(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ソフトアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240731BHJP
H02K 41/06 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K41/06
(21)【出願番号】P 2021029297
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509315700
【氏名又は名称】清水 創太
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 創太
(72)【発明者】
【氏名】栗原 北斗
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-109753(JP,A)
【文献】特開昭60-174058(JP,A)
【文献】特開2018-019477(JP,A)
【文献】特開2007-124893(JP,A)
【文献】特開平06-269178(JP,A)
【文献】特開平07-131966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0289359(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017206390(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流に基づいて異なる極性に変更可能な極性可変素子が行列状に配置された固定子と、
前記固定子と対向配置された曲折可能な可変素子を有し、前記可変素子の面に、極性が異なる磁極部が交互に配置された可動子と、
を有し、
前記可動子は、前記固定子における前記極性可変素子の極性の切り替えに応じて、前記可変素子が、前記固定子の面に接触及び非接触を繰り返して前記固定子の面に沿って移動し、
前記固定子の面に沿って前記可動子を移動させるための基本構成となる、前記極性可変素子と前記磁極部の行列の数が異なる、
ソフトアクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子は、前記可変素子が、非弾性部材、又は、伸縮自在な弾性部材でなる、
請求項1に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子は、外周面を有した筒状又は柱状に形成され、前記外周面が前記固定子の面に接触及び非接触を繰り返して前記固定子の面に沿って移動する、
請求項1又は2に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項4】
前記可動子は、シート状に形成され、表面が前記固定子の面に接触及び非接触を繰り返して前記固定子の面に沿って移動する、
請求項1又は2に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項5】
前記固定子は、筒状体である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項6】
前記可動子は、前記固定子の軸方向、前記固定子の周方向、及び、前記軸方向と前記周方向との両方向に対して傾斜した斜め方向のうち、少なくともいずれかの方向に、隣接する前記磁極部の間の距離が伸長と短縮とを繰り返し、前記固定子の内周面に沿って前記固定子の筒内空間を尺取虫状に移動する、
請求項5に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項7】
前記固定子は、
前記可動子を前記軸方向と前記周方向とに移動させる際の励磁方式が、N相励磁方式、又は、N-(N+1)相励磁方式であり、
前記可動子を前記斜め方向に移動させる際の励磁方式が、前記軸方向及び前記周方向への移動時がN相励磁の第1方式、前記軸方向への移動時がN相励磁で前記周方向への移動時がN-(N+1)相励磁の第2方式、前記軸方向への移動時がN-(N+1)相励磁で前記周方向への移動時がN相励磁の第3方式、及び、前記軸方向及び前記周方向への移動時が(N+1)相励磁の第4方式、のうち、いずれかである、
(前記Nは2以上の正の数であり、前記-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)
請求項6に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項8】
前記固定子は、シート状体である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項9】
前記可動子は、前記固定子の面方向内における一方向、前記面方向内で前記一方向と直交する他方向、及び、前記面方向内で前記一方向と前記他方向との両方向に対して傾斜した斜め方向のうち、少なくともいずれかの方向に、隣接する前記磁極部の間の距離が伸長と短縮とを繰り返し、前記固定子の表面に沿って尺取虫状に移動する、
請求項8に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項10】
前記固定子は、
前記可動子を前記一方向と前記他方向とに移動させる際の励磁方式が、N相励磁方式、又は、N-(N+1)相励磁方式であり、
前記可動子を前記斜め方向に移動させる際の励磁方式が、前記一方向及び前記他方向への移動時がN相励磁の第1方式、前記一方向への移動時がN相励磁で前記他方向への移動時がN-(N+1)相励磁の第2方式、前記一方向への移動時がN-(N+1)相励磁で前記他方向への移動時がN相励磁の第3方式、及び、前記一方向及び前記他方向への移動時が(N+1)相励磁の第4方式、のうち、いずれかである、
(前記Nは2以上の正の数であり、前記-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)
請求項9に記載のソフトアクチュエータ。
【請求項11】
前記固定子では、
前記可動子の第1領域の前記磁極部と、前記第1領域と隣接した第2領域の前記磁極部と、を前記極性可変素子の極性を変えて前記固定子に接触させる第1極性変更と、
前記第2領域の前記磁極部を前記固定子に接触させたまま、前記第1領域の前記磁極部が接触している位置の前記極性可変素子と、前記可動子の移動方向に位置する前記極性可変素子の極性と、を変え、前記移動方向に位置する前記極性可変素子に前記第1領域の前記磁極部を引き寄せて、前記移動方向に位置する、極性を変えた前記極性可変素子の新たな位置に、前記第1領域の前記磁極部を接触させる第2極性変更と、
前記第1領域の前記磁極部を前記固定子の前記新たな位置に接触させたまま、前記第2領域の前記磁極部が接触している位置の前記極性可変素子と、前記可動子の移動方向に位置する前記極性可変素子の極性と、を変え、前記移動方向に位置する前記極性可変素子に前記第2領域の前記磁極部を引き寄せて、前記移動方向に位置する、極性を変えた前記極性可変素子の位置に、前記第2領域の前記磁極部を接触させる第3極性変更と、
が行われる、
請求項1~10のいずれか1項に記載のソフトアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボティクス分野における遠隔操縦技術の需要が高まっており、例えば、特許文献1に示すような配管内移動装置や、特許文献2に示すような管内移動装置など、管内で構造体を遠隔操作によって移動させる様々な移動メカニズムが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6716824号公報
【文献】特開2020-134714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2では、いずれも車輪などを備えた移動装置(可動子)を、比較的、物理的強度が高い管状体(固定子)の筒内で移動させる構成であり、例えば、軟質なチューブ体の中空内で移動装置を移動させることは難しい。このため、移動装置である可動子を簡易な構成とし、物理的強度が高い管状体だけでなく、物理的強度が低い軟質なチューブ体など、種々の筒状体内で可動子を自由に移動させたり、或いは、単なる平面状のシート状体などでも可動子を自由に移動させることができる新たな移動メカニズムの開発が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、様々な固定子に対して可動子を自由に移動させることができるソフトアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のソフトアクチュエータは、電流に基づいて異なる極性に変更可能な極性可変素子が行列状に配置された固定子と、前記固定子と対向配置された曲折可能な可変素子を有し、前記可変素子の面に、極性が異なる磁極部が交互に配置された可動子と、を有し、前記可動子は、前記固定子における前記極性可変素子の極性の切り替えに応じて、前記可変素子が、前記固定子の面に接触及び非接触を繰り返して前記固定子の面に沿って移動し、前記固定子の面に沿って前記可動子を移動させるための基本構成となる、前記極性可変素子と前記磁極部の行列の数が異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車輪や駆動装置などを可動子に設けることがなく、その分、簡易な構成とし得、固定子に極性可変素子を設けることで、様々な固定子に対して可動子を自由に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るソフトアクチュエータの全体構成を示す概略図である。
【
図2A】実施形態に係る固定子及び可動子の構成を示す概略図である。
【
図2B】軸方向に並んだ磁極部間の所定の可変部が交互に伸長及び短縮したときの可動子を示す概略図である。
【
図3】可動子が軸方向に伸縮したときの構成を示す概略図である。
【
図4】可動子が径方向に伸縮したときの構成を示す概略図である。
【
図5】固定子の極性可変素子の極性を変えて可動子を変形させたときの様子を示す概略図である。
【
図6】並進動作第1パターン1、並進動作第1パターン2及び並進動作第1パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図7】並進動作第1パターン4及び並進動作第1パターン5の状態を説明するための概略図である。
【
図8】並進動作第2パターン1、並進動作第2パターン2及び並進動作第2パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図9】並進動作第2パターン4、並進動作第2パターン5及び並進動作第2パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図10】並進動作第2パターン7、並進動作第2パターン8及び並進動作第2パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図11】並進動作第3パターン1、並進動作第3パターン2及び並進動作第3パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図12】並進動作第3パターン4、並進動作第3パターン5及び並進動作第3パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図13】並進動作第3パターン7、並進動作第3パターン8及び並進動作第3パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図14】回転動作第1パターン1、回転動作第1パターン2及び回転動作第1パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図15】回転動作第1パターン4及び回転動作第1パターン5の状態を説明するための概略図である。
【
図16】回転動作第2パターン1、回転動作第2パターン2及び回転動作第2パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図17】回転動作第2パターン4、回転動作第2パターン5及び回転動作第2パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図18】回転動作第2パターン7、回転動作第2パターン8及び回転動作第2パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図19】回転動作第3パターン1、回転動作第3パターン2及び回転動作第3パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図20】回転動作第3パターン4、回転動作第3パターン5及び回転動作第3パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図21】回転動作第3パターン7、回転動作第3パターン8及び回転動作第3パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図22】並進回転動作第1パターン1、並進回転動作第1パターン2及び並進回転動作第1パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図23】並進回転動作第1パターン4及び並進回転動作第1パターン5の状態を説明するための概略図である。
【
図24】並進回転動作第2パターン1、並進回転動作第2パターン2及び並進回転動作第2パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図25】並進回転動作第2パターン4、並進回転動作第2パターン5及び並進回転動作第2パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図26】並進回転動作第2パターン7、並進回転動作第2パターン8及び並進回転動作第2パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図27】並進回転動作第3パターン1、並進回転動作第3パターン2及び並進回転動作第3パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図28】並進回転動作第3パターン4、並進回転動作第3パターン5及び並進回転動作第3パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図29】並進回転動作第3パターン7、並進回転動作第3パターン8及び並進回転動作第3パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図30】並進回転動作第4パターン1、並進回転動作第4パターン2及び並進回転動作第4パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図31】並進回転動作第4パターン4、並進回転動作第4パターン5及び並進回転動作第4パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図32】並進回転動作第4パターン7、並進回転動作第4パターン8及び並進回転動作第4パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図33】並進回転動作第5パターン4、並進回転動作第5パターン5及び並進回転動作第5パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図34】並進回転動作第5パターン7、並進回転動作第5パターン8及び並進回転動作第5パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図35】並進回転動作第6パターン1、並進回転動作第6パターン2及び並進回転動作第6パターン3の状態を説明するための概略図である。
【
図36】並進回転動作第6パターン4、並進回転動作第6パターン5及び並進回転動作第6パターン6の状態を説明するための概略図である。
【
図37】並進回転動作第6パターン7、並進回転動作第6パターン8及び並進回転動作第6パターン9の状態を説明するための概略図である。
【
図38】並進回転動作第6パターン10、並進回転動作第6パターン11及び並進回転動作第6パターン12の状態を説明するための概略図である。
【
図39】並進回転動作第6パターン13の状態を説明するための概略図である。
【
図40】他の実施形態に係るソフトアクチュエータの全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面について本発明の一実施の形態を詳述する。以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(1)本実施形態に係るソフトアクチュエータの概略
図1及び
図2Aに示すように、本実施形態に係るソフトアクチュエータ1は、筒状の固定子2と、固定子2の筒内空間に配置される筒状の可動子3と、固定子2に接続された駆動部4と、を有する。ソフトアクチュエータ1は、固定子2の中心軸AX1と可動子3の中心軸AX2とが同軸上に配置されており、可動子3が固定子2の筒内空間を移動する。
【0011】
この場合、ソフトアクチュエータ1は、固定子2に設けた複数の極性可変素子22に駆動部4からそれぞれ電流(励磁電流)が供給されることで、固定子2の表面におけるN極及びS極の極性パターンを極性可変素子22によって変え、固定子2の筒内空間に配置された、磁極部32を有する可動子3を、磁力によって変形させる。これにより、ソフトアクチュエータ1は、可動子3の外周面の所定位置が所定の周期で固定子2の内周面に接触及び非接触を繰り返して可動子3が尺取虫状に動作し、固定子2の筒内空間を可動子3が所定方向に移動する。
【0012】
固定子2は、例えば、ゴム等のような柔軟性のあるソフトな材料により形成された筒状体の固定子本体21を有し、固定子本体21の周面に、複数の極性可変素子22が行列状に配置されている。極性可変素子22は、例えば、励磁コイルなどでなり、駆動部4から所定の電流が供給され、N極素子22n又はS極素子22sとなるよう励磁される。
【0013】
可動子3は、例えば、ゴムのような弾性部材や布や紐のような非弾性部材による薄膜、シート状部材などの軟質な材料により形成された、筒状の可変素子31を有しており、可変素子31の直径が固定子2の直径よりも小さく、固定子2の筒内空間に収容可能な構成を有する。なお、本実施形態では、主として、布などの柔軟な非弾性部材により可変素子31を形成し、後述する磁極部32間の距離が伸長及び短縮する(すなわち、隣接する磁極部32が遠ざかり及び近づく)可変素子31を適用した例について以下説明する。
【0014】
可変素子31の周面には、チェッカーボード・パターンで、極性が異なる磁極部(以下、N極の磁極部をN極部33nと称し、S極の磁極部をS極部34sと称する)32が交互に配置されている。なお、N極部33n及びS極部34sは、例えば、永久磁石であり、例えば、シート状の永久磁石を可変素子31の表面に貼着したり、又は、粉末状にした永久磁石を可変素子31に混合するなどの手法により、可変素子31に設けられ得る。
【0015】
なお、本実施形態における、固定子2の極性可変素子22と可動子3の磁極部32の一例としては、例えば、四辺状に形成されているが、本発明はこれに限らず、円形状や五角形等の多角形状に形成してもよい。また、これら極性可変素子22と磁極部32との大きさは、同一の大きさに形成されていることが望ましい。ここで、極性可変素子22と磁極部32との大きさが同一とは、完全に同じである場合の他、極性可変素子22の極性変化により磁極部32を移動させることに鑑みて許容できる誤差程度(例えば、極性可変素子22と磁極部32の大きさの違いが±25%以内)に大きさがずれた場合も含み得る。ただし、極性可変素子22で発生する磁力の強さや、磁極部32の磁力の強さによっても、極性可変素子22の磁力により磁極部32を移動させる際に与える影響が異なってくるため、必ずしも極性可変素子22と磁極部32との大きさが同一である必要はなく、後述する「(2)並進動作」、「(3)回転動作」及び「(4)並進回転動作」が実現できるのであれば、極性可変素子22と磁極部32との大きさや形状は特に限定されるものではない。
【0016】
また、本実施形態に係る可動子3の可変素子31は、
図2Aに示すように、N極部33nとS極部34sとの間に柔軟な可変部35をそれぞれ有しており、N極部33n及びS極部34sが設けられていない可変部35の領域が曲折可能に構成されている。なお、可変素子31を弾性部材とした場合には、可変部35が伸縮可能に構成される。
【0017】
図2Bは、軸方向に並んだ磁極部32間の所定の可変部35が交互に伸長及び短縮したときの可動子3を示す概略図である。可動子3は、例えば、並進動作時(後述する)、周方向C1に並んだ磁極部32毎に、それぞれ軸方向に沿って磁極部32の間の可変部35が伸長及び短縮することで尺取虫状に動作し、固定子2の内部空間を移動可能に構成されている。
【0018】
ここで、
図3は、可変素子31を弾性部材とした場合に、可動子3が軸方向X1に伸長したときの構成を示す概略図である。例えば、可動子3においてN極部33n及びS極部34sのいずれにも、固定子2から磁力を受けていないとき、
図3の上段に示すように、N極部33n及びS極部34sの間にある可変部35は、所定の自然長を有する。
【0019】
可動子3は、例えば、固定子2のS極素子22sからの磁力によりN極部33nが当該S極素子22sに引き寄せられた状態になると、当該N極部33nがS極素子22sの位置に仮固定される。この状態のまま、例えば、可動子3のS極部34sから軸方向X1に所定距離離れた、固定子2の極性可変素子22の極性がN極素子22nになると、可動子3のS極部33sが磁力により当該N極素子22nに引き寄せられる。これにより、
図3の下段に示すように、可動子3は、N極部33nが固定子2のS極素子22sに仮固定されていることから、N極部33nとS極部34sとの間の一方の可変部35が伸長し、当該S極部34sと隣接する他方の可変部35が短縮する。これにより、可動子3は、S極部34sが固定子2のN極素子22nの位置にまで到達して、S極部34sがN極素子22nに仮固定される。
【0020】
このように可変素子31を弾性部材とした場合、可動子3では、可変部35が伸長することで、可変部35が自然長に戻ろうとする弾性力が働き、軸方向X1に沿って推進力が生じる。例えば、可動子3のN極部33nを仮固定している固定子2のS極素子22sが、N極素子22nに切り替わることで、可動子3は、磁力によるN極部33nの仮固定が解放され、伸長していた可変部35が短縮して、当該N極部33nがS極部34sへと移動する。
【0021】
なお、可変素子31を非弾性部材とした場合には、例えば、可動子3が軸方向X1に移動する際、S極部34sと隣接する一方の、たるんだ可変部35が軸方向X1に向けて伸長し、かつ、当該S極部34sと隣接する一方の可変部35がたるんで、当該S極部34sの位置が自由に可変する。これにより、当該S極部34sが固定子2のN極素子22nの位置にまで到達し、S極部34sがN極素子22nに仮固定される。このように、可変素子31が非弾性部材であってもN極部33n及びS極部34sの間にある可変部35が伸長及び短縮し、これらN極部33n及びS極部34sの位置を軸方向X1において変化させることができる。
【0022】
図4は、可動子3の周方向C1を直線的に展開した図であり、可変素子31を弾性部材とした場合に、可動子3のS極部34sが周方向C1にずれながら径方向Z1に移動したときの構成を示す概略図である。可動子3は、例えば、S極部34sと周方向C1にずれて対向配置された、固定子2の極性可変素子22(図示せず)の極性が、N極素子22nに切り替わると、N極素子22nからの磁力によりS極部34sが周方向C1にずれながら当該N極素子22nに引き寄せられる。このとき、可動子3は、
図4の点線で示すように、S極部34の一方に隣接する可変部35が伸長し、当該S極部34sと隣接する他方の可変部35が短縮して、当該S極部34sが固定子2のN極素子22nに引き寄せられ、S極部34sがN極素子22nに仮固定される。なお、
図4では、可動子3のN極部33nも、固定子2のS極素子22sにより径方向Z0に引き寄せられた状態を示しているが、可動子3のS極部34sと同様に、周方向C1にずれながら径方向Z0に移動し得る。
【0023】
なお、可変素子31を非弾性部材とした場合には、例えば、可動子3が周方向C1にずれながら径方向Z1に移動する際、S極部34sと隣接する一方の可変部35が伸長し、かつ、当該S極部34sと隣接する他方の可変部35がたるんで、当該S極部34sの位置が自由に可変する。これにより、当該S極部34sが、当該S極部34sの斜め方向に位置する、固定子2のN極素子22nの位置にまで到達し、S極部34sがN極素子22nに仮固定される。
【0024】
次に、固定子2の極性可変素子22の極性を変えて可動子3を変形させたときの様子を、
図5を用いて説明する。なお、
図5では、説明を簡単にするために、一例として、可動子3の周面において対角線上に4つの磁極部32を設け、固定子2の周面において対角線上に6つの極性可変素子22を設けた構成について以下説明する。可動子3の周面には、磁極部32として、S極部34sa,34scが対向する位置に設けられ、N極部33nb,33ndが対向する位置に設けられており、S極部34sa、N極部33nb、S極部34sc、N極部33ndというように極性を交互に変えて磁極部32が配置されている。
【0025】
図5の5A及び5Bは、後述する、「(3)回転動作」において説明する2相励磁の回転動作時における所定タイミングでの可動子3の状態を示す。なお、2相励磁の回転動作時における固定子2の極性可変素子22の極性パターンの変化については「(3)回転動作」にて詳細に説明する。
【0026】
この場合、駆動部4は、固定子2に設けた6つの極性可変素子22に配線を介して接続されているが、
図5では構成を簡単にするため、駆動部4と各極性可変素子22を接続する各配線は省略している。
【0027】
図5の5Aは、駆動部4からの電流を基に、例えば、固定子2の6つの極性可変素子22のうち、最上部の極性可変素子22をN極素子22naとし、右上部の極性可変素子22をS極素子22sbとし、右下部の極性可変素子22を無極素子22cとし、最下部の極性可変素子22をN極素子22ndとし、左下部の極性可変素子22をS極素子22seとし、左上部の極性可変素子22を無極素子22fとした場合を示す。
【0028】
この場合、可動子3は、例えば、固定子2の隣接する最上部のN極素子22na及び右上部のS極素子22sbにそれぞれS極部34sa及びN極部33nbが引き寄せられる。これにより、可動子3は、S極部34sa及びN極部33nbが近づき、S極部34sa及びN極部33nb間の可変部35が短縮する。また、可動子3は、右下部の無極素子22cにはN極部33nb及びS極部34scが引き寄せられず、無極素子22cの周方向に隣接する最下部のN極素子22ndにS極部34scが引き寄せられる。これにより、可動子3は、N極部33nb及びS極部34scが遠ざかり、N極部33nb及びS極部34sc間の可変部35が伸長する。
【0029】
同様に、可動子3は、固定子2の隣接する最下部のN極素子22nd及び左下部のS極素子22seにそれぞれS極部34sc及びN極部33ndが引き寄せられ、S極部34sc及びN極部33nd間の可変部35が短縮する。また、可動子3は、左上部の無極素子22fにはN極部33nd及びS極部34saが引き寄せられず、無極素子22fの周方向に隣接する最上部のN極素子22naにS極部34saが引き寄せられることにより、N極部33nd及びS極部34sa間の可変部35が伸長する。
【0030】
また、
図5の5Bは、駆動部4からの電流を基に固定子2の極性可変素子22の極性を変え、例えば、固定子2の極性可変素子22の極性が、
図5の5Aの状態から時計回り方向に1つずれている状態のときの一例である。具体的には、最上部の極性可変素子22を無極素子22aとし、右上部の極性可変素子22をN極素子22nbとし、右下部の極性可変素子22をS極素子22scとし、最下部の極性可変素子22を無極素子22dとし、左下部の極性可変素子22をN極素子22neとし、左上部の極性可変素子22をS極素子22sfとしたときの固定子2の構成を示す。
【0031】
ソフトアクチュエータ1では、固定子2における各極性可変素子22の極性を所定順序及び所定タイミングで変えてゆくことで、
図5の5A及び5Bに示すように、可動子3のS極部34sa,34sc及びN極部33nb,33ndを回転させることができる。具体的には、固定子2の極性可変素子22の極性を所定順序で変えてゆくことで、
図5の5Aに示すように、固定子2の最上部に位置していた可動子3のS極部34saを、
図5の5Bに示すように、固定子2の右上部に回転により移動させることができ、
図5の5Aに示すように、固定子2の右上部に位置していた可動子3のN極部33nbを、
図5の5Bに示すように、固定子2の右下部に回転して移動させることができる。同様に、
図5の5Aに示すように、固定子2の最下部に位置していた可動子3のS極部34scを、
図5の5Bに示すように、固定子2の左下部に回転により移動させることができ、
図5の5Aに示すように、固定子2の左下部に位置していた可動子3のN極部33ndを、
図5の5Bに示すように、固定子2の左上部に回転して移動させることができる。
【0032】
ソフトアクチュエータ1は、例えば、可動子3のS極部34sa、N極部33nb、S極部34sc、N極部33ndが周方向に移動することにより、S極部34sa及びN極部33nb間は、N極部33nb及びS極部34sc間等の隣接する磁極部32間の各可変部35が変形し、磁極部32間の距離がそれぞれ個別に伸長又は短縮することで、可動子3の所定位置が径方向に伸長又は収縮する。
【0033】
このようにして、ソフトアクチュエータ1は、駆動部4からの電流を基に、固定子2の極性可変素子22の極性パターンを変えることで、可動子3の外周面を固定子2の内周面に接触させたり、或いは、非接触とさせたりし、可動子3の外形を自由に変形させることができる。そして、ソフトアクチュエータ1では、このような可動子3の外周面が固定子2の内周面に接触する箇所を、軸方向X1に向けて順番にずらしたり、周方向C1に向けて順番にずらしたり、或いは、軸方向X1及び周方向C1に対して傾斜した斜め方向に向けて順番にずらしてゆくことで、所望の方向に可動子3を尺取虫状に動作させ、固定子2の筒内空間で可動子3を移動させることができる。
【0034】
(2)並進動作
以上のようにしてソフトアクチュエータ1は、固定子2の周面に行列状に配置された極性可変素子22の極性パターンを制御することで、固定子2の筒内空間に設けた可動子3の外形を所望の形状に変形させてゆき、固定子2の筒内空間で軸方向X1に沿って可動子3を移動させることができる。以下、固定子2の筒内空間において軸方向X1に沿って移動する可動子3の並進動作について説明する。
【0035】
(2-1)並進動作第1パターン
図6及び
図7は、固定子2の筒内空間において軸方向X1に沿って移動する可動子3の並進動作の第1パターン(並進動作第1パターン)を説明するための概略図である。
図6及び
図7では、固定子2において極性可変素子22が行列状に配置された円筒形状の固定子本体21を平面状に展開し、その一部領域を示した概略図を「固定子磁極配列」として図示している。また、
図6及び
図7では、可動子3において磁極部32が行列状に配置された円筒形状の可変素子31を平面状に展開し、その一部領域を示した概略図を「可動子磁極配列」として図示している。
【0036】
ここでは、可動子磁極配列において、周方向C1に並んだS極部34s及びN極部33nの対を第1領域MR1の磁極部32とし、この第1領域MR1と軸方向X1に隣接し、かつ周方向C1に並んだN極部33n及びS極部34sの対を第2領域MR2の磁極部32と称し、これら第1領域MR1の磁極部32(以下、単に第1領域MR1と称する)と、第2領域MR2の磁極部32(以下、単に第2領域MR2と称する)とに着目して、2行2列に配置された4つの磁極部32を軸方向X1に移動させる並進動作第1パターンについて説明する。
【0037】
また、固定子磁極配列では、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2(2行2列に配置された磁極部32)の並進動作第1パターンを実現する極性可変素子22が配置された領域(図中、固定子磁極配列において横点線間の領域)を注目領域ER1とし、以下、この注目領域ER1に着目して並進動作第1パターン時における極性パターンの変化について説明する。
【0038】
なお、固定子磁極配列の注目領域ER1は、3行2列に極性可変素子22が配置された構成を基本構成とし、1行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S11、1行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S12、2行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S21、2行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S22、3行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S31、3行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S32として説明する。
【0039】
並進動作第1パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を軸方向X1に移動させる際の注目領域ER1(3行2列に配置した極性可変素子22)での励磁方式が、当該注目領域ER1の極性可変素子22のうち、移動方向(軸方向X1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを常に同時に励磁する2相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2相励磁方式の並進動作第1パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進動作第1パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を軸方向X1に移動させる際の基本構成(注目領域ER1であり、(N+1)行N列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN相励磁方式となる。
【0040】
始めに、
図6の並進動作第1パターン1に示すように、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12を、N極及びS極のいずれの極性も与えない状態(以下、無極性と称する)とする。そして、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第1領域MR1と異なる極性として、可動子3の第1領域MR1を磁力により固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22に引き寄せる。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0041】
なお、本実施形態では、この際、可動子3における第1領域MR1の移動方向にある隣接領域MR0の磁極部32と、可動子3の第1領域MR1と、の間の可変部35においてその間の距離が伸長している。なお、可変素子31が弾性部材である場合には、このとき移動方向側への推進力が生じている。
【0042】
また、可動子3の第2領域MR2と対向する、固定子2の3行目の極性可変素子S31,S32を、第2領域MR2と異なる極性として、可動子3の第2領域MR2を磁力により固定子2の3行目の極性可変素子S31,S32に引き寄せる。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0043】
次に、
図6の並進動作第1パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第1領域MR1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MR1を固定子2の2列目の極性可変素子S
21,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0044】
次に、
図6の並進動作第1パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を無極性とするとともに、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12を、第1領域MR1と異なる極性とする。
【0045】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられる磁力により、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられ、軸方向X1に移動する。なお、可変素子31が弾性部材である場合には、このとき移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)によっても、可動子3の第1領域MR1が軸方向X1に移動する。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0046】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1が軸方向X1に移動することで、第1領域MR1と第2領域MR2とが離れ、これら第1領域MR1と第2領域MR2との間の可変部35が、移動方向である軸方向X1に伸長し、移動方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0047】
次に、
図7の並進動作第1パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0048】
次に、
図7の並進動作第1パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第2領域MR2と異なる極性とする。
【0049】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)により、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22に引き寄せられ、軸方向X1に移動する。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。
【0050】
このようにして、ソフトアクチュエータ1は、固定子2の注目領域ER1毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S21,S22,S31,S32の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1を軸方向X1に沿って移動させて固定子2の面に接触させた後、第2領域MR2を固定子2の面と非接触にして第1領域MR1に近づけるように軸方向X1に沿って移動させ、第2領域MR2を固定子2の面に接触させる。ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を軸方向X1に沿って繰り返し行うことで、固定子2の面に沿って可動子3を軸方向X1に移動させてゆくことができる。
【0051】
(2-2)並進動作第2パターン
次に、上述した並進動作第1パターンとは異なる、可動子3の並進動作の第2パターン(並進動作第2パターン)について説明する。
図8、
図9及び
図10は、固定子2の筒内空間において軸方向X1に移動する可動子3の並進動作第2パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER1、極性可変素子S
11,S
12,S
21,S
22,S
31,S
32などについては上述した「(2-1)並進動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0052】
並進動作第2パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を軸方向X1に移動させる際の注目領域ER1での励磁方式が、当該注目領域ER1の極性可変素子22のうち、移動方向(軸方向X1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、当該移動方向に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2-3相励磁方式の並進動作第2パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進動作第2パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を軸方向X1に移動させる際の基本構成(注目領域ER1であり、(N+1)行N列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN-(N+1)相励磁方式となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0053】
図8の並進動作第2パターン1は、上述した
図6の並進動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、可動子3の第1領域MR1と異なる極性とし、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性として、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を磁力により膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0054】
次に、
図8の並進動作第2パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第1領域MR1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MR1を固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0055】
次に、
図8の並進動作第2パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、の両方を可動子3の第1領域MR1と異なる極性とする。
【0056】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12と、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22との間に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材の場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)により、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12と、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22とを跨いだ中間領域ER10に引き寄せられる。このようにして、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の中間領域ER10部分まで移動させ、中間領域ER10部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0057】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1が軸方向X1に移動した際に、第1領域MR1と第2領域MR2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向側への推進力が生じた状態にすることが望ましい。
【0058】
次に、
図9の並進動作第2パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、磁力によって固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0059】
次に、
図9の並進動作第2パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第2領域MR2と異なる極性とする。
【0060】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22側に磁力によって引き寄せられる。この際、可動子3では、第1領域MR1が固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22と一部領域に位置していることから、第2領域MR2が、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22と、固定子2の3行目の極性可変素子S31,S32とを跨いだ中間領域ER11に位置する。
【0061】
これにより、中間領域ER11において、可動子3の第2領域MR2部分を、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22の一部領域で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。なお、このとき、可動子3の第1領域MR1は、極性が同じ、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22にも位置するが、極性が異なる、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられているため、固定子2の内周面と接触した状態を維持する。
【0062】
次に、
図9の並進動作第2パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12を、可動子3の第1領域MR1と同じ極性とする。これにより、可動子3の第1領域MR1を、固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12から引き離すことで、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0063】
次に、
図10の並進動作第2パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12を、可動子3の第1領域MR1と異なる極性とし、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とする。
【0064】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22と、3行目の極性可変素子S31,S32と、を跨いだ中間領域ER11で磁力により膨張(拡径)され、固定子2の内周面と接触する。また、可動子3の第1領域MR1は、磁力(可変素子31が弾性部材の場合には、伸長していた可変部35の移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられ、軸方向X1に移動する。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0065】
次に、
図10の並進動作第2パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32と、を可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の中間領域ER11から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0066】
次に、
図10の並進動作第2パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とし、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を無極性とする。これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力(可変素子31が弾性部材の場合には、伸長していた可変部35の移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22に引き寄せられ、軸方向X1に移動する。このようにして、可動子3の第2領域MR2部分を、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22部分まで移動させ、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0067】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER1毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S21,S22,S31,S32の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1を軸方向X1に沿って移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MR2を固定子2の面と非接触にして第1領域MR1に近づけるように軸方向X1に沿って移動させ、第2領域MR2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3が尺取虫状の動作を繰り返し行うことで、固定子2の面に沿って可動子3を軸方向X1に移動させてゆくことができる。
【0068】
また、この並進動作第2パターンでは、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を軸方向X1へ移動させる移動量を並進動作第1パターンの半分にすることができる。
【0069】
(2-3)並進動作第3パターン
次に、上述した並進動作第1パターン及び並進動作第2パターンとは異なる、可動子3の並進動作の第3パターン(並進動作第3パターン)について説明する。
図11、
図12及び
図13は、固定子2の筒内空間において軸方向X1に移動する可動子3の並進動作第3パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER1、極性可変素子S
11,S
12,S
21,S
22,S
31,S
32などについては上述した「(2-1)並進動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0070】
並進動作第3パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を軸方向X1に移動させる際の注目領域ER1での励磁方式が、当該注目領域ER1の極性可変素子22のうち、移動方向(軸方向X1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、当該移動方向に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2-3相励磁方式の並進動作第3パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進動作第3パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を軸方向X1に移動させる際の基本構成(注目領域ER1であり、(N+1)行N列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN-(N+1)相励磁方式となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0071】
図11の並進動作第3パターン1は、上述した
図6の並進動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、可動子3の第1領域MR1と異なる極性とし、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性として、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を磁力により膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0072】
次に、
図11の並進動作第3パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、第1領域MR1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MR1を固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0073】
次に、
図11の並進動作第3パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、の両方を可動子3の第1領域MR1と異なる極性とする。
【0074】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12と、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22との間に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)により、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12と、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22とを跨いだ中間領域ER10に引き寄せられる。このようにして、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の中間領域ER10部分まで移動させ、中間領域ER10部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0075】
なお、可変素子31を弾性部材とした場合、可動子3では、第1領域MR1が軸方向X1に移動した際に、第1領域MR1と第2領域MR2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0076】
次に、
図12の並進動作第3パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、の両方を可動子3の第1領域MR1と同じ極性とする。
【0077】
これにより、可動子3の第1領域MR1を、固定子2の中間領域ER10から引き離すことで、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0078】
次に、
図12の並進動作第3パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する固定子2の1行目の極性可変素子S
11,S
12を、可動子3の第1領域MR1と異なる極性とし、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を無極性とする。
【0079】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12に磁力により引き寄せられ、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12まで移動させ、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0080】
また、可変素子31が弾性部材でなる場合には、この際、可動子3の第1領域MR1と移動方向側に隣接した可変部35が伸長していることにより生じる、移動方向側への推進力によっても、可動子3の第1領域MR1部分を、固定子2の1行目の極性可変素子S11,S12まで移動させる。
【0081】
次に、
図12の並進動作第3パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第2領域MR2が位置している、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を、可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0082】
次に、
図13の並進動作第3パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32と、を可動子3の第2領域MR2と異なる極性とする。
【0083】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22と、固定子2の3行目の極性可変素子S31,S32と、を跨いだ中間領域ER11に、磁力により引き寄せられる。可動子3の第2領域MR2は、固定子2の中間領域ER11部分で膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する(第3極性変更)。
【0084】
また、可変素子31が弾性部材でなる場合には、この際、可動子3は、第1領域MR1と第2領域MR2との間の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)によっても、固定子2の中間領域ER11に第2領域MR2を引き寄せ、第2領域MR2を軸方向X1に移動させる。
【0085】
次に、
図13の並進動作第3パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22と、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32と、を可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の中間領域ER11から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0086】
次に、
図13の並進動作第3パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とし、固定子2の3行目の極性可変素子S
31,S
32を無極性とする。これにより、可動子3の第2領域MR2は、固定子2の2行目の極性可変素子S
21,S
22に磁力により引き寄せられ、軸方向X1に移動する。
【0087】
また、可変素子31が弾性部材でなる場合には、この際、可動子3は、第1領域MR1と第2領域MR2との間の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)によっても、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22に第2領域MR2を引き寄せ、第2領域MR2を軸方向X1に移動させる。
【0088】
このようにして、可動子3の第2領域MR2部分を、固定子2の2行目の極性可変素子S21,S22部分まで移動させて膨張(拡径)させ、固定子2の内周面に接触させる。
【0089】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER1毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S21,S22,S31,S32の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1を軸方向X1に沿って2段階で移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MR2を固定子2の面と非接触にして第1領域MR1に近づけるように軸方向X1に沿って2段階で移動させ、第2領域MR2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3が尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を軸方向X1に移動させてゆくことができる。
【0090】
また、この並進動作第3パターンでは、可動子3の第1領域MR1を2段階で軸方向X1へ移動させた後、第2領域MR2を2段階で軸方向X1へ移動させ、第1領域MR1及び第2領域MR2を段階的に小刻みに移動させてゆくことができる。すなわち、並進動作第3パターンは、上述したように、1ピッチ(1つの極性可変素子22の領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進動作第1パターンや、ハーフピッチ(1つの極性可変素子22の半領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進動作第2パターンと異なり、ハーフピッチで2回伸長した後、ハーフピッチで2回短縮する。
【0091】
さらに、可変素子31が弾性部材でなる場合、この並進動作第3パターンでは、始めに可動子3の第1領域MR1を2段階で軸方向X1へ移動させることから、第1領域MR1及び第2領域MR2の間にある可変部35を一段と伸長させることができるため、当該可変部35による推進力により第2領域MR2を軸方向X1に一段と確実に移動させることができる。
【0092】
(3)回転動作
ソフトアクチュエータ1は、固定子2の周面に行列状に配置された極性可変素子22の極性パターンを制御することで、固定子2の筒内空間に設けた可動子3の外形を所望の形状に変形させてゆき、固定子2の筒内空間で周方向C1に沿って可動子3を移動させることができる。以下、固定子2の筒内空間において周方向C1に沿って移動する可動子3の回転動作について説明する。
【0093】
(3-1)回転動作第1パターン
図14及び
図15は、固定子2の筒内空間において周方向C1に沿って回転移動する可動子3の回転動作の第1パターン(回転動作第1パターン)を説明するための概略図である。
図14及び
図15では、可動子磁極配列において、軸方向X1に並んだN極部33n及びS極部34sの対を第1領域MC1の磁極部32とし、この第1領域MC1と周方向C1に隣接し、かつ軸方向X1に並んだS極部34s及びN極部33nの対を第2領域MC2の磁極部32と称し、これら第1領域MC1の磁極部32(以下、単に第1領域MC1と称する)と、第2領域MC2の磁極部32(以下、単に第2領域MC2と称する)とに着目して、2行2列に配置された4つの磁極部32を周方向C1に移動させる回転動作第1パターンについて説明する。
【0094】
また、固定子磁極配列では、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2の回転動作第1パターンを実現する極性可変素子22が配置された領域(図中、固定子磁極配列において横点線間の領域)を注目領域ER2とし、以下、この3行3列に極性可変素子22が配置された注目領域ER2に着目して回転動作第1パターン時における極性パターンの変化について説明する。
【0095】
なお、固定子磁極配列の注目領域ER2は、3行3列に極性可変素子22が配置された構成とし、移動方向の目標位置を基準として、1行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S11、1行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S12、1行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S13、2行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S21、2行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S22、2行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S23、3行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S31、3行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S32、3行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S33として説明する。
【0096】
因みに、3行目の極性可変素子S31,S32,S33は、後述する、並進動作と回転動作を合わせた並進回転動作の説明時に用いるもので、回転動作においては、1行目の極性可変素子S11,S12,S13と、2行目の極性可変素子S21,S22,S23にのみ着目して以下説明する。すなわち、回転動作第1パターンにおいては、2行2列に配置された磁極部32を周方向C1に移動させる基本構成は、2行3列の極性可変素子22が配置された構成が基本構成となる。
【0097】
回転動作第1パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を周方向C1に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、当該注目領域ER2の極性可変素子22のうち、移動方向(周方向C1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを常に同時に励磁する2相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2相励磁方式の回転動作第1パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。回転動作第1パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を周方向C1に移動させる際の基本構成(N行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN相励磁方式となる。
【0098】
始めに、
図14の回転動作第1パターン1に示すように、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21を、無極性とする。そして、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第1領域MC1と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1を磁力により固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22に引き寄せる。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0099】
また、可動子3の第2領域MC2と対向する、固定子2の3列目の極性可変素子S13,S23を、第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第2領域MC2を磁力により固定子2の3列目の極性可変素子S13,S23に引き寄せる。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0100】
次に、
図14の回転動作第1パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0101】
次に、
図14の回転動作第1パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2列目の極性可変素子S
11,S
22を無極性とするとともに、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21を、第1領域MC1と異なる極性とする。
【0102】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合は、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)により、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、周方向C1に移動する。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0103】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MC1が周方向C1に移動することで、第1領域MC1と第2領域MC2とが離れ、これら第1領域MC1と第2領域MC2との間の可変部35が移動方向である周方向C1に伸長し、移動方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0104】
次に、
図15の回転動作第1パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0105】
次に、
図15の回転動作第1パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の移動方向に位置する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0106】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合は、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)により、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22に引き寄せられ、周方向C1に移動する。可動子3の第2領域MC2部分は、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22部分で膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する(第3極性変更)。
【0107】
このようにして、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を周方向C1に沿って移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように周方向C1に沿って移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を周方向C1に移動(回転)させてゆくことができる。
【0108】
(3-2)回転動作第2パターン
次に、上述した回転動作第1パターンとは異なる、可動子3の回転動作の第2パターン(回転動作第2パターン)について説明する。
図16、
図17及び
図18は、固定子2の筒内空間において周方向C1に回転する可動子3の回転動作第2パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(3-1)回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。なお、回転動作第2パターンにおいても、2行2列に配置された磁極部32を周方向C1に移動させる基本構成は、2行3列の極性可変素子22が配置された構成が基本構成となる。
【0109】
回転動作第2パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を周方向C1に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、当該注目領域ER2の極性可変素子22のうち、移動方向(周方向C1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、当該移動方向に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2-3相励磁方式の回転動作第2パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。回転動作第2パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を周方向C1に移動させる際の基本構成(N行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN-(N+1)相励磁方式となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0110】
図16の回転動作第2パターン1は、上述した
図14の回転動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を、磁力により膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0111】
次に、
図16の回転動作第2パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0112】
次に、
図16の回転動作第2パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、可動子3の回転方向(周方向C1)に位置する、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21と、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、を可動子3の第1領域MC1と異なる極性とする。
【0113】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35の復元力も)によって、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21と、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と、を跨いだ中間領域ER12に引き寄せられる。このようにして、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の中間領域ER12部分まで移動させ、中間領域ER12部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0114】
なお、可変素子31を弾性部材とした場合、可動子3では、第1領域MC1が周方向C1に移動した際に、第1領域MC1と第2領域MC2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向側への推進力が生じた状態となることが望ましい。
【0115】
次に、
図17の回転動作第2パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、磁力により固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0116】
次に、
図17の回転動作第2パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の回転方向に位置する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0117】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22側に磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)によって引き寄せられる。この際、可動子3では、第1領域MC1が固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と一部領域に位置していることから、第2領域MC2が、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と、固定子2の3列目の極性可変素子S13,S23とを跨いだ中間領域ER13に位置する。
【0118】
これにより、中間領域ER13において、可動子3の第2領域MC2部分を、磁力によって固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22の一部領域で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。なお、このとき、可動子3の第1領域MC1は、極性が同じ、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22にも位置するが、極性が異なる、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S12にも引き寄せられているため、固定子2の内周面と接触した状態を維持する。
【0119】
次に、
図17の回転動作第2パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第1領域MC1の回転方向に位置する、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21を、可動子3の第1領域MC1と同じ極性とする。これにより、可動子3の第1領域MC1を、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21から引き離すことで、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0120】
次に、
図18の回転動作第2パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性とする。
【0121】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と、3列目の極性可変素子S13,S23と、を跨いだ中間領域ER13で磁力により膨張(拡径)され、固定子2の内周面と接触する。また、可動子3の第1領域MC1は、伸長していた可変部35の移動方向側への磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、周方向C1に移動する。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0122】
次に、
図18の回転動作第2パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23と、を可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の中間領域ER13から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0123】
次に、
図18の回転動作第2パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性とし、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を無極性とする。これにより、可動子3の第2領域MC2は、伸長していた可変部35の移動方向側への磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22に引き寄せられ、周方向C1に移動する。このようにして、可動子3の第2領域MC2部分を、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22部分まで移動させて、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22で膨張(拡径)させ、固定子2の内周面に接触させる。
【0124】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を周方向C1に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように周方向C1に移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を周方向C1に移動(回転)させてゆくことができる。
【0125】
また、この回転動作第2パターンでは、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を周方向C1へ移動させる移動量を回転動作第1パターンよりも小さくすることができる。
【0126】
(3-3)回転動作第3パターン
次に、上述した回転動作第1パターン及び回転動作第2パターンとは異なる、可動子3の回転動作の第3パターン(回転動作第3パターン)について説明する。
図19、
図20及び
図21は、固定子2の筒内空間において周方向C1に移動する可動子3の回転動作第3パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(3-1)回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0127】
回転動作第3パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を周方向C1に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、当該注目領域ER2の極性可変素子22のうち、移動方向(周方向C1)に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、当該移動方向に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2-3相励磁方式の回転動作第3パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。回転動作第3パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を周方向C1に移動させる際の基本構成(N行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN-(N+1)相励磁方式となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0128】
図19の回転動作第3パターン1は、上述した
図14の回転動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を、磁力により膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0129】
次に、
図19の回転動作第3パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0130】
次に、
図19の回転動作第3パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、可動子3の移動方向(周方向C1)に位置する、固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21と、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、を可動子3の第1領域MC1と異なる極性とする。
【0131】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35の復元力も)によって、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21と、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と、を跨いだ中間領域ER12に引き寄せられる。このようにして、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の周方向C1側の中間領域ER12部分まで移動させ、中間領域ER12部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0132】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MC1が周方向C1に移動した際に、第1領域MC1と第2領域MC2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0133】
次に、
図20の回転動作第3パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、可動子3の第1領域MC1の回転方向に位置する固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21と、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、の両方を可動子3の第1領域MC1と同じ極性とする。
【0134】
これにより、可動子3の第1領域MC1を、固定子2の中間領域ER12から引き離すことで、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0135】
次に、
図20の回転動作第3パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、可動子3の第1領域MC1の回転方向に位置する固定子2の1列目の極性可変素子S
11,S
21を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を無極性とする。
【0136】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、磁力によって、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21まで移動させる。可動子3は、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0137】
また、可変素子31が弾性部材である場合には、この際、可動子3の第1領域MC1と回転方向側に隣接した可変部35が伸長していることにより生じる、回転方向側への推進力によっても、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1列目の極性可変素子S11,S21まで移動させるようにしてもよい。
【0138】
次に、
図20の回転動作第3パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第2領域MC2が位置している、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0139】
次に、
図21の回転動作第3パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、可動子3の第2領域MC2の回転方向に位置する固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23と、を可動子3の第2領域MC2と異なる極性とする。
【0140】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22と、固定子2の3列目の極性可変素子S13,S23と、を跨いだ中間領域ER13に、磁力によって引き寄せられる。可動子3の第2領域MC2は、固定子2の中間領域ER13部分で膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する(第3極性変更)。
【0141】
また、この際、可動子3は、第1領域MC1と第2領域MC2との間の可変部35が伸長していたことによる回転方向側への復元力(推進力)によっても、固定子2の中間領域ER13に第2領域MC2が引き寄せられ、第2領域MC2を周方向C1に移動させる。
【0142】
次に、
図21の回転動作第3パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22と、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23と、を可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の中間領域ER13から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0143】
次に、
図21の回転動作第3パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とし、固定子2の3列目の極性可変素子S
13,S
23を無極性とする。これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の2列目の極性可変素子S
12,S
22に磁力により引き寄せられ、周方向C1に移動する。
【0144】
また、可変素子31が弾性部材である場合には、この際、可動子3は、第1領域MC1と第2領域MC2との間の可変部35が伸長していたことによる回転方向側への復元力(推進力)によっても、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22に第2領域MC2が引き寄せられ、第2領域MC2を周方向C1に移動させる。
【0145】
このようにして、可動子3の第2領域MC2部分を、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22部分まで移動させ、固定子2の2列目の極性可変素子S12,S22部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0146】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を周方向C1に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように周方向C1に移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を周方向C1に回転させてゆくことができる。
【0147】
また、この回転動作第3パターンでは、可動子3の第1領域MC1を2段階で周方向C1へ移動させた後、第2領域MC2を2段階で周方向C1へ移動させ、第1領域MC1及び第2領域MC2を段階的に小刻みに回転させてゆくことができる。すなわち、回転動作第3パターンは、上述したように、1ピッチ(1つの極性可変素子22の領域単位)で伸長と短縮を繰り返す回転動作第1パターンや、ハーフピッチ(1つの極性可変素子22の半領域単位)で伸長と短縮を繰り返す回転動作第2パターンと異なり、ハーフピッチで2回伸長した後、ハーフピッチで2回短縮する。
【0148】
さらに、可変素子31が弾性部材である場合、この回転動作第3パターンでは、始めに可動子3の第1領域MC1を2段階で周方向C1へ移動させることから、第1領域MC1及び第2領域MC2の間にある可変部35を一段と伸長させることができるため、当該可変部35による推進力により第2領域MC2を周方向C1に一段と確実に移動させることができる。
【0149】
(4)並進回転動作
ソフトアクチュエータ1は、固定子2の周面に行列状に配置された極性可変素子22の極性パターンを制御することで、固定子2の筒内空間に設けた可動子3の外形を所望の形状に変形させてゆき、固定子2の筒内空間で、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した斜め方向に沿って可動子3を移動させることができる。以下、固定子2の筒内空間において斜め方向に沿って移動する可動子3の並進回転動作について説明する。
【0150】
(4-1)並進回転動作第1パターン
図22及び
図23は、固定子2の筒内空間において斜め方向に沿って並進回転移動する可動子3の並進回転動作の第1パターン(並進回転動作第1パターン)を説明するための概略図である。
図22及び
図23では、可動子磁極配列において、軸方向X1に並んだN極部33n及びS極部34sの対を第1領域MC1の磁極部32とし、この第1領域MC1と周方向C1に隣接し、かつ軸方向X1に並んだS極部34s及びN極部33nの対を第2領域MC2の磁極部32と称し、これら第1領域MC1の磁極部32(以下、単に第1領域MC1と称する)と、第2領域MC2の磁極部32(以下、単に第2領域MC2と称する)とに着目して、並進回転動作第1パターンについて説明する。
【0151】
また、固定子磁極配列では、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2の並進回転動作第1パターンを実現する極性可変素子22が配置された領域(図中、固定子磁極配列において横点線間の領域)を注目領域ER2とし、以下、この注目領域ER2に着目して並進回転動作第1パターン時における極性パターンの変化について説明する。
【0152】
なお、固定子磁極配列の注目領域ER2は、上述した「(3)回転動作」と同様に、3行3列に極性可変素子22が配置された構成を基本構成とし、移動方向の目標位置を基準として、1行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S11、1行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S12、1行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S13、2行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S21、2行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S22、2行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S23、3行1列目の極性可変素子22を極性可変素子S31、3行2列目の極性可変素子22を極性可変素子S32、3行3列目の極性可変素子22を極性可変素子S33として説明する。
【0153】
並進回転動作第1パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向(軸方向X1と周方向C1との両方向に傾斜した斜め方向)に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、当該注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1及び周方向C1にそれぞれ並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを励磁する2相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、2相励磁方式の並進回転動作第1パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第1パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成(注目領域ER2であり、(N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式はN相励磁方式(第1方式とも称する)となる。
【0154】
始めに、
図22の並進回転動作第1パターン1に示すように、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S
11,S
21を、無極性とする。そして、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、第1領域MC1と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1を磁力により固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32に引き寄せる。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0155】
また、可動子3の第2領域MC2と対向する、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S23,S33を、第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第2領域MC2を磁力により固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S23,S33に引き寄せる。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0156】
次に、
図22の並進回転動作第1パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を固定子2の当該極性可変素子S
22,S
32から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0157】
次に、
図22の並進回転動作第1パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を無極性とするとともに、可動子3の第1領域MC1の移動方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に位置する、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S
11,S
21を、第1領域MC1と異なる極性とする。
【0158】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)により、固定子2の当該極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、斜め方向に移動する。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0159】
可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MC1が周方向C1に移動することで、第1領域MC1と第2領域MC2とが離れ、これら第1領域MC1と第2領域MC2との間の可変部35が移動方向である周方向C1に伸長し、移動方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0160】
次に、
図23の並進回転動作第1パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0161】
次に、
図23の並進回転動作第1パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の移動方向である斜め方向に位置する、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0162】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S12,S22に引き寄せられる磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)により、固定子2の当該極性可変素子S12,S22に引き寄せられ、斜め方向に移動する。そして、可動子3の第2領域MC2部分を、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S12,S22部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。
【0163】
このようにして、ソフトアクチュエータ1は、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように斜め方向に移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に向けて並進回転させてゆくことができる。
【0164】
(4-2)並進回転動作第2パターン
次に、上述した並進回転動作第1パターンとは異なる、可動子3の並進回転動作の第2パターン(並進回転動作第2パターン)について説明する。
図24、
図25及び
図26は、固定子2の筒内空間において斜め方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に移動する可動子3の並進回転動作第2パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(4-1)並進回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0165】
並進回転動作第2パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、軸方向X1への移動時に2相励磁方式となっており、かつ、周方向C1への移動時に2-3相励磁方式となっている。すなわち、軸方向X1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式となっている。周方向C1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。
【0166】
なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、軸方向X1への移動時に2相励磁方式とし周方向C1への移動時に2-3相励磁方式の並進回転動作第2パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第2パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成((N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式は、軸方向X1への移動時にN相励磁方式となり、周方向C1への移動時にN相励磁方式と(N+1)相励磁方式とが繰り返されるN-(N+1)相励磁方式(第2方式とも称する)となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0167】
図24の並進回転動作第2パターン1は、上述した
図22の並進回転動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を、第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を、磁力により膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0168】
次に、
図24の並進回転動作第2パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を固定子2の当該極性可変素子S
22,S
32から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0169】
次に、
図24の並進回転動作第2パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22を無極性とし、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S
31,S
32とを、第1領域MC1と異なる極性とする。
【0170】
これにより、可動子3の第1領域MC1における一方の磁極部32(ここでは、N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)によって、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12を跨いだ中間領域ER15に引き寄せられ、可動子3の第1領域MC1における他方の磁極部32(ここでは、S極部34s)も、固定子2の3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S31,S32を跨いだ中間領域ER16に引き寄せられる。
【0171】
このようにして、可動子3の第1領域MC1部分を、斜め方向に位置する固定子2の中間領域ER15,ER16部分まで移動させ、中間領域ER15,ER16部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0172】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MC1が斜め方向に移動した際に、第1領域MC1と第2領域MC2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0173】
次に、
図25の並進回転動作第2パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、磁力により固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0174】
次に、
図25の並進回転動作第2パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の移動方向に位置する、固定子2の1行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
12,S
32を、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0175】
これにより、可動子3の第2領域MC2における一方の磁極部32(ここでは、S極部34s)は、伸長していた可変部35の移動方向側への復元力と磁力とによって、極性が異なる1行2列目の極性可変素子S12に引き寄せられる。この際、固定子2の1行2列目の極性可変素子S12の一部領域には、可動子3の第1領域MC1の一部領域が位置していることから、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S12,S13を跨いだ中間領域ER17に位置する。
【0176】
同様に、可動子3の第2領域MC2における他方の磁極部32(ここでは、N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、極性が異なる3行2列目の極性可変素子S32に引き寄せられる。この際、固定子2の3行2列目の極性可変素子S32の一部領域には、可動子3の第1領域MC1の一部領域が位置していることから、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S32,S33を跨いだ中間領域ER18に位置する。
【0177】
これにより、可動子3の第2領域MC2部分を、磁力によって固定子2の1行2列目及び3行2列目の極性可変素子S12,S32の一部領域でそれぞれ膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。なお、このとき、可動子3の第1領域MC1は、極性が同じ、固定子2の1行2列目及び3行2列目の極性可変素子S12,S32にも位置するが、極性が異なる、固定子2の1行1列目及び3行1列目の極性可変素子S11,S31にも磁力により引き寄せられているため、固定子2の内周面と接触した状態を維持する。
【0178】
次に、
図25の並進回転動作第2パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第1領域MC1が位置する中間領域ER15,ER16内にある、固定子2の1行1列目及び3行1列目の極性可変素子S
11,S
31を、可動子3の第1領域MC1と同じ極性とする。また、極性切り替え5では、固定子2の1行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
12,S
32を無極性とする。さらに、極性切り替え5では、可動子3の第2領域MC2が位置する中間領域ER17,ER18内にある、固定子2の1行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
13,S
33を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性とする。
【0179】
これにより、可動子3の第1領域MC1を、固定子2の1行1列目及び3行1列目の極性可変素子S11,S31の一部領域から引き離すことで、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0180】
また、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の1行3列目及び3行3列目の極性可変素子S13,S33の一部領域に引き寄せ、可動子3の第2領域MC2部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と接触させる。
【0181】
次に、
図26の並進回転動作第2パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、固定子2の1行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
12,S
32を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性とし、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S
11,S
21を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とする。
【0182】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、固定子2の中間領域ER17,ER18で磁力により膨張(拡径)され、固定子2の内周面と接触する。また、可動子3の第1領域MC1は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、右斜め方向に移動する。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる。
【0183】
次に、
図26の並進回転動作第2パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S
12,S
13と、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33と、を可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の中間領域ER17,ER18から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0184】
次に、
図26の回転動作第2パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22を、可動子3の第2領域MC2と異なる極性とし、固定子2の1行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
13,S
33を無極性とする。これにより、可動子3の第2領域MC2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22に引き寄せられ、右斜め方向に移動する。このようにして、可動子3の第2領域MC2部分を、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22部分まで移動させて、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22で膨張(拡径)させ、固定子2の内周面に接触させる。
【0185】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように斜め方向に移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に並進回転させてゆくことができる。
【0186】
また、この並進回転動作第2パターンでは、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を斜め方向へ移動させる移動量を並進回転動作第1パターンよりも小さくすることができる。
【0187】
(4-3)並進回転動作第3パターン
次に、上述した並進回転動作第1パターン及び並進回転動作第2パターンとは異なる、可動子3の並進回転動作の第3パターン(並進回転動作第3パターン)について説明する。
図27、
図28及び
図29は、固定子2の筒内空間において斜め方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に移動する可動子3の並進回転動作第3パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(4-1)並進回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0188】
並進回転動作第3パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、軸方向X1への移動時に2相励磁方式となっており、かつ、周方向C1への移動時に2-3相励磁方式となっている。すなわち、軸方向X1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式となっている。周方向C1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。
【0189】
なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、軸方向X1への移動時に2相励磁方式とし、周方向C1への移動時に2-3相励磁方式とする並進回転動作第3パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第3パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成((N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式は、軸方向X1への移動時にN相励磁方式となり、かつ、周方向C1への移動時にN相励磁方式と(N+1)相励磁方式とが繰り返されるN-(N+1)相励磁方式(第2方式)となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0190】
図27の並進回転動作第3パターン1は、上述した
図22の並進回転動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、可動子3の第1領域MC1と異なる極性とし、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を、第2領域MC2と異なる極性として、可動子3の第1領域MC1及び第2領域MC2を、磁力により膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0191】
次に、
図27の並進回転動作第3パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MC1と対向する、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S
22,S
32を、第1領域MC1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MC1を固定子2の当該極性可変素子S
22,S
32から引き離して、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0192】
次に、
図27の並進回転動作第3パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22を無極性とし、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S
31,S
32とを、第1領域MC1と異なる極性とする。
【0193】
これにより、可動子3の第1領域MC1における一方の磁極部32(ここでは、N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)によって、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12を跨いだ中間領域ER15に引き寄せられ、可動子3の第1領域MC1における他方の磁極部32(ここでは、S極部34s)も、固定子2の3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S31,S32を跨いだ中間領域ER16に引き寄せられる。
【0194】
このようにして、可動子3の第1領域MC1部分を、斜め方向に位置する固定子2の中間領域ER15,ER16部分まで移動させ、中間領域ER15,ER16の一部領域で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0195】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MC1が斜め方向に移動した際に、第1領域MC1と第2領域MC2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0196】
次に、
図28の並進回転動作第3パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S
11,S
12と、固定子2の3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S
31,S
32と、をそれぞれ可動子3の第1領域MC1と同じ極性とし、可動子3の第1領域MC1を、磁力により固定子2の中間領域ER15,ER16から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MC1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MC1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0197】
次に、
図28の並進回転動作第3パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、固定子2の1行2列目、3行1列目及び3行2列目の極性可変素子S
12,S
31,S
32を無極性とし、可動子3の第1領域MC1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S
11,S
21を、第1領域MC1と異なる極性とする。
【0198】
これにより、可動子3の第1領域MC1は、磁力によって、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21に引き寄せられ、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21まで移動する。可動子3は、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0199】
次に、
図28の並進回転動作第3パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第2領域MC2が位置している、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33を、可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
23,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0200】
次に、
図29の並進回転動作第3パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、固定子2の2行3列目の極性可変素子S
23を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の移動方向に位置する、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S
12,S
13と、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33とを、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0201】
これにより、可動子3の第2領域MC2における一方の磁極部32(ここでは、S極部34s)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S12,S13を跨いだ中間領域ER17に引き寄せられ、可動子3の第2領域MC2における他方の磁極部32(ここでは、N極部33n)も、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S32,S33を跨いだ中間領域ER18に引き寄せられる。
【0202】
このようにして、可動子3の第2領域MC2部分を、斜め方向に位置する固定子2の中間領域ER17,ER18部分まで移動させ、中間領域ER17,ER18の一部領域で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第3極性変更)。
【0203】
次に、
図29の並進回転動作第3パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S
12,S
13と、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33と、を可動子3の第2領域MC2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MC2を、固定子2の中間領域ER17,ER18から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MC2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MC2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0204】
次に、
図29の並進回転動作第3パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の1行3列目、3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
13,S
32,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MC2の移動方向に位置する、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
12,S
22を、第2領域MC2と異なる極性とする。
【0205】
これにより、可動子3の第2領域MC2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S12,S22に引き寄せられ、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S12,S22まで移動する。可動子3は、固定子2の1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S12,S22部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0206】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MC1を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MC2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように斜め方向に移動させ、第2領域MC2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に並進回転させてゆくことができる。
【0207】
また、この並進回転動作第3パターンでは、可動子3の第1領域MC1を2段階で斜め方向へ移動させた後、第2領域MC2を2段階で斜め方向へ移動させ、第1領域MC1及び第2領域MC2を段階的に小刻みに回転させてゆくことができる。すなわち、並進回転動作第3パターンは、上述したように、1ピッチ(1つの極性可変素子22の領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進回転動作第1パターンや、ハーフピッチ(1つの極性可変素子22の半領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進回転動作第2パターンと異なり、ハーフピッチで2回伸長した後、ハーフピッチで2回短縮する。
【0208】
可変素子31が弾性部材である場合、この並進回転動作第3パターンでは、始めに可動子3の第1領域MC1を2段階で斜め方向へ移動させることから、第1領域MC1及び第2領域MC2の間にある可変部35を一段と伸長させることができるため、当該可変部35による推進力により第2領域MC2を斜め方向に一段と確実に移動させることができる。
【0209】
(4-4)並進回転動作第4パターン
次に、上述した並進回転動作第1パターンから並進回転動作第3パターンとは異なる、可動子3の並進回転動作の第4パターン(並進回転動作第4パターン)について説明する。
図30、
図31及び
図32は、固定子2の筒内空間において斜め方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に移動する可動子3の並進回転動作第4パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(4-1)並進回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0210】
並進回転動作第4パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、軸方向X1への移動時に2-3相励磁方式となっており、かつ、周方向C1への移動時に2相励磁方式となっている。すなわち、軸方向X1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。周方向C1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式となっている。
【0211】
なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、軸方向X1への移動時に2-3相励磁方式とし周方向C1への移動時に2相励磁方式の並進回転動作第4パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第4パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成((N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式は、軸方向X1への移動時にN相励磁方式と(N+1)相励磁方式とが繰り返されるN-(N+1)相励磁方式となり、周方向C1への移動時にN相励磁方式(第3方式とも称する)となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0212】
図30の並進回転動作第4パターン1は、上述した
図22の並進回転動作第1パターン1と同様の状態であり、固定子2の2行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
22,S
23を、可動子3の第1領域MR1と異なる極性とし、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33を、第2領域MR2と異なる極性として、可動子3の第1領域MR1及び第2領域MR2を、磁力により膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0213】
次に、
図30の並進回転動作第4パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行2列目及び2行3列目の極性可変素子S
22,S
23を、第1領域MR1と同じ極性とし、磁力により可動子3の第1領域MR1を固定子2の当該極性可変素子S
22,S
23から引き離して、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0214】
次に、
図30の並進回転動作第4パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22を無極性とし、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S
11,S
21と、固定子2の1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S
13,S
23とを、第1領域MR1と異なる極性とする。
【0215】
これにより、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(ここでは、N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)によって、固定子2の1行1列目及び2行1列目の極性可変素子S11,S21を跨いだ中間領域ER21に引き寄せられ、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(ここでは、S極部34s)も、固定子2の1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S13,S23を跨いだ中間領域ER20に引き寄せられる。
【0216】
このようにして、可動子3の第1領域MR1部分を、斜め方向に位置する固定子2の中間領域ER20,ER21部分まで移動させ、中間領域ER20,ER21で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0217】
なお、このとき、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の1行1列目、2行1列目、1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S11,S21,S12,S22を跨るように配置される。また、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(S極部34s)は、固定子2の1行2列目、2行2列目、1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S12,S22,S13,S23を跨るように配置される。
【0218】
第1領域MR1の一方のN極部33nは、周方向C1における一端側半領域が、極性可変素子S11,S21を跨いだ中間領域ER21に引き寄せられて接触し、また、第1領域MR1の他方のS極部34sは、周方向C1における他端側半領域が、極性可変素子S13,S23を跨いだ中間領域ER20に引き寄せられ接触する。
【0219】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1が斜め方向に移動した際に、第1領域MR1と第2領域MR2との間を離して可変部35を伸長させ、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0220】
次に、
図31の並進回転動作第4パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33をそれぞれ可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、磁力により固定子2の極性可変素子S
32,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0221】
次に、
図31の並進回転動作第4パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、可動子3の第2領域MR2が対向配置されていた、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S
21,S
23を、第2領域MR2と異なる極性とする。
【0222】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S21,S23に引き寄せられ、当該極性可変素子S21,S23の一部領域ER23,ER22まで移動し、第1領域MR1に近づいた状態となる。可動子3は、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S21,S23の一部領域ER23,ER22で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0223】
なお、このとき、可動子3の第2領域MR2における一方の磁極部32(ここでは、S極部34s)は、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S21,S31,S22,S32を跨るように配置される。これにより、固定子2の2行1列目の極性可変素子S21には、当該極性可変素子S21と極性が同じ、可動子3の第1領域MR1における磁極部32(N極部33n)の一部領域が配置されるとともに、当該極性可変素子S21と極性が異なる、可動子3の第2領域MR2における磁極部32(ここでは、S極部34s)の一部領域が配置される。
【0224】
可動子3の第1領域MR1におけるN極部33nは、対向配置されている2行1列目の極性可変素子S21の極性と同じであるものの、当該の極性可変素子S21の上部に位置する1行1列目の極性可変素子S11の極性と異なることから、当該極性可変素子S11に引き寄せられた状態となり得る。
【0225】
また、このとき、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(ここでは、N極部33n)は、固定子2の2行2列目、3行2列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S22,S32,S23,S33を跨るように配置される。このように、固定子2の2行3列目の極性可変素子S23には、当該極性可変素子S23と極性が同じ、可動子3の第1領域MR1における磁極部32(S極部34s)の一部領域が配置されるとともに、当該極性可変素子S23と極性が異なる、可動子3の第2領域MR2における磁極部32(N極部33n)の一部領域が配置される。
【0226】
可動子3の第1領域MR1におけるS極部34sは、対向配置されている2行3列目の極性可変素子S23の極性と同じであるものの、当該の極性可変素子S23の上部に位置する1行3列目の極性可変素子S13の極性と異なることから、当該極性可変素子S13に引き寄せられた状態となり得る。
【0227】
次に、
図31の並進回転動作第4パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第1領域MR1の一部領域と第2領域MR2の一部領域とがそれぞれ位置している、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S
21,S
23を無極性とする。また、並進回転動作第4パターン6では、極性切り替え5を行い、可動子3の第2領域MR2の一部領域が位置している、固定子2の3行1列目及び3行3列目の極性可変素子S
31,S
33を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とする。これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力によって固定子2の3行1列目及び3行3列目の極性可変素子S
31,S
33の一部領域ER25,ER24にそれぞれ引き寄せられ、当該極性可変素子S
31,S
33の一部領域ER25,ER24で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0228】
また、並進回転動作第4パターン6では、極性切り替え5を行い、可動子3の第1領域MR1の一部領域が位置している、固定子2の1行1列目及び1行3列目の極性可変素子S11,S13を、可動子3の第1領域MR1と同じ極性とし、可動子3の第1領域MR1を、固定子2の1行1列目及び1行3列目の極性可変素子S11,S13から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0229】
次に、
図32の並進回転動作第4パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、可動子3の第2領域MR2の一部領域が位置している、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S
21,S
23を、可動子3の第2領域MR2と異なる極性とする。極性可変素子S
31,S
33の磁力により極性可変素子S
31,S
33の一部領域ER25,ER24に引き寄せられている可動子3の第2領域MR2は、磁力によって固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S
21,S
23の一部領域ER27,ER26にも引き寄せられ、膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0230】
また、この際、可動子3の第1領域MR1は、固定子2の2行1列目及び2行3列目の極性可変素子S21,S23とは極性が同じになることから、磁力によって極性可変素子S21,S23から引き離され、収縮(縮径)して固定子2の内周面から離れる。
【0231】
これに加えて、並進回転動作第4パターン7では、固定子2の極性切り替え6として、固定子2の1行3列目の極性可変素子S13を無極性とし、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12を、第1領域MR1と異なる極性とする。
【0232】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられる。可動子3の第1領域MR1は、斜め方向に位置する固定子2の極性可変素子S11,S12部分まで移動して第2領域MR2から遠ざかり、当該極性可変素子S11,S12で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する(第3極性変更)。
【0233】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1が斜め方向に移動した際に、第1領域MR1と第2領域MR2との間を離して可変部35を伸長させることから、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0234】
次に、
図32の並進回転動作第4パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行3列目、及び3行3列目の極性可変素子S
21,S
31,S
23,S
33をそれぞれ可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の極性可変素子S
21,S
31,S
23,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0235】
次に、
図32の並進回転動作第4パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の3行1列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
31,S
23,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S
21,S
22を、第2領域MR2と異なる極性とする。
【0236】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22に引き寄せられ、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22まで移動する。可動子3は、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0237】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MR2を固定子2の面と非接触にして第1領域MC1に近づけるように斜め方向に移動させ、第2領域MR2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に並進回転させてゆくことができる。
【0238】
(4-5)並進回転動作第5パターン
次に、上述した並進回転動作第1パターンから並進回転動作第4パターンとは異なる、可動子3の並進回転動作の第5パターン(並進回転動作第5パターン)について説明する。
図30、
図33及び
図34は、固定子2の筒内空間において斜め方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に移動する可動子3の並進回転動作第5パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(4-1)並進回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0239】
並進回転動作第5パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、軸方向X1への移動時に2-3相励磁方式となっており、かつ、周方向C1への移動時に2相励磁方式となっている。すなわち、軸方向X1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式と、軸方向X1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相の3つの相を同時に励磁する3相励磁方式とが繰り返される2-3相励磁方式となっている。周方向C1への移動時は、注目領域ER2の極性可変素子22のうち、周方向C1に並ぶ所定の第1相と第2相と第3相のうちの2つの相だけを同時に励磁する2相励磁方式となっている。
【0240】
なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、軸方向X1への移動時に2-3相励磁方式とし周方向C1への移動時に2相励磁方式の並進回転動作第5パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第5パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成((N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式は、軸方向X1への移動時にN相励磁方式と(N+1)相励磁方式とが繰り返されるN-(N+1)相励磁方式となり、周方向C1への移動時にN相励磁方式(第3方式とも称する)となる(-は、N相励磁と(N+1)相励磁とを繰り返すことを示すハイフンである)。
【0241】
この並進回転動作第5パターンでは、並進回転動作第5パターン1から並進回転動作第5パターン3までが、
図30において説明した並進回転動作第4パターン1から並進回転動作第4パターン3と同じであることから、ここではその説明は省略する。この場合、並進回転動作第5パターンは、並進回転動作第5パターン1から並進回転動作第5パターン3として、上述した
図30の並進回転動作第4パターン1から並進回転動作第4パターン3と同様の状態になった後、
図33に示すように、極性切り替え3が行われて並進回転動作第5パターン4の状態となる。
【0242】
図33の並進回転動作第5パターン4では、固定子2において極性切り替え3を行い、固定子2の1行1列目、2行1列目、1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S
11,S
21,S
13,S
23をそれぞれ可動子3の第1領域MR1と同じ極性とし、可動子3の第1領域MR1を、磁力により固定子2の極性可変素子S
11,S
21,S
13,S
23から引き離す。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0243】
次に、
図33の並進回転動作第5パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、可動子3の第1領域MR1が対向配置されていた、固定子2の2行1列目、1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S
21,S
13,S
23を無極性とし、可動子3の第1領域MR1の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S
11,S
12を、第1領域MR1と異なる極性とする。
【0244】
これにより、可動子3の第1領域MR1は、磁力によって、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12に引き寄せられ、当該極性可変素子S11,S12まで移動する。可動子3は、固定子2の1行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S12で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0245】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1が斜め方向に移動した際に、第1領域MR1と第2領域MR2との間を一段と離して可変部35をさらに伸長させることから、移動方向である斜め方向側への推進力が一段と生じた状態になることが望ましい。
【0246】
次に、
図33の並進回転動作第5パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、可動子3の第2領域MR2が位置している、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33を、可動子3の第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S
32,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2は、収縮(縮径)し、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触になる。
【0247】
次に、
図34の並進回転動作第5パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、可動子3の第2領域MR2が位置している、固定子2の3行2列目の極性可変素子S
32を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向となる、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
21,S
31,S
23,S
33を、それぞれ第2領域MR2と異なる極性とする。
【0248】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目及び3行1列目の極性可変素子S21,S23の中間領域ER31と、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S23,S33の中間領域ER30と、にそれぞれ引き寄せられる。
【0249】
これにより、可動子3の第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)は、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S21,S31,S22,S32を跨るように配置される。また、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の2行2列目、3行2列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S22,S32,S23,S33を跨るように配置される。
【0250】
このようにして、可動子3の第2領域MR2は、斜め方向に位置する第1領域MR1にハーフピッチ分だけ僅かに近づき、可動子3は、固定子2の極性可変素子S21,S31を跨いだ中間領域ER31と、極性可変素子S23,S33を跨いだ中間領域ER30とで膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0251】
次に、
図34の並進回転動作第5パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、可動子3の第2領域MR2が位置している、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
21,S
31,S
23,S
33を、それぞれ第2領域MR2と同じ極性とし、可動子3の第2領域MR2を、固定子2の極性可変素子S
21,S
31,S
23,S
33から引き離す。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を収縮(縮径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0252】
次に、
図34の並進回転動作第5パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、固定子2の3行1列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
31,S
23,S
33を無極性とし、可動子3の第2領域MR2の移動方向に位置する、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S
21,S
22を、第2領域MR2と異なる極性とする。
【0253】
これにより、可動子3の第2領域MR2は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22に引き寄せられ、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22まで移動する。可動子3は、固定子2の2行1列目及び2行2列目の極性可変素子S21,S22部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0254】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第2領域MR2を固定子2の面と非接触にして第1領域MR1に近づけるように斜め方向に移動させ、第2領域MR2を固定子2の面に接触させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に並進回転させてゆくことができる。
【0255】
また、この並進回転動作第5パターンでは、可動子3の第1領域MR1を2段階で斜め方向へ移動させた後、第2領域MR2を2段階で斜め方向へ移動させ、第1領域MR1及び第2領域MR2を段階的に小刻みに移動させてゆくことができる。すなわち、並進回転動作第5パターンは、上述したように、1ピッチ(1つの極性可変素子22の領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進回転動作第1パターンや、ハーフピッチ(1つの極性可変素子22の半領域単位)で伸長と短縮を繰り返す並進回転動作第2パターンと異なり、ハーフピッチで2回伸長した後、ハーフピッチで2回短縮する。
【0256】
さらに、可変素子31が弾性部材である場合、この並進回転動作第5パターンでは、始めに可動子3の第1領域MR1を2段階で斜め方向へ移動させることから、第1領域MR1及び第2領域MR2の間にある可変部35を一段と伸長させることができるため、当該可変部35による推進力により第2領域MR2を斜め方向に一段と確実に移動させることができる。
【0257】
(4-6)並進回転動作第6パターン
次に、上述した並進回転動作第1パターンから並進回転動作第5パターンとは異なる、可動子3の並進回転動作の第6パターン(並進回転動作第6パターン)について説明する。
図35、
図36、
図37、
図38及び
図39は、固定子2の筒内空間において斜め方向(ここでは、軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した右斜め方向)に移動する可動子3の並進回転動作第6パターンを説明するための概略図である。なお、固定子磁極配列、可動子磁極配列、注目領域ER2、極性可変素子S
11,S
12,S
13,S
21,S
22,S
23,S
31,S
32,S
33などについては上述した「(4-1)並進回転動作第1パターン」と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0258】
並進回転動作第6パターンでは、チェッカーボード・パターン状に極性が異なる磁極部32が2行2列に配置された4つの磁極部32を斜め方向(軸方向X1と周方向C1との両方向に傾斜した斜め方向)に移動させる際の注目領域ER2での励磁方式が、当該注目領域ER2の極性可変素子22のうち、軸方向X1及び周方向C1への移動時に所定の第1相と第2相と第3相とを励磁する3相励磁方式となっている。なお、ここでは、可動子3の動作説明を簡単にするために、3相励磁方式の並進回転動作第6パターンについて説明するが、本発明はこれに限らない。並進回転動作第6パターンでは、Nを2以上の正の数とした場合、N行N列に配置された磁極部32を斜め方向に移動させる際の基本構成(注目領域ER2であり、(N+1)行(N+1)列に極性可変素子22を配置した構成)での励磁方式は(N+1)相励磁方式(第4方式とも称する)となる。
【0259】
始めに、
図35の並進回転動作第6パターン1に示すように、可動子3の第1領域MR1と対向する、固定子2の2行2列目及び2行3列目の極性可変素子S
22,S
23を、第1領域MR1と異なる極性として、可動子3の第1領域MR1を磁力により固定子2の2行2列目及び2行3列目の極性可変素子S
22,S
23に引き寄せる。これにより、可動子3の第1領域MR1部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第1領域MR1を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0260】
可動子3の第2領域MR2と対向する、固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S32,S33を、第2領域MR2と異なる極性として、可動子3の第2領域MR2を磁力により固定子2の3行2列目及び3行3列目の極性可変素子S32,S33に引き寄せる。これにより、可動子3の第2領域MR2部分を膨張(拡径)させ、可動子3の第2領域MR2を固定子2の内周面に接触させる(第1極性変更)。
【0261】
また、固定子2の注目領域ER2内において、可動子3の第1領域MR1における一方のN極部33nと隣接する、固定子2の1行1列目、2行1列目及び1行2列目の極性可変素子S11,S21,S12は、当該第1領域MR1のN極部33nと同じ極性とする。固定子2の注目領域ER2内において、可動子3の第1領域MR1における他方のS極部34sと隣接する、固定子2の1行3列目の極性可変素子S13は、当該第1領域MR1のS極部34sと同じ極性とする。さらに、固定子2の注目領域ER2内において、可動子3の第2領域MR2における一方のS極部34sと隣接する、固定子2の3行1列目の極性可変素子S31は、当該第2領域MR2のS極部34sと同じ極性とする。
【0262】
次に、
図35の並進回転動作第6パターン2に示すように、固定子2において極性切り替え1を行い、可動子3の第1領域MR1の一方の磁極部32(N極部33n)と対向する、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22を、当該第1領域MR1の一方の磁極部32と同じ極性とし、磁力により第1領域MR1の一方の磁極部32を固定子2の当該極性可変素子S
22から引き離す。可動子3の第1領域MR1におけるN極部33nを収縮(縮径)させ、当該第1領域MR1のN極部33nを固定子2の内周面と非接触にさせる。
【0263】
次に、
図35の並進回転動作第6パターン3に示すように、固定子2において極性切り替え2を行い、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目、2行1列目、1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S
11,S
21,S
12,S
22を、第1領域MR1のN極部33nと異なる極性とする。
【0264】
これにより、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、移動方向側の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力(推進力)も)によって、固定子2の1行1列目、2行1列目、1行2列目及び2行2列目の極性可変素子S11,S21,S12,S22を跨いだ中間領域ER35に引き寄せられる。
【0265】
このようにして、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32部分のみを、斜め方向に位置する固定子2の中間領域ER35まで移動させ、当該中間領域ER35で膨張(拡径)させて固定子2の内周面に接触させる(第2極性変更)。
【0266】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1のN極部33nが斜め方向に移動した際に、第1領域MR1のN極部33n及びS極部34sとの間、第1領域MR1のN極部33nと第2領域MR2との間、をそれぞれ離して可変部35を伸長させ、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0267】
次に、
図36の並進回転動作第6パターン4に示すように、固定子2において極性切り替え3を行い、注目領域ER2内の全ての極性可変素子22をS極とする。すなわち、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)と、に対応する、固定子2の2行3列目及び3行2列目の極性可変素子S
23,S
32をそれぞれ可動子3の当該S極部34sと同じ極性とする。
【0268】
また、並進回転動作第6パターン4では、極性切り替え3を行い、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)との移動方向に位置する、固定子2の1行3列目及び3行1列目の極性可変素子S13,S31をそれぞれ可動子3の当該S極部34sと同じ極性とする。
【0269】
これにより、可動子3は、第1領域MR1及び第2領域MR2のN極部33nが、磁力により固定子2の中間領域ER35及び極性可変素子S33に引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面と接触した状態になり、一方、第1領域MR1及び第2領域MR2のS極部34sが、磁力により固定子2の極性可変素子S23,S32から引き離されて収縮(縮径)し、固定子2の内周面と非接触した状態になる。
【0270】
次に、
図36の並進回転動作第6パターン5に示すように、固定子2において極性切り替え4を行い、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)と、第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)と接触している、固定子2の極性可変素子S
11,S
33以外の極性可変素子S
21,S
31,S
12,S
32,S
23,S
13,S
23を、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)と異なる極性とする。
【0271】
これにより、可動子3の第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目、3行1列目、2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S21,S31,S22,S32に跨る中間領域ER39に引き寄せられ、第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)に近づいた状態となる。
【0272】
また、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の1行2列目、2行2列目、1行3列目及び2行3列目の極性可変素子S12,S22,S13,S23に跨る中間領域ER37に引き寄せられ、第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)に近づいた状態となる。
【0273】
なお、このとき、第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、定子2の1行1列目の極性可変素子S11の一部領域ER38に引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触した状態を維持し得る。
【0274】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)と第1領域MR1との間、第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)と第2領域MR2の一方の磁極部32(S極部34s)との間を離し、可変部35を伸長させることから、当該可変部35において移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0275】
次に、
図36の並進回転動作第6パターン6に示すように、固定子2において極性切り替え5を行い、第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)が位置している、固定子2の3行3列目の極性可変素子S
33を、当該第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)と同じ極性とする。これにより、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の極性可変素子S
33から引き離されて収縮(縮径)し、固定子2の内周面と非接触になる。
【0276】
次に、
図37の並進回転動作第6パターン7に示すように、固定子2において極性切り替え6を行い、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)の移動方向に位置する、固定子2の2行2列目、3行2列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
22,S
32,S
23,S
33を、第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)と異なる極性とする。
【0277】
これにより、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行2列目、3行2列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S22,S32,S23,S33を跨る中間領域ER43に引き寄せられる。可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の中間領域ER43部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0278】
なお、このとき、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の2行2列目の極性可変素子S22が当該磁極部32と異なる極性に変わることで、当該極性可変素子S22の一部領域ER41にも引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する。また、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)は、固定子2の2行2列目及び2行3列目の極性可変素子S22,S23が当該磁極部32と同じ極性に変わることで、固定子2の1行2列目及び1行3列目の極性可変素子S12,S13を跨る中間領域ER42部分に引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する。さらに、可動子3の第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)は、固定子2の2行2列目及び3行2列目の極性可変素子S22,S32が当該磁極部32と同じ極性に変わることで、固定子2の2行1列目及び3行1列目の極性可変素子S21,S31を跨る中間領域ER40部分に引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する。
【0279】
次に、
図37の並進回転動作第6パターン8に示すように、固定子2において極性切り替え7を行い、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)が位置する、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22と、当該磁極部32の移動方向に位置する、固定子2の1行1列目の極性可変素子S
11と、を当該磁極部32と同じ極性とする。これにより、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の極性可変素子S
11,S
22から引き離されて収縮(縮径)し、固定子2の内周面と非接触になる。
【0280】
なお、このとき、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、可動子3の第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)は、固定子2の2行2列目の極性可変素子S22が当該磁極部32と異なる極性に変わることで、当該極性可変素子S22の一部領域ER45にも引き寄せられて膨張(拡径)し、固定子2の内周面に接触する。また、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の2行2列目の極性可変素子S22が当該磁極部32と同じ極性に変わることで、当該極性可変素子S22から離れて収縮(縮径)し、固定子2の極性可変素子S22部分の内周面と非接触となる。
【0281】
次に、
図37の並進回転動作第6パターン9に示すように、固定子2において極性切り替え8を行い、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)の移動方向(斜め方向)に位置する、固定子2の1行1列目の極性可変素子S
11を、当該磁極部32と異なる極性とする。
【0282】
これにより、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、磁力によって、固定子2の1行1列目の極性可変素子S11に引き寄せられる。これにより、可動子3の第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の極性可変素子S11部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0283】
なお、可変素子31が弾性部材である場合、可動子3では、第1領域MR1のN極部33nが斜め方向に移動した際に、第1領域MR1のN極部33n及びS極部34sとの間、第1領域MR1のN極部33nと第2領域MR2との間、をそれぞれ離して可変部35を伸長させ、移動方向である斜め方向側への推進力が生じた状態になることが望ましい。
【0284】
次に、
図38の並進回転動作第6パターン10に示すように、固定子2において極性切り替え9を行い、注目領域ER2内の全ての極性可変素子22をS極とする。すなわち、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)と、に対応する、固定子2の2行1列目、3行1列目、1行2列目、2行2列目及び1行3列目の極性可変素子S
21,S
31,S
12,S
22,S
13をそれぞれ可動子3の当該S極部34sと同じ極性とする。これにより、可動子3は、第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)とが、磁力により固定子2の極性可変素子S
21,S
31,S
12,S
22,S
13から引き離されて収縮(縮径)し、固定子2の内周面と非接触した状態になる。
【0285】
次に、
図38の並進回転動作第6パターン11に示すように、固定子2において極性切り替え10を行い、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)との移動方向に位置する、固定子2の2行1列目及び1行2列目の極性可変素子S
21,S
12を、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)と異なる極性とする。
【0286】
これにより、可動子3の第1領域MR1における他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2における一方の磁極部32(S極部34s)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行1列目及び1行2列目の極性可変素子S21,S12に引き寄せられ、第1領域MR1における一方の磁極部32(N極部33n)に近づいた状態となる。
【0287】
次に、
図38の並進回転動作第6パターン12に示すように、固定子2において極性切り替え11を行い、第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)が位置している、固定子2の2行2列目、3行2列目、2行3列目及び3行3列目の極性可変素子S
22,S
32,S
23,S
33を、当該第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)と同じ極性とする。これにより、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の極性可変素子S
22,S
32,S
23,S
33を跨る中間領域から引き離されて収縮(縮径)し、固定子2の内周面と非接触になる。
【0288】
次に、
図39の並進回転動作第6パターン13に示すように、固定子2において極性切り替え12を行い、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)の移動方向に位置する、固定子2の2行2列目の極性可変素子S
22を、第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)と異なる極性とする。
【0289】
これにより、可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、磁力(可変素子31が弾性部材である場合には、可動子3の可変部35が伸長していたことによる移動方向側への復元力も)によって、固定子2の2行2列目の極性可変素子S22に引き寄せられる。可動子3の第2領域MR2における他方の磁極部32(N極部33n)は、固定子2の極性可変素子S22部分で膨張(拡径)して固定子2の内周面に接触する。
【0290】
以上、ソフトアクチュエータ1では、固定子2の注目領域ER2毎にそれぞれ極性可変素子S11,S12,S13,S21,S22,S23,S31,S32,S33の極性切り替えが行われることで、可動子3の第1領域MR1の一方の磁極部32(N極部33n)を斜め方向に移動させて固定子2の面に接触させた後に、第1領域MR1の他方の磁極部32(S極部34s)と、第2領域MR2の一方の磁極部32(S極部34s)とを固定子2の面と非接触にして、第1領域MR1の一方の磁極部32(N極部33n)に近づけるように斜め方向に移動させる。さらに、ソフトアクチュエータ1では、第2領域MR2の他方の磁極部32(N極部33n)を固定子2の面と非接触にして、第1領域MR1の一方の磁極部32(N極部33n)に近づけるように斜め方向に移動させる。これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3がこのような尺取虫状の動作を繰り返し行い、固定子2の面に沿って可動子3を斜め方向に並進回転させてゆくことができる。
【0291】
(5)作用及び効果
以上の構成において、ソフトアクチュエータ1では、電流に基づいて異なる極性に変更可能な極性可変素子22が行列状に配置された固定子2と、固定子2と対向配置された曲折可能な可変素子31を有した可動子3とを備える。可動子3は、可変素子31の面に、極性が異なる磁極部32が交互に配置されており、固定子2における極性可変素子22の極性の切り替えに応じて、可変素子31が、固定子2の面に接触及び非接触を繰り返して固定子2の面に沿って移動する。従って、ソフトアクチュエータ1では、車輪や駆動装置などを可動子3に設けることがなく、その分、簡易な構成とし得、固定子2に極性可変素子22を設けることで、様々な固定子2に対して可動子3を自由に移動させることができる。
【0292】
また、本実施形態に係る可動子3は、固定子2の面方向内における軸方向X1(一方向)、面方向内で軸方向X1と直交する周方向C1(他方向)、及び、面方向内で軸方向X1と周方向C1との両方向に対して傾斜した斜め方向のうち、少なくともいずれかの方向に伸長と収縮(縮径)とを繰り返すことによって、固定子2の表面に沿って尺取虫状に移動することができる。
【0293】
本実施形態に係る固定子2は、可動子3の第1領域MR1(MC1)の磁極部32と、第1領域MR1(MC1)と隣接した第2領域MR2(MC2)の磁極部32と、を極性可変素子22の極性を変えて固定子2に接触させる(第1極性変更)。
【0294】
また、固定子2は、可動子3の第2領域MR2(MC2)の磁極部32を固定子2に接触させたまま、可動子3の第1領域MR1(MC1)の磁極部32が接触している位置の極性可変素子22と、可動子3の移動方向に位置する極性可変素子22の極性と、を変え、当該移動方向に位置する極性可変素子22に第1領域MR1(MC1)の磁極部32を引き寄せて、当該移動方向に位置する、極性を変えた極性可変素子22の位置に、第1領域MR1(MC1)の磁極部32を接触させる(第2極性変更)。
【0295】
さらに、固定子2は、可動子3の第1領域MR1(MC1)の磁極部32を固定子2の新たな位置に接触させたまま、可動子3の第2領域MR2(MC2)の磁極部32が接触している位置の極性可変素子22と、可動子3の移動方向に位置する極性可変素子22の極性と、を変え、当該移動方向に位置する極性可変素子22に、第2領域MR2(MC2)の磁極部32を引き寄せて、当該移動方向に位置する、極性を変えた極性可変素子22の位置に、第2領域MR2(MC2)の磁極部32を接触させる(第3極性変更)。
【0296】
これにより、ソフトアクチュエータ1では、可動子3を固定子2の面に接触及び非接触を繰り返えさせて固定子2の面に沿って移動させることができる。
【0297】
(6)他の実施形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、例えば、上述した実施形態においては、筒状体の固定子2と、固定子2の筒内空間に配置した、筒状の可動子3とを適用したが、本発明はこれに限らない。例えば、他の実施形態におけるソフトアクチュエータとしては、
図40に示すように、シート状の固定子82とシート状の可動子83とを有するソフトアクチュエータ80であってもよい。
【0298】
この場合、ソフトアクチュエータ80の固定子82は、シート状体でなる固定子本体821を有し、固定子本体821の表面に複数の極性可変素子22が行列状に配置されている。また、可動子83は、シート状部材などの軟質な材料により形成されたシート状体の可変素子831を有しており、可変素子831の面に、チェッカーボード・パターンで、極性が異なる磁極部(N極部33n、S極部34s)32が交互に配置され、N極部33nとS極部34sとの間に可変部35をそれぞれ有する。
【0299】
ソフトアクチュエータ80では、固定子82における極性可変素子22の極性の切り替えに応じて、可動子83が、固定子82の面に接触及び非接触を繰り返して固定子82の平面に沿って移動する。具体的には、固定子82の面方向内における一方向X2、当該面方向内で一方向X2と直交する他方向Y2、及び、面方向内で一方向X2と他方向Y2との両方向に対して傾斜した斜め方向のうち、少なくともいずれかの方向に、可動子83が伸長と収縮(縮径)とを繰り返し、固定子82の表面に沿って尺取虫状に移動する。
【0300】
また、他のソフトアクチュエータとしては、筒状体の固定子2にシート状の可動子83を組み合わせたソフトアクチュエータでもよく、シート状の固定子82に、筒状又は柱状の可動子3を組み合わせたソフトアクチュエータであってもよい。
【0301】
また、上述した実施形態においては、可動子3の第1領域MR1(MC1)及び第2領域MR2(MC2)を尺取虫状に動作させて固定子2の内周面(面)に沿って可動子3を移動させる動作例として、上述したように、「(2)並進動作」、「(3)回転動作」及び「(4)並進回転動作」について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、上述した「(2)並進動作」、「(3)回転動作」及び「(4)並進回転動作」を組み合わせた動作としてもよい。また、「(4)並進回転動作」においては、可動子3の並進回転動作を説明するために、軸方向X1に磁極部32が並んだ第1領域MC1と第2領域MC2を適用して説明したが、本発明はこれに限らず、周方向C1に磁極部32が並んだ第1領域MR1と第2領域MR2を適用して説明できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0302】
1,80 ソフトアクチュエータ
2,82 固定子
3,83 可動子
22 極性可変素子
22n N極素子(極性可変素子)
22s S極素子(極性可変素子)
32 磁極部
33n N極部(磁極部)
34s S極部(磁極部)