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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】圧電デバイス及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/079 20230101AFI20240731BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240731BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240731BHJP
   H10N 30/078 20230101ALI20240731BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240731BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H10N30/079
H10N30/20
H10N30/853
H10N30/078
B41J2/14 305
B41J2/14 613
B41J2/16 305
B41J2/16 517
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020130137
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026591
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】板山 泰裕
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027593(JP,A)
【文献】特開2006-253477(JP,A)
【文献】特開2019-114732(JP,A)
【文献】特開2018-199291(JP,A)
【文献】特開2015-154015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/079
H10N 30/20
H10N 30/853
H10N 30/078
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、前記振動板上に形成された第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記振動板と前記圧電体層との間に、2層以上の複数層が積層された配向層と、
前記配向層と前記圧電体層との間には、酸化ジルコニウムを含む層と、を具備することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記配向層は、同じ材料を含む層が積層されていることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記配向層の複数層は、第1層と、前記第1層よりも前記振動板から遠い第2層と、を含み、
前記第2層の(100)面への配向率は、前記第1層の前記(100)面への配向率よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記配向層は、3層以上が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
振動板と、前記振動板上に形成された第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記振動板と前記圧電体層との間に、前記圧電アクチュエーターを構成する部材と異なる部材であって、互いに同じ材料で形成された、3層以上の複数層が積層された配向層を具備することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項6】
前記配向層の複数層は、第1層と、前記第1層よりも前記振動板から遠い第2層と、前記第2層よりも前記振動板から遠い第3層と、を含み、
前記第2層の(100)面への配向率は、前記第1層の前記(100)面への配向率よりも高く、
前記第3層の(100)面への配向率は、前記第2層の前記(100)面への配向率よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記振動板が、酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記配向層が、LaNi、SrRu、(Ba,Sr)Ti、(Bi,Fe)Tiから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記配向層が、LaNiであることを特徴とする請求項記載の圧電デバイス。
【請求項10】
前記配向層の前記圧電体層側の層が(100)面優先配向をしていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項11】
前記配向層の各層は、10nm以下の厚さであることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の圧電デバイスを具備し、前記圧電デバイスを用いて液体を吐出させることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板と、第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターとを具備する圧電デバイス及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの一つである液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドとしては、例えばノズルに連通する圧力室が形成された流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた圧電アクチュエーターと、を具備し、圧電アクチュエーターによって圧力室内のインクに圧力変化を生じさせることで、ノズルからインク滴を噴射するものが知られている。
【0003】
圧電アクチュエーターは、流路形成基板の振動板上に形成された第1電極と、第1電極上に電気機械変換特性を有する圧電材料で形成された圧電体層と、圧電体層上に設けられた第2電極と、を具備する。
【0004】
圧電体層の結晶配向を制御するために、ニッケル酸ランタン(LNO)からなる配向制御層を設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-234022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動板に対して安定して圧電体層を配向させることができる構成が求められている。特に、酸化ケイ素(SiO)等の非晶質(アモルファス)の振動板を用いた場合に、振動板上に安定して圧電体層を配向させることが求められている。
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、その他の圧電デバイスにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、優先配向した圧電体層を有する圧電デバイス及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、振動板と、前記振動板上に形成された第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、前記振動板と前記圧電体層との間に、2層以上の複数層が積層された配向層を具備することを特徴とする圧電デバイスにある。
【0009】
また、本発明の他の態様は、凹部が形成された基板と、前記基板の一方面側に設けられた振動板と、前記振動板上に形成された第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、を具備し、前記振動板と前記圧電体層との間に、2層以上の複数層が積層された配向層を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0011】
また、本発明の他の態様は、振動板と、前記振動板上に形成された第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターと、前記振動板と前記圧電体層との間に、2層以上の複数層が積層された配向層と、を具備する圧電デバイスの製造方法であって、前記配向層を構成する各層を液相法によって形成することを特徴とする圧電デバイスの製造方法にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
図3】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
図4】実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図7】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図8】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図9】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図10】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図11】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図12】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図13】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図14】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図15】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図16】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図17】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
図18】試験例1のX線回折パターンを示す図である。
図19】試験例1のX線回折パターンを示す図である。
図20】試験例1のX線回折パターンを示す図である。
図21】試験例1のX線回折パターンを示す図である。
図22】試験例2のTEM観察写真である。
図23】圧電アクチュエーターの変形例を示す断面図である。
図24】圧電アクチュエーターの変形例を示す断面図である。
図25】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。また、Z方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。図2は、記録ヘッドの平面図である。図3は、図2のA-A′線断面図である。図4は、図2のB-B′線断面図である。
【0015】
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、「基板」の一例として流路形成基板10を具備する。流路形成基板10は、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。なお、流路形成基板10は、詳しくは後述するが、(100)面優先配向した基板であっても、(110)面優先配向した基板であってもよい。
【0016】
流路形成基板10には、複数の圧力室12が第1方向である+X方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、+Y方向の位置が同じ位置となるように、+X方向に沿った直線上に配置されている。+X方向で互いに隣り合う圧力室12は、隔壁11によって区画されている。もちろん、圧力室12の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置された圧力室12において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。
【0017】
また、本実施形態の圧力室12は、+Z方向に見た形状は、矩形状、平行四辺形状、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円形状とした、いわゆる、角丸長方形状や楕円形状や卵形状などのオーバル形状や、円形状、多角形状等であってもよい。この圧力室12が、「基板」に設けられた「凹部」に相当する。
【0018】
流路形成基板10の+Z方向側には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。
【0019】
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。
【0020】
また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15を+Z方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15を+Z方向に貫通することなく、+Z方向側の面に開口して設けられている。
【0021】
さらに、連通板15には、圧力室12のY軸の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。
【0022】
このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このように流路形成基板10と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向側の面に設けられている。
【0023】
ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、+X方向に沿って一列となるように並んで配置されたノズル列が+Y方向に離れて2列設けられている。すなわち、各列の複数のノズル21は、+Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。もちろん、ノズル21の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置されたノズル21において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。なお、ノズルプレート20は、連通板15の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このようにノズルプレート20と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
【0024】
また、連通板15の-Z方向側の面には、ケース部材40が固定されている。ケース部材40は、第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並んで配置される方向である+X方向に亘って連続して設けられおり、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、詳しくは後述する保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板120が挿通される接続口43が設けられている。
【0025】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。このコンプライアンス部49が撓み変形することによってマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収する。
【0026】
流路形成基板10の-Z方向側の面には、振動板50と配向層200と絶縁体膜55と第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。
【0027】
振動板50は、流路形成基板10側に設けられた酸化ケイ素(SiO)、一例として二酸化ケイ素(SiO)を含む弾性膜51で構成されている。ここで酸化ケイ素を含む弾性膜51とは、酸化ケイ素を主成分として含むものであれば、その他の材料を含むものであってもよい。なお、弾性膜51の主成分が酸化ケイ素であるとは、弾性膜51に含まれる酸化ケイ素が50質量%以上であることを言う。このような酸化ケイ素を含む弾性膜51は、通常アモルファス(非晶質)である。なお、圧力室12等の流路は、流路形成基板10を+Z方向側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室12の-Z方向側の面は、弾性膜51によって画成されている。すなわち、振動板50として、流路形成基板10側に酸化ケイ素を含む弾性膜51を設けることで、流路形成基板10を振動板50とは反対面側からKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチングする際に、弾性膜51をエッチングストップ層として用いることができる。したがって、流路形成基板10に異方性エッチングによって圧力室12を高密度に且つ高精度に形成することができると共に振動板50の厚さにバラツキが生じるのを抑制することができる。もちろん、圧力室12の形成方法は、異方性エッチングに限定されず、ドライエッチング等であってもよい。また、弾性膜51は、酸化ケイ素に限定されるものではない。弾性膜51としては、例えば、流路形成基板10の一部を用いるようにしてもよい。つまり、弾性膜51として、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板を用いるようにしてもよい。また、例えば、弾性膜51としては、二酸化ジルコニウム(ZrO)等の酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO)を用いるようにしてもよい。また、弾性膜51としては、ポリイミド、パリレンなどの有機膜を用いるようにしてもよい。なお、弾性膜51は、非晶質(アモルファス)のものに限定されず、単結晶Siなど優先配向した結晶構造を有するものであってもよい。これは、詳しくは後述するが、弾性膜51上に形成される配向層200を構成する複数層の最下層が下地である弾性膜51の影響を抑える緩衝層として機能するためである。また、配向層200の配向率低下の悪影響が生じる可能性を低減する為、弾性膜51が優先配向した結晶構造の場合は、配向層200との間に非晶質の層を有するとよい。
【0028】
このような弾性膜51上には、配向層200が設けられている。配向層200は、当該配向層200の上方、すなわち、-Z方向側に設けられる膜の配向を制御するためのものである。なお、上方とは、配向層200の直上も、間に他の部材が介在した状態も含むものである。このような配向層200は、2層以上の複数層が積層されて構成されている。なお、配向層200が、2層以上が積層された複数層で構成されているとは、振動板50と圧電体層70との積層方向において、配向層200を構成する各層の間に界面が形成されていることを言う。この配向層200を構成する各層の間の界面は、各層をそれぞれ焼成して形成すること、つまりは各層を形成する際に断熱することで形成されるものである。このように配向層200の各層の間に界面が形成されるように2層以上を積層することで、振動板50側の最下層は、下地である振動板50の影響を抑える緩衝層として機能させることができる。したがって、配向層200の圧電体層70側の最上層は、緩衝層によって下地である振動板50の影響を抑えた状態で自己配向させて優先配向させることができる。なお、配向層200は、3層以上が積層されたものであることが好ましい。これにより、配向層200の最上層をさらに高い配向率で優先配向させることができる。ただし、配向層200を構成する積層する層の数が多すぎると、製造工程が増えて煩雑であると共にコストが増大する。また、配向層200を構成する積層する層の数が多すぎると、配向層200全体の膜厚が比較的厚くなり、配向層200が圧電アクチュエーター300の変形を阻害する虞がある。したがって、配向層200は、3層が積層されたものであるのが好適である。なお、配向層200を構成する各層は、+Z方向の厚さが、10nm以下であることが好ましく、配向層200の全体の+Z方向の厚さは、5nm以上、20nm以下が好適である。このように配向層200を比較的薄く形成することで、配向層200が圧電アクチュエーター300の変位を阻害するのを抑制して、圧電アクチュエーター300の変位特性を向上、すなわち、比較的低い電圧で高い変位量を得ることができる。
【0029】
このような配向層200を構成する各層は、スパッタリング法、物理蒸着法(PVD法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜法(略して気相法とも言う)、MOD法、ゾル-ゲル法等の液相成膜法(略して液相法とも言う)によって形成することができる。ただし、配向層200を構成する各層は、液相法で形成した方が、気相法によって形成する場合に比べて比較的厚さの薄い膜を形成することができる。
【0030】
本実施形態では、配向層200として、図4に示すように、第1層201、第2層202及び第3層203が振動板50側から圧電アクチュエーター300側に向かって、すなわち、+Z方向側から-Z方向側に向かって積層されている。
【0031】
このような配向層200の材料としては、圧電体層70の配向、本実施形態では、(100)面に合わせて自己配向性の高い材料を用いることができる。具体的には、配向層200の材料としては、例えば、LaNi(略称LNO)、SrRu(略称SRO)、(Ba,Sr)Ti(略称BST)、(Bi,Fe)Ti(略称BFT)から選択される少なくとも1つを含む。なお、第1層201、第2層202及び第3層203の各層のそれぞれが、上記したLNO、SRO、BST、BFTから選択される少なくとも1つを含むものであればよい。また、第1層201、第2層202及び第3層203の各層のそれぞれが、LNO、SRO、BST、BFTから選択される少なくとも1つを含むとは、これらLNO、SRO、BST、BFTから選択される1つ又は2つ以上の複数が50質量%以上であることを言う。また、第1層201、第2層202及び第3層203の各層は、同じ材料を含むものであってもよく、異なる材料を含むものであってもよいが、配向し易くなる為、第1層201と第2層202、または第2層202と第3層203、または第1層201と第2層202と第3層203の3層が、同じ材料であったり同じ材料を含むことが好ましい。特に緩衝層となる第1層201と、第2層202の両方が同じ材料であったり同じ材料を含むことが配向率が向上する為に好ましい。なお、配向層200を構成する各層は、異なる材料であっても格子定数、具体的にはa軸の格子定数が近い材料であるのが好ましい。このように配向層200を構成する各層として格子定数が近い材料を用いることで、配向層200を構成する各層の間で格子整合させ易く、配向層200の圧電体層70側の上層をより優先配向させることができる。もちろん、配向層200を構成する各層は、同じ材料を含むものであることが好ましい。このように配向層200を構成する各層を同じ材料を含むものとすることで、配向層200を構成する各層の間で格子整合させ易く、配向層200の圧電体層70側の上層をより優先配向させることができる。また、配向層200の各層を同じ材料を含むものとすることで、配向層200の製造時に各層毎に材料を変更する必要がなく、コストを低減することができると共に製造工程を簡略化することができる。ここで、配向層200を構成する各層が同じ材料を含むとは、含まれる元素が同じであることを言う。つまり、配向層200を構成する各層は、同一の元素を用いたものであれば、結晶構造が異なるものや、含まれる元素の比率が異なるものも含む。また、配向層200を構成する各層が同じ材料を含むとは、配向層200を構成する各層の製造時における原料が同じであるものを含む。
【0032】
なお、配向層200としては、LNOを用いるのが好ましい。これは、上記材料の中でもLNOの自己配向性が高いため、配向層200としてLNOを用いることで、配向層200を構成する複数層の最上層の配向率を高くすることができるからである。したがって、配向層200としてLNOを用いることで、配向層200の最上層の配向率を高くして、配向層200の上に形成される圧電体層70の配向率を向上し、圧電体層70の変位効率を向上することができる。本実施形態では、配向層200の各層として、例えば、x=3、y=1のLaNiOを用いた。
【0033】
第1層201は、当該第1層201よりも上に積層される第2層202以降を(100)面優先配向をさせるために下地の影響を抑える緩衝層として機能するものである。この第1層201は、(100)面優先配向をあまりしていない緩衝層となっている。
【0034】
第2層202は、第1層201上に設けられたものであり、第1層201がバッファーとなって下地である弾性膜51の影響を受けずに自己配向することにより第1層201よりも(100)面優先配向をしている。
【0035】
第3層203は、第2層202上に設けられたものであり、(100)面優先配向をした第2層202上に、エピタキシャル成長によって第2層202よりもさらに配向率の高い(100)面優先配向をしている。
【0036】
なお、本明細書において優先配向とは、50%以上、好ましくは80%以上の結晶が、所定の結晶面に配向していることを示すものとする。例えば「(100)面優先配向をしている」とは、全ての結晶が(100)面配向をしている場合と、半分以上の結晶(換言すると50%以上、好ましくは80%以上)が(100)面配向をしている場合と、を含む。
【0037】
このように配向層200は、2層以上の複数層を積層することで、最下層である第1層201を下地である振動板50の影響を緩衝する緩衝層として機能させて、第1層201より上に積層された第2層202及び第3層203を下地である振動板50の影響を抑制して、自己配向させることができる。したがって、配向層200の上方に形成された圧電体層70の配向を配向層200によって制御することができる。
【0038】
なお、配向層200は、圧電体層70側の最上層が(100)面優先配向をしていることが好ましい。これにより、配向層200の上方に形成された圧電体層70を(100)面優先配向させると共に配向率を向上することができ、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70を得ることができる。
【0039】
配向層200上には、絶縁性を有する絶縁体膜55が設けられている。本実施形態の絶縁体膜55は、酸化ジルコニウム(ZrO)、一例として二酸化ジルコニウム(ZrO)を含むことが好ましい。ここで、酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55とは、酸化ジルコニウムを主成分として含むものであれば、その他の材料を含むものであってもよい。なお、絶縁体膜55の主成分が酸化ジルコニウムであるとは、絶縁体膜55に含まれる酸化ジルコニウムが50質量%以上であることを言う。このように酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、詳しくは後述する圧電体層70に含まれる成分、例えば、鉛(Pb)やビスマス(Bi)などが、絶縁体膜55よりも下、つまり、弾性膜51や流路形成基板10に拡散するのを抑制することができる。したがって、酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、弾性膜51や流路形成基板10に圧電体層70に含まれる成分が拡散することによる剛性の低下などの不具合を抑制することができる。また、酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、配向層200に含まれる成分、例えば、LNOの場合には、ランタン(La)及びニッケル(Ni)が圧電体層70に拡散するのを抑制することができる。したがって、圧電体層70の配向層200側にランタンやニッケルが拡散した部分ができるのを抑制して、+Z方向において圧電体層70の組成にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0040】
なお、絶縁体膜55として用いることができる材料は、配向層200と格子整合できる材料であれば特に限定されない。絶縁体膜55として用いることができる材料は、例えば、配向層200のa軸の格子定数に対して、誤差が5%以内のa軸の格子定数を有する材料を用いることが好ましい。これにより、配向層200上に格子整合させた絶縁体膜55を形成することができる。このような絶縁体膜55の材料としては、例えば、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO)を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、絶縁体膜55として、絶縁性を有する材料を用いることで、詳しくは後述する活性部310毎に設けられた第1電極60同士が配向層200によって短絡するのを抑制することができる。ちなみに、第1電極60が複数の活性部310の共通電極として構成された場合であっても、絶縁体膜55が導電性を有すると、第1電極60以外の部分で絶縁体膜55が圧電体層70に電界を印加してしまうため、絶縁体膜55は、絶縁性を有する材料である必要がある。
【0042】
このような絶縁体膜55の-Z方向側の面には、振動板50を撓み変形させて圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーター300が設けられている。圧電アクチュエーター300は、振動板50側である+Z方向側から-Z方向側に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。圧電アクチュエーター300が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段となっている。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、凹部である圧力室12毎に活性部310が形成されている。つまり、圧電アクチュエーター300には複数の活性部310が形成されていることになる。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。この圧電アクチュエーター300のうち、圧力室12にZ軸で対向する部分が可撓部となり、圧力室12の外側部分が非可撓部となる。
【0043】
具体的には、第1電極60は、図2及び図3に示すように、圧力室12毎に切り分けられて活性部310毎に独立する個別電極を構成する。第1電極60は、+X方向において、圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、+X方向において、第1電極60の端部は、圧力室12に対向する領域の内側に位置している。また、図3に示すように、第1電極60のY軸において、ノズル21側の端部は、圧力室12よりも外側に配置されている。この第1電極60のY軸において圧力室12よりも外側に配置された端部に、引き出し配線である個別リード電極91が接続されている。
【0044】
このような第1電極60としては、導電性を有する材料であり、配向層200上に形成されるものであれば、結晶構造を有する材料を用いることができる。このような第1電極60の材料としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)、チタンタングステン(TiW)等が挙げられる。
【0045】
圧電体層70は、図2図4に示すように、+Y方向の幅が所定の幅で、+X方向に亘って連続して設けられている。圧電体層70の+Y方向の幅は、圧力室12の長手方向である+Y方向の長さよりも長い。このため、圧力室12の+Y方向及び-Y方向の両側では、圧電体層70は、圧力室12に対向する領域の外側まで延設されている。このような圧電体層70のY軸においてノズル21とは反対側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60のノズル21とは反対側の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側に位置しており、第1電極60のノズル21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。なお、第1電極60の圧電体層70の外側まで延設された端部には、上述したように金(Au)等からなる個別リード電極91が接続されている。
【0046】
また、圧電体層70には、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の+X方向の幅は、隔壁11の幅と同一、もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、凹部71の+X方向の幅は、隔壁11の幅よりも広くなっている。これにより、振動板50、配向層200及び絶縁体膜55の圧力室12の+X方向及び-X方向の両端部に対向する部分、所謂、振動板50の腕部の剛性が抑えられるため、圧電アクチュエーター300を良好に変位させることができる。なお、凹部71は、圧電体層70を厚さ方向である+Z方向に貫通して設けられていてもよく、また、圧電体層70を+Z方向に貫通することなく、圧電体層70の厚さ方向の途中まで設けられていてもよい。すなわち、凹部71の+Z方向の底面には、圧電体層70が完全に除去されていてもよく、圧電体層70の一部が残留していてもよい。
【0047】
このような圧電体層70は、一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。本実施形態では、圧電材料としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT;Pb(Zr,Ti)O)を用いている。PZTを圧電材料に用いることで、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70が得られる。
【0048】
一般式ABOで示されるペロブスカイト構造の複合酸化物では、Aサイトには酸素が12配位しており、Bサイトには酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。本実施形態では、Aサイトに鉛(Pb)が位置し、Bサイトにジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)が位置している。
【0049】
圧電材料は、上記のPZTに限定されない。AサイトやBサイトに他の元素が含まれていてもよい。例えば、圧電材料は、チタン酸ジルコン酸バリウム(Ba(Zr,Ti)O)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)、シリコンを含むニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)等のペロブスカイト材料であってもよい。
【0050】
その他、圧電材料は、Pbの含有量を抑えた材料、いわゆる低鉛系材料、又はPbを使用しない材料、いわゆる非鉛系材料であってもよい。圧電材料として低鉛系材料を使用すればPbの使用量を低減することができる。また、圧電材料として非鉛系材料を使用すれば、Pbを使用せずに済む。よって、圧電材料として低鉛系材料や非鉛系材料の使用により、環境負荷を低減することができる。
【0051】
非鉛系圧電材料として、例えば、鉄酸ビスマス(BFO;BiFeO)を含むBFO系材料が挙げられる。BFOでは、AサイトにBiが位置し、Bサイトに鉄(Fe)が位置している。BFOに、他の元素が添加されていてもよい。例えば、KNNに、鉄酸マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、クロム(Cr)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0052】
また、非鉛系圧電材料の他の例として、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN;KNaNbO)を含むKNN系材料が挙げられる。KNNに、他の元素が添加されていてもよい。たとえば、KNNに、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、及びユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
【0053】
圧電材料には、元素の一部欠損した組成を有する材料、元素の一部が過剰である組成を有する材料、及び元素の一部が他の元素に置換された組成を有する材料も含まれる。圧電体層70の基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれた材料や、元素の一部が他の元素に置換された材料も、本実施形態に係る圧電材料に含まれる。もちろん、本実施形態で使用可能な圧電材料は、上述したようなPb、Bi、Na、K等を含む材料に限定されない。
【0054】
このような圧電体層70は、最上層が(100)面優先配向をした配向層200の上方に形成することにより、(100)面優先配向をしている。圧電体層70の厚さとしては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度(0.5~5μm)に厚く形成する。
【0055】
ここで、一例としてシリコン単結晶基板からなる流路形成基板10、LNOからなる配向層200、二酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55、白金(Pt)からなる第1電極60、PZTからなる圧電体層70の配向とa軸の格子定数とを下記表1に示す。なお、弾性膜51は非晶質なため、弾性膜51の下地であるシリコン単結晶基板の配向と格子定数を下記表1に示す。
【表1】
【0056】
配向層200であるLNOの格子定数3.98Åに対して、21/2倍すると、5.63Åになるため、二酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55は、XY平面の面内で45度回転した状態で格子整合させることができる。この絶縁体膜55上に、白金(Pt)からなる第1電極60は、絶縁体膜55に格子整合することで(100)面優先配向をして形成される。そして、(100)面優先配向をした白金(Pt)の第1電極60とPZTの圧電体層70の(100)面の格子定数とは近いため、第1電極60上に圧電体層70を(100)面優先配向させることができる。
【0057】
第2電極80は、図2図4に示すように、圧電体層70の第1電極60とは反対側である-Z方向側に連続して設けられており、複数の活性部310に共通する共通電極を構成する。第2電極80は、+Y方向が所定の幅となるように、+X方向に亘って連続して設けられている。また、第2電極80は、凹部71の内面、すなわち、圧電体層70の凹部71の側面上及び凹部71の底面である絶縁体膜55上にも設けられている。もちろん、第2電極80は、凹部71の内面の一部のみに設けるようにしてもよく、凹部71の内面の全面に亘って設けないようにしてもよい。
【0058】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。また、第2電極80からは引き出し配線である共通リード電極92が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極92の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板120が接続されている。配線基板120は、圧電アクチュエーター300を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路121が実装されている。
【0059】
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10の-Z方向側の面には、図1及び図3に示すように、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、+X方向に並んで配置された圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、+Y方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、+Y方向に並んで配置された2つの保持部31の間に+Z方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、個別リード電極91及び共通リード電極92と配線基板120とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。
【0060】
また、図3に示すように、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。本実施形態では、ケース部材40は、連通板15に接合されている。また、特に図示していないが、ケース部材40と保護基板30とも接合されている。
【0061】
このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40と流路形成基板10とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40と流路形成基板10とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並んで配置された方向である+X方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。
【0062】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口するZ2側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
【0063】
ここで、このような本実施形態の記録ヘッド1の製造方法について説明する。なお、図5図17は、本実施形態の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【0064】
まず、図5に示すように、流路形成基板10となる流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜51を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって二酸化ケイ素(SiO)からなる弾性膜51を形成した。もちろん、弾性膜51の材料は、特にこれに限定されず、上述したその他の材料であってもよい。また、弾性膜51の形成方法は熱酸化に限定されず、スパッタリング法、CVD法、スピンコート法等によって形成してもよい。
【0065】
次に、図6に示すように、弾性膜51上に配向層200を形成する。配向層200は、2層以上の複数層を積層して形成すればよい。本実施形態では、第1層201と第2層202と第3層203とを積層することで配向層200を形成した。これら配向層200を構成する第1層201、第2層202及び第3層203の材料としては、上述したように(100)面に自己配向する材料であれば特に限定されず、例えば、LaNi(略称LNO)、SrRu(略称SRO)、(Ba,Sr)Ti(略称BST)、(Bi,Fe)Ti(略称BFT)から選択される少なくとも1つを含む。なお、第1層201、第2層202及び第3層203の各層のそれぞれが、上記したLNO、SRO、BST、BFTから選択される少なくとも1つを含むものであればよい。また、第1層201、第2層202及び第3層203の各層のそれぞれが、LNO、SRO、BST、BFTから選択される少なくとも1つを含むとは、これらLNO、SRO、BST、BFTから選択される1つ又は2つ以上の複数が50質量%以上であることを言う。また、第1層201、第2層202及び第3層203の各層は、同じ材料を含むものであってもよく、異なる材料を含むものであってもよい。ただし、配向層200を構成する各層は、同じ材料を含むものであることが好ましい。このように配向層200を構成する各層を同じ材料で形成することにより、配向層200の製造時に各層毎に材料を変更する必要がなく、コストを低減することができると共に製造工程を簡略化することができる。ここで、配向層200を構成する各層が同じ材料を含むとは、含まれる元素が同じであることを言う。つまり、配向層200を構成する各層は、同一の元素を用いたものであれば、結晶構造が異なるものや、含まれる元素の比率が異なるものも含む。また、配向層200を構成する各層が同じ材料を含むとは、配向層200を構成する各層の製造時における原料が同じであるものを含む。本実施形態では、配向層200の各層の原材料として、例えば、x=3、y=1のLaNiOを用いた。
【0066】
このような配向層200の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法(PVD法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜法(略して気相法とも言う)、MOD法、ゾル-ゲル法等の液相成膜法(略して液相法とも言う)によって形成することができる。本実施形態では、配向層200を構成する第1層201、第2層202及び第3層203のそれぞれを液相法によって形成した。
【0067】
より詳細には、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、混合溶液を加熱する。なお、水を混合しない場合又は酢酸を混合しない場合は、ランタンアセチルアセトナート及びニッケルアセチルアセトナートを溶解させることができず、また、混合溶液の安定性が悪化する。混合溶液の調製方法は特に限定されず、例えば、所定量のランタンアセチルアセトナートとニッケルアセチルアセトナートとを混合した後、これに、酢酸及び水を添加することにより混合溶液を得ることができる。酢酸及び水の混合方法も特に限定されず、酢酸を添加した後に水を添加してもよく、水を添加した後に酢酸を添加してもよく、酢酸と水とを混合してから添加してもよい。今回はランタンアセチルアセトナートと、ニッケルアセチルアセトナートを、酢酸と水とを混合した酢酸水に溶解させ加熱して前駆体を得る。この前駆体の溶液をスピンコート法により500~3000rpmで基板に塗布する(塗布工程)。次に、この基板に塗布された溶液を100℃~250℃に加熱して、約10分間乾燥し、乾燥膜を得る(乾燥工程)。そして、この乾燥膜を300℃~500℃に加熱して、約10分間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、乾燥膜に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。この脱脂工程の後、脱脂された乾燥膜を500℃~800℃に加熱して約10分間保持することによって焼成する(焼成工程)。第1層201、第2層202及び第3層203は、上記塗布工程から焼成工程をその都度行うことで形成する。すなわち、配向層200の第1層201、第2層202及び第3層203の各層は、各々の成膜時に焼成工程を行う、つまりは各層を形成する際に断熱することで、第1層201と第2層202との間、第2層202と第3層203との間に界面が形成される。配向層200を構成する各層を液相成膜法によって形成することで、各層の厚さを10nm以下の比較的薄い厚さで形成することができる。なお、配向層200の全体の+Z方向の厚さは、5nm以上、20nm以下であることが好ましい。このように配向層200を比較的薄く形成することで、配向層200が圧電アクチュエーター300の変位を阻害するのを抑制して、圧電アクチュエーター300の変位特性を向上、すなわち、比較的低い電圧で高い変位量を得ることができる。
【0068】
このように2層以上、本実施形態では、第1層201、第2層202、第3層203の3層を積層した配向層200を形成することで、第2層202及び第3層203を下地である振動板50の影響を抑えて、自己配向によって(100)面優先配向をさせることができる。
【0069】
次に、図7に示すように、配向層200上に酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。もちろん、絶縁体膜55は、酸化ジルコニウムに限定されず、窒化シリコン(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO)等を用いるようにしてもよい。絶縁体膜55を形成する方法としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等が挙げられる。このように配向層200上に形成される絶縁体膜55は、配向層200の(100)面と格子整合が行われることで、(110)面優先配向をする。
【0070】
次に、図8に示すように、絶縁体膜55上の全面に亘って第1電極60を形成する。この第1電極60の材料は特に限定されないが、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第1電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。絶縁体膜55上に形成される第1電極60は、絶縁体膜55の(110)面配向と格子整合が行われることで、(100)面優先配向をする。
【0071】
次に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル-ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル-ゲル法に限定されず、例えば、MOD法などの液相成膜法や、スパッタリング法、物理蒸着法(PVD法)、レーザーアブレーション法等の気相成膜法を用いてもよい。
【0072】
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図9に示すように、第1電極60及び絶縁体膜55上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜72を成膜する。すなわち、第1電極60が形成された流路形成基板用ウェハー110上に金属錯体を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次に、この圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜72を170~180℃で8~30分間保持することで乾燥することができる。
【0073】
次に、乾燥した圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜72を300~400℃程度の温度に加熱して約10~30分保持することで脱脂した。なお、ここでいう脱脂とは、圧電体前駆体膜72に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
【0074】
次に、図10に示すように、圧電体前駆体膜72を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜73を形成する(焼成工程)。この焼成工程では、圧電体前駆体膜72を700℃以上に加熱するのが好ましい。なお、焼成工程では、昇温レートを50℃/sec以上とするのが好ましい。これにより優れた特性の圧電体膜73を得ることができる。また、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置などを用いることができる。
【0075】
次に、図11に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜73を形成した段階で、第1電極60及び1層目の圧電体膜73を同時にパターニングする。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜73のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
【0076】
ここで、例えば、第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜73を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして第1電極60をパターニングするため、第1電極60の表面が変質してしまう。そうすると変質した面上に圧電体膜73を形成しても当該圧電体膜73の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜73も1層目の圧電体膜73の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
【0077】
それに比べ、1層目の圧電体膜73を形成した後に第1電極60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜73は第1電極60等に比べて2層目以降の圧電体膜73を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜73の結晶成長に大きな影響を与えない。
【0078】
次に、図12に示すように、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を複数回繰り返し行うことにより複数層の圧電体膜73からなる圧電体層70を形成する。
【0079】
本実施形態では、配向層200を設けることによって、第1電極60を(100)面優先配向をさせることができる。したがって、(100)面優先配向をした第1電極60上に1層目の圧電体膜73を形成する際に、圧電体膜73の結晶化を促進させる種(シード)としてチタン(Ti)等の結晶種層を形成しなくても、第1電極60上に(100)面優先配向をした圧電体層70を形成することができる。
【0080】
また、絶縁体膜55は、(110)面優先配向をしているため、第1電極60と1層目の圧電体膜73をパターニングした後に、絶縁体膜55上に2層目以降の圧電体膜73を形成する際に、絶縁体膜55上に再度、結晶種層、いわゆる、中間結晶種層を成膜する必要がないと考えられる。ちなみに、中間結晶種層は、圧電体膜73が結晶化する際に、結晶化を促進させるシードとして機能し、圧電体膜73の焼成後にはその一部が圧電体膜73内に拡散すると共に、絶縁体膜55上に熱酸化されて一部が残留する。このように絶縁体膜55上に残留した中間結晶種層は、低誘電率であるため、中間結晶種層が絶縁体膜55と圧電体層70との間に形成されていると、圧電体層70の活性部310に印加する実効電界が低下してしまう。本実施形態では、結晶種層及び中間結晶種層が不要であり、絶縁体膜55と圧電体層70との間に低誘電率の層が形成されないことから、活性部310の印加する実効電界が低下するのを抑制して、圧電アクチュエーター300の変位低下を抑制することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、第1電極60と1層目の圧電体膜73とを同時にパターニングしたが、特にこれに限定されず、第1電極60をパターニングしてから、絶縁体膜55上と第1電極60上とに亘って1層目の圧電体膜73を形成するようにしてもよい。このように第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜73を形成した場合であっても、上述のように絶縁体膜55と第1電極60とに格子整合させて圧電体膜73を(100)面優先配向させることができる。
【0082】
次に、図13に示すように、圧電体層70を各圧力室12に対向する領域にパターニングする。本実施形態では、圧電体層70上に所定形状に形成した図示しないマスクを設け、このマスクを介して圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。この圧電体層70のパターニングによって凹部71が形成される。
【0083】
次に、図14に示すように、圧電体層70上及び絶縁体膜55上に亘って、第2電極80を形成し、所定形状にパターニングして圧電アクチュエーター300を形成する。そして、特に図示しないが、流路形成基板用ウェハー110上に個別リード電極91及び共通リード電極92を形成する。
【0084】
次に、図15に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電アクチュエーター300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。保護基板用ウェハー130には、予め保持部31(図3参照)が形成されたものである。
【0085】
次に、図16に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図17に示すように、流路形成基板用ウェハー110を、マスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、隔壁11によって区画された圧力室12を形成する。
【0086】
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130との接合体を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。その後は、保護基板30と流路形成基板10との接合体に連通板15、ノズルプレート20、ケース部材40、コンプライアンス基板45等を接合することで、本実施形態の記録ヘッド1とする。
【0087】
(試験例1)
シリコン単結晶基板上を熱酸化することにより、二酸化ケイ素(SiO)からなる弾性膜51を形成し、この弾性膜51上に上述した液相法によってLNOを4層、積層することで配向層200を形成した。その後、配向層200上にPZTからなる圧電体層70を形成した。圧電体層70の形成方法は、上述した実施形態1と同様である。配向層200を構成する4層をそれぞれ成膜した後で、X線回折(XRD:X-ray diffraction)法により各層のX線回折パターンの測定を行った。X線回折パターンの測定は、ブルカー・エイエックスエス株式会社製(Bruker AXS社製)「D8 Discover」を用いた。この測定に際し、線源はCuKα、検出器は2次元検出器(GADDS)を使用し、X線を各層に対して垂直、つまり+Z方向に照射し、室温にて測定した。X線回折パターンの結果を図18図21に示す。
【0088】
図18に示すように、1層目のLNOは、LNOの(100)面配向、(110)面配向のピークが見られず、優先配向していないことが分かった。
【0089】
図19に示すように、2層目のLNOは、2θが23°付近にLNOの(100)面配向のピークが見られ、2θが33°付近にLNOの(110)面配向のピークが見られた。このうち(100)面配向のピークが強く、(100)面に優先配向したものであることが分かった。
【0090】
図20に示すように、3層目のLNOは、2θが23°付近にLNOの(100)面配向のピークが見られ、2θが33°付近にLNOの(110)面配向のピークが見られた。このうち(100)面配向のピークが強く、(100)面に優先配向したものであることが分かった。また、3層目のLNOは、2層目のLNOに比べて(100)面配向のピークが強いことから、3層目のLNOの方が、2層目のLNOよりも(100)面の配向率が高いことが分かった。
【0091】
図21に示すように、4層目のLNOは、2θが23°付近にLNOの(100)面配向のピークが見られ、2θが33°付近にLNOの(110)面配向のピークが見られた。また、4層目のLNOは、3層目のLNOと同等の配向率であることが分かった。
【0092】
以上の結果から、SiOの弾性膜51上に形成する配向層200としては、2層以上を積層することで、配向層200の最上層を(100)面に優先配向させることができる。配向層200としては、3層以上を積層することで、最上層を高い配向率で(100)面に優先配向させることができる。
【0093】
(試験例2)
上記試験例1と同様の工程によって、二酸化ケイ素(SiO)からなる弾性膜51上に3層のLNOからなる配向層200を形成した。また、配向層200上にPZTからなる圧電体層70を形成した。圧電体層70の形成方法は、上述した実施形態1と同様である。このように積層した各膜について、厚さ方向の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。弾性膜51、配向層200及び圧電体層70のTEM画像を図22に示す。
【0094】
図22に示すTEM画像から、LNOの1層目、2層目、3層目の間に結晶構造が断裂された界面が形成されていることが分かった。また、1層目のLNOは、柱状結晶が認められず優先配向していないのに対し、2層目のLNO及び3層目のLNOは、柱状結晶が認められ優先配向していることが分かった。このため、配向層200は、2層以上の複数層を積層することにより、1層目のLNOが犠牲層となって下地である弾性膜51の非晶質の終端を断裂して、2層目以降のLNOを自己配向させることができる。つまり、自己配向性の高い層を2層以上積層して配向層200を形成することで、配向層200の最上層を自己配向によって(100)面優先配向をさせることができる。したがって、二酸化ケイ素(SiO)からなる弾性膜51上に形成された配向層200の上方に(100)面優先配向をした圧電体層70を容易に形成することができる。このように配向層200を設けることで、圧電体層70を成膜する際に、第1電極60上及び絶縁体膜55上に、圧電体層70の結晶化を促進させるシードとしてチタン(Ti)等の結晶種層を形成する必要がない。ちなみに、結晶種層は、圧電体層70が結晶化する際に、結晶化を促進させるシードとして機能し、圧電体層70の焼成後にはその一部が圧電体層70内に拡散すると共に、第1電極60上及び絶縁体膜55上に熱酸化されて一部が残留するものである。このように第1電極60及び絶縁体膜55上に残留した結晶種層は、低誘電率であるため、結晶種層が第1電極60と圧電体層70との間だけではなく、絶縁体膜55と圧電体層70との間にも形成されていると、圧電体層70の活性部310に印加する実効電界が低下してしまう。本実施形態では、結晶種層が不要であり、絶縁体膜55と圧電体層70との間に低誘電率の結晶種層が形成されていないことから、活性部310の印加する実効電界が低下するのを抑制して、圧電アクチュエーター300の変位低下を抑制することができる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の圧電デバイスの一例であるインクジェット式記録ヘッド1では、振動板50と、振動板50上に形成された第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300と、を具備し、振動板50と圧電体層70との間に、2層以上の複数層が積層された配向層200を具備する。本実施形態では、配向層200は、第1層201、第2層202及び第3層203が積層されて構成されている。
【0096】
このように振動板50と圧電体層70との間に、複数層が積層された配向層200を設けることで、配向層200の振動板50側の最下層を下地である振動板50の影響を抑える犠牲層として機能させて、最下層上に形成される最上層を下地である振動板50の影響を抑えて、自己配向によって優先配向させることができる。したがって、優先配向した配向層200の上方に圧電体層70の配向を制御して形成することができる。
【0097】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200は、同じ材料を含む層が積層されていることが好ましい。このように配向層200を構成する各層に同じ材料を用いることで、各層の格子定数を揃えて格子整合を行わせることができるため、配向層200の圧電体層70側の最上層の配向率を向上することができる。また、配向層200を構成する各層を同じ材料で形成することで、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
【0098】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、振動板50が、酸化ケイ素を含むことが好ましい。このように非晶質の振動板50であっても、複数層を積層した配向層200を設けることで、配向層200の振動板50側の最下層が緩衝層として機能させることができ、最上層を自己配向によって優先配向させることができる。
【0099】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200が、LaNi、SrRu、(Ba,Sr)Ti、(Bi,Fe)Tiから選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。このように配向層200として、自己配向性の高い材料を用いることで、配向層200の最上層を優先配向させることができる。また、配向層200として上記材料を用いることで、配向層200の上方に圧電体層70を(100)面に優先配向して形成することができる。
【0100】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200が、LaNiであることが好ましい。このように配向層200として自己配向性の高いLNOを用いることで、配向層200を構成する複数層の最上層の配向率を高くすることができる。したがって、配向層200の配向率を高くして、配向層200の上に形成される圧電体層70の配向率を向上し、圧電体層70の変位効率を向上することができる。
【0101】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200の圧電体層70側の層が(100)面優先配向をしていることが好ましい。このように配向層200の圧電体層70側の層を(100)面優先配向させることで、配向層200の上方に形成される圧電体層70を(100)面優先配向させて、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70を得ることができる。
【0102】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200は、3層以上が積層されていることが好ましい。このように配向層200は、3層以上を積層して構成することで、配向層200の圧電体層70側の最上層の配向率を向上して、配向層200の上方に形成される圧電体層70の配向率を向上することができる。したがって、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70を得ることができる。
【0103】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200の各層は、10nm以下の厚さであることが好ましい。このように配向層200の各層を10nm以下の厚さで形成することで、配向層200が圧電アクチュエーター300の変位を阻害するのを抑制して、圧電アクチュエーター300に優れた変位特性、すなわち、低い電圧で高い変位量を得ることができる。
【0104】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、配向層200と圧電体層70との間には、酸化ジルコニウムを含む層である絶縁体膜55が設けられていることが好ましい。このように配向層200と圧電体層70との間に酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、圧電体層70の成分が絶縁体膜55よりも振動板50側に拡散するのを抑制することができる。また、配向層200と圧電体層70との間に酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、配向層200の成分が圧電体層70側に拡散するのを抑制することができる。したがって、圧電体層70は、厚さ方向である+Z方向に亘って組成にばらつきが生じるのを抑制して、変位特性を向上することができる。
【0105】
また、本実施形態の圧電デバイスの一例であるインクジェット式記録ヘッド1の製造方法では、振動板50と、振動板50上に形成された第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300と、振動板50と圧電体層70との間に、2層以上の複数層が積層された配向層200と、を具備し、配向層200を構成する各層を液相法によって形成する。このように配向層200の各層を液相法によって形成することで、比較的厚さの薄い配向層200を形成することができる。また、振動板50と圧電体層70との間に、複数層が積層された配向層200を設けることで、配向層200の振動板50側の最下層を下地である振動板50の影響を抑える犠牲層として機能させて、最下層上に形成される最上層を下地である振動板50の影響を抑えて、自己配向によって優先配向させることができる。したがって、優先配向した配向層200の上方に圧電体層70の配向を制御して形成することができる。
【0106】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200は、同じ材料を含む層を積層することが好ましい。このように配向層200を構成する各層に同じ材料を用いることで、各層の格子定数を揃えて格子整合を行わせることができるため、配向層200の圧電体層70側の最上層の配向率を向上することができる。また、配向層200を構成する各層を同じ材料で形成することで、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
【0107】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、振動板50が、酸化ケイ素を含むことが好ましい。このように非晶質の振動板50であっても、複数層を積層した配向層200を設けることで、配向層200の振動板50側の最下層が緩衝層として機能させることができ、最上層を自己配向によって優先配向させることができる。
【0108】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200が、LaNi、SrRu、(Ba,Sr)Ti、(Bi,Fe)Tiから選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。このように配向層200として、自己配向性の高い材料を用いることで、配向層200の最上層を優先配向させることができる。また、配向層200として上記材料を用いることで、配向層200の上方に圧電体層70を(100)面に優先配向して形成することができる。
【0109】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200が、LaNiであることが好ましい。このように配向層200として自己配向性の高いLNOを用いることで、配向層200を構成する複数層の最上層を自己配向によって高い配向率で優先配向させることができる。
【0110】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200の圧電体層70側の層が(100)面優先配向をしていることが好ましい。このように配向層200の圧電体層70側の層を(100)面優先配向させることで、配向層200の上方に形成される圧電体層70を(100)面優先配向させて、圧電定数d31が比較的大きな圧電体層70を得ることができる。
【0111】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200は、3層以上を積層することが好ましい。このように配向層200は、3層以上を積層して形成することで、配向層200の圧電体層70側の最上層の配向率を向上することができる。
【0112】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200の各層は、10nm以下の厚さで形成することが好ましい。このように配向層200の各層を10nm以下の厚さで形成することで、配向層200が圧電アクチュエーター300の変位を阻害するのを抑制して、圧電アクチュエーター300に優れた変位特性、すなわち、低い電圧で高い変位量を得ることができる。
【0113】
また、本実施形態の記録ヘッド1の製造方法では、配向層200と圧電体層70との間に、酸化ジルコニウムを含む層である絶縁体膜55を設けることが好ましい。このように配向層200と圧電体層70との間に酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、圧電体層70の成分が絶縁体膜55よりも振動板50側に拡散するのを抑制することができる。また、配向層200と圧電体層70との間に酸化ジルコニウムを含む絶縁体膜55を設けることで、配向層200の成分が圧電体層70側に拡散するのを抑制することができる。したがって、圧電体層70は、厚さ方向である+Z方向に亘って組成にばらつきが生じるのを抑制して、変位特性を向上することができる。
【0114】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0115】
例えば、上述した実施形態1では、第1電極60を活性部310毎に独立した個別電極とし、第2電極80を複数の活性部310に共通する共通電極としたが、これに限定されない。ここで、第1電極60を共通電極とし、第2電極80を個別電極とした構成を図23及び図24に示す。なお、図23は、圧電アクチュエーターの変形例を示す記録ヘッドのA-A′線に準じた断面図の要部を拡大した図である。図24は、圧電アクチュエーターの変形例を示す記録ヘッドのB-B′線に準じた断面図の要部を拡大した図である。
【0116】
図23及び図24に示すように、第1電極60は、+Y方向の幅が圧力室12よりも狭い幅で、+X方向に亘って連続して設けられている。この第1電極60が複数の活性部310の共通電極を構成する。
【0117】
また、圧電体層70及び第2電極80は、圧力室12毎に切り分けられて構成されている。この第2電極80が活性部310の個別電極を構成する。活性部310毎に切り分けられて構成されている。このような構成であっても、上述した実施形態1と同様に、振動板50である弾性膜51と圧電体層70との間に、複数層、本実施形態では第1層201、第2層202及び第3層203で構成された配向層200を設けることで、配向層200の最上層である第3層203を下地である振動板50の影響を抑えて優先配向させることができる。したがって、配向層200の上方に形成される圧電体層70の配向を制御して、圧電体層70を(100)面に優先配向させることができる。
【0118】
また、上述した実施形態1では、配向層200は、振動板50と絶縁体膜55との間に設けるようにしたが、配向層200は、振動板50と圧電体層70との間であれば、その他の部分に設けられていてもよい。例えば、配向層200は、絶縁体膜55と第1電極60との間に設けられていてもよい。また、配向層200は、第1電極60と圧電体層70との間に設けられていてもよい。何れの場所に設けられていても、配向層200は、2層以上の複数層が積層されて構成されることで、最下層を下地の影響を抑える犠牲層として機能させて、最上層を自己配向によって優先配向させることができる。したがって、配向層200の上方に形成される圧電体層70の配向を制御して、圧電体層70を優先配向させることができる。
【0119】
また、上述した実施形態1では、絶縁体膜55は、必ずしも必要ではなく、絶縁体膜55を設けないようにしてもよい。
【0120】
また、これら各実施形態の記録ヘッド1は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。図25は、一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0121】
図25に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、キャリッジ3に搭載されている。この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5の軸方向に移動自在に設けられている。
【0122】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
【0123】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1に対して記録シートSを+X方向に搬送し、キャリッジ3を記録シートSに対してY方向に往復移動させながら、記録ヘッド1からインク滴を吐出させることで記録シートSの略全面に亘ってインク滴の着弾、所謂、印刷が実行される。
【0124】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向であるY方向に往復移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向であるX方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0125】
なお、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0126】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、超音波デバイス、モーター、圧力センサー、焦電素子、強誘電体素子などの圧電デバイスにも適用することができる。また、これらの圧電デバイスを利用した完成体、たとえば、上記液体等噴射ヘッドを利用した液体等噴射装置、上記超音波デバイスを利用した超音波センサー、上記モーターを駆動源として利用したロボット、上記焦電素子を利用したIRセンサー、強誘電体素子を利用した強誘電体メモリーなども、圧電デバイスに含まれる。
【符号の説明】
【0127】
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板、11…隔壁、12…圧力室、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、20a…液体噴射面、21…ノズル、30…保護基板、31…保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…凹部、42…第3マニホールド部、43…接続口、44…導入口、45…コンプライアンス基板、46…封止膜、47…固定基板、48…開口部、49…コンプライアンス部、50…振動板、51…弾性膜、53…マスク膜、55…絶縁体膜、60…第1電極、70…圧電体層、71…凹部、72…圧電体前駆体膜、73…圧電体膜、80…第2電極、91…個別リード電極、92…共通リード電極、100…マニホールド、110…流路形成基板用ウェハー、120…配線基板、121…駆動回路、130…保護基板用ウェハー、200…配向層、201…第1層、202…第2層、203…第3層、300…圧電アクチュエーター、310…活性部、S…記録シート
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