、タイマー回路107を制御し、ステップS108において開始した時間の計測を終了させ、計測時間を確定する(ステップS113)。この後、制御部102は、
図8に示す処理に進む。制御部102は、間違い電話判別部108を制御して、タイマー回路107によって計測されたINVITEリクエストの送信からオンフック操作までの時間は、所定時間以内(例えば、3秒以内)か否かを判別する(ステップS114)。
【0076】
ステップS114の判別処理において、計測時間は所定時間以内であると判別されたとする。この場合、制御部102の制御の下、謝罪メッセージ提供部109は間違い電話判別部108の判別結果に応じて、間違い電話である旨のメッセージ(謝罪メッセージ)を形成し、電話をかけた相手先にINFOリクエストにより送信する(ステップS115)。この後、制御部102は、発信制御部1061を制御し、CANCELリクエストを形成して、広域ネットワーク4を通じて電話をかけた相手先に送信し、通話回線の接続処理を取消す(ステップS116)。最後に、制御部102は、発信元のIP電話端末3からの呼を解放する処理(発信元との接続を解放する処理)を行って(ステップS117)、この
図7、
図8に示す処理を終了する。
【0077】
また、ステップS114の判別処理において、計測時間は所定時間以内ではないと判別されたとする。この場合、制御部102は、電話をかけた相手先からの応答成功コードが送信されて来たか否かを判別する(ステップS118)。ステップS118の判別処理において、応答成功コードは送信されてきていないと判別したとする。この場合、制御部102は、ステップS116からの処理を実行し、通話回線の接続処理を取消して(ステップS116)、発信元のIP電話端末3からの呼を解放し(ステップS117)、この
図7、
図8の処理を終了する。
【0078】
また、ステップS118の判別処理において、応答成功コードが送信されてきていると判別したとする。この場合、制御部102は、通話回線の接続を試みる処理を行う(ステップS119)。ステップS119において、制御部102は、まず、発信制御部1061を制御し、一定時間発信元との接続(通話路)を確保する。次に、制御部102は、発信元のIP電話端末3を呼び出すなどして、着信先が応答したことを通知し、発信元のIP電話端末3が応答したら、既に応答操作を行っている電話をかけた相手先との間に通話路(通話回線)を接続する。この後、制御部102は、ステップS119において、通話回線が接続されたか否かを判別する(ステップS120)。
【0079】
ステップS120の判別処理において、通話回線は接続されなかったと判別したとする。この場合、制御部102は、ステップS116からの処理を実行し、通話回線の接続処理を取消して(ステップS116)、発信元のIP電話端末3からの呼を解放し(ステップS117)、この
図7、
図8の処理を終了する。また、ステップS120の判別処理において、通話回線が接続されたと判別したとする。この場合、制御部102は、発信制御部1061を制御し、発信元のIP電話端末3と着信先との間に通話回線を接続して通話行うようにする通話処理を実行し(ステップS121)、通話処理が終了した場合には、この
図7、
図8に示す処理を終了する。
【0080】
このように、この実施の形態のSIPサーバ1は、従来にない間違い電話に関する新たな機能として、間違い電話である蓋然性が高い場合に、オンフック後あっても謝罪メッセージを相手先に提供できるようにしている。また、間違い電話の多いと考えられるIP電話端末3から発信操作がされた場合には、通話回線の接続処理に移行する前に、注意喚起を行い、間違い電話を抑制する機能も実現している。
【0081】
なお、この実施の形態のビジネスホンシステムにおいて、SIPサーバ1は、複数のIP電話端末3を収容しているので、SIPサーバ1は、自機に収容されたIP電話端末3ごとに、
図7、
図8に示した処理を行うことができるようになっている。また、上述の実施の形態では、IP電話端末3から外線のIP電話端末5に電話をかける場合を例にして説明したが、外線電話をかける場合に限るものではない。内線電話をかけた場合にも、同様にして、間違い電話である蓋然性が高い場合に、謝罪メッセージを送信することももちろん可能である。
【0082】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態のSIPサーバ1は、配下のIP電話端末3から発信し、相手先が応答することなく発信元の当該IP電話端末3がオンフックした場合であって、間違い電話である蓋然性が高い場合を検知することができる。間違い電話である蓋然性が高い場合には、発信元のIP電話端末3がオンフックした後であっても、自動的に謝罪メッセージを形成し、相手先(着信先)に通知することができる。
【0083】
これにより、相手先の電話端末のディスプレイに謝罪メッセージが表示するようにされ、例えば、相手先において、使用者が電話を取ろうとしていたのに電話が切れてしまった場合でも、当該謝罪メッセージにより、相手先の使用者が不快になることを抑制できる。従って、間違い電話をかけてしまった発信元の使用者にとっても、間違い電話をしてしまったのに、謝罪もせずに電話を切ってしまったという罪悪感を軽減できる。
【0084】
また、間違い電話の多いIP電話端末3を把握することができる。これにより、間違い電話の多いIP電話端末3からの発信の場合には、IP電話端末3の使用者に対して、注意喚起を行い、着信先に間違いがないかどうかの確認を促し、間違いがないとの確認入力を受け付けた場合に、通話回線の接続処理を行うようにできる。これにより、間違い電話の発生を抑制できる。
【0085】
[変形例]
上述した実施の形態では、INVITEリクエスト(発信情報)を送信してから、着信先が応答することなく、発信元がオンフックするまでの時間が、例えば3秒以内であった場合に間違い電話であるものと判別するようにした。しかし、この3秒以内という時間は一例である。例えば、5秒以内、6秒以内というように、適宜の時間とすることができる。この場合、間違い電話か否かを判別するための基準となる所定時間として、ビジネスホンシステムにおいて統一した所定時間を、SIPサーバ1の制御部102内の不揮発性メモリ(図示せず)に設定することができる。また、例えば、アドレス管理DB104などにおいて、SIPサーバ1に接続されたIP電話端末3ごとに、間違い電話か否かを判別するための基準となる所定時間を設定するように構成することも可能である。
【0086】
また、上述した実施の形態では、INVITEリクエスト(発信情報)を送信してから、着信先が応答することなく、発信元がオンフックするまでの時間が、例えば3秒以内であった場合に、謝罪メッセージを送信するようにした。これとは逆に、INVITEリクエスト(発信情報)を送信してから、着信先が応答することなく、発信元がオンフックするまでの時間が所定時間以上、例えば、10秒以上であって場合に、メッセージを送信することも可能である。この場合には、例えば、「○○です。後で電話をかけ直します。」や「○○まで、電話をください。」といったメッセージを送信することも可能である。
【0087】
<電話端末への適用>
上述した実施の形態では、SIPサーバ1にこの発明による電話端末を適用した場合を例にして説明したが、これに限るものではない。IP電話端末自体に、この発明の電話装置を適用することができる。IP電話端末に対して、
図2に示したSIPサーバ1が備えていたタイマー回路107、間違い電話判別部108、謝罪メッセージ提供部109を設けることにより、間違い電話である蓋然性が高い場合に、謝罪メッセージを送信する機能を実現できる。また、IP電話端末に対して、
図2に示したSIPサーバ1が備えていた間違い電話カウント部110、間違い電話頻度判定部111、注意喚起提供部112、及びカウント値を保持する記憶部を設けることにより、発信時の注意喚起機能を実現できる。
【0088】
また、上述した実施の形態では、主にIP電話網を通じて通話を行えるようにするIP電話を用いる場合を例にして説明したが、これに限るものではない。IP電話における「INFO」リクエスト(メソッド)と同様に、メッセージを送信できる電話機能を用いる場合に、この発明を適用できる。
【0089】
また、謝罪メッセージなどの発信元から着信先に、主にテキストメッセージを提供する場合を説明したが、音声メッセージを提供するように構成することも可能である。また、発信元から着信先に提供するメッセージを複数個設けておき、この複数個のメッセージの中から適切なものを選択して送信するように構成することも可能である。
【0090】
例えば、「間違えました。失礼しました。」の他にも、「間違い電話です。申し訳ありません。」、「準備をととのえてから、電話をかけ直します。」など、種々のメッセージを容易し、これを使い分けるようにすることもできる。この場合には、例えば、謝罪メッセージ提供部109が機能し、例えば、記憶装置103に用意されている複数の謝罪メッセージを、発信元のIP電話端末3に提供し、ディスプレイ307に表示させて、IP電話端末3の使用者に選択させるようにすることができる。
【0091】
また、上述した実施の形態では、間違い電話の多いIP電話端末3から発信要求が到来した場合に、注意喚起を行い、確認の入力を求めるようにした。この場合に、確認の入力として、「*」キーの操作をもとめるようにしたが、これに限るものではないない。所定の数字キーの入力を求めるなど、種々の態様の入力を求めることが可能である。
【0092】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項における発信処理手段、取消手段の格納機能は、実施の形態のSIPサーバ1の発信制御部1061が制御部102と協働して実現している。また、請求項の計時手段、判別手段、メッセージ提供手段の各機能は、実施の形態のSIPサーバ1のタイマー回路107、間違い電話判別部108、謝罪メッセージ提供部109が実現している。
【0093】
また、請求項のカウント手段、記憶手段、回数判別手段、注意喚起提供手段の各機能は、実施の形態のSIPサーバ1の間違い電話カウント部110、間違い電話頻度判定部111、注意喚起提供部112が実現している。また、請求項の受付手段の機能は、実施の形態のSIPサーバ1の接続端105T及びLANI/F105が制御部102と協働して実現している。
【0094】
また、
図7、
図8のフローチャートを用いて説明した方法が、この発明の電話装置で実行されるメッセージ提供方法である。また、
図7、
図8に示した処理を実行するプログラムを形成し、これをSIPサーバなど電話制御装置や電話端末などの電話装置に搭載して実行可能にしておくことによって、この発明の電話装置を実現できる。
【0095】
また、電話制御装置としてのSIPサーバ1が備えるタイマー回路107、間違い電話判別部108、謝罪メッセージ提供部109の各機能は、SIPサーバ1の制御部102で実行されるプログラムによって、制御部102の機能として実現できる。同様に、SIPサーバ1の間違い電話カウント部110、間違い電話頻度判定部111、注意喚起提供部112の各機能は、SIPサーバ1の制御部102で実行されるプログラムによって、制御部102の機能として実現できる。
【符号の説明】
【0096】
1…SIPサーバ、101T…接続端、101…通信I/F、102…制御部、103…記憶装置、104…アドレス管理DB、105…LANI/F、105T…接続端、106…呼制御部、1061…発信制御部、1062…着信制御部、107…タイマー回路、108…間違い電話判別部、109…謝罪メッセージ提供部、110…間違い電話カウント部、111…間違い電話頻度判定部、112…注意喚起提供部、2…LAN、3、3(1)、3(2)、3(3)…IP電話端末、301T…接続端、301…LANI/F、302…ハンドセット、303…コーデック、304…操作入力部、305…LED部、306…リンガ、307…ディスプレイ、4…広域ネットワーク、5…IP電話端末(外線)