(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】バターケーキ用プレミックス粉及びバターケーキ製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 10/00 20060101AFI20240731BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240731BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240731BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D2/14
A21D13/80
A23D9/00 502
(21)【出願番号】P 2020136755
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020060005
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399017027
【氏名又は名称】有限会社お菓子のピエロ
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【氏名又は名称】藤本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】大日田 哲男
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-93308(JP,A)
【文献】特開2003-299443(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103548912(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0029034(KR,A)
【文献】特開2020-18177(JP,A)
【文献】特開2016-163567(JP,A)
【文献】特開2018-99090(JP,A)
【文献】特開2012-125168(JP,A)
【文献】特開2019-162094(JP,A)
【文献】特開2019-170308(JP,A)
【文献】特開2020-68657(JP,A)
【文献】特開2021-94019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23D 7/00;
9/00
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉100質量部に対して水中油型乳化物を乾燥させ粉末化した粉末油脂を25~35質量部、糖類を45~65質量部、全卵粉末を12~20質量部、アーモンドプードルを10~30質量部含有することを特徴とするバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項2】
粉末油脂に含有する油脂が当該粉末油脂100質量部に対して38~65質量部であることを特徴とする請求項1記載のバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項3】
粉末油脂が、水に溶解した時の油滴のメディアン径が0.2~0.8μmである粉末油脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項4】
アーモンドプードルを
粉末油脂100質量部に対して40~75質量部含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項5】
穀粉が小麦粉又は米粉であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項6】
バターケーキがマドレーヌであることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉100質量部に対して牛乳を44~52質量部加えて1分30秒~4分ミキシングして泡立て、オーブンにより160~200℃で焼成することを特徴とするバターケーキの製造方法。
【請求項8】
ハンドミキサーを用いて回転数が900~3000回転/分でミキシングすることを特徴とする請求項7記載のバターケーキの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバターケーキ用プレミックス粉及びバターケーキの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子用プレミックス粉は、簡単に洋菓子が製造できることから広く市販されている。ところが、従来の洋菓子用プレミックス粉は、製造工程における製造条件において少しでもレシピと異なる過程があると、味、風味、食感が大きく低下するという問題があった。特に、子どもや福祉施設の利用者等の洋菓子製造の経験が少ない人が製造する場合においては本来の品質となるように製造することが難しかった。そこで、簡単かつミスのない工程でマドレーヌ等の洋菓子を製造できるプレミックス粉が求められていた。
【0003】
近年、汎用されるオーブンで製造可能な洋菓子の開発が進められており、たとえば、穀粉、卵類、糖質、および、水中油型乳化物および粉末油脂から選ばれる少なくとも1種の起泡性油脂素材を含有する起泡生地を、オーブンを用いて焼成する、挟み焼き様の多孔質な内層構造を有する薄板状焼き菓子の製造方法(特許文献1参照)や、粉末油脂と、焙煎小麦粉と、を含む、焼き菓子練り込み用油脂組成物であって、前記粉末油脂の質量は、前記焙煎小麦粉の質量に対して、0.1倍以上14.0倍以下である油脂組成物(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―093308号公報
【文献】特開2020-018177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、牛乳を所定量加えて混ぜるだけで、バターケーキ用の生地ができるバターケーキ用プレミックス粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、穀粉に対して所定の粉末油脂及びアーモンドプードル等を含有することにより、牛乳を所定量加えて混ぜるだけで、バターケーキ用の生地ができるバターケーキ用プレミックス粉ができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕穀粉100質量部に対して水中油型乳化物を乾燥させ粉末化した粉末油脂を25~35質量部、糖類を45~65質量部、全卵粉末を12~20質量部、アーモンドプードルを10~30質量部含有することを特徴とするバターケーキ用プレミックス粉。
〔2〕粉末油脂に含有する油脂が当該粉末油脂100質量部に対して38~65質量部であることを特徴とする上記〔1〕記載のバターケーキ用プレミックス粉。
〔3〕粉末油脂が、水に溶解した時の油滴のメディアン径が0.2~0.8μmである粉末油脂であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載のバターケーキ用プレミックス粉。
〔4〕アーモンドプードルを穀粉100質量部に対して10~30質量部含有することを特徴とする上記〔1〕~〔3〕のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
〔5〕穀粉が小麦粉又は米粉であることを特徴とする上記〔1〕~〔4〕のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
〔6〕バターケーキがマドレーヌであることを特徴とする上記〔1〕~〔5〕のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉。
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれか記載のバターケーキ用プレミックス粉100質量部に対して牛乳を44~52質量部加えて1分30秒~4分ミキシングして泡立て、オーブンにより160~200℃で焼成することを特徴とするバターケーキの製造方法。
〔8〕ハンドミキサーを用いて回転数が900~3000回転/分でミキシングすることを特徴とする上記〔7〕記載のバターケーキの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバターケーキ用プレミックス粉を用いることにより子ども、福祉施設の入居者等の焼菓子の製造経験が少ない人でも牛乳をまぜるだけで簡単にバターケーキ用の生地を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、実施例1の配合で製造したカップ入りのマドレーヌの斜視方向から撮影した写真であり、
図1(b)は実施例1の配合で製造したマドレーヌの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(バターケーキ用プレミックス粉)
本発明のプレミックス粉は、穀粉100質量部に対して水中油型乳化物を乾燥させ粉末化した粉末油脂を25~35質量部、糖類を45~65質量部、全卵粉末を12~20質量部、アーモンドプードルを10~30質量部含有するバターケーキ用プレミックス粉(以下、「本件バターケーキ用プレミックス粉」ともいう)であればよく、かかるバターケーキ用プレミックス粉は牛乳と混ぜて泡立てて生地を作製し、オーブンで焼成するだけで容易にバターケーキを製造することが可能となる。
【0011】
本件バターケーキ用プレミックス粉に用いる穀粉としては、薄力粉、強力粉、中力粉、デュラム粉等の小麦粉、米粉、大麦粉、トウモロコシ粉、そば粉、大豆粉等を挙げることができ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本件バターケーキ用プレミックス粉に含有する「水中油型乳化物を乾燥させ粉末化した粉末油脂」は、油脂、乳タンパク質、乳化剤、糖質、水、及び必要に応じて他の成分を配合して水中油型に乳化後、水中油型乳化物を乾燥させ粉末化することによって製造することができ、たとえば上記特許文献1又は2の記載に基づいて製造することができる。簡潔に記載すると、油脂に乳化剤を添加し、60~70℃で加熱して撹拌後、油相を調製する。次に、該油相と同量の温水に乳タンパク質、糖質を添加して加熱し、水相を調製する。水相と油相とを混合した後、高圧ホモジナイザーを用いて均質化し、水中油型乳化物を得ることができる。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することで粉末油脂を得られる。
【0013】
上記油脂としては、ナタネ油、コーン油、大豆油等の植物性油脂を好適に挙げることができる。また、上記乳タンパク質としては、カゼインナトリウム、ホエイタンパク等の乳タンパク質を挙げることができる。さらに、上記乳化剤としては、レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。また、上記糖質としては、コーンシロップ、グルコース、フルクトース、ショ糖、デンプン等を挙げることができる。
【0014】
上記粉末油脂は、水中油型乳化物を乾燥したものであり、水に添加すると元の水中油型乳化物となり、油滴が再分散した状態となる。上記粉末油脂を再分散した際の水に溶解した油滴のメディアン径としては、生地の泡立ち及び仕上がったバターケーキのソフトな食感を引き出す観点から好ましくは0.2~0.8μm、より好ましくは0.25~0.4μmを挙げることができる。油滴のメディアン径は、油滴の粒度分布をレーザー回折散乱法によって測定し、粒度分布からメディアン径(積算で50体積%における直径)を算出することで得ることができる。
【0015】
上記粉末油脂は市販品を用いてもよく、たとえば乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、被覆剤としてカゼインナトリウム、コーンシロップ、油脂としてナタネ油を用いて水中油型に乳化し乾燥させて得た粉末油脂であり、粉末化起泡剤として販売されているマジカルケーキ(登録商標:ミヨシ油脂社)又はマジカルエース(登録商標:ミヨシ油脂社)を用いてもよく、ソフトな食感を引き出す観点からはマジカルケーキを用いることが好ましい。
【0016】
本件バターケーキ用プレミックス粉に含有する上記粉末油脂は、穀粉100質量部に対して25~35質量部、好ましくは27~32質量部、さらに好ましくは28~30質量部を挙げることができる。また、上記粉末油脂に含有する油脂は、当該粉末油脂100質量部に対して38~65質量部、好ましくは40~50質量部を挙げることができる。
【0017】
本件バターケーキ用プレミックス粉に含有する糖類としては、てんさい糖、グラニュー糖、上白糖、三温糖、オリゴ糖、ブドウ糖等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができる。なお、本件バターケーキ用プレミックス粉の長期保存による凝集及びバターケーキ製造工程における溶解性の維持の観点からは、水分が少ないてんさい糖又はグラニュー糖であることが好ましい。
【0018】
本件バターケーキ用プレミックス粉において上記糖類(粉末油脂に含有する糖類を除く)の含有量は、穀粉100質量部に対して45~65質量部、好ましくは50~60質量部を挙げることができる。45質量部未満とするとバターケーキの仕上がりが硬くなってしまう。また、65質量部を超えると生地が柔らかくなってしまうと共にバターケーキの仕上がりもこしが落ちてふっくら感がなくなり、さらに焦げやすくなってしまう。
【0019】
本発明のバターケーキ用プレミックス粉において上記全卵粉末の含有量は、穀粉100質量部に対して12~20質量部、好ましくは15~18質量部を挙げることができる。
【0020】
本発明のバターケーキ用プレミックス粉において上記アーモンドプードルの含有量は、穀粉100質量部に対して10~30質量部、好ましくは14~22質量部、より好ましくは15~20質量部を挙げることができる。また、上記粉末油脂100質量部に対して好ましくは40~75質量部、より好ましくは45~70質量部を挙げることができ、上記粉末油脂に含有する油脂100質量部に対して好ましくは80~160質量部、より好ましくは100~150質量部を挙げることができる。アーモンドプードルにより、牛乳と混ぜて攪拌する際の泡立ての時間に幅を持たせることができる。すなわち、最適な泡立ちとなる攪拌時間の幅を広げることができるため、洋菓子製造に不慣れな人が製造する際に、攪拌時間が所定の時間よりも少し短くなったり、長くなったとしてもほどよい泡立ちを維持することができ、仕上がりにばらつきが少なくなる。さらに、アーモンドプードルを加えることにより焼き上がりの色あいも向上する。
【0021】
本発明のバターケーキ用プレミックス粉には、さらに通常洋菓子の製造に配合される任意の成分を含有してもよい。かかる任意の成分としては、ベーキングパウダー、ココアパウダー等のカカオ成分、バター又はマーガリン等の上記粉末油脂及びアーモンドプードル以外の油脂、香料、酸化防止剤、調味料、香辛料等を挙げることができる。ただし、バター又はマーガリン等の室温で溶けにくい油脂は、生地作製時の溶解性の観点から、本件バターケーキ用プレミックス粉における含有量は、穀粉100質量部に対して好ましくは0~5質量部、より好ましくは0~3質量部、さらに好ましくは0~1質量部、最も好ましくは0質量部を挙げることができる。ベーキングパウダーを含有する場合には、穀粉100質量部に対して好ましくは0~0.7質量部、より好ましくは0.4~0.5質量部を挙げることができる。
【0022】
(バターケーキの製造方法)
本発明のバターケーキの製造方法は、上記本件バターケーキ用プレミックス粉100質量部に対して牛乳を44~52質量部、好ましくは46~50質量部ほど加えて1分30秒~4分ミキシングして泡立て、オーブンにより160~200℃で焼成する方法(以下、「本件バターケーキの製造方法」ともいう)であればよく、かかるバターケーキの製造方法により、牛乳を加えるだけで容易にバターケーキ用の生地が作製可能である。
【0023】
ミキシングは1分30秒~4分、好ましくは1分45秒~3分を挙げることができる。1分30秒未満であれば泡立ちが不十分でありバターケーキの仕上がりが硬くなり、4分を超えると過剰な泡立ちとなり生地に粘りが生じて硬くなり、焼成する際にバターケーキ用カップに生地を注ぎにくくなる他、焼成時間を長くする必要が生じると共に焼き上がりが硬くなるという問題が生じる。
【0024】
ミキシングはハンドミキサーを用いることが好ましい。家庭用の泡たて器による手動攪拌では泡立ちが不十分である。ハンドミキサーを用いる場合でも、できるだけ高速回転で行うことが好ましく、用いる攪拌機のビーダーの形状や大きさにより適宜調製できるが、たとえば家庭用のハンドミキサーであれば回転数が900~3000回転/分、好ましくは920~1200回転/分を挙げることができる。なお、原料に結晶を形成しやすい原料、バターやマーガリン等の加熱しなければ溶解しにくい原料を含まないようにすることで、ミキシングの際に加熱又は冷却により生地の温度を調整する必要は無く、室温で行うことができる。生地の温度管理を正確にコントロールすることは難しく、生地の温度調整を不要とすることで、洋菓子製造経験が少ない人でもばらつきなく容易にバターケーキを製造可能となる。
【0025】
焼成温度としては、170~190℃、好ましくは175~185℃、より好ましくは180℃を挙げることができ、焼成時間は焼成温度に合わせて調整できるが、たとえば170℃であれば18~20分、180℃であれば17~19分、190℃であれば16~18分を挙げることができる。また、焼成手段としては家庭用又は業務用のオーブンを用いることができる。
【0026】
本件バターケーキ用プレミックス粉及び本件バターケーキの製造方法におけるバターケーキとしては、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ、マフィン、シフォンケーキ、ホットケーキ、ワッフル、パウンドケーキ等を挙げることができる。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
[原料及び配合の検討]
1.生地の原料
バターケーキとしてマドレーヌを製造するための生地の作製に用いた原料の配合は以下の表1に示すとおりである。なお、粉末油脂(マジカルケーキ、マジカルエース:ミヨシ油脂社)の配合は表2のとおりである。
【0029】
【0030】
【0031】
2.マドレーヌの製造
以下の手順でマドレーヌを製造した。なお、いずれの手順も室温(10~25℃)で行った。
(1)バターケーキ用プレミックス粉250gをボールに入れた。次に、ボールに牛乳120gを加えてハンドミキサー(MK-H4:パナソニック社)で約2分高速(950回/分)でミキシングを行い、生地を調製した。
(2)生地がよく混ざったらゴムへらでボールの周りをきれいにして生地が全体に混ざるまでよく混ぜた。
(3)マドレーヌ用カップに生地を25gずつ分注して、予め180℃に熱したオーブンで180℃にて18分焼成してマドレーヌを製造した。
【0032】
得られたマドレーヌの風味、食感、見た目を10名のトレーニングされたパネラーにより総合的に4段階で評価した。評価の基準は以下のとおりである。
<風味>
◎ 良好な風味を感じる
○ 風味を感じる
△ 風味をあまり感じない
× 風味を感じない
<食感(ソフト感)>
◎ ほどよいソフト感、ふわっとして口溶けの良さをとても感じる
○ ほどよいソフト感、ふわっとして口溶けの良さを感じる
△ ほどよいソフト感、ふわっとして口溶けの良さをあまり感じない
× ほどよいソフト感、ふわっとして口溶けの良さを感じない
<見た目(焼き色)>
◎ きれいなきつね色でつやのある焼き上がり
○ きつね色でつやのある焼き上がり
△ きつね色の焼き上がり
× ムラのあるきつね色の焼き上がり
【0033】
風味、食感、見た目の評価結果を表3に示す。また、実施例1の配合で製造したマドレーヌの写真を
図1に示す。
【0034】
【0035】
比較例1の粉末油脂なしでは、いずれの評価も悪く、特に食感は硬くてソフト感を感じられなかった。粉末油脂としてはマジカルケーキを用いた実施例1~3、6において、マジカルエースを用いた実施例4、5と比較して生地作製の際の泡立ちがよく、仕上がりも風味、食感がよく、特に実施例1、6ではふわっとしたソフト感、口溶けの良さが優れていた。ただし、粉末油脂を加えた場合であっても、アーモンドプードルなし(比較例2~4)では風味、食感が失われていた。また、マジカルケーキを用いた場合であっても、全卵粉末及びアーモンドプードルの量が多い方が、よりソフト感、口溶けの良さが優れていた。さらに、穀粉としては小麦粉でも米粉でも評価が良かったが、米粉の方が口溶けの良さが優れていた。
【0036】
[ミキシング時間の検討]
上記ではミキシングの時間を2分としたが、洋菓子の製造に慣れていない人にとってはちょうど2分とすることは難しいこともある。そこで、多少時間のばらつきがあっても品質の維持が可能かどうかを調べるために、ミキシングの時間を1分、1分30秒、1分45秒、2分、2分15秒、2分30秒、3分、4分に変えて、実施例1と同じ配合とした以外は上記と同様の方法でマドレーヌを製造し、食感を評価した。ハンドミキサーは高速(950回/分、又は中速820回/分)で攪拌を行った。ハンドミキサーを高速で攪拌した場合の結果を表4に示す。
【0037】
【0038】
その結果、ミキシング時間として泡立ちは2分が最適であったが、ちょうど2分としなくても、1分30秒~4分と幅広い範囲で泡立ちが良好であり、仕上がりの風味、食感も高評価であった。これは、生地にアーモンドプードルを含んでいることから、ミキシング時間が2分を超えてもミキシングによる過剰な泡立ちが抑制されたと考えられる。なお、ハンドミキサーを中速で攪拌した場合には1分30秒~4分のいずれも高速で攪拌した場合と比較すると泡立ちが低かった。また、ハンドミキサーを用いずに手で攪拌した場合には泡立ちが完全に不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバターケーキ用プレミックス粉を用いれば、幼稚園、保育園、小学校、中学校、福祉施設等にいるバターケーキ製造経験が少ない人でも牛乳と混ぜるだけで容易にバターケーキを製造できる。実際に本発明者は、2019年度に山口県内の中学校にて30人に対してのバターケーキ製造指導を5回、福祉施設にて30~40人に対してのバターケーキ製造指導を5回行ったが、中学生、あるいは福祉施設の入居者のいずれも失敗することなくバターケーキを製造することができた。