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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】医療用チューブクランプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20240731BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20240731BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20240731BHJP
   F16L 55/10 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61M39/28 110
F16B2/06 Z
F16L55/00 Z
F16L55/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018208428
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020074827
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠太
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】近藤 利充
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-6350(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002487(WO,A1)
【文献】特開2003-235971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のチューブを挟んで互いに対向する位置に配置される第1板状部及び第2板状部と、
前記第1板状部と前記第2板状部とを、前記チューブが延びる方向の第1側の端部において連結する湾曲部と、
前記第1板状部の第2側の端部に設けられ、前記第2板状部側に起立する起立部とを備え、
前記第1板状部は、前記第2板状部側に突出する第1圧迫凸部を有し、
前記第2板状部は、前記第1板状部側に突出する第2圧迫凸部を有し、
前記起立部は、前記湾曲部が弾性変形して前記第1板状部と前記第2板状部とが近接し、前記チューブを圧迫閉止する第1の状態を保持するように、前記第2板状部の係合部と係合する被係合部を有し、
前記第1板状部及び前記第2板状部は、前記第1の状態において、前記第2板状部が前記第2側に移動することを防ぐ位置保持当接機構を有し、
前記位置保持当接機構は、前記起立部よりも前記湾曲部側において前記第1板状部に設けられた被当接部と、前記第2板状部に設けられ、前記被当接部と当接する当接部とを有し、
前記第2圧迫凸部における突出端は幅方向に延び、前記突出端における幅方向中央部に前記チューブを押圧する第2押圧面が形成され、幅方向両端部に前記当接部が形成され、
前記第2押圧面は、前記係合部と前記被係合部とが係合している状態において、前記第1圧迫凸部における前記チューブを押圧する第1押圧面よりも前記第2側にずれて位置し、
前記当接部は、前記第2押圧面よりも前記第2側に位置し、前記第1の状態において、前記被当接部と当接し、
前記被当接部は、前記チューブを挟み込むように前記第1板状部の幅方向の両側部に形成された位置保持凸部における前記第1側の端面に形成され、
前記端面には、前記係合部と前記被係合部とが係合している状態において前記当接部と当接する部分から前記第1板状部に向かって前記第1板状部に対して真っすぐに垂直に延びる垂直面が形成され、前記係合部と前記被係合部とが係合している状態から更に前記第1板状部が前記第2板状部に近接する方向に押圧されても前記当接部の前記第2側への移動が規制されている、医療用チューブクランプ。
【請求項2】
前記第2圧迫凸部は、前記第2押圧面及び前記当接を形成する円弧状の面を有する、請求項1に記載の医療用チューブクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用チューブクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液等の体液の体外循環ライン及び薬液の輸液ライン等には可撓性の医療用チューブが用いられている。体外循環ライン等においては、ラインを容易に閉止できることが求められており、医療用チューブを外部から圧迫して閉止する樹脂製のチューブクランプが用いられている。例えば、圧迫凸部を各対向面に備えた第1板状部と第2板状部とが湾曲部で連結された構成のチューブクランプが知られている。湾曲部を弾性変形させて第1板状部と第2板状部とを相互の接近位置において係止させることにより、圧迫凸部が医療チューブを圧迫して狭窄し、閉止状態とすることができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-235971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のチューブクランプは湾曲部が弾性変形しやすい構成のため、閉止状態において、第2板状部の圧迫凸部の位置が前方にずれやすく、チューブの閉止が不十分となる場合がある。また、圧迫凸部の位置が複数回前方にずれると第2板状部の起立部に塑性変形が生じ、閉止状態であるにも関わらず、チューブの内部に流路が形成されてしまうおそれがある。
【0005】
本開示の課題は、圧迫凸部の位置がずれにくい医療用チューブクランプを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の医療用チューブクランプの第1の態様は、可撓性のチューブを挟んで互いに対向する位置に配置される第1板状部及び第2板状部と、第1板状部と第2板状部とを、チューブが延びる方向の第1側の端部において連結する湾曲部と、第1板状部の第2側の端部に設けられ、第2板状部側に起立する起立部とを備え、第1板状部は、第2板状部側に突出する第1圧迫凸部を有し、第2板状部は、第1板状部側に突出する第2圧迫凸部を有し、起立部は、湾曲部が弾性変形して第1板状部と第2板状部とが近接し、チューブを圧迫する第1の状態を保持するように、第2板状部と係合する係合部を有し、さらに、第1板状部及び第2板状部は、第1の状態において、第2板状部が前記第2側に移動することを防止する位置保持当接機構を有し、位置保持当接機構は第1板状部に設けられた被当接部と、前記第2板状部に設けられ、前記被当接部と当接する当接部とを有する。
【0007】
医療用チューブクランプの第1の態様によれば、操作上弾性変形しにくい板状部に位置保持当接機構を有するため、第2圧迫凸部の前方へのずれを効果的に生じにくくすることができる。
【0008】
医療用チューブクランプの第2態様は、可撓性のチューブを挟んで互いに対向する位置に配置される第1板状部及び第2板状部と、第1板状部と第2板状部とを、チューブが延びる方向の第1側の端部において連結する湾曲部と、第1板状部の第2側の端部に設けられ、第2板状部側に起立する起立部とを備え、第1板状部は、第2板状部側に突出する第1圧迫凸部を有し、第2板状部は、第1板状部側に突出する第2圧迫凸部を有し、起立部は、湾曲部が弾性変形して第1板状部と第2板状部とが近接し、チューブを圧迫する第1の状態を保持するように、第2板状部と係合する係合部を有し、さらに、第1板状部及び第2板状部は、第1の状態において、第2板状部が前記第2側に移動することを防止する位置保持当接機構を有し、位置保持当接機構は第1板状部に設けられた被当接部と、前記第2板状部に設けられ、前記被当接部と当接する当接部とを有し、当接部は、第1の状態において被当接部に対して第2側への付勢力を加える。このような構成とすることにより、多少の寸法誤差や変形が生じても当接部と被当接部とを当接させることができる。
【0009】
医療用チューブクランプの第3の態様は、可撓性のチューブを挟んで互いに対向する位置に配置される第1板状部及び第2板状部と、第1板状部と第2板状部とを、チューブが延びる方向の第1側の端部において連結する湾曲部と、第1板状部の第2側の端部に設けられ、第2板状部側に起立する起立部とを備え、第1板状部は、第2板状部側に突出する第1圧迫凸部を有し、第2板状部は、第1板状部側に突出する第2圧迫凸部を有し、起立部は、湾曲部が弾性変形して第1板状部と第2板状部とが近接し、チューブを圧迫する第1の状態を保持するように、第2板状部と係合する係合部を有し、さらに、第1板状部及び第2板状部は、第1の状態において、第2板状部が前記第2側に移動することを防止する位置保持当接機構を有し、位置保持当接機構は第1板状部に設けられた被当接部と、前記第2板状部に設けられ、前記被当接部と当接する当接部とを有し、第2圧迫凸部は、第1の状態において、第1圧迫凸部より第2側に位置する。このような構成とすることにより、第1の状態において、第1圧迫突部と第2圧迫突部とにより挟まれるチューブの作用で第2板状部は第2側へ移動しやすくなる一方、第1側へ移動し難くなる。このため、当接部と被当接部とを自然と当接させやすくすることができる。
【0010】
医療用チューブクランプの各態様において、第1板状部は、第1圧迫凸部よりも第2側に設けられ且つ第1圧迫凸部よりも第2板状部側に突出すると共に、被当接部を含む位置保持凸部を有する。このような構成とすることにより、当接部及び被当接部をチューブ圧迫部近傍に位置させることができるため、小型化を実現できる
医療用チューブクランプの各態様において、第2圧迫凸部は当接部を有する。このような構成とすることにより、第2圧迫凸部の前方へのずれの防止と形状の簡易化とを両立させた医療用チューブクランプを容易に実現できる。
【0011】
医療用チューブクランプの各態様において、位置保持当接機構は、チューブを挟み込むように、第1板状部の両側端部に設けられた側壁部を含み、第2圧迫凸部は、側壁部の第1側の端面と当接するようにできる。このような構成とすることにより、位置保持当接機構に医療用チューブの横ずれ防止機能を担持させると共に位置保持当接機構の強度信頼性を向上することができる。
【0012】
医療用チューブクランプの各態様において、側壁部の第1側の端面は、第1板状部の基準面に対して略垂直に起立していてもよい。このような構成とすることにより、簡易な形状で第2圧迫凸部の前方へのずれをより生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の医療用チューブクランプによれば、圧迫凸部の位置がずれにくく、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係るチューブクランプを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係るチューブクランプを異なる角度から示す斜視図である。
図3】一実施形態に係るチューブクランプの開放状態を示す側面図である。
図4】一実施形態に係るチューブクランプの閉止状態を示す側面図である。
図5】閉止状態のチューブクランプを拡大して示す側面図である。
図6】第1変形例に係るチューブクランプの開放状態を示す側面図である。
図7】第1変形例に係るチューブクランプの閉止状態を示す側面図である。
図8】第1変形例に係るチューブクランプの閉止状態を示す断面である。
図9】第2変形例に係るチューブクランプの閉止状態を示す側面図である。
図10】第3変形例に係るチューブクランプの開放状態を示す側面図である。
図11】第3変形例に係るチューブクランプの閉止状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図5に示すように、本実施形態の医療用チューブクランプ100は、可撓性のチューブ200を間に挟んで互いに対向する位置に配置される第1板状部101及び第2板状部102を備えている。第1板状部101と第2板状部102とは、長さ方向の第1側の端部において湾曲部103により連結されている。第1板状部101の湾曲部103と反対側の第2側の端部には、第2板状部102側に起立する起立部104が設けられている。
【0016】
なお、本開示において、チューブ200がクランプしていない状態で延びる方向に沿った方向を長さ方向とし、長さ方向(チューブ200の延びる方向)と交差する方向を幅方向とする。また、チューブクランプ100はどのような向きで使用してもよいが、説明のために第1側(湾曲部側)を後方、第2側(起立部側)を前方とし、第1板状部101側を下方、第2板状部102側を上方とし、第1板状部101と第2板状部102とを結ぶ方向を高さ方向とする。
【0017】
第1板状部101は、第2板状部102側に突出する第1圧迫凸部111と、第1圧迫凸部111よりも前方側に設けられ、第1圧迫凸部111よりも第2板状部102側に突出する位置保持凸部113を有している。第2板状部102は、第1圧迫凸部111に対応する位置において第1板状部101側に突出する第2圧迫凸部121を有している。起立部104は、湾曲部103が弾性変形して第1板状部101と第2板状部102とが近接した第1の状態を保持するように、第2板状部102と係合する係合部141を有している。第2圧迫凸部121は、第1の状態において、第1圧迫凸部111と共に、チューブ200を圧迫閉止する。
【0018】
湾曲部103には、チューブ200を通すための開口部103aが設けられている。起立部104には、チューブ200を通すための開口部104aが設けられており、係止爪143が設けられた板状の係合部141は、湾曲した細い連結部142により第1板状部101の第2側の端部と接続されている。
【0019】
第1板状部101と第2板状部102とが離間して、第2板状部102と係合部141とが係合されていない開放状態の場合、第2板状部102の第2端部123と、係合部141との間に開口部160が形成されている。開放状態において第2板状部102を第1板状部101側へ押圧すると、湾曲部103が弾性変形し、第2板状部102の第2端部123は、係合部141の係止爪143と当接する。第2板状部102をさらに押圧すると、係止爪143が前方に押されて連結部142が撓むため、第2板状部102の第2端部123が係止爪143を乗り越える。第2板状部102の第2端部123が係止爪143を乗り越えると、連結部142は復元する。このため、第2板状部102の押圧をやめても、第2板状部102は第2端部123の上面が係止爪143の下面と当接した第1の位置よりも上方に移動せず、第1板状部101と第2板状部102とが近接した第1の状態が保持される。第1の状態において、第1圧迫凸部111と第2圧迫凸部121とによりチューブ200が圧迫閉止される。
【0020】
第2端部123が係合爪143と当接した第1の状態において、係止爪143を指で僅かに前方へ押圧することにより、起立部103が撓み、係止爪143と第2板状部102の第2端部123との係合がはずれる。これにより、湾曲部103が復元し、開放状態に戻る。
【0021】
チューブ200を圧迫閉止する場合、第1板状部101と第2板状部102とを近接させるように各指(例えば、親指と人差し指)で第1板状部101と第2板状部102に力を加えると、湾曲部が撓み、第2板状部102は、第2端部123の上面が係合爪143の下面と当接する第1の位置まで移動する。第2圧迫凸部121の下方には、チューブ200及び第1圧迫凸部111が存在しているため、第1板状部101と第2板状部102とを近接させるように各指で第1板状部101と第2板状部102に力を加えても第1板状部101と第2板状部102は動かず、また、各指で第2板状部102を第1板状部101に対して第2側に相対移動するように各指で第1板状部101と第2板状部102に力を加えても第2板状部102を第2側に移動することを防止する位置保持当接機構を備えていることで、第2板状部102が第1板状部101に対して第2側に相対移動することが防止される。
【0022】
本実施形態のチューブクランプ100は、第2板状部102が前方に移動することを防止する位置保持当接機構として、第1板状部101に設けられた被当接部117と、第2板状部102に設けられ被当接部117と当接する当接部127とを有している。被当接部117は、第1圧迫凸部111よりも第2側に設けられ且つ第1圧迫凸部111よりも第2板状部102側に突出する位置保持凸部113に設けられており、当接部は第2圧迫凸部121に設けられている。第1の状態において第2圧迫凸部121の中央部がチューブ200に当接すると共に、当接部127である第2圧迫凸部121の両側部が位置保持凸部113の被当接部117と当接する。このため、第2板状部102と係合部141との係合及び解放がスムーズに行えるように起立部104の強度を低く抑えても、第1の状態において第2押圧凸部121の前方へのずれが抑えられ、チューブ200を十分に閉止することができ、操作性と信頼性とを両立させることができる。
【0023】
第1の状態において、第2圧迫凸部121の当接部127が、位置保持凸部113の被当接部117を前方へ付勢することが好ましい。このような構成とすることにより、確実に当接部117と被当接部127とが当接するようにすることができる。また、起立部104の多少の劣化等が生じたりしても、第2圧迫凸部121の位置がずれることがなく、信頼性をさらに向上させることができる。但し、当接部127は第1の状態において被当接部117を前方へ付勢していなくてもよい。
【0024】
本実施形態のチューブクランプ100は、第2圧迫凸部121に当接部117が設けられており、第2圧迫凸部121自体が、被当接部117である位置保持凸部113と当接することにより、第2圧迫凸部121の前方への位置ずれを抑えることができる。当接部127を第2圧迫凸部121に設けることにより、第2板状部102全体として前方へのずれを抑えることができると共に、小型化した際にも位置保持当接機構の強度を維持しやすく、変形等による前方へのずれが生じにくい。また、第2圧迫凸部121に当接部127を設けることにより、位置関係を正確に成形しなければならない部材が増えることがないため、成形が容易になるという利点もある。従って、チューブの閉止に直接関与する第2圧迫凸部121自体が、位置保持凸部113と当接するのが好ましい。但し、当接部127は、第2板状部102の第2圧迫凸部121以外の部分に設けることもできる。また、当接部となる部分を第1板状部101側に設けたり、被当接部となる部分を第2板状部102側に設けたりすることもできる。
【0025】
本実施形態において、位置保持凸部113は第1板状部101の幅方向の両端部に設けられ、第2板状部102側へ起立する略平板状の2つの側壁部となっている。位置保持凸部113である側壁部は、第1圧迫凸部111よりも突出高さが大きく、閉止状態において第2板状部102に達しない突出高さに形成されている。
【0026】
位置保持凸部113を、このように長さ方向に充分な長さを有する平板状の側壁部とすることにより、被当接部117と当接部127とが当接した際に位置保持凸部113が前方へ変形しにくくできる。また、側壁部は強度を保つのに充分な幅方向の厚みを有しており、第2圧迫凸部121に設けられた当接部127は、第1の状態において側壁部の後方側の端面である被当接部117と当接する。位置保持凸部113に設ける被当接部117を当接部127と平行な平坦面とすれば、面同士が当接するため安定性が向上する。但し、当接する面を曲面として被当接部117と当接部127とが点接触するようにしてもよい。また、位置保持凸部113は第1板状部101の幅方向の両端部より幅方向中央側に設けてもよく、第2圧迫凸部121の幅方向中央側と当接するようにしてもよい。
【0027】
本実施形態において、位置保持凸部113の第2圧迫凸部121と当接する面が延びる方向VL1は、第1板状部101の延びる方向(第1板状部101の基準面)HL1に対して略垂直である。位置保持凸部113を略垂直とすることにより、閉止状態となった後、さらに第2板状部102を強く押圧して、第2板状部102が前に押された場合にも、チューブ200と当接した第2圧迫凸部121が、位置保持凸部113に沿って前方へ逃げることができない。このため、位置保持凸部113が下方ほど前方に向かって傾斜した形状である場合と比べて、チューブ200をより確実に閉止することができる。但し、位置保持凸部113は、第2板状部が前方へずれ、起立部に影響を与えることを防止する点を鑑みれば、第1板状部の基準面HL1に対して完全に垂直である必要はなく、前方或いは後方に傾斜した形状としてもよい。
【0028】
本実施形態において、第2板状部102の最先端部から第2押圧凸部121の位置保持凸部113の当接面と当接する部分との距離L1は、起立部104の係止爪143の下面の最先端部から位置保持凸部113の当接面の第2押圧凸部121と当接する部分との距離L2の100%以上、120%以下とすることが好ましい。このような位置関係とすることにより、第2押圧凸部の前方へのずれを抑えると共に、開放状態と閉止状態との間の移行をスムーズに行うことができる。
【0029】
本実施形態のように、位置保持凸部113を第1板状部101の幅方向の両端部に設けられた側壁部とすることにより、チューブ200の横ずれを生じにくくするという効果も得られる。但し、位置保持凸部113はこのような構成に限らず、第1圧迫凸部111よりも前方に配置され、閉止状態において第2圧迫凸部121と当接して第2圧迫凸部121を前方方向へ押す力を受け止めることができればどのような構成としてもよい。従って、側部の片側のみに設けられてもよい。また、位置保持凸部113とは別に、横ずれ防止用の側壁部を設けることもできる。
【0030】
本実施形態においては、第2板状部102は、横ずれ防止用の側壁部156を有している。本実施形態において、側壁部156は、第2圧迫凸部121よりも湾曲部103側に、幅方向の両端部において第1板状部101側に突出する略平板状である。側壁部156は、板形状で前方に向かって傾斜して突設された第2圧迫凸部121の高さ方向中間部分において、湾曲部103側に傾斜して第1板状部101側に向かって突出している。側壁部156は、第2圧迫凸部121よりも突出高さが大きく、且つ、閉止状態において第1板状部101にまで達しない突出高さに形成されている。このような、側壁部156を設けることにより、チューブ200の横ずれを生じにくくすることができる。第2板状部102に設ける横ずれ防止用の側壁部は他の構成とすることもできる。
【0031】
本実施形態においては、第1の状態において、第2圧迫凸部121が第1圧迫凸部111よりも僅かに前方側にずれて設けられている。このため、第1圧迫凸部111と第2圧迫凸部121とにより圧迫されたチューブ200が、圧迫位置よりも後方側では第2板状部102側に変位し、前方側では第1板状部101側に変位する。第1圧迫突部111と第2圧迫突部121とにより挟まれるチューブ200によって、第2板状部102は第1状態への移行過程で自然と第2側へ移動する。また、第1状態においては、チューブ200の摩擦力及び弾性力等によって、第2板状部102は第1側へ移動し難くなっている。このため、当接部127と被当接部117とを自然と当接させやすくすることができる。
【0032】
本実施形態において、第1板状部101側の位置ずれ防止用の側壁部である位置保持凸部113と、第2板状部102側の位置ずれ防止用の側壁部156が、第1圧迫凸部111と第2圧迫凸部121によるチューブ200の圧迫位置と長さ方向にずれて配置されている。このため、チューブ200の圧迫状態を外部から容易に目視で確認することができる。
【0033】
横ずれ防止用の側壁部を、第1板状部101と第2板状部とにそれぞれ設けた例を示したが、いずれか一方だけを設けることができる。また、横ずれ防止用の側壁部は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0034】
本実施形態において、第1圧迫凸部111は、山形の断面形状を有し、第1板状部101の幅方向全体に延びており、先端部分が円弧状の押圧面112となっている。第2圧迫凸部121は、前方に傾斜して突出する板形状であり、第2板状部102の幅方向全体に延びており、先端部分が円弧状の押圧面122となっている。第1圧迫凸部111の押圧面112と第2圧迫凸部121の押圧面122とは、所定の距離を隔てて対向している。第1圧迫凸部111及び第2圧迫凸部121のチューブ200と当接する端部を円弧状とすることにより、チューブ200を傷つけにくくすることができる。但し、チューブ200の狭い範囲に集中して力が加わるように、第1圧迫凸部111及び第2圧迫凸部121のチューブ200と当接する端部を長さ方向の幅が狭い形状とすることもできる。なお、第2圧迫凸部121の押圧面122を第1圧迫凸部111の押圧面112よりも僅かに前方側にずらして設けなくてもよく、第1圧迫凸部111の押圧面112と第2圧迫凸部121の押圧面122とが前後にずれていない構成とすることもできる。この場合、第1の状態における湾曲部による弾性力によって、第2圧迫凸部が位置保持凸部を付勢しているようであるとよい。また、第2圧迫凸部121の押圧面122を第1圧迫凸部111の押圧面112よりも僅かに後方側にずらして設けることもできる。
【0035】
本実施形態において、第1圧迫凸部111には、幅方向両端面に開口する肉抜穴116が形成されている。肉抜穴116は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。第2圧迫凸部121には、その幅方向中央部分から開口部160側に向かって延びる三角板形状の補強リブ153が設けられている。補強リブ153を設けることにより、第2圧迫凸部121の変形等を防ぎ、より的確にチューブ200を押圧することができる。
【0036】
補強リブ153の突出先端部は、第2圧迫凸部121の先端部から開口部160側に向かって次第に高さが小さくなるように傾斜している。補強リブ153の傾斜した突出先端部に対して、リブ厚方向の両側に向かってそれぞれ突出する傾斜板152が設けられている。傾斜板152は、第1板状部101の側壁部に達しない突出高さとなっており、閉止状態とした際に、第1板状部101に設けられた側壁部の間に傾斜板152が入り込むように構成されている。傾斜板152における第1板状部101の対向面は、補強リブ153から両側外方に向かって次第に第2板状部102に近づく方向に傾斜した傾斜案内面155となっている。従って、これらの傾斜案内面155は、第2板状部102の幅方向両側から中央に向かって突出する方向に傾斜している。
【0037】
本実施形態において、補強リブ153と傾斜板152とによって中央案内突部154が構成されており、閉止状態となるように変位させる際に、第1板状部101と第2板状部102とが横方向へ相互に位置ずれした場合には、傾斜板152の傾斜案内面155に対して第1板状部101に設けられた側壁部の先端部が打ち当るようになっている。この打ち当りにより、側壁部の先端部が、中央案内突部154の先端部両側面としての傾斜案内面155の傾斜面に沿って案内される。これにより、側壁部への引っ掛かりが防止されると共に、第1板状部101と第2板状部102とをさらに接近方向に相対変位させるに伴って、第1板状部101と第2板状部102との横方向の位置ずれが修正される。
【0038】
従って、第1の状態とした際に、第1板状部101に設けられた側壁部間に第2板状部102の傾斜板152が入り込んで、第1板状部101と第2板状部102とが正規の本来あるべき位置に対峙した対向状態で、且つ相互に接近した状態で、係合部141の係止爪143により第2板状部102の第2端部123が係止されて保持される。
【0039】
本実施形態においては、第2板状部102における中央案内突部154の突出先端部には、第1板状部101に向かって突出する噛込防止突片151が形成されている。噛込防止突片151は、平板形状であり、傾斜板152の傾斜案内面155の頂部から突出し、中央案内突部154の先端部の稜線上に延びている。噛込防止突片151における第2板状部102からの突出高さは、開口部160側の端部において、第2板状部102の第2端部123と係合部141との離隔寸法と略同じか僅かに大きくすればよい。このような、噛込防止突片151を設けることにより、複数のチューブクランプを1つの袋又は箱等に収容した場合に、他のクランプの一部が開口部160にはまり込んで容易に外れなくなってしまうような問題を生じにくくすることができる。
【0040】
本実施形態において、チューブクランプ100が合成樹脂材料により一体成形された例を示したが、複数の部品を相互に固定した分割構造とすることもできる。また、第1圧迫凸部111及び第2圧迫凸部121の具体的形状は任意に設定可能である。さらに、補強リブ153、補強リブ153を用いた横ずれ防止用の構造及び噛込防止突片151等は任意の構成であり、適宜変更することが可能であり、設けないことも可能である。また、第2板状部102の上面等に滑り止めの凹凸を設けたり、各角部を面取りしたり、クランプにカラーコードを附したりすることも任意に行うことができる。
【0041】
本実施形態においては、第2板状部102が係合部141と係合した状態において、第2板状部102が前方に移動することを防止する位置保持当接機構が、第1板状部101に設けられた、被当接部117を含む位置保持凸部113と、被当接部117に当接する第2圧迫凸部121に設けられた当接部127とにより構成されている例を示した。しかし、このような構成に限らず、第1板状部101及び第2板状部102に、何らかの当接機構を設け、前記第1の状態において、第2板状部102が第2側に移動することを防ぐことができるようにすればよい。例えば、第2圧迫凸部121とは別に位置保持凸部113の被当接部117に当接する凸部である当接部127を第2板状部102に設けてもよく、また、第2圧迫凸部121と位置保持凸部113の被当接部117との間に当接部127となる別部材を設け、間接的に第2圧迫凸部121と被当接部117とが当接するようにしてもよい。位置保持当接機構を操作上弾性変形しにくい板状部に設けることにより、起立部や湾曲部等に何らかの位置ずれ防止の機構を設ける場合よりも、圧迫部の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0042】
図6図8には、第1変形例のチューブクランプ100Aを示す。チューブクランプ100Aにおいては、両側端部において、第1圧迫凸部111が第2側へ拡がっており、第1圧迫凸部と位置保持凸部113との間を接続する連結部115が設けられている。また、第2圧迫凸部121の両側端部には、図8に示す第1の状態において、連結部115の上面と接触しないようにする切り欠き部125が設けられている。
【0043】
本変形例のチューブクランプ100Aは、両側端部において、第1圧迫凸部111と位置保持凸部113とが一体となっている。このため、位置保持凸部113が変形しにくくなっており、第1の状態からさらに第1板状上部101と第2板状部102とを接近させるように力が加えられた場合に、位置保持凸部113の変形を抑えることができる。
【0044】
本変形例においては、第2圧迫凸部121の両側端部に切り欠き部125が設けられている。このため、第2圧迫凸部121が両側端部において連結部115と当接して、チューブ200の押圧が妨げられることはない。
【0045】
図9に示す第2変形例のチューブクランプ100Bのように、第1圧迫凸部111が両側端部に設けられていない構成とすることもできる。このように機能的に意味を成していない部分を削除することにより、樹脂使用量を削減すると共に型抜き性も向上させることができる。なお、第1変形例と同様に第2圧迫凸部121の両側端部に切り欠き125が設けられた例を示したが、切り欠き121は設けなくてもよい。
【0046】
また、図10及び図11に示す第3変形例のチューブクランプ100Cのように、第2圧迫凸部121以外の部分に当接部127を設けることもできる。第2変形例においては、横ずれ防止用の側壁部156に当接部127が設けられており、第1圧迫凸部111よりも後方に、被当接部117となる凸部が設けられている。図10に示す第1の状態とした場合に、側壁部156に設けられた当接部127が被当接部117と当接するため、第2板状部102第2側に移動することを防ぐことができる。
【0047】
なお、第3変形例において、側壁部156に設けられた切り欠きを当接部127とし、被当接部117である凸部と係合するようにした。このような構成とすることにより、第2板状部102の移動を防ぐ効果を高くすることができるが、このような切り欠きを設けなくても、側壁部156と第1板状部111に設けられた凸部とが当接するようにできればよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示の医療用チューブクランプは、圧迫凸部の位置がずれにくく、医療分野において有用である。
【符号の説明】
【0049】
100 チューブクランプ
100A チューブクランプ
100B チューブクランプ
100C チューブクランプ
101 第1板状部
102 第2板状部
103 湾曲部
103a 開口部
104 起立部
104a 開口部
111 第1圧迫凸部
112 押圧面
113 位置保持凸部
114 端面
115 連結部
116 肉抜穴
117 被当接部
121 第2圧迫凸部
122 押圧面
123 第2端部
125 切り欠き部
127 当接部
141 係合部
142 連結部
143 係止爪
151 噛込防止突片
152 傾斜板
153 補強リブ
154 中央案内突部
155 傾斜案内面
156 側壁部
160 開口部
200 チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11