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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】非接触支持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240731BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240731BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20240731BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B25J15/06 Z
H01L21/68 C
B65G49/06 A
B65G49/07 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023213301
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323010881
【氏名又は名称】有限会社Link P&M Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鄭 仁奇
(72)【発明者】
【氏名】西松 誠
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 歩
(72)【発明者】
【氏名】久野 悠利
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-339234(JP,A)
【文献】特開2021-130162(JP,A)
【文献】特開2017-124467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0110422(US,A1)
【文献】国際公開第2016/140171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
H01L 21/677
B65G 49/06
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)に対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置(10)において、
中心軸線(K)が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディ(20,40)を備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部(21)が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部(22)が形成されており、
前記ボディのうち、前記軸線方向において前記内側凹部の底部(23)よりも前記第2端部側には、気体が供給される供給通路部(50)が形成されており、
前記ボディには、前記供給通路部と前記内側凹部の内周側とに連通され、前記内側凹部の内周側において旋回流を発生させるべく、前記軸線方向からみて前記径方向と交差する方向へ延びて前記内側凹部の内周面に対して鋭角となる方向へ気体を噴射する気体通路部(52)が形成されており、
前記気体通路部は、前記鋭角となる角度が小さくなる方向へ湾曲して延びており、
前記気体通路部において前記供給通路部側から途中部分までの通路面積は徐々に小さくなっており、前記気体通路部において前記途中部分から出口までの通路面積は徐々に大きくなっている、非接触支持装置。
【請求項2】
前記気体通路部において前記径方向の内側の壁面(51b)は、曲率半径(R)が徐々に大きくなるような滑らかな曲面である、請求項1に記載の非接触支持装置。
【請求項3】
前記気体通路部において前記径方向の外側の壁面(51c)は、前記供給通路部から前記内側凹部に向かって直線状に延びている、請求項1又は2に記載の非接触支持装置。
【請求項4】
ワーク(W)に対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置(10)において、
中心軸線(K)が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディ(20,40)を備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部(21)が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部(22)が形成されており、
前記ボディのうち、前記軸線方向において前記内側凹部の底部(23)よりも前記第2端部側には、気体が供給される供給通路部(50)が形成されており、
前記ボディには、前記供給通路部と前記内側凹部の内周側とに連通され、前記内側凹部の内周側において旋回流を発生させるべく、前記軸線方向からみて前記径方向と交差する方向へ延びて前記内側凹部の内周面に対して鋭角となる方向へ気体を噴射する気体通路部(52)が形成されており、
前記気体通路部は、前記鋭角となる角度が小さくなる方向へ湾曲して延びており、
前記ボディとして、メインボディ(20)及びサブボディ(40)が備えられ、
前記メインボディの前記軸線方向における前記第1端部には、円環状をなす前記ワーク支持部が形成されており、
前記メインボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記内側凹部が形成されており、
前記メインボディのうち前記径方向において前記内側凹部の内側に隣接する部分には、前記内側凹部に対して、前記軸線方向における前記第2端部側に円柱状に凹む柱状凹部(30)が形成されており、
前記サブボディは、
前記中心軸線を中心として前記径方向の外側に延びる円板状をなす円板部(41)と、
前記円板部の中央部から前記軸線方向に延びるとともに、前記径方向の寸法が前記円板部の前記径方向の寸法よりも小さい大径部(42)と、
前記大径部の中央部から前記軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなし、前記径方向の寸法が前記大径部の前記径方向の寸法よりも小さい小径円柱部(43)と、
を有し、
前記柱状凹部の底部(31)に前記小径円柱部の前記軸線方向の端部が当接するとともに、前記大径部の外周面が前記柱状凹部の内周面に当接し、
前記柱状凹部、前記小径円柱部及び前記大径部で囲まれた円環状の空間が、前記供給通路部とされており、
前記円板部には、前記供給通路部側から前記円板部の側周面(41a)まで延びる溝部(51)が形成されており、
前記溝部は、前記軸線方向からみて前記径方向と交差する方向へ延びており、
前記溝部において前記径方向の内側の壁面(51b)は、前記気体通路部の出口側にいくほど曲率半径(R)が徐々に大きくなるような滑らかな曲面であり、
前記溝部及び前記メインボディによって前記気体通路部が形成されており、
前記サブボディの前記径方向の中央部には、前記円板部、前記大径部及び前記小径円柱部を前記軸線方向に貫通するボルト挿通孔(60)が形成されており、
前記サブボディのうち、前記円板部側の前記ボルト挿通孔の周縁部には、ボルト(70)の頭部(71)が当接する座面(61)が形成されており、
前記メインボディのうち前記サブボディと前記軸線方向に対向する部分における前記径方向の中央部には、前記ボルトの軸部(72)の雄ねじがねじ込まれる雌ねじ孔(62)が形成されており、
前記ボルトの頭部が前記座面に当接した状態で、前記ボルトの軸部の雄ねじが前記雌ねじ孔にねじ込まれている、非接触支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、エアーの流れによって発生する負圧を利用してワークを非接触で支持するサイクロン型の非接触支持装置が知られている。詳しくは、非接触支持装置からワークに対してエアーを噴出させながら非接触支持装置をワークに近づけると、非接触支持装置とワークとの間に高速でエアーが流れる。これにより、非接触支持装置とワークとの間が負圧状態となり、ワークにリフト力が作用する。その結果、非接触支持装置に非接触の状態でワークが支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-87910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークのリフト力を増加させる技術については、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ワークのリフト力を増加させることができる非接触支持装置を提供することを主たる目的とする。
【0006】
本開示は、ワークに対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置において、
中心軸線が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディを備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部が形成されており、
前記ボディのうち、前記軸線方向において前記内側凹部の底部よりも前記第2端部側には、気体が供給される供給通路部が形成されており、
前記ボディには、前記供給通路部と前記内側凹部の内周側とに連通され、前記内側凹部の内周側において旋回流を発生させるべく、前記軸線方向からみて前記径方向と交差する方向へ延びて前記内側凹部の内周面に対して鋭角となる方向へ気体を噴射する気体通路部が形成されており、
前記気体通路部は、前記鋭角となる角度が小さくなる方向へ湾曲して延びている。
【0007】
本開示において、供給通路部に供給された気体は、ボディに形成された気体通路部を介して内側凹部に噴出する。気体を噴出させた状態でボディのワーク支持部をワークに近づけると、ワーク支持部とワークとの間に高速で気体が流れる。これにより、非接触支持装置とワークとの間が負圧状態となり、ワークにリフト力が作用する。リフト力を増加させるためには、内側凹部に噴出した気体の旋回流の速さを高めて内側凹部とワークとの間の圧力をより低くする必要がある。
【0008】
本開示において、気体通路部は、軸線方向からみて径方向と交差する方向へ延びて内側凹部の内周面に対して鋭角となる方向へ気体を噴射し、上記鋭角となる角度が小さくなる方向へ湾曲して延びている。これにより、気体通路部から内側凹部に噴出した気体を、内側凹部の内周面に沿わせるように流すことができ、内側凹部における気体の旋回流の速さを高めることができる。その結果、内側凹部とワークとの間の圧力をより低下させることができ、ワークのリフト力を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る非接触支持装置の底面図。
図2】非接触支持装置の平面図。
図3図1の3-3線断面図。
図4図1の4-4線断面図。
図5】サブボディの平面図。
図6】サブボディの斜視図。
図7図5の7-7線断面図。
図8】気体通路部から噴出するエアーの流通態様の計算結果を示す図。
図9】比較例に係るエアーの流通態様の計算結果を示す図。
図10】比較例に対する一実施形態のリフト力増加効果を示す計算結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る非接触支持装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の非接触支持装置10は、サイクロンタイプの非接触支持装置である。
【0011】
図1図4に示すように、非接触支持装置10は、メインボディ20と、サブボディ40とを備えている。以下、各ボディ20,40の中心軸線Kの延びる方向を軸線方向とし、中心軸線Kの中心から放射状に延びる方向であって軸線方向と直交する方向を径方向とし、中心軸線Kを中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0012】
メインボディ20及びサブボディ40が組み合わせられることにより、気体供給装置(例えばポンプ)から供給された気体(例えば圧縮気体)の流通経路が、メインボディ20及びサブボディ40に形成される構造になっている。本実施形態において、気体は空気(エアー)である。
【0013】
メインボディ20は、外形が扁平な円柱状をなしている。メインボディ20において、非接触支持装置10の軸線方向における第1端部(下端部)側の外周部には、ワーク支持部21が形成されている。ワーク支持部21は、平坦面21aを有しており、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。図3の2点鎖線は、ワーク支持部21に対向するワークWを示す。
【0014】
図3及び図4に示すように、メインボディ20のうちワーク支持部21よりも径方向における内側部分には、ワーク支持部21に対して、非接触支持装置10の軸線方向における第2端部(上端部)側に凹む内側凹部22が形成されている。内側凹部22は、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。メインボディ20のうち径方向において内側凹部22の内側に隣接する部分には、内側凹部22に対して、軸線方向における上端部側に円柱状に凹む柱状凹部30が形成されている。
【0015】
内側凹部22には、平面部23と、傾斜部24とが形成されている。平面部23は、径方向に延びる平坦面23aを有し、内側凹部22の底部となる。平面部23は、内側凹部22の平面部23と柱状凹部30との角部33から、径方向外側に延びるとともに、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。傾斜部24は、平面部23とワーク支持部21とを接続する部分である。傾斜部24は、軸線方向において非接触支持装置10の下端部側にいくほど径方向寸法が大きくなる傾斜面24aを有している。平面部23の平坦面23a、傾斜部24の傾斜面24a、及びワーク支持部21のワークWに対する対向面(平坦面21a)は滑らかに連続している。
【0016】
図1図6に示すように、サブボディ40は、円板部41、大径部42及び小径円柱部43を備えている。円板部41は、中心軸線Kを中心として径方向外側に延びる円板状をなしている。
【0017】
大径部42は、円板部41の中央部から軸線方向に延びている。大径部42の径方向寸法は、円板部41の径方向寸法よりも小さい。大径部42は、軸線方向において非接触支持装置10の下端部側にいくほど径方向寸法が徐々に大きくなっている。小径円柱部43は、大径部42の中央部から軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなしている。小径円柱部43の径方向寸法は、大径部42の径方向寸法よりも小さい。
【0018】
柱状凹部30は、内側凹部22に対して、軸線方向においてメインボディ20の上端部側に円柱状に凹む部分である。柱状凹部30は、平坦面31aを有する底部31と、中心軸線Kを中心として周方向に延びる内周面32とを備えている。
【0019】
柱状凹部30の底部31の平坦面31aに小径円柱部43の軸線方向端面が当接するとともに、大径部42の外周面42aが柱状凹部30の内周面32(具体的には例えば、柱状凹部30と平面部23との角部33)に周方向にわたって当接している。柱状凹部30の内周面32、小径円柱部43の外周面43a、及び大径部42で囲まれた空間が、中心軸線Kを中心として円環状をなす供給通路部50とされている。
【0020】
図2に示すように、メインボディ20の上端部には、軸線方向に延びて供給通路部50まで貫通する供給孔64が形成されている。供給孔64には、図示しない気体供給装置からエアーが供給される。なお、メインボディ20の上端部には、非接触支持装置10の取付対象部に非接触支持装置10を固定するための取付孔65が形成されている。取付孔65は、軸線方向に延びており、複数(図中、4つを例示)形成されている。取付対象部は、例えば、産業用ロボットのアームの先端部である。
【0021】
続いて、図1図6を用いて、サブボディ40をメインボディ20に固定するための構成について説明する。サブボディ40の径方向の中央部には、円板部41、大径部42及び小径円柱部43を軸線方向に貫通するボルト挿通孔60が形成されている。サブボディ40のうち、円板部41側のボルト挿通孔60の周縁部には、ボルト70の頭部71が当接する座面61が形成されている。
【0022】
メインボディ20の径方向の中央部には、ボルト70の軸部72の雄ねじがねじ込まれる雌ねじ孔62が形成されている。
【0023】
小径円柱部43の上端部側の端面には、円環状をなすシール溝部63が形成されている。シール溝部63は、端面においてボルト挿通孔60の周縁部全周にわたって形成されている。シール溝部63には、円環状のシール部材73が配置されている。シール部材73は、弾性材料(例えばゴム材料)により形成されており、例えばOリングである。柱状凹部30を構成する底部31の平坦面31aは、シール部材73が当接するシール面になっている。
【0024】
シール溝部63にシール部材73が配置された状態において、雌ねじ孔62にボルト70の軸部72の雄ねじがねじ込まれている。これにより、メインボディ20とサブボディ40の底部31との間をシールしつつ、メインボディ20とサブボディ40とが固定されている。シールにより、供給通路部50からボルト挿通孔60へとエアーが漏れる事態の発生を抑制できる。
【0025】
続いて、各ボディ20,40によって形成される気体の流路について説明する。
【0026】
メインボディ20において、円板部41及び大径部42には、供給通路部50と円板部41の側周面41aとに連通する溝部51が形成されている。溝部51の底部51aは、図7に示すように円弧状をなしている。溝部51は、周方向に等間隔に並んで複数(図中、4個を例示)形成されている。
【0027】
図5に示すように、各溝部51において供給通路部50側の端部53は、大径部42及び円板部41において、中心軸線Kを挟んで径方向に対向する位置に形成されている。各端部53は、中心軸線Kを中心とした同心円状となるように形成されている。
【0028】
溝部51は、軸線方向からみて径方向と交差する方向へ延び、円板部41の側周面41aに対する角度が鋭角となるように延びている。溝部51は、上記鋭角となる角度が小さくなるように、中心軸線Kを中心とした特定回転方向に沿って湾曲して延びている。メインボディ20と溝部51とによって気体通路部52が形成されている。
【0029】
気体供給装置から供給孔64に供給されたエアーは、供給通路部50に流れ込む。供給通路部50に流れ込んだエアーは、気体通路部52に流れ込む。気体通路部52に流れ込んだエアーは、内側凹部22の内周側(具体的には例えば、傾斜部24の傾斜面24a)に噴出する。これにより、内側凹部22においてエアーの旋回流が発生する。エアーを噴出させた状態でワーク支持部21をワークWに近づけると、ワーク支持部21とワークWとの間に高速でエアーが流れる。これにより、ワーク支持部21に非接触の状態でワークWが支持される。
【0030】
図8は、気体通路部52から内側凹部22に噴出するエアーの流れの計算結果を示す。図9は、比較例におけるエアーの流れの計算結果を示す。比較例は、気体通路部52の内側の壁面51bを直線状にした構成である。図10は、軸線方向におけるワーク支持部21及びワークWの距離と、ワークWに作用するリフト力との関係を示す計算結果を示す。
【0031】
図8に示すように、気体通路部52は、円板部41の側周面41aに対してなす鋭角が小さくなる方向へ湾曲して延びている。これにより、気体通路部52から内側凹部22に噴出した気体を、内側凹部22の内周面に沿わせるように流すことができ、内側凹部22における旋回流の速さを高めることができる。その結果、内側凹部22とワークWとの間の圧力をより低下させることができ、図10に示すように、ワークWのリフト力を増加させることができる。換言すれば、同一リフト力を生成するためのエアー流量を低減できる。
【0032】
これに対し、図9に示すように、比較例では、気体通路部52から噴出したエアーの流れが直線的である。その結果、旋回流の速さを十分に高めることができない。その結果、図10に示すように、比較例では、本実施形態よりもリフト力が低下してしまう。
【0033】
図5に示すように、溝部51において径方向の内側の壁面51bは、気体通路部52の出口側にいくほど曲率半径Rが徐々に大きくなるような滑らかな曲面である。これにより、内側の壁面51bと円板部41の側周面41aとが滑らかに連続している。このため、気体通路部52から内側凹部22に噴出したエアーを、円板部41の側周面41aに好適に沿わせるようにでき、旋回流の速さをより高めることができる。その結果、ワークWのリフト力をより増加させることができる。
【0034】
なお、図5において、Bは、サブボディ40を軸線方向から見た場合における内側の壁面51bと側周面41aとの交点である。一点鎖線で示すLCは、交点Bの接線(以下、基準接線)である。A1は、サブボディ40を軸線方向から見た場合における壁面51bの所定箇所を示す第1点を示し、A2は、壁面51bの所定箇所を示す点であって、第1点A1よりも出口側の第2点を示す。相対的に下流側の第2点A2の接線(図中、2点鎖線)と、基準接線LCとのなす角度θ2は、相対的に上流側の第1点A1の接線(図中、2点鎖線)と、基準接線LCとのなす角度θ1よりも小さい。つまり、サブボディ40を軸線方向から見た場合において、壁面51bの所定箇所を示す点の接線と、基準接線LCとのなす角度は、上記所定箇所を示す点が気体通路部52の出口側にいくほど小さくなっている。
【0035】
図5に示すように、溝部51において径方向の外側の壁面51cは、供給通路部50から内側凹部22に向かって直線状に延びている。これにより、気体通路部52において供給通路部50側から途中部分までの通路面積は徐々に小さくなり、気体通路部52において上記途中部分から出口までの通路面積が徐々に大きくなっている。その結果、気体通路部をラバールノズルとすることができ、エアーの流速を高めることができる。これにより、リフト力を増加できる。
【0036】
なお、図5において、DLは、外側の壁面51cから内側の壁面51bまでの距離である。距離DLは、外側の壁面51cに対して垂直な方向における各壁面51b,51c間の距離である。距離DLは、気体通路部52の供給通路部50側から途中部分までにおいて徐々に小さくなり、気体通路部52の上記途中部分から出口までにおいて徐々に大きくなっている。
【0037】
本実施形態とは異なり、気体通路部52の出口側の部分において径方向外側の壁面51cを側周面41aに沿わせてしまうと、円板部41のうち気体通路部52の出口側の部分において、径方向肉厚が小さくなる部分が長くなり、強度が低下し得る。これに対し、本実施形態では、気体通路部52において径方向の外側の壁面51cが直線状に延びている。これにより、気体通路部52をラバールノズルとしつつ、円板部41の強度を確保できる。
【0038】
柱状凹部30の底部31の平坦面31aに小径円柱部43の軸線方向端面が当接するとともに、大径部42の外周面42aが柱状凹部30の内周面に周方向にわたって当接している。また、円板部41の端面が平面部23の平坦面23aに周方向にわたって当接している。これにより、メインボディ20に対してサブボディ40を安定して支持できる。その結果、メインボディ20に対するサブボディ40のずれを抑制し、内部のエアー漏れ等の不具合の発生を抑制できる。これにより、気体通路部52が設計時に意図した通路として機能するようにできる。
【0039】
径方向寸法が相対的に大きい大径部42により、ボルト70をねじ込んだ場合における円板部41の反りを抑制できる。その結果、気体通路部52の出口端側の通路形状が、設計時に意図した形状から大きくずれる事態の発生を抑制できる。
【0040】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0041】
・溝部51の底部は、円弧状をなすものに限らず、例えば、矩形状又はV字状をなすものであってもよい。
【0042】
・気体通路部52の出口側の部分において、径方向外側の壁面51cを円板部41の側周面41aに沿わせてもよい。
【0043】
・非接触支持装置を3Dプリンタで製造する場合、メインボディ及びサブボディといった2つのボディ部材で非接触支持装置が構成されることに限らず、1つのボディ部材で非接触支持装置が構成されていてもよい。
【0044】
・非接触支持装置に供給される気体は、エアーに限らず、例えば窒素であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…非接触支持装置、20…メインボディ、21…ワーク支持部、22…内側凹部、40…サブボディ、50…供給通路部。
【要約】
【課題】ワークのリフト力を増加させることができる非接触支持装置を提供する。
【解決手段】非接触支持装置は、メインボディ及びサブボディ40を備えている。各ボディ40には、気体が供給される供給通路部が形成されている。また、各ボディ40には、供給通路部と内側凹部の内周側とに連通され、内側凹部の内周側において旋回流を発生させるべく、軸線方向からみて径方向と交差する方向へ延びて内側凹部の内周面に対して鋭角となる方向へ気体を噴射する気体通路部が形成されている。気体通路部は、上記鋭角となる角度が小さくなる方向へ湾曲して延びている。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10