(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】連続撹拌槽型反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 19/18 20060101AFI20240731BHJP
B01F 33/45 20220101ALI20240731BHJP
B01J 3/03 20060101ALI20240731BHJP
B01J 3/04 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B01J19/18
B01F33/45
B01J3/03 A
B01J3/04 A
B01J3/04 G
B01J3/04 H
(21)【出願番号】P 2020025656
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月4日から同年同月6日にかけて開催された「JASIS2019」において連続撹拌槽型反応器を展示した。 令和1年9月6日に開催された「第12回FlowSTワークショップ・第1回FlowST展示会」において連続撹拌槽型反応器を展示した。 令和1年12月2日に開催された「マイクロプロセス最前線」において連続撹拌槽型反応器を展示すると共に、連続撹拌槽型反応器を紹介するチラシを設置した。 令和1年12月6日に開催された「岡山マイクロリアクターネット」において連続撹拌槽型反応器を展示すると共に、連続撹拌槽型反応器を紹介するチラシを設置した。
(73)【特許権者】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
(72)【発明者】
【氏名】小谷 研太朗
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸之
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192384(JP,A)
【文献】特表2004-525752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/18
B01F 29/00-33/87
B01F 35/00-35/95
B01J 3/03
B01J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の穴から構成される複数の反応槽を有する下部材と、複数の反応槽を密閉するための耐圧部材と、耐圧部材と下部材との間に配置されるパッキンと、上記パッキン及び耐圧部材を下部材との間に挟み込むように螺子により固定される上部材とを有する連続撹拌槽型反応器であり、
パッキン及び耐圧部材を挟み込んで上部材と下部材とを螺子で固定し、パッキンの上端が耐圧部材の底面に接触し、パッキンの下端が下部材の上面に接触した状態で、上部材と下部材との間には隙間が形成されており、この状態から前記螺子をさらに締め込むことができる
ものであり、
下部材は、第1の段差と第2の段差とを備えており、第1の段差に比して第2の段差は
低い位置にあり、
第1の段差と第2の段差との間には耐圧部材の受面が配されており、
上部材と下部材とを締結していない状態において、パッキンは第2の段差の下端と同じ
位置にある反応槽の縁面の上に配置されており、パッキンの上端が耐圧部材の受面よりも
高い位置にあり、
螺子を締めこむことにより、前記耐圧部材を下降させて、前記耐圧部材の底面でパッキ
ンを圧縮させて、前記受面に耐圧部材の底面を接触させることにより、耐圧部材の下降を
制限する連続撹拌槽型反応器。
【請求項5】
上部材と耐圧部材とは、一体の部材である請求項1ないし4の何れかに記載の連続撹拌槽
型反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続撹拌槽型反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、複数の反応槽を有する連続撹拌槽型反応器(以下、単に槽型反応器と呼ぶ。)が知られている。特許文献1の槽型反応器は、卓上で使用することができるものであり、マグネチックスターラーを利用して、反応槽に入れた撹拌子を駆動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の槽型反応器では、本体と固定部との間に円盤状の弾性材等を挟んだ状態で本体と固定部とを螺子により固定する。円盤状の弾性部材の中央には、貫通孔が設けられている。このため、特許文献1の槽型反応器では、貫通孔から気体や液体が漏出するため、加圧条件下で反応を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、加圧条件下で所望の反応を行うことが可能であり、耐圧部材とパッキンとを強く圧接させて耐圧性を高めることが可能な槽型反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
有底の穴から構成される複数の反応槽を有する下部材と、複数の反応槽を密閉するための耐圧部材と、耐圧部材と下部材との間に配置されるパッキンと、上記パッキン及び耐圧部材を下部材との間に挟み込むように螺子により固定される上部材とを有する連続撹拌槽型反応器であり、パッキン及び耐圧部材を挟み込んで上部材と下部材とを螺子で固定し、パッキンの上端が耐圧部材の底面に接触し、パッキンの下端が下部材の上面に接触した状態で、上部材と下部材との間には隙間が形成されており、この状態から前記螺子をさらに締め込むことができる連続撹拌槽型反応器により、上記の課題を解決する。上記の槽型反応器では、上部材と下部材との間に耐圧部材とパッキンとを挟み螺子を締結した状態において、上部材と下部材との間に隙間が形成される。この隙間が存在することにより、上部材は、下部材に妨げられることなく、下部材に接近する方向に変位させることが可能になり、螺合した際に耐圧部材を下部材に対して強く圧接させることができる。パッキンは、下部材に設けれる凹部に配置される構成とすると、パッキンの位置が定まりやすく、またパッキンの位置がずれにくくなるので好ましい。
【0007】
上記の槽型反応器において、耐圧部材は透視可能な素材で構成されており、上部材には覗き窓が設けられており、覗き窓及び耐圧部材を介して反応槽内の状態が観察できるように構成することが好ましい。これによって、反応槽内様子を目視で観察したり、反応槽内に光を照射して、例えば、光化学反応を生じさせたりすることが可能になる。
【0008】
上記の槽型反応器において、上部材には、透視可能な素材で構成された保護部材が設けられることが好ましい。透視可能な素材で構成された保護部材を設けることにより、万が一、耐圧部材が破損した際に、反応槽内の内容物が装置の外に勢いよく漏出することを防止することができる。また、保護部材を透視可能にすることにより、覗き窓、及び耐圧部材を介して、反応槽内を目視したり、光を照射したりすることができる。
【0009】
上記の槽型反応器において、下部材は、第1の段差と第2の段差と備えており、第1の段差に比して第2の段差は低い位置にあり、第1の段差と第2の段差との間には耐圧部材の受面が配されており、上部材と下部材とを締結していない状態において、パッキンは第2段差の下端と同じ位置にある反応槽の縁面の上に配置されており、パッキンの上端が耐圧部材の受面よりも高い位置にあるように構成することが好ましい。受面によって螺子を過剰に締め込みすぎることが防止され、パッキンが過剰に圧縮されて、パッキンが破損することを防止することができる。また、パッキンの上端が耐圧部材の受面よりも上の位置あるため、パッキンの上端に耐圧部材が接触した状態からさらに螺子を締めこんでパッキンを圧縮させて耐圧性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧条件下で所望の反応を行うことが可能であり、耐圧部材とパッキンとを強く圧接させて耐圧性を高めることが可能な槽型反応器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】連続撹拌槽型反応器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4の状態からさらに螺子を閉め込んだ状態を示す断面図である。
【
図9】槽型反応器の他の実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図1の槽型反応器を組んだ状態における正面図である。
【
図18】比較例に係る槽型反応器の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の連続槽型反応器(以下、槽型反応器と称する。)の一実施形態とその変形例等について説明する。以下で説明する槽型反応器は、本発明の一実施形態に過ぎず、技術的範囲はこれに限定されるものではない。
図1ないし
図8に槽型反応器の一実施形態を示し、
図9にその変形例を示す。
図10ないし
図17には、上部材と下部材とを締結した槽型反応器の外観を示す。
図18には、比較のための槽型反応器の断面図を示す。
図19ないし
図25に参考例に係る槽型反応器の外観を示す。
【0013】
図1に示したように、本実施形態の槽型反応器11は、下部材111と、耐圧部材113と、パッキン114と、上部材112と、複数の螺子115と、保護部材116とを有する。なお、
図1においては、各反応槽に配される複数のパッキンのうち、一つだけを示し、残りは図示を省略した。
【0014】
下部材111は、
図1及び
図3に示したように、複数の有底の穴から構成される複数の反応槽21を有する。本実施形態の槽型反応器11では、下部材111は、ステンレス鋼から構成される。本明細書において有底の穴とは、底部を有する穴のことである。
図3の例では、反応槽21は、円錐部と円柱部とを連通させた形状を有する穴であり、円錐部が底部に位置し、円柱部が下部材111の上部に位置する。反応槽21の円柱部の上端は、下部材の上面に達しており、開口となっている。反応槽21は、底部が円錐部になっているため、少ない液量でも反応槽内の液位が高くなるようになっている。
【0015】
本実施形態の槽型反応器11では、下部材111は、
図1に示したように、複数の反応槽21が設けられた第1部分22と、第1部分22の外周に隣接するように配される第2部分23とを有する。第1部分22は円柱状であり、第2部分23は、第1部分22を内包し、かつ第1部分と隣接するように配置される形状である。槽型反応器11では、第1部分22と第2部分23とは、一体の円柱状の部材として構成される。具体的には、第1部分22と第2部分23とは、連続する一体のステンレス鋼から構成されており、第1部分22を切削することにより反応槽21としている。このため、下部材111を構成する部品点数が少なく、槽型反応器11の組み立てが容易である。
【0016】
本実施形態の槽型反応器11では、下部材111の第1部分には、計4つの反応槽21が設けられている。
図6に示したように、第1反応槽1、第2反応槽2、第3反応槽3、及び第4反応槽4の順番に、上流から下流に向けて、各反応槽が配置される。最も上流の反応槽1には、下部材111の側面から反応槽の内部に連通する注入孔221が二つ設けられている。複数の注入孔221には、シリンジポンプなどの基質などの反応前の物質の供給部が接続される。反応前の物質の供給部は、注入孔に対して、パッキンなどを利用して液密かつ気密に接続される。
【0017】
最も下流の反応槽4には、下部材111の側面から反応槽の内部に連通する排出孔222が設けられている。排出孔222には、シリンジポンプなどで反応生成物を吸引するための吸引部が接続される。吸引部は、排出孔に対して、パッキンなどを利用して液密かつ気密に接続される。
【0018】
本実施形態の槽型反応器11では、下部材111の側面に注入孔221又は排出孔222を設けている。このため、槽型反応器11の上面には、注入孔、排出孔、それらに接続されるシリンジポンプなどが現れない。槽型反応器11の上面は空いているので、後述する覗き窓117から反応槽内の様子を観察したり、光を照射する際に遮蔽したりするものがない。
【0019】
本実施形態の槽型反応器11では、第1反応槽1と第2反応槽2との間と、第2反応槽2と第3反応槽3との間と、第3反応槽3と第4反応槽4との間には、それぞれ、連通孔223が設けられる。槽型反応器11を使用する際には、任意の反応槽に撹拌子、溶媒、触媒、又は酵素などを投入しておく。供給部から任意の基質、触媒、又は酵素等を供給し、撹拌子を回転させることにより、基質や触媒等を混合させて、所望の化学反応を行う。槽型反応器11に供給された、基質や触媒等は、それぞれの連通孔223を経て、第1反応槽1、第2反応槽2、第3反応槽3、第4反応槽4の順に、撹拌されながら移動し、その過程で所望の化学反応が進行する。第4反応槽4に至った反応物を、排出孔222から反応生成物を上記の吸引部で吸引して、槽型反応器11の外に取り出す。撹拌子は、モーターなどの駆動源により駆動してもよいし、市販のマグネチックスターラーを下部材の下に配置し、マグネチックスターラーの磁力で撹拌子を回転させてもよい。
【0020】
本実施形態の槽型反応器11では、第1反応槽1と第4反応槽4との間には、連通孔が設けられておらず、第1反応槽1と第4反応槽4との間を熱的に分断する凹溝225が設けられている。凹溝は、熱的に一の反応槽と他の反応槽とを分断することができるものでればよい。本実施形態の槽型反応器では、凹溝225は、下部材111の底を貫通しない、スリット状の溝から構成されている。
【0021】
本実施形態の槽型反応器11では、
図4に示したように、第1部分22と第2部分23と間には、耐圧部材113を内嵌することができる第1の段差231が設けられている。そして、第1の段差231の下端には受面232が配される。第1の段差231により、第2部分23の上面に比して、耐圧部材113の受面232は、低くなっている。受面232は、第1の段差231の下端と同じ高さにあり、耐圧部材113の延在方向に沿って延びる面である。第1の段差231は、耐圧部材113の外形状に対応しているため、下部材111に対して耐圧部材113を被せる際に、耐圧部材113の位置があらかじめ設計された位置に嵌りやすくなる。本実施形態の槽型反応器11では、第1の段差231の形状は、上方視点において円形である。耐圧部材113の形状も、上方視点において円形である。
【0022】
本実施形態の槽型反応器11では、下部材111に設けられた反応槽21の縁に第2の段差234が設けられている。第2の段差234によって、反応槽の縁面235は、耐圧部材113の第2の段差234又は受面232に比して、低くなっている。第2の段差234は、パッキン114の外形状に対応しているため、パッキン114を反応槽21の縁に置く際に、あらかじめ設計された位置にパッキン114を置きやすくし、上部材と下部材とを締結する際にパッキン114の位置をずれにくくすることができる。本実施形態の槽型反応器11では、第2の段差234の形状は、上方視点において円形である。パッキン114の形状も、円環状である。
【0023】
下部材111の第2部分23の上面には、
図1に示したように、複数の螺子孔236が設けられており、後述するように、上部材112に挿通された螺子が螺合するように構成されている。
【0024】
下部材111と上部材112との間には、耐圧部材113を両者で挟むようにして、固定する。本実施形態の槽型反応器11では、耐圧部材113は、上方視点において円形の板状の部材である。耐圧部材113の上方視点における大きさは、下部材111及び上部材112の上方視点における大きさに比して、小さく構成されている。これにより、
図4に示したように、上部材112と下部材111との間に隙間31が構成される。隙間31は、耐圧部材113の外周部分に形成される。
【0025】
耐圧部材は、反応槽内の圧力に耐える耐圧性を備えるものであればよい。本実施形態の槽型反応器11では、耐圧部材はセラミックガラスの一種である透明なサファイアガラスで構成されている。このため、耐圧部材は、反応槽内の圧力に耐えるだけではなく、後述するように、上部材112に設けられた覗き窓117と耐圧部材113を介して、反応槽内の状態を目視確認したり、光を反応槽内に照射したりすることができる。
【0026】
耐圧部材113と下部材111との間には、パッキン114が配置される。パッキン114は、反応槽内の圧力に耐えられるものであればよい。本実施形態の槽型反応器11では、合成ゴム製の複数のパッキン114が各反応槽21の縁部の第2の段差234に嵌るように配置される。パッキン114は、上方視点において円形であり、
図1に示したように、4つ用いられる。なお、
図1では、パッキンを一つだけ図示し、残りの三つは省略して示した。本実施形態の槽型反応器11では、パッキン114は、下部材111に設けられる凹部に配置される。
図4の例では、凹部は、後述する段差234と縁面235とから構成されている。
【0027】
上部材112は、複数の螺子115を挿通し、複数の螺子115を下部材111の螺子孔に螺合させて、下部材111に対して固定される部材である。本実施形態の槽型反応器11では、上部材112は、上方視点において円形の板状部材であり、ステンレス鋼から構成される。上部材の上方視点における円の直径と、下部材の上方視点における円の直径とは、略同一である。これにより、上部材112と下部材111とを締結した際に、上部材112と下部材111とが滑らかに連続する外形状となるように構成されている。
【0028】
上部材112には、
図1に示したように、螺子115を挿通するための複数の螺子孔236と、下部材111に設けられる複数の反応槽21に対応する位置に設けられる複数の覗き窓117とを有する。螺子孔236は、上部材112を上下方向に貫通する。本実施形態の槽型反応器11では、覗き窓117は、上部材112を上限方向に貫通する孔から構成される。覗き窓117は、上述の通り、下部材111に設けられる複数の反応槽21に対応する位置に設けられる。耐圧部材113は、透明な素材で構成される。また、後述するように、上部材112には、透視可能な素材で構成された保護部材が固定される。このため、本実施形態の槽型反応器11では、覗き窓117、及び耐圧部材113を介して、反応槽内の様子を観察することができる。
【0029】
本実施形態の槽型反応器11では、
図4に示したように、上部材112の底面に段差237が設けられている。段差237に囲まれた凹部の形状は、耐圧部材113の形状に対応している。上部材112と下部材111との間に、耐圧部材113を挟み込むように配置する際には、段差237の内側に耐圧部材113が嵌るようになっている。これによって、あらかじめ設計した位置に耐圧部材113を配置して、上部材112と下部材111とを固定することができる。
【0030】
上部材112の上面には、反応槽内を視認可能な素材で構成された保護部材116が取り付けられる。本実施形態の槽型反応器11では、保護部材は、透明なアクリル樹脂で構成された、板状の部材である。保護部材116は、円周部が複数個所にわたって円弧状に切り欠かれた形状である。保護部材116の切欠部には、保護部材116を上部材112に固定した状態で、上部材112と下部材111とを固定する複数の螺子115の頭部が収容される。保護部材116には、複数の螺子を挿通するための螺子孔が設けられている。当該螺子孔には、保護部材116を上部材112に固定するための螺子118が挿通される。複数の螺子118を上部材112に設けた螺子孔に対して螺合することにより、保護部材116を上部材112に対して固定する。
【0031】
本実施形態の槽型反応器11では、
図4に示したように、上部材112と下部材111とを締結していない状態、かつ各パッキン114を各反応槽21の縁面235に配置した状態において、パッキン114の上端が耐圧部材113の受面232よりも高い位置になるように構成されている。縁面235は、第2の段差234の下端と同じ位置にある。この構成により、耐圧部材113が下部材111の受面232に接するよりも前にパッキン114の上端に接するようになる。これにより、耐圧部材113がパッキンに圧接して、高い気密性又は液密性が得られるようになっている。
【0032】
本実施形態の槽型反応器11では、パッキン114及び耐圧部材113を挟み込んで上部材112と下部材111とを螺子115で固定した状態で、上部材112と下部材111との間には隙間31が形成される。
図4及び
図5に示したように、螺子115を締め込むことで、上部材112と下部材111とが接近する方向に変位し、パッキン114の上端が耐圧部材113の底面に接触し、パッキン114の下端が下部材111の上面に接触する。
図4に示すように、パッキン114の上端と耐圧部材113の底面とが接触した直後の状態において、上部材112の底面と下部材111の上面との間に形成された隙間の大きさをL1とし、このときのパッキン114の厚みをP1とする。隙間がL1の状態から、螺子115をさらに締め込み、耐圧部材113の底面が、下部材111の受面232に接触して、螺子115の締め込みが完了する。
図5に示したように、このときの上記隙間をL2とし、このときのパッキン114の厚みをP2とする。
【0033】
本実施形態の槽型反応器11では、パッキン114の上端部に耐圧部材113の底面が接触し、かつパッキン114の下端部に下部材の上面が接触した状態において、上部材112の底面と下部材111の上面との間に隙間L1が形成されている。このため、隙間L1がL2の状態になるまで螺子115締め込むことにより、パッキンがP1の厚みからP2の厚みに至るまで、圧縮することができる。このときP1>P2である。このように、本実施形態の槽型反応器11では、パッキン114の上端部に耐圧部材113の底面が接触し、かつパッキン114の下端部に下部材の上面が接触した状態において、上部材112の底面と下部材111の上面とが接面しておらず隙間が設けられているので、螺子をさらに締め込んでパッキン114をさらに圧縮して、耐圧性を高めることが可能になる。L1は、特に限定されないが、例えば、1~10mmにすることができる。L2は、特に限定されないが、例えば、5mm以下とすることができる。ただし、L2は0mmより大きくする。これは、上部材と下部材とが接面することによる螺子の締結力のロスを抑えて、螺子の締結力をパッキンに集中させるようにするためである。
【0034】
図18は、比較例に係る槽型反応器11の
図4相当の断面図である。比較例に係る槽型反応器11cでは、パッキン114の上端部に耐圧部材113の底面が接触し、かつパッキン114の下端部に下部材111cの上面が接触した状態において、上部材112cの底面と下部材111cの上面とが密着している。比較例の槽型反応器では、パッキン114の上端部に耐圧部材113の底面が接触し、かつパッキン114の下端部に下部材の上面が接触した状態からさらに螺子115を締め込むことができない。このため、パッキン114の上端部に耐圧部材113の底面が接触し、かつパッキン114の下端部に下部材の上面が接触した状態からさらにパッキン114を圧縮することはできない。比較例に係る槽型反応器11cでは、螺子をさらに閉め込んでパッキン114をさらに圧縮して、耐圧性を高めることができない。
【0035】
図19ないし
図25のように、上部材と下部材との間に、上から見た視点において、上部材及び下部材と径が同一であるパッキンと、耐圧部材とを、挟み込む構成も考えられる。しかしながら、この構成の槽型反応器は、1.5MPa程度までであれば耐圧性を発揮するものの、本実施形態の槽型反応器11に比して、耐圧性能が劣る。本実施形態の槽型反応器では、20MPa程度の耐圧性能を発揮する。なお、
図19ないし
図25の槽型反応器では、パッキンとして2枚のポリテトラフルオロエチレン製のシートを使用しており、6穴の反応槽及び螺子孔に対応する部分に貫通孔を穿孔したものを使用している。
【0036】
本実施形態の槽型反応器11では、受面232に耐圧部材113の底面が接触すると、螺子を締め込んでも上部材112が下部材111に対して接近することができなくなり、締め込み操作が終了したことを、使用者に認識させる。第1の段差231と受面232を設けることによって、螺子を過剰に締め込みすぎることにより、パッキン114又は耐圧部材113が過剰に圧縮されて、パッキン114又は耐圧部材113が破損することを防止することができる。パッキン114は、受面232よりも低い位置にあるパッキンの縁面235に載置される。このため、受面232で止られた耐圧部材113の底面によって、破損しない程度に、圧縮されて高い耐圧性を発揮する。
【0037】
本実施形態の槽型反応器11では、透視可能な耐圧部材113を配することによって、反応槽内の様子を観察したり、反応槽内に光を供給できるようにした。螺子は、透視可能な耐圧部材113に対して圧接するのではなく、上部材112に接する構成とした。この構成であれば、螺子が透視可能な耐圧部材に圧接しないので、耐圧部材が螺子によって破損することを防止することができる。
【0038】
本実施形態の槽型反応器11では、上部材112と耐圧部材とを別々の部材として構成した。上部材と耐圧部材とは、
図9に示したように、一体の部材としてもよい。
図9の槽型反応器11bでは、上部材112bと耐圧部材113とは、ステンレス鋼によって形成されている。上部材112bと耐圧部材1123とが一体の単一の部材で構成されているため、槽型反応器11bを組み上げる操作が容易である。なお、
図9においては、上記の槽型反応器と同様の構成については、
図1等と同じ符号を用いた。
【0039】
本実施形態の槽型反応器11では、複数の反応槽21と連通孔223とを反応基質等が通過、及び撹拌される過程で化学反応が進行する。連通孔223及び反応槽は、マイクロリアクターと呼ばれる微細な流路によって化学反応を生じさせる方法に比して、固形分が詰まりにくい。このため、本実施形態の槽型反応器11では、圧力下で行う化学反応であって、固形分の析出を伴う化学反応、又は固体触媒等の固形分を追加する化学反応にも好適に使用することができる。
【0040】
上記の槽型反応器11では、反応槽の数は4個とした。反応槽の数は、これに限定されず、適宜、増減させることができる。反応槽の形状も、上記の例に限定されず、底部を有する形状であればよい。
【0041】
下部材の形状は、反応槽を形成することができる形状であればよい。下部材の第1部分と第2部分とは、別々の部材から構成してもよい。例えば、第1部分をハステロイから構成し、第2部分をステンレス鋼から構成してもよい。
【0042】
保護部材は、省略してもよい。保護部材は、強化ガラス、ガラス、アクリル樹脂、セラミクスガラスなどの透明な素材で構成してもよいし、これらの素材に梨地処理を施すなどした半透明の素材で構成してもよい。
【0043】
耐圧部材の形状は、円形、板状に限定されず、例えば、ブロック状にしてもよい。耐圧部材は、強化ガラスから構成してもよい。耐圧部材は、梨地の強化ガラスなど半透明の素材から構成してもよい。
【0044】
パッキンの形状、数は、限定されない。すべての反応槽を気密かつ液密にすることができるパッキンを一つ用いる構成としてもよい。
い。
【0045】
覗き窓は、一つでもよい。覗き窓に対しては、貫通孔に対して反応槽の内部を透視可能な素材で構成したカバーを取り付けてもよい。
【0046】
下部材又は上部材の形状は、円柱状に限定されず、その他の形状にしてもよい。下部材又は上部材を構成する素材も、特に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
11 連続撹拌槽型反応器
21 反応槽
111 下部材
112 上部材
113 耐圧部材
114 パッキン
115 螺子
117 覗き窓
116 保護部材
11b 連続撹拌槽型反応器