(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】車両の収納ユニット
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20240731BHJP
B60R 21/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60R7/06 G
B60R21/02
(21)【出願番号】P 2020169191
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 誉
(72)【発明者】
【氏名】平野 純也
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕介
(72)【発明者】
【氏名】三木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】籾山 将輝
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-344037(JP,A)
【文献】特開2016-060323(JP,A)
【文献】特開平09-086317(JP,A)
【文献】特開平05-201300(JP,A)
【文献】特開2011-098649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0121550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/06
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する座席の車両前後方向前方に配設される収納ユニットであって、
前記収納ユニットは、
荷物を収容可能な収容部材と、
車体部材に取り付けられ前記収容部材を支持するケースと、を有し、
前記ケース
の上面には、
前端を前記車体部材に取り付け、車両の車室内に向かって
車両前後方向に延びてなる少なくともひとつの柱部が形成されており、
前記柱部
の前端近傍には、特定の力が加わると該柱部を変形させる柱変形部が形成されてなる車両の収納ユニット。
【請求項2】
前記柱部は、少なくとも前記ケースの車両左右方向に互いに離間した第1柱部と、第2柱部と、がそれぞれ形成されてなり、
前記柱変形部は、前記第1柱部
を切り欠いて形成された第1柱変形部と、前記第2柱部
を切り欠いて形成された第2柱変形部と、
を有し、
前記第1柱部は、
前記第2柱部よりも車両前後方向に長く、車両前後方向前端部が前記第2柱部よりも太く形成され、前記第2柱部と比較して車両前後方向における剛性が高く、
前記第1柱変形部は、
前記第2柱変形部よりも大きく切り欠いて形成されており、前記第2柱変形部と比較して小さい力で前記柱部を
前記柱変形部において変形させてなる、請求項1に記載の車両の収納ユニット。
【請求項3】
前記柱変形部は、前記柱部を切り欠いてなるスリットである、請求項1または2に記載の車両の収納ユニット。
【請求項4】
前記ケースには、
前記車室内に向かって延びてなる壁部と、
前記壁部における前記車室内側の端部から外方に延びる枠部と、
前記枠部と前記壁部との相対的な動きを抑制するよう補強する複数の補強部と、
前記補強部による補強を緩和する補強緩和部と、が形成されてなり、
前記補強緩和部は、前記柱部の近傍の前記補強部に形成されてなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の収納ユニット。
【請求項5】
前記補強緩和部は、前記補強部を切り欠いてなるスリットである、請求項4に記載の車両の収納ユニット。
【請求項6】
前記ケースには、前記車両に該ケースを固定する複数の固定部が形成されており、
前記複数の固定部のうち、前記柱部の近傍の前記固定部には、一定の力が加わると破断する固定変形部が形成されてなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の収納ユニット。
【請求項7】
前記固定変形部は、前記固定部を切り欠いてなるスリットである、請求項6に記載の車両の収納ユニット。
【請求項8】
前記収容部材には、閉止した状態で該収容部材をロックするロック部を解除するロック解除レバーが設けられており、
前記ロック解除レバーは、前記柱部の延びる方向であって前記車室内側に設けられてなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両の収納ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の収納ユニットに係り、特に車両の衝突時における乗員への被害を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車には、運転席や、運転手以外の乗員が搭乗する助手席等の席がある。また、助手席の前方であってインストルメントパネルの下方には、グローブボックスが配設されてなる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される技術のように配設されたグローブボックス(収納ユニット)は、助手席に着座した乗員の膝の前方に位置することがある。また、グローブボックスは、荷物を収容する容器であるため、乗員が使用する際に破損しないよう、所定の強度(剛性)を備える必要がある。このようにグローブボックスの剛性を高めることは、車両の前突等により乗員の膝がグローブボックスに衝突する場合、ひざに加わる衝撃が大きくなるため、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用時における強度を保ちつつ、車両の衝突時における乗員への衝撃を緩和することができる車両の収納ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の収納ユニットは、乗員が着座する座席の車両前後方向前方に配設される収納ユニットであって、前記収納ユニットは、荷物を収容可能な収容部材と、車体部材に取り付けられ前記収容部材を支持するケースと、を有し、前記ケースの上面には、前端を前記車体部材に取り付け、車両の車室内に向かって車両前後方向に延びてなる少なくともひとつの柱部が形成されており、前記柱部の前端近傍には、特定の力が加わると該柱部を前記柱変形部において変形させる柱変形部が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
これにより、ケースに形成された、車両の車室内に向かって延びてなる柱部に、特定の力が加わると該柱部を変形させる柱変形部を形成することで、ケースとしての強度を確保しつつ、車両の衝突時に車室内に位置する乗員がグローブボックスユニットの収容部材に接触する際、該収容部材を介して接触する柱部が変形して、乗員に加わる衝撃を緩和することが可能とされる。
【0008】
その他の態様として、前記柱部は、少なくとも前記ケースの車両左右方向に互いに離間した第1柱部と、第2柱部と、がそれぞれ形成されてなり、前記柱変形部は、前記第1柱部を切り欠いて形成された第1柱変形部と、前記第2柱部を切り欠いて形成された第2柱変形部と、を有し、前記第1柱部は、前記第2柱部よりも車両前後方向に長く、車両前後方向前端部が前記第2柱部よりも太く形成されて、前記第2柱部と比較して車両前後方向における剛性が高く、前記第1柱変形部は、前記第2柱変形部よりも大きく切り欠いて形成されており、前記第2柱変形部と比較して小さい力で前記柱部を変形させてなるのが好ましい。
【0009】
これにより、ケースの車両左右方向に互いに離間して形成された第2柱部及び該第2柱部と比較して車両前後方向における剛性が高い第1柱部に、第2柱変形部及び該第2柱変形部と比較して小さい力で柱部を変形させる第1柱変形部を形成することで、比較的剛性が高い柱部である第1柱部を早期に変形させて、乗員に加わる衝撃を良好に緩和することが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記柱変形部は、前記柱部を切り欠いてなるスリットであるのが好ましい。
これにより、簡単な構成にして柱部を変形させ、ケースの変形を促すことが可能とされる。
その他の態様として、前記ケースには、前記車室内に向かって延びてなる壁部と、前記壁部における前記車室内側の端部から外方に延びる枠部と、前記枠部と前記壁部との相対的な動きを抑制するよう補強する複数の補強部と、前記補強部による補強を緩和する補強緩和部と、が形成されてなり、前記補強緩和部は、前記柱部の近傍の前記補強部に形成されてなるのが好ましい。
【0011】
これにより、枠部と壁部との相対的な動きを抑制するよう補強する複数の補強部のうち、柱部の近傍の補強部に、補強部による補強を緩和する補強緩和部を形成することで、柱部が形成されることによるケースの剛性を良好に低下させることが可能とされる。
その他の態様として、前記補強緩和部は、前記補強部を切り欠いてなるスリットであるのが好ましい。
【0012】
これにより、簡単な構成にして補強部を変形させ、ケースの変形を促すことが可能とされる。
その他の態様として、前記ケースには、前記車両に該ケースを固定する複数の固定部が形成されており、前記複数の固定部のうち、前記柱部の近傍の前記固定部には、一定の力が加わると変形する固定変形部が形成されてなるのが好ましい。
【0013】
これにより、ケースに形成された、車両に該ケースを固定する複数の固定部のうち、柱部の近傍の固定部に、一定の力が加わると変形する固定変形部を形成することで、ケースと車両との固定状態を解消して、柱部が乗員に加える衝撃をより緩和することが可能とされる。
その他の態様として、前記固定変形部は、前記固定部を切り欠いてなるスリットであるのが好ましい。
【0014】
これにより、簡単な構成にして固定部を変形させ、ケースの変形を促すことが可能とされる。
その他の態様として、前記収容部材には、閉止した状態で該収容部材をロックするロック部を解除するロック解除レバーが設けられており、前記ロック解除レバーは、前記柱部の延びる方向であって前記車室内側に設けられてなるのが好ましい。
【0015】
これにより、収容部材に設けられたロック解除レバーが、柱部の延びる方向であって車室内側に設けられてなる、換言すると、車両の衝突時において、乗員、柱部及びロック解除レバーが一直線上に位置するようにロック解除レバーを設ける場合であっても、0車両の衝突時に乗員に加わる負荷を軽減しつつ、ロック解除レバーが設けられる位置の自由度を高めることが可能とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両の収納ユニットによれば、ケースに形成された、車両の車室内に向かって延びてなる柱部に、特定の力が加わると該柱部を変形させる柱変形部を形成したので、ケースとしての強度を確保しつつ、車両の衝突時に車室内に位置する乗員がグローブボックスユニットの収容部材に接触する際、該収容部材を介して接触する柱部が変形して、乗員に加わる衝撃を緩和することができる。これにより、使用時における強度を保ちつつ、車両の衝突時における乗員への衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】グローブボックスユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図3中の範囲Aにおける、第1柱部に形成された第1変形部の側面図である。
【
図5】
図3中の範囲Aにおける、第1柱部の正面図である。
【
図6】
図3中の範囲Bにおける、第2柱部の正面図である。
【
図7】
図3中の範囲Cにおける、クリップの斜視図である。
【
図8】
図3中の範囲Cにおける、クリップの側面図である。
【
図10】グローブボックスユニットと搭乗者の膝との位置関係を説明する説明図である。
【
図11】グローブボックスユニットと搭乗者の膝との位置関係を説明する説明図である。
【
図12】グローブボックスユニットに搭乗者の膝が衝突した際の本発明の作用効果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、車両1の車室内3の斜視図が示されている。車両1は、乗用自動車であり、車室内3に運転席5及び助手席7が設けられている。運転席5は、車室内3の前側の車両左右方向右側に設けられた、車両1の運転を行う運転手が搭乗する席である。具体的には、運転手は、運転手用座席5aに着座してステアリングホイール5bを操舵し、図示しないアクセルペダルやブレーキペダルを踏圧することで車両1を走行させることができる。助手席7は、車室内3の前側の車両幅方向左側に設けられた、車両1に搭乗する乗員100(
図9参照)が乗員用座席(座席)9に着座する席である。
【0019】
車室内3における運転席5及び助手席7の前方(近傍)には、インストルメントパネル11が配設されている。インストルメントパネル11は、例えば樹脂製の板部材であり、車室内3の前端上面の意匠を形成する。このインストルメントパネル11の下側であって、助手席7の前方には、グローブボックスユニット(収納ユニット)13が配設されている。
【0020】
図2を参照すると、グローブボックスユニット13の分解斜視図が示されている。グローブボックスユニット13は、例えば整備用の工具やグローブ(以下、荷物等という)を積載することが可能な収納構造を有している。このグローブボックスユニット13は、ボックス(収容部材)21及びケース23を有している。ボックス21は、運転手や乗員100が荷物等を収納する筐体であり、開放時に上方に開口する収納口21aが形成されている。このボックス21には、レバー(ロック解除レバー)21bが設けられており、操作することでボックス21とケース23とのロック状態を解除することができる。
【0021】
ケース23は、収納部23aが車両前後方向後方に向かって(車室内に向かって)開口するよう、インストルメントパネル11の下側の取付開口12に挿入され、フレーム部材15に固定される樹脂製のケースである。このケース23は、ボックス21の上端が下端を軸にして車両前後方向に揺動可能となるよう、収納部23aにボックス21を支持することが可能である。また、例えばケース23に設けられたロック部24は、ボックス21の揺動をロックすることや、レバー21bを操作して当該ロックを解除することが可能である。すなわち、グローブボックスユニット13は、車両1に固定されたケース23の収納部23aにボックス21を支持させることで、レバー21bを操作してボックス21とケース23とのロック状態を解除しつつ、ボックス21の下端を軸にして上端を車両前後方向に揺動させて収納口21aを開閉することができる。
【0022】
図3を参照すると、ケース23の上視図が示されている。上記したように、ケース23は、車両1に固定され、ボックス21を支持するため、所定の強度が必要である。したがって、ケース23には、当該所定の強度を確保するべく、枠部30、第1柱部(柱部)31、第2柱部(柱部)32及びリブ(補強部)33が形成されている。また、ケース23には、取付開口12に係止するための複数のクリップ(固定部)35が配設され、取付開口12に係止されるための複数の被係止孔37が形成されてなる。
【0023】
枠部30は、収納部23aの外周縁(車室内側の端部)から外方に延びて形成される枠である。このように枠部30を形成することにより、ケース23は、収納部23aが形成されることによる車両上下方向及び左右方向の剛性の低下を補強することができる。この枠部30の上側の部分である上枠30aは、車両上下方向から視て、左右方向左側から右側に向かうにつれて後方に傾斜するよう形成されてなる。
【0024】
第1柱部31は、枠部30の上枠30aから車両前後方向
前方に向かっ
て延びるよう、ケース23の上面(壁部)23bの車両左右方向右側から上方に突出するよう形成される、円柱状の補強部である。この第1柱部31の
前端には、フレーム部材15のケース取付部15aに締結される第1座面31aが形成されている(
図2、3参照)。
【0025】
第2柱部32は、ケース23の上面23bに、上方に突出するよう形成された段差部23cの
前端から車両前後方向
前方に向かって延びるよう、ケース23の上面23bの車両左右方向左側から上方に突出するよう形成される、円柱状の補強部である。この第2柱部32の
前端には、フレーム部材15のケース取付部15aに締結される第2座面32aが形成されている(
図2、3参照)。
【0026】
ここで、第1柱部31及び第2柱部32は、車両前後方向、すなわち、車室内3に向かって直線的に延び、車両前後方向前側の端部が収納部23aに開放してなる。これにより、第1柱部31及び第2柱部32は、収納部23aの後方から第1座面31a及び第2座面32aまでの経路を直線的に形成することができる。また、第1柱部31と第2柱部32とを比較すると、第1柱部31は、第2柱部32より長く、車両前後方向前側の端部が第2柱部32より太く剛性が高い。これにより、本実施形態のケース23のように、枠部30の上枠30aが、車両上下方向から視て、左右方向左側から右側に向かうにつれて後方に傾斜するよう形成されている場合であっても、ケース取付部15aに的確に固定することができる。
【0027】
リブ33は、枠部30の上枠30aからケース23の上面23bに、車両上下方向及び前後方向に延びる平板部である。このようにリブ33が形成されることにより、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとが相対的に揺動するような変形を抑制することができる。
クリップ35は、枠部30に形成されたクリップ取付部35a(後述する
図6参照)に複数配設されてなる係止部材である。このクリップ35は、車両前後方向後方に所定圧力で押圧されると取付開口12の図示しない被係止部に係止し、所定圧力より大きい力である規定引張力で前方に引張されると、取付開口12の被係止部から係脱することができる。このようにクリップ35が配設されることにより、枠部30の車両前後方向後側の面にボルト等が露出することを抑制しつつ、枠部30を取付開口12に固定することができる。
【0028】
被係止孔37は、上面23bや枠部30に複数形成された、車両左右方向に延びてなる長孔である。この被係止孔37は、取付開口12の図示しない係止部に係止されることで、取付開口12に固定される。
ところで、ケース23に形成された第1柱部31、第2柱部32、リブ33、クリップ取付部35a及び被係止孔37並びにこれらの周辺には、所定の力が加わることにより変形(破断を含む)する変形部(41~46)が形成されてなる。以下、各変形部についてそれぞれ説明する。
【0029】
図4を参照すると、
図3中の範囲Aにおける、第1柱部31の側面図が示されている。また、
図5を参照すると、
図3中の範囲Aにおける、第1柱部31の正面図が示されている。第1柱部31の第1座面31a近傍には、第1変形部(柱変形部、第1柱変形部)41が形成されてなる。第1変形部41は、第1座面31aの近傍に、第1座面31aに沿うように形成された切欠き(スリット)である(
図4参照)。この第1変形部41は、第1座面31aに形成されたボルト穴31bの中心点P1を軸にして例えば180°となるように形成されてなる(
図5参照)。換言すると、第1変形部41は、第1柱部31の上端面からボルト穴31bの中心点P1の高さまで第1柱部31を切り欠いて形成されてなる。
【0030】
このように第1変形部41を形成することにより、第1柱部31は、特定の力が加わる際に、第1座面31aを軸にして上下方向に揺動するよう変形することができる。
図6を参照すると、
図3中の範囲Bにおける、第2柱部32の正面図が示されている。第2柱部32の第2座面32a近傍には、第2変形部(柱変形部、第2柱変形部)42が形成されてなる。第2変形部42は、第2座面32aの近傍に、第2座面32aに沿うように形成された切欠きである。この第2変形部42は、第2座面32aに形成されたボルト穴32bの中心点P2を軸にして例えば90°となるように形成されてなる。
【0031】
このように第2変形部42を形成することにより、第2柱部32は、一定の力が加わる際に、第2座面32aを軸にして上下方向に揺動するよう変形することができる。また、第2変形部42と比較して第1変形部41が大きくなるよう形成されることで、第2柱部32と比較して太く剛性が高い第1柱部31の変形性を高めることができる。またさらに、第1座面31a及び第2座面32aは、ケース取付部15aに締結されることで、ケース23を吊り下げるように固定するので、グローブボックスユニット13を使用する際の強度を確保することができる。
【0032】
図7を参照すると、
図3中の範囲Cにおける、クリップ35の斜視図が示されている。また、
図8を参照すると、
図3中の範囲Cにおける、クリップ35の側面図が示されている。クリップ取付部35aのクリップ35近傍には、第3変形部(固定変形部)43が形成され(
図7参照)、クリップ取付部35a近傍のリブ33には、第4変形部(固定変形部)44が形成され(
図8参照)。第3変形部43は、例えばクリップ取付部35aの骨格を形成する骨格部35bに形成された開孔である。第4変形部44は、例えばクリップ取付部35aとリブ33との間に形成された切欠きである。
【0033】
このように第3変形部43及び第4変形部44を形成することにより、クリップ取付部35aは、一定の力が加わると破断(変形)し、クリップ35と取付開口12の図示しない被係止部との係合状態を解除することができる。
図9を参照すると、
図3中の範囲Dの斜視図が示されている。枠部30(上枠30a)の第1柱部31近傍には、第3座面30b及び被係止孔37が形成されている。第3座面30bは、枠部30の上枠30aに形成された、取付開口12に例えばボルトで締結される座面である。被係止孔37は、上記した複数の被係止孔37のうちのひとつであり、枠部30の上枠30aに形成されてなる。ここで、第3座面30bの下側及び被係止孔37の左右両側には、第5変形部(補強緩和部)45が形成されている。また、枠部30の上枠30aにおける、第1柱部31の上方及び被係止孔37の左方には、第6変形部(補強変形部)46が形成されている。
【0034】
第5変形部45は、第1柱部31及び被係止孔37の近傍のリブ33を縮小し、または除去するようにしてなる変形部である。ここで、上記したように、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとの間には、枠部30の上枠30aに沿って並ぶよう複数のリブ33(以下、「一群のリブ」ともいう)が形成されてなる(
図3参照)。すなわち、第5変形部45は、一群のリブのうち、第1柱部31の近傍に位置するリブ33を縮小し、または除去することで形成される変形部である。したがって、第5変形部45を形成することにより、一群のリブにより抑制される、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとが相対的に揺動するような変形を、第1柱部31の近傍については促すことができる。
【0035】
第6変形部46は、枠部30の上枠30aにおける、第1柱部31の上方及び被係止孔37の左方、換言すると、被係止孔37の左右両側に形成された、車両左右方向に延びる長孔である。このように第6変形部46を形成することにより、第6変形部46は、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとが相対的に揺動するような変形を、第1柱部31の近傍については良好に促すことができる。
【0036】
図10、11を参照すると、グローブボックスユニット13と乗員100の膝101との位置関係を説明する説明図が示されている。また、
図12を参照すると、グローブボックスユニット13に乗員100の膝101が衝突した際の本発明の作用効果を説明する説明図が示されている。以下、
図10~12に沿い、本発明の作用効果を説明する。
車両1の車室内3における助手席7に乗員100が搭乗し、乗員用座席9に着座すると、乗員100の膝101は、グローブボックスユニット13の車両前後方向後方に位置する。具体的には、乗員100の膝101は、グローブボックスユニット13におけるボックス21のレバー21bの後方に位置する。また、ボックス21のレバー21bは、ケース23の第1柱部31の後方に位置する。したがって、ボックス21のレバー21b、ケース23の第1柱部31及び乗員100の膝101は、直線L1上に一列に並ぶ(
図10参照)。
【0037】
ところで、車両1が走行中に障害物等に衝突する所謂前突をすると、車両1は、急減速することになる。一方、乗員100は、慣性の法則により、車両前方に向かって移動しようとする。したがって、車両1が前突をすると、乗員100の膝101は、グローブボックスユニット13におけるボックス21のレバー21bに衝突する(
図12参照)。このように乗員100の膝101がボックス21のレバー21bに衝突すると、ボックス21を介してケース23に荷重が加わる。
【0038】
まず、ケース23は、当該荷重により、第1柱部31及び第2柱部32が第1変形部41及び第2変形部42で破断する。このように第1柱部31及び第2柱部32が変形すると、第1座面31a及び第2座面32aを軸にして第1柱部31及び第2柱部32を上下方向についての剛性を低下させ、揺動させることができるので、乗員100の膝101に加わる衝撃を緩和することができる。
【0039】
次に、ケース23は、当該荷重により、クリップ取付部35a及びリブ33が第3変形部43及び第4変形部44で破断(変形)する。このようにクリップ取付部35a及びリブ33が破断すると、クリップ35と取付開口12の図示しない被係止部との係合状態を解除して、ケース23が取付開口12に対して相対的に前方に移動することができる。ゆえに、乗員100の膝101に加わる衝撃を緩和することができる。
【0040】
そして、ケース23は、当該荷重により、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとが第3変形部43及び第4変形部44で揺動する。このように一群のリブのうち、第1柱部31の近傍の剛性を低下させることで、枠部30の上枠30aとケース23の上面23bとが相対的に揺動するような変形を、第1柱部31の近傍については促すことができる。
【0041】
したがって、変形部41~46に対応する位置の変形を促すことや剛性の低下を図ることで、車両1の前突によりグローブボックスユニット13におけるボックス21のレバー21bに衝突した、乗員100の膝101に加わる衝撃を緩和することができる。
以上説明したように、本発明に係る車両1の収納ユニットでは、乗員100が着座する乗員用座席9と、乗員用座席9の前方に配設されるグローブボックスユニット13と、を備え、グローブボックスユニット13は、荷物を収容可能なボックス21と、ボックス21を支持するケース23と、を有し、ケース23には、車両1の車室内3に延びてなる第1柱部31が形成されており、第1柱部31には、特定の力が加わると第1柱部31を変形させる第1変形部41が形成されてなる。
【0042】
従って、ケース23に形成された、車両1の車室内3に向かって延びてなる第1柱部31に、特定の力が加わると第1柱部31を変形させる第1変形部41を形成したので、ケース23としての強度を確保しつつ、車両1の衝突時に車室内3に位置する乗員100がグローブボックスユニット13のボックス21に接触する際、該ボックス21を介して接触する第1柱部31が変形して、乗員100に加わる衝撃を緩和することができる。
【0043】
そして、少なくともケース23の車両左右方向に互いに離間した第1柱部31と、第2柱部32と、がそれぞれ形成されてなり、第1柱部31に第1変形部41と、第2柱部32に第2変形部42と、がそれぞれ形成されてなり、第1柱部31は、第2柱部32と比較して車両前後方向における剛性が高く、第1変形部41は、第2変形部42と比較して小さい力で第1柱部31を変形させるようにしたので、比較的剛性が高い第1柱部31を早期に変形させて、乗員に加わる衝撃を良好に緩和することが可能とされる。
【0044】
そして、ケース23には、車室内3に向かって、すなわち、車両前後方向に延びてなる上面23bと、上面23bにおける車室内3側の端部から外方に延びる枠部30と、枠部30と上面23bとの相対的な動きを抑制するよう補強する複数のリブ33である一群のリブと、リブ33による補強を緩和する第5変形部45と、が形成されてなり、第5変形部45は、第1柱部31の近傍のリブ33に形成されたので、第1柱部31が形成されることによるケース23の剛性を良好に低下させることができる。
【0045】
そして、ケース23には、車両1に該ケース23を固定する複数のクリップ35が形成されており、複数のクリップ35のうち、第1柱部31の近傍のクリップ35には、一定の力が加わると破断する第3変形部43を形成したので、ケース23と車両1との固定状態を解消して、第1柱部31が乗員100に加える衝撃をより緩和することができる。
そして、ボックス21には、閉止した状態で該ボックス21をロックするロック部24を解除するレバー21bが設けられており、レバー21bは、第1柱部31の延びる方向であって車室内3側に設けられてなる、換言すると、車両1の衝突時において、乗員100、第1柱部31及びレバー21bが一直線上に位置するようにレバー21bを設ける場合であっても、車両1の衝突時に乗員100に加わる負荷を軽減しつつ、レバー21bが設けられる位置の自由度を高めることができる。
【0046】
そして、第1変形部41、第5変形部45及び第3変形部43のうち、少なくともひとつは、該当する箇所を切り欠いてなるスリットにしたので、簡単な構成にしてケース23の変形を促すことができる。
以上で本発明に係る車両の収納ユニットの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0047】
例えば、本実施形態では、助手席7の前方に配設されるグローブボックスユニット13について説明したが、コンソールボックスに変形部を形成して、二列目の座席に搭乗する乗員の保護をするようにしてもよく、ドアから車室内に向かって開閉するような収納ユニットに変形部を形成して、車両1に他車両が側突するような場合に乗員を保護するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、第2変形部42と比較して第1変形部41が大きくなるよう形成したが、第1変形部41及び第2変形部42を同様の大きさに形成してもよい。
また、本実施形態では、第1変形部41及び第2変形部42をスリットにしたが、穴を複数形成して剛性を低下させた変形部としてもよく、材質を変えるようにしてもよい。特に、第1変形部41及び第2変形部42では、スリットを大きくすることで変形性を大きくするようにしたが、スリットの底部の角度を小さくすることで変形性を大きくするようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、第1柱部31が第2柱部32より長くなるよう形成されてなるが、第1柱部31と第2柱部32とを同様の長さにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
3 車室内
9 乗員用座席(座席)
13 グローブボックスユニット(収納ユニット)
21 ボックス(収容部材)
21b レバー(ロック解除レバー)
23 ケース
23b 上面(壁部)
24 ロック部
30 枠部
31 第1柱部(柱部)
32 第2柱部(柱部)
33 リブ(補強部)
35 クリップ(固定部)
41 第1変形部(柱変形部、第1柱変形部)
42 第2変形部(柱変形部、第2柱変形部)
43 第3変形部(固定変形部)
44 第4変形部(固定変形部)
45 第5変形部(補強緩和部)
46 第6変形部(補強変形部)
100 乗員