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特許7530055スリーブ,キャップ,スリーブの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】スリーブ,キャップ,スリーブの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 15/06 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E04G15/06 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020090171
(22)【出願日】2020-05-24
(65)【公開番号】P2021185287
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518110671
【氏名又は名称】安徳 博満
(73)【特許権者】
【識別番号】512008451
【氏名又は名称】浅野 美希
(73)【特許権者】
【識別番号】514328399
【氏名又は名称】Naruki Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】浅野 美希
(72)【発明者】
【氏名】安徳 博満
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3043839(JP,U)
【文献】国際公開第2019/189689(WO,A1)
【文献】特開平11-280254(JP,A)
【文献】特開平03-017352(JP,A)
【文献】特開2009-144465(JP,A)
【文献】特開平07-239060(JP,A)
【文献】特開2013-142247(JP,A)
【文献】実開平06-043141(JP,U)
【文献】特開平11-280255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体に貫通孔を形成するためのスリーブであって、
伸縮可能なスリーブ本体と、
このスリーブ本体の少なくとも一端に設けられる内キャップと、
この内キャップの外側に取り付けられる外キャップと、
によって構成されており、
前記スリーブ本体の端部周面と前記内キャップの周面との間に係合手段を設けるとともに、
前記内キャップには、前記係合手段を開放して前記内キャップと外キャップとを同時に取り外すための取外し手段を設け、
前記外キャップには、前記スリーブ本体を回動させたときに、前記外キャップに対して前記内キャップを締め付けるための回動ガイドを設けたことを特徴とするスリーブ。
【請求項2】
前記コンクリート構造体の梁に貫通孔を形成する場合に、
前記スリーブ本体の両端に、前記内キャップと外キャップを設けたことを特徴とする請求項1記載のスリーブ。
【請求項3】
前記コンクリート構造体の壁に貫通孔を形成する場合に、
前記スリーブ本体の両端に前記内キャップを設け、
前記スリーブ本体の一端においては、前記内キャップと同時に取り外すことができる外キャップを取り付け、
前記スリーブ本体の他端においては、コンクリートの侵入を防止する壁キャップを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のスリーブ。
【請求項4】
前記コンクリート構造体の床に貫通孔を形成する場合に、
前記スリーブ本体の下端においては、前記内キャップと、該内キャップと同時に取り外すことができる外キャップを取り付け、
前記スリーブ本体の上端においては、コンクリートの侵入を防止する床キャップを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のスリーブ。
【請求項5】
前記係合手段が、
前記スリーブ本体の端部周面に設けた切欠きと、前記内キャップの外周面に設けた突起であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項6】
前記コンクリート構造体を形成する型枠に前記外キャップを取り付けるための位置決めバーを備えており、
前記外キャップを前記位置決めバーにスライドして係合させるスライド溝を、前記外キャップの径方向に形成したことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項7】
前記スリーブ本体を、外スリーブと内スリーブによって構成し、それら両スリーブが重なることで伸縮する構造としたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項8】
前記外スリーブと内スリーブの重なり端部の隙間を覆うシールリングを設けたことを特徴とする請求項7記載のスリーブ。
【請求項9】
前記スリーブ本体の開口側端部であって、前記外キャップが設けられる側の端部にフランジを設け、該フランジに、前記スリーブ内部の気密性を保持するシールリングを設けたことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項10】
前記シールリングに、前記スリーブの用途を示す手段を設けたことを特徴とする請求項9記載のスリーブ。
【請求項11】
前記スリーブ本体の端部外側に、釘を打つための釘用ピースを取り付けたことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項12】
前記壁キャップの外周面と前記内キャップの内周面の間にシールリングを設けたことを特徴とする請求項3記載のスリーブ。
【請求項13】
前記壁キャップに、前記スリーブの用途を示す手段を設けたことを特徴とする請求項3もしくは12のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項14】
前記スリーブ本体を、下スリーブと上スリーブによって構成し、それら両スリーブが重なることで伸縮する構造とするとともに、
前記下スリーブに対して前記上スリーブを保持する保持機構を設けたことを特徴とする請求項4記載のスリーブ。
【請求項15】
前記下スリーブと上スリーブの重なり端部の隙間を覆うシールリングを設けたことを特徴とする請求項14記載のスリーブ。
【請求項16】
前記スリーブ本体の上端に、シールリングを有する環状枠を設けるとともに、この環状枠に前記床キャップを着脱可能に設けたことを特徴とする請求項4,14,15のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項17】
前記床キャップの外周面と前記環状枠の内周面の間にシールリングを設けたことを特徴とする請求項16記載のスリーブ。
【請求項18】
前記床キャップに、前記スリーブの用途を示す手段を設けたことを特徴とする請求項4,14~17のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項19】
前記床キャップは、前記スリーブの下側から入射した光を上側に透過する光透過手段を備えたことを特徴とする請求項4,14~18のいずれか一項に記載のスリーブ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のスリーブで使用するスリーブ本体であって、その端部周面に、前記内キャップの外周面に設けた突起が係合する切欠きを設けたことを特徴とするスリーブ本体。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載のスリーブで使用する内キャップであって、
前記スリーブ本体の端部周面と前記内キャップの周面との間に係合手段を設けるとともに、
前記内キャップの端面に、前記係合手段を開放するための取外し手段を設けたことを特徴とする内キャップ。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載のスリーブで使用する外キャップであって、
前記内キャップの取外し手段に作業者が指を掛けるための取外し窓が設けられたことを特徴とする外キャップ。
【請求項23】
請求項6記載のスリーブの設置方法であって、
型枠に位置決めバーを取り付ける工程,
該位置決めバーに前記外キャップを取り付ける工程,
該外キャップに、前記スリーブ本体の内キャップを取り付ける工程,
前記スリーブ本体を回動して、前記外キャップに対して前記内キャップを締め付ける工程,
を含むことを特徴とするスリーブの設置方法。
【請求項24】
前記内キャップ,外キャップ,位置決めバーを、取外し手段によって一体に取り外す工程を含むことを特徴とする請求項23記載のスリーブの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁や梁などのコンクリート構造体に、各種配管・配線類を挿通する貫通孔を形成するためのスリーブ,キャップ,スリーブの設置方法に関し、更に具体的には、スリーブの施工性や識別性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの建造物には、壁や梁などの部分に、各種配管や配線(ケーブル)類を通すための貫通孔が形成される。このような貫通孔は、通常、所定幅ないし長さの型枠の内面間にスリーブ(鞘管)を取り付け、その後、コンクリートを打設することにより形成される。前記貫通孔の長さは、必ずしも一定ではないため、前記スリーブの長さを調節可能とすることで貫通孔の長さに対応することを目的とした伸縮可能なスリーブが提案されている。また、前記型枠の内面に予めスリーブを固定するための受具を取り付けることによって、スリーブの設置作業を効率良く行うことを目的とした技術も提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、外スリーブと、該外スリーブ内に挿入可能な内スリーブとを有してなり、伸長時に前記外スリーブと内スリーブとの離脱を防止する係止手段を備えた建築工事用スライドスリーブが開示されている。また、下記特許文献2には、スリーブに外嵌する上方を開放した円弧状の立上がり片を形成した受け具本体の外周に釘孔を設けた突出片を複数個設け、内周にはスリーブに掛止する抜け防止用のアンカー片をそれぞれ設けたことを特徴とする設備工事用スリーブ受け具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-105226号公報
【文献】特開平9-291700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの背景技術に対し、本件発明者は、より施工性に優れ、コンクリート構造体の仕上がりが良好であるとともに、スリーブ内へのコンクリートの侵入防止に適したコンクリート貫通孔用スリーブを提案している(特許第5917155号)。これによれば、軸方向に伸縮可能に重なり合うそれぞれ1つ以上の内筒と外筒からなるスリーブ本体の両端内側に、一方の端部が前記型枠内面に当接可能な一対の固定保持具を、凹凸形状の嵌合により着脱可能に連結するとともに、前記固定保持具の外周面に設けた溝に一部が収容される弾性を有する気密体を、前記スリーブ本体の両端内面に密着させている。このようにすることで、型枠への取り付けや取り外しを容易にして施工性の改善を図るなどの優れた効果が得られる。
【0006】
しかしながら、スリーブ本体と、両端の固定保持具との連結が強固であることから、スリーブ内の止水性ないし気密性は良好に保たれるものの、取り外しに多少の時間を必要とする。また、特に床用スリーブにおいては、打設したコンクリートによってスリーブが隠されてしまうため、墨出しなどの方法でスリーブの位置を特定する必要があるが、スリーブの位置を簡便に特定できれば、好都合である。加えて、スリーブには、空調用,配管用,電気配線用など、各種あるが、それらを識別できると、更に好都合である。
【0007】
本発明は、以上のような点に着目したもので、その目的は、短時間で設置することができる施工性に優れたスリーブを提供することである。他の目的は、スリーブの用途を簡便に識別することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート構造体に貫通孔を形成するためのスリーブであって、伸縮可能なスリーブ本体と、このスリーブ本体の少なくとも一端に設けられる内キャップと、この内キャップの外側に取り付けられる外キャップとによって構成されており、前記スリーブ本体の端部周面と前記内キャップの周面との間に係合手段を設けるとともに、前記内キャップには、前記係合手段を開放して前記内キャップと外キャップとを同時に取り外すための取外し手段を設け、前記外キャップには、前記スリーブ本体を回動させたときに、前記外キャップに対して前記内キャップを締め付けるための回動ガイドを設けたことを特徴とする。
【0009】
前記コンクリート構造体を形成するための型枠に前記外キャップを取り付け、次に、該外キャップに対してスリーブ本体の内キャップを取り付けるとともに、前記スリーブ本体を回動させることにより、前記外キャップに対して前記内キャップを締め付けることで、配筋内にスリーブ本体を設置する。そして、型枠内にコンクリートを流し込んで養生した後に型枠を外し、更に、スリーブ本体と内キャップの係合を開放して、外キャップと内キャップがスリーブ本体から取り外される。これにより、コンクリート構造体にスリーブ本体が埋め込まれ、貫通孔が形成される。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。


【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スリーブ本体に対する係合手段と取外し手段を設けた内キャップを、スリーブ本体に予め設けるとともに、型枠に固定した外キャップに前記内キャップを取り付けることとしたので、型枠に対するスリーブの取付作業を、短時間で行うことができる。また、内キャップ及び外キャップをスリーブ本体から簡単に取り外すことができるので、施工性に優れている。更に、開口側のシールに着色等を施すことで、スリーブの用途を簡便に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は本発明の実施例1の全体構成を示す斜視図であり、その主要断面が(B)である。
図2】前記実施例1における内キャップ200の主要部の組み立ての様子を示す図である。
図3】前記実施例1における外キャップ400の主要部の組み立ての様子を示す図である。
図4】前記実施例1のスリーブの取付けの手順を示す図である。
図5】前記実施例1におけるキャップ取外しの様子を示す図である。
図6】本発明の実施例2を示す図である。
図7】本発明の実施例3を示す図である。
図8】前記実施例2及び実施例3の作用を示す図である。
図9】本発明の実施例4を示す図である。
図10】本発明の実施例4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に、図1図5を参照しながら本発明の実施例1を説明する。本実施例は、梁に本発明のスリーブを設置する場合の例である。図1(A)には、本実施例のスリーブ10の全体が示されており、その主要縦断面が(B)に示されている。また、主要部分が拡大して図2に示されている。これらの図において、スリーブ10は、スリーブ本体100と、その両端の内キャップ200を備えている。スリーブ本体100は、外スリーブ110と、内スリーブ120によって構成されており、外スリーブ110と内スリーブ120は、重なり領域130があり、それらの境界にシールリング302が設けられている。重なり領域130では、外スリーブ110と内スリーブ120とで径が異なっており、両者が重なるようになっている。一方、外スリーブ110と内スリーブ120の重なり領域130と反対側の開口部112,122の径は、異なっていてもよいが、同一径とすることで、同一の内キャップ200を使用することができる。
【0014】
次に、スリーブ本体100の開口部112,122には、端面にフランジ114,124が形成されており、端部周面に切欠き116,126がそれぞれ形成されている。切欠き116は、外スリーブ110の開口部112の周面に均等に設けられており、図示の例では、4つの切欠き116が設けられている。切欠き126についても同様である。
【0015】
次に、スリーブ本体100の開口部112,122には、内キャップ200が取り付けられている。なお、内キャップ200は、開口部112,122で外径が異なることがあるが、基本的な構成は共通するので、開口部112側で説明する。図2に拡大して示すように、内キャップ200は、環状枠210の外周に、複数の撓み台212が設けられており、これらの撓み台212の上に外側突起214が設けられている。撓み台212ないし外側突起214は、環状枠210の外周に、前記スリーブ本体100の開口部112の切欠き116に対応して等間隔に設けられており、外側突起214が切欠き116に係合するようになっている。
【0016】
前記撓み台212には、一対の腕220が環状枠210の中心方向に向かって延設されており、その先に取外しリング222がそれぞれ設けられている。取外しリング222は、指が入る大きさとなっており、指を引掛けて引くことができるようになっている。すなわち、スリーブ本体100の外側から取外しリング222に指をかけて引っ張ると、撓み台212が内側に撓み、外側突起214と切欠き116との係合が解除されるようになっている。更に、環状枠210の内側には、撓み台212に対応する位置に、内側突起230が設けられている。開口部122側の内キャップ200についても同様である。
【0017】
次に、上述した外スリーブ110の開口端部のフランジ114には、シールリング300が取り付けられている。図2(C)には、取付時の様子が示されており、シールリング300の断面は略コ字状となっており、フランジ114を内側から外側にかけてシールリング300が覆うようになっている。内スリーブ120側についても同様である。
【0018】
次に、本実施例では、図3に示すように、上述した内キャップ200に、外キャップ400が取り受けられるようになっている。外キャップ400は、環状枠410の径方向に十字腕402を設けた構成となっており、この十字腕402によって環状枠410の開口に4つの取外し窓406が形成されている。そして、内キャップ200に対して外キャップ400を取り付けて固定した状態で、前記4つの取外し窓406が、前記取外しリング222の位置と重なるように、別言すれば、取外し窓406から取外しリング222に指をかけることができるようになっている。十字腕402の一方の腕には、スライド溝420がほぼ直径の長さに形成されている。十字腕402の他方の腕には、釘452を打ち込むための釘穴404が適宜設けられている。一方、環状枠410の外周には、上述した環状枠210のの内側突起230と係合する回動ガイド430が等間隔に設けられている。なお、また、回転ガイド430に段差を設け、ラチェット機構を構成するようにしてもよい。
【0019】
上述した外キャップ400のスライド溝420は、位置決めバー450にスライドして取り付けられるようになっている。位置決めバー450は、釘452が打ち込まれる釘穴454が複数設けられており、コンクリートを流し込む型枠(後述)のスリーブ取付位置に取り付けられるようになっている。このような位置決めバー450の長手方向垂直の断面の形状と、スライド溝420の長手方向垂直の断面の形状の凹凸が嵌り合うようになっており、型枠に取り付けられた位置決めバー450に沿って、上述した外キャップ400のスライド溝420がスライドして取り付けられる。そして、取付後、外キャップ400が、釘452によって型枠に対して固定される。
【0020】
上述した外スリーブ110,内スリーブ120の素材としては、鉄管などの金属管が好適な例であるが、ボイド管などの紙管や樹脂管を用いてもよい。また、内キャップ200や外キャップ400も、同様に金属,樹脂,紙など適宜の素材を用いてよい。
【0021】
次に、図4も参照しながら、本実施例のスリーブ10の具体的な設置手順について説明する。まず、同図(A)に示すように、型枠20の対向する内面の設置部位に、上述した釘穴454に釘452を打ち込むことで、一方の位置決めバー450を取り付ける。図示の例では、右側の位置決めバー450が取り付けられている。このときの位置決めバー450の位置は、墨出しなどの方法で決定する。次に、位置決めバー450に対して、レーザ墨出し器を設置し、これを利用して中心位置を出すことで、反対側(図の左側)の位置決めバー450を型枠20に設置する。なお、位置決めバー450は、中心位置が正確であれば、その向きは垂直方向から多少傾いていてもよい。
【0022】
次に、同図(B)に示すように、以上のようにして型枠20に設置された位置決めバー450に対して、上述した外キャップ400を取り付ける。すなわち、位置決めバー450に対して外キャップ400のスライド溝420を嵌め込んでスライドさせることで、外キャップ400を取り付け、釘452で型枠20に固定する。
【0023】
次に、同図(C)に示すように、内キャップ200及びシールリング300が予め取り付けられたスリーブ本体100を、前記外キャップ400に対して取り付ける。すなわち、図3に示したように、型枠20側の外キャップ400に対して、環状枠210内に嵌まり込むように内キャップ200を取り付けるとともに、スリーブ本体100を回動させる。すると、内キャップ200の内側突起230と、外キャップ400の回動ガイド430とが係合し、内側突起230が回転ガイド430に沿って移動する。このとき、回転ガイド430が傾斜していることから、外キャップ400に対して内キャップ200が締め付けられるようになり、スリーブ本体100の回動が停止して固定される。
【0024】
次に、スリーブ本体100の外スリーブ110に対して内スリーブ120を伸長し、内スリーブ120側の内キャップ200を、型枠20の外キャップ400に対して同様に固定する。これにより、同図(D)の状態となり、型枠20の配筋30内へのスリーブ10の設置が完了する。
【0025】
次に、同図(E)に示すように、型枠20内にコンクリート40を打設する。コンクリート40の養生後、同図(F)に示すように、型枠20を脱型する。すると、スリーブ本体100の端面は、図5(A)に示すように、外キャップ400や位置決めバー450が露出するようになる。そして、この状態で、外キャップ400の取外し窓406から指をスリーブ本体100内に入れて、内キャップ200の取外しリング222に指をかけて引っ張ると、撓み台212が内側に撓み、外側突起214とスリーブ側の切欠き116との係合が解除され、図4(G)及び図5(B)に示すように、内キャップ200,外キャップ400,位置決めバー450の全体が、スリーブ本体100から取り外される。このとき、シールリング300も一緒に取り外す。なお、キャップ取外しの際に、必要があれば、釘452をスリーブ内に押し込むようにする。
【0026】
以上のように、本実施例によれば、次のような効果がある。
a,型枠20に位置決めバー450を位置決めしてこれに外キャップ400を取り付け、更にこの外キャップ400に対してスリーブ本体100側の内キャップ200を取り付けることとしたので、型枠20に落とし込まれた配筋30内に対して簡便にスリーブ10を設置することができ、型枠20に対するスリーブ10の取付作業を、短時間で行うことができる。
b,スリーブ本体100は空洞であり、またスリーブ自身に歪もあることから芯出しが困難であるが、外側突起214とスリーブ側の切欠き116,126とが4か所で係合することで、芯出しを行った場合と同様にスリーブ本体100の取付けを行うことができる。
c,型枠20を取り外した後は、取外しリング222を引き出すだけで、内キャップ200及び外キャップ400を、スリーブ本体100の開口部112,122から簡単に取り外すことができる。
d,取り外した内キャップ200,外キャップ400は、再利用することができ、経済的である。
e,スリーブ本体100の開口部112,122にシールリング300を設けるとともに、外スリーブ110と内スリーブ120の重なり端部の隙間を覆うように、シールリング302を取り付けることとしたので、スリーブ10内へのコンクリート40の侵入が良好に防止される。
f,スリーブ10の両端のシールリング300に、空調用,ガスや水道の配管用,電気配線用などの用途毎に異なる着色,模様,文字,記号などの表示を付けることで、簡単に用途を知ることができる。
【実施例2】
【0027】
次に、図6を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。本実施例は、壁に本発明のスリーブを適用する場合の例である。本実施例のスリーブ12の一方の端部には、上述した内キャップ200,シールリング300,外キャップ400が取り付けられる。これに対し、他方の端部には、図6(A)に示す内キャップ202及び壁キャップ401が取り付けられる。内キャップ202は、上述した内キャップ200と比較して、内側に内ネジ250が設けられている点で異なる。
【0028】
壁キャップ401は、外周に外ネジ460が設けられており、前記内ネジ250と螺合するようになっている。更に、壁キャップ401の外周面と前記内キャップ202の内周面の間にシールリング462が設けられており、内キャップ202に壁キャップ401を回転しながら取り付けると、シールリング462によってコンクリート40がスリーブ内に入り込まないようになっている。壁キャップ401の外面には、エンボス464が設けられており、強度の向上を図ったり、回転するときに作業者が指を掛けられるようになっている。壁キャップ401は、作業者や作業車両によって圧力が加わるといったことはないので、後述する床キャップ500のような強度は不要である。
【0029】
次に、スリーブ12の設置手順を説明すると、まず、スリーブ12の一端には内キャップ200及びシールリング300を予め取り付けておき、他端には内キャップ202を取り付けておく。他方、壁用の一方の型枠22,配筋32に対して、外キャップ400を取り付ける(図6(B)参照)。このとき、位置決めバー450を使用してもよいし、使用しなくてもよい。そして、この外キャップ400に対して、スリーブ12の一端の内キャップ200を取り付ける(同図(C)参照)。シールリング300は、予めスリーブ12側に取り付けておく。この手順は、上述した実施例1と同様である。
【0030】
一方、スリーブ12の反対側には、内キャップ202に壁キャップ401を、内ネジ250と外ネジ460を螺合させて取り付けられる(同図(D)参照)。スリーブ12に、内キャップ202,シールリング300,壁キャップ401を予め取り付けておいてもよい。この状態で、反対側の型枠24を設置し(同図(E)参照)、コンクリート40を打設する。コンクリート40の養生後、同図(F)に示すように、型枠22,24を脱型する。その後、スリーブ12の一端からは、上述した実施例1と同様に内キャップ200,シールリング300,外キャップ400の全体が取り外される(同図(F)参照)。次に、スリーブ12の他端からは、まず壁キャップ401が回転して取り外され(同図(G)参照)、次に内キャップ202が取り外される。
【0031】
このように、壁の場合は、一方の型枠22が設けられた後に、配筋32中にスリーブ12が設置され、その後他方の型枠24が設けられる。このため、型枠24側では、型枠24ではなく、内キャップ202に壁キャップ401が取り付けられる。壁キャップ401を使用することで、型枠24が後から取り付けられる場合でも、良好にコンクリート40の侵入を防ぎつつ、スリーブ12を設置することができる。
【実施例3】
【0032】
次に、図7図8を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。本実施例は、床に本発明のスリーブを適用する場合の例である。本実施例のスリーブ14のスリーブ本体101は、図7(A)に示すように、下スリーブ111と上スリーブ121との間に、高さ保持機構800が周方向に等間隔で複数設けられている。高さ保持機構800は、下スリーブ111の外側面に設けられたナット受け802と、上スリーブ121の外側面に設けられたボルト受け804と、このボルト受け804から下方に延設されてナット受け802を貫通するボルト806と、このボルト806に螺合しており、前記ナット受け802に当接しているナット808とによって構成されている。ナット808がナット受け802に当接していることから、ナット808を回転させると、相対的にボルト806が上下動し、上スリーブ121が下スリーブ111に対して相対的に上下動する。これにより、床の厚みに応じて、スリーブ本体101を伸縮させることができる。
【0033】
下側の型枠26に対する下スリーブ111側の端部開口は、上述した実施例1又は2と同様であり、内キャップ200,シールリング300,外キャップ400,必要があれば位置決めバー450を取り付ける点は、上記実施例2と同様である。
【0034】
一方、上スリーブ121側の端部開口には、環状枠600がシールリング610を挟んで取り付けられている(同図(B)参照)。環状枠600は、内周側に段部602が設けられており、この段部602に、同図(C)に示す床キャップ500が取り付けられるようになっている。床キャップ500の主面510には、複数の凹又は凸による滑止め512が形成されており、外周にはシールリング514が設けられている。また、係合突起516も設けられており、前記環状枠600の段部602に形成された係合突起606と係合するようになっている。また、床キャップ500の主面510は透明となっている。これら床キャップ500及び環状枠600は、作業者や作業車による圧力が加わるため、比較的肉厚で頑丈に作られている。
【0035】
次に、スリーブ14の設置手順を説明すると、まず、スリーブ14の下端には内キャップ200及びシールリング300を予め取り付けておき、上端には床キャップ500及び環状枠600を予め取り付けておく。また、高さ保持機構800によって、スリーブ本体101を伸縮し、床の厚みに応じた寸法に調整する。他方、床用の型枠26,配筋34に対して、外キャップ400を取り付ける(図7(A)参照)。このとき、必要があれば、位置決めバー450を使用してもよい。そして、この外キャップ400に対して、スリーブ14の下端の内キャップ200を取り付ける。この手順は、上述した実施例2と同様である。
【0036】
次に、同図(D)に示すように、コンクリート40を打設する。コンクリート40の養生後、同図(E)に示すように、型枠26を脱型する。その後、スリーブ14の下端から、上述した実施例2と同様に内キャップ200,シールリング300,外キャップ400の全体が取り外される。一方、スリーブ14の上側は、作業者や作業車による圧力が加わるため、通常は、床キャップ500及び環状枠600は、そのまま取り付けた状態とする。しかし、必要が生じたときは、床キャップ500が取り外される。すなわち、床キャップ500の表面に設けた穴518に、回転具520の先端を嵌め込んで回転具520を回すことで、環状枠600から床キャップ500を取り外す。
【0037】
図8には、上記スリーブ14を、床スラブ620に取り付けた様子が示されている。なお、壁スラブ622には、上述した実施例2のスリーブ12が取り付けられている。工事現場では、照明灯624が必要に応じて用意されるが、本実施例によれば、床キャップ500が透明であることから、照明灯624の光が、床下から床上に漏れるようになり、夜間でもスリーブ14の位置を知ることができる。また、床キャップ500に、空調用,ガスや水道の配管用,電気配線用などの用途毎に異なる着色,模様,文字,記号などの表示を付けることで、簡単に用途を知ることができるので、作業性の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0038】
次に、図9及び図10を参照しながら、実施例4について説明する。まず、図9(A)は、上述したシールリング302の断面を示している。上述したように、シールリング302は、外スリーブ110と、内スリーブ120の重なり端部の隙間を覆うように取り付けられる。本実施例のシールリング302は、大径部304と小径部306を備えている。そして、大径部304は、外スリーブ110に対して滑らないようになっているのに対し、小径部306は、多少滑るように内径がそれぞれ設定されている。これにより、外スリーブ110に対して、内スリーブ120がスライドし、全体として伸縮可能となっている。
【0039】
図9(B)は、上述した内キャップ200の外側突起214の開口による切欠き116を、凸形状の切欠き117とした例である。切欠き126についても同様である。このようにすることで、切欠き117からのスリーブ内部へのコンクリートの流入が更に防止されるようになる。切欠き126についても同様である。
【0040】
図10(A)は、上述した実施例を示しており、スリーブ110の外周に4つの切欠き116が設けられている。これに対し、同図(B)は、切欠き116の数を3つとした例である。このように、切欠き116の数は、必要に応じて増減してよい。同図(C)は、前記実施例で示した外スリーブ110,内スリーブ120に、例えば国際出願PCT/JP2019/013867に開示された釘用ピース900を設けた例である。扇状の釘用ピース900には、同図(D)に示すように、釘を挿入する釘穴902が斜め方向に設けられており、上述したシールリング300の厚みを考慮した取付け位置に設けられている。型枠20や配筋30の状況によっては、内キャップ200及び外キャップ400のみでは、スリーブ本体100を良好に固定できないことがある。そのような場合には、各スリーブ110,120の釘用ピース900の釘穴902から釘452を挿通して、型枠20に打ち込むことで、スリーブ本体100を固定する。なお、釘用ピース900は、スリーブ110,120に対して着脱自在としてもよい。
【0041】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、形成する貫通孔の形状・寸法に応じて適宜変更可能である。例えば、前記実施例では、外側突起214,取外しリング222,内側突起230,回動ガイド430を4つ設けたが、個数は必要に応じて増減してよい。また、それらの周方向の間隔も、必ずしも等間隔である必要はなく、適宜の間隔としてよい。
(2)スリーブ10,12,14の各部などに、作業方向や作業手順を示す矢印などの表示を付すようにしてもよい。
(3)前記実施例では、内キャップ200の内側突起230と、外キャップ400の回動ガイド430とが係合し、内側突起230が傾斜した回転ガイド430に沿って移動することで、外キャップ400を内キャップ200に取り付けるようにしたが、例えばネジ式や凹凸の係合(図7(B)参照)など、各種の方法を適用してよい。
(4)スリーブ本体100の伸縮構造としては、前記実施例の他、上述した背景技術など、各種の構造としてよい。
(5)本発明のスリーブの利用によって形成される貫通孔は、梁,壁,床などが好適な適用例であるが、これに限定されるものではなく、他の公知の各種のコンクリート構造体全般に、本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、スリーブ本体に対する係合手段と取外し手段を設けた内キャップを、スリーブ本体に予め設けるとともに、型枠に固定した外キャップに前記内キャップを取り付けることとしたので、型枠に対するスリーブの取付作業を、短時間で行うことができる。また、内キャップ及び外キャップをスリーブ本体から簡単に取り外すことができるので、施工性に優れており、建築物における配管用などの貫通穴形成に好適である。
【符号の説明】
【0043】
10,12,14:スリーブ
20,22,24,26:型枠
30,32,34:配筋
40:コンクリート
100,101:スリーブ本体
110:外スリーブ
111:下スリーブ
112,122:開口部
114,124:フランジ
116,126,117:切欠き
120:内スリーブ
121:上スリーブ
122:開口部
130:領域
200,202:内キャップ
210:環状枠
212:台
214:外側突起
220:腕
222:リング
230:内側突起
250:内ネジ
300,302:シールリング
304:大径部
306:小径部
400:外キャップ
401:壁キャップ
402:十字腕
404:釘穴
406:取外し窓
410:環状枠
420:スライド溝
430:回動ガイド
450:バー
452:釘
454:釘穴
460:外ネジ
462:シールリング
464:エンボス
500:床キャップ
510:主面
514:シールリング
516:係合突起
518:穴
520:回転具
600:環状枠
602:段部
606:係合突起
610:シールリング
620:床スラブ
622:壁スラブ
624:照明灯
800:保持機構
802:ナット受け
804:ボルト受け
806:ボルト
808:ナット
900:釘用ピース
902:釘穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10