(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】TRPV1活性抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/744 20060101AFI20240731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K36/744
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019219448
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 曜
(72)【発明者】
【氏名】田所 修平
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-110557(JP,A)
【文献】総説:漢方方剤の最新知見(6),薬理と臨床,2008年,第18巻第1号,pp. 53-60
【文献】一丸貿易製造開発部,特集/植物性成分とその抽出物, FRAGRANCE JOURNAL,津野田 勲 ▲C▼フレグランス ジャーナル社
【文献】ク,化粧品原料辞典 ,日本ケミカルズ株式会社社長 日本サーフアクタントエ業株式会社社長 東色ピグメント株式会社社長
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/744
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/NAPRALERT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クチナシの
熱水抽出物を含有することを特徴とするTRPV1活性抑制剤
(但し、鎮痛、感覚刺激低減、体感温度低減、頻尿改善に適用するものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クチナシの抽出物を含有することにより、TRPV1活性抑制作用に優れた外用剤及び内用剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
TRPV1は、カプサイシン、熱などに感受性を有するイオンチャネルである(非特許文献1)。また、TRPV1の活性化は、炎症性疼痛や感覚刺激、頻尿と関連していることが知られている。したがって、炎症性疼痛の鎮痛剤や感覚刺激の低減剤、頻尿の改善剤として、TRPV1の活性を阻害する物質の臨床治験が進められているが、より安全性が高く臨床応用に適したTRPV1活性阻害剤が求められている。
【0003】
クチナシ(アカネ科クチナシ属、学名Gardenia jasminoides)は、梅雨時にジャスミンに似た甘い香りのある純白の花を咲かせる植物である。これまでに、クチナシには、コラゲナーゼ阻害作用(特許文献1)、ATP産生促進作用(特許文献2)、セラミド産生促進作用(特許文献3)が報告されている。しかしながら、これまでにTRPV1活性抑制作用を有することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-2813号公報
【文献】特開2009-256272号公報
【文献】特開2002-370998号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】中川貴之、「痛みの受容機構と新規鎮痛薬創製の可能性」、生化学、公益社団法人日本生化学会、平成25年7月25日、第85巻、第7号、p.561-565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クチナシの抽出物に、TRPV1活性抑制作用を見出し、安全で安定性に優れた、TRPV1活性抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)~(5)からなる。
【0008】
(1)クチナシの抽出物を含有することを特徴とするTRPV1活性抑制剤。
(2)クチナシの抽出物を含有することを特徴とする鎮痛剤。
(3)クチナシの抽出物を含有することを特徴とする感覚刺激低減剤。
(4)クチナシの抽出物を含有することを特徴とする体感温度低減剤。
(5)クチナシの抽出物を含有することを特徴とする頻尿改善剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いるクチナシは、アカネ科クチナシ属のクチナシ(学名:Gardenia jasminoides)であり、高さは30~60センチくらいになり、夏季に白色の花を咲かせ、ジャスミンのような芳香を漂わせる。果実は生薬に使用され、「サンシシ」と呼ばれる。
【0010】
本発明におけるクチナシの抽出物とは、クチナシの花、実(果実)、種子、葉、茎、根等の植物体の一部又は全草を抽出したものである。好ましくは、実(果実)が良い。その抽出温度は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであってもよいし、常温抽出したものであってもよい。また、抽出には、植物体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってもよい。
【0011】
抽出方法は、特に限定されないが、水もしくは熱水、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用い、撹拌又はカラム抽出する方法等により行うことができる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールがよい。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いてもよい。特に好ましい抽出溶媒としては、水、又は水-エタノール系の混合極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばクチナシの全草(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0012】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0013】
本発明は、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分が含有されていてもよい。
【0014】
本発明のTRPV1活性抑制剤は、TRPV1の活性を抑制するための有効成分としてクチナシの抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
前記TRPV1は、一過性受容体電位チャネルの1つである。TRPV1を活性化させる要因としては、カプサイシン、カンフル、プロトンなどによる化学刺激、熱覚刺激(43℃前後の刺激)、痛み刺激、機械刺激などの刺激による細胞外から細胞内へのナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの陽イオンの透過などが挙げられる。
【0016】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の外用剤、錠菓、カプセル剤、チョコレート、ガム、飴、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤、坐剤、注射用溶液等の内用剤が挙げられる。
【0017】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、特に限定されないが、固形物に換算して0.1重量%以上が好ましく、0.1~1重量%がより好ましい。
【0018】
内用の場合、摂取量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なる。通常、成人1人当たりの1日の摂取量としては、5mg以上が好ましく、10mg~5gがより好ましい。さらに、20mg~2gが最も好ましい。
【0019】
クチナシの抽出物が有するTRPV1活性抑制作用は、TRPV1発現細胞にクチナシの抽出物存在下でTRPV1アゴニストを曝露し、曝露前後の細胞内カルシウム濃度を測定することにより、その変化量を算出できる。さらに、クチナシの抽出物非存在下でTRPV1アゴニストを曝露した場合の細胞内カルシウム濃度変化量で除することにより評価することができる。
【0020】
TRPV1発現細胞は、例えば、内因性TRPV1を発現している感覚神経の細胞、脳の細胞、膀胱上皮の細胞などの野生型の細胞であってもよく、TRPV1をコードする核酸がヒト胎児腎細胞HEK293細胞等の培養細胞に導入された外因性TRPV1発現細胞であってもよい。
【0021】
前記被験物質の接触前後のTRPV1発現細胞の細胞内カルシウム濃度の変化は、例えば、カルシウム指示薬Cal-520(AAT Bioquest社製)をTRPV1発現細胞に処理し、Cal-520が取り込まれたTRPV1発現細胞内のカルシウムイオンと結合したカルシウム指示薬の量を継時的に測定することによって測定することができる。この場合、細胞内カルシウム濃度の変化は、励起波長(490nm)における525nmの蛍光強度に基づいて測定することができる。
【0022】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す%とは重量%を示す。
【実施例1】
【0023】
クチナシの抽出物の製造例
クチナシの抽出物を以下の通り製造した。製造例1~4において抽出材料にはクチナシの実を用いた。
【0024】
(製造例1)クチナシの熱水抽出物の調製
クチナシの実の乾燥物10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥したクチナシの熱水抽出物を1.4g得た。
【0025】
(製造例2)クチナシの50%エタノール抽出物の調製
クチナシの実の乾燥物10gを200mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固したクチナシの50%エタノール抽出物を1.1g得た。
【0026】
(製造例3)クチナシのエタノール抽出物の調製
クチナシの実の乾燥物10gを200mLのエタノールに室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固したクチナシのエタノール抽出物を0.6g得た。
【0027】
(製造例4)クチナシのヘキサン抽出物の調製
クチナシの実の乾燥物10gを200mLのヘキサンに室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固したクチナシのヘキサン抽出物を0.4g得た。
【0028】
(処方例1) 化粧水
処方 含有量(%)
1.クチナシの熱水抽出物(製造例1) 2.0
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0029】
(処方例2) クリーム
処方 含有量(%)
1.クチナシの50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【0030】
(処方例3) 乳液
処方 含有量(%)
1.クチナシの50%エタノール抽出物(製造例2) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【0031】
(処方例4) ゲル剤
処方 含有量(%)
1.クチナシのエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3-ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~5と、成分6~11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0032】
(処方例5) パック
処方 含有量(%)
1.クチナシのヘキサン抽出物(製造例4) 1.0
2.クチナシの50%エタノール抽出物(製造例2) 5.0
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~11を均一に溶解し製品とする。
【0033】
(処方例6) ファンデーション
処方 含有量(%)
1.クチナシのヘキサン抽出物(製造例4) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分10~13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14~17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。油相に水相をかき混ぜながら加え、乳化する。その後、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
(処方例7) 浴用剤
処方 含有量(%)
1.クチナシのエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を均一に混合し製品とする。
【0035】
(処方例8) 軟膏
処方 含有量(%)
1.クチナシの熱水抽出物(製造例1) 5.0
2.クチナシのヘキサン抽出物(製造例4) 1.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3~6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7~9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
(処方例9) 散剤
処方 含有量(%)
1.クチナシのエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.乾燥コーンスターチ 39.0
3.微結晶セルロース 60.0
[製造方法]成分1~3を混合し、散剤とする。
【0037】
(処方例10) 錠剤
処方 含有量(%)
1.クチナシの50%エタノール抽出物(製造例2) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1~4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0038】
(処方例11) 錠菓
処方 含有量(重量%)
1.クチナシの50%エタノール抽出物(製造例2) 2.0
2.乾燥コーンスターチ 49.8
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 0.1
7.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~4及び7を混合し、顆粒成型する。成型した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0039】
(処方例12) 飲料
処方 含有量(重量%)
1.クチナシの熱水抽出物(製造例1) 0.05
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2及び3を少量の水に溶解する。次いで、成分1、4及び5を加えて混合する。
【実施例2】
【0040】
実験例 ヒトTRPV1発現HEK293細胞を用いた被験物質の感覚刺激活性化に及ぼす影響の評価
まず、ヒトTRPV1をコードするcDNA(MN_080704.4に示される塩基配列の276位~2795位のポリヌクレオチド)を、pcDNA3.1(+)(Thermo Fisher Scientific社製)のマルチクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPV1発現ベクターを構築した。構築したヒトTRPV1発現ベクターを、Lipofectamine 3000 Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてHEK293細胞にトランスフェクション法により遺伝子導入した。HEK293細胞は、10% FBSを含むDMEM(nacalai社製)を用いて培養した。薬剤選択により安定発現株を樹立し、ヒトTRPV1発現細胞を樹立した。
【0041】
次に、当該細胞を96-well plate(黒、透明底)に1ウェルあたり10万個ずつ播種し、10% FBSを含むDMEMにて24時間培養後(培養液量はウェル内に100μL)、ウェル内の培地を除き、10μM カルシウム指示薬Cal-520及び0.04%Pluronic F-127(sigma-aldrich社製)を含むHHBS(Hanks′ Buffer with 20 mM Hepes)を添加し、37℃、5%CO2下にて60分間インキュベート後、室温にてさらに30分間インキュベートを行った。その後、ウェル内のカルシウム指示薬混合液を除き、被験物質としてクチナシの抽出物を最終濃度0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.0%となるようにHHBS中に溶解させて添加した。
【0042】
TRPV1アゴニストであるカプサイシン(sigma-aldrich社製)曝露前に、プレートリーダーにて、励起波長490nm、蛍光波長525nmの条件で蛍光強度を測定した。曝露前測定後、TRPV1アゴニストとしてカプサイシンを最終濃度20μM及び被験物質としてクチナシの抽出物を最終濃度0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.0%となるようにHHBS中に溶解させてそれぞれ曝露し、4秒毎の蛍光強度を10分間測定した。測定結果を解析した結果、カプサイシン曝露群では顕著な蛍光強度の増強が認められ、さらに、クチナシの抽出物含有群では、クチナシの抽出物非含有群と比較して、蛍光強度の濃度依存的な抑制が認められた(表1)。
【0043】
【0044】
以上の結果から、本発明のクチナシの抽出物は、TRPV1の活性を効果的に抑制する作用を有し、安定性にも優れていた。このことから、TRPV1の活性化が関与する痛みなどが生じた部位に本発明のTRPV1活性抑制剤を適用することにより、より高い鎮痛効果を得ることが期待されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のクチナシの抽出物は、TRPV1の活性を効果的に抑制する作用を有し、安定性にも優れていた。したがって、本発明のTRPV1活性抑制剤は、鎮痛作用を有する外用剤、TRPV1の活性化に関連する状態の緩和剤等の他、食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待できる。