(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240731BHJP
E06B 3/54 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/54 Z
(21)【出願番号】P 2019008812
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】澤田 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】丸池 勇
(72)【発明者】
【氏名】米道 貴広
(72)【発明者】
【氏名】荒井 直樹
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】土屋 真理子
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168585(JP,A)
【文献】特開2013-19116(JP,A)
【文献】特開2018-178533(JP,A)
【文献】特開2016-23448(JP,A)
【文献】特開2014-34843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B5/16,E06B3/00-3/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス間口内に補強部材が配置されており、パネル体が補強部材及びグレイジングチャンネルを介してガラス間口に保持されており、
補強部材は、パネル体の端面に対向する底壁と、パネル体の縁部の室内側面に対向する室内側壁と、パネル体の縁部の室外側面に対向する室外側壁を有する断面U字状をなしており、
補強部材の室内側壁及び室外側壁は、内側面及び外側面に熱膨張耐火材を有して
おり、
内側面及び外側面に設けられた熱膨張耐火材は、見込み方向にすべて重複している建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建築物等の開口部に配置される建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の開口部に配置されるサッシとして、高い断熱性を有する樹脂枠及び樹脂框を備えるサッシが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示す樹脂サッシは、樹脂材料の特徴を生かして高い断熱性を有することができ、また、ある程度の防火性能を備えている。
しかし、近年、樹脂材料からなる部位を備える断熱サッシにおいて、さらに高い防火性能が求められるようになっている。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みたものであり、断熱性能とともに高い防火性能を備えるサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、ガラス間口内に補強部材が配置されており、パネル体が補強部材及びグレイジングチャンネルを介してガラス間口に保持されており、補強部材は、パネル体の端面に対向する底壁と、パネル体の縁部の室内側面に対向する室内側壁と、パネル体の縁部の室外側面に対向する室外側壁を有する断面U字状をなしており、補強部材の室内側壁及び室外側壁は、内側面及び外側面に熱膨張耐火材を有しており、内側面及び外側面に設けられた熱膨張耐火材は、見込み方向にすべて重複している建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、樹脂材料からなる部材を有するサッシに対して、断熱性能を維持しながら、高い防火性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】一実施形態に係るサッシの取付状態における竪断面図である。
【
図3】一実施形態に係るサッシの取付状態における横断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るサッシの外障子の上框の拡大図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るサッシの外障子の上框の火災時の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るサッシについて、図面を参考にして説明する。
本実施形態のサッシは、建物開口部に配置されている窓装置の室内側に配置される内窓Aとして構成されており、
図1に示すように、枠体10と、枠体10に対して摺動自在に配置される内障子20及び外障子30を備えている。
【0010】
枠体10は、上枠11,下枠12及び左、右竪枠13,14を有しており、各枠材は枠組されることなく、上枠11,下枠12及び左、右竪枠13,14がそれぞれ建物開口部の内周面にビス等の固定手段によって固定されることで建物開口部の四周に亘る枠体10が形成されている。
【0011】
内障子20は、上框21、下框22、左竪框(召合框)23及び右竪框(戸先框)24を四周に組んで、その内周にパネル体25を取り付けて形成されており、外障子30は、上框31、下框32、左竪框(戸先框)33及び右竪框(召合框)34を四周に組んで、その内周にパネル体35を取り付けて形成されている。
【0012】
そして、本実施形態の内窓Aは、
図2,3に示すように、予め建物開口部に配置されている建具Bの室内側に配置されること、例えば額部Cの内周に固定されることによって、二重サッシを構成し、建物開口部における断熱性能を高めることができる。なお、建物開口部に配置されている建具Bは、どのような建具であっても良く、ここではその説明を省略する。
【0013】
(枠体の構成)
枠体10の上枠11は、
図4に示すように、樹脂材料からなる略平板状の上枠本体111と、アルミ合金等の金属材料からなる上レール部材112を有している。そして、上レール部材112が上枠本体111の内周面(下面)に配置された状態で、上枠本体111と上レール部材112はビス等の固定手段bにより、建物開口部の額部Cの内周面(下面)に固定されている。
【0014】
上枠本体111は、額部Cに固定される上枠本体部111aと、上枠本体部111aの室内側端から垂下する室内側壁部111bを有している。
【0015】
上レール部材112は、上枠本体111と共に額部Cに固定される上レール固定部112aと、上レール固定部112aの室内側より下方に垂設される上内レール112bと、上レール固定部112aの室外側より下方に垂設される上外レール112cを有している。
上枠11の上内レール112bと上外レール112cとの間であって、内障子20及び外障子30の召合框23,34の上方位置にはヒレ状の風止め部を有する風止め部材71が配置されている。
【0016】
枠体10の下枠12は、
図4に示すように、樹脂材料からなる略平板状の下枠本体121と、アルミ合金等の金属材料からなる下レール部材122を有している。そして、下レール部材122が下枠本体121の内周面(上面)に配置された状態で、下枠本体121と下レール部材122はビス等の固定手段bにより、建物開口部の額部Cの内周面(上面)に固定されている。
【0017】
下枠本体121は、建物開口部に固定される下枠本体部121aと、下枠本体部121aの室内側端から上方に立設する室内側壁部121bを有している。
【0018】
下レール部材122は、下枠本体121と共に額部Cに固定される下レール固定部122aと、下レール固定部122aの室内側より上方に立設する下内レール122bと、下レール固定部122aの室外側より上方に立設する下外レール122cを有している。
下枠12の下内レール122bと下外レール122cとの間であって、内障子20及び外障子30の召合框23,34の下方位置にはヒレ状の風止め部を有する風止め部材72が配置されている。
【0019】
枠体10の左、右竪枠13,14は、樹脂材料からなり、
図5に示すように、略平板状に形成されており、ビス等の固定手段b,bにより、建物開口部の額部Cの内周面に固定されている。
本実施形態の左、右竪枠13,14は、上、下枠11,12と同様に樹脂材料によって形成してもよいが、アルミ合金等の押出形材の表面を合成樹脂等の断熱材料によってコーティングして形成してもよい。
【0020】
左、右竪枠13,14は、建物開口部に固定される左、右竪枠本体部131a,141aと、左、右竪枠本体部131a,141aの見込み方向略中央位置から内周方向に突設される中央壁部131b,141bと、左、右竪枠本体部131a,141aの室内側端から内周方向に突設される室内側壁部131c,141cと、左、右竪枠本体部131a,141aの室外側端から内周方向に突設される室外側壁部131d,141dとを有している。
【0021】
中央壁部131b,141bは、内周端に、室内外両側に延びるヒレ状の気密片を有している。ヒレ状の気密片は、内障子20もしくは外障子30の閉鎖時において、内、外障子20,30の戸先框24,33に当接して、内、外障子20,30の閉鎖時における内障子20と右竪枠14との気密、外障子30と左竪枠13との気密を行っている。
【0022】
左竪枠13は、左竪枠本体部131aの内周側であって中央壁部131bの室外側に金属材料からなる補強部材132を有しており、右竪枠14は、右竪枠本体部141aの内周面であって中央壁部141bの室内側に金属材料からなる補強部材142を有している。
【0023】
左竪枠13の補強部材132は、アルミ合金やスチール等の金属材料からなり、中央壁部131bの室外側面に沿う見付壁と左竪枠本体部131aの内周面に沿う見込壁を有する断面略L字状の長尺部材であり、左竪枠13の全長に亘って配置されている。
右竪枠14の補強部材142は、アルミ合金やスチール等の金属材料からなり、中央壁部141bの室内側面に沿う見付壁と右竪枠本体部141aの内周面に沿う見込壁を有する断面略L字状の長尺部材であり、右竪枠14の全長に亘って配置されている。
【0024】
そして、左竪枠13の補強部材132の見付壁の室外側面に、外障子30の戸先框33の戸先端部の室内側面に対向するように熱膨張耐火材fが配置されており、右竪枠14の補強部材142の見付壁の室内側面に、内障子20の戸先框24の戸先端部の室外側面に対向するように熱膨張耐火材fが配置されている。
【0025】
左、右竪枠13,14に配置された補強部材132,142は、それぞれ左、右竪枠13,14を固定する固定手段b,bによって、左、右竪枠本体部131a,141aとともに建物開口部に固定されている。
【0026】
本実施形態のサッシの枠体10を建物開口部に固定するに際しては、例えば、左竪枠13→下枠12→右竪枠14→上枠11の順番で建物開口部の四周に配置、固定することで、枠体10を建物開口部の四周に対して配置することができる。
このとき、建物開口部の四隅において、横枠(上枠11,下枠12)の少なくとも上内レール112b、上外レール112c及び下内レール122b、下外レール122cの一部、もしくは、竪枠(左竪枠13,右竪枠14)の中央壁部131b,141bの一部を切欠くこと等によって、上枠11,下枠12及び左、右竪枠13,14同士が取付けに際して干渉することを防止することができる。
【0027】
(内障子の構成)
内障子20の上框21は、
図4に示すように、樹脂材料からなる上框本体211と、アルミ合金等の金属材料からなる補強芯材212を有している。
【0028】
上框本体211は、パネル体25を保持するためのガラス間口211aと、ガラス間口211aの外周側に形成され上内レール112bに案内される開口部211bを有し、開口部211bを構成する室内、外側壁の上端には上内レール112bに当接もしくは近接する気密片が設けられている。
【0029】
内障子20の上框21は、ガラス間口211a内にスチール等の金属材料からなる補強部材213が配置されており、パネル体25が、補強部材213及び難燃性のグレイジングチャンネル219を介してガラス間口211aに保持されている。また、開口部211b内に補強芯材212が配置されている。
開口部211bに配置された補強芯材212とガラス間口211aに配置された補強部材213とは、開口部211bの底壁を間に挟んで連結手段により連結されている。
【0030】
ガラス間口211a内に配置される補強部材213は、パネル体25の端面に対向する底壁と、パネル体25の縁部の室内外側面に対向する室内外壁を有する断面略U字状をしており、室内外壁の内側面には、熱膨張耐火材が取り付けられている。
【0031】
開口部211b内に配置される補強芯材212は、開口部211bの底部に沿って配置される底壁部212aと、底壁部212aの室内側端部に連続して開口部211bの室内壁に沿って延びる室内壁部212bと、底壁部212aの室外側端部に連続して開口部211bの室外壁に沿って延びる室外壁部212cを有している。
【0032】
補強芯材212の底壁部212aの上面及び下面にそれぞれ熱膨張耐火材が配置されており、室内壁部212b及び室外壁部212cの上端近傍の内側面に熱膨張耐火材f,fが配置されている。
【0033】
内障子20の下框22は、
図4に示すように、樹脂材料からなる下框本体221と、アルミ合金等の金属材料からなり下框本体221に内装される第1補強芯材222及び第2補強芯材223を有している。
【0034】
下框本体221は、内周側のガラス間口221aと、ガラス間口221aの外周に配置される中空部221bと、外周側の開口部221cとを有している。
【0035】
第1補強芯材222は、断面略矩形の中空形状をなしており、下框本体221の中空部221b内に配置されている。第2補強芯材223は、矩形中空部と下方に開口する開口部を備える断面形状をなしており、下框本体221の開口部221cの開口内に配置されている。
【0036】
第1補強芯材222の中空部内には、スチール等からなる断面略U字状の第1補強部材224が外周方向に開口するように配置され、第2補強芯材223の中空部内及び開口部内には、断面略U字状の第2補強部材225及び第3補強部材226がそれぞれ室内方向に開口するように配置されている。
【0037】
ガラス間口221a内には、スチール等の金属材料からなり、パネル体25の端面に対向する底壁と、パネル体25の縁部の室内外側面に対向する室内外壁を有する断面略U字状の第4補強部材227が配置されており、パネル体25が、第4補強部材227及び難燃性のグレイジングチャンネル229を介してガラス間口221aに保持されている。
第4補強部材227と第1補強芯材222及び第1補強部材224は、ガラス間口221aの底壁を挟んで連結手段を介して連結されている。
【0038】
また、第1補強芯材222と第2補強芯材223及び第2補強部材225は、下框本体221の中空部221bの底壁を挟んで連結手段により連結されており、第2補強部材225と第3補強部材226は、第2補強芯材223の中間壁を間に挟んで連結手段により連結されている。
【0039】
下框本体221の開口部221cの所定位置、具体的には見付方向の両端近傍位置には、下内レール122b上を走行する車輪92が配置され、内障子20は、下内レール122b上を走行自在に配置されている。
【0040】
内障子20の右竪框(戸先框)24は、
図5に示すように、樹脂材料からなり、断面略矩形の中空部を有する右竪框本体部241bと、右竪框本体部241bの内周側に形成されパネル体25を保持するためのガラス間口241aを有している。
なお、本実施形態の右竪框24は、アルミ合金等の押出形材の表面を合成樹脂等の断熱材料によってコーティングして形成してもよい。
【0041】
右竪框本体部241bの中空部内には、スチール等の金属材料からなり、見込壁と室内側見付壁と室外側見付壁を有する断面略U字状の第1補強部材242が外周側に向けて開口するように配置されている。
第1補強部材242の見込壁の外周側面(内側面)と室内側見付壁の室外側面(内側面)と室外側見付壁の室内側面(内側面)には、それぞれ熱膨張耐火材fが配置されている。
また、第1補強部材242の見込壁の内周面(外側面)と右縦框本体241との間に、熱膨張耐火材fが配置されている。
【0042】
ガラス間口241a内には、スチール等の金属材料からなりパネル体25の端面に対向する底壁と、パネル体25の縁部の室内外側面に対向する室内外壁を有する断面略U字状の第2補強部材243が配置されており、パネル体25が、第2補強部材243及び難燃性のグレイジングチャンネル249を介してガラス間口241aに保持されている。
【0043】
第1補強部材242と第2補強部材243とは、右竪框本体部241bの内周側の壁部を挟んで連結手段により連結されている。
なお、右竪框本体部241bの中空部内に配置される第1補強部材242は、略U字状の断面形状に限らず、例えば、断面略矩形のホロー構造等でもよい。
【0044】
内障子20の左竪框(召合框)23は、樹脂材料からなり、
図5に示すように、中空部を有する左竪框本体部231bと左竪框本体部231bの室外側内周に形成されるガラス間口231aを有しており、外周側面が室外側に延びて外障子30の召合框34に当接もしくは近接する気密片231cが形成されている。
また、左竪框23の外周面には防火クレセント錠61が取り付けられている。
【0045】
左竪框本体部231bの中空部内には、スチール等の金属材料からなりガラス間口231aの底壁に沿う内周側の見込面部と左竪框本体部231bの室外側面に沿う見付面部と外周側の見込面部と内周側の見込み面の室内側が外周側に屈曲して形成される固定壁を有する第1補強部材232と、第1補強部材232の固定壁に固定される第2補強部材233及び断面略L字形の第4補強部材235が配置されている。
【0046】
一方、ガラス間口231a内には、パネル体25の端面に対向する底壁と、パネル体25の縁部の室内外側面に対向する室内外壁を有する断面略U字状の第3補強部材234が内周側に向けて開口するように配置されており、第3補強部材234の室内外壁には熱膨張耐火材fが配置されている。そして、パネル体25が、第3補強部材234及び難燃性のグレイジングチャンネル239を介してガラス間口231aに保持されている。
【0047】
第1補強部材232と第3補強部材234は、左竪框本体部231bの内周側の壁及び熱膨張耐火材fを間に挟んで連結手段により連結されている。また、第1補強部材232と第2補強部材233及び第4補強部材235の適宜部位に熱膨張耐火材fが配置されている。
なお、内障子20に使用されるパネル体25は、耐火性、耐熱性を有するガラス、例えば、結晶化ガラスにより形成されている。
【0048】
(外障子の構成)
以下に、外障子30について説明するが、外障子30と内障子20とは、上下枠および戸先框について基本的にその構成を同じくするものであるから、ここでは、特に外障子30の召合框34について説明し、内障子20の構成と同様の構成については、その説明を省略する。
【0049】
外障子30の右竪框(召合框)34は、樹脂材料からなり、
図5に示すように、中空部を有する右竪框本体部341bと右竪框本体部341bの内周側に形成されるガラス間口341aを有しており、外周側面が室内側に延びて内障子20の召合框23に当接もしくは近接する気密片341cが形成されている。
また、右竪框(召合框)34の室内側面に防火クレセント受け62が設けられている。
【0050】
右竪框(召合框)34の右竪框本体部341bの中空部内には、スチール等の金属材料からなりガラス間口341aの底壁に沿う見込面部と右竪框本体部341bの室内側面に沿う見付面部と外周側の見込面部を有する第1補強部材342が配置されている。
【0051】
ガラス間口341a内には、パネル体25の端面に対向する底壁と、パネル体25の縁部の室内外側面に対向する室内外壁を有する断面略U字状の第2補強部材343が内周側に向けて開口するように配置されており、第2補強部材343の室内外壁には熱膨張耐火材が配置されている。そして、パネル体35が、第2補強部材343及び難燃性のグレイジングチャンネル349を介してガラス間口341aに保持されている。
【0052】
第1補強部材342と第2補強部材343は、右竪框本体部341bの内周側の壁及び熱膨張耐火材を間に挟んで連結手段により連結されている。また、第1補強部材342の見付面部の室外側面(内側面)には、火災時の加熱により膨張する熱膨張耐火材fが配置されている。
【0053】
本実施形態の内窓の框材の防火構造について、外障子30の上框31の例を用いて、さらに詳細に説明する。
外障子30の上框31は、
図6に示すように、樹脂材料からなる上框本体311と、アルミ合金等の金属材料からなる補強芯材312を有している。
【0054】
上框本体311は、パネル体25を保持するガラス間口311aと、ガラス間口311aの外周側に形成され上外レール112cに案内される開口部311bを有している。
【0055】
ガラス間口311aは、上框本体311の室内側内周に形成された中空部からなる内パネル間口壁311cと、室外側内周に形成された中空部からなる外パネル間口壁311dによって構成されており、ガラス間口311aの内周側に補強部材313が配置されている。
【0056】
ガラス間口311aの内周側に配置される補強部材313は、ガラス間口311aの底面に沿う底壁313aと、底壁313aの室内側に連続する室内側壁313bと、底壁313aの室外側に連続する室外側壁313cを有する断面略U字状をしており、パネル体が、補強部材313及び難燃性のグレイジングチャンネル319を介してガラス間口311aに保持される。
【0057】
そして、補強部材313の室内側壁313bの室内側面(外側面)及び室外側面(内側面)、すなわち両面に熱膨張耐火材f6,f8が配置されているとともに、同室外側壁313cの室外側面(外側面)及び室内側面(内側面)、すなわち両面に熱膨張耐火材f7,f9が配置されている。
また、補強部材313の底壁313aの内周側面(内側面)に、熱膨張耐火材f10が配置されている。
【0058】
開口部311bは、上框本体311の室内側外周から上方に延びる室内側壁部311gと、室外側外周から上方に延びる室外側壁部311hによって構成されており、開口部311bの内側に補強芯材312が配置されている。
【0059】
開口部311bの内側に配置される補強芯材312は、開口部311bの底部に沿って配置される底壁部312aと、底壁部312aの室内側端に連続する室内壁部312bと、底壁部312aの室外側端に連続する室外壁部312cを有しており、全体として外周方向の開口が深く形成された断面略H字状の部材として形成されている。
【0060】
開口部311bを構成する室内側壁部311gと室外側壁部311hは、外周端部にそれぞれ係止部311i,311jを有しており、開口部311bの内側に配置された補強芯材312の室内壁部312bの上端及び室外壁部312cの上端が係止されている。
【0061】
補強芯材312の底壁部312aの上面に、熱膨張耐火材f1が配置されるとともに、底壁部312aの下面室内側に熱膨張耐火材f4が配置され、下面室外側に熱膨張耐火材f5が配置されている。さらに、補強芯材312の室内壁部312bの上端内側面に熱膨張耐火材f2が配置されるとともに、室外壁部312cの上端内側面に熱膨張耐火材f3が配置されている。
【0062】
上框本体311の開口部311bに配置された補強芯材312とガラス間口311aに配置された補強部材313は、上框本体311の開口部311bの底壁を間にして連結手段によって連結されている。
【0063】
そして、以上のように構成された上框31は、火災時には、
図7に示すように、補強芯材312の底壁部312aの上面に配置された熱膨張耐火材f1と室内壁部312b及び室外壁部312cの上端内側面に配置された熱膨張耐火材f2,f3が例えば領域S1に示すように膨張して、上外レール112cとの間の隙間を塞ぐことができる。
【0064】
また、補強芯材312の底壁部312aの下面室内側に配置された熱膨張耐火材f4と補強部材313の室内側壁313bの室内側面(外側面)に配置された熱膨張耐火材f6が例えば領域S2に示すように膨張して、樹脂製の上框31が溶融したときに生じる補強芯材312と補強部材313の間を室内側から塞ぐことができる。
【0065】
また、補強芯材312の底壁部312aの下面室外側に配置された熱膨張耐火材f5と補強部材313の室外側壁313cの室外側面(外側面)に配置された熱膨張耐火材f7が例えば領域S3に示すように膨張して、樹脂製の上框31が溶融したときに生じる補強芯材312と補強部材313の間を室外側から塞ぐことができる。
【0066】
さらに、補強部材313の室内側壁313bの室外側面(内側面)及び室外側壁313cの室内側面(内側面)に配置された熱膨張耐火材f8,f9が例えば領域S4に示すように膨張して、補強部材313とガラス等パネルの間を塞ぐことができる。このとき、補強部材313の底壁313aの内側面に熱膨張耐火材f10を配置することで、さらに確実に補強部材313とガラス等パネルの間を塞ぐことができる。
【0067】
以上のように、本実施形態の内窓は、框材のパネル間口内に断面略U字状の補強部材を配置するとともに、補強部材の室内側壁及び室外側壁の内側面及び外側面に熱膨張耐火材を設けているので、室内外何れの側からの火災に対しても、補強部材の外側面に配置した熱膨張耐火材が素早く膨張して樹脂部分が溶融したことによって生じる隙間を塞ぐことができ、煙や火炎の室内外の連通を防止することができる。
【0068】
また、補強部材の外側面に配置した熱膨張耐火材が素早く膨張することで、ガラス間口に内に配置した補強部材を火炎や熱の伝達から保護し、補強部材の温度上昇を防ぎ、障子の形状をより維持することできる。
【0069】
さらに、框材の開口部内に配置された補強芯材の底壁部の内周面(上框においては下面)の室内側及び室外側に熱膨張耐火材を配置することで、ガラス間口の補強部材に設けた熱膨張耐火材と一体となって膨張し、樹脂製の框材が溶融することによって生じる室内外の隙間を外周側と内周側から素早く塞ぐことができ、防火性能をより高めることができる。
【0070】
すなわち、ガラス間口内に配置される補強部材は、補強部材と補強芯材との間を閉塞するとともに補強部材自身を火炎から保護する作用を有する外側の熱膨張耐火材と、框とパネルとの間を閉塞する作用を有する内側の熱膨張耐火材を共に備えることで、熱膨張耐火材に保護された状態でパネル体を保持することができるので、障子に隙間が生じることを防ぎ、高い防火性を発揮することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、火災時により熱が集中しやすい上框を用いて説明しているが、上記框材の補強部材及び熱膨張耐火材の構成は、内障子もしくは外障子のいずれの框材に採用しても良く、また全ての框に適用してもよい。
【0072】
ただし、本実施形態のガラス間口の構成は、必ずしも全ての框に適用する必要はなく、特に、火災時に隙間が生じやすい上框のみに適用してもよく、比較的強度が高い框(下框等)には適用しなくてもよい。
【0073】
なお、本実施形態は、室外側に既設のサッシが配置された建物開口部の室内側に配置される内窓として説明されているが、単独で建物開口部に配置されるサッシに対して採用することもできる。
【0074】
さらに、本発明において、内障子及び外障子の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、如何なる障子も用いることができる。
また、障子の框材を補強する補強部材や補強芯材の断面形状は、実施形態に示す断面形状に限定されるものではなく、補強部材や補強芯材に配置される熱膨張耐火材の位置も限定されるものではない。
【0075】
なお、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10 :枠体
20 :内障子
30 :外障子
31 :上框
311 :上框本体
311a :ガラス間口
313 :補強部材
313a :底壁
313b :室内側壁
313c :室外側壁
f1-10:熱膨張耐火材