(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】量子計算制御装置、量子コンピュータ及び量子計算制御方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20240731BHJP
G06N 10/70 20220101ALI20240731BHJP
【FI】
G06N10/40
G06N10/70
(21)【出願番号】P 2023517082
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006684
(87)【国際公開番号】W WO2022230318
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-08-04
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2021091832
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰信
(72)【発明者】
【氏名】田渕 豊
(72)【発明者】
【氏名】玉手 修平
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3300004(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第111967603(CN,A)
【文献】GAMBETTA, J. M., et al.,Building logical qubits in a superconducting quantum computing system,npj Quantum Information,2017年01月13日,Vol. 3, Article 2,[retrieved on 2022-04-26], Retrieved from the Internet: <URL: https://www.nature.com/articles/s41534-016-0004-0>,<DOI: 10.1038/s41534-016-0004-0>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/40
G06N 10/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号生成部と、
各量子ビットの状態を示す観測信号を受信する観測部と、
複数の量子ビットを搭載する量子ビット基板部と、制御回路部と、観測回路部と、信号処理回路部と、を備えた量子ビットモジュールと、を備え、
前記複数の量子ビットは、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して前記量子ビット基板部上に配置され、
前記制御信号生成部は、前記量子ビット基板部上の量子ビットに対する操作であって1つ以上の種類の空間的に一様な第1の操作及び1つ以上の種類の前記第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を実行するための制御信号と、前記第1の操作及び前記第2の操作の制御を前記制御回路部に実行させるための命令信号と、を生成し、
前記制御回路部は、前記制御信号を前記グループに分岐し、前記命令信号に応じて前記量子ビット基板部上の各量子ビットへの前記制御信号の送出を制御し、
前記観測回路部は、前記第1の操作又は前記第2の操作を受けた前記各量子ビットの状態を観測し、
前記信号処理回路部は、前記各量子ビットの観測信号を前記観測部に送信することを特徴とする量子計算制御装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記命令信号に基づいて、
前記第1の操作においては、前記量子ビット基板部上のすべての量子ビットに前記制御信号を送出し、
前記第2の操作においては、前記量子ビット基板部上の特定の制御対象の量子ビットにのみ前記制御信号を送出するように、前記制御信号の送出を制御することを特徴とする請求項1に記載の量子計算制御装置。
【請求項3】
前記第1の操作はシンドローム抽出操作であり、前記第2の操作は論理量子ゲート操作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の量子計算制御装置。
【請求項4】
前記信号処理回路部は、量子誤り訂正復号処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の量子計算制御装置。
【請求項5】
前記制御回路部は、前記命令信号に基づいて、
前記第1の操作においては、前記量子ビット基板部の各グループに共通の制御信号を送信し、
前記第2の操作においては、前記量子ビット基板部上の各量子ビットに個別に制御信号を送信することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項6】
前記制御信号を伝達する信号線の数をk’、前記命令信号を伝達する信号線の数をsとしたとき、前記制御信号生成部と前記量子ビットモジュールとを結ぶ配線の数はk’+s以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項7】
前記信号処理回路部は、誤り訂正処理を適用した論理量子ビットの量子状態のみを前記観測部に送信することで、前記観測部と前記量子ビットモジュールとを結ぶ配線の数を削減することを特徴とする請求項6に記載の量子計算制御装置。
【請求項8】
前記量子ビットが形成する論理量子ビットの符号長をdとしたとき、前記第1の操作の頻度と前記第2の操作の頻度との比はd以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項9】
前記量子ビットは、固体量子ビットであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項10】
少なくとも前記量子ビットモジュールは、冷凍機内に置かれることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項11】
前記量子ビットは、超伝導量子ビットを含む極低温下で動作する量子ビットであることを特徴とする請求項10に記載の量子計算制御装置。
【請求項12】
前記制御回路部は、前記制御信号の波形を記憶するメモリを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の量子計算制御装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の量子計算制御装置を備えることを特徴とする量子コンピュータ。
【請求項14】
量子ビット基板部と、制御回路部と、観測回路部と、信号処理回路部と、を用いた量子計算制御方法であって、
各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して前記量子ビット基板部上に配置された複数の量子ビットに対する操作であって1つ以上の種類の空間的に一様な第1の操作及び1つ以上の種類の前記第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を実行するための制御信号と、前記第1の操作及び前記第2の操作の制御を前記制御回路部に実行させるための命令信号と、を生成するステップと、
前記制御回路部を用いて、前記制御信号を前記グループに分岐し、前記命令信号に応じて前記量子ビット基板部上の各量子ビットへの前記制御信号の送出を制御するステップと、
前記観測回路部を用いて、前記量子ビット基板部上の量子ビットを観測するステップと、
前記信号処理回路部を用いて、量子誤り訂正復号処理を実行するステップと、
前記量子ビットを用いた計算が終了したかを判断するステップと、を備えることを特徴とする量子計算制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子計算制御装置、量子コンピュータ及び量子計算制御方法に関する。
【0002】
本出願は、米国仮特許出願第63180500号及び特願2021-091832号を基礎とする優先権を主張する。当該仮出願の明細書は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
量子ビットに対して基板下面又は上面から信号線が出入りする三次元構造の超伝導復号量子計算回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超伝導量子ビットを用いた量子コンピュータでは、希釈冷凍機(クライオスタット)などの冷凍機内に置かれた量子ビット基板と、常温環境下に置かれた制御装置・観測装置とをケーブルで接続する必要がある。すべての量子ビットを独立に制御することが望ましいことから、従来、1量子ビットあたり1本以上の配線を必要としていた。こうした配線に使われるケーブルはラジオ波同軸線又はマイクロ波同軸線であり、ミリメートルオーダの寸法を有している。これは現在の集積回路で使われる配線より大きいため、集積化上の課題となっている。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、量子ビットを用いた装置における配線数を削減することにある。また、配線数を削減しても、回路パラメータのばらつきに対してロバストな制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の量子計算制御装置は、制御信号生成部と、各量子ビットの状態を示す観測信号を受信する観測部と、量子ビットモジュールと、を備える。量子ビットモジュールは、複数の量子ビットを搭載する量子ビット基板部と、制御回路部と、観測回路部と、信号処理回路部と、を備える。複数の量子ビットは、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して量子ビット基板部上に配置される。制御信号生成部は、量子ビット基板部上の量子ビットに対する操作であって1つ以上の種類の空間的に一様な第1の操作及び1つ以上の種類の第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を実行するための制御信号と、第1の操作及び第2の操作の制御を制御回路部に実行させるための命令信号と、を生成する。制御回路部は、制御信号をグループに分岐し、命令信号に応じて量子ビット基板部上の各量子ビットへの制御信号の送出を制御する。観測回路部は、第1の操作又は第2の操作を受けた各量子ビットの状態を観測する。信号処理回路部は、各量子ビットの観測信号を観測部に送信する。
【0008】
この態様によると、量子ビットを用いた装置における配線数を削減することができる。
【0009】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、制御回路部は、命令信号に基づいて、第1の操作においては、量子ビット基板部上のすべての量子ビットに制御信号を送出し、第2の操作においては、量子ビット基板部上の特定の制御対象の量子ビットにのみ制御信号を送出するように、制御信号の送出を制御してもよい。
【0010】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、第1の操作はシンドローム抽出操作であり、第2の操作は論理量子ゲート操作であってもよい。
【0011】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、信号処理回路部は、量子誤り訂正復号処理を行ってもよい。
【0012】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、制御回路部は、命令信号に基づいて、第1の操作においては、量子ビット基板部の各グループに共通の制御信号を送信し、第2の操作においては、量子ビット基板部上の各量子ビットに個別に制御信号を送信してもよい。
【0013】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、制御信号を伝達する信号線の数をk’、命令信号を伝達する信号線の数をsとしたとき、制御信号生成部と量子ビットモジュールとを結ぶ配線の数はk’+s以下であってもよい。
【0014】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、信号処理回路部は、誤り訂正処理を適用した論理量子ビットの量子状態のみを観測部に送信することで、観測部と量子ビットモジュールとを結ぶ配線の数を削減してもよい。
【0015】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、量子ビットが形成する論理量子ビットの符号長をdとしたとき、第1の操作の頻度と第2の操作の頻度との比はd以上であってもよい。
【0016】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、量子ビットは、固体量子ビットであってもよい。
【0017】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、少なくとも量子ビットモジュールは、冷凍機内に置かれてもよい。
【0018】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、量子ビットは、超伝導量子ビットを含む極低温下で動作する量子ビットであってもよい。
【0019】
ある実施の形態の量子計算制御装置では、制御回路部は、制御信号の波形を記憶するメモリを備えてもよい。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、量子コンピュータである。この量子コンピュータは、前述のいずれかの実施の形態の量子計算制御装置を備える。
【0021】
この態様によると、配線数が削減された量子コンピュータを実現することができる。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、量子ビット基板部と、制御回路部と、観測回路部と、信号処理回路部と、を用いた量子計算制御方法である。この方法は、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して前記量子ビット基板部上に配置された複数の量子ビットに対する操作であって1つ以上の種類の空間的に一様な第1の操作及び1つ以上の種類の第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を実行するための制御信号と、第1の操作及び第2の操作の制御を制御回路部に実行させるための命令信号と、を生成するステップと、制御回路部を用いて、制御信号をグループに分岐し、命令信号に応じて量子ビット基板部上の各量子ビットへの制御信号の送出を制御するステップと、観測回路部を用いて、第1の操作又は第2の操作を受けた各量子ビットの状態を観測するステップと、信号処理回路部を用いて、量子誤り訂正復号処理を実行するステップと、量子ビットを用いた計算が終了したかを判断するステップと、を備える。
【0023】
この態様によると、量子ビットを用いた装置における配線数を削減することができる。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、量子ビットを用いた装置における配線数を削減することができる。また、配線数を削減しても、回路パラメータのばらつきに対してロバストな制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来の量子コンピュータの構成を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る量子計算制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】量子ビット基板部上に配置された量子ビットの単位胞を示す模式図である。
【
図4】量子ビット基板部上にグループ化されて配置された量子ビットを示す模式図である。
【
図5】シンドローム抽出操作と論理量子ゲート操作とが実行される様子を示す模式図である。
【
図6】
図2の量子計算制御装置の制御信号生成部、量子ビット基板部、制御回路部の詳細図である。
【
図7】
図2の量子計算制御装置の制御スイッチの詳細図である。
【
図8】シンドローム抽出操作に関係する制御スイッチを示す図である。
【
図9】シンドローム抽出操作及びその後の論理量子ゲート操作に関係する制御スイッチを示す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る量子計算制御装置の量子ビット基板部、制御回路部の詳細図である。
【
図11】第4の実施の形態に係る量子計算制御方法のフローチャートである。
【
図12】変形例に係る量子計算制御装置の機能ブロック図である。
【
図13】正方格子に配置した量子ビットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書又は請求項の中で「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するだけのためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0028】
具体的な実施の形態を説明する前に、先ず基本となる知見を説明する。超伝導量子ビットを用いた量子コンピュータ(以下、「超伝導量子コンピュータ」という)では、量子ビット及びこれに関連する電子回路が、冷凍機の内部に置かれる。冷凍機内は、数K(ケルビン)~数10mK(ミリケルビン)の低温に保たれる。特に超伝導量子ビットは10mK程度の極低温下に置かれる。超伝導量子コンピュータを用いて計算を実行するためには、量子ビットに対して、量子誤り訂正処理のためのシンドローム抽出操作や論理量子ゲート操作を行う必要がある。これらの操作は、冷凍機の外部に置かれた制御装置やPCから行われる。このような冷凍機の外部は、通常は常温環境にある。また量子ビットから出力される観測信号は、やはり冷凍機外部の常温環境下に置かれた測定装置によって観測される。従来、こうした操作や観測は、主にソフトウェアを用いて実行されてきた。このため、冷凍機内の電子回路と常温環境下にある装置とを多数のケーブルで接続する必要がある。例えば量子ビットの総数をNとすると、各量子ビットを個別に制御及び観測するためには、典型的には2×N本のケーブルが必要となる。こうした配線に使われるケーブルはラジオ波同軸線又はマイクロ波同軸線であり、数ミリメートルの寸法を有している。これは現在の集積回路で使われる配線より大きいため、集積化上の大きな課題となっている。従って、超伝導量子コンピュータの集積化のためには、冷凍機と常温環境とを接続する配線数をいかにして削減するかが重要となる。
【0029】
図1に、従来の量子コンピュータ100の構成を模式的に示す。量子コンピュータ100は、制御装置101と、観測装置102と、量子ビットが搭載された量子ビット基板103と、第1電子回路104と、第2電子回路105と、を備える。制御装置101及び観測装置102は、常温環境下に置かれる。量子ビット基板103及び第1電子回路104は、冷凍機106内の0.01K程度の極低温環境に置かれる。第2電子回路105は、冷凍機106内の4K程度の低温環境下に置かれる。制御装置101と冷凍機106とは、制御線107で接続される。観測装置102と冷凍機106とは、観測線108で接続される。量子ビット基板103に搭載される量子ビットの数をNとする。Nは実用的には10
8程度必要であると言われている。従って量子ビット基板103上の量子ビットをすべて独立に制御及び観測するためにそれぞれN本の制御線107及び観測線108が必要となり、これらの総数は2×10
8本にも及ぶ。前述のように、こうした多数の配線が必要となる現行方式では、冷凍機内部のスペースや冷却能力の制限により、装置の集積化が困難となる。
【0030】
一般に多くの量子コンピュータでは、情報をノイズから保護するための手法として、表面符号(以下、単に「符号」とも呼ぶ)を用いた量子誤り訂正が使われる。この手法では、論理的な1量子ビットが、複数の物理的な量子ビット(以下、「物理的な量子ビット」のことを単に「量子ビット」と略称する)を用いて冗長に符号化される。これらの物理的な量子ビットは、2次元平面上で格子状に配置される。格子のサイズを大きくする(すなわち物理的な量子ビットの数を増やす)ことにより、符号の冗長性を増し、誤り耐性を大きくすることができる。
【0031】
本明細書で取り扱う量子コンピュータにおける量子ビットの操作は、「シンドローム抽出操作」と「論理量子ゲート操作」とに大別される。
【0032】
後述するように、シンドローム抽出操作(量子誤り訂正のために、シンドロームビットを高速に読み出す操作)は、2次元空間上で並進対称性を持つ操作(すなわち、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループに同じ制御操作を行うこと)である。この性質を利用すると、シンドローム抽出操作のための制御信号は、制御信号生成部が生成したものを制御回路部で分岐し各量子ビットグループに送信することができる。言い換えれば、シンドローム抽出操作は、空間的に一様な操作である。さらにシンドローム抽出操作は、時間的に周期的に実行される。
【0033】
これに対し量子ビットへの論理量子ゲート操作は、空間的な並進対称性を持たない。すなわち、論理量子ゲート操作のための制御信号は、特定の制御対象の量子ビットに対してのみ送信される。言い換えれば、論理量子ゲート操作は、空間的に非一様な操作である。論理量子ゲート操作は、周期的に繰り返して実行されるシンドローム抽出操作の間に実行される。
【0034】
量子コンピュータの動作中、論理量子ゲート操作が行われる頻度は、シンドローム抽出操作が行われる頻度に比べて低い。典型的には、物理量子ビットが形成する論理量子ビットの符号長をdとしたとき、シンドローム抽出操作の頻度と論理量子ゲート操作の頻度との比をd以上とすれば誤り訂正後の論理量子ビットで論理量子ゲート操作が可能となる。
【0035】
[第1の実施の形態]
図2に、第1の実施の形態に係る量子計算制御装置1の機能ブロック図を示す。量子計算制御装置1は、制御信号生成部11と、観測部12と、量子ビットモジュール13と、を備える。量子ビットモジュール13は、複数の量子ビットを搭載する量子ビット基板部14と、制御回路部15と、観測回路部16と、信号処理回路部17と、を備える。制御信号生成部11と制御回路部15とは、制御線20で接続される。観測部12と信号処理回路部17とは、観測線21で接続される。量子ビット基板部14と制御回路部15とは、第1の内部配線22で接続される。量子ビット基板部14と観測回路部16とは、第2の内部配線23で接続される。観測回路部16と信号処理回路部17とは、第3の観測線24で接続される。
【0036】
制御信号生成部11は、量子ビット基板部14上の量子ビットに対する操作を実行するための制御信号と、こうした操作の制御を制御回路部15に実行させるための命令信号と、を生成する。これらの制御信号と命令信号については、後で詳しく述べる。
【0037】
観測部12は、各量子ビットの状態を示す観測信号を受信する。
【0038】
量子ビット基板部14には、複数の量子ビットが搭載される。これらの量子ビットは、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して量子ビット基板部14上に配置される。このグループ化については、後で詳しく述べる。
【0039】
制御回路部15は、制御信号を上記のグループに分岐し、制御信号生成部11が生成した命令信号に応じて、量子ビット基板部14上の各量子ビットへの制御信号の送出を制御する。
【0040】
観測回路部16は、前述の操作を受けた各量子ビットの状態を観測する。
【0041】
信号処理回路部17は、各量子ビットの観測信号を観測部12に送信する。
【0042】
図3に、本実施の形態において、量子ビット基板部14上に配置された量子ビットを模式的に示す。各量子ビットは、2次元空間上で規則的に配置されている。具体的には、この配置は、各頂点と辺及び内部に1個ずつ(頂点の量子ビットを1/4個、辺上の量子ビットを1/2個とすると合計4個の)量子ビットを備えた矩形の構成(以下、「単位胞」という)が2次元方向に繰り返される構造を持つ。すなわち量子ビットは、量子ビット基板部14上で並進対称性を持つように配置されている。量子ビット基板部14上に配置された量子ビットのうち、単位胞の辺上に位置する量子ビットは、符号を構成するために使われ、データ量子ビットと呼ばれる。一方、頂点及び単位胞内に位置する量子ビットは、交差共鳴ゲート操作によってデータ量子ビットの量子状態を観測するための補助的な量子ビットとして使われ、シンドローム量子ビットと呼ばれる。これらの量子ビットは固定周波数トランズモン型量子ビットでもよく、それぞれ固有の共鳴周波数を有してもよい。
【0043】
ここで量子ビットがトランズモン型量子ビットであり、交差共鳴ゲートを2量子ビットゲートとして採用する場合を考える。また、量子ビットの周波数関係を、
図4のA-Eのシンドローム量子ビット及びa-eのデータ量子ビットのように10種類割り当てた場合を考える。このとき、
図9に示されるような正方形の格子G1を定義する。格子G1は複数の単位胞にまたがるが、符号によって決まる役割りと、抽出操作における操作の方法とにより、20量子ビットを単位とする並進対称性を持つ。
【0044】
図4の並進対称性を持つ格子G1を用いて、量子ビット基板部14上に配置された量子ビットでグループ化する。
図4では、こうした格子の代表として、格子G1、G2、G3及びG4を明示している。格子G1、G2、G3及びG4は、言うまでもなく、同一の量子ビット配置を持つ。以下、量子ビット基板部14上の量子ビット全体が、G1、G2、G3、G4、…、GPの全部でP個の格子でグループ化されているものとする。さらに、以下、各格子に含まれる量子ビットの数をkで表す。格子G1に示されるように、この例ではk=20である。いうまでもなく、格子G1、G2、G3、G4、…、GPは、すべて幾何学的に同じ量子ビット配置を持つ。すなわち、量子ビット基板部14上の量子ビットは、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成されるグループにグループ化して配置されている。言い換えれば、これらの量子ビットは、量子ビット基板部14上で2次元空間方向にタイル状(この例では、格子G1、G2、G3、G4、…)に繰り返して配置される。以下、上記の格子のことを「グループ」ということもある。
【0045】
表面符号を用いた量子誤り訂正では、符号は並進対称性を持つ。従って、量子誤り訂正のためのシンドローム抽出操作は、すべての格子で共通に実行することができる。例えば格子G1内の量子ビットを独立にシンドローム抽出操作するためには、格子G1を構成するk個(本例では20個)の量子ビットのそれぞれに制御線をつなぎ、シンドローム抽出操作のための制御信号を送信する。このとき、格子G2、G3、G4、…、GPに対しても、格子G1のものと同じ制御信号を用いて、シンドローム抽出操作を実行することができる。なお、制御回路部15から量子ビット基板部14へ送信される制御信号は、制御対象の格子(グループ)を単位として周期的に繰り返して送出される。すなわち、シンドローム抽出操作は、時間的にも周期的に実行される。
【0046】
量子ビットを構成する回路が十分均一で、制御波形のロバスト性によりその回路パラメータのばらつきが吸収されている限り、シンドローム抽出操作はすべての格子で共通に実行することができる。
【0047】
この場合、制御信号生成部11と制御回路部15とを接続する制御線20を各格子(グループ)間で共通化した後、これを制御回路部15で各格子(グループ)に分岐することにより、配線数を削減することができる。例えば量子ビット基板部14上の量子ビットの総数をNとすると、格子(グループ)の数はN/kである。上で説明したように、シンドローム抽出操作はすべての格子で共通に実行することができるので、制御線20は格子(グループ)内の量子ビットの数だけあればよい。従って、従来量子ビットの総数Nのオーダを必要としていた制御線の数は、k/N(倍)の本数に削減することができる。例えば本例の場合、k=20であるので、制御線20の数は20/N(倍)の本数にまで削減される。このようにシンドローム抽出操作に関しては、符号の対称性と量子ビットのグループ化を利用することにより、シンドローム抽出操作のための制御線を共通化することができる。以下、シンドローム抽出操作のような空間的な並進対称性を持つ操作(より一般的には、空間的に一様な操作)のことを「第1の操作」という。
【0048】
一方、論理量子ゲート操作は、周期的に繰り返して実行されるシンドローム抽出操作の間に、特定の操作対象の量子ビットを操作することにより実行される。すなわち、論理量子ゲート操作は、空間的な並進対称性と時間的な周期性を持たない。従って論理量子ゲート操作は、シンドローム抽出操作と異なり、前述の格子(グループ)に共通して実行することができない。すなわち論理量子ゲート操作のための制御信号は、特定の制御対象の量子ビットに対してのみ送信する必要がある。このため、制御線20を共通化して、これを各格子(グループ)に分岐しただけでは、論理量子ゲート操作を実行することはできない。以下、論理量子ゲート操作のような並進対称性を持たない操作(より一般的には、空間的に非一様な操作)のことを「第2の操作」という。
【0049】
1回の論理量子ゲート操作に必要なシンドローム抽出操作(量子誤り訂正)の回数は、量子ビットの符号長d(d>1)で決まる。典型的には、必要なシンドローム抽出操作回数はd以上である。従ってこの場合、シンドローム抽出操作の頻度と論理量子ゲート操作の頻度との比(従って、シンドローム抽出操作の実行時間と論理量子ゲート操作の実行時間との比)はd以上である。
図5に、シンドローム抽出操作と論理量子ゲート操作とが実行される様子を模式的に示す。ここでは格子G1、G2、G3を代表的に示し、各格子は6個の量子ビットを含むものとする。なお、
図5のシンドローム抽出操作と書かれたボックスは同じ処理を意味しており、
図5はこれが時間的に周期的に行われることを示している。
【0050】
上で説明した格子への量子ビットの配置は例示であり、これに限られない。
【0051】
図13に、
図4とは別の格子GI、GII、GIII、GIVに配置した量子ビットを模式的に示す。ここでは、A-Dの4種類のシンドローム量子ビット及びx-wの4種類のデータ量子ビット、すなわち全部で8種類の量子ビットが割り当てられている。格子GIに示されるように、この例ではk=8である。前述のように、従来量子ビットの総数Nのオーダを必要としていた制御線の数は、k/N(倍)の本数に削減することができる。従って本例(k=8)の場合、制御線の数は8/N(倍)の本数にまで削減される。なおk=8の場合も、前述の第2の操作が同様に実行可能であることはいうまでもない。
【0052】
並進対称性を有する誤り訂正符号の1つである表面符号は、近接相互作用のみを要求する。すなわち、遠隔の量子ビット間の相互作用は不要である。例えば、2次元格子にぎっしりと並ぶ量子ビットにおいて、隣接する量子ビットの隣同士でだけ2量子ビットゲートが実行できれば十分である。
【0053】
上で説明したように、量子誤り訂正符号では、量子ビットは、それぞれ役割りの異なる2種類の量子ビットに分類される。1つはデータ量子ビットと呼ばれる、量子状態を保持するための量子ビットである。もう1つはシンドローム量子ビットと呼ばれる、データ量子ビットのパリティ値を検出するための量子ビットである。データ量子ビット及びシンドローム量子ビットは、正方格子上に互い違いに配置される。つまりデータ量子ビットから見て上下左右の隣接量子ビットはシンドローム量子ビットであり、逆も然りである。
【0054】
量子誤り訂正符号は、古典的な誤り訂正符号と異なり、データ量子ビットの値を直接観測することは許されないが、パリティ値を得ることは許される。データ量子ビットの状態を観測して、その状態を壊すことなくパリティの値を得るためには、データ量子ビットとシンドローム量子ビットとの間の2量子ビットゲートを実行する必要がある。正方格子の場合、一つのデータ量子ビットに対して4回の2量子ビットゲートを実行することで、パリティ値がシンドローム量子ビットに集約される。この過程で量子もつれが用いられる。シンドローム量子ビットのみを測定することにより、データ量子ビットのパリティ値を得ることができる。
【0055】
図13に示される配置例では、A、B、C、Dの4種類のシンドローム量子ビット及びw、x、y、zの4種類のデータ量子ビット、すなわち全部で8種類の周波数の量子ビットが割り当てられている。
図13に示されるように、2次元平面は、1つのデータ量子ビットを頂点として、2種類の濃淡のグレーでハッチングされた正方形で埋め尽くされている。正方形の中心にはシンドローム量子ビットが配置されている。この正方形はシンドローム量子ビットが得るパリティ値の担当領域を示している。これは、A-Dのシンドローム量子ビットが、w-zのデータ量子ビットのパリティ値を得ることを意味する。この場合のパリティは、w-zのデータ量子ビットで、同じビット値(0または1)が偶数個(wxyz=0000,0011,0101,0110,1001,…)あるか、奇数個あるか(wxyz=0001,0010,0100,0111,…)に関するものである。このパリティ値は、ビット値の和(偶数の場合にはmod 2で0、奇数の場合にはmod 2で1)を2量子ビットゲートを用いて計算し、シンドローム量子ビットを観測することで得られる。
【0056】
ここで
図13の正方形は、2種類の濃淡のグレーで色分けされている点に注意する。量子力学的な状態を維持するには、ビット反転の他、位相反転に関するパリティ値を取得する必要がある。位相反転に関するパリティ値とは、量子ビット値をブロッホ球のX軸に射影したとき、同じ値が偶数個(wxyz=++++,++--,+-+-,…)あるか、奇数個あるかについてのパリティ値のことをいう。量子誤り訂正は、ビット反転用のシンドローム量子ビットによって得られるパリティから、パリティ検査行列を構成し、復号処理を通じてビット反転エラーを修正する。量子誤り訂正はまた、位相反転用のシンドローム量子ビットによって得られるパリティ値から、パリティ検査行列を構成し、復号処理を通じて位相反転エラーを修正する。この2つの役割の異なるパリティ値を得るために、正方格子は、2種類の濃淡のグレーの正方形(シンドローム抽出に関する担当領域)で埋め尽くされている。
【0057】
以上説明したように、量子ビットは、
(1)データ量子ビット
(2)シンドローム量子ビット
に分類されており、正方格子に互い違いに配置されている。このうちシンドローム量子ビットは、
(2-A)ビット反転に関するパリティ値を取得するもの
(2-B)位相反転に関するパリティを取得するもの
に分類される。
【0058】
本発明者らは、量子ビット基板部14上の量子ビットに対する制御信号の送出を制御することにより、前述の制御線20を共通化した構成を用いて、第1の操作と第2の操作の両方を実行することができることを見出した。例えば、第1の操作においては、量子ビット基板部14上のすべての量子ビットに制御信号を送出し、第2の操作においては、量子ビット基板部14上の特定の制御対象の量子ビットにのみ制御信号を送出するように、制御信号の送出を制御することにより、第1の操作と第2の操作の両方を実行することができる。
【0059】
図6に、量子計算制御装置1の制御信号生成部11、量子ビット基板部14、制御回路部15の詳細を示す。制御回路部15は、命令デコーダ151と、最大N×k’個(Nは、量子ビット基板部14上の量子ビットの総数、k’は下記の制御信号線の数)の制御スイッチ152と、を備える。制御信号生成部11と制御回路部15とを接続する制御線20は、k’(k<k’<<N)本の制御信号線201と、s本の命令信号線202と、を備える。制御回路部15と、格子G1、G2、G3、G4、…、GPとは、それぞれk本の量子ビット制御線221、222、223で接続される。
【0060】
図7に、量子計算制御装置1の制御回路部15の制御スイッチ152の詳細を示す。ここでは、格子の数を3(格子をG1、G2、G3で表す)、各格子に含まれる量子ビットの数k=6、各量子ビット制御線221、222、223の数を6(すなわちkに等しい)、量子ビット基板部14上の量子ビットの総数N=18(=k×格子の数)、制御信号線の数k’=10、制御スイッチ152の数を180(=N×k’)とする。制御スイッチ152はマトリックス状に配置される。このマトリックスの各行(横方向の並び)は量子ビット制御線221、222、223に対応し、各列(縦方向の並び)は制御信号線201に対応する。ここではこのマトリックスの行を、下から順に、第1行、第2行、…、第18行とする。またこのマトリックスの列を、左から順に、第1列、第2列、…、第10列とする。各制御スイッチ152を、このマトリックスの成分を用いてSW(1、1)、SW(1、2)、…、SW(1、10)、SW(2、1)、…、SW(18、1)、…、SW(18、10)と表す。
図6では制御信号線201が横方向に描かれているが、
図7では縦方向に描かれている点に注意する。横一列で示される同一量子ビットにつながる制御スイッチの出力は合波器などによって1本に共通化されて量子ビットに接続される。なお煩雑を防ぐため、命令信号線202及び命令デコーダ151は図示を省略する。
【0061】
各制御スイッチ152は、入力1本、出力1本、スイッチ制御線(図示を省略)1本により構成される。制御スイッチ152は、スイッチ制御線に入力されるイネーブル信号に応じて、入力線に入力した制御信号を出力線に出力する又は出力しないような動作をする(すなわち、オン/オフ動作する)。
【0062】
制御信号生成部11が生成した制御信号は、k’本の制御信号線201を通って、制御回路部15に入力する。制御回路部15に入力した各制御信号は、格子G1、G2、G3、・・・、GP用にP分岐されて、それぞれ制御スイッチ152に入力する。
【0063】
一方、制御信号生成部11が生成した命令信号は、命令信号線202を通って、命令デコーダ151に入力する。命令デコーダ151は入力された命令信号をデコードし、各制御スイッチ152にスイッチ制御線を介して制御スイッチの出力のオン、オフタイミングを順次指示する。なお、スイッチ制御線の総数はN×k’となる。また、信号線の数がs本であるので、デコードにより最大2s種類の命令を設けることができる。
【0064】
第1の操作(すなわち、シンドローム抽出操作)においては、制御信号生成部11が作成した第1の操作を実行するための制御信号が、量子ビット基板部14上のすべての格子(G1、G2、G3、・・・、GP)間で対応する各量子ビットに同じタイミングで送出されるよう制御スイッチ152が制御される。
【0065】
図8に、シンドローム抽出操作に関係する制御スイッチを示す。図示される通り、シンドローム抽出操作に使われる制御スイッチは、SW(1、6)、SW(2、5)、SW(3、4)、SW(4、3)、SW(5、2)、SW(6、1)、SW(7、6)、SW(8、5)、SW(9、4)、SW(10、3)、SW(11、2)、SW(12、1)、SW(13、6)、SW(14、5)、SW(15、4)、SW(16、3)、SW(17、2)、SW(18、1)の合計18個である。これは、各格子に対応するサブマトリックスの対角成分に相当する。シンドローム抽出操作では、これら18個の制御スイッチのオン、オフが周期的に行われる。なおこの場合、k’(=10)本ある制御信号線201のうち、6本だけが使われる。
【0066】
一方、第2の操作(すなわち、論理量子ゲート操作)においては、命令信号は、N×k’個の制御スイッチ152のうち、特定の制御対象の量子ビットに関するスイッチのみをオンにする。これにより、制御信号生成部11が作成した第2の操作を実行するための制御信号が、量子ビット基板部14上の特定の制御対象の量子ビットのみに送出される。
【0067】
図9に、第1の操作及びその後の第2の操作に関係する必要な制御スイッチのみを抽出して示す。各格子G1、G2、G3に含まれる量子ビットを上から順にQ1、Q2、…、Q6で示す。以下、量子ビット基板部14上の各量子ビットを、格子の番号G1、G2、G3と、各格子内の量子ビットの番号Q1、Q2、…、Q6とを用いて、Q(G1、Q1)、Q(G1、Q2)、…、Q(G1、Q6)、Q(G2、Q1)、…、Q(G2、Q6)、Q(G3、Q1)、…、Q(G3、Q6)と表す。制御信号線201は、10本の制御信号線2011、2012、2013、2014、2015、2016、2017、2018、2019、20110を含む。ここでは論理量子ゲート操作に関する命令として、2種類の命令A及び命令Bがあるものとする。命令A及び命令Bをそれぞれ上向き及び下向きの三角形で示す。命令A及び命令Bは、それぞれ特定の制御対象の10個の量子ビットに対し、同時かつ独立制御を行うことを命令する。
【0068】
命令Aは、Q(G1、Q1)、Q(G1、Q2)、Q(G2、Q1)、Q(G2、Q3)、Q(G2、Q4)、Q(G2、Q6)、Q(G3、Q3)、Q(G3、Q4)、Q(G3、Q5)、Q(G3、Q6)、を制御対象とする。命令Bは、Q(G1、Q2)、Q(G1、Q3)、Q(G1、Q4)、Q(G2、Q1)、Q(G2、Q2)、Q(G2、Q5)、Q(G2、Q6)、Q(G3、Q4)、Q(G3、Q5)、Q(G3、Q6)、を制御対象とする。
【0069】
以下、制御信号線201を構成する10本の制御信号線2011~20110の各々が伝える制御信号の内容について説明する。
制御信号線2011は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G2、Q1)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2012は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G1、Q2)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2013は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G3、Q3)に対する命令A及びQ(G1、Q3)に対する命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2014は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G3、Q4)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2015は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G3、Q5)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2016は、シンドローム抽出操作、並びにQ(G2、Q6)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2017は、Q(G2、Q3)に対する命令A及びQ(G2、Q2)に対する命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2018は、Q(G3、Q6)に対する命令A及び命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線2019は、Q(G1、Q1)に対する命令A及びQ(G1、Q4)に対する命令Bのための制御信号を伝える。
制御信号線20110は、Q(G2、Q4)に対する命令A及びQ(G2、Q5)に対する命令Bのための制御信号を伝える。
【0070】
以下、SW(1、1)~SW(18、10)のスイッチング動作について説明する。
【0071】
シンドローム抽出操作を実行するときは、SW(1、6)、SW(2、5)、SW(3、4)、SW(4、3)、SW(5、2)、SW(6、1)、SW(7、6)、SW(8、5)、SW(9、4)、SW(10、3)、SW(11、2)、SW(12、1)、SW(13、6)、SW(14、5)、SW(15、4)、SW(16、3)、SW(17、2)、SW(18、1)をオンにする。
【0072】
命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときのスイッチング動作は、以下の通りである。
Q(G1、Q1)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(6、9)をオンにする。
Q(G1、Q2)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(5、2)をオンにする。
Q(G2、Q1)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(12、1)をオンにする。
Q(G2、Q3)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(10、3)をオンにする。
Q(G2、Q4)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(9、4)をオンにする。
Q(G2、Q6)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(7、6)をオンにする。
Q(G3、Q3)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(16、3)をオンにする。
Q(G3、Q4)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(15、4)をオンにする。
Q(G3、Q5)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(14、5)をオンにする。
Q(G3、Q6)に命令Aの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(13、8)をオンにする。
【0073】
命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときのスイッチング動作は、以下の通りである。
Q(G1、Q2)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(5、2)をオンにする。
Q(G1、Q3)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(4、3)をオンにする。
Q(G1、Q4)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(3、9)をオンにする。
Q(G2、Q1)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(12、1)をオンにする。
Q(G2、Q2)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(11、7)をオンにする。
Q(G2、Q5)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(8、10)をオンにする。
Q(G2、Q6)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(7、6)をオンにする。
Q(G3、Q4)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(15、4)をオンにする。
Q(G3、Q5)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(14、5)をオンにする。
Q(G3、Q6)に命令Bの論理量子ゲート操作を実行するときは、SW(13、8)をオンにする。
【0074】
ここで、例えばQ(G1、Q1)の制御のためには、制御信号線2011及び制御信号線2019が対応する。制御信号線2016は、SW(6、1)を介してシンドローム抽出操作のためにつかわれる。制御信号線2019は、SW(6、9)を介して論理量子ゲート操作のために使われる。このようにQ(G1、Q1)については、1つの量子ビットに対して複数の制御線が対応する。Q(1、4)、Q(2、2)、Q(2、3)、Q(2、4)、Q(2、5)、Q(3、6)についても同様である。
【0075】
これに対し、Q(G1、Q2)、Q(G1、Q3)、Q(G1、Q5)、Q(G1、Q6)、Q(G2、Q1)、Q(G2、Q6)、Q(G3、Q1)、Q(G3、Q2)、Q(G3、Q3)、Q(G3、Q4)、Q(G3、Q5)については、1つの量子ビットに対して1本の制御線が対応する。
【0076】
以上説明した配線と制御スイッチの配置は例示であり、これに限られない。
【0077】
以上説明したように、制御回路部15は、命令信号に基づいて、第1の操作においては、量子ビット基板部14上のすべての量子ビットに制御信号を送出し、第2の操作においては、量子ビット基板部14上の特定の制御対象の量子ビットにのみ制御信号を送出するように、制御信号の送出を制御する。
【0078】
また制御回路部15は、制御信号生成部11が生成した命令信号に基づいて、第1の操作においては、量子ビット基板部14の各グループに共通の制御信号を送信し、第2の操作においては、量子ビット基板部14上の各量子ビットに個別に制御信号を送信してもよい。これにより、空間的に一様な第1の操作をすべてのグループに共通に実行する一方で、第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を特定の量子ビットのみを対象に実行することができる。
【0079】
上記の制御回路部15、観測回路部16、信号処理回路部17を備えた量子ビットモジュール13は、好ましくはハードウェアを用いて実現される。このように、本実施の形態では、従来ソフトウェアで行われていた量子計算処理をハードウェアにオフロードすることにより、量子ビットモジュール13を冷凍機内に置くことができる。
【0080】
以上説明したように、制御線20にk’本の制御信号線201と、s本の命令信号線202とを適用することにより、制御線20の数をk’+s(本)にすることができる。これにより、従来量子ビットの総数Nのオーダを必要としていた制御線の数を、(k’+s)/N(倍)の本数に削減することができる。
【0081】
本実施の形態により、各グループ内の量子ビットの数をk、命令信号を伝達する信号線の数をsとしたとき、制御信号生成部11と量子ビットモジュール13とを結ぶ配線、すなわち制御線20の数をk’+sとすることができる。さらに制御信号の周波数が異なる場合には、制御信号生成部11で周波数多重化を行うことにより省線化が可能である。また制御信号がデジタル信号の場合には、時分割多重によって省線化することもできる。こうした場合は、制御線20の数をk’+s以下とすることができる。
【0082】
信号処理回路部17は、量子誤り訂正復号処理を行ってもよい。量子誤り訂正は、非常に多くの回数の高速な読み出しを必要とする。例えば、2000個の物理量子ビットからなる1論理量子ビットのエラー情報は、1Gbps程度の情報を生成する。この出力信号は、量子ビットに起きた誤りの推定処理にのみ使われる。量子誤り訂正の復号処理(エラー箇所の推定処理)を冷凍機内の低温環境下で実行することにより、冷凍機と常温環境との信号帯域幅を低減することができる。例えば、超伝導デジタル論理回路を用いた信号処理回路を用いることにより、当該回路をオンラインで動作させることができる。すなわち、取得した信号を回路に保持しておく必要がなく、エラー箇所の推定に用いた情報を廃棄してしまうことができる。従って、冷凍機と常温環境との信号帯域幅が低減され、冷凍機と常温環境とを接続する配線を削減することができる。これにより、従来量子ビットの総数Nのオーダを必要としていた観測線を、誤り訂正後のデータ量子ビットの観測線のみに削減することができる。なお多重化処理等により、この観測線数をさらに削減することもできる。
【0083】
量子誤り訂正復号処理の概要は以下の通りである。量子ビットに対して前述の第1の操作を1回実行すると、量子ビットの誤りに関する情報が得られる。この誤り情報に対して誤り箇所を推定し、量子ビット値の反転情報を信号処理回路部17に記憶しておく。一方、前述の第2の操作の一部には、量子ビットに関する情報(例えば、パリティ値や論理量子ビット値など)を取得するものがある。そうした操作に関する命令を実行後に得られた値に、記憶しておいた量子ビット値の反転情報による修正を加える。
【0084】
図2の例では、量子ビットモジュール13は、冷凍機18内で0.01K程度の極低温環境下に置かれ、制御信号生成部11と観測部12とは、常温環境下に置かれた。しかし様々な実施の形態ではこれに限られず、少なくとも量子ビットモジュール13が冷凍機内の極低温環境下に置かれればよい。例えば、制御信号生成部11や観測部12は、常温環境下~低温環境下に分散的に配置されてもよい。また、冷凍機18内の量子ビットモジュール13内のすべての構成が0.01K程度の極低温下に置かれなくてもよい。例えば量子ビットモジュール13の量子ビット基板部14だけが0.01K程度の極低温下に置かれ、制御回路部15、観測回路部16、信号処理回路部17などは、冷凍機18内における比較的高温の数Kあるいは数100mK程度の環境下に置かれてもよい。
【0085】
本実施の形態は、超伝導量子コンピュータに応用すると効果的である。この場合、量子ビット基板上に搭載される量子ビットは、超伝導量子ビットである。
【0086】
以上の実施の形態は、量子ビットモジュールが低温環境下に置かれるものであった。これに限られず、量子ビットは例えば固体量子ビットであってもよい。この場合、量子ビットモジュールは常温環境下にあってもよい。こうした量子ビットモジュールに対しても、命令デコーダと制御スイッチで構成されるハードウェアを用いて、前述の第1の操作と第2の操作の両方を実行することができる。
【0087】
[第2の実施の形態]
図10に、第2の実施の形態に係る量子計算制御装置2の量子ビット基板部14、制御回路部15の詳細を示す。
図10は
図6に対応する。量子計算制御装置2は、
図6の量子計算制御装置1に対して、波形メモリ153をさらに備える。量子計算制御装置2のその他の構成は、量子計算制御装置1と共通である。
【0088】
波形メモリ153は、制御信号生成部11が生成した第1の操作を実行するための制御信号の波形を記憶する。波形メモリ153は、例えばk種類の信号波形を1周期分だけ記憶してもよい。波形メモリ153は、第1の操作が実行されるときに、記憶した信号波形を読み出して、制御スイッチ152に入力する。
【0089】
第1の操作を実行するための制御信号は、同じ信号が周期的に繰り返されるので、常に制御信号生成部11がリアルタイムに生成する必要はない。従って、本実施の形態のように、一旦生成された制御信号の波形が波形メモリ153され、これが周期的に読み出されて使われてもよい。そして、制御信号生成部11が新たな信号波形を生成したときは、記憶されていた信号波形が当該新たな信号波形で書き換えられてもよい。
【0090】
本実施の形態によれば、動作中、制御信号生成部11から制御回路部15に入力される制御信号は第2の操作を実行するための制御信号だけとなるので、制御線20を流れる信号の帯域を削減することができる。
【0091】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、量子コンピュータである。この量子コンピュータは、前述の実施の形態の量子計算制御装置を備えることを特徴とする。量子コンピュータの基本的な構成については、既存の技術を用いてよい。
【0092】
本実施の形態によれば、配線数が削減された量子コンピュータを実現することができる。
【0093】
[第4の実施の形態]
図11に、第4の実施の形態に係る量子計算制御方法のフローチャートを示す。
【0094】
ステップS1で本方法は、量子ビット基板部上の量子ビットに対する操作であって1つ以上の種類の空間的に一様な第1の操作及び1つ以上の種類の第1の操作より低い頻度で行われる空間的に非一様な第2の操作を実行するための制御信号と、第1の操作及び第2の操作の制御を制御回路部に実行させるための命令信号と、を生成する。ステップS2で本方法は、制御回路部を用いて、制御信号を量子ビットのグループに分岐し、命令信号に応じて量子ビット基板部上の各量子ビットへの制御信号の送出を制御する。ステップS3で本方法は、観測回路部を用いて、第1の操作又は第2の操作を受けた各量子ビットの状態を観測する。ステップS4で本方法は、信号処理回路部を用いて、量子誤り訂正復号処理を実行する。ステップS5で本方法は、当該量子ビットを用いた計算が終了したかを判断する。判断結果が否定的だった場合は、処理はステップS1に戻る。判断結果が肯定的だった場合は、終了する。量子ビット基板部上の量子ビットは、各量子ビット同士の位置関係が同一である複数の量子ビットから構成される複数のグループにグループ化して配置されている。
【0095】
本実施の形態によれば、量子ビットを用いた装置における配線数を削減することができる。
【0096】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0097】
図12に、変形例に係る量子計算制御装置1aの機能ブロック図を示す。量子計算制御装置1aは、制御信号生成部11aと、観測部12aと、量子ビットモジュール13aと、を備える。量子ビットモジュール13aは、複数の量子ビットを搭載する量子ビット基板部14aと、制御回路部15aと、観測回路部16aと、信号処理回路部17aと、を備える。制御信号生成部11aと制御回路部15aとは、制御線20aで接続される。観測部12aと信号処理回路部17aとは、観測線21aで接続される。量子ビット基板部14aと制御回路部15aとは、第1の内部配線22aで接続される。量子ビット基板部14aと観測回路部16aとは、第2の内部配線23aで接続される。観測回路部16aと信号処理回路部17aとは、第3の観測線24aで接続される。
【0098】
図2の量子計算制御装置1では、制御信号生成部11~制御回路部15~量子ビット基板部14と、観測部12~信号処理回路部17~観測回路部16~量子ビット基板部14とが並列的に構成されている。これは、制御信号及び命令信号が制御信号生成部11から冷凍機18内に入力されると、観測信号が冷凍機18から反射されて戻ってくる形の「反射型」の構成である。
【0099】
これに対し量子計算制御装置1aでは、制御信号生成部11a~制御回路部15a~量子ビット基板部14a~観測回路部16a~信号処理回路部17a~観測部12aが直列的に構成されている。これは、制御信号及び命令信号が制御信号生成部11aから冷凍機18内に入力されると、これが冷凍機18を透過した後、観測信号が出力される形の「透過型」の構成である。
【0100】
上述した各実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる各実施の形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、量子計算制御装置、量子コンピュータ及び量子計算制御方法に利用可能である。
【0102】
本出願は、米国仮特許出願第63180500号を基礎とする優先権を主張する。当該仮出願の明細書は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0103】
1・・量子計算制御装置。
2・・量子計算制御装置。
1a・・量子計算制御装置。
11・・制御信号生成部。
11a・・制御信号生成部。
12・・観測部。
12a・・観測部。
13・・量子ビットモジュール。
13a・・量子ビットモジュール。
14・・量子ビット基板部。
14a・・量子ビット基板部。
15・・制御回路部。
15a・・制御回路部。
16・・観測回路部。
16a・・観測回路部。
17・・信号処理回路部。
17a・・信号処理回路部。
18・・冷凍機。
18a・・冷凍機。
20・・制御線。
20a・・制御線。
21・・観測線。
21a・・観測線。
22・・第1の内部配線。
22a・・第1の内部配線。
23・・第2の内部配線。
23a・・第2の内部配線。
24・・第3の内部配線。
24a・・第3の内部配線。
100・・量子コンピュータ。
101・・制御装置。
102・・観測装置。
103・・量子ビット基板。
104・・第1電子回路。
105・・第2電子回路。
106・・冷凍機。
107・・制御線。
108・・観測線。
151・・命令デコーダ。
152・・制御スイッチ。
153・・波形メモリ。
201・・制御信号線。
202・・命令信号線。
221・・量子ビット制御線。
222・・量子ビット制御線。
223・・量子ビット制御線。
G1・・格子。
G2・・格子。
G3・・格子。
SW(1、1)~SW(18、10)・・制御スイッチ。
S1・・制御信号と、命令信号とを生成するステップ。
S2・・量子ビット基板部上の各量子ビットへの前記制御信号の送出を制御するステップ。
S3・・量子ビット基板部上の量子ビットを観測するステップ。
S4・・量子誤り訂正復号処理を実行するステップ。
S5・・計算が終了したかを判断するステップ。