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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20240731BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240731BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W30/09
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021191918
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023078677
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悠平
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114087(JP,A)
【文献】特開2002-19490(JP,A)
【文献】特開2019-202586(JP,A)
【文献】特開2019-96235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定実行条件が成立したときに自車両の運転者に対する運転支援を提供する運転支援制御を実行する制御装置であって、前記運転支援制御を開始するタイミングが基準タイミングよりも遅くなるように前記所定実行条件を変更する支援遅延機能と、前記運転支援制御を開始するタイミングが前記基準タイミングよりも早くなるように前記所定実行条件を変更する積極支援機能と、を備えている制御装置を備えた車両運転支援装置において、
前記制御装置は、前記自車両の運転者から前記積極支援機能の作動が要求されているときには、前記支援遅延機能の作動が要求されていても、前記支援遅延機能を作動させないように構成されている、
車両運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運転支援装置において、
前記支援遅延機能は、前記運転支援制御による運転支援が不要となる可能性のある前記運転者による前記自車両に対する所定の運転操作が検知されたときに前記運転支援制御を開始するタイミングが前記基準タイミングよりも遅くなるように前記所定実行条件を変更する機能である、
車両運転支援装置。
【請求項3】
求項2に記載の車両運転支援装置において、
前記運転支援制御は、前記自車両がその前方の物体に衝突することを回避するために前記自車両を自動で減速させて停止させる減速停止制御であり、
前記所定の運転操作は、前記自車両と前記物体との衝突を回避するための前記運転者による前記自車両に対する運転操作である、
車両運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の車両運転支援装置において、
前記制御装置は、前記運転者が前記積極支援機能の作動を必要とすることを示す信号を前記運転者から受信した場合、前記積極支援機能の作動が要求されたと判定するように構成されている、
車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両がその前方の物体に衝突することを回避するために運転者に対して警報を行ったり自車両を自動で減速して停止させる減速停止を行ったりする衝突回避制御を運転支援制御として実行する車両運転支援装置が知られている。
【0003】
又、運転者が自車両と物体との衝突を回避するためのハンドル操作を行っていることが検知された場合に運転者に対する警報を開始するタイミングをそうしたハンドル操作が検知されていない場合のタイミング(通常のタイミング)よりも遅くする機能(支援遅延機能)を備えた車両運転支援装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-202586号公報
【発明の概要】
【0005】
例えば、高齢者等が運転者である場合、運転者に対する警報を通常のタイミングよりも早いタイミングで開始させたいという要請がある。そこで、そうした要請があった場合に運転者に対する警報を開始するタイミングを通常のタイミングよりも早める機能(積極支援機能)が付加された車両運転支援装置も知られているが、自車両が物体に接近してその物体と衝突する可能性が徐々に高まりつつあるときに、積極支援機能ではなく、支援遅延機能が作動されてしまうと、運転者が通常のタイミングよりも早いタイミングでの警報の開始を希望しているところ、通常のタイミングよりも遅いタイミングでしか警報が開始されず、好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、自車両の運転者の希望に沿った運転支援を運転者に提供することができる車両運転支援装置を提供することにある。
【0007】
本発明に係る車両運転支援装置は、所定実行条件が成立したときに自車両の運転者に対する運転支援を提供する運転支援制御を実行する制御装置であって、前記運転支援制御を開始するタイミングが基準タイミングよりも遅くなるように前記所定実行条件を変更する支援遅延機能と、前記運転支援制御を開始するタイミングが前記基準タイミングよりも早くなるように前記所定実行条件を変更する積極支援機能と、を備えている制御装置を備えている。前記制御装置は、前記自車両の運転者から前記積極支援機能の作動が要求されているときには、前記支援遅延機能の作動が要求されていても、前記支援遅延機能を作動させないように構成されている。
【0008】
運転者が積極支援機能の作動を要求しているときに支援遅延機能が作動してしまうと、運転支援制御を開始するタイミングが基準タイミングよりも早くなってしまい、運転者の希望に沿った運転支援を提供することができない。本発明によれば、積極支援機能の作動が要求されているときには、支援遅延機能の作動が要求されていても、支援遅延機能が作動されることはなく、その結果、積極支援機能が作動される。従って、運転者の希望に沿った運転支援を提供することができる。
【0009】
尚、本発明に係る車両運転支援装置において、前記支援遅延機能は、特に、前記運転支援制御による運転支援が不要となる可能性のある前記運転者による前記自車両に対する所定の運転操作が検知されたときに前記運転支援制御を開始するタイミングが前記基準タイミングよりも遅くなるように前記所定実行条件を変更する機能である。
【0010】
運転者が運転支援制御による運転支援を不要とする自車両に対する運転操作を行っているにもかかわらず、運転支援制御が開始されると、運転者が煩わしさを感じることがある。本発明によれば、運転支援制御による運転支援が不要となる可能性のある運転者による自車両に対する所定の運転操作が検知された場合、運転支援制御を開始するタイミングが基準タイミングよりも遅くされる。従って、運転者が煩わしさを感じることを回避することができる。
【0011】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記運転支援制御は、例えば、前記自車両がその前方の物体に衝突することを回避するために前記自車両を自動で減速させて停止させる減速停止制御である。この場合、前記所定の運転操作は、前記自車両と前記物体との衝突を回避するための前記運転者による前記自車両に対する運転操作である。
【0012】
運転支援制御が自車両がその前方の物体に衝突することを回避するために自車両を自動で減速させて停止させる減速停止制御である場合において、運転者が積極支援機能の作動を要求しているときに支援遅延機能が作動してしまうと、減速停止制御を開始するタイミングが基準タイミングよりも早くなってしまい、運転者の希望に沿った運転支援を提供することができない。本発明によれば、積極支援機能の作動が要求されているときには、支援遅延機能の作動が要求されていても、支援遅延機能が作動されることはなく、その結果、積極支援機能が作動される。従って、運転者の希望に沿った運転支援を提供することができる。
【0013】
又、本発明に係る車両運転支援装置において、前記制御装置は、例えば、前記運転者が前記積極支援機能の作動を必要とすることを示す信号を前記運転者から受信した場合、前記積極支援機能の作動が要求されたと判定するように構成されている。
【0014】
本発明によれば、運転者は、積極支援機能の作動を必要とすることを示す信号を発信することにより、積極支援機能の作動を要求することができる。
【0015】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置及びその車両運転支援装置が搭載された車両(自車両)を示した図である。
図2図2は、自車両とその前方の物体(車両)との間の距離等を示した図である。
図3図3の(A)は、自車両の予測走行領域を示した図であり、図3の(B)は、自車両の予測走行領域に物体(車両)が存在している場面を示した図である。
図4図4の(A)は、自車両の予測走行領域に存在する物体(車両)に自車両が近づいて警報条件が成立した場面を示した図であり、図4の(B)は、自車両の予測走行領域に存在する物体(車両)に自車両が更に近づいて減速停止条件が成立した場面を示した図である。
図5図5の(A)は、減速停止制御が開始された場面を示した図であり、図5の(B)は、減速停止制御により自車両が停止された場面を示した図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置について説明する。図1に示したように、本発明の実施形態に係る車両運転支援装置10は、自車両100に搭載されている。以下の説明において、「運転者」は、自車両100の運転者である。
【0018】
<ECU>
車両運転支援装置10は、制御装置としてのECU90を備えている。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。
【0019】
<車両走行装置>
自車両100には、車両走行装置20が搭載されている。車両走行装置20は、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23を備えている。
【0020】
<駆動装置>
駆動装置21は、自車両100を走行させるために自車両100に付加される駆動トルク(駆動力)を出力する装置であり、例えば、内燃機関及びモータ等である。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21の作動を制御することにより駆動装置21から出力される駆動トルクを制御することができる。
【0021】
<制動装置>
制動装置22は、自車両100を制動するために自車両100に付加される制動トルク(制動力)を出力する装置であり、例えば、ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22の作動を制御することにより制動装置22から出力される制動トルクを制御することができる。
【0022】
<操舵装置>
操舵装置23は、自車両100を操舵するために自車両100に付加される操舵トルク(操舵力)を出力する装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23の作動を制御することにより操舵装置23から出力される操舵トルクを制御することができる。
【0023】
<センサ等>
更に、自車両100には、アクセルペダル31、アクセルペダル操作量センサ32、ブレーキペダル33、ブレーキペダル操作量センサ34、ハンドル35、ステアリングシャフト36、操舵角センサ37、操舵トルクセンサ38、車速検出装置40、支援遅延要求装置50、受発信機60、警報装置70及び周辺情報検出装置80が搭載されている。
【0024】
<アクセルペダル操作量センサ>
アクセルペダル操作量センサ32は、アクセルペダル31の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。アクセルペダル操作量センサ32は、検出したアクセルペダル31の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてアクセルペダル31の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量AP及び自車両100の車速V100に基づいてドライバー要求駆動トルク(ドライバー要求駆動力)を演算により取得する。ドライバー要求駆動トルクは、運転者から駆動装置21に出力が要求されている駆動トルクである。ECU90は、ドライバー要求駆動トルクに相当する駆動トルクが出力されるように駆動装置21の作動を制御する。尚、ECU90は、後述する警報減速制御又は減速停止制御を実行する場合、アクセルペダル操作量APにかかわりなく、駆動装置21から出力させる駆動トルク(システム要求駆動トルク)を決定し、そのシステム要求駆動トルクに相当する駆動トルクが出力されるように駆動装置21の作動を制御する。
【0025】
<ブレーキペダル操作量センサ>
ブレーキペダル操作量センサ34は、ブレーキペダル33の操作量を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ブレーキペダル操作量センサ34は、検出したブレーキペダル33の操作量の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてブレーキペダル33の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいてドライバー要求制動トルク(ドライバー要求制動力)を演算により取得する。ドライバー要求制動トルクは、運転者から制動装置22に出力が要求されている制動トルクである。ECU90は、ドライバー要求制動トルクに相当する制動トルクが自車両100に付加されるように制動装置22の作動を制御する。尚、ECU90は、後述する警報減速制御又は減速停止制御を実行する場合、ブレーキペダル操作量BPにかかわりなく、自車両100に付加させる制動トルク(システム要求制動トルク)を決定し、そのシステム要求制動トルクに相当する制動トルクが自車両100に付加されるように制動装置22の作動を制御する。
【0026】
<操舵角センサ>
操舵角センサ37は、中立位置に対するステアリングシャフト36の回転角度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵角センサ37は、検出したステアリングシャフト36の回転角度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいてステアリングシャフト36の回転角度を操舵角θとして取得する。
【0027】
<操舵トルクセンサ>
操舵トルクセンサ38は、運転者がハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。操舵トルクセンサ38は、検出したトルクの情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて運転者がハンドル35を介してステアリングシャフト36に入力したトルクをドライバー入力トルクTQ_Dとして取得する。
【0028】
<車速検出装置>
車速検出装置40は、自車両100の走行速度を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置40は、ECU90に電気的に接続されている。車速検出装置40は、検出した自車両100の走行速度の情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報に基づいて自車両100の走行速度を車速V100として取得する。
【0029】
ECU90は、操舵角θ、ドライバー入力トルクTQ_D及び車速V100に基づいてドライバー要求操舵トルクを演算により取得する。ドライバー要求操舵トルクは、操舵装置23に出力が要求されている操舵トルクである。ECU90は、ドライバー要求操舵トルクに相当する操舵トルクが操舵装置23から出力されるように操舵装置23の作動を制御する。
【0030】
<支援遅延要求装置>
支援遅延要求装置50は、後述する運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも遅らせること(支援遅延)を要求したりその要求を解除したりするために運転者が操作する装置である。本例において、支援遅延要求装置50は、自車両100の運転席の周辺に設けられたボタン(支援遅延ボタン51)である。支援遅延ボタン51は、ECU90に電気的に接続されている。
【0031】
ECU90は、支援遅延ボタン51が運転者により操作されてオン状態(支援遅延を要求する状態)にされると、支援遅延が要求されたと認識する。一方、ECU90は、支援遅延ボタン51が運転者により操作されてオフ状態(支援遅延を要求しない状態)にされると、支援遅延が要求されていないと認識する。
【0032】
<受発信機>
受発信機60は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、運転者が所持している機器(携帯機器300)から発信される無線信号を受発信機60を介して受信することができる。又、ECU90は、受発信機60を介して無線信号を発信することができる。本例において、携帯機器300は、受発信装置を備えたスマートキー301である。
【0033】
ECU90は、運転者が自車両100に乗り込んだことを検知すると、受発信機60を介して特定の無線信号を発信する。スマートキー301は、ECU90が発信した無線信号を受信すると、特定の無線信号を発信する。このときにスマートキー301から発信される無線信号には、スマートキー301を識別するための信号(識別信号)及び積極支援を要求する信号(積極支援要求信号)が含まれている。詳細は後述するが、積極支援は、運転者に対して運転支援を提供する運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも早める運転支援である。
【0034】
ECU90は、スマートキー301が発信した無線信号を受信すると、その無線信号に含まれている識別信号に基づいてその無線信号を発信したスマートキー301が自車両100用のスマートキーとして登録されているスマートキー(登録スマートキー301R)であるか否かを判定する。本例において、スマートキー301は、登録スマートキー301Rであるので、ECU90は、スマートキー301が発信した無線信号を受信すると、スマートキー301が登録スマートキー301Rであると判定する。即ち、ECU90は、登録スマートキー301Rを検知する。
【0035】
又、本例において、スマートキー301は、車両運転支援装置10に積極支援を要求する機器であり、そのスマートキー301が発信した無線信号に積極支援要求信号が含まれているので、ECU90は、スマートキー301から発信された無線信号を受信すると、積極支援が要求されていると判定する。即ち、ECU90は、積極支援を行う機能(積極支援機能)の作動を必要とすることを示す信号(積極支援要求信号)をスマートキー301から受信した場合、積極支援機能の作動が要求されていると判定する。
【0036】
一方、ECU90は、登録スマートキーを検知しない場合、或いは、登録スマートキーを検知したが、その登録スマートキーが発信した無線信号に積極支援要求信号が含まれていない場合、積極支援が要求されていないと判定する。
【0037】
尚、運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも早めること(積極支援)を要求したりその要求を解除したりするために運転者が操作するボタンやスイッチ等の装置(積極支援要求装置)を自車両100の運転席の周辺に設け、その積極支援要求装置が運転者により操作された状態に応じて積極支援が要求されたか否かを判定するように車両運転支援装置10が構成されてもよい。
【0038】
<警報装置>
更に、自車両100には、警報装置70が搭載されている。警報装置70は、運転者に対する各種の警報を行う装置であり、本例においては、表示装置71及び音響装置72を備えている。
【0039】
<表示装置>
表示装置71は、各種の画像を表示する装置であって、例えば、いわゆるコンビネーションメーター内に設けられたディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ又はカーナビゲーション装置のディスプレイ等である。表示装置71は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、表示装置71に各種の画像を表示させることができる。
【0040】
<音響装置>
音響装置72は、各種の通知音、警報音、通知音声又は警報音声を出力する装置であって、例えば、ブザー又はスピーカーである。音響装置72は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、音響装置72から各種の通知音、警報音、通知音声又は警報音声を出力させることができる。
【0041】
<周辺情報検出装置>
周辺情報検出装置80は、自車両100の周辺の情報を検出する装置であり、本例においては、電波センサ81及び画像センサ82を備えている。電波センサ81は、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ等)である。画像センサ82は、例えば、カメラである。尚、周辺情報検出装置80は、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサやレーザーレーダ(LiDAR)等の光センサを備えていてもよい。
【0042】
<電波センサ>
電波センサ81は、ECU90に電気的に接続されている。電波センサ81は、電波を発信するとともに、物体で反射した電波(反射波)を受信する。電波センサ81は、発信した電波及び受信した電波(反射波)に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。別の言い方をすると、電波センサ81は、自車両100の周辺に存在する物体を検知し、その検知した物体に係る情報(検知結果)をECU90に送信する。ECU90は、その情報(電波情報)に基づいて自車両100の周辺に存在する物体に係る情報(周辺検出情報IS)を取得することができる。尚、本例において、物体は、車両、自動二輪車、自転車及び人等である。
【0043】
<画像センサ>
画像センサ82も、ECU90に電気的に接続されている。画像センサ82は、自車両100の周辺を撮像し、撮像した画像に係る情報をECU90に送信する。ECU90は、その情報(画像情報)に基づいて自車両100の周辺に関する情報(周辺検出情報IS)を取得することができる。
【0044】
ECU90は、図2に示したように、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在する場合、その前方物体200を周辺検出情報ISに基づいて検知する。尚、前方物体200は、車両、自動二輪車、自転車及び人等であり、図2に示した例においては、車両である。ECU90は、前方物体200を検知した場合、周辺検出情報ISに基づいて「その前方物体200と自車両100との間の距離(物体距離D200)」及び「前方物体200に対する自車両100の速度(相対速度ΔV200)」等を取得することができる。
【0045】
更に、ECU90は、周辺検出情報ISに基づいて「自車両100の走行車線(自車線LN)を規定する左側の区画線LM_L及び右側の区画線LM_R」を認識する。ECU90は、認識した左右区画線LM(即ち、左側の区画線LM_L及び右側の区画線LM_R)に基づいて自車線LNの範囲を特定することができる。
【0046】
<車両運転支援装置の作動の概要>
次に、車両運転支援装置10の作動の概要について説明する。
【0047】
車両運転支援装置10は、所定実行条件が成立したときに自車両100の運転者に対する運転支援を提供する運転支援制御を実行するように構成されている。以下で説明する車両運転支援装置10は、自車両100がその前方の物体に衝突することを回避するための衝突回避制御を運転支援制御として実行する車両運転支援装置であるが、本発明の技術思想は、所定実行条件が成立したときに自車両の運転者に対する運転支援を提供する運転支援制御であれば、以下で説明する衝突回避制御以外の運転支援制御を実行する車両運転支援装置にも適用可能である。
【0048】
本例において、衝突回避制御は、警報制御、警報減速制御及び減速停止制御を含んでいる。警報制御は、運転支援制御の1つであり、自車両100が前方の物体に衝突する可能性があることを運転者に知らせるための運転者への警報を行う制御である。又、警報減速制御も、運転支援制御の1つであり、自車両100が前方の物体に衝突する可能性があることを運転者に知らせるための自車両100の減速を行う制御である。又、減速停止制御も、運転支援制御の1つであり、前方の物体への自車両100の衝突を回避するための自車両100の停止を行う制御である。
【0049】
車両運転支援装置10は、自車両100の走行中、周辺検出情報ISに基づいて自車両100の進行方向前方の車両等の物体を検知するための処理を行っている。車両運転支援装置10は、自車両100の進行方向前方の物体を検知していない間は、通常走行制御を実行している。
【0050】
通常走行制御は、ドライバー要求駆動トルクがゼロよりも大きい場合、そのドライバー要求駆動トルクに相当する駆動トルクを駆動装置21から出力させ、ドライバー要求制動トルクがゼロよりも大きい場合、そのドライバー要求制動トルクに相当する制動トルクを制動装置22により自車両100に付加し、ドライバー要求操舵トルクがゼロよりも大きい場合、そのドライバー要求操舵トルクに相当する操舵トルクを操舵装置23から出力させる制御である。
【0051】
車両運転支援装置10は、自車両100の進行方向前方の物体(前方物体200)を検知すると、その物体が予測走行領域A100内に存在するか否かを周辺検出情報ISに基づいて判定する。予測走行領域A100は、図3の(A)に示したように、自車両100の予測走行ルートR100を中心として自車両100の幅に等しい幅を有する領域である。予測走行ルートR100は、自車両100がその時点の操舵角θを維持したまま走行したときに自車両100が今後、走行するものと予測される走行ルートである。従って、図3の(A)に示した予測走行ルートR100は、直線であるが、状況によっては、曲線であることもある。
【0052】
車両運転支援装置10は、検知した前方物体200が予測走行領域A100内に存在しない場合、通常走行制御を継続する。
【0053】
一方、車両運転支援装置10は、検知した前方物体200が予測走行領域A100内に存在する場合、警報条件C1が成立しているか否かを判定する。警報条件C1は、警報制御を実行する所定の条件(所定実行条件)であって、本例においては、衝突指標値ICが所定の値(第1判定値IC1)以下であるとの条件である。
【0054】
衝突指標値ICは、前方物体200に自車両100が衝突する可能性を表す値であり、前方物体200に自車両100が衝突する可能性が高くなるほど小さくなる。本例においては、車両運転支援装置10は、衝突指標値ICとして予測到達時間TTCを取得し、その予測到達時間TTCが所定の時間(第1判定時間TTC1)まで短くなった場合、警報条件C1が成立したと判定する。即ち、本例において、警報条件C1は、予測到達時間TTCが第1判定時間TTC1以下であるとの条件である。
【0055】
予測到達時間TTCは、自車両100が前方物体200に到達するまでに要すると予測される時間である。車両運転支援装置10は、物体距離D200を相対速度ΔV200で除算することにより予測到達時間TTCを取得する(TTC=D200/ΔV200)。従って、予測到達時間TTCは、相対速度ΔV200が一定である場合、自車両100が前方物体200に近づくほど短くなる。
【0056】
車両運転支援装置10は、予測走行領域A100内に前方物体200が存在している間、物体距離D200(前方物体200と自車両100との間の距離)、相対速度ΔV200及び予測到達時間TTCの取得を所定演算周期で行い、予測到達時間TTCを取得する毎に予測到達時間TTCが第1判定時間TTC1まで短くなったか否かの判定を行う。尚、車両運転支援装置10は、周辺検出情報ISに基づいて物体距離D200及び相対速度ΔV200を取得する。
【0057】
車両運転支援装置10は、予測到達時間TTCが第1判定時間TTC1まで短くなるまでは、通常走行制御を継続する。一方、車両運転支援装置10は、図4の(A)に示したように自車両100が前方物体200に近づき、予測到達時間TTCが第1判定時間TTC1まで短くなると、警報条件C1が成立したと判定する。
【0058】
<警報制御>
車両運転支援装置10は、警報条件C1が成立したと判定すると、警報制御を開始する。警報制御は、通知音(若しくは警報音)又は通知音声(若しくは警報音声)を警報装置70から出力させたり、通知画像(若しくは警報画像)を警報装置70に表示させたりする制御である。
【0059】
警報制御により警報装置70から出力される通知音(又は警報音)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在すること、又は、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があること等を運転者に気づかせるものである。又、警報制御により警報装置70から出力される通知音声(又は警報音声)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在することを表す音声、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があることを表す音声、又は、自車両100と前方の物体(前方物体200)との衝突を回避するために必要な運転操作を表す音声等である。
【0060】
又、警報制御により警報装置70に表示される通知画像(又は警報画像)は、自車両100の前方に物体(前方物体200)が存在することを文字又は図形等で表す画像、自車両100が前方の物体(前方物体200)に衝突する可能性があることを文字又は図形等で表す画像、又は、自車両100と前方の物体(前方物体200)との衝突を回避するために必要な運転操作を文字又は図形等で表す画像等である。
【0061】
尚、車両運転支援装置10は、警報制御の実行中、通常走行制御を継続する。
【0062】
<警報減速制御>
更に、車両運転支援装置10は、警報制御の開始後、警報減速条件C2が成立したか否かを判定する。警報減速条件C2は、所定の条件(所定実行条件)であって、本例においては、衝突指標値ICが第1判定値IC1よりも小さい所定の値(第2判定値IC2)以下であるとの条件である。特に、本例においては、警報減速条件C2は、予測到達時間TTCが第1判定時間TTC1よりも短い所定の時間(第2判定時間TTC2)以下であるとの条件である。
【0063】
車両運転支援装置10は、警報制御の開始後、警報減速条件C2が成立するまでの間は、通常走行制御を継続するが、自車両100が前方物体200に近づき、衝突指標値ICが第2判定値IC2まで小さくなった場合、警報減速条件C2が成立したと判定する。特に、本例においては、車両運転支援装置10は、予測到達時間TTCが第2判定時間TTC2まで短くなった場合、警報減速条件C2が成立したと判定する。
【0064】
車両運転支援装置10は、警報減速条件C2が成立した場合、警報減速制御を開始する。警報減速制御は、運転者によるアクセルペダル31に対する操作とは関係なく、自車両100に付加する駆動力を低下させて自車両100を減速させ、或いは、自車両100に付加する駆動力をゼロにするとともに自車両100に制動力を付加して自車両100を減速させる制御である。
【0065】
又、警報減速制御による自車両100の減速度は、前方物体200の手前で自車両100を停止させるほどの減速度ではなく、前方物体200が存在することを運転者に気づかせる程度(即ち、前方物体200の存在を運転者に認識させる程度)の減速度に制御される。従って、本例において、警報減速制御による自車両100の減速は、運転者に対する警報制御の1つでもある。
【0066】
尚、車両運転支援装置10は、警報減速制御の実行中も、警報制御を継続して実行するように構成されているが、減速停止制御を開始したときに警報制御を停止するように構成されてもよい。
【0067】
<減速停止制御>
更に、車両運転支援装置10は、警報減速制御の開始後、減速停止条件C3が成立したか否かを判定する。減速停止条件C3は、所定の条件(所定実行条件)であって、本例においては、衝突指標値ICが第2判定値IC2よりも小さい所定の値(第3判定値IC3)以下であるとの条件である。特に、本例においては、減速停止条件C3は、予測到達時間TTCが第2判定時間TTC2よりも短い所定の時間(第3判定時間TTC3)以下であるとの条件である。
【0068】
車両運転支援装置10は、図4の(B)に示したように自車両100が前方物体200に近づき、衝突指標値ICが第3判定値IC3まで小さくなった場合、減速停止条件C3が成立したと判定する。特に、本例においては、車両運転支援装置10は、予測到達時間TTCが第3判定時間TTC3まで短くなった場合、減速停止条件C3が成立したと判定する。
【0069】
車両運転支援装置10は、減速停止条件C3が成立した場合、減速停止制御を開始する。減速停止制御は、運転者のアクセルペダル31に対する操作又はブレーキペダル33に対する操作とは関係なく、自車両100に付加する駆動力をゼロにするとともに自車両100に強制的に制動力を付加して自車両100を前方物体200の手前で停止させる制御である。
【0070】
車両運転支援装置10は、減速停止制御を開始すると、前方物体200の手前で自車両100を停止させるために必要な自車両100の減速度を目標減速度として設定し、その目標減速度で自車両100が減速するように自車両100に付加する制動力を制御する。これにより、自車両100は、図5の(A)に示したように自車両100に付加される駆動力がゼロとされるとともに、自車両100に制動力が付加され始め、その後、図5の(B)に示したように前方物体200の手前で停止する。これにより、自車両100と前方物体200との衝突が回避される。
【0071】
車両運転支援装置10は、減速停止制御により自車両100を停止させると、自車両100に制動力を付加し続けることにより自車両100を停止させた状態に保持する停止保持制御を開始する。
【0072】
<支援遅延及び積極支援>
ところで、自車両100と前方物体200との衝突を回避するために運転者がブレーキペダル33を操作したにもかかわらず、警報制御等の運転支援制御が開始されると、運転者が煩わしさ感じることがある。このため、運転者が自車両100と前方物体200との衝突を回避するための運転操作(衝突回避運転操作)を開始したときに運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも遅らせること(支援遅延)を希望することがある。本例においては、車両運転支援装置10は、支援遅延を行う機能(支援遅延機能)を有しており、支援遅延を希望する運転者は、支援遅延ボタン51を操作してオン状態とすることにより、衝突回避運転操作を開始したときに支援遅延を実行することを車両運転支援装置10に要求することができる。言い方を換えると、運転者が操作することにより支援遅延ボタン51がオン状態とされると、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されたときに支援遅延を実行することが車両運転支援装置10に要求される。
【0073】
一方、自車両100の走行安全性をより高めるために運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも早めること(積極支援)を運転者が希望することもある。本例においては、車両運転支援装置10は、積極支援を行う機能(積極支援機能)を有しており、積極支援を希望する運転者は、登録スマートキー301Rを持って自車両100に乗り込むことにより、積極支援を実行することを車両運転支援装置10に要求することができる。言い方を換えると、運転者が登録スマートキー301Rを持って自車両100に乗り込むと、積極支援を実行することが車両運転支援装置10に要求される。
【0074】
ここで、登録スマートキー301Rを持って自車両100に乗り込んだ運転者は、当然ながら、積極支援を希望している。ところが、このとき、支援遅延ボタン51がオン状態のままになっていると、支援遅延の実行と積極支援の実行との両方が車両運転支援装置10に要求されることになるが、このとき、仮に積極支援により運転支援制御の開始タイミングを通常のタイミングよりも早いタイミングに設定していたとしても、運転支援制御が開始される前に運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されてしまうと、支援遅延により運転支援制御の開始タイミングが遅いタイミングに変更されてしまい、運転者の希望に沿った運転支援を提供することができない。
【0075】
そこで、車両運転支援装置10は、以下のように支援遅延及び積極支援を実行するようになっている。
【0076】
即ち、車両運転支援装置10は、支援遅延ボタン51がオン状態とされて支援遅延が要求されているときに積極支援が要求されていない場合には、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されたとき、支援遅延を実行する。別の言い方をすると、車両運転支援装置10は、支援遅延ボタン51がオン状態とされて支援遅延が要求されているときに積極支援が要求されていない場合には、衝突回避制御による運転支援が不要となる可能性のある運転者による自車両100に対する所定の運転操作を検知したとき、支援遅延を実行する。
【0077】
即ち、車両運転支援装置10は、第1判定値IC1、第2判定値IC2及び第3判定値IC3を小さくする支援遅延設定を実行する。特に、本例においては、車両運転支援装置10は、第1判定時間TTC1、第2判定時間TTC2及び第3判定時間TTC3を短くする支援遅延設定を実行する。
【0078】
より具体的には、車両運転支援装置10は、支援遅延が要求されているが積極支援が要求されていない場合において、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されていないときには、第1判定値IC1を基準となる値(第1基準判定値IC1_B)に設定し、第2判定値IC2を第1基準判定値IC1_Bよりも小さい基準となる値(第2基準判定値IC2_B)に設定し、第3判定値IC3を第2判定値IC2よりも小さい基準となる値(第3基準判定値IC3_B)に設定する。
【0079】
特に、本例においては、車両運転支援装置10は、支援遅延が要求されているが積極支援が要求されていない場合において、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されていないときには、第1判定時間TTC1を基準となる時間(第1基準判定時間TTC1_B)に設定し、第2判定時間TTC2を第1基準判定時間TTC1_Bよりも短い基準となる時間(第2基準判定時間TTC2_B)に設定し、第3判定時間TTC3を第2基準判定時間TTC2_Bよりも短い基準となる時間(第3基準判定時間TTC3_B)に設定する。
【0080】
この場合、警報制御等の運転支援制御は、通常のタイミング(基準タイミング)で開始される。
【0081】
一方、車両運転支援装置10は、支援遅延が要求されているが積極支援が要求されていない場合において、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されたときには、第1判定値IC1を第1基準判定値IC1_Bよりも小さい所定の値(第1支援遅延判定値IC1_D)に設定し、第2判定値IC2を第2基準判定値IC2_Bよりも小さく且つ第1支援遅延判定値IC1_Dよりも小さい所定の値(第2支援遅延判定値IC2_D)に設定し、第3判定値IC3を第3基準判定値IC3_Bよりも小さく且つ第2支援遅延判定値IC2_Dよりも小さい所定の値(第3支援遅延判定値IC3_D)に設定する。
【0082】
特に、本例においては、車両運転支援装置10は、支援遅延が要求されているが積極支援が要求されていない場合において、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定されたときには、第1判定時間TTC1を第1基準判定時間TTC1_Bよりも短い所定の時間(第1支援遅延判定時間TTC1_D)に設定し、第2判定時間TTC2を第2基準判定時間TTC2_Bよりも短く且つ第1支援遅延判定時間TTC1_Dよりも短い所定の時間(第2支援遅延判定時間TTC2_D)に設定し、第3判定時間TTC3を第3基準判定時間TTC3_Bよりも短く且つ第2支援遅延判定時間TTC2_Dよりも短い所定の時間(第3支援遅延判定時間TTC3_D)に設定する。
【0083】
これにより、警報制御等の運転支援制御は、通常のタイミング(基準タイミング)よりも遅いタイミングで開始されるようになる。
【0084】
又、車両運転支援装置10は、支援遅延ボタン51がオン状態とされて支援遅延が要求されているときに積極支援が要求されている場合には、積極支援を実行し、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定される状況が生じても、支援遅延を実行せずに、積極支援を継続する。
【0085】
即ち、車両運転支援装置10は、積極支援が要求されている場合、支援遅延が要求されていても、第1判定値IC1、第2判定値IC2及び第3判定値IC3を大きい値に設定する積極支援設定を実行し、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定される状況が生じても、支援遅延設定を実行せず、従って、第1判定値IC1乃至第3判定値IC3を大きい値に設定した状態を維持する。特に、本例においては、車両運転支援装置10は、積極支援が要求されている場合、支援遅延が要求されていても、第1判定時間TTC1、第2判定時間TTC2及び第3判定時間TTC3を長くする積極支援設定を実行し、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定される状況が生じても、支援遅延設定を実行せず、従って、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3を大きい値に設定した状態を維持する。
【0086】
より具体的には、車両運転支援装置10は、積極支援が要求されている場合、支援遅延が要求されていても、第1判定値IC1を第1基準判定値IC1_Bよりも大きい所定の値(第1積極支援判定値IC1_A)に設定し、第2判定値IC2を第2基準判定値IC2_Bよりも大きく且つ第1積極支援判定値IC1_Aよりも小さい所定の値(第2積極支援判定値IC2_A)に設定し、第3判定値IC3を第3基準判定値IC3_Bよりも大きく且つ第2積極支援判定値IC2_Aよりも小さい所定の値(第3積極支援判定値IC3_A)に設定し、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定される状況が生じても、第1判定値IC1乃至第3判定値IC3をそれぞれ第1積極支援判定値IC1_A乃至第3積極支援判定値IC3_Aに設定した状態を維持する。
【0087】
特に、本例においては、車両運転支援装置10は、積極支援が要求されている場合、支援遅延が要求されていても、第1判定時間TTC1を第1基準判定時間TTC1_Bよりも長い所定の時間(第1積極支援判定時間TTC1_A)に設定し、第2判定時間TTC2を第2基準判定時間TTC2_Bよりも長く且つ第1積極支援判定時間TTC1_Aよりも短い所定の時間(第2積極支援判定時間TTC2_A)に設定し、第3判定時間TTC3を第3基準判定時間TTC3_Bよりも長く且つ第2積極支援判定時間TTC2_Aよりも短い所定の時間(第3積極支援判定時間TTC3_A)に設定し、運転者が衝突回避運転操作を開始したと推定される状況が生じても、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1積極支援判定時間TTC1_A乃至第3積極支援判定時間TTC3_Aに設定した状態を維持する。
【0088】
これによれば、運転者がより早いタイミングでの警報等の運転支援の開始を希望しているときに、より早いタイミングで警報制御等の運転支援制御が開始される。
【0089】
尚、積極支援が要求されているときに支援遅延が要求されていなければ、車両運転支援装置10は、積極支援(積極支援設定)を実行する。
【0090】
尚、車両運転支援装置10は、例えば、ブレーキペダル操作量BPが所定の値以上になった場合、或いは、操舵角θが所定の値以上になった場合、或いは、操舵角θの角速度が所定の値以上になった場合、或いは、変速比を大きくするシフトレバーの操作が行われた場合、或いは、ウインカーレバーが操作されて自車両100を車線変更することが推定された場合、操舵回避運転操作が開始されたと推定するように構成される。
【0091】
又、上述した例においては、車両運転支援装置10は、支援遅延が要求されているときに積極支援が要求されていない場合、衝突回避運転操作が開始されたと推定されたときに支援遅延設定を実行するように構成されているが、衝突回避運転操作が開始されたと推定されたか否かに関係なく、支援遅延設定を実行するように構成されてもよい。
【0092】
以上が車両運転支援装置10の作動の概要である。
【0093】
尚、先に述べたように、本発明の技術思想は、上述した衝突回避制御以外の運転支援制御を実行する車両運転支援装置にも適用可能であり、衝突回避制御以外の運転支援制御は、例えば、自車両がその前方の物体に衝突することを回避するための警報制御及び自動操舵制御を実行する衝突回避制御(操舵衝突回避制御)、或いは、自車両が走行車線から逸脱することを防止するための警報制御及び自動操舵制御を実行する車線逸脱防止制御である。
【0094】
操舵衝突回避制御の警報制御は、運転支援制御の1つであり、自車両がその前方の物体に衝突する可能性があることを運転者に知らせるための運転者への警報を行う制御であり、操舵衝突回避制御の自動操舵制御も、運転支援制御の1つであり、前方の物体への自車両の衝突を回避するための自車両の操舵を行う制御である。
【0095】
又、車線逸脱防止制御の警報制御も、運転支援制御の1つであり、自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを運転者に知らせるための運転者への警報を行う制御であり、車線逸脱防止制御の自動操舵制御も、運転支援制御の1つであり、自車両を走行車線の中央に戻すための自車両の操舵を行う制御である。
【0096】
<車両運転支援装置の具体的な作動>
次に、車両運転支援装置10の具体的な作動について説明する。本発明の実施形態に係る車両運転支援装置10のECU90のCPUは、図6に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図6のステップ600から処理を開始し、その処理をステップ605に進め、運転支援終了条件C4が成立しているか否かを判定する。
【0097】
運転支援終了条件C4は、運転支援制御を終了する条件である。例えば、運転支援制御が上述した衝突回避制御である場合、運転支援終了条件C4は、運転者によるブレーキペダル33に対する操作により自車両100が停止されたとの条件、及び、運転者によるハンドル35に対する操作により前方物体200が予測走行領域A100内に存在しなくなったとの条件である。
【0098】
CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ650に進め、運転支援制御を終了し、本ルーチンの処理を一旦終了する。この場合、CPUは、そのときに警報制御を実行していれば、その警報制御を終了し、そのときに警報減速制御を実行していれば、その警報減速制御を終了し、そのときに減速停止制御を実行していれば、その減速停止制御を終了する。
【0099】
一方、CPUは、ステップ605にて「No」と判定した場合、処理をステップ610に進め、警報条件C1が成立しているか否かを判定する。CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ615に進め、警報制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ620に進め、警報減速条件C2が成立しているか否かを判定する。CPUは、ステップ620にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ625に進め、警報減速制御を実行する。その後、CPUは、処理をステップ630に進める。一方、CPUは、ステップ620にて「No」と判定した場合、処理をステップ630に直接進める。
【0100】
CPUは、ステップ630に処理を進めると、減速停止条件C3が成立しているか否かを判定する。CPUは、ステップ630にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ635に進め、警報減速制御及を停止するとともに、減速停止制御を実行する。次いで、CPUは、処理をステップ640に進め、自車両100が停止したか否かを判定する。
【0101】
CPUは、ステップ640にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ645に進め、警報制御及び減速停止制御を停止するとともに、停止保持制御を実行する。次いで、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。一方、CPUは、ステップ640にて「No」と判定した場合、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0102】
又、CPUは、ステップ610又はステップ630にて「No」と判定した場合、処理をステップ650に進め、衝突回避制御を終了する。次いで、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0103】
更に、CPUは、図7に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは、図7に示したルーチンのステップ700から処理を開始し、その処理をステップ705に進め、予測到達時間TTCがゼロよりも大きいか否かを判定する。即ち、CPUは、前方物体200を検知して予測到達時間TTCの演算を実行しているか否かを判定する。
【0104】
CPUは、ステップ705にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ710に進め、支援遅延が要求されているか否かを判定する。CPUは、ステップ710にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ715に進め、積極支援が要求されているか否かを判定する。CPUは、ステップ715にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ720に進め、積極支援設定を実行する。この場合、本例においては、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1積極支援判定時間TTC1_A乃至第3積極支援判定時間TTC3_Aに設定する。これにより、運転支援制御の開始タイミングが通常のタイミング(基準タイミング)よりも早くなる。その後、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0105】
一方、CPUは、ステップ715にて「No」と判定した場合、処理をステップ725に進め、衝突回避運転操作が開始されたと推定されるか否かを判定する。CPUは、ステップ725にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ730に進め、支援遅延設定を実行する。この場合、本例においては、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1支援遅延判定時間TTC1_D乃至第3支援遅延判定時間TTC3_Dに設定する。これにより、運転支援制御の開始タイミングが通常のタイミング(基準タイミング)よりも遅くなる。その後、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0106】
一方、CPUは、ステップ725にて「No」と判定した場合、処理をステップ735に進め、通常支援設定を実行する。この場合、本例においては、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1基準判定時間TTC1_B乃至第3基準判定時間TTC3_Bに設定する。これにより、運転支援制御の開始タイミングが通常のタイミング(基準タイミング)となる。その後、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0107】
又、CPUは、ステップ710にて「No」と判定した場合、処理をステップ740に進め、積極支援が要求されているか否かを判定する。CPUは、ステップ740にて「Yes」と判定した場合、処理をステップ745に進め、積極支援設定を実行する。この場合、本例においては、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1積極支援判定時間TTC1_A乃至第3積極支援判定時間TTC3_Aに設定する。これにより、運転支援制御の開始タイミングが通常のタイミング(基準タイミング)よりも早くなる。その後、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0108】
一方、CPUは、ステップ740にて「No」と判定した場合、処理をステップ750に進め、通常支援設定を実行する。この場合、本例においては、第1判定時間TTC1乃至第3判定時間TTC3をそれぞれ第1基準判定時間TTC1_B乃至第3基準判定時間TTC3_Bに設定する。これにより、運転支援制御の開始タイミングが通常のタイミング(基準タイミング)となる。その後、CPUは、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0109】
又、CPUは、ステップ705にて「No」と判定した場合、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0110】
以上が車両運転支援装置10の具体的な作動である。
【0111】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10…車両運転支援装置、20…車両走行装置、21…駆動装置、22…制動装置、40…支援遅延要求装置、41…支援遅延ボタン、60…受発信機、70…警報装置、80…周辺情報検出装置、90…ECU、100…自車両、200…前方物体、300…携帯機器、301…スマートキー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7