(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ヒーターチップと接合層の評価方法および接合層評価装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240731BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01L21/52 F
B23K1/00 A
(21)【出願番号】P 2020050447
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】大矢 怜史
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255925(JP,A)
【文献】特開2007-255926(JP,A)
【文献】特開2006-053052(JP,A)
【文献】特開昭61-138153(JP,A)
【文献】特開2017-083300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板の第1の面に形成された薄膜ヒーターと、
前記第1の基板の第1の面に形成された温度プローブと、
前記第1の基板の第2の面に形成されたNi-P膜(ニッケル燐)と、
前記Ni-P膜(ニッケル燐)上に形成されたIn(インジウム)またはIn合金(インジウム合金)からなる膜を具備することを特徴とするヒーターチップ。
【請求項2】
前記In(インジウム)または前記In合金(インジウム合金)からなる膜上にIn(インジウム)拡散防止膜が形成され、
前記第1の基板は、SiC(シリコンカーバイド)で形成され、
前記薄膜ヒーターの膜厚は、0.1(μm)以上7.5(μm)以下であり、
前記薄膜ヒーターのシート抵抗値(Ω/sq)は、0.25(Ω/sq)以上1.00(Ω/sq)以下であり、
前記In(インジウム)または前記In合金(インジウム合金)からなる膜の厚みは0.1μm以上10μm以下であり、
前記In(インジウム)拡散防止膜は、無電解Ni-Pめっき膜、電解Niめっき膜であることを特徴とする請求項1記載のヒーターチップ。
【請求項3】
前記第1の基板の凹部に前記薄膜ヒーターが形成または配置され、
前記薄膜ヒーターは、渦巻き状または同心状に形成または配置されていることを特徴とする請求項1記載のヒーターチップ。
【請求項4】
第1の基板と、前記第1の基板の第1の面に形成された薄膜ヒーターと、前記第1の基板の第1の面に形成された温度プローブと、前記第1の基板の第2の面に形成された第1のNi-P膜(ニッケル燐)と、前記
第1のNi-P膜(ニッケル燐)上に形成されたIn(インジウム)またはIn合金(インジウム合金)からなる膜を有するヒーターチップと、
第2のNi-P膜(ニッケル燐)が形成された第2の基板を有し、
前記In(インジウム)または前記In合金(インジウム合金)からなる膜と、前記第2のNi-P膜(ニッケル燐)間に接合層を形成し、
前記薄膜ヒーターに電流を供給して、前記接合層を加熱し、
前記温度プローブの抵抗値変化を測定し、
前記接合層の温度を測定することを特徴とする接合層の評価方法。
【請求項5】
前記接合層に、樹脂部材または樹脂膜を形成または配置し、
前記接合層の温度を、前記樹脂部材または前記樹脂膜を介して測定することを特徴とする請求項4記載の接合層の評価方法。
【請求項6】
所定の時間の温度変化から前記接合層の寿命あるいは劣化を評価することを特徴とする請求項4記載の接合層の評価方法。
【請求項7】
第1の基板と、前記第1の基板の第1の面に形成された薄膜ヒーターと、前記第1の基板の第1の面に形成された温度プローブと、前記第1の基板の第2の面に形成された第1のNi-P膜(ニッケル燐)と、前記
第1のNi-P膜(ニッケル燐)上に形成されたIn(インジウム)またはIn合金(インジウム合金)からなる膜を有するヒーターチップと、
第2のNi-P膜(ニッケル燐)が形成された第2の基板と、
前記薄膜ヒーターに電流を供給する電流電源装置と、
前記
温度プローブの端子間電圧を測定する電圧測定器と、
前記第2の基板を所定温度に維持する加熱冷却器と、
非接触で温度を測定する温度測定器を具備し、
前記In(インジウム)または前記In合金(インジウム合金)からなる膜と、前記第2のNi-P膜(ニッケル燐)間に接合層を形成し、
前記温度測定器は、前記接合層の温度を測定することを特徴とする接合層評価装置。
【請求項8】
前記接合層と前記温度測定器とを位置決めする位置決め装置を更に具備し、
複数の前記ヒーターチップと前記第2の基板間に接合層が形成され、
前記位置決め装置により、前記温度測定器と前記接合層が位置決めされ、前記接合層の温度を測定することを特徴とする請求項7記載の接合層評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品、電子部品等の端子電極とプリント基板の電極とを接合する半田チップ等の接合部品とその製造方法、半田チップ等を用いた接合層評価装置、接合層の評価方法に関するものである。また、接合層を評価することにより、接合層の劣化および寿命の評価等に関するものである。
【0002】
また、接合層評価装置等に用いるヒーターチップの構造、使用方法、当該製造方法、ヒーターチップの駆動方法、ヒーターチップを用いた接合層の評価方法、ヒーターチップを用いた評価装置等に関するものである。
【背景技術】
【0003】
電子機器は、現在、小形・薄型化、さらには高機能・高精度化の傾向にある。それを支える重要な技術が表面実装技術である。この表面実装技術は、高精度なプリント板に、IC、LSI を中心としたチップ部品、電子部品を装着、接続する技術であり、高密度実装、高信頼性が重要となっている。
【0004】
電子回路基板の高精度化、実装部品の小型化、狭ピッチ化が進展し、チップ部品、電子部品の電極と電子回路基板の電極との接合技術が重要である。微細なピッチで位置精度が良好で、高信頼性の接合部品、接合技術が求められている。また、電極と電極との接合部品、接合層の接合状態を定量的に評価できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図28は従来のヒーターチップ109の説明図および断面図である。
図28(a)は従来のヒーターチップ109の平面図であり、
図28(b)は
図28(a)のAA’での断面図である。
図28(c)は
図28(a)のBB’での断面図である。
図28において、ベース基板106の表面には薄膜ヒーター117および温度プローブ116はNi(ニッケル)-Pで形成されている。
【0007】
温度プローブ116の両端には、温度プローブ端子電極114が形成されている。また、薄膜ヒーター117の両端には、薄膜ヒーター端子電極115が形成されている。
【0008】
従来の電極間の接合層の劣化診断方法としてヒーターチップ109を半田付けして接合し、ヒーターチップ109の薄膜ヒーター端子電極115に電流を印加して、薄膜ヒーター117を発熱させる。発熱による温度分布を測定し、温度分布の測定データに基づいて半田による接合層の劣化を検出していた。
【0009】
しかし、ヒーターチップ109の裏面等の半田接合面に形成したNi-P膜(めっき膜)が拡散等し、半田接合部にクラックなどが発生する等の課題があり、定量的に接合層の状態を評価できないという課題があった。
また、微細な端子電極114、端子電極115と電気的接続が困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半田チップ136は、半田シート135を作製し、半田シート135において半田チップに対応してリード線137を配置する。半田シート135は半田チップ136の形状に対応して、フェムト秒レーザ装置902でレーザ光502を照射して半田チップ136に分離する。
【0011】
本発明の接合層評価装置は、フェムト秒レーザ光等でSiC基板106の両面を粗面加工し、粗面加工箇所にNi-P膜で薄膜ヒーター117、温度プローブ116、電流印加経路124を形成する。薄膜ヒーター117の両端および温度プローブ116には端子電極を配置し、薄膜ヒーター117に電流を印加できるようにして、ヒーターチップ109を構成する。
【0012】
本発明は、フェムト秒レーザ光等でSiC基板106の両面を粗面加工し、粗面加工箇所にNi-P膜で薄膜ヒーター117、温度プローブ116、電流印加経路124を形成する。薄膜ヒーター117の両端および温度プローブ116には端子電極を配置し、薄膜ヒーター117に電流を印加できるようにして、ヒーターチップ109を構成する。
【0013】
ヒーターチップ109の裏面に、Ni-P膜111で第1の薄膜を形成し、前記薄膜上にIn(インジウム)または、Inを含む合金で第2の薄膜を形成する。また、前記第2の薄膜上に第1の金めっき膜を形成する。
【0014】
銅プレート104の表面にNi-P膜111で第3の薄膜を形成し、前記薄膜上にIn(インジウム)または、Inを含む合金で第4の薄膜を形成する。また、前記第4の薄膜上に第2の金めっき膜を形成する。
前記第1の金めっき膜と前記第2の金めっき膜間に半田などからなる接合層を形成、または配置する。
【0015】
ヒーターチップ109としての薄膜ヒーター117に所定の定電流を印加し、定電流による発熱により、半田等による接合層を加熱しつつ、端面の研磨部を赤外線サーモグラフィティカメラ等で観察あるいは測定する。観察あるいは測定は、ポリイミドフィルム107を介して行う。研磨部の接合層の温度を複数点測定し、複数点間の温度情報△Tを求める。
【発明の効果】
【0016】
半田シート135にフェムト秒のレーザ光502を照射して半田チップ136に分離する。フェムト秒のレーザ光502を照射して分離するため、切断面のダレが発生せず、精度よく半田チップ136を製造できる。
【0017】
Ni-P膜111からなる第1の薄膜上と第3の薄膜上のうち、少なくとも一方上に、In(インジウム)、または、Inを含む合金で薄膜等を形成することにより、半田等の接合部との密着性が良好となり、接合部等にクラックなどが発生せず、良好に接合部の状態を測定あるいは観察することができる。
【0018】
ヒーターチップ109より、半田等による接合層等を加熱し、赤外線サーモグラフィティカメラ等で、接合層の温度を測定して、複数点間の温度情報(温度分布)△(デルタ)Tを求める。温度情報△Tにより、接合層の状態を非接触で定量的に評価することができる。
【0019】
温度分布の温度情報(温度分布)△Tに基づいて、接合層の劣化あるいは接合層の特性を容易に検出することが可能となる。また、半田接合層の寿命等の評価を容易に行うことが可能となる。また、劣化状態の検知および寿命の評価の信頼性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明のヒーターチップの構成図および断面図である。
【
図3】本発明のヒーターチップの製造方法の説明図である。
【
図6】本発明のヒーターチップの製造方法のフローチャートである。
【
図7】本発明のヒーターチップの製造方法の説明図である。
【
図10】本発明の接合層評価装置の構成および評価方法の説明図である。
【
図11】本発明の接合層評価装置の動作の説明図である。
【
図12】本発明の接合層評価装置の動作の説明図である。
【
図13】本発明の接合層の評価方法の説明図である。
【
図14】本発明の接合層の評価方法の説明図である。
【
図15】本発明の接合層の評価方法の説明図である。
【
図16】本発明の接合層の熱シミュレーションの説明図である。
【
図17】本発明の接合層の評価方法の説明図である。
【
図18】本発明のヒーターチップの構成図および断面図である。
【
図19】本発明の接合層の評価方法の説明図である。
【
図20】従来の評価方法での接合部の断面SEM像である。
【
図21】本発明の評価方法での接合部の断面SEM像である。
【
図22】本発明の評価方法でのリフロー後の逆極点図方位マップ(IPF)である。
【
図23】本発明の評価方法でのTM試験後の逆極点図方位マップ(IPF)である。
【
図24】本発明の半田チップの構成図および説明図である。
【
図25】本発明の半田チップの製造方法の説明図である。
【
図26】本発明の半田チップの製造方法の説明図である。
【
図27】本発明の半田チップの製造方法の説明図である。
【
図28】従来のヒーターチップの構成図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る接合層の構成、接合層の評価方法および接合層評価装置、本発明のヒーターチップ、ヒーターチップの駆動方法について説明をする。
【0022】
明細書で記載する実施形態では、半田により電極間に形成した接合層を評価するとして説明をする。しかし、本発明は半田等による接合層に限定するものではない。
【0023】
例えば、銀ペーストあるいは銅ペーストにより接着した接合層、放電加工による形成した接合層、高周波誘導加熱による接合層、電磁誘導加熱による接合層、圧着により接着した接合層等に対しても適用できることは言うまでもない。接合層105は導電性材料には限定されず、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機絶縁物等であってもよい。
【0024】
本発明は加温、あるいは過熱した電極間等に配置あるいは形成された接合層を、赤外線サーモグラフティカメラ等を用いて観測するものである。したがって、電極を有する電子部品、配線基板等に限定されるものではない。
【0025】
本発明の半田チップ136は接合層評価装置(接合層評価部品)の端子電極114、端子電極115と測定あるいは評価装置と電気的に接続を取るために使用あるいは採用する。電気接続は、半田チップ136に限定するものではない。例えば、導電ペースト等を使用してもよいことは言うまでもない。
【0026】
接合層105は接合部105と呼ぶこともある。接合層105は層状に限定されるものではなく、立体的に、あるいは独立して接合部105として形成または構成される場合もある。本発明は、接続部の多種多様な構成あるいは構造にも適用できる。
【0027】
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能を有する要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、本明細書に記載する本発明の実施例は、それぞれの実施例を組み合わせることができる。
【0028】
本発明は、第1の基板と、第2の基板と、第1の部材と、前記第1の基板の第1の面に形成、または配置された加熱手段と、前記第1の基板の第1の面に形成、または配置された電流経路と、前記加熱手段に電流を供給する電流供給手段と、前記第2の基板と前記第1の基板の第2の面間に配置された接続層と、前記接合層から放射される赤外線から、前記接合層の温度を取得する温度測定手段を具備する。前記接合層105と面する層に、インジウムを含有する層が形成された状態で、接合層105が形成される。
【0029】
インジウムを含有する層は、接合層を形成する際に、接合層等に拡散されるか、他の金属と合金化される。また、インジウムを含有する層と接合層間には、金めっき膜が形成されるが、前記金めっき膜の金も接合層等に拡散される。
【0030】
また、第1の基板と、第2の基板と、第1の部材と、樹脂部材を有し、第2の基板と前記第1の部材を接合する接合層を形成し、前記接合層が接する接合面を研磨し、前記接合面に密接するように、前記樹脂部材を配置し、前記第1の基板を加熱して、前記第2の基板を所定温度に維持し、前記接合面の所定位置の温度情報△Tを、非接触で取得することを特徴とする。
【0031】
図24は半田チップ136の構造および製造方法の説明図である。
図24(a)に図示するように、半田はシート状に形成される。以下、シート状に形成された半田を半田シート135と呼ぶ。
半田シート135の半田は、鉛(Pb)を含まない「鉛フリー半田(無鉛半田)」と鉛を含む半田「共晶半田(有鉛半田)」のいずれでも良い。
【0032】
共晶半田は、Sn(錫)63%とPb(鉛)37%の合金で構成されている。Sn(錫)が100%の場合の融点は232℃、Pb(鉛)が100%の場合の融点327℃である。共晶半田になると融点が183℃まで低くなり、金属としては融点が低く加工がし易いという特徴がある。
共晶半田は鉛が含有されていることにより、柔らかい鉛が応力を緩和させる効果を有しているため、半田付けの信頼性が高い。
重要なのはソルダ自体の熱疲労特性であり,Sn-3.0Ag-0.5Cu系の使用が好ましい。
【0033】
図24に図示するように、半田シート135は平面上に形成される。
図24に示す点線は、後に説明するレーザ光を照射する位置を示す。半田シート135は点線位置にレーザ光502が照射され、切断されて、半田チップ136となる。
【0034】
また、必要に応じて、
図25(b)に図示するように、半田チップ136の略中央部にリード線137が形成または配置する。リード線137として、銅線が例示される。リード線137は半田シート135の半田チップ136の略中央部に位置する。リード線137は
図1に図示するように、リード線137を介して、外部に配置する電流電源装置(あるいは電圧電源装置)803等と接続される。
【0035】
以上のように、半田シート135には半田チップ136がマトリックス状に形成される。マトリックス状に形成されて半田チップ136は、点線位置にレーザ光502が照射されて分割される。
【0036】
以上のように、半田シート135には半田チップ136がマトリックス状に形成される。マトリックス状に形成されて半田チップ136は、点線位置にレーザ光502が照射されて分割される。
【0037】
なお、
図24において、半田チップ136は矩形として図示しているがこれに限定するものでない。レーザ光502の照射により、矩形だけでなく、円形、多角形に加工して分割することができる。
【0038】
図25は、本発明の半田チップ136の製造方法の説明図である。
図24(a)、
図25(a)に図示するように、点線部に、フェムト秒レーザ光を照射して半田シート135を切断する。
【0039】
半田チップ137は
図2等に図示するように、端子電極114、端子電極115の形状、サイズに合わせて作製される。一例として、端子電極114、端子電極115の幅Wは、100μm~2mmであり、端子電極114、端子電極115の奥行Lは、100μm~2mmである。
【0040】
図24(a)の半田チップ137の幅W、半田チップ137の奥行Lは、
図2の端子電極114、端子電極115と一致するか、10~20%小さいサイズに形成、または作製される。
【0041】
図24(a)は半田シート135の平面図を示す。
図24(b)は
図24(a)のAA’線での断面図である。
図24で図示するように、半田シート135には、半田チップ136に対応してリード線137が形成または配置されている。
【0042】
点線の位置にフェムト秒レーザ光502が照射される。フェムト秒レーザとは、フェムト(1×10-15)秒という超短いパルス幅をもつパルスレーザであり、超短パルスレーザと呼ぶこともある。
光は1秒間に約30万km(地球7周半の距離)を進むほど高速であるが、その光でさえも1フェムト秒の間には約0.3μm程度しか進むことができない。
【0043】
フェムト秒レーザ装置902は、一般にパルス幅が、サブピコ秒から数十フェムト秒のフェムト秒レーザ光502を発生する。サブピコ秒から数十フェムト秒の超短パルスのレーザ光502を材料に照射した場合、材料の熱拡散特性時間に比べてパルス幅が十分に短いため、光エネルギーを有効に照射部に投入できる。
【0044】
パルスレーザの発振方法は、変調法、Qスイッチ法、モード同期法の3つに分けることができる。本発明では、フェムト秒の発振にはモード同期法を使用している。
【0045】
モード同期は、共振器内の発振モード(縦モード)間の位相関係が固定されている状態(Phase lonking)である。モードの位相が揃っており、各波長の山が揃った部分でのみ、パルスが発生し、このパルスの一部が共振器内を一周することに、共振器の外に出ることにより、パルス列が生成される。
【0046】
フェムト秒レーザ装置902が発生するレーザ光502は、半田シート135の点線位置に照射される。なお、フェムト秒レーザ光は、緑の帯域の波長を使用することが好ましい。
【0047】
フェムト秒レーザ光502は、材料の熱拡散特性時間に比べてパルス幅が十分に短いため、レーザ光502の半田シート135の構成材料が、溶ける前に、加工を行うことができる。したがって、加工面でのダレが発生しない。
【0048】
ダレは、材料の表面が引っ張られてできる滑らかな面であり、ダレが発生すると、半田チップ136の形状にバラツキが発生し、また、サイズが一定しない。また、加工位置と他の箇所との材料の結晶差異等が発生し、端子電極114等に良好に実装できない。
【0049】
本発明によるフェムト秒グリーンレーザを用いた半田シート135の切断加工では、切断面に加工ダレが発生しない。フェムト秒グリーンレーザが非熱加工であるためである。したがって、本発明では従来では困難であった。切断面のダレがなく、微細は半田シート135を切断加工可能である。
例えば、100μm厚みの半田シートの場合、最小で10μm×10μmの個片への加工が切断面のダレが発生することない。
【0050】
図26、
図27は、本発明の半田チップ136の製造方法の説明図である。
図26は、レーザ光出力(相対値)と加工回数(回数)を示す。なお、加工回数とは、等価的に同一位置に照射されるレーザ光パルスを示す。
【0051】
図26はレーザ光出力(相対値)1.0を基準とし、1.0での加工回数を60としている。レーザ光出力1.0の時、加工回数60で良好な切断を実現できる。
【0052】
レーザ光出力0.75では加工回数100で加工できる。レーザ光出力0.75より小さい場合、切断のためには加工回数を増加させる必要があるが、加工回数を多くすると加工時間が長くなる。しかし、加工時間を長くするわりに、加工が進行しない。例えば、レーザ光出力0.50に近づくと、加工回数を増加させても、加工できなくなる。
【0053】
レーザ光出力1.25では加工回数40で加工できる。レーザ光出力1.50では加工回数35で加工できる。しかし、レーザ光出力1.25より大きい場合、相対的に加工回数を多くする必要がある。また、加工回数が多いと加工残渣が発生する問題が発生する。
以上のことから、レーザ光出力(相対値)は0.75以上1.25以下の範囲で良好に切断加工を実現できる。
図27は、加工速度(相対値)と加工回数(回数)の関係を示す説明図である。加工速度は(mm/秒)であるが、
図27では相対値で図示している。
【0054】
図27は加工速度(相対値)1.0を基準とし、1.0での加工回数を60としている。加工速度1.0の時、加工回数60で良好な切断を実現できる。加工速度(相対値)と加工回数(回数)の関係は、基本的には線形の関係がある。
【0055】
しかし、加工速度が0.50より小さいと加工残渣が発生する。また、加工速度が1.50より大きいと加工回数を増加させても加工が進展しない。したがって、加工速度(相対値)は、0.50以上1.50以下の関係にすることが好ましい。
フェムト秒レーザ光502またはピコ秒レーザ光502を半田シート135に照射し、半田シート135を半田チップに分離する。
図25(b)は分離された半田チップ136を模式的に図示したものである。半田チップ136の略中央部にリード線137が配置されている。
【0056】
半田チップ136への分離状態は、フェムト秒レーザ光502のレーザ強度、照射するレーザパルスの移動速度を変更あるいは設定することにより容易に実現できる。
【0057】
図2は本発明の接合層評価装置に使用する本発明のヒーターチップ109の平面図および断面図である。
図2(a)はヒーターチップ109の平面図である。
図2(b)は
図2(a)のAA’線における断面図であり、
図2(c)は
図2(a)のBB’線における断面図である。
【0058】
ベース基板106として、SiC(シリコンカーバイド)が例示される。SiCはシリコン (Si) と炭素 (C) で構成される化合物半導体材料である。SiCの単結晶は高熱伝導度であり、内部温度分布が小さく、また、耐熱温度も高く、ベース基板106として好ましい。その他、ベース基板106として絶縁性があり、熱伝導性の良好なサファイアガラス等のガラス基板、アルミナまたは窒化珪素からなるセラミック基板が例示される。
【0059】
SiCセラミックスやAlNセラミックスあるいはAlN(窒化アルミニウム)あるいはAlNを充填した基板のような材料は電気を通さないが、熱は良く通す物質のため、本発明のヒーターチップ109の基板106として採用できる。
【0060】
また、ベース基板106として、窒化アルミニウム(Aluminum nitride, AlN)が例示される。AlNはアルミニウムの窒化物あり、無色透明のセラミックスである。アルミナイトライドともいう。AlNは熱伝導率が180~230W/mKと高い。
ベース基板106として、BeO(ベリリウム酸化物:通称ベリリア)は熱伝導率が270 W/mKと高く、使用できる。
【0061】
AlNは、ホットプレス等でディスク状に加工してセラミック製品にすることがあるが、その基本は粉末である。その粉末の粒径を制御することが求められるが、還元窒化法では0.1μm以下のものから10μm程度のものまで製造できる。シリコン樹脂等にフィラーとして使う場合には、粒径の異なるAlN粒を組み合わせて使うとフィラーの充填率は向上する。
【0062】
還元窒化法は、アルミナ(Al2O3)とカーボン(C)を混ぜたものを窒化しAlNとする。その後、酸化して、AlN粒の表面を酸化膜で覆う。直接窒化法と比べ、表面酸化膜の厚さは2倍の11Å(オングストローム)程度になる。最後の酸化処理によって、粒表面のイミド基(N-H)やアミド基(N-H2)を除去し、純粋なAlN粒ができる。
【0063】
本明細書では、説明を容易にするため。ベース基板106は、SiCからなる基板として説明をする。しかし、ベース基板106は熱伝導性が良好で、絶縁性または半導体性を有する基板であれば、いずれのものであっても良いことは言うまでもない。
【0064】
ベース基板106の厚みは、0.1mm以上0.8mm以下が好ましい。ベース基板106の厚みは、薄い方が薄膜ヒーター117からの熱が接合層105に伝達されやすい。ベース基板106の厚みが薄いと、薄膜ヒーター117が形成されている箇所と形成されていない箇所で、接合層105での温度分布が発生しやすい。ヒーターチップ109の大きさは、3mm角以上10mm角以下のサイズが好ましい。
【0065】
本発明は、ヒーターチップ109の薄膜ヒーター117の配線幅、接合層105の形成面積、接合層105厚みを考慮して、熱シミュレーションを実施する。熱シミュレーションによりヒーターチップ109の大きさ、厚みを設計している。ヒーターチップ109のサイズは、幅W1は3mm以上30mm以下、幅W2は3mm以上30mm以下である。
薄膜ヒーター117および温度プローブ116はNi(ニッケル)-P、またはNiで形成あるいは構成する。
【0066】
SiC基板106の裏面には、Ni-Pめっきによる第1の薄膜(Ni-P膜111d)が形成される。第1の薄膜上に、Inめっきによる第2の薄膜151aが形成される。Inめっき膜151aの表面には金めっき膜112cが形成されている。
【0067】
本発明は、
図28で説明した従来のヒーターチップ109の半田付け用Ni-P/Auめっきの構造である。本発明はNi-P/In/Auめっき膜を形成した構成である。本発明の構成により、リフロー時に溶融半田中へInを供給することができる。
【0068】
なお、In(インジウム)を溶融半田に供給できるのであれば、上記のめっき膜構成を適宜変更してもよい。例えば、ヒーターチップ109の保管中にInが金(Au)表面に拡散することを防止するためにInとAuの間に拡散防止層を導入してもよい。例えば、Ni-Pからなる薄膜が例示される。
【0069】
Inめっき膜151はInのみでもよく、2成分以上の金属を含有するIn合金めっき膜でもよい。合金を構成する金属として、例えば、Ni、Cu、Pd、W、Mo、P、S、Znが例示される。Inめっき膜151の形成方法は、無電解、電解めっき法のいずれでもよい。
【0070】
温度プローブ端子電極114および薄膜ヒーター端子電極115に、半田チップ136が実装される。実装はリフロー技術等が使用される。なお、リフロー技術に限定されるものではなく、例えば、スポットヒータ等で加熱して半田を溶解させて、端子電極に接続させてもよい。
図1に図示するように、半田チップ136に取り付けられたリード線137に外部機器(
図1では電流電源装置803)の接続端子を接続する。
【0071】
以上の説明は、ヒーターチップ109側のInめっき膜151に関する説明であるが、
図1等に図示するように、半田層105の他の面にも、Inめっき膜151bが形成、または配置される。以上のInめっき膜151bに関しても、先の事項が適用できることは言うまでもない。
【0072】
図8は、本発明の接合層評価装置の接合部を中心とした説明図である。
図8(a)は半田付け前の状態を示している。
図8(b)は半田付け後の状態を示している。
【0073】
図8(a)に図示するように、銅プレート104上にNi-Pめっき膜111aが形成、または配置される。Ni-Pめっき膜111a上にInめっき膜151bが形成、または配置される。また、Inめっき膜151b上に金めっき膜112aが形成、または配置される。
Inめっき膜151b上に、
図8(a)の図示するように、In拡散防止膜153を形成、または配置してよい。
In拡散防止膜153として、例えば、無電解Ni-Pめっき膜、電解Niめっき膜が挙げられる。
【0074】
図8(b)は、半田層(接合層)105を金めっき膜112a上に形成、または配置した状態を示す。半田層105は、
図1に図示するように、金めっき膜112cと金めっき膜112a間に形成、または配置される。
【0075】
図1等では、本発明の接合層評価装置の構造等に関する理解を容易にするため、
図8(b)、
図9(b)に図示するような合金膜152、In拡散防止膜153等を図示していない。
【0076】
しかし、実際には、
図8(b)、
図9(b)に図示するように、金めっき膜112を構成する金、Inめっき膜151を形成するInは、接合層105となる半田付け作業後は、各膜(金めっき膜、In膜)には残らない。また、合金層152にInとAuは含まれない。通常、半田付け後は、InとAuはSn層105に固溶する。したがって、
図1等の膜構成は、正確には
図8、
図9の膜構成に置き換える必要がある。
【0077】
図8(b)に図示するように、半田層(接合層)105が形成されると、Ni-P膜111a上には合金層152が形成される。合金層152として、(Ni,Cu)
3Sn
4が例示される。なお、
図8(b)では図示していないが、半田層(Sn)105と合金膜152間に、P-rich膜が形成される場合もある。
以上の事項は、金めっき膜112c、In膜151a側についても同様である。
【0078】
図8(b)に図示するように、Inめっき膜151と金(Au)めっき膜112は、半田付け後に残らない。また、形成された合金膜152には、InとAuは含まれない。半田付け後にInとAuはSn層(半田層)105に固溶する。
【0079】
以下、銅プレート104上のIn膜151bを中心として説明する。In膜151は半田層(接合層)105として接合部に形成する。したがって、
図3に図示するように、半田層(接合層)105に下層にも、In膜151bを配置または形成または構成する。
【0080】
図4はIn膜厚(もしくはIn合金の膜厚)とNi残り膜厚(相対比)の関係の説明図である。Ni-P膜111のNi膜の残り膜厚が大きいほど、接合層の状態は良好となる。一例として、In151の厚みは、半田層100μm時に、総In厚みが0.1μm以上、10μm以下にすることが望ましい。
【0081】
総In厚みとは、半田層(接合層)105の上側面にめっきされたIn膜151aの膜厚+半田層(接合層)105の下側面にめっきされたIn膜151bの膜厚を加算した厚みである。
【0082】
図4に図示するように、In膜厚151は、0.1μm以下では効果が得られず、10μm以上では、半田層がInSn層に変化するので好ましくない。In膜厚151は、0.5μm以上、5μm以下の範囲とすることにより、Ni残り膜厚が安定して、所定の膜厚を維持することができる。
Ni-P膜111と金めっき膜112間にIn膜を形成するプロセス(Ni-P/In/Auプロセス)はTM(サーモマイグレーション)を抑制する。
熱を与えて加熱する側(ホット側:Hot側)、その反対側を(コールド側:Cold側)と表示している。
【0083】
図20は、従来のNi-P/Auプロセス(Ni-P膜(めっき膜)111と金めっき膜112を積層する構造あるいはプロセス)の場合である。TM(サーモマイグレーション)試験後の銅(Cu)プレート104と半田層105との接合部のSEM写真である。
【0084】
図20では、半田層(接合層)105とHot側銅プレート104間に、Ni
2SnP、P-richが形成されている。金めっき膜112aは拡散し、また、Ni-P膜111は、Ni
2SnP、P-rich層となり、また、Ni-P膜111が消失している。Ni-P膜111の消失により、接合部にクラック等が発生しやすい。
図20の接合層は、銅プレート104と半田層(接合層)105間のSEM写真であるが、半田層(接合層)105とヒーターチップ109間も同様である。
【0085】
図21は、本発明のNi-P/In(1μm)/Auプロセス(Ni-P膜(めっき膜)111とIn膜151と金めっき膜112を積層する構造あるいはプロセス)の場合である。TM(サーモマイグレーション)試験後の銅(Cu)プレート104と半田層105との接合部のSEM写真である。接合層105に接する面に、Ni-P膜111a、In膜151b、金めっき膜112aが積層された構成である。
図21では、銅プレート104と半田層(接合層)105間に、(Ni,Cu)
3Sn
4、P-richが発生し、Ni-P111aが残存している。
【0086】
金めっき膜112aの金(Au)、Inめっき151bのInは拡散し、また、Ni-P膜111aが残存している。Ni-P膜111の残存により、接合部の接合状態が安定する。
【0087】
Hot側のNi-P層の消失が防止され、Cold側での合金層の粗大な堆積を防止する。したがって、TM試験による半田接合部の断線を防止あるいは抑制する。
【0088】
同様に、本発明のNi-P/In(1μm)/Auプロセスの構造は、ヒーターチップ109の基材106と半田層(接合層)105間にもある。Ni-P膜111d、In膜151a、金めっき膜112cが積層されている。この場合も、
図21と同様である。
【0089】
なお、薄膜111は、Ni-P膜として説明するが、他に、NiあるいはNi-Bで薄膜111を形成してもよい。薄膜111は接合層105と密着良く接合できる材料であれば、いずれの材料物であってもよい。ニッケル(Ni)以外に、例えば、錫、銀、金、銅、鉛、亜鉛、あるいはこれらの合金等が例示される。ただし、薄膜ヒーター117の構成として使用する場合は、適切な抵抗が存在する必要がある。薄膜ヒーター117等は発熱素子として使用するからである。
【0090】
図22は、本発明のNi-P/In(1μm)/Auプロセスあるいは構造における、リフロー後のIPFマップ(逆極点図方位マップ)である。リフロー後のβ-SnのC軸は接合面と平行になるように配向している。
【0091】
図23は、本発明のNi-P/In(1μm)/Auプロセスあるいは構造における、TM試験後のIPFマップである。リフロー後のβ-SnのC軸は接合面と平行になるように配向している。この傾向は、
図22のリフロー後と同様に、
図23のサーモマイグレーション(TM)試験後でも同様である。
【0092】
図22、
図23の点線枠で示すように、Ni-P/In/Auプロセスではリフロー後の半田層のβ-SnのC軸が、半田接合面と平行になるように配向する。β―Snのc軸方向は、a軸方向、b軸方向よりもCu及びNiのβ―Sn中での拡散が速い。
【0093】
本発明では、接合層105と密着でき、薄膜ヒーター117として用いるため抵抗値が比較的高いNiまたはNi-Pを例示している。以後、本明細書あるいは図面では、説明を容易にするため、薄膜111は、Ni-P膜111として説明する。
Ni-P膜111dの膜厚は、1μm以上10μm以下の膜厚が好ましい。特に、2μm以上6μm以下の膜厚にすることが好ましい。
【0094】
金めっき膜112cの膜厚は0.01μm以上とする。金めっき膜112cはNi-P膜111dの表面の酸化あるいは汚染を防止あるいは抑制する機能を有する。
【0095】
SiC基板106の表面には、薄膜ヒーター117、温度プローブ116が形成される。薄膜ヒーター117、温度プローブ116は、Ni-Pめっきによる薄膜で形成される。Niの他、白金(Pt)で構成あるいは形成してもよい。その他、亜鉛、錫、鉛、クロム等も使用することができる。金属以外、例えば、炭素(C)で形成することができる。
図5に図示するように薄膜ヒーター117の膜厚(μm)と薄膜ヒーター117の薄膜ヒーター117のシート抵抗値(Ω/sq)は、略線形の関係にある。
【0096】
図5に図示するように、薄膜ヒーター117の膜厚が厚くなると、シート抵抗値(Ω/sq)が相対的に小さくなり非線形の関係となる傾向にある(薄膜ヒーター117の膜厚(μm)>10.0(μm))。また、薄膜ヒーター117の膜厚が薄くなると、シート抵抗値(Ω/sq)が相対的に高くなり非線形の関係となる傾向にある(薄膜ヒーター117の膜厚(μm)<0.1(μm))。SiC基板106の粗面化状態、薄膜ヒーター117が曲線状に形成されているためと思われる。
【0097】
薄膜ヒーター117の膜厚とシート抵抗値(Ω/sq)とが線形の関係になる領域を採用することが好ましい。したがって、薄膜ヒーター117の膜厚は、0.1(μm)以上7.5(μm)以下とすることが好ましく、シート抵抗値(Ω/sq)は0.25(Ω/sq)以上1.00(Ω/sq)とすることが好ましい。なお、薄膜ヒーター117の抵抗値は、5Ω以上300Ω以下とすることが好ましい。
【0098】
図2に図示する温度プローブ116は薄膜ヒーター117と同一材料、同一プロセス工程で形成される。薄膜ヒーター117がNi-P膜の場合、温度プローブ116もNi-P膜で形成される。温度プローブ116は配線幅を細く形成し、全長での抵抗値を高くする。
【0099】
温度プローブ116には定電流を印加する。温度プローブ116の抵抗値を高くすることにより、抵抗値変化が大きくなり、定電流に対する温度プローブ116端子間の電圧変化が大きくなる。したがって、温度プローブ116が検出する薄膜ヒーター117の温度変化に関する感度が良好になる。温度プローブ116の抵抗値は、20Ω以上、1kΩ以下に作製または形成する。
【0100】
温度プローブ116の両端には端子電極114a、端子電極114bを形成する。薄膜ヒーター117の両端には端子電極115a、端子電極115bを形成する。端子電極114の表面等には金めっき膜112を形成する。端子電極115の表面等には金めっき膜112を形成する。金めっき膜112cの膜厚は0.01μm以上とする。
【0101】
薄膜ヒーター117、温度プローブ116上には、金めっき膜112は形成しない。金めっき膜112を形成すると、薄膜ヒーター117、温度プローブ116の抵抗値が低下し、発熱あるいは温度変化に関する感度が低下するからである。
【0102】
薄膜ヒーター117、温度プローブ116上には、SiO2膜、SiNx膜、SiON膜を形成し、薄膜ヒーター117、温度プローブ116の表面が酸化あるいは汚染されることを抑制してもよい。
【0103】
117は薄膜ヒーターとして説明するが、これに限定するものではない。薄膜ヒーター117は基板106を加熱するために配置または形成したものである。薄膜ヒーター117の代替えとして、ニクロム線を組み込んだ面ヒーター、ペルチェ素子を用いたヒーター等を使用してもよい。ニクロム線を組み込んだ面ヒーター、ペルチェ素子に流す電流によりベース基板106を加熱することができる。
【0104】
端子電極114および端子電極115には、リード線121を半田付け、あるいはプローブ(図示せず)を圧接し、電流電源装置803が出力する定電流を端子電極114または端子電極115に印加する。
【0105】
図6、
図7は、本発明のヒーターチップ109の製造方法の説明図である。
図6はヒーターチップの製造方法を示すフローチャートである。
図7(a)~
図7(f)は、ヒーターチップ109の製造方法を説明するための説明図である。
【0106】
SiC基板106の表面にマスク501を塗布する(
図6 S11、
図7(b))。マスク501としては、アルカリ可溶タイプのアクリルポリマーを含むものが好ましい。
【0107】
次に、フェムト秒レーザ装置を用いて、SiC基板106の表面を粗化する(
図6 S12、
図7(c))。フェムト秒レーザ光502またはピコ秒レーザ光502を照射し、SiC基板106の表面の、薄膜ヒーター117、温度プローブ116、端子電極114、端子電極115に対応する部分を除去して、角溝状の凹部503を形成する。フェムト秒レーザ光502等の照射により、凹部503の底面および側面は粗化(粗面化)される。
【0108】
フェムト秒レーザ光502による粗面化は、端子電極114、端子電極115に対応する箇所にも実施される。粗面化される箇所に、Ni-P膜111が形成される。
【0109】
端子電極114、端子電極115部は粗化される面積が大きい。温度プローブ116部は粗化される線幅が細い。温度プローブ116部は粗化を大きくする(粗化により発生する凹凸を深くする)ように、粗化される面積に依存して粗化状態を変化させることが好ましい。
粗化状態は、フェムト秒レーザ光502のレーザ強度、照射するレーザパルスの移動速度を変更あるいは設定することにより容易に実現できる。
【0110】
SiC基板106に裏面にも、Ni-P膜111dが形成される。したがって、SiC基板106のNi-P膜111dが形成される箇所にも、フェムト秒レーザ光502による粗面化が実施される。
【0111】
フェムト秒レーザ装置は、一般にパルス幅が、サブピコ秒から数十フェムト秒のフェムト秒レーザ光502を発生する。サブピコ秒から数十フェムト秒の超短パルスのレーザ光502を材料に照射した場合、材料の熱拡散特性時間に比べてパルス幅が十分に短いため、光エネルギーを有効に照射部に投入できる。
【0112】
その結果、照射周辺部への熱影響が局限することが可能で、高精度な微細加工が実現できる。また、レーザ光の電場強度が非常に高いので、ビームが集光されたところにのみ、空間選択的に多光子吸収、多光子イオン化等の非線形作用を誘起することができる。
【0113】
フェムト秒レーザ光502のパルスを照射することにより、薄膜ヒーター117、温度プローブ116を形成する部分に対応するマスク501の部分が除去され、凹部503が形成される。
【0114】
配線のパターニング(薄膜ヒーター117、温度プローブ116等)は、マスク501の表面に形成されたマークに基づいて行ってもよい。SiC基板106上に形成された十字マーク130(図示せず)等に基づいて位置決めを行う。
【0115】
SiC基板106上に形成された十字マーク130をカメラで取り込み、十字マーク130を画像認識して十字マーク130位置と設計座標を比較し、パターニング(薄膜ヒーター117、温度プローブ116等)位置(レーザ光を照射する箇所)に位置決めしてレーザ光502を照射する。
【0116】
SiC基板106に対し酸性脱脂剤を用い、例えば45℃、5分の条件で脱脂を行う(
図6 S13)。塩酸系水溶液を用いてプリディップ処理を行う(
図6 S14)。保持時間は、一例として、2分である。
【0117】
次に、Sn-Pd触媒504を凹部503の表面、およびマスク501の残存している部分の表面に付与する(
図6 S15、
図7(d))。Sn-Pd触媒504はコロイド状の粒子であり、Sn-Pdの核部の表面にSn-rich層、およびSn2+層が順に形成されている。
【0118】
次に、活性化を行う(
図6 S16)。Sn-Pd触媒504を付与したSiC基板106を塩酸系の溶液に浸漬することでSnの層が除去され、内部のPd触媒が露出する。Pd触媒が露出するので、Sn-Pd触媒504が存在する部分において、無電解Ni-Pめっき液による反応が生じる。
【0119】
アルカリ溶液を用いて、マスク501を剥離する(
図6 S17、
図7(e))。SiC基板106のマスク501が剥離された部分にはSn-Pd触媒504が存在しない。
【0120】
アルカリ溶液を用いて、マスク501を剥離する(
図6 S17、
図7(e))。SiC基板106のマスク501が剥離された部分にはSn-Pd触媒504が存在しない。
【0121】
SiC基板106の表面に無電解Ni-Pめっきを行い、薄膜ヒーター117、温度プローブ116が形成される(
図6 S18、
図7(f))。無電解Ni-Pめっき液としては、酸性領域から中性領域で次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする還元析出型の無電解Ni-Pめっき液を用いることができる。
【0122】
キレート剤としては、リンゴ酸、またはクエン酸、またはマロン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸、または酢酸やコハク酸等のモノカルボン酸、アンモニアやグリシン等のアミン類を単独もしくは複数併用して用いることができる。
無電解Ni-Pめっき液中の還元剤がSiC基板106上で電子を放出するように触媒として機能するPdが付与されている。
【0123】
したがって、無電解Niめっき液中のNiイオンが、還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、SiC基板106の表面に析出し、薄膜ヒーター117、温度プローブ116が形成される。
【0124】
本実施形態によれば、難めっき材料からなるSiC基板106に対して、特殊な薬液またはフォトリソグラフィの技術を用いることなく、容易に、密着性が良好であるNi-Pめっきを行うことができる。
【0125】
本実施の形態においては、マスク501を用い、薄膜ヒーター117、温度プローブ116に対応するSiC基板106の粗化部分のみにSn-Pd触媒504を残存させて、めっきを行うので、薄膜ヒーター117、温度プローブ116のパターニングの精度が良好であり、表面研磨が不要である。
【0126】
配線パターンに対応する部分以外の部分がマスク501により保護された状態で、配線パターンが容易に形成される。粗化部のみに無電解Ni-Pめっき111を行うので、所望の厚みの薄膜ヒーター117等を形成することができる。
【0127】
ヒーターチップ109は1つのSiC基板に複数個がマトリックス状に、かつ同時に作製される。各ヒーターチップ109は、Ni-P膜が形成後、各ヒーターチップ109の外枠部に、炭酸ガスレーザ光、YAGレーザ光等が照射されて削られ(レーザダイシング)、個片に分割される。また、ダイシング加工(湿式)、スクライブ(乾式)により、ヒーターチップ109個片に分割してもよい。
【0128】
図7(f)のNi-Pめっき膜111が、
図2のNi-Pめっき膜111dが該当する。Ni-Pめっき膜111d上にIn膜あるいはIn合金膜151aを形成、または配置される。In膜151a、あるいはIn合金膜151aの形成等は、電解めっきあるいは無電解めっき技術で実施される。
【0129】
In膜151a、あるいはIn合金膜151a上には、金めっき膜112cが形成される。なお、In膜151a、あるいはIn合金膜151aと、金めっき膜112c間に、必要に応じて、In拡散防止膜153を形成する。
【0130】
In膜151a、あるいはIn合金膜151a中のInと、金めっき膜112c中のAuは、半田付け後に残らない。InとAuは半田層(Sn層)105中に固溶する。
【0131】
図8(a)は、銅プレート104上に、Ni-Pめっき膜111aが形成され、Ni-Pめっき膜111a上に、In膜151b、あるいはIn合金膜151bが形成、または配置される。In膜151b、あるいはIn合金膜151bの形成等は、電解めっきあるいは無電解めっき技術で実施される。
【0132】
In膜151b、あるいはIn合金膜151b上には、金めっき膜112aが形成される。なお、In膜151b、あるいはIn合金膜151bと、金めっき膜112a間に、必要に応じて、In拡散防止膜153を形成する。
【0133】
In膜151b、あるいはIn合金膜151b中のInと、金めっき膜112a中のAuは、半田付け後に残らない。InとAuは半田層(Sn層)105中に固溶する。
【0134】
図3は、銅プレート104部の構成を説明するための説明図である。銅プレート104は説明を容易にするため、銅からなる基板として説明するがこれに限定するものではない。熱伝導性のよい基板、あるいはシートあるいは薄膜であればいずれのもの、あるいは構成であってもよい。
【0135】
例えば、カーボングラファイトからなる基板、セラミックプレート、ステンレスプレート、ニッケルプレート、銀プレート、銅薄膜、銅蒸着膜が例示される。本明細書では説明を容易にするため、銅プレート104として説明をする。
【0136】
一例として、銅プレート104は0.1mm以上2mm以下の銅板である。銅プレート104は、無酸素銅板であることが好ましい。銅プレート104の表面にはNi-P膜111a、Ni-P膜111bが形成される。Ni-P膜111a、Ni-P膜111bの膜厚、形成方法は、Ni-P膜111aと同様であるので説明を省略する。
【0137】
図3、
図9(a)に図示するように、銅プレート104上には、Ni-P膜111aが形成、または配置される。Ni-P膜111a上にはIn膜またはIn合金膜151bが形成、または配置される。In膜151b、またはIn合金膜151b上には、金めっき膜112aが形成される。
【0138】
また、
図9(b)に図示するように、
図9(a)の金めっき膜112a上に半田層(接合層)105が形成される。半田層(接合層)105の形成により、In膜151bのIn、金めっき膜112aのAuは拡散し、また、合金層152が半田層105とNi-P膜111a間に形成される。
銅プレート104下には、Ni-P膜111bが形成、または配置される。Ni-P膜111b下には金めっき膜112bが形成、または配置される。
銅プレート104の金めっき112b側は、放熱グリス等により、加熱冷却プレートと熱的に接続される。
【0139】
図10は、本発明の実施の形態に係る接合層評価装置の構成についての説明図である。
図10(a)は作製されたヒーターチップ109を示す。
図10(a)のヒーターチップ109は、
図10(b)に図示するように、銅プレート104と接合層105で接合される。
In膜151bの表面には金めっき膜112aが形成され、In膜151aの表面には金めっき膜112cが形成される。
ヒーターチップ109の金めっき112cと銅プレート104の金めっき112aとの間に評価する接合層105が形成される。
【0140】
一例として、接合層105は半田であり、半田シート(半田クリーム)が銅プレート104上にスクリーン印刷される。半田シート上にヒーターチップ109が実装される。実装後、銅プレート104とヒーターチップ109は一体として一定条件に設定されたリフロー炉に投入される。なお、半田シートの代わりに半田ペーストを用いても良い。
【0141】
接合層105は、半田等による接合層に限定するものではない。例えば、銀ペーストあるいは銅ペーストにより接着した接合層、放電加工による形成した接合層、高周波誘導加熱による接合層、電磁誘導加熱による接合層等に対しても適用できることは言うまでもない。また、有機物を押圧して接着した接合層、絶縁物も接合層であり、赤外線サーモグラフティカメラ108等で温度情報△Tを測定することができる。
【0142】
赤外線サーモグラフティカメラ108は、接合層105等を2次元的な温度分布を測定できる。2次元的に測定することにより、A点、B点等を中心に温度の変化を視覚的に表現および測定することができる。しかし、A点、B点等、特定の位置の温度情報△Tを得る目的であれば、放射温度計で測定することにより温度情報△Tを取得できる。
本明細書では、説明を容易にするため、接合層105は半田クリームまたは半田シートをリフロー工程で加熱することにより形成したものとして説明をする。
リフロー工程で半田付けする場合は、あらかじめ半田クリーム等を指定の場所に印刷しておき、それをリフロー炉で加熱し溶かすことによって部品と接合する。
【0143】
半田クリームは印刷された状態は一見、正常に半田付けされたように見えるが、半田はまだ細かい粒の状態なので正常な機能を果たせない。これをリフロー炉で加熱することで粒同士だった半田が接合し、フラックスも熱で気化させることで、通常の半田と同じ状態なり、半田付けされる。
【0144】
フロー半田で溶けている半田の温度とリフロー半田の炉の温度も異なる。使用部品の熱耐性を理解し、適正な工程設計をすることが重要になる。本発明の接合層評価装置で、接合層の温度情報△Tを測定することにより、接合層105を定量的に評価し、また、詳細な設計ができるようになる。
【0145】
本発明の接合層105の評価方法および接合層評価装置では、ヒーターチップ109で接合層105を加熱し、加熱条件(リフロー炉条件)に対応する変化あるいは加熱状態を異ならせる。また、接合層の材料混合状態(フラックスと半田の混合割合等)、使用材料の差異(フラックスあるいは半田材料の差異等)を異ならせて形成した接合層105を形成する。
【0146】
形成した接合層105を赤外線サーモグラフティカメラ108で測定し、温度分布状態、温度情報△T等を取得する。温度情報△Tの取得により、接合層の寿命、接合特性を定量的に評価する。
【0147】
図10(b)に図示するように、ヒーターチップ109と銅プレート104は接合層105で接合される。次に、
図10(c)に図示するように、A方向から、ヒーターチップ109、銅プレート104、接合層105は同時に、CC’線まで研磨加工される。
【0148】
研削加工とは、一例として、砥石車と呼ばれる円状の大きな工具を高速回転させ、その表面を加工するものに当てることにより、その表面を滑らかな状態に整える。この砥石車の表面には大きめの砥粒が無数につけられており、これによって対象物の表面の微小突起等を削ることができる。
【0149】
好ましくは、研磨は、CP(Cross section polisher)加工(イオンミリング)で行うことが好ましい。CP加工(イオンミリング)とは、集束していないブロードなアルゴンイオンビームを試料に照射し、試料原子を弾き飛ばすスパッタリング現象を利用して試料を削ることである。試料の表面にアルゴンイオンビームを入射させ、試料を作製する。CP加工では、研磨面に熱が発生せず、接合層105での熱による影響がない。
【0150】
次に、
図10(d)に図示するように、研磨加工した面に感光性ポリイミド膜を形成する。感光性ポリイミド膜は、スピンコート方法、スリットコート方法、スクリーン印刷による方法、インクジェットによる吹付ける方法、スプレーコート方法、ダイコート方法、ドクターナイフコート方法、フレキソ印刷等により、研磨加工した面に形成される。感光性ポリイミド膜を形成する箇所は少なくも接合層105を含む。
【0151】
図10(d)の矢印に図示するように、露光は、任意のパターンを有するフォトマスクを介して、200~2000mJの照射量、紫外線等を照射することにより行う。
【0152】
現像液としては、アルカリ現像液、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ等の水溶液を用いることができる。現像は、15℃~60℃程度で0.5分間~10分間程度行われる。硬化のための加熱は、120℃~200℃程度で30分間~120分間程度行われる。
【0153】
物体はその表面から赤外線を放射しており、物体表面の温度は赤外線の量によって決まる。また、赤外線は空間を伝ってエネルギーを運ぶという特徴がある。この空間を伝ってきた赤外線を、赤外線サーモグラフティカメラ108は光学的に読み取り、物体と接触させることなく温度を測定する。赤外線サーモグラフティカメラ108はオートフォーカスの機能を有する。
【0154】
測定対象物が放射する実際の熱放射エネルギー量と、同じ温度の完全放射体(黒体)の熱放射エネルギー量の比を放射率と呼ぶ。
完全放射体(黒体)はそこに入射する全てのエネルギーを吸収し、その温度に対応したエネルギーを熱放射する。赤外線サーモグラフティカメラ108では完全放射体(黒体)の放射率を1.0として校正されており、実際の物体測定では放射率を予め設定し、補正する。
【0155】
研磨加工面の構成材料あるいは構成組成が異なると、熱放射エネルギー量の比である放射率が異なる。しかし、研磨加工面の構成材料あるいは構成組成に、補正をすると補正による差異が発生する可能性がある。また、研磨された金属のように反射率の高い物体は放射率の測定に適さない。
【0156】
図10(d)に図示するように、本発明は、研磨加工面の接合層105に感光性ポリイミド膜107を形成する。感光性ポリイミド膜107の放射率を測定し、予め設定しておけば、研磨加工面の構成材料あるいは構成組成の影響を受けず、形成した接合層105を赤外線サーモグラフティカメラ108、放射温度計等で測定し、温度分布状態、温度情報△T等を精度よく取得することができる。温度情報△T等の取得により、接合層の寿命、接合特性を定量的に評価できる。
【0157】
以上の実施例では、研磨加工面に感光性ポリイミド膜107を形成するとしたが、これに限定するものではない。例えば、耐熱性のポリイミドフィルム107を貼り付けてもよい。また、耐熱性のポリイミドフィルム107を接合層105等に密着して配置してもよい。
【0158】
ポリイミドフィルム107あるいはポリアミドフィルム107として、米国デュポン社のカプトン(登録商標)、宇部興産のユーピレックス(登録商標)、ユニチカのユニアミド(登録商標)が例示される。
【0159】
赤外線サーモグラフティカメラ108、放射温度計は、赤外線放射を温度測定に利用するため、測温抵抗体や熱電対と比べ応答速度が早い。熱容量の小さい物体、熱伝導率の小さい物体、微小面積の物体の温度測定が可能である。非接触で温度測定を行うことができる。
【0160】
図10(c)で説明したように、観察面はCC’線で研磨される。研磨により表面に平滑化され、良好な観察ができる。研磨された接合層は、反射率が高い場合があり、この場合は放射率の測定に適さない。
【0161】
本発明は、研磨され、観察する面に感光性ポリイミド膜、ポリイミドフィルム107、ポリアミドフィルム107等を形成、または配置することにより、観察面からの放射率を安定させ、定量的に放射率を測定できるように構成している。
なお、感光性ポリイミド膜は、硬化させず、塗付状態であっても放射率は安定して測定することができる。
【0162】
次に、
図10(e)に図示するように、銅プレート104と加熱冷却プレート101とを取り付ける。取り付けは、一例として、放熱グリス118を使用する。放熱グリス118で、変性シリコンのグリスが例示される。このグリスに、熱伝導率の高い金属あるいは金属酸化物の粒子(フィラー)を混合したものを採用することが好ましい。
【0163】
粒子として主に用いられるのは銅や銀、アルミニウム等の他に、アルミナや酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等も用いられる。これらの単体、もしくは混合物を、それらの粒子直径に見合った分散方法を用いて分散させる。
【0164】
塗布直後は適度な粘度を維持しても、使用後時間が経過すると劣化し硬化することがある。そのため固形化したグリスに、接合する材質の線膨張係数の差によってクラックが入る場合があり、伝導特性が低下する場合がある。
【0165】
放熱グリス118との接続は、上下を押さえつけるだけでも良いが、特に高温が想定される場合は、低温リフローを実施し、確実な密着を確保することが好ましい。
図10(e)に図示するように、端子電極114および端子電極115に半田チップ136を実装する。
【0166】
図10(e)に図示するように、接合層105および当該近傍を、ポリイミド、ポリアミドのフィルムまたは膜を介して、赤外線サーモグラフティカメラ108等で観察する。
【0167】
赤外線サーモグラフティカメラ108はXYZステージ110に搭載される。XYZ(X軸、Y軸、Z軸)ステージ110は、X軸方向(左右方向)の移動と位置決め、Y軸方向(接合層105とカメラ108の距離)の移動と位置決め、Z軸方向(上下方向)の移動と位置決めを行う。XYZステージ110の軸移動は1μmの位置決め精度を有する。また、必要に応じて、θ方向にも回転する。
【0168】
加熱冷却プレート101をXYZステージ110に搭載あるいは積載し、加熱冷却プレート101をX軸、Y軸、Z軸方向に移動あるいは位置決めしても良いことは言うまでもない。
図1は、本発明の接合層の評価方法および接合層評価装置の説明図である。加熱冷却プレート101内には、循環水パイプ102が配置されている。
【0169】
チラー(冷却・加温装置)103と、加熱冷却プレート101、加熱冷却プレート101とチラー103間を循環する循環水パイプ102を有する。加熱冷却プレート101には、評価対象物の接合層105を有するヒーターチップ109および銅プレート104が積載されている。
【0170】
薄膜ヒーター117には、電流電源装置803bから端子電極115a、端子電極115bを介して、定電流Ib(
図11参照)を印加する。温度プローブ116は、電流電源装置803aから端子電極114a、端子電極114bを介して、定電流Ia(
図11を参照)を印加する。
【0171】
薄膜ヒーター117に定電流Iaを流し、接合層105を加熱する。評価結果あるいは評価の途中に、評価サンプルの評価を停止、あるいは制御方法を変更する。
【0172】
赤外線サーモグラフティカメラ108で観察して取得される温度情報△Tあるいは温度情報△Tの変化で、評価サンプルの特性変化を判定あるいは判定する。あるいは、接合層105の特性、状態を評価する。
本発明の接合層の評価方法において、接合層105の劣化、あるいは特性変化にあわせて、外部条件を変更あるいは設定する。
【0173】
例えば、接合層105の変化が大きい場合あるいは、接合層105の温度が所定値より高い場合は、ヒーターチップ109に流す電流Ibを小さくする。また、循環水パイプ102に流れる冷媒(水等)の温度を下げる。接合層105の変化が小さい場合、あるいは、接合層105の温度が所定値より低い場合は、ヒーターチップ109に流す電流Ibを大きくする。また、循環水パイプ102に流れる冷媒(水等)の温度を上げる。
【0174】
チラー103は水や熱媒体の液温を管理しながら循環させることで、機器等の温度を一定に保つことができるように構成している。主に冷却に用いる場合が多いが、冷やすだけでなく温めることもできる。様々な温度の制御を実施できるように構成している。
【0175】
なお、本明細書では循環水として説明するが、水に限定されるものではない。エチレングリコール、グリセリン等でも良いし、強制空冷であってもよい。チラー103は循環水パイプ102内の液体を、例えば、水温マイナス1℃からプラス100℃までの範囲で制御して試験ユニットの加熱冷却プレート101に供給する。加熱冷却プレート101は十分に大きな熱容量を持っている。
【0176】
上記実施形態では加熱冷却プレート101を使用したが、加熱プレートと冷却プレートを別体とし、加熱冷却プレート以外の熱源・冷熱源を用いて加熱・冷却するものであってもよい。
【0177】
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置では、接合層105および当該近傍の温度分布状態を測定、あるいは取得することにより、接合層105を定量的に評価する。
【0178】
接合層105等は、接合層105内のボイドの状態、半田の金属材料の合金割合、フラックスの含有、半田の金属材料の種類、半田金属材料への不純物の溶融割合で特性等が異なる。これらは、リフロー条件(温度、時間、温度変化速度)等によっても変化あるいは異なる。
【0179】
通常のボイドは主にガス化したフラックスが接合層105内にとどまって発生する。リードが細い、または小さい場合には、半田量が十分であれば融点以上を長くすることでかなり解消することができる。これは、フラックス効果で溶融半田の表面張力が抑えられ、熱対流することによってガスが接合層105内部から放出され、解消される。同時に、基板や部品リード表面からのガスも放出される。
パッケージあるいは実装部品形態であるBGA、CSPでは部品の下に半田が印刷されるため、発生したガスは部品下部にとどまりやすくなるが、ボール分だけ部品と基板に隙間があるので、半田の流動性が保持される限りにおいて、ガスはボール内から外へ放出される。
逆に、リードレス部品やパワー系部品では部品と基板ランド間に隙間がないので、発生ガスやフラックス残渣はそのまま部品下にとどまり、大きなボイドを形成する。
ボイドは実装時に発生したガスが、半田の流動性不足や溶融時間の短さ等の理由で外部に排出されなかった際に発生する。
【0180】
電子部品、基板、半田ペーストが吸湿し、リフロー時に水蒸気として発生する。半田印刷時に発生した粒子間の隙間がリフロー後、ボイドとなる。プリント配線板や電子部品に凹部があり、その上に実装すると凹部と部品間に隙間ができ、半田が流れ込むことなくボイドとなる。クラックの経路にボイドがあるとクラックの進行が加速する。ボイドの占有率と疲労寿命の関係が示されている。
【0181】
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は、温度分布状態、温度情報△T等を取得することにより、接合層105および当該接合層105近傍の状態を定量的に評価でき有効である。
【0182】
熱疲労試験により接合層105に劣化が発生している部分とその周囲には、温度情報△Tが大きい。温度情報△Tはヒーターチップ109による過熱(加熱)状態および過熱(加熱)時間に対応して変化する。時間経過後の温度分布を測定することにより、接合部105の寿命予測ができる。
【0183】
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は用いると、クラックの発生が加熱の初期段階で確認できる。また、発明の接合層の評価方法、接合層評価装置を用いることにより、ボイドの分布状態、フラックスの分布状態、接合層105の金属あるいは組成材質、合金状態等による温度情報△T、温度分布データを取得あるいは測定することができる。取得あるいは測定した温度情報△T、温度分布データにより、接合層105の状態を定量的に評価できる。また、接合層105の特性、寿命予測、故障率を定量的に評価、判定することができる。
【0184】
本発明の接合層の評価方法、接合層評価装置は用いることにより、接合層105の劣化に関して、劣化が進行しているか、進展速度を算出して、残存寿命を非破壊で容易に把握、あるいは算出することができる。また、サーモマイグレーション(TM)試験にも適用することができる。
接合層(接合層)105の劣化診断を行うためには、まず、温度分布の測定データから温度差分を抽出し、また、必要に応じて時間経過の温度差分を抽出する。
【0185】
その後、抽出されたデータを解析することにより、接合層105の特性評価、接合層105の劣化あるいは変化を検出することができる。また、このデータの解析により、接合層の寿命を評価あるいは予測することも可能である。
【0186】
赤外線サーモグラフィカメラの場合、温度分布の測定データを画像表示して、得られたデータ画像から時間経過の温度差分を抽出し、クラック、剥離等の発生している箇所を特定することができる。クラックの長さや大きさを計測することにより、温度分布の測定データの解析を行うことができる。また、接合層105の特性評価、接合層105の劣化あるいは変化を検出することができる。
図11は、本発明の接合層の評価方法および接合層評価装置の動作の説明図である。
【0187】
制御回路804には、放射温度計、あるいは赤外線サーモグラフティカメラ108からの温度情報△Tが入力され、温度情報△Tに基づいてチラー103を制御する。あるいは、温度情報△Tを所定値にするように、チラー103を制御する。
【0188】
また、制御回路804は、XYZステージ110を制御し、赤外線サーモグラフティカメラ108を移動し、接合層105に所定位置に位置決めする。また、所定間隔で接合層105位置を変化させ、温度情報△Tを取得する。
【0189】
制御回路804は、電流電源装置803aの定電流回路802a、スイッチ回路801aを制御し、温度プローブ116に定電流Iaを印加する。定電流Iaは端子電極114aと端子電極114b間に印加される。
【0190】
制御回路804は、電流電源装置803bの定電流回路802b、スイッチ回路801bを制御し、薄膜ヒーター117に定電流Ibを印加する。定電流Iaは端子電極115aと端子電極115b間に印加される。
【0191】
薄膜ヒーター117は、定電流Ibにより発熱し、発熱した熱は、SiC基板106を伝熱し、接合層105を加熱する。薄膜ヒーター117の発熱温度は、温度プローブ116の抵抗値を増加させる。
【0192】
温度プローブ116の周囲に薄膜ヒーター117が形成、または配置されている。薄膜ヒーター117の温度と、温度プローブ116の抵抗値は線形の関係となるように、ヒーターチップ109が構成されている。
【0193】
温度プローブ116には、定電流Iaが供給されている。温度プローブ116の抵抗値が高くなると、温度プローブ116の端子電極114aと端子電極114b間の電圧も温度に比例して変化する。電圧計122aで、温度プローブ116の端子電極114aと端子電極114b間の電圧を測定することにより、薄膜ヒーター117の発熱温度(SiC基板106の温度)を取得できる。
【0194】
なお、本明細書では循環水パイプ102に流れる冷媒は循環水として説明するが、水に限定されるものではない。エチレングリコール、グリセリン、フロン等でもよいし、強制空冷であってもよい。
【0195】
チラー103は循環水パイプ102内の液体を、例えば、水温マイナス1℃からプラス100℃までの範囲で制御して、試験ユニットの加熱冷却プレート101に供給する。加熱冷却プレート101は十分に大きな熱容量を持っている。
【0196】
本発明の実施形態では加熱冷却プレート101を使用したが、加熱プレートと冷却プレートを別体とし、加熱冷却プレート以外の熱源・冷熱源を用いて加熱・冷却するものであってもよい。
【0197】
電流電源装置803は、薄膜ヒーター117または温度プローブ116に供給する定電流Iaまたは定電流Ibを出力する。電流電源装置803は、制御回路804からの制御信号に同期させて、薄膜ヒーター117または温度プローブ116に電力(電流、電圧)を供給する。また、電流電源装置803は、出力する最大電圧値を設定することができる。
【0198】
スイッチ回路801は、電流電源装置803が出力する定電流の供給をオン(供給)オフ(遮断)させる。スイッチ回路801は制御回路804からの信号に基づき、オン(定電流を出力)またはオフ(定電流を遮断)に設定または制御される。通常、スイッチ回路801は試験開始前にオンされ、接合層105の試験中はオン状態に維持される。
【0199】
図11において、電流電源装置803a、電流電源装置803bは、各1台の電流電源装置を図示している。電流電源装置803は各1台に限定されるものではない。例えば、2台以上の電流電源装置803a、2台以上の電流電源装置803bを保有させてもよい。電流電源装置803a、電流電源装置803bの台数が増加するほど、多種多様な電流Ia、電流Ibの波形、あるいは電圧波形を発生させることができる。
本発明の実施例において、電流電源装置803として説明するが、電流電源装置803は定電流を出力するものに限定されるものではない。
【0200】
例えば、電流電源装置803に最大電圧を設定できるものを使用する。一定の条件で、設定された最大電圧において、所定の定電流を出力できるように機能させることが例示される。また、定電流を出力する場合に、出力端子電圧を所定の最大電圧を設定できるように構成することが例示される。
【0201】
本発明において、電流電源装置803は、定電流のみ出力する装置ではなく、電圧、電流を出力あるいは設定できる電源装置であってもよいことは言うまでもない。
【0202】
図11の実施例において、電流電源装置803で定電流を発生させるとして説明するが、定電流は、薄膜ヒーター117の抵抗の状態に応じて、印加電圧を調整することによっても実現できる。したがって、本発明において、電流を出力する電流電源装置803に限定するものではなく、電圧出力の電源装置で構成してもよいことはいうまでもない。また、電流+電圧出力の電源装置で構成してもよいことはいうまでもない。
【0203】
電流電源装置803bは、定電流Ibを薄膜ヒーター117に供給する。薄膜ヒーター117は印加される定電流Ibに対応して発熱する。発熱した熱は、SiC基板106を伝熱し、接合層105を加熱する。SiC基板106は熱伝導性が高い。一方、銅プレート104は加熱冷却プレート101により一定温度に保持される。
【0204】
接合層105の上側は、SiC基板106側からの薄膜ヒーター117の熱により加熱され、接合層105の下側は、銅プレート104により、一定温度に維持される。したがって、接合層105は上側から下側に温度情報△Tが発生する。放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108等は、主として接合層105上側の温度と接合層105下側の温度を測定する。当該温度差を温度情報△Tとして取得する。
【0205】
薄膜ヒーター117に定電流Ibが印加され、薄膜ヒーター117が発熱する。温度プローブ116には定電流Iaが印加される。定電流Iaは比較的小さい電流であり、当該定電流Iaで温度プローブ116が発熱することはほとんどないか、発生しない。薄膜ヒーター117に定電流Ibが印加され、薄膜ヒーター117が発熱する薄膜ヒーター117の発熱により温度プローブ116が加熱される。温度プローブ116は加熱される温度プローブ116の端子間電圧と温度の関係は予め取得しておく。
【0206】
温度プローブ116が加熱されると、温度プローブ116の端子間電圧(電圧計122aで測定)が変化する。制御回路804は端子間電圧を取得し、SiC基板106が所定の温度となるように、薄膜ヒーター117に流す定電流Ibを調整する。定電流Ibは、0.2A以上2A以下である。定電流Ibの設定刻みは、1mA以下とすることが好ましい。
以上の実施例では、定電流Ibの調整は、温度プローブ116の端子間電圧を測定して、薄膜ヒーター117に流す定電流Ibを調整するとした。
【0207】
定電流Ibの設定および調整は、放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108等でSiC基板106の温度あるいは接合部105の温度を測定することによっても実施できる。赤外線サーモグラフティカメラ108で温度情報△Tを測定し、温度情報△Tが所定値あるいは所定の範囲内か否かで、薄膜ヒーター117に流す定電流Ibを調整する。
【0208】
赤外線サーモグラフティカメラ108等による温度情報△Tと、温度プローブ116の端子間電圧(電圧計122aで測定)の両方を加味して、薄膜ヒーター117に流す定電流Ibを調整しても良いことは言うまでもない。
スイッチ回路801bをオンオフして、薄膜ヒーター117に流す定電流Ibをオンオフし、薄膜ヒーター117の発熱を調整あるいは設定してもよい。
【0209】
本発明のヒーターチップ109は
図2の構成だけではなく、多種多様な構成が例示される。一例として、
図18の構成あるいは構造が例示される。ヒーターチップ109の基板106は、SiCまたはAlN等で構成されている。
図18の基板106の表面には薄膜ヒーター117が渦巻き状あるいは同心状に形成、または配置されている。同様に温度プローブ116も渦巻き状または同心状に形成、または配置されている。
【0210】
薄膜ヒーター117を、渦巻き状あるいは同心状に構成あるいは形成することにより、SiC基板106等を均一に加熱することができる。薄膜ヒーター117には端子電極115aおよび端子電極115bに定電流Ibを印加する。
【0211】
薄膜ヒーター117には端子電極115aおよび端子電極115bに定電流Ibを印加する。温度プローブ116には端子電極114aおよび端子電極114bに定電流Iaを印加する。
【0212】
なお、薄膜ヒーター117は、ジグザグ状に形成する構成、四角形状に形成する構成、放射状に形成する構成も例示される。また、ヒーターチップ109に複数の薄膜ヒーター117を形成、または配置してもよいことは言うまでもない。以上の事項は、温度プローブ116に関しても同様である。
【0213】
図11では、1つの銅プレート104に、1つのSiC基板106と接合層105が配置された実施例のように図示している。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
【0214】
図12は、加熱冷却プレート101に1つの銅プレート104が配置され、1つの銅プレート104に複数の接合層105が形成された実施例である。各接合層105はそれぞれヒーターチップ109に挟持されている。
【0215】
接合層105aはヒーターチップ109aと銅プレート104間に挟持されている。接合層105bはヒーターチップ109bと銅プレート104間に挟持されている。接合層105cはヒーターチップ109cと銅プレート104間に挟持されている。接合層105dはヒーターチップ109dと銅プレート104間に挟持されている。接合層105eはヒーターチップ109eと銅プレート104間に挟持されている。
【0216】
それぞれの接合層105のA点およびB点の温度は、赤外線サーモグラフティカメラ108等で測定される。XYZステージ110に赤外線サーモグラフティカメラ108が配置され、XYZステージ110上を赤外線サーモグラフティカメラ108が移動し、各接合層105のA点、B点位置の温度情報△Tを取得する。
【0217】
各接合層105(接合層105a~接合層105e)は、接合層105を構成する材料あるいは組成を異ならせることにより、多様な接合層105の情報(特性、寿命等)を同時に得ることができる。
【0218】
また、各接合層105(接合層105a~接合層105e)のヒーターチップ109の温度を異ならせることにより、接合層105を加温する温度に対して、多様な接合層105の情報(特性、寿命等)を同時に得ることができる。
【0219】
なお、赤外線サーモグラフティカメラ108で接合層105の温度を測定するとしてが、温度に限定するものではない。温度に相関あるいは比例する値もしくは情報であればいずれのデータであっても良いことは言うまでもない。
【0220】
図13は、本発明の接合層の評価方法および接合層評価装置の説明図である。Ni-P膜111dと接合層105間には金めっき膜112cが形成され、Ni-P膜111aと接合層105間には金めっき膜112aが形成される。接合層105の形成により、金が接合層105に拡散するため、金めっき膜は消滅するため、図示していない。
【0221】
また、
図1、
図10、
図13、
図14、
図15、
図16、
図17等では、理解を容易にするため、In膜151を図示しているが、実際には、
図21のSEM写真で示すように、Inが拡散され、接合層(半田層)105とNi-P膜111間には、P-rich膜、(Ni,Cu)
3Sn
4膜からなる合金膜152が形成され、In膜151は存在しない。また、合金層153が形成される。In膜152は、合金膜152と置き換えても良い。
【0222】
図13に図示するように、薄膜ヒーター117に定電流Ibが印加されることにより、薄膜ヒーター117が発熱し、発生した熱はSiC基板106に伝熱される。発熱した熱により接合層105に拡散部901が発生する。拡散部901では、熱により接合層105を構成する材料、組成が移動、あるいは特性が変化する。また、クラック発生、ボイドの拡大、フラックス等の流出等が発生する。これらの変化あるいは発生により、接合層105の温度状態、温度情報△Tが変化する。
【0223】
接合層105の構造あるいは材料により、初期状態(薄膜ヒーター117で加熱し、接合層105が所定の温度になった状態)として特有の温度情報△T、あるいは温度情報△Tの差異が発生する。当該初期状態の温度情報△Tで接合層105を定量的に評価あるいは接合層105の特性を把握することができる。
【0224】
以上のように、本発明は、初期状態の温度情報△Tで接合層105を定量的に評価あるいは接合層105の特性を把握することができる。また、接合層105を加熱、あるいは加温することにより接合層105が変化する。温度情報△Tの取得により、変化状態を定量的に測定でき、寿命あるいは特性劣化状態あるいは経時変化を定量的に把握することができる。
【0225】
接合層105は上側が薄膜ヒーター117により加熱される。銅プレート104は加熱冷却プレート101により所定温度に維持されている。したがって、接合層105は上側から下側に温度分布が発生する、また、接合層105は上側から下側に温度情報△Tが変化する。
【0226】
接合層105が均一に形成されていると熱移動は容易になり、また、熱分布は均一となり、温度情報△Tも均一となる。接合層105にクラックあるいはボイドが発生していると、クラックあるいはボイド部分で熱移動が小さくなる。したがって、熱分布は不均一となり、温度情報△Tも接合層105の各部分で異なる。
【0227】
図14に図示するように、薄膜ヒーター117が発熱することにより、接合層105に点線で示すような温度分布が発生する。温度分布は接合層105の組成、構造、材料を示す。
【0228】
図14に図示するように、接合層105のA点、B点での温度を赤外線サーモグラフティカメラ108で測定をする。A点、B点の温度(温度情報△T)から温度情報△Tを求める。温度情報△Tで接合層105の状態を定量的に把握することができる。
【0229】
接合層105において、赤外線サーモグラフティカメラ108で複数個所の温度情報△Tを取得し、接合層105の複数点間で温度情報△Tを求めることにより、接合層105を定量的に評価することができる。また、接合層105を加熱または過熱し、所定の時間の経過後と初期状態での温度情報△Tを比較することにより、接合層105の寿命あるいは劣化を定量的に測定することができる。
【0230】
図14では、放射温度計、赤外線サーモグラフティカメラ108で、A点およびB点の温度情報△Tを測定するとした。詳細に接合層105の特性、構造、寿命等を測定あるいは把握するには、
図15に図示するように、3点以上の箇所で温度情報△Tを取得する。
【0231】
図15では、9点の測定点を等間隔(d/2)で測定している。dは略接合層105の膜厚とする。
図15に図示するように、接合層105をマトリックス状に温度情報△Tを取得する。取得した各点の温度情報△Tから各点間の温度情報△Tを求める。
温度情報△Tは、故障率と相関がある。
図19は温度情報△Tと故障率との関係を模式的に図示した説明図である。
【0232】
温度情報△Tが小さい場合、接合層105が均一、ボイドあるいはクラック等が発生してないか、または少ない。温度情報△Tが大きい場合、温度情報△Tが不均一な場合等は、接合層105に不均一材料混合、ボイド、クラック等が発生している場合が多い。
【0233】
図19に図示するように、温度情報△Tが△T1以下の場合は、故障率がF1までと一定以下である。しかし、温度情報△Tが△T1以上の場合、△T1を超えると急激に故障率が大きくなる。
接合部105は、所定の故障率F2以下に収める必要があるとすると、温度情報△Tは△T2以下となるようにする必要がある。
【0234】
各接合層105を作製し、赤外線サーモグラフティカメラ108で温度情報△Tを取得することにより、接合層105を定量的に評価でき、故障率を把握できる。また、薄膜ヒーター117で接合層105を過熱することにより、接合層105の寿命、劣化を定量的に測定あるいは把握することができ、故障率を予測することができる。
【0235】
図19のグラフを、作製した接合部105の試料の温度情報△Tと当該故障率を測定、あるいは取得して作成する。グラフを作成することにより、新たに作製した接合部105を赤外線サーモグラフティカメラ108等で温度情報△Tを取得することにより、故障率が定量的に予測することができる。
【0236】
図16は、薄膜ヒーター117で接合層105を加熱した状態を熱シミュレーションした状態を図示したものである。薄膜ヒーター117により、接合層105には、温度分布が発生する。
【0237】
熱シミュレーションは、Ni-P膜111(In膜151)の膜厚・配置位置、薄膜ヒーター117の膜厚・配置位置、ヒーターチップ109の形状・配置位置、ヒーターチップ109に印加電流、温度プローブ116の形状・配置位置、接合層105の材料あるいは組成と膜厚等の情報のうち、少なくとも1つ以上の情報を設定することにより、実現することができる。
【0238】
赤外線サーモグラフティカメラ108で取得するA点、C点、B点の温度情報△Tも熱シミュレーションで求めることができる。熱シミュレーションした値と赤外線サーモグラフティカメラ108で測定した値との相関をとることができる。
【0239】
図11に図示するように、赤外線サーモグラフティカメラ108は接合層105の端面の温度情報△Tを取得する。取得した温度情報△Tを用いて、薄膜ヒーター117に印加する定電流Ibを可変あるいは設定する。
【0240】
赤外線サーモグラフティカメラ108の測定と、変化させる定電流Ibとは同期を取ることが好ましい。定電流Ibを変化させたタイミングに同期して、赤外線サーモグラフティカメラ108の測定を実施する。また、変化させる定電流Ibと温度プローブ116の端子電圧の測定も同期させることが好ましい。
【0241】
薄膜ヒーター117に印加する定電流Ibの設定は、
図17に図示するように、端面からt距離だけ離れた位置(深さ方向)である接合層105の中央部D点での温度情報△Tを取得し、中央部D点の温度情報△Tを用いて定電流Ibを設定できることが好ましい。
【0242】
中央部D点での温度情報△Tは直接測定することはできない。本発明は
図16に図示するように、熱シミュレーションを実施し、
図17に図示するように端面b1からt距離離れたD点の下層での熱シミュレーションによるA点、B点、C点の温度情報△Tを求める。
【0243】
熱シミュレーションを実施することにより、例えば、
図17(b1)がb1線での熱シミュレーションによる温度分布状態、
図17(b2)がb2線での熱シミュレーションによる温度分布状態、
図17(b3)がb3線での熱シミュレーションによる温度分布状態として求まる。また、b1線での温度分布情報に赤外線サーモグラフィカメラによる温度情報△Tを使用して、熱シミュレーションによりb2線およびb3線の温度分布状態を求めてもよい。この場合、実測値に基づいた熱シミュレーションになるため、より正確にb1線およびb3線の温度分布状態を求めることができる。
【0244】
本発明は、熱シミュレーションにより接合層105の中央部または任意の箇所の温度情報△Tを求め、求めた温度情報△Tに基づき薄膜ヒーター117の定電流Ibを制御する。したがって、温度制御を精度よく実施することができる。
【0245】
薄膜ヒーター117、温度プローブ116はベース基板106の上面に形成するとしたが、これに限定するものではない。例えば、ベース基板106が接合層105に接する面に形成してもよい。例えば、Ni-P膜111dとベース基板106間に、薄膜ヒーター117と温度プローブ116のうち少なくとも一方を形成してもよい。
【0246】
この構成の場合は、ベース基板106の下面に、薄膜ヒーター117等を形成し、薄膜ヒーター117等上にSiO2等の絶縁膜を形成し、その上に、Ni-P膜111dを形成する。
銅プレート104にはNi-P膜111a、In膜151b、ベース基板106にはNi-P膜111d、In膜151aを形成するとした。
【0247】
接合層105に種類に応じて、適時、適切な材料を選定すればよいことは言うまでもない。例えば、接合層105が半田の場合は、ニッケル(Ni)、錫、鉛などが例示される。接合層105がエポキシ樹脂などの有機物の場合は、エポキシ樹脂用プライマーが例示される。この場合は、エポキシ樹脂用プライマーは電極ではなく、接触層(接触層)として機能する。
【0248】
本明細書および図面等において、ベース基板106は基板として説明するがこれに限定するものではない。ベース基板106は、フィルムとしてベースフィルム106であってもよい。少なくとも、部材に薄膜ヒーター117等の発熱材と、接合のための仲介層111dを有するものであればいずれの構成であってもよい。
【0249】
本明細書および図面等において、銅プレート104として説明するが、銅プレート104はプレートに限定されるものではない。プレートはフィルムあるいはシートであってもよい。また、厚みのある個体部材であってもよいことは言うまでもない。銅プレート104は、一方の面に接合のための仲介層111aを有するものであればいずれの構成であってもよい。
【0250】
薄膜ヒーター117および温度プローブ116は薄膜に限定されるものではない。線材などで構成され、一定の厚みを有する構成物であってもよいことは言うまでもない。薄膜ヒーター117は面状発熱体ヒーター、セラミックヒーター、フィルムヒーター、面状発光体カーボン、ペルチェ素子からなるヒーター等が例示される。なお、ヒーターとは加熱手段であればいずれのものであってもよい。温度プローブ116は、熱電対、放射温度計等であっても良いことは言うまでもない。
【0251】
本明細書等において、銅プレート104の裏面に加熱冷却プレート101を配置し、銅プレート104を所定温度に維持するとしたが、これに限定するものではない。例えば、加熱冷却プレート101の表面にNi-P膜111a、In膜151bを直接形成し、当該Ni-P膜111aとSiC基板106のNi-P膜111d、In膜151b間に接合層105を配置してもよい。
【0252】
銅プレート104の機能として、1つは接合層105の片面を、均一な所定温度にするために採用する。したがって、銅プレート104は金属に限定されるものではない。例えば、AlN、SiC、セラミックなど伝熱性が高いプレート、あるいはシートを採用することができる。プレート104は、少なくとも接合層105との接触面積以上の面積があり、当該面積部において均質な熱伝導率を有する部材である。
【0253】
ポリイミドシート107はシートに限定されるものではない。板状の樹脂部材を粘着材等で接合層105に貼り付けても良い。また、アクリル系、エポキシ系等の樹脂を塗布してもよい。また、ポリイミドに限定されるものでななく、前駆体のポリアミドなどを採用してもよい。
【0254】
温度を測定あるいは取得する手段として、赤外線サーモグラフティカメラ108を例示した。しかし、接合層105および当該近傍の温度を、非接触で測定できるものであればいずれのものでも採用できる。例えば、放射温度計が例示される。
以上のように、本発明の接合層の評価方法および接合層評価装置は、接合層の評価、構成、寿命などを定量的に評価できる。
【0255】
以上、本明細書において、実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
本明細書および図面に記載した事項あるいは内容は、相互に組み合わせることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0256】
電極間の接合層等を、温度分布の測定データに基づいて、非破壊で、接合層の劣化を容易に検出することが可能となる。また、半田接合層等の寿命の評価を容易に行うことが可能となる。また、劣化の検知および寿命の評価の信頼性評価に利用できる。
【符号の説明】
【0257】
101 加熱冷却プレート
102 循環水パイプ
103 チラー
104 銅プレート
105 半田層(接合層)
106 SiC基板
107 ポリイミドシート(ポリアミド)
108 赤外線サーモグラフティカメラ
109 ヒーターチップ
110 XYZステージ
111 Ni-P膜(めっき膜)
112 金めっき膜
114 温度プローブ端子電極(金めっき膜)
115 薄膜ヒーター端子電極(金めっき膜)
116 温度プローブ(Ni-P膜)
117 薄膜ヒーター(Ni-P膜)
118 放熱グリス
119 粗化面
120 マスキングテープ
121 リード線
122 電圧計
123 半田
124 エレクトロマイグレーション(EM)端子電極(金めっき膜)
125 焼結Agペースト充填層
126 高温半田
127 配線
128 電流
129 銅板(放熱板)
130 十字マーク
131 スルーホール(TH)
132 電流印加経路
134 焼結Agペースト充填部
135 半田シート
136 半田チップ
137 リード線
151 In膜
152 合金膜
153 In拡散防止膜
501 マスク(アルカリ可溶性タイプアクリルポリマー含む)
502 レーザ光(フェムト秒レーザ光)
503 凹部
504 Sn-Pd触媒
801 スイッチ回路
802 定電流回路
803 電流電源装置
804 制御回路
901 拡散部
902 (フェムト秒)レーザ装置