(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240731BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B65H5/06 L
B65H29/58 B
B65H5/06 M
(21)【出願番号】P 2020176784
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】城井 壮一郎
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132505(JP,A)
【文献】特開昭61-90935(JP,A)
【文献】特開2019-99282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、
前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、
駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、
前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、
前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、
を備え
、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えによって回転方向が切り替わる、
ことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、
前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、
駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、
前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、
前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、
を備え
、
前記伝達部は、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを互いに異なる方向に回転させる、
ことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、
前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、
駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、
前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、
前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、
を備え
、
前記伝達部には、前記駆動力の伝達時点に対して前記第1軸部又は前記第2軸部の回転の開始時点を遅らせる時間差形成部が設けられる、
ことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、
前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、
駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、
前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、
前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、
を備え
、
前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記媒体の搬送方向を切り替えるためのスイッチバック経路に設けられる、
ことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
前記伝達部は、前記第1制御において前記第1伝達経路から前記第2伝達経路に向けて駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2伝達経路から前記第1伝達経路に向けて駆動力を伝達する、
ことを特徴とする請求項1
から請求項4のいずれか一項に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記伝達部は、前記第1制御において前記第1軸部から前記第2軸部に向けて駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2軸部から前記第1軸部に向けて駆動力を伝達する、
ことを特徴とする請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記伝達部は、前記第1制御において前記第1軸部の回転開始後に前記第2軸部が回転を開始するように駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2軸部の回転開始後に前記第1軸部が回転を開始するように駆動力を伝達する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記第1切替部は、前記一方向に沿った第1仮想線を共通の中心軸線とする第1回転体及び第2回転体を有し、
前記第2切替部は、前記一方向に沿った第2仮想線を共通の中心軸線とする第3回転体及び第4回転体を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記第1回転体は、前記第2制御において前記第2伝達経路の一部を構成する、
ことを特徴とする請求項
8に記載の駆動伝達装置。
【請求項10】
前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えによって回転速度が切り替わる、
ことを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項11】
前記伝達部は、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを同じ方向に回転させる、
ことを特徴とする請求項1
、請求項3、請求項4のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項12】
前記第1切替部及び前記第2切替部は、前記一方向において前記第1ローラー及び前記第2ローラーに対する一方に位置し、
前記伝達部は、前記一方向において前記第1ローラー及び前記第2ローラーに対する他方に位置する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1制御と前記第2制御との間において、前記第1切替部及び前記第2切替部における駆動力の伝達を遮断する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
12のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記駆動源の動作中に前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えを行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項15】
前記駆動源は、一方向のみに回転する回転部を介して前記第1伝達経路及び前記第2伝達経路に駆動力を伝達する、
ことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項16】
前記第1切替部は、前記第1軸部の径方向において駆動力の伝達及び該伝達の遮断の一方に切り替えを行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項
15のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項17】
前記第1切替部は、前記第1軸部上に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項
16のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項18】
前記一方向に延びる第3軸部を備え且つ前記伝達部から駆動力を受けることで前記媒体を搬送する第3ローラーを有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
17のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項19】
前記伝達部から前記第3軸部へ駆動力を伝達する第3伝達経路には、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第3切替部が設けられ、
前記制御部は、前記第1切替部、前記第2切替部及び前記第3切替部のいずれか1つにおいて駆動力を伝達させ、残りの2つにおいて駆動力の伝達を遮断させる、
ことを特徴とする請求項
18に記載の駆動伝達装置。
【請求項20】
前記第1ローラーと共に前記媒体を挟み、前記第1ローラーの回転に伴って回転される第1従動ローラーと、
前記第2ローラーと共に前記媒体を挟み、前記第2ローラーの回転に伴って回転される第2従動ローラーと、
が設けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項
19のいずれか1項に記載の駆動伝達装置。
【請求項21】
前記媒体に液体を吐出することで記録する記録部と、
前記記録部において記録された前記媒体を前記第1ローラー及び前記第2ローラーに駆動力を伝達することで搬送させる請求項1から請求項
20のいずれか1項に記載の駆動伝達装置と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の記録装置は、記録用紙をスイッチバックさせて送り込み方向とは逆方向に搬送するスイッチバック経路と、複数の搬送ローラーと、複数の従動ローラーとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の記録装置のように複数のローラーを回転させる構成において、各ローラーの回転状態の変更を2つ以上のモーターを用いて行うと、駆動伝達装置の構造が複雑になる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る駆動伝達装置は、一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態1に係るプリンターにおける用紙の搬送経路を示す図。
【
図2】実施形態1に係る駆動伝達ユニット及び第1ローラー、第2ローラーを示す斜視図。
【
図3】実施形態1に係る駆動伝達ユニットの第1制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図4】実施形態1に係る駆動伝達ユニットの第2制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図5】実施形態1に係る駆動伝達ユニットの第1制御及び第2制御においてモーター、第1クラッチ及び第2クラッチのON、OFF状態を示すタイミングチャート。
【
図6】実施形態1の変形例に係る駆動伝達ユニットの制御においてモーター、第1クラッチ及び第2クラッチのON、OFF状態を示すタイミングチャート。
【
図7】実施形態2に係る駆動伝達ユニットの第1速度制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図8】実施形態2に係る駆動伝達ユニットの第2速度制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図9】実施形態3に係る駆動伝達ユニットが第1ローラー、第2ローラーを互いに異なる方向に回転させる状態を示す概略図。
【
図10】実施形態3に係る駆動伝達ユニットが第1ローラー、第2ローラーを互いに異なる方向で且つ
図9とは逆方向に回転させる状態を示す概略図。
【
図11】実施形態4に係る駆動伝達ユニット及び第1ローラー、第2ローラー及び第3ローラーを示す斜視図。
【
図12】実施形態4に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図13】実施形態4に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図14】実施形態5に係る駆動伝達ユニット及び第1ローラー、第2ローラー及び第3ローラーを示す斜視図。
【
図15】実施形態5に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図16】実施形態5に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図17】実施形態6に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図18】実施形態6に係る駆動伝達ユニットの制御における各ギヤ、各クラッチ及び第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーの回転方向を示す概略図。
【
図19】実施形態7に係るプリンターの第1ローラーの第1軸部及び伝達ギヤを拡大した正面図である。
【
図20】実施形態7に係る駆動伝達ユニットの制御においてモーター、第1クラッチ及び第2クラッチのON、OFF状態を示すタイミングチャート。
【
図21】実施形態1の変形例に係る駆動伝達ユニットの第1クラッチの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る駆動伝達装置は、一方向に延びる第1軸部を備え且つ媒体を搬送する第1ローラーと、前記第1ローラーとは異なる位置に配置され、前記一方向に延びる第2軸部を備え且つ前記媒体を搬送する第2ローラーと、駆動源から前記第1軸部へ駆動力を伝達する第1伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第1切替部と、前記駆動源から前記第2軸部へ駆動力を伝達する第2伝達経路に設けられ、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第2切替部と、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの一方から他方へ駆動力を伝達する伝達部と、前記第1切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第2切替部において駆動力の伝達を遮断させる第1制御と、前記第2切替部において駆動力を伝達させ且つ前記第1切替部において駆動力の伝達を遮断させる第2制御とを選択可能な制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記制御部が前記第1制御を選択した場合、前記第1切替部において駆動力が伝達され、前記第2切替部において駆動力の伝達が遮断される。これにより、前記第1ローラーが回転される。さらに、前記第1ローラーの回転の駆動力は、前記伝達部によって前記第2ローラーに伝達される。ここで、第2切替部において駆動力の伝達が遮断されているので、前記第2ローラーは、前記伝達部によって伝達された駆動力によって回転される。
一方、前記制御部が前記第2制御を選択した場合、前記第2切替部において駆動力が伝達され、前記第1切替部において駆動力の伝達が遮断される。これにより、前記第2ローラーが回転される。さらに、前記第2ローラーの回転の駆動力は、前記伝達部によって前記第1ローラーに伝達される。ここで、第1切替部において駆動力の伝達が遮断されているので、前記第1ローラーは、前記伝達部によって伝達された駆動力によって回転される。
このように、前記駆動源が1つであっても、前記第1制御又は前記第2制御が選択されることで、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転状態を変更可能となる。例えば、前記第1切替部を用いたときの前記第1ローラーの回転方向と、前記第2切替部を用いたときの前記第2ローラーの回転方向とが異なる場合、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転が正転、逆転されるので、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの駆動を切り替えることができる。
あるいは、前記第1切替部を用いたときの前記第1ローラーの回転速度と、前記第2切替部を用いたときの前記第2ローラーの回転速度とが異なる場合、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転速度が切り替わるので、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転速度を切り替えることができる。
【0009】
第2の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様において、前記伝達部は、前記第1制御において前記第1伝達経路から前記第2伝達経路に向けて駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2伝達経路から前記第1伝達経路に向けて駆動力を伝達することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1制御及び前記第2制御において1つの前記伝達部が機能することで、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの駆動を切り替えることができる。
【0010】
第3の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記伝達部は、前記第1制御において前記第1軸部から前記第2軸部に向けて駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2軸部から前記第1軸部に向けて駆動力を伝達することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1制御及び前記第2制御において1つの前記伝達部が機能することで、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの駆動を切り替えることができる。
【0011】
第4の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、前記伝達部は、前記第1制御において前記第1軸部の回転開始後に前記第2軸部が回転を開始するように駆動力を伝達し、前記第2制御において前記第2軸部の回転開始後に前記第1軸部が回転を開始するように駆動力を伝達することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1制御及び前記第2制御において1つの前記伝達部が機能することで、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの駆動を切り替えることができる。
【0012】
第5の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記第1切替部は、前記一方向に沿った第1仮想線を共通の中心軸線とする第1回転体及び第2回転体を有し、前記第2切替部は、前記一方向に沿った第2仮想線を共通の中心軸線とする第3回転体及び第4回転体を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1回転体と前記第2回転体が共通の中心軸線となる前記第1仮想線を有し、前記第3回転体と前記第4回転体が共通の中心軸線となる前記第2仮想線を有することで、前記第1回転体から前記第4回転体までが別々に配置される構成に比べて、前記第2伝達経路の設置スペースが小さくなるので、前記駆動伝達装置を小型化できる。
【0013】
第6の態様に係る駆動伝達装置は、第5の態様において、前記第1回転体は、前記第2制御において前記第2伝達経路の一部を構成することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1回転体が前記第2伝達経路の一部を構成せず、他の回転体を用いる構成に比べて、前記第2伝達経路を形成するために必要な部品の数を減らすことができる。
【0014】
第7の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えによって回転方向が切り替わることを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部が、前記第1制御の状態において前記第2制御を選択し、又は前記第2制御の状態において前記第1制御を選択することで、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転方向が切り替わるので、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転方向を切り替えることができる。
【0015】
第8の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えによって回転速度が切り替わることを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部が、前記第1制御の状態において前記第2制御を選択し、又は前記第2制御の状態において前記第1制御を選択することで、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転速度が切り替わるので、簡単な構成で前記第1ローラー及び前記第2ローラーの回転速度を切り替えることができる。
【0016】
第9の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つにおいて、前記伝達部は、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを同じ方向に回転させることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1ローラーの回転方向と前記第2ローラーの回転方向とが揃っているので、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを同じ搬送経路に配置することができる。なお、この際に、前記第1ローラーの回転速度と前記第2ローラーの回転速度とは同じでもよいし、異なっていてもよい。1の媒体を搬送する第1ローラーの回転速度と第2ローラーの回転速度とが同じ場合、1の媒体の姿勢を変えずに搬送しやすい。また、1の媒体を搬送する第1ローラーの回転速度と第2ローラーの回転速度とが異なる場合、1の媒体に張力を付与したり、1の媒体を撓ませたりしやすい。媒体に張力を付与する場合、媒体のカールを矯正することに駆動伝達装置を用いることができる。媒体を撓ませる場合、媒体の斜行を補正することに駆動伝達装置を用いることができる。
【0017】
第10の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つにおいて、前記伝達部は、前記第1ローラー及び前記第2ローラーを互いに異なる方向に回転させることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1ローラーの回転方向と前記第2ローラーの回転方向が異なっているので、前記第1ローラーと前記第2ローラーを異なる用途に用いることができる。
例えば、前記第1ローラーと前記第2ローラーとで媒体を挟持して、媒体を搬送したり、媒体に折り加工をしたりすることができる。また、例えば、搬送経路を挟んだ一方側に前記第1ローラーを配置し、搬送経路を挟んだ他方側に前記第2ローラーを配置して、媒体に対して異なる方向からローラーを作用させてもよい。なお、この際に、前記第1ローラーの回転速度と前記第2ローラーの回転速度とは同じでもよいし、異なっていてもよい。媒体を搬送する第1ローラーの回転速度と第2ローラーの回転速度とが同じ場合、媒体の姿勢を変えずに搬送しやすい。また、媒体を搬送する第1ローラーの回転速度と第2ローラーの回転速度とが異なる場合、媒体の重送を防ぎやすい。
【0018】
第11の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第10の態様のいずれか1つにおいて、前記第1切替部及び前記第2切替部は、前記一方向において前記第1ローラー及び前記第2ローラーに対する一方に位置し、前記伝達部は、前記一方向において前記第1ローラー及び前記第2ローラーに対する他方に位置することを特徴とする。
本態様によれば、駆動力を伝達する構成が前記第1ローラー及び前記第2ローラーに対して一方に偏って配置されることがないので、前記伝達部を配置するスペースを確保し易くなる。
【0019】
第12の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第11の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部は、前記第1制御と前記第2制御との間において、前記第1切替部及び前記第2切替部における駆動力の伝達を遮断することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方に切り替えた場合、前記第1制御と前記第2制御との間の時間において、前記第1切替部及び前記第2切替部における駆動力の伝達が遮断されるので、一方の駆動力の伝達の遮断が不十分な状態で他方の駆動力の伝達が行われるのを防ぐことができる。
【0020】
第13の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第12の態様のいずれか1つにおいて、前記伝達部には、前記駆動力の伝達時点に対して前記第1軸部又は前記第2軸部の回転の開始時点を遅らせる時間差形成部が設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部が前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えを瞬時に行ってしまったとしても、前記時間差形成部が、前記駆動力の伝達時点に対して前記第1軸部又は前記第2軸部の回転の開始時点を遅らせるので、一方の駆動力の伝達の遮断が不十分な状態で他方の駆動力の伝達が行われるのを防ぐことができる。
【0021】
第14の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第13の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部は、前記駆動源の動作中に前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えを行うことを特徴とする。
本態様によれば、前記駆動源の動作を停止させずに済むので、前記第1ローラー及び前記第2ローラーが前記媒体を搬送する時間が長くなるのを抑制できる。
【0022】
第15の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第14の態様のいずれか1つにおいて、前記駆動源は、一方向のみに回転する回転部を介して前記第1伝達経路及び前記第2伝達経路に駆動力を伝達することを特徴とする。
本態様によれば、前記回転部が一方向のみに回転するので、正転及び逆転が可能な前記駆動源を用いずに前記媒体を搬送することができる。
【0023】
第16の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第15の態様のいずれか1つにおいて、前記第1ローラー及び前記第2ローラーは、前記媒体の搬送方向を切り替えるためのスイッチバック経路に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記スイッチバック経路において、前記第1ローラー及び前記第2ローラーによって前記媒体の搬送方向を切り替えられるので、前記スイッチバック経路において1本のローラーのみを用いる構成に比べて、前記スイッチバック経路の長さを長く設定することができる。
【0024】
第17の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第16の態様のいずれか1つにおいて、前記第1切替部は、前記第1軸部の径方向において駆動力の伝達及び該伝達の遮断の一方に切り替えを行うことを特徴とする。
本態様によれば、前記第1軸部の前記径方向に切り替え動作が行われる。換言すると、前記第1軸部の軸方向に切り替え動作が行われない。これにより、前記第1軸部の軸方向に前記第1切替部の切り替え動作のためのスペースを確保しなくて済むので、前記第1切替部の前記軸方向における配置の自由度を上げることができる。
【0025】
第18の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第17の態様のいずれか1つにおいて、前記第1切替部は、前記第1軸部上に配置されることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1軸部上で駆動力の伝達及び遮断を行えるので、前記第1切替部が前記第1軸部上に配置されない構成に比べて、前記第1制御及び前記第2制御の一方から他方への切り替えに要する時間を短くできる。
【0026】
第19の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第18の態様のいずれか1つにおいて、前記一方向に延びる第3軸部を備え且つ前記伝達部から駆動力を受けることで前記媒体を搬送する第3ローラーを有することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1伝達経路及び前記第2伝達経路の構成に影響を与えずに、前記第3ローラーを設け且つ前記第3ローラーの回転を制御できる。
【0027】
第20の態様に係る駆動伝達装置は、第19の態様において、前記伝達部から前記第3軸部へ駆動力を伝達する第3伝達経路には、駆動力の伝達と遮断とを切り替え可能な第3切替部が設けられ、前記制御部は、前記第1切替部、前記第2切替部及び前記第3切替部のいずれか1つにおいて駆動力を伝達させ、残りの2つにおいて駆動力の伝達を遮断させることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1切替部、前記第2切替部及び前記第3切替部のいずれか1つにおいて駆動力が伝達される状態となるので、前記第1ローラーの回転状態、前記第2ローラーの回転状態及び前記第3ローラーの回転状態を切り替えできる。
【0028】
第21の態様に係る駆動伝達装置は、第1の態様から第20の態様のいずれか1つにおいて、前記第1ローラーと共に前記媒体を挟み、前記第1ローラーの回転に伴って回転される第1従動ローラーと、前記第2ローラーと共に前記媒体を挟み、前記第2ローラーの回転に伴って回転される第2従動ローラーと、が設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記媒体が無い状態において、前記第1ローラーと前記第1従動ローラーとでニップが形成され、前記第2ローラーと前記第2従動ローラーとでニップが形成される。このように、複数のニップが形成されるので、前記媒体に作用するニップ力を分散させることができる。
【0029】
第22の態様に係る液体吐出装置は、前記媒体に液体を吐出することで記録する記録部と、前記記録部において記録された前記媒体を前記第1ローラー及び前記第2ローラーに駆動力を伝達することで搬送させる請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の駆動伝達装置と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第20の態様のいずれか1つに係る駆動伝達装置と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0030】
[実施形態1]
以下、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例として、実施形態1の駆動伝達ユニット50及びプリンター1を具体的に説明する。
図1に示されるように、プリンター1は、記録用紙に代表される媒体Mに、液体の一例であるインクKを吐出することで記録を行うインクジェット方式の装置として構成される。なお、各図において表すX-Y-Z座標系は直交座標系である。
X方向は、プリンター1の操作者から見た装置幅方向であり、水平方向である。X方向のうち左に向かう方向を+X方向、右に向かう方向を-X方向とする。
Y方向は、媒体Mの搬送方向と交差する媒体Mの幅方向且つ装置奥行き方向であり、水平方向である。また、Y方向は、一方向の一例である。Y方向の手前に向かう方向を+Y方向、奥に向かう方向を-Y方向とする。
Z方向は、装置高さ方向であり、一例として、鉛直方向である。Z方向の上に向かう方向を+Z方向、下に向かう方向を-Z方向とする。
【0031】
プリンター1は、後述するラインヘッド30と、駆動伝達ユニット50とを備える。具体的には、プリンター1は、装置本体2を有する。装置本体2には、外郭となる筐体が含まれる。装置本体2のZ方向の中央より+Z方向には、記録された媒体Mが排出される空間を含む排出部3が形成される。また、装置本体2には、複数の媒体カセット4が設けられる。
複数の媒体カセット4には、媒体Mが収容される。各媒体カセット4に収容された媒体Mは、ピックローラー6及び搬送ローラー対7、8によって搬送経路Tに沿って搬送される。搬送経路Tには、外部装置から媒体Mが搬送される搬送路T1と、装置本体2に設けられた手差トレイ9から媒体Mが搬送される搬送路T2とが合流する。
【0032】
搬送経路Tには、媒体Mを搬送する搬送ユニット10と、搬送ローラー対11、27、28、29、31と、媒体Mが搬送される経路を切り替える複数のフラップ12と、媒体MのY方向の幅を検出する媒体幅センサー13とが配置される。
搬送ユニット10は、2つのプーリー14と、2つのプーリー14に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト15と、一方のプーリー14を駆動する不図示のモーターとを有する。媒体Mは、搬送ベルト15のベルト面に吸着されつつ、後述するラインヘッド30と対向する位置を搬送される。
搬送経路Tにおける搬送ユニット10より下流には、排出部3に向かう搬送路T3及び搬送路T4と、媒体Mの表裏を反転させるための反転路T5とが設けられる。
反転路T5は、スイッチバック経路の一例であり、媒体Mの搬送方向を切り替えるための経路でもある。
【0033】
搬送経路Tにおいて、搬送ローラー対27は、媒体幅センサー13より上流に配置される。搬送ローラー対28は、媒体幅センサー13と後述するラインヘッド30との間に配置される。
搬送ローラー対29は、搬送経路Tから搬送路T3又は搬送路T4に分岐する分岐点の上流に配置される。搬送ローラー対31は、搬送路T4に配置される。
搬送ローラー対27、29は、それぞれ、ローラー27Aと、ローラー27Bとから成る。搬送ローラー対28、31は、それぞれ、ローラー28Aと、ローラー28Bとから成る。
【0034】
ローラー27A及びローラー28Aは、それぞれY方向に沿った回転軸の周りに回転可能に設けられる。ローラー27A、28Aは、媒体Mの裏面と接触される。つまり、Y方向から見て、ローラー27Aとローラー28Aは、同方向に回転される。ローラー27Aとローラー27Bは、媒体Mを挟み、回転に伴って媒体Mを搬送する。ローラー28Aとローラー28Bは、媒体Mを挟み、回転に伴って媒体Mを搬送する。
【0035】
反転路T5には、一例として、第1ローラー34及び対向ローラー42と、第2ローラー36及び対向ローラー44と、第3ローラー38及び対向ローラー46とを含む複数のローラー対が設けられる。
記録された媒体Mは、搬送経路Tから反転路T5に進入して+Z方向に搬送され、停止された後、スイッチバックによって、媒体幅センサー13よりも上流から再び搬送経路Tに進入することで、表裏が反転される。
【0036】
装置本体2内には、インクKを収容するインクタンク23と、インクKの廃液を貯留する廃液貯留部16と、プリンター1の各部の動作を制御する制御部26と、駆動源の一例としてのモーター51(
図2)とが設けられる。
インクタンク23は、後述するラインヘッド30へインクKを供給する。
制御部26は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成され、プリンター1における媒体Mの搬送や、後述するラインヘッド30及び駆動伝達ユニット50(
図2)を含む各部の動作を制御する。なお、制御部26は、駆動伝達ユニット50の制御部の一例である。また、制御部26は、後述する第1クラッチ57、第2クラッチ65及び第3クラッチ126において、駆動力Fの伝達、及び駆動力Fの伝達の遮断を制御する。
【0037】
図2に示されるように、モーター51は、駆動伝達ユニット50に対して駆動力Fを与える。具体的には、モーター51は、駆動ギヤ54の駆動軸53を回転させる。駆動ギヤ54は、回転部の一例である。駆動軸53は、Y方向に沿って配置される。本実施形態では、一例として、モーター51の位置から-Y方向を見て、駆動ギヤ54が反時計回り方向に回転される。このように、モーター51は、一方向に回転駆動を行う。
また、モーター51は、一方向のみに回転する駆動ギヤ54を介して、後述する第1伝達経路52及び第2伝達経路56に駆動力Fを伝達する。
以後の説明では、部材の回転方向を説明する場合、モーター51の位置から-Y方向を見て、反時計回り方向を-R方向とし、時計周り方向を+R方向とする。
【0038】
図1に示されるように、ラインヘッド30は、媒体MにインクKを吐出することで記録する記録部の一例であり、装置本体2に設けられる。また、ラインヘッド30は、インクKが吐出される複数のノズルから成るノズル部Nを有する。このように、ラインヘッド30は、媒体MのY方向への移動を伴わずに媒体MのY方向の全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成される。
【0039】
図2に示される駆動伝達ユニット50は、駆動伝達装置の一例であり、ラインヘッド30において記録された媒体Mを、第1ローラー34及び第2ローラー36に駆動力を伝達することで搬送させる。
また、駆動伝達ユニット50は、第1ローラー34と、第2ローラー36と、第1クラッチ57と、第2クラッチ65と、伝達部72と、制御部26(
図1)とを備える。
【0040】
第1ローラー34は、一例として、Y方向に延びる第1軸部33と4つのゴム部34Aとを備え且つ媒体Mを搬送する。第1軸部33は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第1軸部33のY方向の両端部は、ベアリングを介して不図示の本体フレームに回転可能に支持される。4つのゴム部34Aは、円筒状に形成され、第1軸部33に取り付けられる。
【0041】
第2ローラー36は、第1ローラー34とは異なる位置に配置される。本実施形態では、第2ローラー36は、一例として、第1ローラー34に対する+Z方向に配置される。また、第2ローラー36は、一例として、Y方向に延びる第2軸部35と4つのゴム部36Aとを備え且つ媒体Mを搬送する。第2軸部35は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第2軸部35のY方向の両端部は、ベアリングを介して不図示の本体フレームに回転可能に支持される。4つのゴム部36Aは、円筒状に形成され、第2軸部35に取り付けられる。
【0042】
対向ローラー42は、第1従動ローラーの一例であり、第1ローラー34と共に媒体Mを挟み、第1ローラー34の回転に伴って回転される。
対向ローラー44は、第2従動ローラーの一例であり、第2ローラー36と共に媒体Mを挟み、第2ローラー36の回転に伴って回転される。
【0043】
第1クラッチ57は、第1切替部の一例であり、第1伝達経路52に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。ON状態が駆動力を伝達する状態を意味し、OFF状態が駆動力を遮断する状態を意味する。具体的には、第1クラッチ57は、電磁クラッチとして構成されており、本体部58と、クラッチギヤ59とを備える。
本体部58は、第2回転体の一例である。また、本体部58は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部58は、第1軸部33と一体となっている。第1軸部33の+Y方向の端部は、クラッチギヤ59の貫通孔に挿入される。このように、第1クラッチ57は、第1軸部33上に配置される。
【0044】
クラッチギヤ59には、不図示の金属板が設けられる。クラッチギヤ59の歯部は、駆動ギヤ54の歯部と噛み合っている。クラッチギヤ59は、第1回転体の一例である。本体部58及びクラッチギヤ59は、Y方向に沿った第1仮想線C1を共通の中心軸線とする。クラッチギヤ59は、後述する第2制御において、後述する第2伝達経路56の一部を構成する。
第1クラッチ57において本体部58に通電されていない場合、クラッチギヤ59は、本体部58とは連動せず、単独で第1軸部33の周りに回転可能である。
第1クラッチ57において本体部58に通電された場合、クラッチギヤ59は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部58と一体となり、第1軸部33の回転に伴って回転される。
【0045】
第2クラッチ65は、第2切替部の一例であり、第2伝達経路56に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。ON状態が駆動力を伝達する状態を意味し、OFF状態が駆動力Fの伝達を遮断する状態を意味する。具体的には、第2クラッチ65は、電磁クラッチとして構成されており、本体部66と、クラッチギヤ67とを備える。
本体部66は、第4回転体の一例である。また、本体部66は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部66は、第2軸部35と一体となっている。第2軸部35の+Y方向の端部は、クラッチギヤ67の貫通孔に挿入される。
第1クラッチ57及び第2クラッチ65は、Y方向において、第1ローラー34及び第2ローラー36に対する一方となる+Y方向に位置する。
【0046】
クラッチギヤ67には、不図示の金属板が設けられる。クラッチギヤ67の歯部は、後述するアイドラーギヤ64の歯部と噛み合っている。クラッチギヤ67は、第3回転体の一例である。本体部66及びクラッチギヤ67は、Y方向に沿った第2仮想線C2を共通の中心軸線とする。
第2クラッチ65において本体部66に通電されていない場合、クラッチギヤ67は、本体部66とは連動せず、単独で第2軸部35の周りに回転可能である。
第2クラッチ65において本体部66に通電された場合、クラッチギヤ67は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部66と一体となり、第2軸部35の回転に伴って回転される。
【0047】
第1伝達経路52は、モーター51から第1軸部33へ駆動力を伝達する経路である。また、第1伝達経路52は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ57とから成る。
第2伝達経路56は、モーター51から第2軸部35へ駆動力を伝達する経路である。また、第2伝達経路56は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ57と、アイドラーギヤ62と、アイドラーギヤ64と、第2クラッチ65とから成る。
アイドラーギヤ62は、Y方向に沿った軸部61の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ62の歯部は、クラッチギヤ59の歯部と噛み合っている。
アイドラーギヤ64は、Y方向に沿った軸部63の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ64の歯部は、アイドラーギヤ62の歯部とクラッチギヤ67の歯部とに噛み合っている。
【0048】
伝達部72は、Y方向において、第1ローラー34及び第2ローラー36に対する他方となる-Y方向に位置する。また、伝達部72は、第1ローラー34及び第2ローラー36の一方から他方へ駆動力Fを伝達する。換言すると、伝達部72は、第1ローラー34から第2ローラー36へ駆動力Fを伝達する場合と、第2ローラー36から第1ローラー34へ駆動力Fを伝達する場合とがある。伝達部72は、一例として、伝達ギヤ74と、アイドラーギヤ76と、伝達ギヤ78とから成る。
【0049】
第1軸部33の-Y方向の端部は、伝達ギヤ74の貫通孔に挿入される。
アイドラーギヤ76は、Y方向に沿った軸部75の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ76の歯部は、伝達ギヤ74の歯部と噛み合っている。
第2軸部35の-Y方向の端部は、伝達ギヤ78の貫通孔に挿入される。伝達ギヤ78の歯部は、アイドラーギヤ76の歯部と噛み合っている。
伝達部72は、第1ローラー34及び第2ローラー36を同じ方向に回転させる。
駆動伝達ユニット50の各ギヤの外径は、第1ローラー34と第2ローラー36が同じ回転方向にほぼ同じ回転速度で回転されるように設定される。
【0050】
図1に示される制御部26は、駆動伝達ユニット50における第1制御と第2制御とを選択可能に構成される。
第1制御は、第1クラッチ57において第1ローラー34に駆動力Fを伝達させ且つ第2クラッチ65において第2ローラー36への駆動力Fの伝達を遮断させる制御である。具体的には、伝達部72は、第1制御において、第1伝達経路52から第2伝達経路56に向けて駆動力Fを伝達する。また、伝達部72は、第1制御において第1軸部33から第2軸部35に向けて駆動力Fを伝達する。
【0051】
第2制御は、第2クラッチ65において第2ローラー36への駆動力Fを伝達させ且つ第1クラッチ57において第1ローラー34への駆動力Fの伝達を遮断させる制御である。具体的には、伝達部72は、第2制御において、第2伝達経路56から第1伝達経路52に向けて駆動力を伝達する。また、伝達部72は、第2制御において第2軸部35から第1軸部33に向けて駆動力Fを伝達する。
ここで、第1ローラー34及び第2ローラー36は、第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えによって回転方向が切り替わる。
【0052】
図2及び
図5に示されるように、伝達部72は、第1制御において第1軸部33の回転開始後に第2軸部35が回転を開始するように駆動力Fを伝達する。さらに、伝達部72は、第1制御の後、第2制御において第2軸部35の回転開始後に第1軸部33が回転を開始するように駆動力Fを伝達する。
時点t1にモーター51がON状態となる。時点t2に第1クラッチ57がON状態となり、時点t3に第1クラッチ57がOFF状態となる。時点t4に第2クラッチ65がON状態となり、時点t5に第2クラッチ65がOFF状態となる。時点t6にモーター51がOFF状態となる。
【0053】
制御部26(
図1)は、第1制御と第2制御との間において、第1クラッチ57及び第2クラッチ65における駆動力Fの伝達を遮断する。具体的には、
図5における時点t3から時点t4までの時間において、第1クラッチ57及び第2クラッチ65が共にOFF状態となる。
【0054】
図6には、実施形態1の駆動伝達ユニット50の変形例におけるモーター51、第1クラッチ57及び第2クラッチ65のタイミングチャートが示される。伝達部72は、第2制御において第2軸部35の回転開始後に第1軸部33が回転を開始するように駆動力Fを伝達する。さらに、伝達部72は、第2制御の後、第1制御において第1軸部33の回転開始後に第2軸部35が回転を開始するように駆動力Fを伝達する。
時点t1にモーター51がON状態となる。時点t2に第2クラッチ65がON状態となり、時点t3に第2クラッチ65がOFF状態となる。時点t4に第1クラッチ57がON状態となり、時点t5に第1クラッチ57がOFF状態となる。時点t6にモーター51がOFF状態となる。
【0055】
次に、実施形態1のプリンター1及び駆動伝達ユニット50の作用について、
図1から
図5までを参照して説明する。なお、
図3及び
図4を除いて個別の図番の記載を省略する。
図3、
図4には、第1伝達経路52及び第2伝達経路56を構成する各部材と、第1ローラー34及び第2ローラー36と、伝達部72を構成する各部材とを、それぞれ同じ側から見た状態が横並びで示される。
以後の説明では、第1クラッチ57が駆動力を伝達する状態にある場合、本体部58をクラッチギヤ59よりも小径の破線で示す。第1クラッチ57が駆動力を遮断する状態にある場合、本体部58をクラッチギヤ59よりも小径の実線で示す。
第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態にある場合、本体部66をクラッチギヤ67よりも小径の破線で示す。第2クラッチ65が駆動力を遮断する状態にある場合、本体部66をクラッチギヤ67よりも小径の実線で示す。
また、以後の説明では、アイドラーギヤ62、64、76の回転方向の説明を省略する。
【0056】
図3に示されるように、第1クラッチ57が駆動力を伝達する状態とされ、第2クラッチ65が遮断された状態において、駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。これにより、第1ローラー34及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部72において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ78及び第2ローラー36がそれぞれ+R方向に回転される。
【0057】
一方、第2伝達経路56では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67は-R方向に回転される。ここで、本体部66は第2ローラー36の回転に伴って+R方向に一体で回転されるが、第2クラッチ65が遮断された状態にあるので、本体部66とクラッチギヤ67とが干渉せず互いに逆方向に回転される。
このように、第1クラッチ57が駆動力を伝達する状態とされ、第2クラッチ65が遮断された状態では、伝達部72によって、第1ローラー34から第2ローラー36へ駆動力が伝達される。
【0058】
図4に示されるように、第1クラッチ57が駆動力Fの伝達を遮断する状態にあり、第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態とされた状態において、駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。この時点では、本体部58は回転されない。
第2伝達経路56では、クラッチギヤ59が+R方向の回転されることで、クラッチギヤ67が-R方向に回転される。ここで、第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態とされていることで、本体部66が-R方向に回転されるので、第2ローラー36及び伝達ギヤ78がそれぞれ-R方向に回転される。そして、伝達部72において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ74及び第1ローラー34がそれぞれ-R方向に回転される。
本体部58は第1ローラー34の回転に伴って-R方向に一体で回転されるが、第1クラッチ57が遮断された状態にあるので、本体部58とクラッチギヤ59とが干渉せず互いに逆方向に回転される。
このように、第1クラッチ57が遮断された状態で、且つ第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態では、伝達部72によって、第2ローラー36から第1ローラー34へ駆動力が伝達される。
【0059】
記録された媒体Mが搬送経路Tから反転路T5に搬送された場合、第1ローラー34及び第2ローラー36が+R方向に回転されると共に第3ローラー38が+R方向に回転されることで、媒体が反転路T5を+Z方向に搬送される。
続いて、既述の通り、第1ローラー34及び第2ローラー36が-R方向に回転されると共に第3ローラー38が-R方向に回転されることで、媒体Mが反転路T5においてスイッチバックされる。これにより、媒体Mが、ラインヘッド30よりも上流の搬送経路Tに再び進入して搬送される。
【0060】
以上、説明した通り、駆動伝達ユニット50によれば、制御部26が第1制御を選択した場合、第1クラッチ57において駆動力が伝達され、第2クラッチ65において駆動力Fの伝達が遮断される。これにより、第1ローラー34が回転される。さらに、第1ローラー34の回転の駆動力は、伝達部72によって第2ローラー36に伝達される。ここで、第2クラッチ65において駆動力Fの伝達が遮断されているので、第2ローラー36は、伝達部72によって伝達された駆動力Fによって回転される。
一方、制御部26が第2制御を選択した場合、第2クラッチ65において駆動力が伝達され、第1クラッチ57において駆動力Fの伝達が遮断される。これにより、第2ローラー36が回転される。さらに、第2ローラー36の回転の駆動力は、伝達部72によって第1ローラー34に伝達される。ここで、第1クラッチ57において駆動力Fの伝達が遮断されているので、第1ローラー34は、伝達部72によって伝達された駆動力Fによって回転される。
このように、モーター51が1つであっても、第1制御又は第2制御が選択されることで、第1ローラー34及び第2ローラー36の回転状態を変更可能となる。例えば、第1クラッチ57を用いたときの第1ローラー34の回転方向と、第2クラッチ65を用いたときの第2ローラー36の回転方向とが異なる場合、第1ローラー34及び第2ローラー36の回転が正転、逆転されるので、簡単な構成で第1ローラー34及び第2ローラー36の駆動を切り替えることができる。
あるいは、第1クラッチ57を用いたときの第1ローラー34の回転速度と、第2クラッチ65を用いたときの第2ローラー36の回転速度とが異なる場合、第1ローラー34及び第2ローラー36の回転速度が切り替わるので、簡単な構成で第1ローラー34及び第2ローラー36の回転速度を切り替えることができる。
【0061】
駆動伝達ユニット50によれば、第1制御及び第2制御において1つの伝達部72が機能することで、簡単な構成で第1ローラー34及び第2ローラー36の駆動を切り替えることができる。
また、駆動伝達ユニット50によれば、クラッチギヤ59と本体部58が共通の中心軸線となる第1仮想線C1を有し、クラッチギヤ67と本体部66が共通の中心軸線となる第2仮想線C2を有することで、クラッチギヤ59から本体部66までが別々に配置される構成に比べて、第2伝達経路56の設置スペースが小さくなるので、駆動伝達ユニット50を小型化できる。
【0062】
駆動伝達ユニット50によれば、クラッチギヤ59が第2伝達経路56の一部を構成せず、他の回転体を用いる構成に比べて、第2伝達経路56を形成するために必要な部品の数を減らすことができる。
また、駆動伝達ユニット50によれば、制御部26が、第1制御の状態において第2制御を選択し、又は第2制御の状態において第1制御を選択することで、第1ローラー34及び第2ローラー36の回転方向が切り替わるので、簡単な構成で第1ローラー34及び第2ローラー36の回転方向を切り替えることができる。
さらに、駆動伝達ユニット50によれば、第1ローラー34の回転方向と第2ローラー36の回転方向とが揃っているので、第1ローラー34及び第2ローラー36を同じ搬送経路の一例である反転路T5に配置することができる。なお、この際に、第1ローラー34の回転速度と第2ローラー36の回転速度とは同じでもよいし、異なっていてもよい。1の媒体Mを搬送する第1ローラー34の回転速度と第2ローラー36の回転速度とが同じ場合、1の媒体Mの姿勢を変えずに搬送しやすい。また、1の媒体Mを搬送する第1ローラー34の回転速度と第2ローラー36の回転速度とが異なる場合、1の媒体Mに張力を付与したり、1の媒体Mを撓ませたりしやすい。媒体Mに張力を付与する場合、媒体Mのカールを矯正することに駆動伝達ユニット50を用いることができる。例えば、搬送ローラー対29、31により媒体Mに張力を付与してもよい。媒体Mを撓ませる場合、媒体Mの斜行を補正することに駆動伝達ユニット50を用いることができる。例えば、搬送ローラー対27、28により媒体Mを撓ませてもよい。
【0063】
駆動伝達ユニット50によれば、駆動力を伝達する構成が第1ローラー34及び第2ローラー36に対してY方向の一方に偏って配置されることがないので、伝達部72を配置するスペースを確保し易くなる。
また、駆動伝達ユニット50によれば、第1制御及び第2制御の一方から他方に切り替えた場合、第1制御と第2制御との間の時間において、第1クラッチ57及び第2クラッチ65における駆動力Fの伝達が遮断されるので、一方の駆動力Fの伝達の遮断が不十分な状態で他方の駆動力Fの伝達が行われるのを防ぐことができる。
【0064】
駆動伝達ユニット50によれば、駆動ギヤ54が一方向の一例である-R方向のみに回転するので、正転及び逆転が可能なモーター51を用いずに媒体Mを搬送することができる。
また、駆動伝達ユニット50によれば、反転路T5において、第1ローラー34及び第2ローラー36によって媒体Mの搬送方向を切り替えられるので、反転路T5において1本のローラーのみを用いる構成に比べて、反転路T5の長さを長く設定することができる。
【0065】
駆動伝達ユニット50によれば、第1軸部33上で駆動力Fの伝達及び遮断を行えるので、第1クラッチ57が第1軸部33上に配置されない構成に比べて、第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えに要する時間を短くできる。
また、駆動伝達ユニット50によれば、媒体Mが無い状態において、第1ローラー34と対向ローラー42とでニップが形成され、第2ローラー36と対向ローラー44とでニップが形成される。このように、複数のニップが形成されるので、媒体Mに作用するニップ力を分散させることができる。これにより、媒体Mをニップすることにより媒体Mに付着したインクKがローラーに転写されることを低減できる。
プリンター1によれば、駆動伝達ユニット50と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0066】
[実施形態2]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態2の駆動伝達ユニット80及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図7に示されるように、実施形態2の駆動伝達ユニット80は、実施形態1の駆動伝達ユニット50(
図2)において、第2伝達経路56に代えて第2伝達経路81が設けられた点が異なる。他の構成については、駆動伝達ユニット50と同様である。
第2伝達経路81は、モーター51から第2軸部35へ駆動力が伝達される経路である。また、第2伝達経路81は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ57と、アイドラーギヤ83と、第2クラッチ84とから成る。つまり、アイドラーギヤ62、64及び第2クラッチ65(
図2)に代えて、アイドラーギヤ83及び第2クラッチ84が設けられた点が異なる。
アイドラーギヤ83は、Y方向に沿った軸部82の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ83の歯部は、クラッチギヤ59の歯部と、後述するクラッチギヤ86の歯部とに噛み合っている。
【0068】
第2クラッチ84は、第2切替部の一例であり、第2伝達経路81に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。ON状態が駆動力を伝達する状態を意味し、OFF状態が駆動力を遮断する状態を意味する。具体的には、第2クラッチ84は、電磁クラッチとして構成されており、本体部85と、クラッチギヤ86とを備える。
本体部85は、第4回転体の一例である。また、本体部85は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部85は、第2軸部35と一体となっている。第2軸部35の+Y方向の端部は、クラッチギヤ86の貫通孔に挿入される。
実施形態2の搬送ローラー対27、28、29、31において、ローラー27Aは、第1ローラーの一例である。ローラー28Aは、第2ローラーの一例である。ローラー27A及びローラー28Aは、駆動ローラーとして機能する。
第1クラッチ57及び第2クラッチ84は、Y方向において、ローラー27A及びローラー28Aに対する+Y方向に位置する。
【0069】
クラッチギヤ86には、不図示の金属板が設けられる。クラッチギヤ86は、第3回転体の一例である。本体部85及びクラッチギヤ86は、Y方向に沿った第2仮想線C2(
図2)を共通の中心軸線とする。
第2クラッチ84において本体部85に通電されていない場合、クラッチギヤ86は、本体部85とは連動せず、単独で第2軸部35の周りに回転可能である。
第2クラッチ84において本体部85に通電された場合、クラッチギヤ86は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部85と一体となり、第2軸部35の回転に伴って回転される。
【0070】
駆動伝達ユニット80において、ローラー27A及びローラー28Aは、第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えによって回転速度V1と回転速度V2とが切り替わる。回転速度V2は、回転速度V1よりも低速である。第1制御と第2制御との切り替えにおいて、回転方向は変わらない。
具体的には、クラッチギヤ86の歯数は、一例として、クラッチギヤ59の歯数の2倍ある。ローラー28Aの外径は、ローラー27Aの外径とほぼ同じ大きさである。伝達ギヤ78の歯数は、伝達ギヤ74の歯数と同じ数である。これにより、第1クラッチ57が駆動力を伝達する場合、ローラー27A及びローラー28Aの回転速度がそれぞれ回転速度V1となる。第2クラッチ84が駆動力を伝達する場合、ローラー27A及びローラー28Aの回転速度がそれぞれ回転速度V2となる。
【0071】
次に、実施形態2のプリンター1及び駆動伝達ユニット80の作用について説明する。なお、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
図7に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力を伝達する状態にある。第2クラッチ84は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。これにより、ローラー27A及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部72において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ78及びローラー28Aがそれぞれ+R方向に回転される。このとき、ローラー27Aの回転速度及びローラー28Aの回転速度は、それぞれ回転速度V1となる。
【0072】
一方、第2伝達経路81では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ86は+R方向に回転される。ここで、本体部85はローラー28Aの回転に伴って+R方向に一体で回転されるが、第2クラッチ84が駆動力Fの伝達を遮断された状態にあるので、本体部85とクラッチギヤ86とが干渉せず、それぞれ+R方向に回転される。このように、第1クラッチ57が駆動力Fを伝達する状態とされ、第2クラッチ84が遮断された状態では、伝達部72によって、ローラー27Aからローラー28Aへ駆動力が伝達される。そして、ローラー27A及びローラー28Aがそれぞれ+R方向に回転速度V1で回転される。
【0073】
図8に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。第2クラッチ84は、駆動力を伝達する状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。この時点では、本体部58は回転されない。
第2伝達経路81では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ86が+R方向に回転される。ここで、第2クラッチ84が駆動力を伝達する状態とされていることで、本体部85が+R方向に回転されるので、ローラー28A及び伝達ギヤ78がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部72において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ74及びローラー27Aがそれぞれ-R方向に回転される。
本体部58はローラー27Aの回転に伴って+R方向に一体で回転されるが、第1クラッチ57が遮断された状態にあるので、本体部58とクラッチギヤ59とが干渉せず互いに同方向に回転される。
このように、第1クラッチ57が遮断された状態で、且つ第2クラッチ84が駆動力を伝達する状態では、伝達部72によって、ローラー28Aからローラー27Aへ駆動力が伝達される。そして、ローラー27A及びローラー28Aがそれぞれ+R方向に回転速度V2で回転される。
【0074】
駆動伝達ユニット80によれば、制御部26が、第1制御の状態において第2制御を選択し、又は第2制御の状態において第1制御を選択することで、ローラー27A及びローラー28Aの回転速度が回転速度V1又は回転速度V2に切り替わるので、簡単な構成でローラー27A及びローラー28Aの回転速度を切り替えることができる。
【0075】
ここで、搬送ユニット10の搬送速度が切り替え可能な場合において、ローラー27A及びローラー28Aが、搬送ローラー対27及び搬送ローラー対28を構成する場合、ラインヘッド30における印刷速度を基準速度に対して低速にすることで、媒体Mの搬送方向における印刷解像度を高くすることができる。また、ラインヘッド30における印刷速度を基準速度に対して高速にすることで、スループットを高めることができる。
【0076】
一方、ローラー27A及びローラー28Aが、搬送ローラー対29及び搬送ローラー対31を構成する場合、排出直前の媒体Mの搬送速度を基準速度に対して低速にすることで、搬送路T3内での媒体上のインクKの乾燥時間を基準時間よりも長くして、媒体Mのカールの発生を抑制することができる。
なお、駆動伝達ユニット80の構成を、ローラー27A及びローラー28Aに代えて、第1ローラー34及び第2ローラー36に適用してもよい。
【0077】
[実施形態3]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態3の駆動伝達ユニット90及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1及び実施形態2と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
図9に示されるように、駆動伝達ユニット90は、搬送ローラー対29、31(
図1)におけるローラー27A及びローラー28Bと、第1クラッチ57と、第2クラッチ65と、伝達部95と、制御部26(
図2)とを備える。そして、駆動伝達ユニット90によって、ローラー27A及びローラー28Bに駆動力Fが伝達される。
【0079】
ローラー27Aは、第1ローラーの一例であり、Y方向に延びる第1軸部21を備え且つ媒体Mを搬送する。また、ローラー27Aは、片面印刷の場合に媒体Mの記録が行われない面と接触する。第1軸部21は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第1軸部21のY方向の両端部は、ベアリングを介して既述の本体フレームに回転可能に支持される。第1軸部21の-Y方向の端部は、伝達ギヤ74の貫通孔に挿入される。
ローラー28Bは、第2ローラーの一例であり、Y方向に延びる第2軸部25を備え且つ媒体Mを搬送する。また、ローラー28Bは、片面印刷の場合に媒体Mの記録が行われる面と接触する。第2軸部25は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第2軸部25のY方向の両端部は、ベアリングを介して既述の本体フレームに回転可能に支持される。第2軸部25の-Y方向の端部は、伝達ギヤ78の貫通孔に挿入される。
実施形態3において、ローラー27A及びローラー28Bは、駆動ローラーとして機能する。
【0080】
伝達部95は、Y方向において、ローラー27A及びローラー28Bに対する他方となる-Y方向に位置する。また、伝達部95は、ローラー27A及びローラー28Bの一方から他方へ駆動力Fを伝達する。伝達部95は、一例として、伝達ギヤ74と、アイドラーギヤ97と、アイドラーギヤ99と、伝達ギヤ78とから成る。
アイドラーギヤ97は、Y方向に沿った軸部96の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ97の歯部は、伝達ギヤ74の歯部及びアイドラーギヤ99の歯部と噛み合っている。
アイドラーギヤ99は、Y方向に沿った軸部98の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ99の歯部は、アイドラーギヤ97の歯部及び伝達ギヤ78の歯部と噛み合っている。
伝達部95は、ローラー27A及びローラー28Bを互いに逆向きとなる異なる方向に回転させる。駆動伝達ユニット90の各ギヤの外径は、ローラー27Aとローラー28Bが異なる回転方向にほぼ同じ回転速度で回転されるように設定される。
【0081】
第2伝達経路92は、モーター51から第2軸部25へ駆動力が伝達される経路である。また、第2伝達経路92は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ57と、アイドラーギヤ94と、第2クラッチ65とから成る。
アイドラーギヤ94は、Y方向に沿った軸部93の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ94の歯部は、クラッチギヤ59の歯部とクラッチギヤ67の歯部とに噛み合っている。
【0082】
次に、実施形態3のプリンター1及び駆動伝達ユニット90の作用について説明する。なお、実施形態1、2と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
図9に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。第2クラッチ65は、駆動力を伝達する状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。この時点では、本体部58は回転されない。
第2伝達経路92では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67が+R方向に回転される。ここで、第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態とされていることで、本体部66が+R方向に回転されるので、ローラー28B及び伝達ギヤ78がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部95において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ74及びローラー27Aがそれぞれ-R方向に回転される。
本体部58はローラー27Aの回転に伴って-R方向に一体で回転されるが、第1クラッチ57が遮断された状態にあるので、本体部58とクラッチギヤ59とが干渉せず互いに逆方向に回転される。
このように、第1クラッチ57が遮断された状態で、且つ第2クラッチ84が駆動力を伝達する状態では、伝達部95によって、ローラー28Bからローラー27Aへ駆動力が伝達される。そして、ローラー27A及びローラー28Bは、互いに異なる方向に回転される。
【0083】
図10に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力を伝達する状態にある。第2クラッチ65は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。これにより、ローラー27A及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部95において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ78及びローラー28Bがそれぞれ-R方向に回転される。
一方、第2伝達経路92では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67は+R方向に回転される。ここで、本体部66はローラー28Bの回転に伴って-R方向に一体で回転されるが、第2クラッチ65が駆動力Fの伝達を遮断された状態にあるので、本体部66とクラッチギヤ67とが干渉せず、それぞれ異なる方向に回転される。このように、第1クラッチ57が駆動力Fを伝達する状態とされ、第2クラッチ65が遮断された状態では、伝達部95によって、ローラー27Aからローラー28Bへ駆動力が伝達される。そして、ローラー27A及びローラー28Bは、互いに異なる方向に回転される。
【0084】
駆動伝達ユニット90によれば、ローラー27Aの回転方向とローラー28Bの回転方向が異なっているので、ローラー27Aとローラー28Bを異なる用途に用いることができる。
例えば、ローラー27Aとローラー28Bとで媒体Mを挟持して、媒体Mを搬送してもよいし、他のローラーを用いて媒体Mに折り加工をしたりしてもよい。また、例えば、搬送経路Tを挟んだ一方側にローラー27Aを配置し、搬送経路Tを挟んだ他方側にローラー28Bを配置することで、媒体Mに対して異なる方向からローラーを作用させてもよい。なお、この際に、ローラー27Aの回転速度とローラー28Bの回転速度とは同じでもよいし、異なっていてもよい。媒体Mを搬送するローラー27Aの回転速度とローラー28Bの回転速度とが同じ場合、媒体Mの姿勢を変えずに搬送しやすい。また、媒体Mを搬送するローラー27Aの回転速度とローラー28Bの回転速度とが異なる場合、媒体Mの重送を防ぎやすい。媒体Mの重送を防ぐために、搬送ローラー対7をローラー27Aとローラー28Bとにより構成してもよい。
なお、駆動伝達ユニット90の構成を、搬送ローラー対29、31に代えて、搬送ローラー対27、28のローラー27A及びローラー28Bに適用してもよい。
【0085】
[実施形態4]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態4の駆動伝達ユニット100及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1から実施形態3までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
図11に示されるように、駆動伝達ユニット100は、駆動伝達ユニット50(
図2)において、伝達部72(
図2)が伝達部102に置き換えられ、さらに、第3ローラー38を有する点が異なる。他の構成については、駆動伝達ユニット50と同様である。
第3ローラー38は、一例として、第2ローラー36に対する+Z方向(
図1)に配置される。また、第3ローラー38は、一例として、Y方向に延びる第3軸部37と4つのゴム部38Aとを備え且つ媒体Mを搬送する。第3軸部37は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第3軸部37の+Y方向の端部は、ベアリング112を介して既述の本体フレームに回転可能に支持される。4つのゴム部38Aは、円筒状に形成され、第3軸部37に取り付けられる。
このように、駆動伝達ユニット100は、伝達部102から駆動力を受けることで媒体Mを搬送する第3ローラー38を有する。
【0087】
伝達部102は、Y方向において、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38に対する他方となる-Y方向に位置する。また、伝達部102は、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38のいずれか1つから他の2つへ駆動力Fを伝達する。伝達部102は、一例として、伝達ギヤ74と、アイドラーギヤ76と、伝達ギヤ78と、アイドラーギヤ106と、伝達ギヤ108とから成る。
【0088】
第3軸部37の-Y方向の端部は、伝達ギヤ108の貫通孔に挿入される。
アイドラーギヤ106は、Y方向に沿った軸部104の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ106の歯部は、伝達ギヤ78の歯部及び伝達ギヤ108の歯部と噛み合っている。
駆動伝達ユニット100の各ギヤの外径は、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38が同じ回転方向にほぼ同じ回転速度で回転されるように設定される。
【0089】
次に、実施形態4のプリンター1及び駆動伝達ユニット100の作用について説明する。なお、実施形態1から実施形態3までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0090】
図12に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力を伝達する状態にある。第2クラッチ65は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。これにより、第1ローラー34及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部102において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ78、第2ローラー36、伝達ギヤ108及び第3ローラー38がそれぞれ+R方向に回転される。
【0091】
一方、第2伝達経路56では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67は-R方向に回転される。ここで、本体部66は第2ローラー36の回転に伴って+R方向に一体で回転されるが、第2クラッチ65が駆動力Fの伝達を遮断された状態にあるので、本体部66とクラッチギヤ67とが干渉せず、それぞれ異なる方向に回転される。このように、第1クラッチ57が駆動力を伝達する状態とされ、第2クラッチ65が遮断された状態では、伝達部102によって、第1ローラー34から第2ローラー36及び第3ローラー38へ駆動力が伝達される。そして、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38は、それぞれ+R方向に回転される。これにより、反転路T5(
図1)において、媒体Mが+Z方向に搬送される。
【0092】
図13に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。第2クラッチ65は、駆動力を伝達する状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。この時点では、本体部58は回転されない。
第2伝達経路56では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67が-R方向に回転される。ここで、第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態とされていることで、本体部66が+R方向に回転されるので、第2ローラー36及び伝達ギヤ78がそれぞれ-R方向に回転される。そして、伝達部102において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ74、第1ローラー34、伝達ギヤ108及び第3ローラー38がそれぞれ-R方向に回転される。
【0093】
本体部58は第1ローラー34の回転に伴って-R方向に一体で回転されるが、第1クラッチ57が遮断された状態にあるので、本体部58とクラッチギヤ59とが干渉せず互いに逆方向に回転される。このように、第1クラッチ57が遮断された状態で、且つ第2クラッチ65が駆動力を伝達する状態では、伝達部102によって、第2ローラー36から第1ローラー34及び第3ローラー38へ駆動力が伝達される。そして、伝達ギヤ74、第1ローラー34、伝達ギヤ108及び第3ローラー38は、それぞれ-R方向に回転される。これにより、反転路T5(
図1)において、媒体Mが-Z方向に搬送される。
【0094】
駆動伝達ユニット100によれば、第1伝達経路52及び第2伝達経路56の構成に影響を与えずに、第3ローラー38を設け且つ第3ローラー38の回転を制御できる。
【0095】
[実施形態5]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態5の駆動伝達ユニット120及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1から実施形態4までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0096】
図14に示されるように、駆動伝達ユニット120は、駆動伝達ユニット100(
図11)において、第3伝達経路122が追加された点が異なる。他の構成については駆動伝達ユニット100と同様である。第2伝達経路56の説明及び符号56の図示は省略する。
第3伝達経路122は、モーター51から第3軸部37へ駆動力Fを伝達する経路である。また、第3伝達経路122は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ57と、アイドラーギヤ62と、アイドラーギヤ64と、クラッチギヤ67と、アイドラーギヤ125と、第3クラッチ126とから成る。
アイドラーギヤ125は、Y方向に沿った軸部124の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ125の歯部は、クラッチギヤ67の歯部と、後述するクラッチギヤ128の歯部とに噛み合っている。
【0097】
第3クラッチ126は、第3切替部の一例であり、第3伝達経路122に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。ON状態が駆動力Fを伝達する状態を意味し、OFF状態が駆動力Fを遮断する状態を意味する。具体的には、第3クラッチ126は、電磁クラッチとして構成されており、本体部127と、クラッチギヤ128とを備える。
本体部127は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1(
図1)の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部127は、第3軸部37と一体となっている。第3軸部37の+Y方向の端部は、クラッチギヤ128の貫通孔に挿入される。
第1クラッチ57、第2クラッチ65及び第3クラッチ126は、Y方向において、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38に対する+Y方向に位置する。
【0098】
クラッチギヤ128には、不図示の金属板が設けられる。本体部127及びクラッチギヤ128は、Y方向に沿った第3仮想線C3を共通の中心軸線とする。
第3クラッチ126において本体部127に通電されていない場合、クラッチギヤ128は、本体部127とは連動せず、単独で第3軸部37の周りに回転可能である。
第3クラッチ126において本体部127に通電された場合、クラッチギヤ128は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部127と一体となり、第3軸部37の回転に伴って回転される。
また、クラッチギヤ128の歯数は、一例として、クラッチギヤ59の歯数の2倍あり、クラッチギヤ86の歯数の2倍ある。
【0099】
実施形態5のプリンター1では、制御部26(
図1)が、第1クラッチ57、第2クラッチ65及び第3クラッチ126のいずれか1つにおいて駆動力Fを伝達させ、残りの2つにおいて駆動力Fの伝達を遮断させる。
【0100】
次に、実施形態5のプリンター1及び駆動伝達ユニット120の作用について説明する。なお、実施形態1から実施形態4までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0101】
図15に示されるように、第1クラッチ57は、駆動力を伝達する状態にある。第2クラッチ65は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。第3クラッチ126は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。これにより、第1ローラー34及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。そして、伝達部102において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ78、第2ローラー36、伝達ギヤ108及び第3ローラー38がそれぞれ+R方向に回転される。
【0102】
一方、第3伝達経路122では、クラッチギヤ59が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ67は-R方向に回転される。第2クラッチ65が駆動力Fの伝達を遮断された状態にあるので、本体部66とクラッチギヤ67とが干渉せず、それぞれ異なる方向に回転される。
クラッチギヤ67が-R方向に回転されることで、クラッチギヤ128は-R方向に回転される。第3クラッチ126が駆動力Fの伝達を遮断された状態にあるので、本体部127とクラッチギヤ128とが干渉せず、それぞれ異なる方向に回転される。
このように、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38は、それぞれ+R方向に回転される。これにより、反転路T5(
図1)において、媒体Mが+Z方向に搬送される。
【0103】
図16に示されるように、第1クラッチ57及び第2クラッチ65は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。第3クラッチ126は、駆動力を伝達する状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ59が+R方向に回転される。この時点では、本体部58は回転されない。
第3伝達経路122では、クラッチギヤ67及びクラッチギヤ128が、それぞれ-R方向に回転される。ここで、第3クラッチ126が駆動力を伝達する状態とされていることで、本体部127が-R方向に回転されるので、第3ローラー38及び伝達ギヤ108がそれぞれ-R方向に回転される。そして、伝達部102において駆動力が伝達されることで、伝達ギヤ74、第1ローラー34、伝達ギヤ78及び第2ローラー36がそれぞれ-R方向に回転される。
【0104】
本体部58は、第1ローラー34の回転に伴って-R方向に一体で回転されるが、第1クラッチ57が遮断された状態にあるので、本体部58とクラッチギヤ59とが干渉せず互いに逆方向に回転される。このように、第1クラッチ57及び第2クラッチ65が遮断された状態で、且つ第3クラッチ126が駆動力Fを伝達する状態では、伝達部102によって、第3ローラー38から第1ローラー34及び第2ローラー36へ駆動力Fが伝達される。そして、伝達ギヤ74、第1ローラー34、伝達ギヤ78及び第2ローラー36は、それぞれ-R方向に回転される。これにより、反転路T5(
図1)において、媒体Mが-Z方向に搬送される。
なお、第2クラッチ65において、本体部66の回転方向とクラッチギヤ67の回転方向とが同じであるため、第2クラッチ65が駆動力Fを伝達する状態にあってもよい。
そして、クラッチギヤ128の歯数が、一例として、クラッチギヤ59の歯数やクラッチギヤ86の歯数よりも多いため、第3クラッチ126が駆動力Fを伝達する状態における搬送速度を、第2クラッチ65が駆動力Fを伝達する状態における搬送速度や、第1クラッチ57が駆動力Fを伝達する状態における搬送速度よりも、遅くすることができる。
【0105】
駆動伝達ユニット120によれば、第1クラッチ57、第2クラッチ65及び第3クラッチ126のいずれか1つにおいて駆動力Fが伝達される状態となるので、第1ローラー34の回転状態、第2ローラー36の回転状態及び第3ローラー38の回転状態を切り替えできる。
【0106】
[実施形態6]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態6の駆動伝達ユニット130及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1から実施形態5までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0107】
図17に示されるように、駆動伝達ユニット130は、駆動伝達ユニット120(
図15)において、第3伝達経路122(
図15)が第3伝達経路132に置き換えられた点が異なる。他の構成については駆動伝達ユニット120と同様である。第2伝達経路の説明は省略する。
第3伝達経路132は、モーター51から第3軸部37へ駆動力Fが伝達される経路である。また、第3伝達経路132は、一例として、駆動ギヤ54と、第1クラッチ136と、アイドラーギヤ142と、第2クラッチ144と、アイドラーギヤ125と、第3クラッチ126とから成る。
【0108】
第1クラッチ136は、第1切替部の一例であり、第3伝達経路132に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。具体的には、第1クラッチ136は、電磁クラッチとして構成されており、本体部137と、クラッチギヤ138とを備える。本体部137は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1(
図1)の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部137は、第1軸部33と一体となっている。第1軸部33の+Y方向の端部は、クラッチギヤ138の貫通孔に挿入される。
【0109】
第1クラッチ136において本体部137に通電されていない場合、クラッチギヤ138は、本体部137とは連動せず、単独で第1軸部33の周りに回転可能である。
第1クラッチ136において本体部137に通電された場合、クラッチギヤ138は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部137と一体となり、第1軸部33の回転に伴って回転される。
アイドラーギヤ142は、Y方向に沿った軸部141の周りに回転可能に設けられる。アイドラーギヤ142の歯部は、クラッチギヤ138の歯部と、後述するクラッチギヤ146の歯部とに噛み合っている。
【0110】
第2クラッチ144は、第2切替部の一例であり、第3伝達経路132に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。具体的には、第2クラッチ144は、電磁クラッチとして構成されており、本体部145と、クラッチギヤ146とを備える。本体部145は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1(
図1)の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部145は、第2軸部35と一体となっている。第2軸部35の+Y方向の端部は、クラッチギヤ146の貫通孔に挿入される。
【0111】
第2クラッチ144において本体部145に通電されていない場合、クラッチギヤ146は、本体部145とは連動せず、単独で第2軸部35の周りに回転可能である。
第2クラッチ144において本体部145に通電された場合、クラッチギヤ146は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部145と一体となり、第2軸部35の回転に伴って回転される。
クラッチギヤ146の歯部は、アイドラーギヤ142の歯部とアイドラーギヤ125の歯部とに噛み合っている。クラッチギヤ128の歯部は、アイドラーギヤ125の歯部と噛み合っている。
ここで、一例として、クラッチギヤ146の歯の数は、クラッチギヤ138の歯の数の1.5倍となっている。クラッチギヤ128の歯の数は、クラッチギヤ138の歯の数の2倍となっている。
【0112】
次に、実施形態6のプリンター1及び駆動伝達ユニット130の作用について説明する。なお、実施形態1から実施形態5までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0113】
図17に示されるように、第3クラッチ126は、駆動力Fを伝達する状態にある。第1クラッチ136及び第2クラッチ144は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ138が+R方向に回転されるが、駆動力Fの伝達が遮断されているので、本体部137は回転されない。
【0114】
第3伝達経路132では、クラッチギヤ138が+R方向に回転されることで、クラッチギヤ146は-R方向に回転されるが、駆動力Fの伝達が遮断されているので、本体部145は回転されない。そして、クラッチギヤ146が-R方向に回転されることで、クラッチギヤ128は+R方向に回転される。
ここで、第3クラッチ126は、駆動力Fを伝達する状態にあるので、第3ローラー38が+R方向に回転速度V3で回転され、伝達ギヤ108が+R方向に回転される。そして、伝達部102において駆動力Fが伝達されることで、伝達ギヤ78及び伝達ギヤ74がそれぞれ+R方向に回転される。これにより、第1ローラー34及び第2ローラー36がそれぞれ+R方向に回転速度V3で回転される。
【0115】
図18に示されるように、第1クラッチ136は、駆動力Fを伝達する状態にある。第2クラッチ144及び第3クラッチ126は、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある。
駆動ギヤ54が-R方向に回転された場合、第1伝達経路52では、クラッチギヤ138が+R方向に回転されることで、第1ローラー34が+R方向に回転速度V4で回転される。回転速度V4は、回転速度V3(
図17)のほぼ2倍の速度となる。
そして、伝達部102において駆動力Fが伝達されることで、伝達ギヤ78及び伝達ギヤ108がそれぞれ+R方向に回転される。これにより、第2ローラー36及び第3ローラー38がそれぞれ+R方向に回転速度V4で回転される。
第2クラッチ144及び第3クラッチ126では、駆動力Fの伝達が遮断されているので、本体部145とクラッチギヤ146、本体部127とクラッチギヤ128とがそれぞれ干渉されない。換言すると、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38のそれぞれの回転速度V4は、クラッチギヤ146の回転速度及びクラッチギヤ128の回転速度に影響されない。
【0116】
なお、図示は省略するが、第2クラッチ144が駆動力Fを伝達する状態にあり、第1クラッチ136及び第3クラッチ126が、駆動力Fの伝達が遮断される状態にある場合は、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38のそれぞれの回転速度は、回転速度V3のほぼ1.5倍となる。
このように、駆動伝達ユニット130では、第1ローラー34、第2ローラー36及び第3ローラー38のそれぞれの回転方向を同じ方向に揃えると共に、回転速度を低速、中速、高速の3段階で切り替えることができる。
【0117】
[実施形態7]
次に、本発明に係る駆動伝達装置及び液体吐出装置の一例である実施形態7の駆動伝達ユニット150及びプリンター1の各構成について、具体的に説明する。なお、実施形態1から実施形態6までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明及び個別の図番の記載を省略する場合がある。
【0118】
図19に示されるように、駆動伝達ユニット150は、実施形態1の駆動伝達ユニット50において、第1軸部33が第1軸部156に置き換えられ、伝達部72が伝達部152に置き換えられ、タイミングチャートが変更される。
第1軸部156は、Y方向沿った中心軸を有する円柱の棒状に形成される。第1軸部156のY方向の両端部は、ベアリングを介して既述の本体フレームに回転可能に支持される。なお、第1軸部156の-Y方向の端部の一部には、第1軸部156の中心CAに対する径方向であるdA方向に沿って、第1軸部156から張り出された張出部157が形成される。
張出部157は、一例として、第1軸部156の回転方向であるR方向に所定の厚さを有する板状に形成される。また、張出部157は、第1軸部156に対してdA方向の一方及び他方に均等に突出される。張出部157のR方向の一端には、側面157Aが形成される。張出部157のR方向の他端には、側面157Bが形成される。
【0119】
伝達部152は、一例として、伝達部72において、伝達ギヤ74が伝達ギヤ154に置き換えられた点が異なる。他の構成については伝達部72と同様である。
伝達ギヤ154は、時間差形成部の一例であり、伝達部152に設けられる。また、伝達ギヤ154は、伝達部152への駆動力Fの伝達時点に対して、第2軸部35(
図2)の回転の開始時点を遅らせる。具体的には、伝達ギヤ154には、Y方向から見て、第1軸部156が挿通される円形の貫通孔154Aが形成される。また、伝達ギヤ154には、Y方向から見て、中心CAに対して点対称に配置された扇形状の孔部158及び孔部159が形成される。
【0120】
孔部158及び孔部159において、扇形の中心角は、それぞれほぼ90°となっている。孔部158及び孔部159のそれぞれの内側には、張出部157が収納される。また、孔部158及び孔部159のR方向の一方には、側面157Aと接触可能な接触面158A、接触面159Aが形成される。孔部158及び孔部159のR方向の他方には、側面157Bと接触可能な接触面158B、接触面159Bが形成される。
ここで、第1軸部156の回転が開始された時点から、側面157Aと接触面158A、接触面159Aとが接触する時点までの間、あるいは、側面157Bと接触面158B、接触面159Bとが接触する時点までの間には、時間差が生じる。
【0121】
図20に示されるように、駆動伝達ユニット150では、一例として、第2クラッチ65がON状態からOFF状態となる時点と、第1クラッチ57がOFF状態からON状態となる時点とが、同じ時点t3に設定されている。
換言すると、制御部26(
図1)は、モーター51の動作中に第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えを行う。
【0122】
次に、実施形態7のプリンター1及び駆動伝達ユニット150の作用について説明する。なお、実施形態1から実施形態6までと共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0123】
駆動伝達ユニット150によれば、制御部26が第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えを瞬時に行ってしまったとしても、伝達ギヤ154が、駆動力Fの伝達時点に対して第2軸部35の回転の開始時点を遅らせるので、第1クラッチ57及び第2クラッチ65の一方の駆動力Fの伝達の遮断が不十分な状態で、他方の駆動力Fの伝達が行われるのを防ぐことができる。
また、駆動伝達ユニット150によれば、第1クラッチ57及び第2クラッチ65が同時に切り替え操作されても、伝達ギヤ154において駆動力Fの伝達に時間差が生じるので、駆動力Fの伝達経路における各ギヤの回転がロックされにくい。換言すると、第1制御及び第2制御の一方から他方への切り替えにおいてモーター51の動作を停止させずに済むので、第1ローラー34及び第2ローラー36が媒体Mを搬送する時間が長くなるのを抑制できる。
【0124】
本発明の各実施形態に係るプリンター1及び駆動伝達ユニット50、80、90、100、120、130、150は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0125】
図21には、実施形態1の第1クラッチ57(
図2)の変形例として、第1クラッチ164が示される。
第1クラッチ164は、第1切替部の一例であり、第1伝達経路52(
図2)に設けられ、駆動力Fの伝達と遮断とを切り替え可能に構成される。具体的には、第1クラッチ164は、電磁クラッチとして構成されており、本体部165と、クラッチギヤ166とを備える。そして、第1クラッチ164は、第1軸部33の径方向であるdB方向において駆動力Fの伝達及び該伝達の遮断の一方に切り替えを行う。
【0126】
本体部165は、第2回転体の一例である。また、本体部165は、Y方向から見て円環状に形成される。さらに、本体部165は、内部に不図示のコイルが設けられており、プリンター1の電源からの通電によって磁力を発生させる。また、本体部165は、第1軸部33と一体となっている。
クラッチギヤ166は、第1回転体の一例であり、Y方向から見て円環状に形成される。クラッチギヤ166の内径は、本体部165の外径よりも僅かに大きい。そして、クラッチギヤ166の内側に本体部165が配置されている。また、クラッチギヤ166には、不図示の金属板が設けられる。クラッチギヤ166の歯部は、駆動ギヤ54の歯部及びアイドラーギヤ62の歯部と噛み合っている。
【0127】
本体部165及びクラッチギヤ166は、第1仮想線C1を共通の中心軸線とする。また、クラッチギヤ166は、第2伝達経路56の一部を構成する。
第1クラッチ164において本体部165に通電されていない場合、クラッチギヤ166は、本体部165とは連動せず、単独で本体部165の周りに回転可能である。
第1クラッチ164において本体部165に通電された場合、クラッチギヤ166は、金属板が磁力によって引き付けられることで本体部165と一体となり、第1軸部33の回転に伴って回転される。
【0128】
第1クラッチ164を有する構成によれば、第1軸部33のdB方向に切り替え動作が行われる。換言すると、第1軸部33の軸方向に切り替え動作が行われない。これにより、第1軸部33の軸方向に第1クラッチ164の切り替え動作のためのスペースを確保しなくて済むので、第1クラッチ164のY方向における配置の自由度を上げることができる。
【0129】
[他の変形例]
前述の実施形態1~7を適宜組み合わせてもよく、さらに前述の実施形態1~7のそれぞれと、それらを任意に組み合わせたものに対して、以下の構成を加えたり置換したりしてもよい。
駆動伝達ユニット50、80、90、100、120、130、150が適用されるのは、プリンター1に限らない。例えば、電子写真方式の記録装置、原稿の画像を読み取る画像読取装置、記録後の媒体にパンチやステープルなどの後処理を行う後処理装置であってもよい。
また、プリンター1は、ラインヘッド30を有する構成に限らず、キャリッジに搭載されて媒体MのY方向に移動しながらインクを吐出するシリアルタイプのヘッドを有する構成でもよい。
【0130】
伝達ギヤ154は、伝達部152への駆動力Fの伝達時点に対して、第1軸部33の回転の開始時点を遅らせてもよい。
駆動ギヤ54を除いて、第2伝達経路の構成に第1伝達経路の構成が含まれていなくてもよい。つまり、駆動ギヤ54から第1伝達経路と第2伝達経路が分岐されていてもよい。同様に、駆動ギヤ54を除いて、第3伝達経路の構成に第1伝達経路の構成及び第2伝達経路の構成が含まれていなくてもよい。
第1伝達経路、第2伝達経路、第3伝達経路は、全体が環状に構成されてもよい。また、環状の伝達経路が第1伝達経路、第2伝達経路、第3伝達経路、第1切替部、第2切替部を備えていてもよい。
【0131】
駆動源は、モーター51のように駆動力Fを出力するものに限らず、他の装置から駆動力を受けるギヤでもよい。つまり、駆動源は、第1伝達経路、第2伝達経路、第3伝達経路に駆動力を伝達できるものであればよい。また、駆動源は、モーター51のように駆動ギヤ54を一方向のみに駆動するものに限らず、駆動ギヤ54を正転、反転させるモーターであってもよい。
第1切替部、第2切替部、第3切替部は、全て電磁クラッチで構成されるものに限らず、例えば、2つが電磁クラッチで、1つがトルクリミッターであってもよい。
【0132】
アイドラーギヤの数は、既述の各ローラーの回転方向が代わらない限り、奇数又は偶数の異なる数であってもよい。
第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーは、1本ずつに限らず、それぞれ少なくとも1本のローラーで構成されればよい。例えば、第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーがそれぞれ2本以上のローラーを有していてもよい。また、第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーが用いられる経路は、直線状や湾曲された搬送経路に限らず、シート折り曲げ経路のような非直線経路であってもよい。
第1切替部、第2切替部、第3切替部と、伝達部とは、第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーに対する一方にまとめられていてもよい。
第1軸部33と第1ローラー34、第2軸部35と第2ローラー36、第3軸部37と第3ローラー38は、それぞれ一体のもの、別体のもののどちらであってもよい。
【0133】
媒体Mは、記録用紙に限らず、例えば、インクのような液体であってもよい。また、媒体Mは、1種類のものに限らず、例えば、トレイのような搬送用の第1媒体の上に、CD、DVD、ブルーレイディスクのような記録用の第2媒体が載せられたり、挟まれたりしたものであってもよい。
第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーは、直接、媒体Mを搬送するものに限らず、例えば、無端状のベルトを周回移動が可能に支持することで媒体Mを間接的に搬送するものであってもよい。あるいは、チューブポンプにおいて液体を圧送するローラーとして用いられてもよい。
【0134】
スイッチバック経路は、一方向に搬送されてきた媒体が反対方向に逆搬送される経路に限らず、一方向に搬送される媒体が、逆搬送され処理された後、再度、一方向に搬送される排出経路を含む。
第2切替部が、第1軸部の径方向において駆動力の伝達及び該伝達の遮断の一方に切り替えを行う構成であってもよい。
第1ローラー、第2ローラー、第3ローラーについて、正転、逆転する構成と、速度を変更する構成とを組み合わせてもよい。
駆動伝達装置の制御部は、プリンター1の制御部26のように兼用されるものに限らず、単独で用いられる制御部であってもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…プリンター、2…装置本体、3…排出部、4…媒体カセット、6…ピックローラー、
7…搬送ローラー対、8…搬送ローラー対、9…手差トレイ、10…搬送ユニット、
11…搬送ローラー対、12…フラップ、13…媒体幅センサー、14…プーリー、
15…搬送ベルト、16…廃液貯留部、21…第1軸部、23…インクタンク、
25…第2軸部、26…制御部、27…搬送ローラー対、27A…ローラー、
27B…ローラー、28…搬送ローラー対、28A…ローラー、28B…ローラー、
29…搬送ローラー対、30…ラインヘッド、31…搬送ローラー対、33…第1軸部、
34…第1ローラー、34A…ゴム部、35…第2軸部、36…第2ローラー、
36A…ゴム部、37…第3軸部、38…第3ローラー、38A…ゴム部、
42…対向ローラー、44…対向ローラー、50…駆動伝達ユニット、51…モーター、
52…第1伝達経路、53…駆動軸、54…駆動ギヤ、56…第2伝達経路、
57…第1クラッチ、58…本体部、59…クラッチギヤ、61…軸部、
62…アイドラーギヤ、63…軸部、64…アイドラーギヤ、65…第2クラッチ、
66…本体部、67…クラッチギヤ、72…伝達部、74…伝達ギヤ、75…軸部、
76…アイドラーギヤ、78…伝達ギヤ、80…駆動伝達ユニット、81…第2伝達経路、
82…軸部、83…アイドラーギヤ、84…第2クラッチ、85…本体部、
86…クラッチギヤ、90…駆動伝達ユニット、92…第2伝達経路、93…軸部、
94…アイドラーギヤ、95…伝達部、96…軸部、97…アイドラーギヤ、98…軸部、
99…アイドラーギヤ、100…駆動伝達ユニット、102…伝達部、104…軸部、
106…アイドラーギヤ、108…伝達ギヤ、112…ベアリング、
120…駆動伝達ユニット、122…第3伝達経路、124…軸部、
125…アイドラーギヤ、126…第3クラッチ、127…本体部、
128…クラッチギヤ、130…駆動伝達ユニット、132…第3伝達経路、
136…第1クラッチ、137…本体部、138…クラッチギヤ、141…軸部、
142…アイドラーギヤ、144…第2クラッチ、145…本体部、
146…クラッチギヤ、150…駆動伝達ユニット、152…伝達部、
154…伝達ギヤ、154A…貫通孔、156…第1軸部、157…張出部、
157A…側面、157B…側面、158…孔部、158A…接触面、158B…接触面、
159…孔部、159A…接触面、159B…接触面、164…第1クラッチ、
165…本体部、166…クラッチギヤ、C1…第1仮想線、C2…第2仮想線、
C3…第3仮想線、CA…中心、K…インク、M…媒体、T…搬送経路、T1…搬送路、T2…搬送路、T3…搬送路、T4…搬送路、T5…反転路、V1…回転速度、
V2…回転速度、V3…回転速度、V4…回転速度