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特許7530041異方性導電膜製造用の離型フィルム、及び異方性導電膜の製造方法
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  • 特許-異方性導電膜製造用の離型フィルム、及び異方性導電膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】異方性導電膜製造用の離型フィルム、及び異方性導電膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240731BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020148302
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042740
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 公典
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-331614(JP,A)
【文献】特開2017-111865(JP,A)
【文献】特開平10-286922(JP,A)
【文献】特開2013-255997(JP,A)
【文献】特開2010-209353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性導電膜製造用の離型フィルムであって、
異方性導電膜が形成される離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含み、
下記式(1)~(5)及び下記式(6)~(7)を満足すること特徴とする離型フィルム。
0.01≦RaA<0.1・・・(1)
0.01≦RaB<1.0・・・(2)
0.1≦RpA<2.0・・・(3)
0≦Tt≦50・・・(4)
70≦Hz・・・(5)
但し、式(1)~(5)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、Ttは離型フィルムの全光線透過率(%)、Hzは離型フィルムのヘーズ値(%)をそれぞれ表す。
1.5≦HA/HB≦100・・・(6)
0.15≦HA+HB≦7・・・(7)
但し、式(6)~(7)中、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
【請求項2】
前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物からなる微細空洞含有層を有する請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系フィルムは、少なくとも離型層A側の表面に、樹脂中に平均粒径0.1~2.0μmの粒子を含有する微粒子含有層を有する請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層A及び前記離型層Bの少なくとも1層と前記ポリエステル系フィルムとの間に帯電防止層を含み、その帯電防止層を設けた側の離型層の表面の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□である請求項1~3いずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記帯電防止層が、導電性ポリマー、酸化金属微粒子、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の離型フィルムを用いて、前記離型層Aの表面に異方性導電膜を形成する工程を含む異方性導電膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5いずれか1項に記載の離型フィルムと異方性導電膜と含む異方性導電膜積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方性導電膜製造用の離型フィルム、これを用いた異方性導電膜の製造方法、及び異方性導電膜積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの回路素子を接着すると共にその間の端子を電気的に接続するための材料として、接着性を有する異方性導電膜が広く用いられている。この異方性導電膜は、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたものからなり、接続すべき素子の端子間に異方性導電膜を挟み込み、熱圧着することにより、素子同士の接着と端子間の電気的接続とが同時に行われるようにしたものである。
【0003】
この異方性導電膜の製造方法は、通常、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂と硬化剤等を混ぜ合わせた絶縁接着剤中に導電性粒子を混合・分散した接着剤ワニスを、キャリアフィルム(セパレータ)上に塗布・乾燥して製造される。ワニスを塗布・乾燥した後は、キャリアフィルム毎巻き取られ、適当な幅にカットされて使用される。接着性を有する異方性導電膜は、常態では粘着性を有するため、キャリアフィルムには両面に離型層を設ける必要がある。更に、キャリアフィルムの巻内面側と巻外面側で、異方性導電膜を剥離するときの剥離強度に差を付ける必要がある。キャリアフィルムの両面とも同じ離型処理がされているとすると、異方性導電膜が巻き出すロールの方に持っていかれたり、キャリアフィルムと異方性導電膜との間に隙間が生じたりして、スムーズに引き出せない問題が発生するためである。
【0004】
また、キャリアフィルムの基材としてはポリエステル系フィルムが使用されるが、通常の透明なポリエステルフィルムを基材とした場合、異方性導電膜とキャリアフィルム間に巻き込まれた空気が抜け難いばかりか、異方性導電膜の厚み斑や導電粒子の分散状態を確認し難いといった問題がある。
【0005】
一方、異方性導電膜の薄層化に伴い、ポリエステルフィルムの表面の凹凸が大き過ぎると、異方性導電膜が均一に成形されず導電不良といった不具合を生じる。このため、特許文献1には、特定の全光線透過率とヘーズ値を有し、両表面の剥離力が所定の範囲であり、両表面の離型層の中心線平均粗さRaを0.1~1.0μmとした異方性導電膜製造用の離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4495880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、画像表示装置の薄型化等により、異方性導電膜の更なる薄層化が要求される傾向がある。このため、本発明者らの検討によると、より薄層化した異方性導電膜を形成する場合、特許文献1に記載された中心線平均粗さRaの範囲の離型フィルムでは、全体的な凹凸が大き過ぎて、周辺より高い突起が生じ易くなり、高い突起を起点とした塗料のハジキによる異方性導電膜の表面状態不良が生じることが判明した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、より薄層化した異方性導電膜を形成する場合でも、適度な光学特性を維持しながら、得られる異方性導電膜の表面状態を良好にすることができる異方性導電膜製造用の離型フィルム、これを用いた異方性導電膜の製造方法、及び異方性導電膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、適度な光学特性と表面形状を有するポリエステル系フィルムを用いて、全体的な凹凸の指標となる表面粗さRaだけでなく、所定範囲の領域での最大突起高さRpを制御することで、上記目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明には以下の内容が含まれる。
【0011】
<1> 異方性導電膜製造用の離型フィルムであって、
異方性導電膜が形成される離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含み、
下記式(1)~(5)を満足すること特徴とする離型フィルム。
0.01≦RaA<0.1・・・(1)
0.01≦RaB<1.0・・・(2)
0.1≦RpA<2.0・・・(3)
0≦Tt≦50・・・(4)
70≦Hz・・・(5)
但し、式(1)~(5)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、Ttは離型フィルムの全光線透過率(%)、Hzは離型フィルムのヘーズ値(%)をそれぞれ表す。
<2> 更に、下記式(6)~(7)を満足する<1>に記載の離型フィルム。
1.5≦HA/HB≦100・・・(6)
0.15≦HA+HB≦7・・・(7)
但し、式(6)~(7)中、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
<3> 前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂を含む樹脂混合物からなる微細空洞含有層を有する<1>又は<2>に記載の離型フィルム。
<4> 前記ポリエステル系フィルムは、少なくとも離型層A側の表面に、樹脂中に平均粒径0.1~2.0μmの粒子を含有する微粒子含有層を有する<1>~<3>いずれかに記載の離型フィルム。
<5> 前記離型層A及び前記離型層Bの少なくとも1層と前記ポリエステル系フィルムとの間に帯電防止層を含み、その帯電防止層を設けた側の離型層の表面の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□である<1>~<4>いずれかに記載の離型フィルム。
<6> 前記帯電防止層が、導電性ポリマー、酸化金属微粒子、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む<5>に記載の離型フィルム。
<7> <1>~<6>いずれかに記載の離型フィルムを用いて、前記離型層Aの表面に異方性導電膜を形成する工程を含む異方性導電膜の製造方法。
<8> <1>~<6>いずれかに記載の離型フィルムと異方性導電膜と含む異方性導電膜積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型フィルムによれば、より薄層化した異方性導電膜を形成する場合でも、適度な光学特性を維持しながら、得られる異方性導電膜の表面状態を良好にすることができる異方性導電膜製造用の離型フィルムを提供することができる。このため、例えば、粘着性を有する異方性導電膜を成形する工程でキャリアフィルムとして使用する場合、或いは巻取り時にセパレータとして使用する場合に、異方性導電膜の厚み斑や導電粒子の分散状態を確認し易くなり、均一で導電不良の少ない異方性導電膜を製造することができる。
【0013】
このため、当該離型フィルムを用いる異方性導電膜の製造方法、および異方性導電膜積層体は、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の離型フィルムの例について、その概略構造を示す断面図であり、(a)は実施例1に相当するもの、(b)は実施例4に相当するもの、(c)はその他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、説明の便宜上、フィルムの製膜方向を、機械軸方向、縦方向、長手方向、MD方向と称することがあり、製膜方向と厚み方向とに直交する方向を、幅方向、横方向、TD方向と称することがある。
【0016】
(離型フィルムの概略構造)
本発明の離型フィルムは、異方性導電膜製造用の離型フィルムであって、異方性導電膜が形成される離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含んでいる。「ポリエステル系フィルム」とは、単層で形成される場合は単層中に、又は複数層で形成される場合は全層中に、全樹脂成分の質量を基準としてポリエステル樹脂を50質量%以上含むものを指し、好ましくは、70質量%以上含むものを指す。
【0017】
本発明では、図1(a)~(c)に示すように、離型層A2Aの側に異方性導電膜5が形成されることが想定されており、ポリエステル系フィルム1の背面側には離型層B2Bが設けられている。
【0018】
図1(b)に示すように、離型層A2Aとポリエステル系フィルム1の間には、帯電防止層3が介在していてもよく、また、離型層B2Bとの間に、又は離型層A2Aおよび離型層B2Bとポリエステル系フィルム1の間の両者に、帯電防止層3が介在していてもよい。但し、工程の簡易化と剥離時の帯電防止効果などの観点から、離型層A2Aとポリエステル系フィルム1の間にのみ帯電防止層3が介在していることが好ましい。
【0019】
ポリエステル系フィルムは、例えば、図1(a)に示すような微粒子含有層1B/微細空洞含有層1A/微粒子含有層1Bの3層構造や、図1(c)に示すような微粒子含有層1B/微細空洞含有層1Aの2層構造であってもよい。また、ポリエステル系フィルムは、微粒子含有層1B又は微細空洞含有層1Aの単層で形成されていてもよく、微粒子含有層1B又は微細空洞含有層1Aに他の層が積層されているものでもよい。また、微細空洞含有層1A/微粒子含有層1B/微細空洞含有層1Aの3層構造や、微細空洞含有層1A/微粒子含有層1Bを繰り返した4層以上の構造であってもよい。何れの積層構造においても、更に他の層を有するものであってもよい。帯電防止層3以外の他の層としては、易接着層、易滑層、アンカー層、接着層、着色層などが挙げられる。
【0020】
但し、表面に設けた層で中心面平均粗さや中心面最大突起高さを調整しつつ、中間に設けた層で全光線透過率やヘーズ値を制御できる観点から、微粒子含有層1B/微細空洞含有層1A/微粒子含有層1Bの3層構造、又は微粒子含有層1B/微細空洞含有層1Aの2層構造が好ましく、微粒子含有層1B/微細空洞含有層1A/微粒子含有層1Bの3層構造がより好ましい。
【0021】
(離型フィルムの特性)
本発明の離型フィルムは、下記式(1)~(5)を満足すること特徴とする。
0.01≦RaA<0.1・・・(1)
0.01≦RaB<1.0・・・(2)
0.1≦RpA<2.0・・・(3)
0≦Tt≦50・・・(4)
70≦Hz・・・(5)
但し、式(1)~(5)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、Ttは離型フィルムの全光線透過率(%)、Hzは離型フィルムのヘーズ値(%)をそれぞれ表す。
【0022】
式(1)と式(2)について、RaA、RaBが0.01μm未満であると、異方性導電膜の塗料を塗布する工程での離型フィルム(キャリアフィルム)のハンドリング性が非常に難しくなり、異方性導電膜を成形後ロール状に巻き取る際に巻き込んだ空気が抜け難いため良好な形状でロールに巻き上げることが困難になる。また、RaAが0.1μm以上であると異方性導電膜の表面が粗くなり、被着体への接着の際、塗膜不均一性となり、異方性導電膜の熱圧着工程で完全に濡れ広がらず素子間の接着不良や端子間の電気的接続不良を起こす。このような観点から、RaAの下限は0.03μmであることが好ましく、上限は0.09μmであることが好ましい。またRaBが1.0μm以上になると、異方性導電膜を形成後に巻き取られた際、B面側の突起成分が異方性導電膜に転写し、膜の均一性を保てなくなる。このような観点から、RaBの下限は0.03μmであることが好ましく、上限は0.9μmであることが好ましい。
【0023】
RaAが0.01から0.1μmの離型層は、例えばポリエステル系フィルムの表面の中心面平均粗さが0.01から0.1μmのポリエステル系フィルムの表面に離型層を設けることにより得ることができる。
【0024】
式(3)について、RpAが0.1μm未満の場合、異方性導電膜の塗料を塗布する工程での離型フィルム(キャリアフィルム)のハンドリング性が非常に難しくなる。また、RpAが2.0μm以上になると異方性導電膜の塗料を塗布する際、薄膜塗工時には突起を起点とする塗布ハジキが生じ、異方性導電膜の均一性が損なわれるため、熱圧着工程で端子間の電気的接続不良を起こす。このような観点から、RpAの下限は0.2μmであることが好ましく、上限は1.5μmであることが好ましい。RpAについても、例えばポリエステル系フィルムの表面の最大突起高さを調整することで制御することができる。
【0025】
式(4)~(5)については、両者を満足することで、キャリアフィルム上に成形した異方性導電膜の厚み斑や分散している導電粒子の分散状態を支障無く観察することができる。
【0026】
Tt値の上限は、導電粒子の分散状態を更に良好な状態で観察できるようにするため、30%であることが好ましく、20%であることが特に好ましい。Tt値の下限は、ポリエステル系フィルムの機械的特性や製膜する際の延伸性を良好なものとするため10%であることが好ましい。
【0027】
本発明におけるHz値の下限は、導電粒子の分散状態を更に良好な状態で観察できるようにするため、80%であることが好ましく、90%であることが特に好ましい。Hz値の上限は、値が大きいほど好ましいが、ポリエステル系フィルムの機械的特性や製膜する際の延伸性を良好なものとするため99%であることが好ましい。
【0028】
このようなTt値、かつHz値の離型フィルムは、例えば、全光線透明率は0~50%であり、かつヘーズ値が70%以上であるポリエステル系フィルムに離型層を設けることにより得ることができる。
【0029】
本発明では、離型フィルムが接着性を有する異方性導電膜の成形用として、更にはテープとして巻き取るときのセパレータとして使用されるために、離型層A面側(重く剥離できる面)の剥離力HA(N/25mm)と離型層B面側(軽く剥離できる面)の剥離力HB(N/25mm)とが、下記式(6)~(7)を更に満足することが好ましい。
1.5≦HA/HB≦100・・・(6)
0.15≦HA+HB≦7・・・(7)
但し、式(6)~(7)中、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
【0030】
式(6)のHA/HBの値(以下『剥離力比率』という)については、剥離力比率が1.5以上の場合、異方性導電膜を引き出すときにスムーズに引き出せずリール側に残ってしまったりする不具合が生じにくくなる。一方、剥離力比率が100以下であると、離型層A面側、すなわち異方性導電膜を引き出したときに異方性導電膜が残っている面、の剥離力が重くなり過ぎず、異方性導電膜を回路素子に圧着された後に、キャリアフィルム(セパレータ)を剥離したときにきれいに剥離し易くなる。このような観点から、HA/HBの値は、4~70の範囲であることが好ましい。
【0031】
式(7)については、HA+HBが0.15以上であると、異方性導電膜を形成した離型フィルムのハンドリング性が良くなり、異方性導電膜が安定性した状態で繰り出すことができる。また、HA+HBが7以下であると、巻き出し時に余分な応力が生じにくく、巻き出し時の変形等を防止し易くなる。このような観点から、HA+HBの値は、0.2~4の範囲であることが好ましい。
(ポリエステル)
本発明において、基材フィルムとして用いるポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。このポリエステルは実質的に線状で、フィルムに形成可能なものであるが、特に溶融成形によりフィルムに形成可能なポリエステルであることが好ましい。
【0032】
ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0033】
また、ポリエステルを構成する脂肪族グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等の如き炭素数2~10のポリメチレングリコールあるいは1,4-シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0034】
本発明において、ポリエステルとしてはアルキレンテレフタレートおよび/又はアルキレン-2,6-ナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましい。
【0035】
これらポリエステルの中、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートはもちろんのこと、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸および/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が好ましい。その際全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸および/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の上記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジピン酸、セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。
【0036】
また全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族ジオール;1,4-ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
【0037】
また、本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω-ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。
【0038】
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合したものも包含される。
【0039】
上記ポリエステルは、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。上記ポリエステルとしては、o-クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が0.4~0.9dl/gのものが好ましく、0.5~0.7dl/gのものがさらに好ましく、0.55~0.65dl/gのものが特に好ましい。
【0040】
(ポリエステル系フィルム)
離型フィルムの基材となるポリエステル系フィルムは、離型層Aと離型層Bを形成した後の離型フィルムの表面形状に近い表面形状を有することが好ましい。
【0041】
このため、ポリエステル系フィルムの中心線平均粗さは0.01~1.0μmであることが好ましく、0.03~0.09μmがより好ましい。中心線平均粗さが0.01μm以上であると、離型層の表面の中心線平均粗さRaA、RaBを0.01μm以上とし易くなる。また、中心線平均粗さが1.0μm以下であると離型層の表面の中心線平均粗さRaBを1.0μm以下とし易くなる。
【0042】
また、ポリエステル系フィルムは、離型層Aと離型層Bを形成した後の離型フィルムの光学特性に近い光学特性を有することが好ましい。
【0043】
このため、ポリエステル系フィルムの全光線透明率は0~50%であることが好ましく、かつヘーズ値が70%以上であることが好ましい。この範囲内であると、離型フィルムの全光線透明率とヘーズ値が式(4)と(5)の値をとり易くなり、キャリアフィルム上に成形した異方性導電膜の厚み斑や分散している導電粒子の分散状態が観察し易くなる。また、異方性導電膜を被着体に貼りつけ、その後離型フィルムを剥がす工程において、確実に離型フィルが剥がされていることを確認する観点からも、ポリエステル系フィルムの全光線透明率は10~30%であることが好ましく、かつヘーズ値が80%以上であることが好ましい。
【0044】
(添加剤)
かかるポリエステル系フィルムの中心面平均粗さ、全光線透過率、及びヘーズ値を前述の範囲を同時に満たすためには、原料のポリエステル中にフィラーや顔料を含有させる方法(練り込み法)やポリエステル系フィルムの表面にフィラーや顔料を含有させた樹脂塗料を塗布する方法や、サンドブラスト法、エンボス法、エッチング法などで表面に凹凸を形成する方法などがある。
【0045】
本発明においては、上記の何れの方法を採用してもよいが、本発明の離型フィルムはコストや品質を考慮すると、原料のポリエステル中にあらかじめ、フィラー、顔料、非相溶樹脂等を含有させる練り込み法が好ましい。特に、ポリエステル系フィルムを複数の層で形成し、表面層と中間層とで、添加剤の種類や含有量を変えることが好ましく、特に前述したような微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造とすることが好ましい。
【0046】
ポリエステル中に含有させるフィラーや顔料としては、酸化チタン、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等のような無機フィラーが挙げられる。ポリエステル中に含有させるフィラーや顔料は、特にRpAを式(3)の範囲内に制御する上で、平均粒径が0.1~2.0μmであることが好ましく、0.1~1.0μmがより好ましい。但し、表面層以外の層にフィラーや顔料を含有させる場合には、この範囲とは異なる平均粒径のものを含有させることが好ましい場合がある。
【0047】
また、フィラーや顔料の含有量は、ポリエステル系フィルムの全体を基準とする場合、0.01~15質量%の範囲であることが好ましく、0.01~5.0質量%がより好ましい。また、微粒子含有層を表面層として設ける場合には、微粒子含有層中に、0.1~50.0質量%含有させることが好ましい。微細空洞含有層を中間層として設ける場合には、フィラーや顔料を含まなくてもよいが、表面凹凸の制御の観点から、微細空洞含有層中に、0.01~10.0質量%含有させることが好ましい。
【0048】
また、空洞形成剤となる非相溶の熱可塑性樹脂としては、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。ここで、「非相溶」とは、ポリエステルの溶融押出時の温度において、分子レベルでの相溶が生じない状態をいう。
【0049】
非相溶の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特にポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種又は2種以上用いてもよい。
【0050】
非相溶の熱可塑性樹脂が微細空洞含有層に含まれる場合、非相溶の熱可塑性樹脂の総量として、微細空洞含有層中に0.1~40質量%含有することが好ましく、1~25質量%含有することがより好ましい。
【0051】
また、ポリエステル系フィルムの各層には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤などを含有することもできる。
【0052】
(ポリエステル系フィルムの厚み等)
本発明に用いるポリエステル系フィルムは、単層又は複数層からなる二軸配向フィルムであることが好ましく、延伸配向により形成された微細空洞含有層を有することが好ましい。
【0053】
ポリエステル系フィルムの全体の厚さは、適度な光学特性を維持しつつ基材としてのハンドリング性を確保するなど観点から、10~300μmが好ましく、より好ましくは25~200μmである。
【0054】
ポリエステル系フィルムが、微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造とする場合、ポリエステル系フィルムの表面形状と光学特性を良好に制御する観点から、各々の微粒子含有層の厚みは全体の3~25%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましい。微粒子含有層/微細空洞含有層の2層構造とする場合、同様の観点から、微粒子含有層の厚みは全体の3~25%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましい。
【0055】
(ポリエステル系フィルムの製法)
二軸配向ポリエステルの製造法は、従来から知られている製造方法で得ることができる。
【0056】
例えば、融点(Tm:℃)~(Tm+70)℃の温度でポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを得、この未延伸フィルムを一軸方向(縦方向又は横方向)に(Tg-10)~(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg~(Tg+70)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸するのが好ましい。さらに必要に応じて縦方向および/又は横方向に再度延伸してもよい。このようにして全延伸倍率は、面積延伸倍率として9倍以上が好ましく、12~35倍がさらに好ましく、15~30倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは、(Tg+70)℃~(Tm-10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180~250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は1~60秒が好ましい。
【0057】
2層以上の層からなる二軸配向ポリエステルを製造する場合、各層の原料を溶融後に共押出して積層未延伸フィルムを得た後、同様の工程を実施することで製造することができる。
【0058】
微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造の二軸配向ポリエステルを製造する場合も、微細空洞含有層の原料に空洞形成剤を含有させておき、積層未延伸フィルムを延伸することで、微細空洞を形成することができる。
【0059】
(離型層)
本発明における離型層Aおよび離型層B(以下併せて『離型層』と略記することがある)は、その特性が前記式(1)、(2)、(3)、好ましくは式(6)、(7)を満足するものであれば特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂、フッ素オイル、各種ワックスその他にポリエステル樹脂、アルキッド、ポリウレタン、アクリル、メラミン、ポリビニルアセタール等の有機樹脂をシリコーンやフッ素などで変性したもの、或いはシリコーンオイル、フッ素オイルや各種ワックスを有機樹脂中に添加した成分の塗液を用いても良い。
【0060】
なかでも好ましくは硬化型シリコーン樹脂が耐熱性の点で好ましく、硬化型シリコーン樹脂としては、例えば縮合反応型のもの、付加反応型のもの、紫外線もしくは電子線硬化型のもの等いずれの反応型のものも用いることができる。これらの硬化型シリコーン樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0061】
各種シリコーン樹脂の硬化反応は、次のように示すことができる。
【化1】
上記縮合反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端-OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端に-H基を持つポリジメチルシロキサン(ハイドロジェンシラン)を有機錫触媒(例えば有機錫アシレート触媒)を用いて縮合反応させ、三次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0062】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンと架橋剤であるハイドロジェンシランとを白金触媒を用いて反応させ、三次元架橋構進をつくるものが拳げられる。
【0063】
紫外線硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これによりエポキシ環を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が拳げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いずともラジカルによる架橋反応が起こる。
【0064】
硬化型シリコーン樹脂としては、その重合度が50~20万程度、好ましくは千~10万程度のものが好ましく、これらの具体例としては信越化学工業(株)製のKS-718、-774、-775、-778、-779H、-830、-835、-837、-838、-839、-841、-843、-847、-847H、X-62-2418、-2422、-2125、-2492、-2494、-470、-2366、-630、X-92-140、-128、KS-723A・B、-705F、-708A、-883、-709、-719、東芝シリコーン(株)のTPR-6701、-6702、-6703、-3704、-6705、-6722、-6721、-6700、XSR-7029、YSR-3022、YR-3286、ダウコーニング(株)製のDK-Q3-202、-203、-204、-210、-240、-3003、-205、-3057、SFXF-2560、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSD-7226、-7320、-7229、BY24-900、-171、-312、-374、SRX-375、SYL-OFF23、SRX-244、SEX-290、アイ・シー・アイ・ジャパン(株)製のSILCOLEASE425等を拳げることができる。また、特開昭47-34447号公報、特公昭52-40918号公報等に記載のシリコーン樹脂も用いることができる。
【0065】
前記硬化型シリコーン樹脂塗膜をフィルムの表面に形成させる場合のコーティング方法としてはバーコート法、ドクターブレード法、リバースロールコート法またはグラビアロールコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
【0066】
塗膜の乾燥及び硬化(熱硬化、紫外線硬化等)は、それぞれ個別又は同時に行なうことができる。同時に行なうときには100℃以上で行なうことが好ましい乾燥及び硬化の条件としては100℃以上で30秒以上が好ましい。乾燥温度が100℃未満及び硬化時間が30秒未満では塗膜の硬化が不完全であり、塗膜、が脱落しやすくなるため好ましくない。
【0067】
離型層の厚みは特に限定されないが、0.05~0.5μmの範囲が好ましい。厚みが0.05μm以上であると、十分な離型性が得られ易く、0.5μm以下であるとキュアリングの時間が短縮でき生産上都合がよい。
【0068】
また、異方性導電膜に用いる樹脂や樹脂の硬化度、更には膜厚によって異方性導電膜の粘着力は異なるので、式(7)を満足する範囲に調製することが好ましい。剥離力のコントロールとしては、前述の離型剤の組み合せや硬化触媒量や塗布厚みによる調整の他に、シリコーン系離型剤については次の4つの方法の少なくとも1つ以上を用いることもできる。
【0069】
(1)ポリジメチルシロキサンポリマー中に下記のD単位、T単位及び/又はQ単位の構造を有するシリコーンレジンを配合して離型層中のメチル基の濃度を調整し表面張力を増加させたもの。尚、このシリコーンレジンの配合割合は固形分濃度で20~60質量%であることが好ましい。配合割合が20質量%よりも少ないと離型層の濡れ性が不良となることがあり、60質量%を超えると離型層が硬くなりすぎて耐削れ性が不良となることがあるため好ましくない。
【化2】
但し、D単位およびT単位においてRはメチル基等のアルキル基またはフェニル基等の芳香族炭化水素基を示す。
【0070】
(2)ポリジメチルシロキサンポリマー中にシリカフィラーを配合することにより離型層中の-Si-OH基の濃度が高くなるよう調整して表面張力を増加させたもの。尚、このシリカフィラーは平均粒径が1μm以下のものが好ましい。平均粒径が1μm以下であると加工工程でフィルムを走行させる際に離型層の削れが発生しにくいため好ましい。また、シリカフィラーの配合割合は固形分濃度で0.1~1質量%であることが好ましい。配合割合が0.1質量%以上であると所望の濡れ性が得られ易く、1質量%以下であるとシリカフィラーが離型層から削れにくくなるため好ましい。
【0071】
(3)ポリジメチルシロキサンポリマー中のメチル基の一部を嵩高いフェニル基で置換した変性ポリジメチルシロキサン。フェニル基の立体障害により、例えばポリマー中の-Si-O-Si-結合の回りの回転運動が抑制され、その結果離型層の表面のメチル基の濃が減少するため表面張カを増加させることができる。尚、このフェニル基の置換割合は20~60モル%であることが好ましい。この置換割合が20モル%以上であると所望の離型性が得られ易く、60モル%以下であると離型層と各種粘着剤や各種シートとの離型性が良好となる。
【0072】
(4)シラノール基やメトキシ基等の反応活性基を比較的高濃度で有するポリジメチルシロキサンポリマーと、分子内に水酸基を有する有機樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)とを反応させて得られる変性ポリジメチルシロキサン。この変性ポリジメチルシロキサン中のジメチルシロキサン成分の割合は10~30質量%であることが好ましい。この割合が10質量%以上であると離型性が良好となり、30質量%以下であると所望の離型性が得られ易くなる。
【0073】
(帯電防止層)
一般的に、異方性導電膜を成形させる工程さらには、異方性導電膜を使用し、2つの回路素子間を接続するLCD組立て工程や半導体部品実装工程において、静電気の発生は致命的ダメージを与える。具体的に言えば、絶縁性接着剤ワニス上に導電性粒子を散布する方式で異方性導電膜を製造する場合、工程の搬送ロールと離型フィルムの摩擦で発生した静電気により散布した導電性粒子が均一に散布されず、帯電模様状に散布されてしまったり、LCD工程や半導体部品実装工程においテープ状の異方性導電膜を引き出した際に発生する剥離帯電などは貼り合せ時の位置ずれや半導体素子の破損されてしまったりする。
【0074】
そこで本発明においては、ポリエステル系フィルムの両面に離型層を設ける前に、少なくとも一方の面に帯電防止層を設けることができる。これにより、繰り出しや走行の際に帯電が少なく、また更に巻き出して異方性導電膜として使用する際にも、帯電障害を生じにくくなる。
【0075】
本発明における帯電防止層としては、離型層を設けた後の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□であることが好ましく、5×10~5×1010Ω/□であることが更に好ましい。
【0076】
帯電防止層は、特に限定されないが、酸化金属微粒子、導電性ポリマー、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。帯電防止層を形成する手段については特に限定されず、塗布法、真空蒸着法、貼り合せなど、既知の方法を使用することができるが、帯電防止剤を含む塗液を塗布により設けることがコストの観点より好ましい。
【0077】
酸化金属微粒子としては、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、ZnO、CeO、Sb、SnO、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫、In、Al、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等を挙げることができる。微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒径が0.1nm~0.1μmのものである。また、本発明の好ましい態様によれば、上記導電性微粒子の一次粒径は30~70nm程度が好ましく、二次粒径は200nm以下程度が好ましい。
導電性ポリマーとしては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)が挙げられる。更に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフト又はブロック共重合した高分子である導電性複合体等を挙げることができる。
第4級アンモニウム塩を付加した重合体としては、第4級アンモニウム基を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物を使用できる。
また、帯電防止層には、得られる塗膜の強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で塗膜中に存在する。
これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランがあげられる。
【0078】
帯電防止層には、外観向上のために界面活性剤を用いてもかまわない。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いることができる。
【0079】
帯電防止層には、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、滑剤、色素、紫外線吸収剤、架橋剤、シランカップリング剤、等を混合しても良い。
【0080】
基材フィルム表面に帯電防止層を塗布積層する方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ナイフコータ法、ディップコート法、スピンコート法などがあるが、導電性組成物に適したコート法は特に制限はない。また、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。
【0081】
帯電防止層を形成する乾燥温度としては、通常60℃以上150℃以下であり、好ましくは90℃以上140℃以下である。この温度が60℃以上であると、短時間の処理でよく、生産性向上の観点から好ましい。一方、この温度が150℃以下であると、フィルムの平面性が保たれて好ましい。
【0082】
帯電防止層の膜厚は、0.005μm以上5μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上1μm以下であり、さらに好ましくは、0.01μm以上0.2μm以下である。帯電防止層の膜厚が0.005μm以上であると、帯電防止効果が得られ好ましい。一方、5μm以下であると、離型性を損なうおそれがなく好ましい。
【0083】
(異方性導電膜積層体)
本発明の異方性導電膜積層体は、以上で説明した離型フィルムと異方性導電膜と含むものである。異方性導電膜としては、絶縁性接着剤(バインダー)中に導電性粒子を分散させたものであれば、特に限定なく使用することができる。異方性導電膜は、接続すべき素子の端子間に異方性導電膜を挟み込み、熱圧着することにより、素子同士の接着と端子間の電気的接続とが同時に行われるようにしたものである。このような異方性導電膜は、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂とカップリング剤、硬化剤、硬化促進剤を混ぜ合わせた絶縁接着剤中に導電性粒子を混合・分散した接着剤ワニスをキャリアフィルム(セパレータ)上に塗布・乾燥して製造することができる。
【0084】
異方性導電膜に用いられる導電性粒子としては、例えば、高分子核体(ポリマー粒子)の表面が金属薄層により実質的に被覆された粒子または金属粒子、或いは両者を混合した粒子が使用されるが、金属被覆タイプの粒子が、粒子の接触状態を制御し易い観点から、好ましく使用される。例えば、ポリマー粒子は、導電性粒子が変形した後に回復し易いように、圧縮弾性率を低減すると共に圧縮回復性に優れることが好ましい。
このようなポリマー粒子としては、架橋した(メタ)アクリル樹脂を主成分とする樹脂粒子、ウレタン化合物とアクリルモノマーとを含有するモノマー重合体で構成されるアクリル樹脂を主成分とする樹脂粒子、アルキレンジオールジアクリレートを含む原料モノマーの懸濁重合により得られる樹脂粒子、ポリスチレンをシード粒子とする樹脂粒子、(メタ)アクリル系樹脂をシード樹脂とする樹脂粒子などが挙げられる。
【0085】
ポリマー粒子を被覆する金属は、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、錫-鉛合金、錫-銅合金、錫-銀合金及び錫-鉛-銀合金が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、金又は錫-銀合金を含むことが好ましい。なお、金属粒子を使用する場合も同様の金属を使用することができる。
【0086】
ポリマー粒子の表面に金属層を形成する方法は特に限定されない。金属層を形成する方法として、例えば、無電解めっき法、電気めっき法、物理的蒸着法、金属粉末を含むペーストをポリマー粒子の表面に塗布する方法が挙げられる。物理的蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング又はイオンスパッタリングを用いることができる。金属層を形成する方法としては、無電解めっき法が好ましい。
【0087】
金属層の厚みは、0.02~1μmであることが好ましく、0.02~0.5μmであることがより好ましい。金属層の厚みが0.02μm以上であれば、良好な導電性が発現し易くなり、1μm以下であれば、接続の際に導電性粒子が変形し易くなる。
【0088】
導電性粒子の平均粒径は、1~20μmが好ましく、1.5~10μmがより好ましい。
【0089】
導電性粒子を分散させるバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、硬化剤、フィルム形成性ポリマー等を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0090】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、耐熱性の観点からエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、グリシジルアミン化合物、グリシジルエーテル化合物及びグリシジルエステル化合物が挙げられる。
【0091】
硬化剤としては特に限定されないが、潜在性硬化剤を用いることができる。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩及びジシアンジアミドが挙げられる。
【0092】
フィルム形成性ポリマーは、異方性導電材料をフィルム状に形成することができるものであれば特に限定されない。フィルム形成性ポリマーとしては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0093】
バインダー樹脂には、接着後の応力を低減するため又は接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
【0094】
バインダー樹脂には、無機フィラーを配合することもできる。無機フィラーとして、例えば、シリカ、マグネシア、ベントナイト、スメクタイト、アルミナ又は窒化ホウ素からなるフィラーを用いることができる。
【0095】
フィルム状の異方性導電膜の厚みは、導電性粒子の粒径及び異方性導電膜の特性を考慮して相対的に決定されるが、1~100μmであることが好ましく、2~50μmであることがより好ましい。
【0096】
(異方性導電膜の製造方法)
本発明の異方性導電膜の製造方法は、以上で説明した離型フィルムを用いて、前記離型層Aの表面に異方性導電膜を形成する工程を含むことを特徴とする。異方性導電膜を形成する工程では、異方性導電膜積層体について述べた成分を含む異方性導電材料が離型フィルムに塗布される。
【0097】
異方性導電材料は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤及びフィルム形成性ポリマーを含有する熱硬化性樹脂組成物を、必要に応じて有機溶剤に溶解又は分散させて液状化してバインダー樹脂を調製する。次いで、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させることで液状の異方性導電材料が作製される。有機溶剤としては、樹脂成分を溶解することができ、常圧での沸点が50~150℃であるものが好ましい。
【0098】
離型フィルム上に塗布された液状の異方性導電材料は、硬化剤の活性温度以下で有機溶剤を除去した後、離型フィルムから剥離されることにより、異方性導電膜を製造することができる。その際、離型フィルムは、例えば粘着性を有する異方性導電膜を成形する工程でキャリアフィルムとして使用でき、特にロール・ツウ・ロールで製膜を行なう際のキャリアフィルムとして使用することが有用である。
【0099】
その場合、異方性導電膜を形成した離型フィルムをそのままロール状に巻き取ることで、ロール状の異方性導電膜積層体を製造することができる。これを巻き出して、適当な形状・大きさに裁断、打ち抜き等を行なうことで、所定の形状を有するセパレータ付きの異方性導電膜を得ることができる。つまり、離型フィルムをセパレータとして使用できる。
【実施例
【0100】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。以下、特に断りのない限り、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
【0101】
(a)フィルム、各層の厚み
ミクロトームを用いてフィルムを切削し、フィルム表面に垂直な断面を得た。この断面に白金・パラジウム合金をスパッタリングによって被覆したものを観察サンプルとした。走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S-510型)を用いてフィルム断面を観察し、フィルム全厚みが一視野となる適当な倍率で写真撮影した。この像より、スケールを用いて各層の厚みを測定した。独立に作成した3点の断面サンプルについて測定を行い、この平均値をもって積層フィルムの層厚みとした。
【0102】
(b)メルトフローレート
JIS K6760で定められた押出し形プラストメータを用いて、JIS K7210に規定されている方法で測定した(単位(g/10min)。
【0103】
(c)固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、OCPに溶解した。自動粘度測定器(株式会社離合性 VMC-252)にて、ポリエステル樹脂の固有粘度(極限粘度)を算出した。
【0104】
(d)平均粒径
走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4700)を用いて、1万倍~10万倍の倍率で粒子を測定し、粒子1000個の粒径(長径と短径の平均値)を読み取り、1000個の平均粒径を算出する。
【0105】
(1)中心面表面粗さ(Ra)、中心面最大突起高さ(Rp)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View7300)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)および中心面最大突起高さ(Rp)を求めた。その際、測定箇所を変えて3回測定を行ない、その平均値をそれぞれ求めた。
【0106】
(2)剥離力
フィルムの離型層面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニット-31B)を貼り合わせ、5kgの圧着ローラーで圧着した後、離型層と粘着テープとの180°で剥離力(HA,HB)を引張り試験機にて測定した。
【0107】
(3)残留接着率
ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニット-31B)をJIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に、5kgの圧着ローラーで圧着し30秒間維持して貼り付けた後、180°で剥離力を測定し、基礎接着力(f0)とした。
【0108】
次に新しい前記ポリエステル粘着テープをサンプルフィルムの離型層面に5kgの圧着ローラーで圧着し30秒間維持した後ポリエステル粘着テープを剥がした。そして、この剥がしたポリエステル粘着テープを、同じ条件で前記ステンレス板に貼り、該貼合部の剥離力を測定し残留接着力(f)とした。得られた基礎接着力(f0)と残留接着カ(f)とから下記式を用いて残留接着率を求めた。
残留接着率(%)=(f/f0)×100
【0109】
(4)表面固有抵抗値
株式会社エーディーシー社製の固有抵抗測定器(型番5451)を使用し、JISK6271(2008)に記載の二重リング法により、測定温度23℃、測定湿度65%RH及び45%RHの条件で印可電圧500Vで1分後の表面固有抵抗値を測定した。測定は帯電防止層の離型層面上を測定して行った。
【0110】
(5)全光線透過率
日本電色工業株式会社製へーズメーター(型番NDH 4000、波長:580nm)を使用し、帯電防止層側を光源に向けて全光線透過率を測定した。
【0111】
(6)ヘーズ値
日本電色工業株式会社製へーズメーター(型番NDH 4000、波長:580nm)を使用し、帯電防止層側を光源に向けてヘーズ値を測定した。
【0112】
(7)異方性導電膜の表面状態、
ロール状に巻いた離型フィルム(フィルム幅:1.2m、長さ:500m)からフィルムを巻き出し、離型層A面の上に下記組成の異方性導電膜用塗料を塗布し、次いで120℃で5分間加熱して溶剤を揮発させると共に異方性導電膜を半硬化させて、厚み3μmの異方性導電膜を形成させ、再びロール状に巻き取った。このロールを20℃で24時間保持した後、巻き出し、離型層A面上に形成された異方性導電膜1m(フィルム両端部から0.1mの部分を除く)の表面状態を観察し、下記の基準で評価した。
○:異方性導電膜の表面にハジキが全く見られない(異方性導電膜の表面状態良好)
×:異方性導電膜の表面にハジキが見られる。(異方性導電膜の表面状態不良)
<異方性導電膜塗料>
下記組成の粘着性樹脂組成物を固形分濃度が10%になるように調整し、この樹脂溶液にPMMA微粒子にAuメッキした平均粒径3μmの導電粒子を固形分体積比で25%になるように単分散し異方性導電膜塗料を得た。
【0113】
液状エポキシ樹脂(エピコート828、三菱ケミカル社製)10質量部
フェノキシ樹脂(PKHH、Gabriel Phenoxies社製) 20質量部
硬化剤(アミキュアPN-23、味の素ファインテクノ社製) 3質量部
溶剤(MEK/酢酸エチル/トルエン=1/1/1) 270質量部
(8)塗布境界部の視認性
上記(7)異方性導電膜の表面状態の評価の際に、離型フィルム上に形成された異方性導電膜の幅方向の両端部(塗布境界部)を、蛍光灯の直下にて目視で観察して、下記の基準で塗布境界部の視認性を評価した。
○:異方性導電膜の塗布境界部が、一見して明確に視認できる。
×:異方性導電膜の塗布境界部が、一見しただけでは視認し難い。
【0114】
(9)異方性導電膜の剥離状態
上記(7)異方性導電膜の表面状態の評価と同様に異方性導電膜を形成させ、25℃で48時間保持したロールからフィルムを巻き出し、離型層B面10m(フィルム両端部から0.1mの部分を除いた長さ10mのサンプル)の表面状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0115】
○:離型層B面上に存在する異方性導電膜が観察されない。(異方性導電膜剥離状態良好)
×:離型層B面上に存在する異方性導電膜が1箇所以上観察される。(異方性導電膜剥離状態不良)
(10)総合評価
下記の基準で評価した。
【0116】
○:異方性導電膜の表面状態と塗布境界部の視認性と異方性導電膜の剥離状態がいずれも良好(総合評価良好)
×:異方性導電膜の表面状態と塗布境界部の視認性と異方性導電膜の剥離状態がいずれかが不良(総合評価不良)
[実施例1]
(空洞形成剤の調製)
原料として、メルトフローレート1.7のポリスチレン樹脂(三井東圧株式会社製、トーポレックス570-57U)20質量%、メルトフローレート1.7のポリプロピレン樹脂(三井東圧株式会社製、ノーブレンFO-50F)20質量%、およびメルトフローレート8のポリメチルペンテン樹脂(三井石油化学株式会社製、TPX,DX-845)60質量%をペレット混合し、2軸押し出し機に供給して十分に混練りし、空洞形成剤を調製した。
【0117】
(微粒子含有マスターペレットの作製)
原料として極限粘度0.64のポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%に平均粒径0.3μm(電顕法)のアナタース型二酸化チタン(富士チタン株式会社製、TA-300)50質量%を混合したものを、ベント式2軸押し出し機に供給して予備混練りした後、溶融ポリマーを連続的にベント式単軸混練り機に供給し、混練りして微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット(粒子含有量50質量%)を調製した。
【0118】
(原料樹脂組成物の作製)
次いで、上記の方法で得られた空洞形成剤10質量%と微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット5質量%および固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂85質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、A層(微細空洞含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量2.5質量%)とした。
【0119】
一方、極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂30質量%と前記の微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット70質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、B層(微粒子含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量35質量%)とした。
【0120】
(未延伸フィルムの作製)
次いで上記の各層を構成するフィルムの原料をそれぞれ別個の押出し機に供給し、フィードブロックを用い、B層/A層/B層(厚み比率10/80/10)を溶融状態で接合した。このとき、B層とA層の吐出量比率は、ギアポンプを用いて20対80体積比に制御した。次いでTダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、次に機械軸方向に3.6倍延伸した後、引き続き横方向に3.9倍延伸し、厚さ50μmのB層/A層/B層からなる2軸延伸ポリエステル系フィルムを得た。
【0121】
このフィルムの片面に下記組成の離型塗料A(離型層A用)、更に反対面に離型塗料B(離型層B用)を順次塗布し、両面離型フィルムを得た。離型塗料の硬化条件は150℃×30秒、離型層の厚みは両面に共に0.2μmになるように塗布した。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0122】
<離型塗料A>
BY24-400(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)) 100質量部
溶剤(トルエン/MEK=1/1) 1400質量部
SRX-212(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)) 2質量部
<離型塗料B>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
溶剤(トルエン/MEK=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例2]
離型塗料Aの代わりに離型塗料C(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作製した。この離型フィルムの特性を表1に示す。尚、塗料Cは下記の組成のものである。
【0123】
<離型塗料C>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
KS-3800(信越化学工業(株)) 25質量部
溶剤(MEK/トルエン=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例3]
離型塗料Aの代わりに離型塗料D(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作製した。この離型フィルムの特性を表1に示す。尚、塗料Dは下記の組成のものである。
【0124】
<離型塗料D>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
KS-3800(信越化学工業(株)) 50質量部
溶剤(MEK/トルエン=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例4]
実施例1において離型塗料Aを塗布する前に下記に示す帯電防止層を膜厚0.1μmで設け、次に離型塗料Bを設けたこと以外は実施例1同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0125】
<帯電防止塗料>
コルコートSP-2014(コルコート株式会社、アンチモンドープ酸化錫の7質量%水分散体) 100質量部
テトラエチルシリケート(和光純薬) 10質量部
水 100質量部
界面活性剤(花王社製、エマルゲン1108) 20質量部
[実施例5]
実施例1で作製した、空洞形成剤5質量%と微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット5重量%および固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂90質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、A層(微細空洞含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量2.5質量%)とした。
【0126】
一方、極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%と実施例1で作製した微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット50質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、B層(微粒子含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量25質量%)とした。
【0127】
その他は実施例1と同様に離型フィルムを作製した。
【0128】
[実施例6]
実施例1で作製した、空洞形成剤5質量%と微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット5重量%および固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂90質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、A層(微細空洞含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量2.5質量%)とした。
【0129】
一方、極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%と実施例1で作製した微粒子(酸化チタン)含有マスターペレット50質量%をペレット混合して真空乾燥を施し、B’層(微粒子含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量25質量%)とした。
【0130】
実施例1で作製したB層(微粒子含有層)を構成するフィルムの原料(粒子含有量35質量%)をそのまま使用し、上記のA層を構成するフィルムの原料と、B’層を構成するフィルムの原料を使用して、それぞれ別個の押出し機に供給し、フィードブロックを用い、B’層/A層/B層(厚み比率10/80/10)を溶融状態で接合したこと以外は実施例1と同様に離型フィルムを作製した。なお、B’層の側に離型層Aを形成し、B層の側に離型層Bを形成した。
【0131】
[参考例1]
離型塗料Aの代わりに離型塗料B(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様に離型フィルムを作製した。この離型フィルムの性能を表1に示す。
【0132】
[比較例1](大粒子含有ペレットの作製)
原料として極限粘度0.64のポリエチレンテレフタレート樹脂85質量%に平均粒径3μm(電顕法)の二酸化チタン粒子15質量%を混合してなる組成物を、30℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して未延伸フィルムとし、次に機械軸方向に3.6倍延伸した後、引き続き横方向に3.9倍延伸し、厚さ50μmの2軸延伸ポリエステル系フィルムを得た。このフィルムの片面に下記組成の離型塗料A(離型層A用)、更に反対面に離型塗料B(離型層B用)を順次塗布し、両面離型フィルムを得た。離型塗料の硬化条件は150℃×30秒、離型層の厚みは両面に共に0.2μmになるように塗布した。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0133】
[比較例2]
比較例1において、二酸化チタン粒子15質量%を混合する代わりに、シリカ粒子(平均粒径:1.7μm)を0.1質量%になるように混合した組成物を用いること以外は、比較例1と同様にした離型フィルムを作製した。この離型フィルムの性能を表1に示す。
【表1】
【0134】
表1における測定面は、A面が離型層Aの表面、B面が離型層Bの表面であることを示す。
【0135】
表1から明らかなように、式(1)~(5)を満足する実施例1~6では、適度な光学特性により得られる異方性導電膜の視認性が高く、より薄層化した異方性導電膜を形成する場合でも、得られる異方性導電膜の表面状態を良好にすることができた。
【0136】
これに対して、式(1)~(3)を満足しない比較例1では、得られる異方性導電膜の表面ハジキが見られ異方性導電膜の表面状態が劣るものであった。また、式(4)~(5)を満足しない比較例2では、得られる異方性導電膜の塗布境界部が明瞭でなく、厚み斑を良好に視認することができない。
【0137】
なお、式(6)~(7)を満足しない参考例1と実施例の比較より、式(6)~(7)を満足することにより、異方性導電膜の剥離状態が良好になることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の異方性導電膜製造用の離型フィルムは、例えば粘着性を有する異方性導電膜を成形する工程でキャリアフィルムとして使用でき、また巻取り時や異方性導電膜の使用時にセパレータとして使用できる。
【符号の説明】
【0139】
1 ポリエステル系フィルム
1A 微細空洞含有層
1B 微粒子含有層
2A 離型層A
2B 離型層B
3 帯電防止層
5 異方性導電膜
図1