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特許7530161表面に使用するコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】表面に使用するコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング
(51)【国際特許分類】
   A01N 61/00 20060101AFI20240731BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 25/26 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 33/04 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 43/36 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20240731BHJP
   A01N 65/22 20090101ALI20240731BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240731BHJP
   C09D 105/00 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 145/00 20060101ALI20240731BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 13/432 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 13/46 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 15/61 20060101ALI20240731BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A01N61/00 D
A01N25/04 101
A01N25/26
A01N31/02
A01N33/04
A01N35/02
A01N43/16 A
A01N43/36 B
A01N47/44
A01N65/22
A01P3/00
C09D5/14
C09D7/63
C09D105/00
C09D133/06
C09D133/14
C09D145/00
C09D179/02
D06M13/432
D06M13/46
D06M15/61
D06M23/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018568891
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2017091132
(87)【国際公開番号】W WO2018001359
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2018-12-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】62/493,330
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509340953
【氏名又は名称】ザ ホン コン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジイ
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤング キングロン
(72)【発明者】
【氏名】ヅァン ハンローン
(72)【発明者】
【氏名】リー イン
(72)【発明者】
【氏名】ファリード アワイス
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】冨永 保
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/041488(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0120056(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2898774(EP,A1)
【文献】国際公開第2014/174237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
C09D
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌および抗生物付着コーティング製剤であって、
中空円形粒子のコロイド状懸濁液からなり、前記中空円形粒子は
a)活性ポリマーシェルと、
b)活性または不活性コアと
を有し、
前記活性ポリマーシェルは、PEI-PHMB(ポリエチレンイミン-ポリヘキサメチレンビグアニド)からなり、
前記コアは活性または不活性であり、
前記活性コアは、殺菌薬、殺生剤、および香料から選択される有効成分の1若しくはそれ以上を含み、
前記不活性コアは、水または不活性溶媒を含み、
前記中空円形粒子のコロイド状懸濁液からなるコーティング製剤は50℃で少なくとも3ヵ月間、コロイドの粒子サイズが安定である、
抗菌および抗生物付着コーティング製剤。
【請求項2】
請求項1記載のコーティング製剤において、前記コアは精油およびアルデヒドから成る群から選択される1若しくはそれ以上の殺生剤を有する活性コアであるコーティング製剤。
【請求項3】
請求項記載のコーティング製剤において、前記殺生剤は精油であり、前記精油はタイム油であるコーティング製剤。
【請求項4】
請求項記載のコーティング製剤において、前記殺生剤はアルデヒドであり、前記アルデヒドは桂皮アルデヒドであるコーティング製剤。
【請求項5】
請求項記載のコーティング製剤において、前記1若しくはそれ以上の殺生剤である精油がタイム油であり、アルデヒドが桂皮アルデヒドであるコーティング製剤。
【請求項6】
請求項1記載のコーティング製剤において、前記コーティング製剤はさらに安定剤を有するものであるコーティング製剤。
【請求項7】
請求項1記載のコーティング製剤において、前記コーティング製剤は、さらに、
mw31,000~186,000g/molを有する0.01~20%(w/v)のポリビニルアルコール、Mn500を有する0.01~20%(w/v)のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、およびMn950を有する0.01~20%(w/v)のメトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート(MPEGMA)を有するものであるコーティング製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願書類は、2016年6月30日に提出された米国仮出願第62/493,330号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本主題は、固体多孔質表面に使用する表面コーティングの技術分野に関し、具体的には、抗菌性、接触致死性、および抗接着性の組み合わせを有するコーティング材料に関する。調整方法の詳細、および前記コーティングの特徴および性能も開示される。
【0003】
世界的に、世界保健機構によれば、飲料水媒介の病気および水に関連する病気は主要な死因であり、年間340万人以上が死亡する。水源および水に曝露する表面は、閉鎖系であっても、微生物汚染の重要な貯留層として機能するバイオフィルムが発達することから、汚染および汚れが付着しやすい。水に存在する微生物は膜にコロニーを形成して生物付着を起こすため、水の精製に利用され、汚染物から飲用水を保護する水ろ過膜は影響を受けやすい。生物付着により重篤かつ重大な性能低下および前記膜の稼働寿命短縮に至る可能性があり、汚染された膜は日和見病原体の温床となる可能性がある。その結果、防汚特性を持つようにデザインされたろ過膜が広く検討されてきた。
【0004】
米国で公開された特許出願第2010/0133172号では、主に、水質汚染物質の付着に抵抗するようにデザインされた選択透過性膜にコーティングされた親水性ポリマー、ポリフェノール化合物、および界面活性物質からできている複合親水性様成分について説明している。米国特許第4,634,530号明細書では、予め形成したポリベンゾイミダゾール半透膜を、前記膜をスルホン化することにより化学的に修飾し、汚染への抵抗性を高める工程について説明している。米国特許第6,177,011号明細書では、芳香族ポリアミドとポリビニルアルコールをコーティングすることで汚染抵抗性が高くなった逆浸透複合膜について説明している。米国特許第6,280,853号明細書では、多孔性担体を有し、そこへポリアルキレンオキシド基を移植した架橋ポリアミド表面が汚染への抵抗性の改善を示す複合膜について説明している。米国で公開された特許出願第2012/0048799号では、ポリ(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはポリ(メタ)アクリルアミド骨格を有する交差結合ポリマーおよび防汚特性を有する多機能酸ハロゲン化物架橋剤を持つ複合膜について説明している。米国で公開された特許出願第2013/0240445号では、長期的に使用するためには、繰り返し洗浄および再塗布が必要な、抗汚染特性を持つベンゼンジオールまたは置換フェノールを有するポリマーでコーティングされたろ過膜について説明している。米国で公開された特許出願第2012/0211414号では、逆浸透膜に親水性コーティングを使用した汚染抵抗性が高い選択膜について説明している。
【0005】
生物付着および微生物増殖のリスクが高い他の表面には、都市飲用水排水パイプ網および汚水槽を含む。下水および排水システム、熱交換器、および冷却塔も、バイオフィルムの形成に好ましい環境を提供する。2mm厚の微生物表面層があると、冷却塔システムのエネルギーが80%損失すると推定される。したがって、これらの固体表面の保護コーティングが開発された。
【0006】
CN 101143994Bでは、主に銅および亜鉛イオンから成る防汚塗装について説明している。米国で公開された特許出願第2012/0135149号では、マイケル型反応を受けることができる反応基を含む高分子骨格から成る、水と接触して使用する抗生物付着コーティングについて説明している。米国特許第8,080,285 B2号では、ポリシロキサン系ポリマーおよび円柱状ナノフィラーを含む抗生物付着コーティングが水中に粒子を放出したことを報告している。米国で公開された特許出願第2014/0148552 A1号では、表面に接着することができる固定構造および抗生物付着活性を示す両性イオン性構造から成る抗生物付着生体模倣剤について説明している。
【0007】
現在、当該分野では、固体および非固体表面に塗布することができ、長期的活性を持つ抗菌および抗生物付着コーティングがまだ必要である。本主題は、固体および多孔質表面に可逆的および非可逆的コーティングとなり、広域スペクトルの抗菌活性を提供し、微生物バイオフィルムの形成を停止させ、生物付着を予防する、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングに関する。本コーティングは、様々な用途にデザインされ、特に、水と接触する水ろ過膜、パイプ、管類、および他の表面、および微粒子エアフィルターを含む繊維製品および他の多孔質媒体に理想的である。本組成物は、空気と接触する固体および多孔質表面用の抗菌および抗生物付着コーティングとしても有効である。前記抗菌および抗生物付着コーティングは、殺菌薬、殺生剤、および香料を貯蔵および放出することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本主題は、抗菌および抗生物付着コーティング製剤に関し、
中空円形コロイド状構造を有し、これは
a)活性ポリマーシェルと、
b)活性または不活性コアと
を有し、
前記活性ポリマーシェルは、ポリエチレンイミン(PEI)、官能化キトサン(CHI)、ポリクオタニウム、ポリ(塩化ジアルキルジメチルアンモニウム)(PDDA)、およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMD)から成る群から選択される抗菌および抗生物付着活性を有する1若しくはそれ以上のポリマーを有し、
前記コアは活性であり、1若しくはそれ以上の殺菌薬、殺生剤、および香料を含み、
前記コアは不活性であり、水または不活性溶媒を含み、
前記中空円形コロイド状構造は少なくとも3ヵ月安定である。
【0009】
別の態様では、本主題が非多孔質表面、多孔質膜、または多孔質材料に塗布する抗菌および抗生物付着コーティングを製造する方法に関し、この方法は、
-以下の工程で抗菌および抗生物付着製剤を調整する段階と、
(a)1若しくはそれ以上の活性ポリマーを含む水溶液を調整する工程
(b)殺生剤または溶媒を活性ポリマーの水溶液に追加する工程
(c)1およびそれ以上の界面活性物質を含む安定剤混合物を前記殺生剤または溶媒および活性ポリマー溶液に追加し、前記抗菌および抗生物付着製剤を形成する段階を有する、中空円形コロイド状構造を有するエマルジョンを調整する工程
(d)前記抗菌および抗生物付着製剤から前記抗菌および抗生物付着コーティングを調整する工程
-前記抗菌および抗生物付着コーティングを非多孔質表面、多孔質膜、または多孔質材料に塗布する段階と
を有する。
【0010】
本主題の組成物および方法は、それに応じてより詳細に提供されるとおり、先行技術の組成物および方法の問題を取り扱う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分子量1300~60000のPEIおよびポリビニルアルコール(PVA)で形成されたコロイドの光学顕微鏡画像。
図2】前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティング材料のPEIポリマーの化学的架橋。
図3】(a)4:1、(b)2:1、(c)1:2、および(d)1:4の比でPEI-PHMBにより形成されたコロイドの光学顕微鏡画像。
図4】(a)PHMBおよび(b)PEI貯蔵用タイム油から形成されたコロイドの光学顕微鏡画像。
図5】PEI-PHMB貯蔵用タイム油から形成されたコロイドの光学顕微鏡画像。PEI-PHMBは異なる(a)4:1、(b)1:1、および(c)1:4の比を有する。
図6】(a)桂皮アルデヒド、(b)ファルネソール、および(c)混合殺生剤を貯蔵するPEIコロイドエマルジョンの写真。
図7】10CFU/mlの黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPEI(実施例1)、PDDA、およびPEI-PDDA(実施例5)コーティングの抗菌性能。
図8】10CFU/mlの黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPHMB、PDDA、およびPHMB-PDDA(実施例6)コーティングの抗菌性能。
図9】10CFU/mlの黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPEI、PHMB、およびPEI-PHMB(実施例7)コーティングの抗菌性能。
図10】10CFU/mlの黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌、および緑膿菌に対するPEI、PHMB、およびPEI-PHMB(実施例7~12)コーティングの抗菌性能。
図11】水ろ過膜のコーティング工程の略図(実施例23~27)。この図は実験室規模のナノろ過膜のものである。
図12】ナノろ過膜への市販のスズ系抗生物付着コーティング2種類およびPEIコーティング2種類の抗菌性能。試験微生物:10CFU/ml大腸菌。
図13】ナノろ過膜への異なる量のPEI-PHMB(実施例7)表面コーティングの抗菌性能。試験微生物:10CFU/ml大腸菌。
図14】非コーティング、市販の抗生物付着コーティングおよびPEIコーティング(実施例1)のナノろ過膜に対する微生物付着で示した抗生物付着性能。試験微生物:10CFU/ml大腸菌。
図15】非コーティングおよびPEI-PHMBコーティング(実施例8)のナノろ過膜に対する微生物付着で示した抗生物付着性能。試験微生物:10CFU/ml大腸菌。
図16】前記ナノろ過膜を透過する水分流動。
図17】(a)コロイド状PEGDA-X(式中、XはCHIT、EGG、NR3、NR4、SO3、およびLYN)の殺菌活性(実施例4)、(b)異なる量のPEGDA-EGG、PEGDA-NR3、PEGDA-LYN、およびPEGDA-NR4の殺菌活性。
図18】コーティングしたナノろ過膜の飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)画像。m/z86および113に位置するフラグメントはNR3に属するが、m/z84、126、および213のフラグメントはNR4に属する。
図19】EGDA-NR3、PEGDA-NR4、およびPEGDA-NR3/NR4でコーティングされたナノろ過膜と接触した一般細菌の減少率のプロット。試験微生物:10CFU/ml大腸菌。
図20】(a)非コーティングナノろ過膜および(b)PEGDA-NR3、(c)PEGDA-NR4、および(d)PEGDA-NR3/NR4でコーティングされたナノろ過膜の10CFU/mlの大腸菌に48時間曝露後のSEM画像。
図21】(a)大学にある表面池の原水を用い、非コーティングナノろ過膜およびPEGDA-NR3/NR4でコーティングされたナノろ過膜に7日間水を流動させた。(b)7日間の実験で非コーティングナノろ過膜およびPEGDA-NR3/NR4でコーティングされたナノろ過膜の色素排除実験の結果。
図22】(a)0.1L/分での非コーティング精密ろ過膜およびPEGDA-NR3/NR4でコーティングされた精密ろ過膜からの水分流動、および(b)前記膜の細菌除去率。
図23】ドパミンおよびコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングの表面へのコーティング工程の略図。
図24】(a)ステンレス鋼、(b)プラスチック(PVC)、および(c)ガラスを含むドパミン接着層によりコーティングした基質の写真。
図25】ドパミン接着層を用いて基質に調整した、様々な量のコロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例8)での黄色ブドウ球菌および大腸菌生菌の減少率。
図26】(a)黄色ブドウ球菌および(b)大腸菌のコーティングに対する加速劣化効果およびコロイド状PEI-PHMBコーティングの殺菌活性。
図27】10CFU/mlの大腸菌培養液に曝露後のドパミン接着層で、非コーティングステンレス鋼およびコロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例8)でコーティングされたステンレス鋼に付着した大腸菌のSEM画像。
図28】10CFU/mlの大腸菌培養液に曝露後のドパミン接着層で、非コーティングプラスチックPVCおよびコロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例8)でコーティングされたプラスチックPVCに付着した大腸菌のSEM画像。
図29】10CFU/mlの大腸菌培養液に曝露後のドパミン接着層で、非コーティングステンレス鋼およびコロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例8)でコーティングされたステンレス鋼の生物付着度を示した蛍光顕微鏡画像。
図30】10CFU/mlの大腸菌培養液に曝露後のドパミン接着層で、非コーティングプラスチックPVCおよびコロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例7)でコーティングされたプラスチックPVCの生物付着度を示した蛍光顕微鏡画像。
図31】10CFU/mlの大腸菌培養液に14日間曝露後の非コーティングおよびコーティング(a)ステンレス鋼および(b)プラスチックPVCから回収可能な生菌。
図32】加速劣化条件の10CFU/mlのMRSA、エンテロコッカス・フェカーリス、アシネトバクター、および緑膿菌に対する、コロイド状抗菌コーティングおよび抗生物付着コーティングでコーティングした病院織布の長期的殺菌活性。
図33】(a)DDI水に浸漬し、急速攪拌した後の非コーティング、アルコール処理、漂白剤処理、およびコーティングした(実施例12)病院織布の殺菌特性、および(b)加速劣化条件の10CFU/ml MRSA、エンテロコッカス・フェカーリス、アシネトバクター、および緑膿菌に対する、DDI水に浸漬し、急速攪拌した後のアルコール処理およびコーティングした(実施例8)病院織布の殺菌特性。
図34】コロイド状PEI-PHMBコーティングを噴霧コーティングしたHEPAフィルターの写真および病院環境で自然の空中浮遊細菌に対する性能の概要。
図35】コロイド状抗菌および抗生物付着(a)コーティング-1(実施例35)および(b)コーティング-2(実施例36)に対する、エポキシ系製剤でコーティングしたステンレス鋼の写真。
図36】基質に調整した、様々な量のエポキシコーティング-1(実施例35)での黄色ブドウ球菌および大腸菌生菌の減少率。
図37】10CFU/mlの大腸菌培養液に曝露後、非コーティングステンレス鋼およびエポキシコーティング-1(実施例35)およびコーティング-2(実施例36)でコーティングされたステンレス鋼に付着した大腸菌のSEM画像。
図38】非コーティングステンレス鋼およびエポキシコーティング-1(実施例35)およびコーティング-2(実施例36)でコーティングされたステンレス鋼に付着した大腸菌の写真。
図39】10CFU/mlの(a)黄色ブドウ球菌および(b)大腸菌に対するコーティングおよびエポキシコーティングの殺菌作用に対する加速劣化の影響。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本化学組成物は、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングであり、空気および水/液体環境に曝露した固体および多孔質表面に塗布するために理想的な物理的特徴を有する。生物付着すなわち生物学的汚染は、微生物、植物、藻類、または動物の湿った表面への蓄積と定義される。
【0013】
本コーティングは中空円形粒子のコロイド状懸濁液であり、官能化生体高分子(キトサン)、ホスファチジルコリン、および1級、2級、および/または3級アミンおよび両性イオン基を含むポリマー鎖など、少なくとも2種類またはそれ以上のポリマーを有する。前記コーティング組成物の調製は、前記ポリマーが特定の濃度およびpHで中空円形粒子に自己集合するようにする。前記粒子サイズは、安定剤を使用することで、および/または架橋結合によってもコントロールすることができる。前記中空円形粒子は、不活性または活性成分のコアを含むことができる。不活性(非抗菌)コアには、例えば、水または不活性溶媒を含んでもよい。活性(抗菌)コアには、例えば、1若しくはそれ以上の殺菌薬、殺生剤、および香料を含んでもよい。
【0014】
前記安定剤は、ポリビニルアルコール(PVA)および/またはポリエチレングリコール(PEG)誘導体から選択することができ、PVAまたはPEG基を持つポリマーを適用することができる。特定の実施形態では、前記安定剤は約0.01~20%(w/v)のPVA(mw31,000~186,000g/mol)、約0.01~20%(w/v)のPEGMA(Mn=200~1000、好ましくは500)、および約0.01~20%(w/v)のMPEGMA(Mn=200~5000、好ましくは950)として存在する。
【0015】
表面のコーティングは、噴霧コーティング、浸漬コーティング、洗浄コーティング、およびワイピングにより、または化学的リンカーを使用することで達成することができる。複合コーティングは、多層コーティング法を利用することで構築することができる。さらに、瞬間コロイドを含むペイントおよびエポキシ樹脂コーティングを表面に直接塗布することができる。すべてのケースにおいて、前記瞬間コーティングは空気および水に安定であり、水流による浸食に耐える。前記コーティングは、産業、商業、地方自治、および家庭で利用する上で安全で有効であるように設計されている。
【0016】
コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングはポリマーを有し、これに限定されるものではないが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMD)、キトサン(CHIT)、ポリクオタニウム(PQAC)、およびポリビニルアルコール(PVA)などの活性ポリマーを含む。特定の活性ポリマーは、接着性が低い、および/または有益な抗菌性を有するものと定義されることが意図される。
【0017】
化学的架橋は、主なポリマー材料にL-α-ホスファチジルコリン(EGG)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリル酸塩(NR3)、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物(NR4)、およびメタクリル酸3-スルホプロピル(SO3)を結合することができる。詳細な調整法は、図の考察後に説明するとおり、実施例1~12で説明する。
【0018】
図の考察
以下の図の考察は、以下の項で説明するとおり、実施例を参照している。特定の実施例を参照する。すべての図および実施例は、添付の請求項で請求される主題に限定することは意図していないことに注意する。
【0019】
前記瞬間コーティングのコロイドは、様々なコーティング機能に合わせるため、サイズに幅を持たせることができる。例えば、図16に示すとおり、ろ過の用途でコーティングを利用すると、コロイドサイズを増加させた場合に水分流動が増す可能性がある。様々な因子が前記コロイド粒子のサイズに影響する。例えば、前記コロイド状粒子のサイズは、構成ポリマーの分子量を調節することでコントロールすることができる。図1は、PEIコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング製剤(10%PEI(Mn60,000)、10%PEI(Mn10,000)、および10%PEI(Mn1,200))の一連の光学顕微鏡画像を示す。低分子量(約1,200g/mol)のPEIは2ミクロンのコロイドを形成し、高分子量(約60,000g/mol)のPEIは20ミクロンのコロイドを形成した。図1では、構成ポリマーの量を20%PEI(mw10,000)まで増加させることで、前記コロイド状粒子のサイズを修正している。ポリマーの場合、分子量(mw)は平均分子量を意味する。活性ポリマーの構成比を変化させることでも、粒子サイズは変化する。左から右に、前記粒子サイズは2μm、1μm、0.8μm、および0.5μmであった。図3では、前記コロイド状PEI-PHMB抗菌および抗生物付着コーティングは、PEIとPHMBの様々な構成比((a)4:1、(b)2:1、(c)1:2、および(d)1:4)で調製し、それによってコロイド粒子サイズは5~20ミクロンと変化した。具体的には、図3において、前記粒子サイズを(a)1μm、(b)0.5~2μm、(c)2~3μm、および(d)0.5μmとした。
【0020】
前記粒子サイズは架橋によりコントロールすることができ、架橋は前記ポリマー長を増加させ、様々な官能基またはポリマーを結合して新たな性質および機能を作る。このアプローチは両性イオン分子、金属殺生剤、および殺菌タンパク質および酵素を前記主要ポリマーに組み込むために利用することができる。例えば、PEIは図2に示す一般反応により架橋することができる。
【0021】
コロイドの粒子サイズは、安定剤を使用することでもコントロールでき、これよりも影響は少ないが、pHおよび濃度によっても影響を受ける。表1は、異なる濃度のPEIおよびPHMBを有するコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを示す。
【0022】
【表1】
【0023】
前記コロイドの粒子サイズは、活性コア材料に合わせるためにさらに変化させてもよい。顕微鏡画像(図1および3~5)では、前記抗菌および抗生物付着コーティングの瞬間コロイド粒子が円形、中空であり、活性コア材料をコーティングできることを確認している。活性コア材料は、例えば、精油、香料、殺生剤、および/または消毒剤とすることができる。殺生剤には、ファルネソール、桂皮アルデヒド、およびタイム油などのポリオール、および混合殺生剤(タイム油、桂皮アルデヒド、およびファルネソール)を含む。一部の活性コアは精油であってもよく、これは香料、消毒剤、殺生剤として活性である。製剤化したコーティングの精油、香料、殺生剤、および消毒剤の貯蔵および放出を含むコロイド粒子を調製する方法は、実施例13~22にみられる。図4および5は、タイム油を含むコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング製剤を示している。PEI、PHMB、およびPEI-PHMBコロイドおよびタイム油を製剤化することに成功した(実施例13~15)。図4では、前記粒子サイズが(a)2~5μmおよび(b)1μmであった。図5では、前記粒子サイズが(a)0.5~2μm、(b)1~2μm、および(c)1~3μmであった。活性コアを利用した場合、前記瞬間コーティングは、限定されない例として桂皮アルデヒド、ファルネソール、および混合殺生剤(タイム油、桂皮アルデヒド、およびファルネソール)を用い、PEIの安定なコロイド状懸濁液の形態(図6)とすることができる。本主題により可能な他の活性コアの組み合わせは、微生物汚染を殺菌および抑制する目的で、イオン、分子、および生体分子を含む活性材料を含有、封入、貯蔵、および放出するコロイド状粒子の中空領域を利用する。
【0024】
例となるコーティング製剤は、重量で、
a.約0.01~20%(w/v)のPVA(mw31,000~186,000g/mol)と、
b.約0.01~20%(w/v)のPEGMA(Mn=500)と、
c.約0.01~20%(w/v)のMPEGMA(Mn=950)と、
d.0.0001~5%(w/v)のポリエチレンイミン(mw1,200~60,000g/mol、Sigma Aldrichより購入)と、
e.0.05~3%(w/v)のポリヘキサメチレンビグアニド(mw2,000~2,600g/mol)と、
f.0.01~20%(w/v)のポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(mw250,000~350,000g/mol)と、
g.0.01~1.5%(w/v)のタイム油と、
h.0.01~1.5%(w/v)のファルネソール(mw=222g/mol)と、
i.0.05~1.5%(w/v)の桂皮アルデヒド(mw=132g/mol)と
を有する。
【0025】
したがって、総活性ポリマーの特定の範囲は0.0001~30%(w/v)である。理想的には、前記活性ポリマーは1-4:4-1の比、10~20w%で存在する。
【0026】
図7は、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPEI(実施例1)、PDDA、およびPEI-PDDA(実施例5)の殺菌特性を示す。黄色ブドウ球菌生菌はPEI-PDDAコーティングで9.99%(4Log)減少し(PEIでは97.339%、PDDAでは91.457%)、緑膿菌の減少は40%と控えめであった。図8は、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPHMB、PDDA、およびPHMB-PDDA(実施例6)の同様の殺菌検査を示す。黄色ブドウ球菌生菌はPHMB-PDDAコーティングで9.99%(4Log)減少し(PHMBでは99.990%、PDDAでは91.457%)、緑膿菌の減少は55%と控えめであった(PHMBでは51.389%、PDDAでは31.433%)。図9は、黄色ブドウ球菌および緑膿菌に対するPEI、PHMB、およびPEI-PHMB(実施例7)の結果を示す。黄色ブドウ球菌生菌はPEI-PHMBコーティングで99.99%(4Log)減少し(PEIでは97.339%、PHMBでは99.990%)、緑膿菌のバイオフィルム形成の減少は同様に99.99%(4Log)であった(PEIでは39.912%、PHMBでは51.389%)。後者の場合、PEI-PHMBの併用で相乗効果が示された。図10は、黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌、および緑膿菌に対するPEI、PHMB、およびPEI-PHMBコーティング(実施例7~12)の抗菌性能をプロットしている。PEI-PHMBコーティングは、生菌の99.99%(4Log)の減少を維持した。
【0027】
図11は、瞬間コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを施した逆浸透(実施例24)、ナノろ過(実施例25)、限外ろ過(実施例26)、および精密ろ過膜(実施例27)などのコーティング水分ろ過膜の1つのアプローチを示している。前記方法は、保持液(retentate)流により前記膜にコーティングを導入し、前記膜表面にろ過によりコロイド状粒子を沈着させ、その後付着させる工程を有する。この方法は、前記コーティング膜に抗菌および抗生物付着特性を与える。この方法の利点は、膜系を操作していても、中断することなく、前記コーティングを簡単に行うことができるという点である。前記コーティングは、酸性逆洗により取り除くことが可能である。表2は、ナノろ過膜のコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングの保持を示している。
【0028】
【表2】
【0029】
図12では、2種類の市販のスズ系抗生物付着剤(様々な濃度の2,2-ジプロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)水溶液、Dow)および2種類のPEIコーティング(実施例1)のナノろ過膜における抗菌特性を比較している。市販の抗生物付着剤で処理した膜は抗菌特性が低かったが(活性が3%および21%低下)、瞬間コロイド状PEIコーティングは生菌数を97%以上減少させることができる。図13は、瞬間コロイド状PEI-PHMBコーティング(実施例7および27)は、コーティング量が非常に低い場合でも、非コーティングナノろ過と比較し、細菌の減少率99.99%以上を維持できることを示している。図14には、菌液に液浸した膜サンプルを14日間撮像した一連のSEM画像を含む。瞬間コロイド状PEI(実施例1)でコーティングしたナノろ過膜への微生物付着は、非コーティング膜および市販の抗生物付着剤で処理した膜(DBPNA、Dow)と比較してごくわずかである。これらの研究は、前記コロイド状コーティングが抗菌性および抗生物付着性を持つことを確認した。図15は、コーティングおよび非コーティングサンプルについて、推定大腸菌濃度2500CFU/cmおよび0で非コーティングおよびPEI-PHMBコーティングサンプル(実施例8および25)のナノろ過膜のバイオフィルム成長をたどっている。前記コーティング膜は大腸菌がなかった。図16は、コロイド状PEI-PHMBコーティングの水分流動に対する効果を示している。大腸菌生菌の99.99%の減少は3製剤すべてで維持されたが、コロイド状粒子のサイズは1ミクロンから2および10ミクロンに増加した。コーティング量が同じより大きなコロイドを用いた場合、コーティングの水分流動に対する効果を改善することができる。表3は、膜の排除/保持率がコーティングにより改善したことを示している。表3に示した非コーティングおよびコーティング膜の排除データは、メチルオレンジ液を用いて作成した。
【0030】
【表3】
【0031】
図17(a)は、非修飾キトサン(CHIT)、L-α-ホスファチジルコリン(EGG)、2-(ジエチルアミノ)エチル)メタクリル酸塩(NR3)、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物(NR4)、メタクリル酸3-スルホプロピル(SO3)、およびリゾチーム(LYN)(実施例4)で架橋したコロイド状PEGDAの殺菌特性をプロットしている。PEGDAはこれらのサンプルで不活性ポリマーとして機能し、これに異なる抗菌、抗接着、および抗生物付着分子を架橋することができる。図17bは、異なる組成物でのEGG、NR3、NR4、およびLYNに関するさらなる殺菌研究の結果を示している。NR3はEGGおよびLYNと比較して性能が最高であった。NR4は殺菌活性が低かったが、抗接着性は優れていた。均一な表面コーティングは、図18のナノろ過膜表面のToF-SIMSマッピング画像で示されるとおり、単純に前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティング(実施例28)にはけ塗りすることで達成可能である。
【0032】
図19および20は、非コーティングナノろ過膜、およびコロイド状PEGDA-NR3、PEGDA-NR4、および前記PEGDA-NR3/NR4でコーティングしたナノろ過膜の抗菌および抗生物付着の結果をプロットしている。図19は、複数回使用後も、コロイド状PEGDA-NR3およびPEGDA-NR3/NR4でコーティングしたナノろ過膜が非コーティング膜よりも80~99%少ない生菌数を維持したことを示している。図20は、PEGDA-NR4の抗菌活性は有意に低いが、膜表面の細菌接着を予防したことを示している。前記コロイド状PEGDA-NR3/NR4は、「接触殺菌」および「抗接着」により2段階の抗菌活性を示した。図21は、非コーティングナノろ過膜とコロイド状PEGDA-NR3/NR4でコーティングしたナノろ過膜の水分流動と色素排除をプロットしている。図21(a)に示すとおり、NR4により表面の親水性が上昇したために前記水分流動は前記非コーティング膜で改善し、図21(b)の色素排除実験で示されるとおり、前記膜の分離特性に影響はなかった。前記膜を意図的に汚染することで、コロイド状PEGDA-NR3/NR4抗菌および抗生物付着コーティングでコーティングしたナノろ過膜はさらに生物付着に抵抗性を持つことが示された。図22は、非コーティング精密ろ過膜およびコーティング精密ろ過膜による水分流動と細菌ろ過をプロットしている(実施例29)。試験からは、前記コーティングにより前記膜のろ過特性は変化しなかったことが分かる。同様に、コロイド状PEGDA-NR3/NR4抗菌および抗生物付着コーティングでコーティングした精密ろ過膜はさらに生物付着に抵抗性を持った。したがって、瞬間コーティングは、PEI、PHMB、PDDA、PQACおよび同様の抗菌ポリマーなどの活性ポリマーにこのような同様の抗菌、抗接着、および抗生物付着分子および構造を組み込み、表面にコロイド状多層抗菌および抗生物付着コーティングを構成する。
【0033】
表面への瞬間コーティングの接着層としてドパミンおよび同様の材料を使用することについては、実施例30で説明し、図23に図示している。ドパミン接着層は、前記ポリマーのカテコール基とアミン基またはチオール基との間のシッフ反応によりコロイド状コーティングと結合する。ビニルスルホンなどの他の分子リンカーは、前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを「クリックケミストリー」により前記対象に接着させることができる。図24は、ステンレス鋼、プラスチックPVC、およびガラスを含むドパミン接着層を用いた基質への前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを示す。表4のステンレス鋼およびプラスチックPVCのX線光電子分光法は、コロイド状PEI-PHMBからの窒素含有量増加により、前記表面にコーティングを付着させることに成功したことを示している。具体的には、表4(a)は、水で洗浄後のドパミン接着層を用い、ステンレス鋼にコロイド状コーティングを行った際のX線光電子分光法の元素分析結果を示しており、表4(b)は、水で洗浄後のドパミン接着層を用い、プラスチックPVCにコロイド状コーティングを行った際のX線光電子分光法の元素分析結果を示している。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
流動環境をシミュレートした急速攪拌状態、35℃で、前記基質を蒸留脱イオン(DDI)水に入れる7日間の水への液浸後、前記表面の窒素含有量に測定可能な減少はなかった。結果は、前記コーティングが水域環境での使用に適合し、水腐食および浸食に抵抗することを示していた。
【0037】
図25は、ドパミン接着層を有する基質に対するコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング(実施例8)の殺菌特性をプロットしている。前記プロットは、グラム陽性およびグラム陰性菌に対する前記表面の殺菌特性について、単位面積当たりのコーティング量の効果を示している。前記コーティングは、24mg/cm(湿式)または0.2mg/cm PEIおよび0.05mg/cm PHMB(乾式)のコーティングレベルで生菌を90%以上減少させることができた。30mg/cm(湿式)または0.24mg/cm PEIおよび0.06mg/cm PHMB(乾式)では、生菌を99.99%(4Log)減少させることができた。図26(a)および26(b)は、前記コーティングの加速劣化の結果、およびそれぞれ黄色ブドウ球菌および大腸菌に対して得られた殺菌特性の影響をプロットしている。各実験日は25日間の水への液浸に相当した。結果は、前記殺菌活性を3~14日、7日以上、および/または7~14日などの長期間維持できることを示している。
【0038】
ステンレス鋼およびプラスチックPVC表面でドパミン接着層に付着したコロイド状抗菌および抗生物付着コーティング(実施例8)の抗生物付着特性を、図27および28では走査型電子顕微鏡、図29および30では蛍光顕微鏡、図31では標準的な微生物法による生菌の直接算出により評価した。コーティングおよび非コーティングサンプルは14日間、10CFU/mlの大腸菌培養液に液浸した。結果は、図27および28に示すとおり、非コーティング基質と比較し、コーティングしたステンレス鋼およびプラスチックPVC表面への細菌付着が少ないことを一貫して示しており、これらの細菌は健常な大腸菌と比較して、肉眼的形態に差があることを示している。図29および30は、非コーティングのステンレス鋼およびプラスチックPVC表面に微生物膜が有意にコロニー形成していることを示している。前記微生物膜には、死菌および生菌細胞両方の有機基質が含まれた。前記コーティング表面は、14日間の細菌培養後も、前記コーティング材料から主に蛍光発光を示した。生菌は、培養および計数した表面から回収した。図31に示した結果は、非コーティングサンプルと比較し、コーティングしたステンレス鋼およびプラスチックPVCの細菌数が90%少ないことを示している。これらの結果は、水中環境におけるコーティングの長期的抗菌および抗生物付着特性を確認した。
【0039】
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングは、織布および不織布を含む多孔質媒体に塗布した。図32は、病院環境で加速劣化として見られた一般の環境病原菌に対するコーティングした繊維製品の性能を示している。老化は一定期間、高温(50℃)に前記繊維製品を曝露して行い、続いて1分間の接触時間で10CFU/mlの細菌溶液を直接負荷した。結果は、前記コーティング繊維製品が30日間の加速劣化試験後も高い殺菌活性を保持していたことを示している。図33(a)は、アルコールおよび漂白剤溶液で処理した繊維製品と比較し、低濃度のコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングでコーティングした繊維製品を示している。前記繊維製品は、1分間の接触時間で生菌数を98%以上減少させることができる。図33(b)は、急速攪拌した状態で水に曝露後、前記繊維製品が殺菌性を保持していたことを示している。エタノール処理した繊維製品と比較し、90%以上の細菌減少を維持した。
【0040】
図34は、前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングでコーティングしたフィルターの半分および非コーティングのもう半分を用いた空気ろ過試験で使用したHEPAフィルターを示している。表5(a)は、エアフィルターのミセルコーティングが、14日間で接触致死により78%以上の細菌を減少させることができることを示している。
【0041】
【表6】
【0042】
抗菌性能は30日間で58.75%まで低下したが、これはコーティング層に汚れが付着したことによるものと考えられる。また、図34および表5(b)は、PEI-PHMBでカプセル化したタイム油でコーティングしたHEPAフィルターは、14日間で接触致死および放出致死(release killing)により96%以上の細菌を減少させることができることを報告している。
【0043】
【表7】
【0044】
非コーティングエアフィルター部分と比較し、前記コーティング層は前記コーティング表面と接触した場合に細菌を生育不能とすることができる。
【0045】
前記エポキシポリマーコーティング材料の調製は、患者CN 1605607で説明した通常の防食塗料を基に行った。これは、家庭用水および飲用水安全性評価基準(2011)の配給装置および保護材料に記載された関連明細書と共にまとめたもので、船の貯水槽、排水管、および食品に触れる容器に使用することができる。表6は、エポキシコーティング材料の基本的処方を示している。
【0046】
【表8】
【0047】
前記ステンレス鋼基質のポリマーコーティング量は33mg/cmである(図35)。図36は、前記コーティングの殺菌性に対する塗布したコーティング量の影響を示している。前記コーティングが21mg/cmを超える場合、殺菌性能は80%以上を達成することができる。図37は、エポキシコーティング-1(実施例35)およびコーティング-2(実施例36)でコーティングしたステンレス鋼に細菌がない場合と比較した、非コーティングステンレス鋼の細菌付着を示している。
【0048】
図33は、いずれのコーティングも14日間で細菌付着を99.9%減少できることを確認した。前記コーティングステンレス鋼を水に液浸後に行った加速劣化試験は、前記コーティングが徐々に腐食し、殺菌活性が長期間維持できることを示した。
【0049】
実施例
セクション1:コロイド状コーティング処方
【実施例1】
【0050】
ポリエチレンイミン(PEI)
分子量1000~60000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を用い、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを調整した。簡単に述べると、前記ポリマーを蒸留水に溶解し、0.1wt%~40wt%の濃度でPEI溶液を調整した。次に、前記PEI溶液を、容積比5:1~1:5で0.1wt%~10wt%のポリマーを含むポリビニルアルコール(PVA)に加えた。急速に攪拌しながら1滴ずつ加えた後、1分間超音波処理すると、図1に示すコロイド状材料が生成する。
【実施例2】
【0051】
官能化キトサン
分子量5000~120000g/molの生体高分子キトサンおよび官能化キトサンを用い、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを調整した。簡単に述べると、前記ポリマーを蒸留水に溶解し、0.1wt%~40wt%の濃度でバイオポリマー溶液を調整した。次に、前記バイオポリマー溶液を、容積比5:1~1:5で0.1wt%~10wt%のポリマーを含むポリビニルアルコール(PVA)溶液に加えた。急速に攪拌しながら1滴ずつ加えた後、1分間超音波処理すると、コロイド状材料が生成する。
【実施例3】
【0052】
ポリクオタニウム
分子量5000~1000000g/molの範囲のエトキシル酸ヒドロキシエチルセルロース、ポリ[(2-エチルジメチル-アンモニオエチルメタクリル酸エチルスルファート)-コ-(1-ビニルピロリドン)]、およびポリ[(3-メチル-1-ビニルイミダゾリウム塩化物)-コ-(1-ビニルピロリドン)]を含むポリクオタニウムを用い、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを調整した。簡単に述べると、前記ポリマーを蒸留水に溶解し、0.1wt%~40wt%の濃度で前記ポリクオタニウム溶液を調整した。次に、前記ポリクオタニウム溶液を、容積比5:1~1:5で0.1wt%~10wt%のポリマーを含むポリビニルアルコール(PVA)溶液に加えた。急速に攪拌しながら1滴ずつ加えた後、1分間超音波処理すると、コロイド状材料が生成する。
【実施例4】
【0053】
ポリマー架橋
前記コロイドの形状およびサイズは、PEI系コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングについては、分子量500~950g/molのポリ(エチレングリコール)メタクリル酸塩またはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリル酸塩などの第3のポリマーと前記活性ポリマー(図2)を架橋させて調節した。
【実施例5】
【0054】
PEI+PDDA(比1:1)
分子量1000~60000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量150000~230000g/molのポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)を水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPDDA溶液を調整した。同濃度のPEIおよびPDDA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PDDAが1:1の比で生成した。
【実施例6】
【0055】
PHMB+PDDA(比1:1)
分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。分子量150000~230000g/molのポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)を水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPDDA溶液を調整した。同濃度のPHMBおよびPDDA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PHMB:PDDAが1:1の比で生成した。
【実施例7】
【0056】
PEI+PHMB(比1:1)
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。同濃度のPEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが1:1の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI(1~6wt%)およびPHMB(1~6wt%)濃度を2~12wt%とした。
【実施例8】
【0057】
PEI+PHMB(比4:1)
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、2.5wt%~5wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。図3aに示すとおり、PEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが4:1の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI濃度を1~6wt%、PHMB濃度を0.25~12wt%とした。
【実施例9】
【0058】
PEI+PHMB(比2:1)
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。図3bに示すとおり、PEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが2:1の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI濃度を1~6wt%、PHMB濃度を0.5~3wt%とした。
【実施例10】
【0059】
PEI+PHMB(比1:2)
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。図3cに示すとおり、PEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが1:2の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI濃度を0.5~3wt%、PHMB濃度を1~6wt%とした。
【実施例11】
【0060】
PEI+PHMB(比1:4)
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。図3dに示すとおり、PEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが1:2の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI濃度を0.25~1.5wt%、PHMB濃度を1~6wt%とした。
【実施例12】
【0061】
PEI+PHMB(比39:1)
分子量1200~10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。PEIおよびPHMB溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、コロイド状PEI:PHMBが39:1の比で生成した。前記コロイドを希釈し、最終PEI濃度を1~6wt%、PHMB濃度を0.025~0.15wt%とした。
【実施例13】
【0062】
PHMB+タイム油(1:5)
分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、5wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量のタイム油を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PHMBおよびタイム油/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PHMBカプセル化タイム油を生成した。図4aに示すとおりTween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例14】
【0063】
PEI+タイム油(1:5)
分子量1200~10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。測定した量のタイム油を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PEIおよびタイム油/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PEIカプセル化タイム油を生成した。図4bに示すとおりTween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例15】
【0064】
PEI+PHMB+タイム油
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量のタイム油を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。特定量のPEI溶液を追加した後、1分間超音波処理し、適切な量のPHMB溶液を追加してさらに1分間超音波処理すると、図5に示すコロイド状PEI:PHMB:タイム油材料が生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例16】
【0065】
PEI+桂皮アルデヒド
分子量1200~10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。測定した量の桂皮アルデヒドを0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PEIおよび桂皮アルデヒド/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PEIカプセル化桂皮アルデヒドを生成した。図6aに示すとおりTween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例17】
【0066】
PHMB+桂皮アルデヒド
分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、5wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量の桂皮アルデヒドを0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PHMBおよび桂皮アルデヒド/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PHMBカプセル化桂皮アルデヒドを生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例18】
【0067】
PEI+PHMB+桂皮アルデヒド
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/moleのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量の桂皮アルデヒドを0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。特定量のPEI溶液を追加した後、1分間超音波処理し、適切な量のPHMB溶液を追加してさらに1分間超音波処理すると、コロイド状PEI:PHMB:桂皮アルデヒド材料が生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例19】
【0068】
PEI+ファルネソール
分子量1200~10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、5wt%~10wt%の濃度でPEI溶液を調整した。測定した量のファルネソールをDMSO/水溶液に溶解し、10wt%~50wt%とした。ファルネソール溶液を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PEIおよびファルネソール/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PEIカプセル化ファルネソールを生成した。図6bに示すとおりTween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例20】
【0069】
PHMB+ファルネソール
分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、5wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量のファルネソールをDMSO/水溶液に溶解し、10wt%~50wt%とした。ファルネソール溶液を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。PHMBおよびファルネソール/PVA溶液等量を素早く混合した後、1分間超音波処理し、PHMBカプセル化ファルネソールを生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例21】
【0070】
PEI+PHMB+ファルネソール
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。測定した量のファルネソールをDMSO/水溶液に溶解し、10wt%~50wt%とした。ファルネソール溶液を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。特定量のPEI溶液を追加した後、1分間超音波処理し、適切な量のPHMB溶液を追加してさらに1分間超音波処理すると、図5に示すコロイド状PEI:PHMB:ファルネソール材料が生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【実施例22】
【0071】
PEI+PHMB+混合殺生剤
分子量10000g/molのポリエチレンイミン(PEI)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPEI溶液を調整した。分子量2000~2600g/molのポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を蒸留水に溶解し、10wt%~20wt%の濃度でPHMB溶液を調整した。タイム油、桂皮アルデヒド、およびファルネソールを含む混合殺生剤を調整した。前記混合殺生剤溶液を0.1~10wt%のPVA溶液に加え、乳化した。特定量のPEI溶液を追加した後、1分間超音波処理し、適切な量のPHMB溶液を追加してさらに1分間超音波処理すると、図5に示すコロイド状PEI:PHMB:混合殺生剤が生成した。Tween 80を加え、得られたコロイドを安定化させた。
【0072】
セクション2:用途の選択
【実施例23】
【0073】
水ろ過膜の抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをろ過により水ろ過膜にコーティングした。前記工程は0.01MPaの膜圧で行い、前記コーティングは0.1~10wt%に調節することができる。コーティングは、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法により行うこともできる。
【実施例24】
【0074】
逆浸透(RO)膜の抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをデッドエンドろ過によりRO膜にコーティングした。前記工程は0.1MPaの膜圧で行い、前記コーティングは0.1~10wt%に調節することができる。コーティングは、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法により行うこともできる。
【実施例25】
【0075】
ナノろ過(NF)膜の抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをデッドエンドろ過によりナノろ過膜にコーティングした。前記工程は0.1MPaの膜圧で行い、前記コーティングは0.1~10wt%に調節することができる。コーティングは、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法により行うこともできる。
【実施例26】
【0076】
限外ろ過(UF)膜の抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをデッドエンドろ過により限外ろ過膜にコーティングした。前記工程は0.05MPaの膜圧で行い、前記コーティングは0.1~10wt%に調節することができる。コーティングは、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法により行うこともできる。
【実施例27】
【0077】
精密ろ過(MF)膜の抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをデッドエンドろ過により精密ろ過膜にコーティングした。前記工程は0.05MPaの膜圧で行い、前記コーティングは0.1~10wt%に調節することができる。コーティングは、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法により行うこともできる。
【実施例28】
【0078】
NF膜の抗生物付着コーティング(架橋分子構造)
コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングは、L-α-ホスファチジルコリン(EGG)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリル酸塩(NR3)、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物(NR4)、メタクリル酸3-スルホプロピル(SO3)、およびリゾチーム(LYN)から調製した。コロイド状PEGDA-EGG、PEGDA-NR3、PEGDA-NR4、PEGDA-SO3、PEGDA-LYN、および非修飾キトサンで架橋したPEGDA-CHIの殺菌活性を図17に報告する。前記コロイド状コーティングはナノろ過膜にはけ塗りしたが、ろ過、吹き付けコーティング、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法を含む他のコーティング方法も利用することができた。ナノろ過膜でコーティングしたPEGDA-NR3、PEGDA-NR4、およびPEGDA-NR3/NR4の性能を図18~20にプロットした。
【実施例29】
【0079】
MF膜の抗生物付着コーティング(架橋分子構造)
コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングは、L-α-ホスファチジルコリン(EGG)、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリル酸塩(NR3)、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル)ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウム水酸化物(NR4)、メタクリル酸3-スルホプロピル(SO3)、およびリゾチーム(LYN)から調製した。前記コロイド状コーティングはナノろ過膜に吹き付けコーティングしたが、ろ過、はけ塗り、洗浄コーティング、および浸漬コーティング法を含む他のコーティング方法も利用することができた。MF膜にコーティングしたPEGDA-NR3/NR4の性能を図21に報告した。
【実施例30】
【0080】
接着層としてドパミンを使用した抗菌および抗生物付着コーティング
ドパミンまたは同様の分子接着層を用い、表面に前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングをコーティングした。tris-Hcl緩衝(pH 8.5)溶液から2mg/mlのドパミン溶液を調整した。前記接着層を吹き付けコーティング、はけ塗り、洗浄コーティング、および浸漬コーティング、または同様の方法で表面にコーティングした。過剰なドパミンを洗い流し、前記サンプルを乾燥させてから、図23に示すとおり、コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングでコーティングした。
【実施例31】
【0081】
接着層としてドパミンを用いた高耐性コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングは、ステンレス鋼、プラスチックPVC、およびガラスに沈着させたドパミン接着層を用い、表面にコーティングした(図24)。前記表面へのコーティングは、図26の加速試験に示されるとおり、攪拌した状態でも、水に耐性を示した。前記抗菌および抗生物付着特性は、図26~31に示すとおり、高微生物汚染状態でも維持された。
【実施例32】
【0082】
織布および不織布への抗菌および抗生物付着コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングは2倍および4倍希釈し、液状塗料の工程により繊維材料に塗布した。前記コーティングは吹き付けコーティング、浸漬コーティング、および関連コーティング法でも塗布することができる。さらに、前記コーティングは、前記織布の機械洗浄のすすぎサイクルで追加することができる。
【実施例33】
【0083】
織布および不織布への高耐性コーティング
前記コロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを病院ベッドの仕切り布にコーティングした。図32および33は、病原体および薬物耐性微生物を含む、一連のグラム陽性およびグラム陰性菌に対するコーティング布の殺菌特性をまとめている。図32の加速劣化の結果は、コーティングした布が長期間殺菌性を維持していることを示した。急速に攪拌した状態で水に繰り返し浸漬しても、コーティングした布の殺菌特性に影響はなかった。
【実施例34】
【0084】
粒子状エアフィルターへの抗菌コーティング
実施例1~12および実施例13~22に示したコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを、吹き付けコーティング法により、HEPAを含む粒子状エアフィルターにコーティングした。エレクトロスプレー法、浸漬コーティング、洗浄コーティング、および関連方法も代わりに利用することができた。図34は、コロイド状1 PEI:1 PHMBコーティングでコーティングしたHEPAフィルタースプレーの画像とその空中浮遊細菌に対する抗菌特性である。
【実施例35】
【0085】
コロイド状抗菌および抗生物付着コーティング-1のエポキシ系製剤
典型的な製剤は、100容量部(parts by volume)のエポキシ樹脂と30~70容量部の硬化剤および100~200容量部の実施例8のコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを混合することで調製した。20~60容量部の溶媒を加えた後、急速に混合した。
【実施例36】
【0086】
コロイド状抗菌および抗生物付着コーティング-2のエポキシ系製剤
典型的な製剤は、100容量部のエポキシ樹脂と30~70容量部の硬化剤および100~200容量部の実施例11のコロイド状抗菌および抗生物付着コーティングを混合することで調製した。20~60容量部の溶媒を加えた後、急速に混合した。
【実施例37】
【0087】
抗菌エポキシ表面コーティング
実施例35および36に説明したエポキシコーティングは、図35に示すとおりステンレス鋼チャックにコーティングし、抗菌試験に使用した(図37~39)。
【0088】
セクション3:方法
特性解析
初期膜、抗菌製剤を使用した膜、初期基質、および抗菌製剤をコーティングした基質のSEM画像は、エネルギー分散型X線検出器を備えたJEOL JSM-6300およびJEM-6300F走査型電子顕微鏡により作成した。
【0089】
X線光電子分光法
初期基質および抗菌製剤をコーティングした基質の元素組成解析は、多技術システム(multi-technique system)(AES、SAM、XPS)を備えたModel PHI 5600(Physical Electronics)を用いて行った。
【0090】
蛍光顕微鏡
初期基質および抗菌製剤をコーティングした基質への生物付着の分布解析は、Nikon TE2000E-PFS・Dual-View Micro-imagerにより行った。
【0091】
試験プロトコール
抗菌活性
再培養により調製した細菌は10CFU/mLに希釈した。100μLの希釈剤を各担体に滴下した。タイマーを使用し、前記担体と細菌の接触時間をモニターした。その後、前記担体を10mLの中和溶液、0.9%(W/V)NaCl、0.2%w/v tween 80、および0.001Mチオ硫酸ナトリウムを含む滅菌ボトルに移した。これを30分間インキュベートさせた。
【0092】
必要であれば、細菌を滅菌食塩水で連続希釈した。100μLの溶液をTSA寒天に播種し、24時間培養した。プレートを取り出し、コロニー形成単位(CFU)を計数することで算出した。
【0093】
抗接着試験
抗接着試験では、14日間の考えられる最悪の状況をシミュレートした静的バッチ条件で、コーティングおよび非コーティング膜をニュートリエントブロスに入れた10CFU/mlの大腸菌に曝露した。インキュベーション後、前記膜を滅菌DDI水で洗浄し、懸濁した微生物を取り除いた。前記洗浄した膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、前記膜表面に接着した細菌密度を調査および推定した。使用したSEMはモデルJEOLJSM 6300Fであった。
【0094】
膜透過性
水の透過はデッドエンドろ過細胞の膜で測定した。300kPaの圧力および25°Cの供給温度で、脱イオン水の流動は60分間で透過した水の量から求めた。アクリジンオレンジふるい試験を、前記膜で同装置を用いて行った。0.1g/Lの濃度で供給溶液を調整した。300kPaの圧力および25°Cの供給温度で、30分以内の透過液を回収した。供給液と透過液のアクリジンオレンジ濃度はUV-visにより測定した。修正前後の排除(R)は、式R=1-C/C(CおよびCは、それぞれ透過液と供給液のUV-vis濃度である)により計算した。
【0095】
バイオフィルムの染色
バイオフィルムの染色に用いた染色液は、Filmtracer(商標)LIVE/DEAD(登録商標)Biofilm Viability Kitであった。染色プロトコールは製造業者の指示に従った。簡単には、前記ポリマーミセル溶液でコーティングしたステンレス鋼およびPVCサンプルを、10mlのニュートリエントブロスと10CFU/mlの大腸菌を含むペトリ皿に入れた。培養後、PBSを用いて接着しなかった細菌を基質表面から洗い流し、洗い流した基質を6ウェルプレートに移した。染色液の希釈標準溶液は、3μlのSYTO 9と3μlのヨウ化プロピジウムを1mlのろ過滅菌水に加えて調整した。続いて、製造業者に従って混合した染色液200μlを加える。染色皿を暗所で20~30分間インキュベートした。染色後、過剰な染色液をすべて取り除くため、前記サンプルをろ過滅菌水で3回洗い流した。
【0096】
膜におけるミセル溶液の安定性
前記処理膜の安定性を検討するため、試験を行った。前記処理膜は、図6に示した直交流膜ろ過細胞に取り付け、3barの保持液(retentate)流を維持した。前記保持液を回収し、UV-Visスぺクトロメーターを用いた比色法により、溶出した抗生物付着剤を分析した。前記結果は、前記膜がろ過された抗生物付着剤を85%以上保持したことを示した。
【0097】
複数の表面におけるミセル溶液の安定性
コーティングしたサンプルは50mlの脱イオン蒸留水に曝露し、14日間、100~200rpmで振盪した。前記溶液の浸出ポリマーをUV-vis分光光度計で測定した。前記サンプルに残ったコーティングの抗菌活性を試験した。
図1
図2
図3
図4
図5
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図39