(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ナノポアデバイスおよびこれを用いた荷電粒子の検出方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240731BHJP
C12Q 1/6825 20180101ALI20240731BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240731BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240731BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240731BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240731BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240731BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240731BHJP
【FI】
C12M1/34 B ZNA
C12Q1/6825 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/53 M
G01N33/483 F
G01N27/00 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2021504263
(86)(22)【出願日】2019-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019043819
(87)【国際公開番号】W WO2020023946
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520106770
【氏名又は名称】パロゲン,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PALOGEN,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カリミラッド,ビタ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤズディ,レザ ラヒギ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー,ウォン ジョン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-536238(JP,A)
【文献】特表2016-512605(JP,A)
【文献】特表2019-515317(JP,A)
【文献】特表2014-521956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電したバイオポリマー分子を検出するナノポアデバイスであって、
前記デバイスが、ナノチャネルを規定し、
前記デバイスが、
前記ナノチャネルの第1の端部に配置された第1のゲートナノ電極と、
前記第1の端部とは反対側の前記ナノチャネルの第2の端部に配置された第2のゲートナノ電極と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記ナノチャネル内の第1の位置に配置された第1の検知ナノ電極と、
前記ナノチャネルを規定する前記デバイスの内面に結合された第1のバイオポリマープローブとを備え、
前記ナノポアデバイスが、
前記ナノチャネルを含む複数のナノチャネルを規定する3次元アレイを有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記荷電したバイオポリマー分子が、
負に荷電されていることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記第1のゲートナノ電極と前記第2のゲートナノ電極との間の第1の電位が、荷電したバイオポリマー分子の流れを前記第1のゲートナノ電極から前記第2のゲートナノ電極に向けることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2のゲートナノ電極は、
前記第1のゲートナノ電極と前記第2のゲートナノ電極との間に第2の電位を発生させて、前記ナノチャネル
の前記第1の端部と前記第2の端部の間を通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるようにも動作可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記第1の電位と前記第2の電位は、電位の正負が反対であることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記第2の電位が、荷電したバイオポリマー分子の流れを前記第2のゲートナノ電極から前記第1のゲートナノ電極に向けることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2のゲートナノ電極は、前記ナノチャネル
の前記第1の端部と前記第2の端部の間に第1の電位および第2の電位を交互に生成し、それにより前記第1および第2のゲートナノ電極の間で、前記ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の交互に変わる流れを方向付けるようにも動作可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記ナノチャネルの内面が、Al
2O
3、HfO
2、SiO
2またはZnOを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
KCl、LiClおよび脱イオン(DI)水
のうちの少なくとも1つを含む電解質溶液であって、前記第1および第2のゲートナノ電極と、前記第1の検知ナノ電極とが配置される電解質溶液をさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記第1のバイオポリマープローブが、エンドヌクレアーゼ酵素を用いてバイオポリマーの点突然変異を検出するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記第1のバイオポリマープローブが、固定化されたdCas9タンパク質および標的関連ガイドRNA(gRNA)を使用して、バイオポリマーの標的シークエンシングを実行するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記ナノポアデバイスが、マイクロ流体デバイス、ナノ流体デバイス、ナノデバイスまたはlab-on-chipデバイスに組み込まれていることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記ナノポアデバイスが、標的とするバイオポリマーの抽出および検知のためのオールインワンデバイスに組み込まれていることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
標的とするバイオポリマーが、DNA、RNA、mRNA、miRNA、cDNA、ペプチド、タンパク質固定化抗原および抗体からなる群のなかから選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記第1の検知ナノ電極が、トンネル電流、横方向トンネル電流または容量性変化
を検出することによって、第1のバイオポリマープローブへの荷電したバイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
荷電したバイオポリマー分子を検出するための方法であって、
ナノチャネルを含む複数の
ナノチャネルを画定する3次元アレイを有するナノポアデバイスを提供するステップを含み、前記デバイスが、前記ナノチャネルの第1の端部に配置された第1のゲートナノ電極と、前記第1の端部とは反対側の前記ナノチャネルの第2の端部に配置された第2のゲートナノ電極と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記ナノチャネル内の第1の位置に配置された第1の検知ナノ電極と、前記ナノチャネルを規定する前記デバイスの内面に結合された第1のバイオポリマープローブとを備え、
前記第1および第2のゲートナノ電極が、
前記第1および第2のゲートナノ電極の間に第1の電位を発生させて、前記ナノチャネル
の前記第1の端部と前記第2の端部の間を通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付け、
前記第1の検知ナノ電極が、前記第1のバイオポリマープローブに対する第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法において、
前記第1および第2のゲートナノ電極は、前記ナノチャネル
の前記第1の端部および前記第2の端部の間に第1の電位および第2の電位を交互に生成し、それにより前記第1および第2のゲートナノ電極の間で、前記ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の交互に変わる流れを方向付けるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項
16に記載の方法において、
前記ナノポアデバイスが、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記ナノチャネル内の第2の位置に配置された第2の検知ナノ電極をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項
16に記載の方法において、
前記ナノポアデバイスが、マイクロ流体デバイス、ナノ流体デバイス、ナノデバイスまたはlab-on-chipデバイスに組み込まれていることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項
16に記載の方法
が、さらに、
前記ナノポアデバイスにより、
第1の荷電バイオポリマー分子の濃度が10フェムトモルよりも大きいときに、前記第1のバイオポリマープローブへの第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項
20に記載の方法
が、さらに、
前記ナノポアデバイスにより、前記第1の荷電バイオポリマー分子の増幅またはPCRの使用なしで、前記第1のバイオポリマープローブへの前記第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、バイオポリマー分子を特徴付けるためのシステムおよびデバイス、並びに、そのようなシステムおよびデバイスを使用して荷電したバイオポリマー分子を検出する方法に関する。特に、本発明は、荷電したバイオポリマー分子を検出するためのナノポアセンサに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月27日に弁護士整理番号BTL.30005.00の下で出願された、「NANOPORE DEVICE AND METHODS OF DETECTING CHARGED PARTICLES USING SAME」という発明の名称の米国仮出願第62/711,234号の優先権を主張するものであり、その内容は、完全に記載されているかのように、その全体が引用により明示的かつ完全に援用されるものとする。本出願は、2017年9月29日に弁護士整理番号165-101USIPの下で出願された、「MANUFACTURE OF THREE DIMENSIONAL NANOPORE DEVICE」という発明の名称の共有の米国仮特許出願第62/566,313号、2017年12月1日に弁護士整理番号BTL.30002.00の下で出願された、「NANOPORE DEVICE AND METHOD OF MANUFACTURING SAME」という発明の名称の米国仮特許出願第62/593,840号、並びに、2017年12月31日に弁護士整理番号BTL.30003.00の下で出願された、「NANOPORE DEVICE AND METHOD OF ELECTRICAL ARRAY ADDRESSING AND SENSING」という発明の名称の米国仮特許出願第62/612,534号に記載された主題と同様の主題を含む。それらの出願の内容は、完全に記載されているかのように、本明細書に明示的かつ完全に引用により援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
癌のような多くの病気は、病気が進行する前に早期に発見されれば治癒可能である。しかしながら、毎年何百万人もの人々がそのような「治癒可能な」病気で亡くなっている。低レベルのステージで癌を正確かつ早期に診断するための手頃な価格で迅速なポイントオブケア検出デバイスによって、早期治療が可能となり、それにより罹患率や死亡率を減らすことができるであろう。
【0004】
ヒトゲノムプロジェクトの結果、遺伝子多型を調べることによって、ヒトゲノムの多くの疾患関連変異(例えば、癌関連)を検出できるようになっている。同様に、多くの病気の原因となる生物(例えば、ウイルス)も、それらの特定の遺伝子配列を調べることで検出できるようになっている。関心のある標的遺伝子/配列を約10分で検出することで、疾患の診断、疾患の予後の判定、および/または疾患のモニタリングのためのポイントオブケア検出が容易になる。
【0005】
突然変異は、核酸(例えば、DNA、RNAなど)複製でよく見られる。実際に、突然変異は、自然淘汰と進化の背後にある原動力である。突然変異は、血液型、遺伝性疾患などに関連し得る集団の遺伝的/遺伝子多型をもたらす。遺伝子多型の検出は、分子レベルでの遺伝的変異を同定するための最も強力な方法の一つである。一塩基多型(「SNP」)、小規模な挿入/欠失(「インデル」)、転位因子、マイクロサテライトなどの遺伝子多型を検出することで収集された情報から、遺伝性疾患の多くの兆候を検出することができる。多くの遺伝子多型検出技術は、核酸増幅(例えば、PCRを使用)および/または遺伝子プローブのタギング/ラベリング(例えば、酵素/ラジオアイソトープによる)を必要とする。それらの分子生物学的手法は、費用と時間がかかる。
【0006】
遺伝子多型は、費用と時間のかかる別の手法である全ゲノムシークエンシングを用いて「検出」することもできる。核酸を一分子レベルで配列決定する現在の技術には、ナノポアシークエンシング技術が含まれ、これは、タグフリー、ラベルフリーおよび増幅フリーという特徴を有し、読取り長もシステムのスループットも改善されていることから、従来のシークエンシング技術に比べて優位性を有している。このため、ナノポアシークエンシング技術は、高品質の遺伝子シークエンシングアプリケーションに組み込まれている。
【0007】
ナノポアベースのDNAシークエンシングの初期の実験システムは、α-ヘモリシン(αHL)タンパク質ナノポアを通過するssDNAの電気的挙動を検出した。それ以来、ナノポアベースの核酸シークエンシング技術は改善されてきた。例えば、後述するように、固体ナノポアベースの核酸シークエンシングは、生物学的/タンパク質ベースのナノポアを固体(例えば、半導体、金属ゲート)ナノポアで置換する。
【0008】
ナノポアは、イオン電流および/またはトンネル電流の変化によって、ホールを通る荷電粒子(例えば、イオン、分子など)の流れを検出できる(例えば、ナノメートルの範囲の直径を有する)小さなホールである。核酸の各ヌクレオチド(例えば、DNA中のアデニン、シトシン、グアニン、チミン、RNA中のウラシル)は、ナノポアを物理的に通過するときに、ナノポア全体の電流密度に特定の方法で影響を与え、移動中にナノポアを通る電流の変化を測定すると、ナノポアを通過する核酸分子を直接シークエンシングするのに使用できるデータが得られる。このように、ナノポアテクノロジーは電気的検知に基づくものであり、他の従来のシークエンシング方法に必要なものよりも遥かに小さい濃度と量で核酸分子を検出できる。ナノポアベースの核酸シークエンシングの利点には、長い読取り長、プラグアンドプレイ機能、およびスケーラビリティが含まれる。半導体製造技術の進歩に伴い、固体ナノポアは、優れた機械的、化学的、熱的特性、および他のセンシング回路やナノデバイスとの統合を可能にする半導体技術との互換性により、生物学的ナノポアに代わる安価で優れた代替品となっている。
【0009】
図1は、最先端の固体ベースの2次元(「2D」)ナノポアシークエンシングデバイス100を概略的に示している。デバイス100は「2次元」とあるが、このデバイス100は、Z軸に沿っていくらかの厚さを有する。現在の最先端のナノポア技術のそれらの欠点の一部(感度および製造コストの一部)を解決するために、生体分子シークエンシングの並列処理を可能にするマルチチャネルナノポアアレイを使用して、タグフリー、ラベルフリー、増幅フリーで、迅速なシークエンシングを実現することができる。そのようなマルチチャネルナノポアアレイの例は、米国仮特許出願第62/566,313号および第62/593,840号に記載されており、それらの内容は引用により本明細書に援用されている。
【0010】
ナノポアデバイスは、核酸ポリマーを効率的かつ効果的に配列決定するために使用されてきたが、全ゲノムシークエンシングは、特定の遺伝子多型および他の荷電バイオポリマーの検出には非常に複雑である。例えば、関心のある標的遺伝子の検出は、大規模なデータセットを伴う全ゲノムシークエンシングのような通常の増幅ベースの方法と比較して、遥かに小さく、管理可能なデータを伴う。遺伝子多型や他の荷電性バイオポリマーのより効率的な検出が求められている。特に、タグフリー、ラベルフリー、増幅フリーで、迅速な遺伝子多型や他の荷電バイオポリマーの検出が求められている。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に記載の実施形態は、ナノポアベースの電気的に支援された荷電バイオポリマー検出システム、およびそれを用いた荷電バイオポリマー(例えば、遺伝子多型)の検出方法に関する。特に、本実施形態は、様々なタイプ(2Dまたは3D)のナノポアベースの荷電バイオポリマー検出システム、ナノポアアレイデバイスを使用する方法、並びに、ナノポアアレイデバイスを使用して荷電ポリマーを検出する方法に関する。
【0012】
一実施形態では、荷電バイオポリマー分子を検出しかつナノチャネルを規定するナノポアデバイスが、ナノチャネルの第1の端部に配置された第1のゲートナノ電極を含む。本デバイスは、ナノチャネルの第1の端部とは反対側の第2の端部に配置された第2のゲートナノ電極も含む。本デバイスはさらに、第1の端部と第2の端部との間のナノチャネル内の第1の位置に配置された第1の検知ナノ電極を含む。さらに、本デバイスは、ナノチャネルを規定するデバイスの内面に結合された第1のバイオポリマープローブを含む。
【0013】
1または複数の実施形態では、本デバイスが、第1の端部と第2の端部との間のナノチャネル内の第2の位置に配置された第2の検知ナノ電極も含む。荷電したバイオポリマー分子は、負に荷電していてもよい。
【0014】
1または複数の実施形態では、第1および第2のゲートナノ電極が、ナノチャネルに第1の電位を生成して、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるように動作可能である。第1の電位は、第1のゲートナノ電極から第2のゲートナノ電極に荷電したバイオポリマー分子の流れを向けることができる。また、第1および第2のゲートナノ電極は、ナノチャネルに第2の電位を生成して、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるようにも動作可能である。第2の電位は、第1の電位の反対であってもよい。第2の電位は、荷電したバイオポリマー分子の流れを第2のゲートナノ電極から第1のゲートナノ電極に向けることができる。第1および第2のゲートナノ電極は、ナノチャネルに第1の電位および第2の電位を交互に生成し、それにより第1および第2のゲートナノ電極の間で、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の交互に変わる流れを方向付けるようにも動作可能である。
【0015】
1または複数の実施形態では、第1の検知ナノ電極が、第1のバイオポリマープローブに対する第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されている。第1のバイオポリマープローブは、第1の予め設定された長さを有することができる。
【0016】
1または複数の実施形態では、本デバイスが、第1および第2のゲートナノ電極および第1の検知ナノ電極が配置される緩衝液も含む。緩衝液は、KCl、LiClおよび脱イオン(DI)水からなる群のなかから選択することができる。緩衝液は、DI水であり、第1の検知ナノ電極は、DNAの水和メカニズムを用いて、第1のバイオポリマープローブに対する荷電したバイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されるものであってもよい。
【0017】
1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスが、3次元(3D)アレイを含む。ナノポアデバイスは、エンドヌクレアーゼ酵素ベースのSNP検出アレイを使用して、バイオポリマーの点突然変異を検出するように構成されるものであってもよい。ナノポアデバイスは、固定化されたdCas9タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を用いて、DNAバイオポリマーの標的シークエンシングを行うように構成されるものであってもよい。第1および第2のゲートナノ電極および第1の検知ナノ電極の各々は、ナノチャネルを取り囲む帯状部をそれぞれ含むことができる。ナノポアデバイスは、小型の超高感度センサに組み込まれるようにしてもよい。ナノポアデバイスは、マイクロ流体デバイス、ナノ流体デバイス、ナノデバイスまたはlab-on-chipデバイスに組み込まれるようにしてもよい。ナノポアデバイスは、標的とするバイオポリマーの抽出および検知のためのオールインワンデバイスに組み込まれるようにしてもよい。標的とするバイオポリマーは、DNA、RNA、mRNA、miRNA、cDNA、ペプチド、タンパク質固定化抗原および抗体からなる群のなかから選択することができる。
【0018】
1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスは、約10フェムトモル(検出限界)の荷電バイオポリマー分子の最小濃度で、第1のバイオポリマープローブに対する荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されている。ナノポアデバイスは、第1の荷電バイオポリマー分子の増幅またはPCRの使用なしで、第1のバイオポリマープローブに対する荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されるものであってもよい。
【0019】
1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスが、生体分子の増幅またはPCRの使用なしで検出を実行するために、リキッドバイオプシーパネルプラットフォームに組み込まれている。ナノポアデバイスは、タグフリーセンサプラットフォームに組み込まれるようにしてもよい。ナノポアデバイスは、荷電バイオポリマー分子の負電荷に基づいて、第1のバイオポリマープローブへの荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されるものであってもよい。第1のバイオポリマープローブは、プラズマ加速化学蒸着(PECVD)または分子層堆積(MLD)を使用して、ナノチャネルを規定するデバイスの内面に結合されるものであってもよい。ナノポアデバイスは、トンネル電流、横方向トンネル電流または容量性変化に基づいて、第1のバイオポリマープローブに対する荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するように構成されるようにしてもよい。
【0020】
別の実施形態では、荷電したバイオポリマー分子を検出する方法が、ナノチャネルを規定するナノポアデバイスを提供するステップを含む。このデバイスは、ナノチャネルの第1の端部をアドレッシングする第1のゲートナノ電極と、第1の端部とは反対側のナノチャネルの第2の端部をアドレッシングする第2のゲートナノ電極と、第1の端部と第2の端部の間のナノチャネル内の第1の位置をアドレッシングする第1の検知ナノ電極と、ナノチャネルを規定するデバイスの内面に結合された第1のバイオポリマープローブとを含む。この方法は、第1および第2のゲートナノ電極が、ナノチャネルに第1の電位を発生させて、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるステップも含む。
【0021】
1または複数の実施形態では、本方法が、ナノチャネルに第1の電位を生成して、第1のゲートナノ電極から第2のゲートナノ電極へとナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるステップも含む。本方法は、ナノチャネルに第2の電位を発生させて、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるステップも含むことができる。第2の電位は、第1の電位の反対であってもよい。本方法はさらに、ナノチャネルに第2の電位を生成して、第2のゲートナノ電極から第1のゲートナノ電極へとナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の流れを方向付けるステップも含むことができる。さらに、本方法は、ナノチャネルに第1の電位および第2の電位を交互に生成し、それにより第1および第2のゲートナノ電極の間で、ナノチャネルを通る荷電したバイオポリマー分子の交互に変わる流れを方向付けるステップを含むことができる。
【0022】
1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスが、第1の端部と第2の端部との間のナノチャネル内の第2の位置をアドレッシングする第2の検知ナノ電極を含む。荷電したバイオポリマー分子は、負に荷電していてもよい。
【0023】
1または複数の実施形態では、第1のバイオポリマープローブが、第1の予め設定された長さを有する。デバイスは、ナノチャネルを規定するデバイスの内面に結合された第2のバイオポリマープローブを含むことができる。1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスが、第1および第2のゲートナノ電極および第1の検知ナノ電極が配置された緩衝液も含む。緩衝液は、KCl、LiClおよび脱イオン(DI)水からなる群のなかから選択することができる。緩衝液は、DI水であり、第1の検知ナノ電極は、DNAの水和メカニズムを使用して、第1の荷電したバイオポリマー分子と第1のバイオポリマープローブとのハイブリダイゼーションを検出するようにしてもよい。
【0024】
1または複数の実施形態では、ナノポアデバイスが、3次元(3D)アレイを含む。本方法は、ナノポアデバイスが、エンドヌクレアーゼ酵素を使用して、バイオポリマー中の点突然変異を検出するステップも含むことができる。本方法は、ナノポアデバイスが、固定化されたdCas9タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を使用して、バイオポリマーの標的シークエンシングを実行するステップも含むことができる。第1および第2のゲートナノ電極および第1の検知ナノ電極の各々は、ナノチャネルを取り囲む帯状部をそれぞれ含むことができる。
【0025】
1または複数の実施形態では、本方法が、ナノポアデバイスにより、約10フェムトモル(検出限界)の第1の荷電バイオポリマー分子の最小濃度で第1のバイオポリマープローブへの第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するステップをさらに含む。本方法は、ナノポアデバイスにより、第1の荷電バイオポリマー分子の増幅またはPCRの使用なしで、第1のバイオポリマープローブへの第1の荷電バイオポリマー分子のハイブリダイゼーションを検出するステップをさらに含むことができる。本方法は、生体分子の増幅またはPCRの使用なしで検出を実行するために、ナノポアデバイスをリキッドバイオプシーパネルプラットフォームに組み込むステップをさらに含むことができる。ナノポアデバイスは、タグフリーセンサプラットフォームに組み込まれるものであってもよい。本方法は、ナノポアデバイスにより、ハイブリダイゼーションを検出するステップも含むことができる。
【0026】
本発明の上記および他の実施形態を、以下の詳細な説明に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
上記実施形態および他の実施形態の態様を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。それら図面では、異なる図面の同じ構成要素を共通の符号で参照する。
【0028】
【
図1】
図1は、先行技術の固体2Dナノポアデバイスを概略的に示している。
【
図2】
図2は、様々な実施形態に係る3Dナノポアデバイスを概略的に示している。
【
図3】
図3は、様々な実施形態に係る3Dナノポアデバイスを概略的に示している。
【
図4】
図4は、様々な実施形態に係る3Dナノポアデバイスを概略的に示している。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図7】
図7は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図10】
図10は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図11】
図11は、いくつかの実施形態に係る3Dナノポアデバイスを使用して荷電した生体分子を検出するための方法を概略的に示している。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、いくつかの実施形態に係るナノポアデバイスを製造するための方法を概略的に示している。
【
図13】
図13は、いくつかの実施形態に係るナノポア荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的生体分子の濃度と電流の関係を例示するグラフである。
【
図14】
図14は、様々な実施形態に係るナノポア荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的荷電バイオポリマーを加えた後の時間と電流との間の関係を例示するグラフである。
【
図15】
図15は、様々な実施形態に係るナノポア荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的荷電バイオポリマーを加えた後の時間と電流との間の関係を例示するグラフである。
【
図16】
図16A~
図16Cは、様々な実施形態に係るナノポア荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的荷電バイオポリマーを加えた後の時間と電流との間の関係を例示するグラフである。
【
図17】
図17Aおよび
図17Bは、様々な実施形態に係るナノポア荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的荷電バイオポリマーを加えた後の時間と電流との間の関係を例示するグラフである。
【0029】
様々な実施形態の上記および他の利点および目的を獲得する方法をより良好に理解するために、実施形態のより詳細な説明が、添付の図面を参照して提供される。図面は一定の縮尺で描かれておらず、同様の構造または機能の構成要素は全体を通して同様の符号によって表されていることに留意されたい。これらの図面は、特定の例示された実施形態のみを示しており、したがって、実施形態の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
タグフリー、ラベルフリー、増幅フリーで、荷電したバイオポリマーの迅速な(例えば、10分未満の)検出を達成するための方法が本明細書に記載されている。以下に、電位を操作して荷電生体分子のハイブリダイゼーションを増加させるとともに、荷電生体分子のハイブリダイゼーションにより生成される電気的特性を検出することによって、荷電バイオポリマーを効率的かつ効果的に検出するナノポア電気支援荷電バイオポリマー検出デバイスを説明する。そのような検出デバイスおよび方法は、マイクロアレイ、CMOSアレイおよびナノポアアレイ(例えば、固体ナノポアアレイ、ハイブリッドナノポアアレイ)を含む様々な生体分子アレイで使用することができる。そのような検出デバイスおよび方法は、上述した3Dマルチチャネルナノポアアレイおよび平面マルチチャネルナノポアアレイを含む様々なマルチチャネルナノポアアレイとともに使用することもできる。
【0031】
荷電生体分子検出の並列処理を可能にするマルチチャネルナノポアアレイは、タグフリー、ラベルフリー、増幅フリーで、迅速な生体分子検出を達成するために使用することができる。そのようなマルチチャネルナノポアアレイの例は、米国仮特許出願第62/566,313号および第62/593,840号に記載されており、それらの内容は引用により援用されている。そのようなマルチチャネルナノポアアレイは、荷電粒子(例えば、生体分子)をそれらのマルチチャネルナノポアアレイ内の特定のチャネルに誘導するように電気的に配置することができる。他のアレイは、アレイの外側のマイクロ流体チャネルに結合される。その内容が引用により援用される米国仮特許出願第62/612,534号に記載されているように、マルチチャネルナノポアアレイ内の個々のナノポアチャネルを電気的に配置および検知することは、荷電粒子(例えば、生体分子)の低コストで、高スループットで、タグフリー、ラベルフリー、増幅フリーの検出を達成するために、マルチチャネルナノポアアレイのより効率的かつ効果的な使用を容易にすることができる。
【0032】
例示的なナノポアデバイス
図2は、一実施形態に係る3次元(「3D」)アレイアーキテクチャを有するナノポアデバイス200を概略的に示している。デバイス200は、Z軸204に沿って積層された複数の2Dアレイまたは層202A~202Dを含む。2Dアレイ202A~202Dは「2次元」と呼ぶが、2Dアレイ202A~202Dの各々は、Z軸に沿ってある程度の厚さを有する。
【0033】
最上部の2Dアレイ202Aは、第1および第2の選択(抑制ナノ電極)層206、208を含み、第1および第2の選択層206、208は、それらに形成されたナノポア210(ピラー、ナノチャネル)を通る荷電粒子(例えば、バイオポリマー)の動きを方向付けるように構成されている。第1の選択層206は、2Dアレイ202Aの複数の横列(R1~R3)のなかから選択するように構成されている。第2の選択層208は、2Dアレイ202Aの複数の縦列(C1~C3)のなかから選択するように構成されている。一実施形態では、第1および第2の選択層206、208は、選択された横列および縦列に隣接する電荷、および/または選択されていない横列および縦列に隣接する電荷を変更することによって、横列および縦列のなかからそれぞれ選択するように構成されている。他の2Dアレイ202B~202Dは、速度制御/電流検知ナノ電極を含む。速度制御/検知ナノ電極は、導電性の高い金属およびポリシリコン、例えばAu-Cr、TiN、TaN、Ta、Pt、Cr、グラフェン、Al-Cuなどで作ることができる。速度制御/検知ナノ電極は、約0.3~約1000nmの厚さを有することができる。また、速度制御/検知ナノ電極は、ハイブリッドナノポア内の生物学的層に形成されるものであってもよい。各検知ナノ電極は、各ナノポア210のピラーが特定のメモリセルに動作可能に結合され得るように、ナノポア210のピラーに動作可能に結合/配置されるものであってもよい。ナノポアデバイスにおける電気的アドレッシングは、米国仮特許出願第62/612,534号に記載されており、その内容は引用により援用されている。
【0034】
ハイブリッドナノポアは、ナノポアの安定性を高めるために、半合成膜ポーリンを形成するための固体成分を有する安定した生物学的/生化学的成分を含む。例えば、生物学的成分は、αHL分子であってもよい。αHL分子は、SiNベースの3Dナノポアに挿入することができる。(例えば、最上部の2Dアレイ202Aの)ナノ電極にバイアスを印加することにより、αHL分子を誘導して、αHL分子をSiNベースの3Dナノポアと確実に整列させる構造をとることができる。
【0035】
ナノポアデバイス200は、3D垂直ピラースタックアレイ構造を有し、平面構造を有する従来のナノポアデバイスよりも遥かに大きな電荷検出のための表面積を提供する。荷電粒子(例えば、バイオポリマー)がデバイス内の各2Dアレイ202A~202Eを通過するときに、その電荷は、いくつかの2Dアレイ202B~202Eの検出器(例えば、ナノ電極)で検出することができる。したがって、デバイス200の3Dアレイ構造は、より高い感度を実現し、それにより、低信号の検出器/ナノ電極を補償することができる。メモリセルを3Dアレイ構造に組み込むことにより、(例えば、外部メモリデバイスを使用した場合の)メモリに関連する性能制限を最小限に抑えることができる。さらに、高度に集積化されたスモールフォームファクタの3D構造は、製造コストを最小限に抑えながら、高密度のナノポアアレイを提供する。
【0036】
使用時には、ナノポアデバイス200は、上部および下部チャンバ(図示省略)がナノポアピラー210によって流体的に結合されるように、上部および下部チャンバ(図示省略)の間に配置され、それらを分離している。上部および下部チャンバは、ナノ電極(例えば、Ag/AgCl2など)と、検出対象の荷電粒子(例えば、DNA)を含む緩衝液(電解質溶液またはKClを含むDI水)とを含む。様々な荷電粒子の検出に、様々なナノ電極および電解質溶液を使用することができる。
【0037】
ナノポアデバイス200の最上部2Dアレイ202Aに隣接する上部チャンバ(図示省略)およびナノポアデバイス200の底部2Dアレイ202Eに隣接する下部チャンバ(図示省略)に配置されたナノ電極にバイアスを印加することによって、電気泳動による荷電粒子の転位を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、ナノポアデバイス200は、ナノポアデバイス200のナノポアピラー210によって上部チャンバおよび下部チャンバ(図示省略)が流体的および電気的に結合されるように、上部チャンバおよび下部チャンバ(図示省略)の間に配置されている。上部チャンバおよび下部チャンバは、電解質溶液を含むことができる。
【0038】
図3は、一実施形態に係るナノポアデバイス300を概略的に示している。ナノポアデバイス300は、絶縁膜層(Si3N4)と、それに続いて、横列および縦列選択(抑制ナノ電極)306、308(例えば、金属またはドープされたポリシリコン)と、複数(第1~第N)のセルナノ電極310(例えば、金属またはドープされたポリシリコン)とを含む。ナノポアデバイス300のナノ電極306、308、310は、絶縁体誘電体膜312(例えば、Al2O3、HfO2、SiO2、ZnO)で覆われている。
【0039】
縦列および横列電圧(例えば、Vd)について転位速度制御バイアス信号410が3Dナノポアセンサアレイ400に印加されると、後述するように、横列および縦列抑制電圧/バイアスパルスの後に、ベリファイ(検知)電圧/バイアスパルス(例えば、Vg1、Vg2)が続く。Vg3およびそれに続く電極(Vg4~VgN)は、検知電極および転位電極である。
図4には、例示的な信号410が、3Dナノポアセンサアレイ400の最上部に重ねて描かれている。抑制バイアスは、様々な縦列および横列のナノポアピラーチャネル/ナノチャネルをそれぞれ選択解除するために適用される。検知動作中、縦列および横列(抑制)選択ナノ電極の両方が選択される。結果として生じる表面電荷412は、電流などの電気的特性の変化として検出することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ナノ電極は、イオン遮断、トンネリング、容量性検知、圧電およびマイクロ波検知を含む様々な原理を使用して電流変調を検出することができる。また、
図4に示すように、(参照電極によって検出される)電極のイオン濃度またはいわゆるイオン電流の変化を、付属のCMOSトランジスタによって増幅して正確に検知することも可能である。
【0041】
例示的なナノポア電気支援荷電バイオポリマー検出デバイスおよび方法
図5は、いくつかの実施形態に係るナノポア電気支援荷電バイオポリマー検出デバイスを示している。
図5には単一のナノチャネル510を含むナノポア検出デバイス500の一部が示されているが、ナノポア電気支援荷電バイオポリマー(例えば、遺伝子多型)検出デバイスは、複数のナノチャネルを有する3Dアレイを含むことができる。
図5に示すナノポア検出デバイス500のような荷電バイオポリマー検知構造は、ナノチャネルの電荷感度および並列処理および3Dアレイから生じる大きな表面積を利用して、荷電バイオポリマーの迅速な増幅フリー、タグフリーおよびラベルフリーの検出を容易にする。
【0042】
ナノポア検出デバイス500は、ナノ電極522、524、526、528を含む。これらのナノ電極522、524、526、528は、ナノチャネル510(第1および第2のゲートナノ電極522、524)を通る流れを制御し、ナノチャネル510(第1および第2の検知ナノ電極526、528)内の電荷を検出するために、独立して電気的に配置されている。
【0043】
また、ナノポア検出デバイス500は、ナノチャネル510の内面530に結合された中性プローブ(PNA、DNAモルホリノオリゴマー)532を含む。内面530は、Al2O3を含むことができる。Al2O3は、多数のヒドロキシル基を含み、ナノチャネル510の内面530上の中性プローブ532の固定化のための官能化を容易にする。中性プローブ532は、遺伝子内の標的領域に相補的であるように、既知の分子生物学的手法を用いて生成することができる 中性プローブ532は、様々な長さ(例えば、24塩基対、40塩基対など)を有することができる。
【0044】
中性プローブ532は、気相シラン化を用いて内面に結合/共有結合することができる。また、中性プローブ532の有機コーティングの厚さは、気相シラン化の時間を変更することによって調節することもできる。
【0045】
いくつかの実施形態では、先ず、ナノポアデバイスをO2プラズマで処理して、Al2O3基板上に-OH基を生成し、それにより、基板を活性化して標的官能基を結合する。その後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をシラン化のために使用する。これは、様々な可能性のある表面構造に対して有効であり、かつ反応性が非常に高いためである。中性プローブ532の共有結合前に、ナノポアデバイス510を、周囲温度および約30kPaのベース圧力で、50μlのAPTES(Sigma-Aldrich社製)を含むガラスホルダに隣接する動的に送り出される低真空チャンバ内に置くことによって、気相中のシラン(例えば、エタノール中にAPTESおよびOTMSを1:3の比率)に曝す。その後、ナノポアデバイス510を真空チャンバから取り出し、2.5%グルタルアルデヒド溶液(Sigma-Aldrich社製)に1時間浸漬する。次に、ナノポアデバイス510を架橋剤から取り出し、IPIで2回、再蒸留水で2回洗浄する。最後に、ナノポアデバイス510を、100nMのアミノ修飾中性プローブで37℃で一晩(例えば、浸漬によって)処理する。各ステップの後、ウルトラピュアDNase/RNaseフリー蒸留水(洗浄緩衝液として使用)でナノポアデバイスを洗浄する。このような方法を用いて、中性プローブ532の共有結合/固定化を約24時間で達成することができ、45℃では8時間で達成することができる。
【0046】
ナノチャネル510の内面530に共有結合した中性プローブ532に対する荷電生体分子540(例えば、負に荷電した核酸)のナノポア検出デバイス500のハイブリダイゼーションの感度は、結果として生じる電荷の違いに基づいて、単一塩基の不一致を検出することができる程度である。ナノポアデバイスの3Dアレイ構造から生じる並列処理は、ナノポアデバイスと検出される荷電生体分子との間の界面面積を劇的に増加させ、それにより、様々な疾患(例えば、遺伝性疾患)のポイントオブケア診断および予後の判定に十分なレベルまで感度を増加させる。
【0047】
第1および第2のゲートナノ電極522、524は、独立して配置され、よって迅速に電気的に変更して、荷電生体分子540と中性プローブ532とのハイブリダイゼーションを増加させる荷電生体分子540の「ピンポン」運動を発生させることができる。ナノチャネル510の第1および第2のゲートナノ電極522、524間の電位は、第1および第2のゲートナノ電極522、524に電流を流すことによって急速に反転させることができる。また、第1および第2のゲートナノ電極522、524は、ナノチャネル510を通る荷電生体分子540の転位を制御するためにアドレッシングすることもできる。
【0048】
標的荷電生体分子540は、DNA、cDNA、mRNAなどの多くの種類の核酸であり得る。中性プローブ532は、相補的DNA鎖、ロック核酸(LNA)オリゴマー、ペプチド核酸(PNA)のような中性骨格オリゴマー、DNAモルホリノオリゴマー、または標的電荷生体分子540とハイブリダイズすることができる任意のタイプの相補的な鎖であり得る。
【0049】
図5に示すように、電流/電位がナノポア検出デバイス500に印加される前は、荷電生体分子540はナノチャネル510に引き寄せられない。
図6は、第1および第2のゲートナノ電極522、524に正の電位を生成するための電流の印加を示している。この正の電位は、負に荷電した生体分子540をナノチャネル510内に引き寄せる。
【0050】
図7は、第1および第2のゲートナノ電極522、524に正の電位を生成するための電流の継続的な印加を示している。時間の経過とともに、負に荷電した生体分子540の一部がナノチャネル510内に入り、ナノチャネル510の内面530に共有結合した中性プローブ532と相互作用する。負に荷電した生体分子540と中性プローブ532との間のこの相互作用は、2つの分子間のハイブリダイゼーションをもたらす。これにより、負に荷電した生体分子540が第1および第2の検知ナノ電極526、528に電気的に接続され、負に荷電した生体分子540に関連する負の電荷534を検出することができる。
【0051】
図5は、第1および第2のゲートナノ電極522、524における電位の変更を示している。
図5では、第1のゲートナノ電極522には電流がもはや印加されておらず、正の電位が除去されている。しかしながら、第2のゲートナノ電極524には電流が維持されて、正の電位が維持されている。この電位の変化は、流れの矢印550で示すように、ナノチャネル510内の負に荷電した生体分子540を第2のゲートナノ電極524に向かって引き寄せる。
図5は、より多くの負に荷電した生体分子540が、ナノチャネル510内の中性プローブ532にハイブリダイズしたことを示している。
【0052】
図9は、第1および第2のゲートナノ電極522、524における電位の別の変更を示している。
図9では、第2のゲートナノ電極524には電流がもはや印加されておらず、正の電位が除去されている。しかしながら、第1のゲートナノ電極522には電流が維持されて、正の電位が維持されている。この電位の変化は、流れの矢印552で示すように、ナノチャネル510内の負に荷電した生体分子540を第1のゲートナノ電極522に向かって引き戻す。
図9は、荷電した生体分子540がナノチャネル510内の中性プローブ532にさらに曝されることにより、より多くの負に荷電した生体分子540が中性プローブ532にハイブリダイズしたことも示している。
【0053】
図10は、第1および第2のゲートナノ電極522、524における電位のさらに別の変更を示している。
図9では、第1のゲートナノ電極522にはもはや電流が印加されておらず、正の電位が取り除かれている。しかしながら、第2のゲートナノ電極524には電流が印加されて、正の電位が維持されている。この電位の変化は、流れの矢印550で示すように、ナノチャネル510内の負に荷電した生体分子540を第2のゲートナノ電極524に向かって引き戻す。
図10は、荷電した生体分子540がナノチャネル510内の中性プローブ532にさらに曝されることにより、より多くの負に荷電した生体分子540が中性プローブ532にハイブリダイズしたことも示している。
【0054】
図5~
図10の流れの矢印550、552で示す方向の変化は、荷電した生体分子540の「ピンポン」運動における最初の2つの方向変化を示しており、それにより荷電した生体分子540と中性プローブ532とのハイブリダイゼーションが増加する。方向の変化は、第1および第2のゲートナノ電極522、524の電位を変化させることによって制御され、それらゲートナノ電極は、交互に電流を印加することによって変更される。電流は、プロセッサの制御下で、個別に電気的に
配置された第1および第2のゲートナノ電極522、524に印加することができるため、電流および電位の交代は、迅速に実行することができる。荷電生体分子540の「ピンポン」運動は、荷電生体分子540がナノチャネル510内の中性プローブ532に曝される時間を増加させ、それによって2つの分子間のハイブリダイゼーションの量を増加させる。
図5~
図10では2つの方向の変化のみが示されているが、生体分子検出方法は、標的荷電生体分子540のハイブリダイゼーションを増加させるために、より多くの方向の変化を含むことができる。
【0055】
図11は、生体分子検出方法における一連の「ピンポン」運動の終わりを示している。検出方法の終了時に、複数の負に荷電した生体分子540は、中性プローブ532にハイブリダイズし、それら中性プローブ自体は、ナノチャネル510の内面530に共有結合している。負に荷電した各生体分子540が中性プローブ532にハイブリダイズすると、その追加の負電荷534は、第1および/または第2の検知ナノ電極526、528によって検出される。検知ナノ電極526、528は、単一の塩基対のミスマッチを区別するのに十分な感度を有する。このため、検知ナノ電極524、528は、各荷電生体分子540のハイブリダイゼーションに関連する負電荷534を検出することができる。したがって、ナノポア検出デバイス500は、タギングまたはラベリングプローブを用いることなく、溶液中の標的荷電生体分子を迅速に(例えば、10分未満で)検出し、定量することができる。この方法は、通常の方法ではシークエンシングが困難なGCリッチ領域を有する標的荷電生体分子も検出することができる。
【0056】
図5~
図11に示すナノポア検出デバイス500は、特定の手順中に単一の負に荷電した標的生体分子540のみを検出するように構成されているが、他の実施形態に係るナノポア検出デバイスは、複数の負に荷電した標的生体分子を検出するように構成することができる。そのようなナノポア検出デバイスは、複数の中性プローブを含み、それらが、(1)負に荷電した様々な標的生体分子とハイブリダイズし、(2)様々な長さを有する。中性プローブは様々な長さを有するため、負に荷電した様々な標的生体分子のハイブリダイゼーションによって、ナノチャネルの内面に様々な量の負電荷が電気的に付加されることになる。検知ナノ電極は、そのような様々な量の負電荷を区別するのに十分な感度を有し、それにより、負に荷電した様々な標的生体分子のハイブリダイゼーションを区別する。
【0057】
例示的なナノポアデバイスの製造方法
図12Aおよび
図12Bは、いくつかの実施形態に係る、上述したナノポア検出デバイス500、600のようなナノポアデバイスを製造する方法1210を概略的に示している。
【0058】
ステップ1212では、ナノポアデバイスの(ナノチャネル内の)内面を、O
2プラズマ処理、洗浄および活性化する。ステップ1214では、デバイスの表面を(3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)で処理して官能化することにより、シラン化する。ステップ1216では、官能化された表面にアルデヒドリンカーを付着させる。ステップ1218(
図12B)では、アルデヒドを介してプローブ(例えば、PNA)を表面に付着させる。ステップ1220では、負に荷電した標的生体分子(例えば、DNA)が表面上のプローブに付着して、表面の電荷を変化させ、それにより、上述したように、負に荷電した標的生体分子が電気的に検出される。
【0059】
例示的なDNA検知の実施形態
以下、荷電したバイオポリマー/標的分子としてのDNAの検知に関する実施形態を説明する。
【0060】
第1の実施形態は、標的分子としての人工DNAを検知することを含む。第2の実施形態は、標的分子としてラムダファージDNAを検知することを含む。それらの実施形態は、ゲノムDNAおよび合成DNAを検知/検出するナノポア検知/検出システムの能力を実証している。
【0061】
図13は、いくつかの実施形態に係る、上述したデバイス500、600などのナノポア電気支援荷電バイオポリマー検出デバイスにおける標的生体分子の濃度(「モル濃度」)と電流(I
d)との間の関係を例示するグラフである。この関係は、約10
-9モルおよび-1000pAの位置に単一の変曲点を有するほぼ逆対数的なものである。このため、検出された電流に基づいて溶液中の標的生体分子の濃度を定量するために、この関係を使用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態における検出下限は、標的生体分子のフェムトモル(10
-15)の範囲である。
図14~
図17Bは、いくつかの実施形態に係る、上述したデバイス500、600などのデバイスにおいてある濃度(10フェムトモル)の標的生体分子(DNA)を加える前後の時間(サンプル)と電流(nA)との間の様々な関係を示している。
【0063】
図14~
図17Bに示す実施形態では、ナノポア検出デバイスからの出力信号に基づいて検出限界を求めるために、感度を測定した。純度99.9%(HPLC(Agilent technology)およびMALDI-MS(Shimadzu Biotech)により定量)のアミノ修飾PNAプローブ(PANAGene Korea)、付着部位としてのNH2末端、およびキャップされたC末端を、ナノポア検出デバイスに使用した。プローブ間の不要な結合を防ぐために、PNAプローブのC末端をCONH2基でキャップした。プローブと表面との間の障害を防ぐために、Oリンカーを使用した。いくつかの実施形態では、2つの異なるタイプのプローブが利用され、その一方は、合成DNAを検出するためのものであり、他方は、ラムダファージのゲノムDNAであるラムダDNAを検出するためのものである。17bp合成DNA検出プローブ(COSMO GENETECH Korea)は、
NH2-O-GGGGCAGTGCCTCACAA-CONH2であり、標的配列は、5’TTGTGAGGCACTGCCCC3’である。
20bpラムダDNA検出プローブ(Thermo Fisher Scientific)は、
ラムダDNAに相補的な標的配列を有するNH2-O-CGTAACCTGTCGGATCACCG-CONH2である。
図14~
図17Bのグラフに示すように、検出下限は約10フェムトモルである。
【0064】
1982年のManiatisの知見によれば、プローブの17bpの長さは、次の式を用いてオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする、一定の複雑性を有するゲノム上の位置の数に基づいて計算された16bpの最小プローブ長よりも1つ大きくなる。
P0=[1/4]L×2C
ここで、P0は独立した完全一致の数、Lはオリゴヌクレオチドプローブの長さ、Cは標的ゲノムの複雑さを表している(この値に2を乗じたものは、プローブにハイブリダイズする可能性のある2本の相補的なDNA鎖を表している)。この式によれば、長さ16bpのオリゴヌクレオチドは、1つの位置でヒトゲノムの付着すると予想される。このため、そのようなプローブは、特定のタイプの癌または感染症に関連する特定の部位の検出に使用することができる。したがって、ヒトゲノム中の関心のある標的をシークエンシングするための検出システムにおいて、またはリキッドバイオプシープラットフォームにおいて、17bpのプローブは、プローブの最小サイズである。
【0065】
図14は、上述した標的DNAを約10フェムトモル濃度で加えたときに、検知ナノ電極の電流が約10.58nAから約11.35nAに上昇することを示している。
図15は、上述した標的DNAを約1ピコモルの濃度で加えたときに、10フェムトモルの100倍に増加することを示している。したがって、約10フェムトモルの標的DNAの添加に起因する検知ナノ電極の電流の検出可能な0.77nAの増加は、検出の最小限界を表している。
【0066】
図16A~
図16Cは、最上部のゲートナノ電極において、電流が、DNAを添加してから20分後には約1.72nAから約2nAまで増加し、DNA添加してから30分後には約3nAまで増加することを示している。
図17Aおよび
図17Bは、最下部のゲートナノ電極において、DNA添加後に、電流が約1nAから約1.6nAまで増加することを示している。ナノポア検出システムのそれらのナノ電極のすべての電流は、標的DNAに加えられることにより検出可能なレベルで増加する。
【0067】
本明細書に記載のナノポア検出システムは、緩衝液としてDI水を用いて機能する3Dセンサである。ナノスケールの小空間内の水分子のための機能および正確な作用メカニズムは、これまでに調査および理解されていないが、本明細書に記載の3Dアレイの高感度で明確な分解能は、電解質または他の緩衝液の代わりにDI水を使用することの利点を証明する可能性があり、それにより、そのような感度の高いセンサ内のノイズレベルが増加する。
【0068】
本明細書に記載のナノポア検出システムにおける反応および信号発生のメカニズムは、上述した中性プローブに付着するDNA分子の水和に起因して表面の電荷分布が変化することに基づくものである。この水和により、ゲートナノ電極の電荷密度の再分布に伴う電極の変化が生じる。ナノポア内のナノ電極は、ナノポアを取り巻く全周または帯状の形態を有しており、それによりナノポアセンサの感度が高められる。
【0069】
各ナノポアで異なる電位勾配を使用することにより、ユーザは、各ナノポア内および各ナノポアを通って移動する荷電した生体分子の速度を制御することができる。低濃度の緩衝液/電解質またはDI水を使用してナノポアの検知領域のデバイ長を増加させることは、本明細書に記載の3Dナノポア検出システムの固有の特性の1つである。ユーザは、上述したように、各ナノ電極に対する電位の量および持続時間を変化させて、荷電した標的バイオポリマーの動きおよびナノ電極間でのそれらのピンポン運動を電気泳動的に制御することにより、ナノポア検出システムを広範囲に制御することができる。このように、荷電した標的バイオポリマーがナノ電極の電位を変更/変化させながらナノ電極間を往復運動すると、荷電ターゲットバイオポリマーが中性プローブに付着するまでの時間が10分未満に短縮される。この付着時間の短縮は、標的とプローブ間の相互作用が増加して、より短い時間で互いに結合できるようになるためである。
【0070】
本明細書に記載されているようなナノポア検出システムのいくつかの実施形態では、ナノポア構造のサイズ、形状および深さは、中性プローブのサイズに基づいて変更することができる。例えば、直径50nm(500Å)のポアサイズは、40bpの中性プローブを有する標的バイオポリマーを検知するために使用することができる。他の実施形態では、直径100nmのポアサイズは、100bpを超える中性プローブを有する標的バイオポリマーを検知するために使用することができる。さらに他の実施形態では、直径200nmのポアサイズは、さらに長い中性プローブを有する標的バイオポリマーを検知するために使用することができる。
【0071】
本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサは、ナノポアの3Dアレイが表面対体積比を増加させてナノポアアレイのナノチャネル内のスマート表面の小型化を可能にするため、2Dまたは平面構造センサと比較して、より高感度でコンパクトなセンサとなる。高い表面積対体積比は、荷電したバイオポリマーの非常に低い濃度(例えば、10フェムトモル)の検知を可能にする。
【0072】
本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサは、誘電体層が各ナノチャネルの内面を絶縁して各ナノチャネルに対する静電容量効果および電界効果の制御が強化されるため、電荷摂動または電気化学ベースのセンサシステムと比較して、より優れた制御を提供することができる。
【0073】
本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサは、固定化されたプローブで荷電した生体分子(例えば、DNA)を検知するために、静電容量変化を使用することができる。標的DNA分子がアレイ構造のナノポア内を通過すると(外部電圧によって電気泳動されると)、最上部および最下部の電極は、ナノポア構造内を通過するDNA分子に起因する電位の変化を記録し、キャパシタのようにナノポアを分極する。その結果生じる静電容量の変化を電子的に測定することで、標的DNA分子の通過を検出することができる。また、印加される正のゲートバイアスを制御することで、DNA分子の速度を制御することができ、それにより、3Dナノポアアレイセンサを単一ヌクレオチドシークエンシングに利用することができる。本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサは、トンネル電流と静電容量変化の両方を検出することにより、荷電した生体分子の通過を検出することができる。既存の生物学的ナノポアは、その構造にナノ電極が埋め込まれていないため、トンネル電流と静電容量変化を検出することができなかった。
【0074】
本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサで使用される中性プローブは、その表面化学特性を変化させるために修飾することができ、それにより、より多くのシステム制御および設計オプションが可能になる。例えば、チオール修飾を、チオール金結合のために使用することができる。アビジン/ビオチンおよびEDC架橋剤/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)は、固定化技術の構造および化学特性を変えて本明細書に記載の3Dナノポアアレイセンサとともに使用することができる他のプローブ修飾および標的対である。
【0075】
以下の特許請求の範囲のすべての手段またはステッププラス機能要素の対応する構造、材料、行為および等価物は、具体的に主張されるように、他の特許請求の範囲の要素と組み合わせて機能を実行するための任意の構造、材料、行為および等価物を含むことを意図している。本発明は、上記の実施形態と関連して説明されているが、前記の説明および請求項は、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。本発明の範囲内の他の側面、利点および修正は、本発明が属する技術に熟練した当業者には明らかであろう。
【0076】
本発明の様々な例示的な実施形態が本明細書で説明される。非限定的な意味でこれらの例を参照する。それらは、本発明のより広く適用可能な態様を例示するために提供される。本発明の真の意図および範囲から逸脱することなく、説明された本発明に様々な変更を加えることができ、均等物を代用することができる。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為またはステップを本発明の目的、意図または範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書で説明および図示される個々のバリエーションはそれぞれ、本発明の範囲または意図を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離または組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。このような変更はすべて、この開示に関連する請求項の範囲内であることが意図されている。
【0077】
主題の診断または介入処置を実行するための上記デバイスのいずれも、そのような介入を実行する際に使用するためにパッケージ化された組み合わせで提供されてもよい。これらの供給「キット」は、使用説明書をさらに含み、そのような目的で一般的に使用される無菌トレイまたは容器に包装されてもよい。
【0078】
本発明は、主題のデバイスを使用して実行され得る方法を含む。この方法は、そのような適切なデバイスを提供する行為を含み得る。この提供は、エンドユーザが実行してもよい。言い換えると、「提供する」行為は、エンドユーザが主題の方法で必要なデバイスを提供するために取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、起動、電源投入、またはその他の方法で動作させることのみを必要とする。本明細書に列挙された方法は、論理的に可能である列挙されたイベントを任意の順序で実行してもよいし、列挙されたイベントの順序で実行してもよい。
【0079】
本発明の例示的な態様が、材料の選択や製造に関する詳細とともに、上記で説明されている。本発明の他の詳細は、上記で参照された特許および刊行物に関連して理解され、ならびに当業者によって一般に知られているか評価される。同じことが、一般的または論理的に用いられる追加の動作に関して、本発明の方法ベースの態様に関しても事実であり得る。
【0080】
さらに、本発明について、様々な特徴を任意に組み込んだいくつかの例を参照して説明したが、本発明は、本発明の各バリエーションに関して企図されるように説明または図示されたものに限定されない。開示の真の意図および範囲から逸脱することなく、記載された本発明に様々な変更を加えることができ、均等物(本明細書に記載されているか、ある程度簡潔にするために含まれていない)に置き換えることができる。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間に介在するあらゆる値と、その規定された範囲内の任意の他の規定されるか介在する値は、本発明内に含まれると理解される。
【0081】
また、記載された本発明の変形の任意の特徴は、独立して、または本明細書に記載された特徴のいずれか1以上と組み合わせて示され、クレームされ得ることが企図される。単一のアイテムへの言及には、同じアイテムが複数存在する場合が含まれる。より具体的には、本明細書および本明細書に関連する請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」、および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。言い換えれば、これらの用語の使用により、上記の説明および本発明に関連する請求項における主題の項目の「少なくとも1つ」が可能になる。さらに、請求項は、任意の要素を除外するように記載される場合があることに留意されたい。したがって、この記載は、クレーム要素の引用、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単に」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することを意図する。
【0082】
そのような排他的な用語を使用せずに、この開示に関連する請求項で「含む」という用語は、所定の数の要素がそのような請求項で列挙されているかどうかに関係なく、追加の要素を含めることを許容するか、または機能の追加により、そのような請求項に記載されている要素の性質を変換すると見なされる。本書で具体的に規定されている場合を除き、本書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、クレームの有効性を維持しながら、できるだけ広く一般に理解されている意味で与えられるべきである。
【0083】
本発明の範囲は、提供された実施例および/または明細書に限定されるべきではなく、むしろ本開示に添付された請求項の文言の範囲によってのみ限定されるべきである。