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特許7530163二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20240731BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240731BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240731BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240731BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/14 210
B01D53/78
C01B32/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019140056
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020193
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96,53/14-53/18
C01B32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる二酸化炭素回収部と、
前記二酸化炭素回収部から排出される前記燃焼排ガスを、噴射器で噴射した第1洗浄液のミストで洗浄して、前記燃焼排ガスに同伴する前記アミンを回収する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部から排出される前記燃焼排ガスに同伴する前記第1洗浄液のミストを回収する洗浄液ミスト回収部と、
前記洗浄液ミスト回収部から排出される前記燃焼排ガスを、洗浄液分散器で分散させて落下させる第2洗浄液で洗浄して、前記燃焼排ガスに同伴する前記アミンを回収する第2洗浄部と、を備え、
前記第1洗浄部は、前記噴射器の下方に設けられた、前記噴射器から噴射した前記第1洗浄液のミストを受け取る受け部と、前記噴射器と前記受け部との間に設けられた、前記噴射器から噴射された前記第1洗浄液のミストが自由落下しながら前記燃焼排ガスと気液接触する洗浄回収空間と、を有し、
前記第2洗浄部は、前記洗浄液分散器から分散させた前記第2洗浄液を前記燃焼排ガスと気液接触させる構造物を含む洗浄回収部を有し、
前記第1洗浄部の前記噴射器に供給される前記第1洗浄液の圧力は、前記第2洗浄部の前記洗浄液分散器に供給される前記第2洗浄液の圧力よりも高い、二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記洗浄液ミスト回収部から排出される前記燃焼排ガスに同伴する前記アミンのミストを捕捉する洗浄部出口デミスターを更に備えた、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記洗浄液ミスト回収部の上下方向長さは、前記二酸化炭素回収部の上下方向長さよりも短い、請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記洗浄液ミスト回収部は、ミスト回収デミスターを含み、
前記ミスト回収デミスターは、前記洗浄部出口デミスターよりも疎に形成されている、請求項2または3に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記噴射器から噴射される前記第1洗浄液の単位面積・単位時間当たりの流量は、前記洗浄液分散器から分散される前記第2洗浄液の単位面積・単位時間当たりの流量よりも大きい、請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記第2洗浄液の一部を前記第1洗浄液に混入させるバイパスラインを更に備えた、請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記二酸化炭素回収部および前記第1洗浄部はそれぞれ円筒状に形成され、
前記第1洗浄部の直径は、前記二酸化炭素回収部の直径よりも大きい、請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記二酸化炭素回収部を収容した吸収塔と、
前記第1洗浄部および前記洗浄液ミスト回収部を収容した洗浄塔と、を備え、
前記洗浄塔内において、前記第1洗浄部の下方に、前記洗浄塔内に導入された前記燃焼排ガスの流れを整流する整流部が設けられている。請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
二酸化炭素回収部において、燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる工程と、
前記二酸化炭素回収部から排出された前記燃焼排ガスを、第1洗浄部において噴射器から噴射された第1洗浄液のミストで洗浄して、前記燃焼排ガスに同伴する前記アミンを回収する工程と、
前記第1洗浄部から排出された前記燃焼排ガスに同伴する前記第1洗浄液のミストを、洗浄液ミスト回収部において回収する工程と、
前記洗浄液ミスト回収部から排出された前記燃焼排ガスを、第2洗浄部において洗浄液分散器で分散させて落下させる第2洗浄液で洗浄して、前記燃焼排ガスに同伴する前記アミンを回収する工程と、を備え、
前記第1洗浄部は、前記噴射器の下方に設けられた、前記噴射器から噴射した前記第1洗浄液のミストを受け取る受け部と、前記噴射器と前記受け部との間に設けられた、前記噴射器から噴射された前記第1洗浄液のミストが自由落下しながら前記燃焼排ガスと気液接触する洗浄回収空間と、を有し、
前記第2洗浄部は、前記洗浄液分散器から分散させた前記第2洗浄液を前記燃焼排ガスと気液接触させる構造物を含む洗浄回収部を有し、
前記第1洗浄部の前記噴射器に供給される前記第1洗浄液の圧力は、前記第2洗浄部の前記洗浄液分散器に供給される前記第2洗浄液の圧力よりも高い、二酸化炭素回収システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因の一つとして、化石燃料を燃焼させる際に生成される燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素の温室効果が指摘されている。
【0003】
このような状況の下、多量の化石燃料を使用する火力発電所等において、化石燃料を燃焼して生成された燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を大気中へ放出することを抑制するための二酸化炭素回収システムが研究されている。二酸化炭素回収システムでは、燃焼排ガスをアミン系吸収液と接触させ、燃焼排ガスから二酸化炭素を分離して回収する。
【0004】
より具体的には、二酸化炭素回収システムは、燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を、アミン系吸収液に吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)が吸収塔から供給され、供給されたリッチ液を加熱してリッチ液から二酸化炭素を放出させると共に吸収液を再生する再生塔と、を備えている。再生塔には、熱源を供給するリボイラーが連結されており、再生塔内でリッチ液が加熱される。再生塔において再生された吸収液(リーン液)は吸収塔に供給され、このシステム内で吸収液は循環するように構成されている。
【0005】
しかしながら、このような二酸化炭素回収システムでは、吸収塔においてアミン系吸収液に二酸化炭素を吸収させた燃焼排ガス(脱炭酸燃焼排ガス)が吸収塔から大気へ放出される際に、アミンを同伴するという課題があった。すなわち、火力発電所などでは多量の燃焼排ガスが放出されることから、脱炭酸燃焼排ガスに同伴して多量のアミノ基含有化合物(アミン)が放出される可能性がある。このため、火力発電所において二酸化炭素回収システムを利用する際には、吸収塔において脱炭酸燃焼排ガスに同伴して大気中に放出されるアミンを効果的に低減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-323339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、アミンの大気中への放出量を低減することができる二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態による二酸化炭素回収システムは、燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる二酸化炭素回収部と、二酸化炭素回収部から排出される燃焼排ガスを、噴射器で噴射した第1洗浄液のミストで洗浄して、燃焼排ガスに同伴するアミンを回収する第1洗浄部と、を備えている。また、二酸化炭素回収システムは、第1洗浄部から排出される燃焼排ガスに同伴する第1洗浄液のミストを回収する洗浄液ミスト回収部を備えている。
【0009】
実施の形態による二酸化炭素回収システムの運転方法は、二酸化炭素回収部において、燃焼排ガスに含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる工程と、二酸化炭素回収部から排出された燃焼排ガスを、第1洗浄部において噴射器から噴射された第1洗浄液のミストで洗浄して、燃焼排ガスに同伴する前記アミンを回収する工程と、を備えている。また、二酸化炭素回収システムの運転方法は、第1洗浄部から排出された燃焼排ガスに同伴する第1洗浄液のミストを回収する工程を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態における二酸化炭素回収システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、本発明の第2の実施の形態における二酸化炭素回収システムの全体構成を示す図である。
図3図3は、本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素回収システムの全体構成を示す図である。
図4図4は、図3に示す二酸化炭素回収システムにおいて、洗浄液の流量とミスト状アミンの除去率との関係を示すグラフである。
図5図5は、本発明の第4の実施の形態における二酸化炭素回収システムの全体構成を示す図である。
図6図6は、本発明の第5の実施の形態における二酸化炭素回収システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
まず、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0014】
図1に示すように、二酸化炭素回収システム1は、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる吸収塔20と、吸収塔20から供給される二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を放出させて吸収液を再生する再生塔30と、を備えている。吸収塔20において二酸化炭素を吸収液に吸収させた燃焼排ガス2は、脱炭酸燃焼排ガス3(後述)として吸収塔20から排出される。また、再生塔30から二酸化炭素が蒸気と共に二酸化炭素含有ガス8(二酸化炭素含有蒸気)として排出される。なお、吸収塔20に供給される燃焼排ガス2は、特に限定されるものではないが、例えば火力発電所のボイラー(図示せず)の燃焼排ガスや、プロセス排ガス等であってもよく、必要に応じて冷却処理後に吸収塔20に供給されるようにしてもよい。
【0015】
吸収液は、吸収塔20と再生塔30とを循環し、吸収塔20において二酸化炭素を吸収してリッチ液4となり、再生塔30において二酸化炭素を放出してリーン液5となる。吸収液には、特に限られるものではないが、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのようなアルコール性水酸基含有1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのようなアルコール性水酸基含有2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのようなアルコール性水酸基含有3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類等及びこれらの混合物を用いることができる。これらのアミン化合物は通常10~70重量%の水溶液として使用される。また、吸収液には二酸化炭素吸収促進剤あるいは腐食防止剤、更には、その他の媒体としてメタノール、ポリエチレングリコール、スルフォラン等を加えることができる。
【0016】
吸収塔20は、二酸化炭素回収部20aと、二酸化炭素回収部20aの上方に設けられた液分散器20bと、二酸化炭素回収部20aおよび液分散器20bを収容する吸収塔容器20cと、を有している。
【0017】
二酸化炭素回収部20aは、向流型気液接触装置として構成されている。一例として、二酸化炭素回収部20aは、二酸化炭素回収充填層20dを含んでいる。二酸化炭素回収充填層20dは、気液接触面積を増やすために内部に充填された充填物や粒子等の内部構造物で構成されている。この内部構造物の表面に再生塔30から供給されるリーン液5を流下させながら、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素と気液接触させ、この二酸化炭素をリーン液5に吸収させる。これにより、燃焼排ガス2から二酸化炭素が回収(または除去)される。
【0018】
液分散器20bは、リーン液5を二酸化炭素回収部20aに向けて分散させて落下させるように構成されている。この液分散器20bから、二酸化炭素回収充填層20dの内部構造物の表面にリーン液5が供給される。液分散器20bに供給されるリーン液5の圧力は吸収塔20内の圧力に対してそれほど高くない圧力であり、液分散器20bは、実質的には強制的ではなく主に重力の作用によってリーン液5を二酸化炭素回収充填層20dに落下させる。
【0019】
吸収塔容器20cには、二酸化炭素回収充填層20dおよび液分散器20bとともに、後述する第1洗浄部21、洗浄液ミスト回収部60、および各デミスター81、82が収容されている。吸収塔容器20cは、吸収塔容器20cの下部から燃焼排ガス2を受け入れ、燃焼排ガス2を吸収塔容器20cの頂部から、後述する脱炭酸燃焼排ガス3として排出するように構成されている。
【0020】
吸収塔20の下部には、上述したボイラーなどの二酸化炭素回収システム1の外部から排出された二酸化炭素を含有する燃焼排ガス2が、送風機(図示せず)によって供給される。供給された燃焼排ガス2は、吸収塔20内を二酸化炭素回収部20aの二酸化炭素回収充填層20dに向かって上昇する。一方、再生塔30からのリーン液5が液分散器20bに供給されて落下し、二酸化炭素回収充填層20dに供給されてその内部構造物の表面を流下する。二酸化炭素回収充填層20dにおいて、燃焼排ガス2とリーン液5とが気液接触して、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4が生成される。
【0021】
生成されたリッチ液4は、吸収塔容器20cの下部に一端貯留され、当該下部から排出される。リーン液5と気液接触した燃焼排ガス2は、二酸化炭素が除去されて、脱炭酸燃焼排ガス3として二酸化炭素回収充填層20dから吸収塔20内を更に上昇する。
【0022】
吸収塔20と再生塔30との間には熱交換器31が設けられている。吸収塔20と熱交換器31との間にはリッチ液用ポンプ32が設けられており、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、リッチ液用ポンプ32によって熱交換器31を介して再生塔30に供給される。熱交換器31は、吸収塔20から再生塔30に供給されるリッチ液4を、再生塔30から吸収塔20に供給されるリーン液5と熱交換させる。このことにより、リーン液5が熱源となって、リッチ液4が所望の温度まで加熱される。言い換えると、リッチ液4が冷熱源となって、リーン液5が所望の温度まで冷却される。
【0023】
再生塔30は、アミン再生部30aと、アミン再生部30aの上方に設けられた液分散器30bと、アミン再生部30aおよび液分散器30bを収容する再生塔容器30cと、を有している。
【0024】
アミン再生部30aは、向流型気液接触装置として構成されている。一例として、アミン再生部30aは、アミン再生充填層30dを含んでいる。アミン再生充填層30dは、気液接触面積を増やすために内部に充填された充填物や粒子等の内部構造物で構成されている。この内部構造物の表面に吸収塔20から供給されるリッチ液4を流下させながら、後述する蒸気7と気液接触させ、リッチ液4から二酸化炭素を放出させる。これにより、リッチ液4から二酸化炭素が回収(または除去)される。
【0025】
液分散器30bは、リッチ液4をアミン再生部30aに向けて分散させて落下させるように構成されている。アミン再生充填層30dの内部構造物の表面にリッチ液4が供給される。液分散器30bに供給されるリッチ液4の圧力は再生塔30内の圧力に対してそれほど高くない圧力であり、液分散器30bは、実質的には強制的ではなく主に重力の作用によってリッチ液4をアミン再生部30aに落下させる。
【0026】
再生塔容器30cには、アミン再生充填層30dおよび液分散器30bとともに、後述する再生塔洗浄部37、および各デミスター86、87が収容されている。再生塔容器30cは、リッチ液4から放出された二酸化炭素含有ガス8を、再生塔容器30cの頂部から排出するように構成されている。
【0027】
再生塔30には、リボイラー33が連結されている。このリボイラー33は、加熱媒体6によって、再生塔30から供給されるリーン液5を加熱して蒸気7を発生させ、発生した蒸気7を再生塔30に供給する。より具体的には、リボイラー33には、再生塔30の下部から排出されるリーン液5の一部が供給されるとともに、例えばタービン(図示せず)などの外部から加熱媒体6としての高温の蒸気が供給される。リボイラー33に供給されたリーン液5は、加熱媒体6と熱交換することによって加熱されて、リーン液5から蒸気7が生成される。生成された蒸気7は再生塔30の下部に供給され、再生塔30内のリーン液5を加熱する。なお、リボイラー33に供給される加熱媒体6は、タービンからの高温の蒸気に限られることはない。
【0028】
再生塔30の下部には、リボイラー33から蒸気7が供給され、再生塔30内をアミン再生部30aのアミン再生充填層30dに向って上昇する。一方、吸収塔20からのリッチ液4は、液分散器30bに供給されて落下し、アミン再生充填層30dに供給されてその内部構造物の表面を流下する。アミン再生充填層30dにおいて、リッチ液4と蒸気7とが気液接触して、リッチ液4から二酸化炭素ガスを放出してリーン液5が生成される。このようにして再生塔30において吸収液が再生される。
【0029】
生成されたリーン液5は、再生塔30の下部から排出され、リッチ液4と気液接触した蒸気7は、二酸化炭素を含有して、二酸化炭素含有ガス8として再生塔30の頂部から排出される。排出される二酸化炭素含有ガス8には蒸気も含有される。
【0030】
再生塔30と熱交換器31との間には、リーン液用ポンプ34が設けられている。再生塔30から排出されたリーン液5は、リーン液用ポンプ34によって上述した熱交換器31を介して吸収塔20に供給される。熱交換器31は、上述したように、再生塔30から吸収塔20に供給されるリーン液5を、吸収塔20から再生塔30に供給されるリッチ液4と熱交換させて冷却する。また、熱交換器31と吸収塔20との間には、リーン液用冷却器35が設けられている。リーン液用冷却器35は、外部から冷却水(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)等の冷却媒体が供給され、熱交換器31において冷却されたリーン液5を所望の温度まで更に冷却する。
【0031】
リーン液用冷却器35において冷却されたリーン液5は、吸収塔20の液分散器20bに供給されて落下し、二酸化炭素回収部20aの二酸化炭素回収充填層20dに供給されてその内部構造物の表面を流下する。二酸化炭素回収充填層20dにおいて、リーン液5は燃焼排ガス2と気液接触して燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4となる。このようにして、二酸化炭素回収システム1では、吸収液がリーン液5となる状態とリッチ液4となる状態とを繰り返しながら循環するようになっている。
【0032】
図1に示す二酸化炭素回収システム1は、再生塔30の頂部から排出された二酸化炭素含有ガス8を冷却して蒸気を凝縮して凝縮水9を生成するガス用冷却器40と、ガス用冷却器40により生成された凝縮水9を二酸化炭素含有ガス8から分離する気液分離器41と、を更に備えている。このようにして、二酸化炭素含有ガス8に含有される水分が低減され、二酸化炭素含有ガス8が、二酸化炭素ガス10として気液分離器41から排出される。排出された二酸化炭素ガス10は、図示しない設備に供給されて貯蔵される。一方、気液分離器41において分離された凝縮水9は、凝縮水用ポンプ42によって再生塔30に供給され、吸収液に混入される。なお、ガス用冷却器40には、外部から、二酸化炭素含有ガス8を冷却するための冷却媒体(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)が供給される。
【0033】
ところで、吸収塔20内には、第1洗浄部21と、洗浄液ミスト回収部60と、が収容されている、このうち第1洗浄部21は、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3を第1洗浄液11(第1洗浄水)で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する吸収液成分であるアミンを回収する。第1洗浄部21は、液分散器20bの上方に設けられている。
【0034】
第1洗浄部21は、洗浄回収空間21aと、洗浄回収空間21aの上方に設けられた噴射器21bと、洗浄回収空間21aの下方に設けられた第1受け部21cと、を有している。
【0035】
洗浄回収空間21aは、噴射器21bと第1受け部21cとの間に設けられた空間である。この洗浄回収空間21aには、第1洗浄液11が噴射器21bから噴射される。噴射された第1洗浄液11は、洗浄回収空間21aにおいて、ミストの状態で自由落下(すなわち、空間内の構造物等の表面に接触することがないまま落下)しながら、上昇する脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する。これにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンが回収される。第1洗浄部21では、ミスト状アミンを効果的に回収することができるが、ガス状アミンも効果的に回収することができる。
【0036】
本実施の形態では、上述したように、噴射器21bと第1受け部21cとの間には洗浄回収空間21aが形成されており、洗浄回収空間21aには、第1洗浄液11が表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と接触させるための充填層や棚段等の構造物は設けられていない。すなわち、噴射器21bと第1受け部21cとの間には、第1洗浄液11が表面を流下するような構造物等は設けられておらず、噴射器21bから第1受け部21cにわたって洗浄回収空間21aが形成されている。このことにより、洗浄回収空間21aは、第1洗浄液11が自由落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触するように構成されている。噴射器21bから噴射された第1洗浄液11のミストは、脱炭酸燃焼排ガス3が上昇する洗浄回収空間21aを落下して、第1受け部21cに直接的に達する。すなわち、洗浄回収空間21aを通過した第1洗浄液11は、直接的に第1受け部21cにより受け取られる。落下している間、第1洗浄液11が脱炭酸燃焼排ガス3と接触し、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが第1洗浄液11に衝突して回収される。
【0037】
噴射器21bは、第1洗浄液11を洗浄回収空間21aに向けて噴射して落下させる。噴射器21bは、複数のスプレーノズル孔(図示せず)を含み、後述する第1循環ポンプ51によって圧力が高められて供給された第1洗浄液11をスプレーノズル孔から噴射(スプレー)する。これにより、第1洗浄液11は、ミスト状となって噴射器21bから高速噴射され、洗浄回収空間21aに均等に行き渡りながら自由落下する。すなわち、噴射器21bは、第1洗浄液11に鉛直方向の速度成分として第1鉛直方向初速度を与えて洗浄回収空間21a内を鉛直方向の速度成分を持たせて強制的に自由落下させる(噴射する)。
【0038】
第1受け部21cは、洗浄回収空間21aを落下した第1洗浄液11を受け取って貯留するとともに、二酸化炭素回収部20aから排出されて上昇する脱炭酸燃焼排ガス3が通過可能に構成されている。すなわち、第1受け部21cは、第1洗浄液11を受け取って貯留する受け部本体と、受け部本体の間に設けられた、脱炭酸燃焼排ガス3が通過する開口部と、開口部を上方から覆い、第1洗浄液11が開口部を通過することを抑制するためのカバーと、によって構成されている。
【0039】
第1洗浄部21には、第1洗浄液11を循環させる第1循環ライン50が連結されている。すなわち、第1循環ライン50には、第1循環ポンプ51が設けられており、第1受け部21cに貯留されている第1洗浄液11を抜き出して噴射器21bに供給する。このようにして、第1洗浄液11が循環するようになっている。
【0040】
洗浄液ミスト回収部60は、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する第1洗浄液11のミストを回収する。洗浄液ミスト回収部60は、噴射器21bの上方であって、後述する洗浄部出口デミスター82の下方に設けられている。
【0041】
洗浄液ミスト回収部60は、向流型気液接触装置として構成されていてもよい。一例として、洗浄液ミスト回収部60は、ミスト回収充填層60aを含んでいる。ミスト回収充填層60aは、気液接触面積を増やすために内部に充填された充填物や粒子等の内部構造物で構成されている。この内部構造物の表面に、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する第1洗浄液11のミストを接触させ、付着させる。これにより、脱炭酸燃焼排ガス3から第1洗浄液11のミストが回収(または除去)される。
【0042】
ところで、二酸化炭素回収部20aの上方には、回収部出口デミスター81が設けられている。回収部出口デミスター81は、二酸化炭素回収部20aと第1洗浄部21との間(より詳細には、液分散器20bと第1受け部21cとの間)に設けられている。このことにより、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、回収部出口デミスター81を通過して上昇する。回収部出口デミスター81は、通過する脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミストを捕捉する。回収部出口デミスター81は、ミスト状アミンを効果的に捕捉することができる。
【0043】
洗浄液ミスト回収部60の上方には、洗浄部出口デミスター82が設けられている。洗浄部出口デミスター82は、洗浄液ミスト回収部60の上方(より詳細には、洗浄液ミスト回収部60と吸収塔容器20cの頂部との間)に設けられている。このことにより、洗浄液ミスト回収部60から排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、洗浄部出口デミスター82を通過して上昇する。洗浄部出口デミスター82は、通過する脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミストを捕捉する。洗浄部出口デミスター82は、ミスト状アミンと第1洗浄液11のミストを効果的に捕捉することができるが、付着した第1洗浄液11によってガス状アミンも捕捉することができる。
【0044】
本実施の形態においては、洗浄液ミスト回収部60のミスト回収充填層60aは、後述する洗浄部出口デミスター82よりも通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失が低減可能に構成されていてもよい。例えば、ミスト回収充填層60aの空間率(または比表面積)は、洗浄部出口デミスター82の空間率よりも大きくなっていてもよい。すなわち、ミスト回収充填層60aは、後述するように、比較的粒径が大きい第1洗浄液11のミストを捕捉することを目的としている。一方、洗浄部出口デミスター82は、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンを捕捉することを目的としているが、ミスト状アミンの粒径は比較的小さい。このことから、圧力損失の低減を図るために、ミスト回収充填層60aの空間率は洗浄部出口デミスター82の空間率よりも大きくなっていてもよく、第1洗浄液11のミストを効果的に捕捉することができる。この場合、ミスト回収充填層60aの上下方向長さL1は、洗浄部出口デミスター82の上下方向長さL2よりも長くなっていてもよい。このことにより、第1洗浄液11のミストを内部構造物に付着させるための面積を確保することができる。
【0045】
一方、ミスト回収充填層60aの上下方向長さL1は、二酸化炭素回収部20aの二酸化炭素回収充填層20dの上下方向長さL3よりも短くなっていてもよい。この場合、ミスト回収充填層60aの空間率(または比表面積)は、二酸化炭素回収充填層20dの空間率(または比表面積)と等しくてもよい。ここで、二酸化炭素回収充填層20dは、燃焼排ガス2に同伴する二酸化炭素をリーン液5に吸収させることを目的としている。このため、気液接触面積を確保するために、二酸化炭素回収充填層20dの上下方向長さL3は長くなっている。例えば、燃焼排ガス2に同伴する二酸化炭素の90%程度を回収するためには、二酸化炭素回収充填層20dの上下方向長さL3は長くなる。一方、洗浄液ミスト回収部60のミスト回収充填層60aは、第1洗浄液11のミストを内部構造物に物理的に衝突させて付着させることを目的としており、二酸化炭素回収充填層20dの目的とは異なる。このため、ミスト回収充填層60aの上下方向長さL1は、二酸化炭素回収充填層20dとは上下方向長さL3が異なり、二酸化炭素回収充填層20dの上下方向長さL3より短くてもよい。
【0046】
例えば、二酸化炭素回収充填層20dの上下方向長さL3は、10m~30mである。また、洗浄部出口デミスター82の上下方向長さL2は、一般的に10cm~30cmである。このため、ミスト回収充填層60aの上下方向長さL1は、例えば、50cm~200cmとしてもよく、100cm程度としてもよい。
【0047】
また、図1に示すように、再生塔30は、上述したアミン再生部30aから排出された二酸化炭素含有ガス8を、凝縮水9で洗浄して、二酸化炭素含有ガス8に同伴するアミンを回収する再生塔洗浄部37を有している。再生塔洗浄部37は、アミン再生部30aの上方に設けられている。
【0048】
再生塔洗浄部37は、再生塔回収部37aと、再生塔回収部37aの上方に設けられた液分散器37bと、を有している。
【0049】
再生塔回収部37aは、向流型気液接触装置として構成されている。一例として、再生塔回収部37aは、再生塔回収充填層37dを含んでいる。再生塔回収充填層37dは、気液接触面積を増やすために内部に充填された充填物や粒子等の内部構造物で構成されている。この内部構造物の表面に凝縮水9を流下させながら二酸化炭素含有ガス8と気液接触させ、二酸化炭素含有ガス8からアミンを回収(または除去)する。
【0050】
液分散器37bは、凝縮水9を再生塔回収部37aに向けて分散させて落下させるように構成されている。再生塔回収充填層37dの内部構造物の表面に凝縮水9が供給される。液分散器37bに供給される凝縮水9の圧力は再生塔30内の圧力に対してそれほど高くない圧力であり、液分散器37bは、実質的には強制的ではなく主に重力の作用によって凝縮水9を再生塔回収充填層37dに落下させる。
【0051】
ところで、再生塔30のアミン再生部30aの上方には、第1再生塔デミスター86が設けられている。第1再生塔デミスター86は、アミン再生部30aと再生塔洗浄部37との間(より詳細には、液分散器30bと再生塔回収部37aとの間)に設けられている。このことにより、アミン再生部30aから排出された二酸化炭素含有ガス8は、第1再生塔デミスター86を通過して上昇する。第1再生塔デミスター86は、通過する二酸化炭素含有ガス8に同伴するミストを捕捉する。第1再生塔デミスター86は、ミスト状アミンを効果的に捕捉することができる。
【0052】
再生塔洗浄部37の上方には、第2再生塔デミスター87が設けられている。第2再生塔デミスター87は、再生塔洗浄部37の液分散器37bの上方(より詳細には、液分散器37bと再生塔容器30cの頂部との間)に設けられている。このことにより、再生塔洗浄部37から排出された二酸化炭素含有ガス8は、第2再生塔デミスター87を通過して上昇する。第2再生塔デミスター87は、通過する二酸化炭素含有ガス8に同伴するミストを捕捉する。第2再生塔デミスター87は、ミスト状アミンと凝縮水9のミストを効果的に捕捉することができるが、付着した凝縮水9によってガス状アミンも捕捉することができる。
【0053】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0054】
図1に示す二酸化炭素回収システムの運転中、吸収塔20の二酸化炭素回収部20aの二酸化炭素回収充填層20dにおいて、リーン液用冷却器35から供給されたリーン液5は液分散器20bから分散落下して、二酸化炭素回収充填層20dの内部構造物の表面を流下しながら燃焼排ガス2と気液接触する。燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素は、リーン液5に吸収される。燃焼排ガス2は、脱炭酸燃焼排ガス3として二酸化炭素回収部20aから排出される。排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20c内を上昇し、回収部出口デミスター81を通過する。この際、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンなどが、回収部出口デミスター81で捕捉される。
【0055】
回収部出口デミスター81を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部21の第1受け部21cを通過して洗浄回収空間21aに達する。
【0056】
一方、第1受け部21cに貯留された第1洗浄液11は、第1循環ポンプ51によって第1受け部21cから抜き出され、第1循環ライン50を通って噴射器21bに供給される。噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力は、第1循環ポンプ51によって高められる。
【0057】
第1洗浄液11は、噴射器21bのスプレーノズル孔から噴射されて洗浄回収空間21a内を落下し、第1受け部21cに直接的に達する。この間、第1洗浄液11はミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が第1洗浄液11で洗浄される。このことにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが第1洗浄液11に効果的に回収される。第1受け部21cに達した第1洗浄液11は、第1受け部21cに受け取られて貯留される。
【0058】
ここで、二酸化炭素回収システム1において、脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄する際の一般的な課題について説明する。
【0059】
一般に、二酸化炭素回収システム1において、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収するために、表面に洗浄液を流下させる充填層や棚段が設けられる場合がある。この場合、脱炭酸燃焼排ガス3と洗浄液との接触面積が増加し、効果的にアミンを回収することが可能になる。
【0060】
脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンは、ガス状アミンとミスト状アミンとに大別される。このうちガス状アミンは、洗浄液と充填層等を用いた洗浄で回収されやすい。一方、ミスト状アミンは、洗浄液と充填層等を用いた洗浄では回収されにくい。ミスト状アミンは、デミスターで捕捉されやすいが、ミストの粒径が5μm以下になるとデミスターでも捕捉されにくくなる。粒径が5μm以下のミスト状アミンの除去率を向上させるために、高密度のデミスターを用いることが考えられるが、高密度のデミスターは、通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を高めるおそれがある。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給する送風機の動力の上昇を招き、運転コストが高くなってしまう。また、高密度のデミスターを用いた場合には、デミスターの目詰まりが生じるという問題も考えられる。
【0061】
そこで、本実施の形態では、洗浄液をミスト化することで、ミスト状アミンの除去率(回収効率)の向上を図っている。すなわち、本実施の形態では、第1洗浄部21の噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力が高められ、噴射器21bのスプレーノズル孔から第1洗浄液11が、(噴射直後は特に)高速で噴射される。このことにより、第1洗浄液11のミストが、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンに物理的に衝突し、ミスト状アミンが第1洗浄液11のミストに捕捉されて回収される。ミスト状アミンを回収した第1洗浄液11は第1受け部21cに落下する。このようにして、洗浄液と充填層等を用いた洗浄では捕捉されにくいミスト状アミンが、第1洗浄液11に回収され、脱炭酸燃焼排ガス3が効果的に洗浄される。また、上述したような高密度のデミスターを用いたときに生じる圧力損失の問題を回避することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、第1洗浄部21の噴射器21bに、圧力を高めた第1洗浄液11を供給し、噴射器21bから第1洗浄液11を噴射させている。このことにより、第1洗浄液11のミストを形成することができ、第1洗浄部21の洗浄効率を向上させることができる。例えば、超音波振動エネルギを用いて第1洗浄液11のミストを形成する場合、第1洗浄液11は微細化された噴霧状態となり、第1洗浄液11のミストに鉛直方向の十分な速度成分を持たせることが困難になり得る。また、超音波振動エネルギを用いる場合、第1洗浄液11の圧力は、後述するように0.1MPa以下となるため、この点においても、第1洗浄液11のミストに鉛直方向の十分な速度成分を持たせることが困難になり得る。これに対して、本実施の形態では、後述するように、噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力を、例えば0.1MPa~1.0MPaまで高めているため、第1洗浄液11を高速で噴射してミスト化することができ、第1洗浄部21の洗浄効率を向上させることができる。
【0063】
また、上述したように、噴射器21bから噴射された第1洗浄液11は、充填層等が設けられていない洗浄回収空間21a内を構造物等の表面に接触することなく自由落下する。この場合、第1洗浄液11のミストが、構造物等の部材に衝突することなく、第1受け部21cに直接的に達するため、第1洗浄液11のミストが微細化されることを抑制できる。
【0064】
すなわち、第1洗浄部21または第2洗浄部22のように充填層等により構成される回収部(後述する図3に示す洗浄回収部22a)を有している場合、噴射器21bから高速で噴射された第1洗浄液11のミストが充填層等に衝突し、微細化される。この場合、第1洗浄液11のミストの粒径が小さくなり、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流しやすくなる。このため、アミンを回収した第1洗浄液11が脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して大気に放出されることになり、アミンの大気中への放出量が増大し得るという問題がある。
【0065】
しかしながら、本実施の形態では、噴射器21bの下方に洗浄回収空間21aが形成されており、充填層等の構造物等の部材が設けられていない。このため、第1洗浄液11のミストが微細化されることを抑制でき、第1洗浄部21の洗浄効率の低下を抑制できる。例えば、噴射器21bから第1受け部21cまでの距離を少なくとも1m以上、好ましくは1.5m以上にすることで、十分な洗浄回収空間21aを設けることができる。この場合、第1洗浄液11のミストが第1受け部21cに達する際には減速することができ、第1受け部21cに衝突して微細化されることを抑制できる。また、噴射された第1洗浄液11のミストが脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することを抑制するために、噴射器21bから第1受け部21cまでの距離は、5m以下にしてもよい。
【0066】
また、第1洗浄部21の噴射器21bから第1洗浄液11を高速で噴射する場合、第1洗浄液11のミストの一部が、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流することが懸念される。この場合、第1洗浄液11のミストにはアミンが同伴しているため、アミンが大気に放出され得る。このようなアミンが同伴している第1洗浄液11のミストは、洗浄部出口デミスター82によって捕捉され得る。しかしながら、第1洗浄液11のミストは、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンよりも粒径が大きく、第1洗浄液11のミストの粒径は、例えば100μm以上になる。洗浄部出口デミスター82は、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンを捕捉することを目的としている。ミスト状アミンの粒径は、第1洗浄液11のミストの粒径よりも小さいため、洗浄部出口デミスター82は、目が細かいデミスターで構成されている。このため、第1洗浄液11のミストの多くが洗浄部出口デミスター82によって捕捉される場合、洗浄部出口デミスター82が目詰まりする可能性が考えられる。
【0067】
これに対して本実施の形態では、第1洗浄部21の噴射器21bの上方であって、洗浄部出口デミスター82の下方に、洗浄液ミスト回収部60が設けられている。この洗浄液ミスト回収部60において、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流する第1洗浄液11のミストを回収することができる。このことにより、アミンが同伴した第1洗浄液11のミストが大気に排出されることを抑制できる。また、洗浄部出口デミスター82が目詰まりすることを抑制できる。さらに、ミスト回収充填層60aの空間率を洗浄部出口デミスター82の空間率よりも大きくしている場合には、脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。
【0068】
図1に示すように、第1洗浄液11で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部21の洗浄回収空間21aから排出される。そして、脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20c内を更に上昇し、洗浄部出口デミスター82を通過する。この際、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンおよび第1洗浄液11のミストなどが、洗浄部出口デミスター82で捕捉される。
【0069】
洗浄部出口デミスター82を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20cの頂部から大気に放出される。
【0070】
このように本実施の形態によれば、二酸化炭素回収部20aから排出される脱炭酸燃焼排ガス3が、第1洗浄部21の噴射器21bで噴射した第1洗浄液11で洗浄されて、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンが回収される。このことにより、第1洗浄液11をミスト化することができ、第1洗浄液11のミストが、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンに物理的に衝突することができる。このため、第1洗浄液11にミスト状アミンを効果的に回収することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができる。この結果、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する第1洗浄液11のミストが、洗浄液ミスト回収部60で回収される。このことにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流する第1洗浄液11のミストを効果的に回収することができる。このため、アミンが同伴した第1洗浄液11のミストが大気に放出されることを抑制することができる。この結果、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、洗浄液ミスト回収部60から排出される脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンが、洗浄部出口デミスター82によって捕捉される。このことにより、洗浄液ミスト回収部60によって回収しきれなかった第1洗浄液11のミストやミスト状アミンを洗浄部出口デミスター82で回収することができる。この結果、アミンの大気中への放出量をより一層低減することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、洗浄液ミスト回収部60の上下方向長さL1が、二酸化炭素回収部20aの上下方向長さL3よりも短くなっている。このことにより、洗浄液ミスト回収部60を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに圧力損失が生じることを抑制できる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給する送風機の動力の上昇を抑制することができ、運転コストの上昇を抑制することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の噴射器21bから第1受け部21cにわたって、第1洗浄液11がミストの状態で自由落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する洗浄回収空間21aが形成されている。このことにより、噴射器21bから噴射された第1洗浄液11のミストが第1受け部21cに達する前に、構造物等の部材に衝突することを抑制できる。このため、第1洗浄液11のミストが微細化されて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することを抑制できる。
【0075】
なお、上述した本実施の形態においては、二酸化炭素回収部20aが、二酸化炭素回収充填層20dを含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、二酸化炭素回収部20aは、棚段(図示せず)によって構成されていてもよい。アミン再生部30aおよび再生塔回収部37aについても同様である。
【0076】
(第2の実施の形態)
次に、図2を用いて、本発明の第2の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0077】
図2に示す第2の実施の形態においては、洗浄液ミスト回収部が、洗浄部出口デミスターよりも疎に形成されている点が主に異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図2において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
本実施の形態では、図2に示すように、洗浄液ミスト回収部60が、上述したミスト回収充填層60aに代えてミスト回収デミスター60bを含んでいる。ミスト回収デミスター60bは、メッシュ状に形成されていてもよい。上述した洗浄部出口デミスター82もメッシュ状に形成されていてもよい。
【0079】
洗浄液ミスト回収部60のミスト回収デミスター60bは、洗浄部出口デミスター82よりも通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失が低減可能に構成されていてもよい。本実施の形態においては、ミスト回収デミスター60bは、洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されている。
【0080】
デミスターが疎または密に形成されているということは、例えば、デミスターの空間率で説明することができる。より具体的には、デミスターの空間率の大小をデミスターの疎または密に対応させてもよい。この場合、ミスト回収デミスター60bが洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されているということは、ミスト回収デミスター60bの空間率が、洗浄部出口デミスター82の空間率よりも大きくなっていることと同義となる。このことにより、ミスト回収デミスター60bのうち脱炭酸燃焼排ガス3が通過する空間が増え、脱炭酸燃焼排ガス3が通過しやすくなっている。このため、脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。例えば、ミスト回収デミスター60bおよび洗浄部出口デミスター82がメッシュ状のデミスターである場合には、ミスト回収デミスター60bのメッシュを、洗浄部出口デミスター82のメッシュよりも粗くしてもよい。
【0081】
また、デミスターが疎または密に形成されているということは、例えば、デミスターによるミストの除去(または回収)率特性で説明することもできる。より具体的には、所定の粒径範囲(例えば、0.1μm~10μm)におけるミストの除去率でデミスターの特性が示されている場合には、除去率の大小をデミスターの疎または密に対応させてもよい。この場合、ミスト回収デミスター60bが洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されているということは、ミスト回収デミスター60bにおける所定の粒径範囲のミストの除去率が、洗浄部出口デミスター82の除去率よりも小さいことと同義となる。
【0082】
本実施の形態によるミスト回収デミスター60bは、比較的粒径が大きい(例えば、粒径が100μm以上の)第1洗浄液11のミストを除去することを目的としているため、上述したように、洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されている。このことにより、ミスト回収デミスター60bを洗浄部出口デミスター82よりも粗いデミスターで構成することができ、圧力損失の増加を抑制し、目詰まりを抑制している。一方、洗浄部出口デミスター82は、目の細かいデミスターで構成することができ、第1洗浄部21で捕捉できなかったミスト状アミンを効果的に捕捉することが可能になる。
【0083】
なお、本実施の形態におけるミスト回収デミスター60bの上下方向長さL4は、洗浄部出口デミスター82の上下方向長さL2と等しくてもよい。
【0084】
このように本実施の形態によれば、洗浄液ミスト回収部60は、洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されている。このことにより、洗浄部出口デミスタ-82でミスト状アミンおよび第1洗浄液11のミストを捕捉しながらも、洗浄部出口デミスター82を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給するための送風機Bの動力を低減することができ、運転コストを低減することができる。
【0085】
(第3の実施の形態)
次に、図3および図4を用いて、本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0086】
図3および図4に示す第3の実施の形態においては、第1洗浄部から排出される燃焼排ガスを、洗浄液分散器で分散させて落下させる第2洗浄液で洗浄して、燃焼排ガスに同伴するアミンを回収する第2洗浄部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3および図4において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施の形態では、図3に示すように、第1洗浄部21の噴射器21bには、第1圧力の第1洗浄液11が供給される。すなわち、噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力は、第1圧力となるように第1循環ポンプ51によって高められている。この第1圧力で供給された第1洗浄液11が、噴射器21bから洗浄回収空間21aに噴射される。この第1圧力は、後述する第2洗浄部22の洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の圧力(第2圧力)よりも高くなっている。
【0088】
本実施の形態では、図3に示すように、吸収塔20内に、第2洗浄部22が設けられている。第2洗浄部22は、洗浄液ミスト回収部60から排出された脱炭酸燃焼排ガス3を、第2洗浄液12(第2洗浄水)で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収する。第2洗浄部22は、洗浄液ミスト回収部60の上方であって、洗浄部出口デミスター82の下方に設けられている。
【0089】
第2洗浄部22は、洗浄回収部22aと、洗浄回収部22aの上方に設けられた洗浄液分散器22bと、洗浄回収部22aの下方に設けられた第2受け部22cと、を有している。
【0090】
洗浄回収部22aは、向流型気液接触装置として構成されている。一例として、洗浄回収部22aは、洗浄回収充填層22dを含んでいる。洗浄回収充填層22dは、気液接触面積を増やすために内部に充填された充填物や粒子等の内部構造物で構成されている。この内部構造物の表面に第2洗浄液12を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収(または除去)する。第2洗浄部22では、ガス状アミンを効果的に回収することができるが、ミスト状アミンも効果的に回収することができる。
【0091】
洗浄液分散器22bは、第2圧力で供給される第2洗浄液12を洗浄回収部22aに向けて分散させて落下させるように構成されている。洗浄回収部22aの内部構造物の表面を流下するように第2洗浄液12が供給される。第2圧力は、第1洗浄部21の噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力である第1圧力よりも低い。洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の圧力(第2圧力)は、吸収塔20内の圧力に対してそれほど高くない圧力である。洗浄液分散器22bが分散させる第2洗浄液12に与える鉛直方向の速度成分である第2鉛直方向初速度は、第1洗浄部21の噴射器21bが第1洗浄液11に与える鉛直方向の速度成分である第1鉛直方向初速度よりも小さい。実質的には第2洗浄液12に与えられる鉛直方向の速度成分である第2鉛直方向初速度はほぼ0(ゼロ)であり、洗浄液分散器22bは、重力の作用によって非強制的に第2洗浄液12を洗浄回収部22aに自由落下させる。
【0092】
第2受け部22cは、洗浄回収部22aの内部構造物の表面を流下した第2洗浄液12を受け取って貯留するとともに、第1洗浄部21の洗浄回収空間21aから排出されて上昇する脱炭酸燃焼排ガス3が通過可能に構成されている。第2受け部22cは、第1受け部21cと同様に構成されている。
【0093】
第2洗浄部22には、第2洗浄液12を循環させる第2循環ライン54が連結されている。すなわち、第2循環ライン54には、第2循環ポンプ55が設けられており、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12を抜き出して洗浄液分散器22bに供給する。このようにして、第2洗浄液12が循環するようになっている。
【0094】
本実施の形態では、第2循環ライン54に、第2洗浄液12を冷却する第2洗浄液冷却器56が設けられている。第2洗浄液冷却器56には、第2洗浄液12を冷却するための冷却媒体として、二酸化炭素回収システム1の外部から冷却媒体(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)が供給される。このようにして、第2洗浄液冷却器56は、第2循環ライン54を流れる第2洗浄液12を冷却するように構成されており、第2洗浄液12の温度を、第1洗浄液11の温度よりも低くしている。なお、第2洗浄液12の温度と第1洗浄液11の温度は、ほぼ同等となるように構成してもよい。
【0095】
ところで、第1洗浄部21の噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)は、第2洗浄部22の洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)よりも大きくなっている。噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の流量は、上述した第1循環ポンプ51(流量調整部)により調整される。同様に、洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の流量は、上述した第2循環ポンプ55により調整される。
【0096】
なお、ここで示した単位面積とは、噴射器21bが第1洗浄液11を噴射する水平断面積(または第1洗浄部21の水平断面積)、および洗浄液分散器22bが第2洗浄液12を分散する水平断面積(または第2洗浄部22の水平断面積)に対する単位面積である。本実施の形態においては第1洗浄部21および第2洗浄部22の水平断面積は実質的に等しいため各洗浄部(第1洗浄部21および第2洗浄部22)の水平断面積の違いは考慮せず、単位時間当たりの流量により第1流量および第2流量を設定しても構わない。
【0097】
各洗浄部21、22の水平断面積が異なる場合も含めて一般化すると、例えば、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)を、200L/分/m以上としてもよく、300L/分/m以上としてもよい。洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)を、50L/分/m~150L/分/m図4に示す通常流量範囲)としてもよい。
【0098】
洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12は、洗浄回収充填層22dを構成する内部構造物の表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する。このため、第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量を150L/分/mより大きくしても、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率向上への貢献は限られてしまう。また必要以上に第2洗浄液12の流量を増大させることは第2循環ポンプ55の容量を増大させ、運転コストを増大させることになり、好ましくない。しかしながら、第1洗浄部21では、充填層等の部材を設けずに、噴射器21bから噴射された第1洗浄液11をミストの状態で脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させている。このことにより、第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量を増大させることは、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることに寄与することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を高めることができる。このことが、図4に示されている。
【0099】
図4は、第1洗浄液11の流量と、ミスト状アミンの除去率(回収効率)との関係を示したグラフである。このデータは、以下に示す試験条件下で得られた。
・試験装置内径(吸収塔容器20cのうち第1洗浄部21が設けられた部分の内径に相当)・・・157mm
・処理ガス流速(脱炭酸燃焼排ガス3の流速に相当)・・・0.7m/s
・ミスト状アミン個数濃度(粒径0.61μm~0.95μm)
・・・約10000個/cc
・洗浄液ミスト中心粒径・・・約300μm
・第1圧力・・・0.2MPa
【0100】
図4に示されているように、第2洗浄液12の通常流量範囲では、ミスト状アミンの除去率は低いが、この範囲を超えると除去率は増大していく。流量が300L/分/m以上になると除去率が70%を越え、ミスト状アミンの除去率を高めることができる。
【0101】
上述したように、第1洗浄部21の噴射器21bに供給される第1洗浄液11の第1圧力(噴射器21b内の圧力)は、第2洗浄部22の洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力(洗浄液分散器22b内の圧力)よりも高くなっている。噴射器21bに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、上述した第1循環ポンプ51(圧力調整部)により調整される。同様に、洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力は、上述した第2循環ポンプ55により調整される。例えば、噴射器21bに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、0.1MPa~1.0MPaとしてもよい。第1洗浄液11の第1圧力を0.1MPa以上にすることにより、第1洗浄液11のミストの噴射速度を高めることができ、第1洗浄部21の洗浄効率を向上させることができる。一方、第1洗浄液11の第1圧力を1.0MPa以下にすることにより、噴射された第1洗浄液11のミストの粒径が、ブロードになる(広い粒径分布を持つ)ことを抑制でき、洗浄性能を安定化させることができる。また、第1循環ポンプ51の容量(必要動力)の増大を抑制でき、運転コストの増大を抑制できる。
【0102】
なお、洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力は、0.1MPa以下であってもよい。例えば、第1循環ポンプ51および第2循環ポンプ55の吐出圧を、噴射器21bおよび洗浄液分散器22bまでのそれぞれの揚程(水頭)を考慮して設定することにより、第1圧力および第2圧力をそれぞれ上記のように適切に設定することができる。
【0103】
第1洗浄部21の噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の粒径は、小さい方がよい。同一流量で考えた場合、第1洗浄液11のミストの粒径を小さくした方が、ミストの個数を増やすことができるからである。この場合、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることができる。例えば、この第1洗浄液11の中心粒径を、100μm~1000μm、好ましくは200μm~800μmとしてもよい。ここで、中心粒径を100μm以上にすることにより、脱炭酸燃焼排ガス3の流れにアミンを含有する第1洗浄液11のミストが同伴して、第1洗浄部21の洗浄効率が低下することを抑制できる。第1洗浄液11のミストが脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することをより一層抑制するためには、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の中心粒径を、200μm以上にしてもよい。一方、中心粒径を1000μm以下にすることにより、第1洗浄液11のミストの中心粒径を小さくすることができ、第1洗浄液11のミストの個数を増やして、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの衝突確率を高めることができる。脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの衝突確率をより一層高めるためには、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の中心粒径を、800μm以下にしてもよい。
【0104】
上述した噴射器21bのスプレーノズル孔は、このような中心粒径を有する第1洗浄液11のミストを形成可能に構成されている。ここで中心粒径とは、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の粒径の平均値としている。中心粒径については、粒径の平均値のほか、中央値や、もしくはこれらの平均値や中央値に加えて分散や画標準偏差などをさらに用いた関数などにより適宜定義しても構わない。
【0105】
また、上述したように、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンは、ガス状アミンとミスト状アミンとに大別されるが、一般的には、ミスト状アミンの方が、アミン量としての比率が多い。このことにより、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3を最初に洗浄する第1洗浄液11が噴射器21bから噴射して、洗浄回収空間21aにおいてミスト状アミンを回収することにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを効果的に回収することが可能になる。この場合、第2洗浄部22に供給される脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンの量が低減される。このため、第1洗浄液11のアミン濃度よりも第2洗浄液12のアミン濃度が低くなる。
【0106】
ここで、ガス状アミンの洗浄を効果的に行うためには、アミン濃度が低い洗浄液を用いることが好ましい。すなわち、第2洗浄液12のアミン濃度は低い方が好ましい。アミン濃度を低くするためには、第2洗浄液12に混入させる新液としての新しい洗浄液を補充する、または当該洗浄液の補充量(メークアップ量)を増やすことが考えられる。しかしながら、この場合、洗浄液の廃棄量が増大し、運転コストの増大を招く可能性がある。従って、第2洗浄部22に流入する脱炭酸燃焼排ガス3のアミン濃度を小さくすることが好ましい。この場合、第2洗浄液12のアミン濃度の増加を抑制することができる。このため、第2洗浄液12のメークアップ量を低減でき、運転コストを抑制することができる。また、第2洗浄部22で用いられる第2洗浄液12のアミン濃度を低くできるため、ガス状アミンを主としたアミンの回収効率を高めることができる。このため、アミンが大気中へ放出されることをより一層抑制することができ、コストと環境性の両立を図ることができる。
【0107】
なお、洗浄液ミスト回収部60が設けられていない場合には、逆流する第1洗浄液11のミストを、第2洗浄部22の洗浄回収部22aにて回収することは可能である。しかしながら、この場合、アミンを同伴した第1洗浄液11のミストが、第2洗浄部22における第2洗浄液12に取り込まれる。このため、第2洗浄液12のアミン濃度が増加しやすくなる。
【0108】
これに対して本実施の形態によれば、第1洗浄部21と第2洗浄部22との間に、洗浄液ミスト回収部60が設けられている。このことにより、第2洗浄液12のアミン濃度が増加することを抑制できる。
【0109】
本実施の形態による二酸化炭素回収システム1は、図3に示すように、第2洗浄液12の一部を第1洗浄液11に混入させるバイパスライン61を更に備えていてもよい。図3では、バイパスライン61の上流端部(第2洗浄部22の側の端部)は、第2洗浄部22の第2受け部22cに連結されている例が示されている。このことにより、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の一部が、第1洗浄液11に混入するようになっている。バイパスライン61の下流端部(第1洗浄部21の側の端部)は、第1洗浄部21の第1受け部21cの上方近傍に配置されている例が示されている。このことにより、バイパスライン61を通過した第2洗浄液12が、第1受け部21cに供給されるようになっている。
【0110】
第1洗浄液11のアミン濃度は、脱炭酸燃焼排ガス3のアミンを捕捉するにつれて上昇していく。このため、第2洗浄液12のアミン濃度よりも第1洗浄液11のアミン濃度が高くなっていく。このため、第2洗浄液12を第1洗浄液11として再利用することで、新液としての新しい第1洗浄液11の補充量を低減することができる。とりわけ、本実施の形態による第1洗浄部21は、噴射器21bにより第1洗浄液11を噴射して脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄しているため、充填層を用いた脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄と比べてアミンを効果的に回収することができる。このことから、第1洗浄液11のアミン濃度は高くなり得るため、第2洗浄液12を第1洗浄液11に混入させることにより、第1洗浄液11のアミン濃度を効果的に低減することができ、第1洗浄部21におけるアミン回収性能の低下を抑制することができる。なお、第1洗浄液11のアミン濃度が高くなった場合には、吸収液として再利用することもできる。この場合、第1洗浄液11を濃縮させてから吸収液として再利用してもよく、濃縮させることなくそのまま吸収液として再利用してもよい。
【0111】
バイパスライン61には、バイパス弁62が設けられていてもよい。例えば、バイパス弁62は、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の液面レベルに基づいて制御されるようにしてもよい。この場合、第2受け部22cに液面レベル計(図示せず)が設けられ、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の液面レベルが、所定の基準レベルより高い場合には、バイパス弁62を開けるまたはバイパス弁62の開度を大きくし、所定の基準レベルより低い場合にはバイパス弁62を閉めるまたはバイパス弁62の開度を小さくしてもよい。また、第2洗浄液12の液面レベルに応じて、バイパス弁62の開度を調整してもよい。
【0112】
本実施の形態における二酸化炭素回収システム1の運転中、洗浄液ミスト回収部60を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄部22の第2受け部22cを通過して洗浄回収部22aに達する。
【0113】
一方、第2受け部22cに貯留された第2洗浄液12は、第2循環ポンプ55によって第2受け部22cから抜き出され、第2循環ライン54を通って洗浄液分散器22bに供給される。この間、第2洗浄液12は、第2洗浄液冷却器56によって冷却され、第2洗浄液12の温度が、第1洗浄液11の温度よりも低くなる。
【0114】
洗浄回収部22aにおいて、冷却された第2洗浄液12が洗浄回収部22aの表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄される。このことにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンなどが第2洗浄液12に回収される。洗浄回収部22aにおいて脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄した第2洗浄液12は、洗浄回収部22aから落下して第2受け部22cに受け取られて貯留される。
【0115】
洗浄回収部22aには、冷却された第2洗浄液12が供給されるため、洗浄回収部22aの温度は洗浄回収空間21aの温度よりも低くなる。このため、脱炭酸燃焼排ガス3は第2洗浄液12によって冷却され、脱炭酸燃焼排ガス3の温度は低下する。脱炭酸燃焼排ガス3の温度の低下により、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴していた水蒸気が凝縮して、凝縮した水分が、第2洗浄液12に捕捉される。このことにより、第2洗浄液12のアミン濃度が低減する。
【0116】
また、洗浄液ミスト回収部60で回収しきれなかった第1洗浄液11のミストは、第2洗浄部22の洗浄回収部22aに供給されて、洗浄回収部22aにおいて冷却される。洗浄回収部22aでは、凝縮した水分が第1洗浄液11のミストにも捕捉される。このことにより、第1洗浄液11のミストの粒径が増大し、第1洗浄液のミストが、洗浄回収部22aの上方に設けられた洗浄部出口デミスター82で捕捉されやすくなる。
【0117】
第2洗浄液12で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、洗浄回収部22aから排出されて、吸収塔容器20c内を更に上昇し、洗浄部出口デミスター82を通過する。
【0118】
このように本実施の形態によれば、第2洗浄部22が、洗浄液ミスト回収部60から排出される脱炭酸燃焼排ガス3を、洗浄液分散器22bで分散させて落下させる第2洗浄液12で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収する。このことにより、第1洗浄部21で回収しきれなかった脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを、第2洗浄液12に回収することができる。このため、アミンの大気中への放出量をより一層低減することができる。
【0119】
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の噴射器21bに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、第2洗浄部22の洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力よりも高くなっている。このことにより、噴射器21bからの第1洗浄液11のミストの噴射速度のうちの特に鉛直方向の速度成分である第1鉛直方向初速度を高めることができる。このため、第1洗浄液11のミストを洗浄回収空間21a内に迅速にかつ均一に供給することができ、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンを効果的に回収することができる。また、第1洗浄液11のミストが脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することを抑制できる。
【0120】
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の噴射器21bから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)は、第2洗浄部22の洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)よりも大きくなっている。このことにより、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11のミストの個数を増やすことができ、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることができる。このため、ミスト状アミンをより一層効果的に回収することができる。
【0121】
また、本実施の形態によれば、バイパスライン61によって、第1洗浄液11よりもアミン濃度が低い第2洗浄液12の一部を第1洗浄液11に混入させることができる。このことにより、第1洗浄液11のアミン濃度を低減することができ、第1洗浄部21において、アミン回収性能が低下することを抑制できる。また、第2洗浄液12は、第1洗浄液11として再利用できるため廃棄することを不要にでき、第1洗浄液11に新しい洗浄液を補給する頻度を減らすことができる。
【0122】
なお、上述した本実施の形態においては、第1洗浄部21の噴射器21bが、圧力が高められた第1洗浄液11がスプレーノズル孔から噴射される、いわゆる1流体ノズルとして構成されている例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、第1洗浄液11を噴射することができれば、噴射器21bは、2流体ノズルとして構成されていてもよい。この場合、第1洗浄液11を噴射させることができれば、噴射器21bに供給される第1洗浄液11の圧力は、0.1MP以下でもよい。
【0123】
また、上述した本実施の形態においては、第2洗浄部22の上方に洗浄部出口デミスター82が設けられ、この洗浄部出口デミスター82の上方に吸収塔容器20cの頂部が配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第2洗浄部22の洗浄液分散器22bの上方に、第2洗浄部22と同様の構成を有する第3洗浄部(図示せず)が設けられていてもよい。この場合には、脱炭酸燃焼排ガス3を第3洗浄液(図示せず)で更に洗浄することができ、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを更に回収することができる。このため、アミンの大気中への放出量をより一層低減することができる。
【0124】
また、上述した本実施の形態においては、洗浄回収部22aが、洗浄回収充填層22dを含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、洗浄回収部22aは、棚段によって構成されていてもよい。
【0125】
(第4の実施の形態)
次に、図5を用いて、本発明の第4の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0126】
図5に示す第4の実施の形態においては、第1洗浄部の直径が、二酸化炭素回収部の直径よりも大きい点が主に異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0127】
本実施の形態では、図5に示すように、吸収塔20の二酸化炭素回収部20aが円筒状に形成されている。すなわち吸収塔20の吸収塔容器20cのうち、少なくとも二酸化炭素回収部20aに相当する部分が円筒状に形成されている。吸収塔容器20cは、底部から回収部出口デミスター81に相当する部分まで、実質的に同一の直径で円筒状に形成されていてもよい。
【0128】
また、第1洗浄部21が円筒状に形成されている。すなわち、本実施の形態においては、第1洗浄部21は吸収塔容器20cに収容されており、吸収塔容器20cのうち第1洗浄部21の洗浄回収空間21aに相当する部分が円筒状に形成されている。吸収塔容器20cは、第1受け部21cに相当する部分から頂部まで、実質的に同一の直径で円筒状に形成されていてもよい。
【0129】
図5に示すように、第1洗浄部21の洗浄回収空間21aの直径D1は、二酸化炭素回収部20aの直径D2よりも大きくなっている。吸収塔容器20cのうち、回収部出口デミスター81に相当する部分と第1受け部21cに相当する部分との間には、直径が徐々に増大するように円錐台状部分が形成されている。
【0130】
ここで、第1洗浄部21を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流速が大きい場合、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流する第1洗浄液11のミストの量が増大し得る。このため、アミンを回収した第1洗浄液11が脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して大気に放出され、大気中へのアミンの放出量が増大し得るという問題がある。
【0131】
これに対して本実施の形態では、第1洗浄部21の洗浄回収空間21aの直径D1が、二酸化炭素回収部20aの直径D2よりも大きくなっているため、第1洗浄部21を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流速を低減することができる。このことにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流する第1洗浄液11のミストの量を低減することができる。
【0132】
例えば、以下の不等式で規定される脱炭酸燃焼排ガス3のガス流速が得られるように、洗浄回収空間21aの直径D1が設定されるようにしてもよい。
ガス流速[m/s]≦0.0037×洗浄液ミストの中心粒径[μm]
この不等式を満たすように第1洗浄部21の洗浄回収空間21aの直径D1を設定することで、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流する第1洗浄液11のミストの量を低減することができる。上記式は、洗浄液ミストの終端速度に基づいて、経験則から安全率を掛けて得られた式である。終端速度とは、洗浄液ミストが受ける重力と空気抵抗とが平衡して等速運動で落下している場合の速度を意味している。
【0133】
このように本実施の形態によれば、二酸化炭素回収部20aおよび第1洗浄部21の洗浄回収空間21aがそれぞれ円筒状に形成され、洗浄回収空間21aの直径D1が、二酸化炭素回収部20aの直径D2よりもおおきくなっている。このことにより、洗浄回収空間21aを通過する脱炭酸燃焼排ガス3のガス流速を低減でき、アミンが同伴した第1洗浄液11のミストが、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して逆流することを抑制できる。このため、アミンの大気中への放出量をより一層低減することができる。
【0134】
(第5の実施の形態)
次に、図6を用いて、本発明の第5の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
【0135】
図6に示す第5の実施の形態においては、第1洗浄部が洗浄塔に収容され、洗浄塔内において、第1洗浄部の下方に、洗浄塔内に導入された燃焼排ガスの流れを整流する整流部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図3に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図6において、図3に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0136】
本実施の形態では、図6に示すように、吸収塔20に、二酸化炭素回収部20aおよび回収部出口デミスター81は収容されているが、第1洗浄部21、洗浄液ミスト回収部60、第2洗浄部22および洗浄部出口デミスター82は収容されていない。
【0137】
本実施の形態による二酸化炭素回収システム1は、吸収塔20とは別体に構成された洗浄塔90を更に備えている。洗浄塔90は、洗浄塔容器90aを含み、洗浄塔容器90aに、第1洗浄部21、洗浄液ミスト回収部60、第2洗浄部22および洗浄部出口デミスター82が収容されている。
【0138】
図6に示すように、洗浄塔容器90a内において、第1洗浄部21の第1受け部21c下方に整流部91が設けられている。この整流部91は、洗浄塔容器90a内に導入された脱炭酸燃焼排ガス3の流れを整流するように構成されている。整流部91は、脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を抑制することができるように構成されていることが好ましい。例えば、整流部91として、上述した二酸化炭素回収充填層20d等と同様な充填層を採用することができる。
【0139】
洗浄塔容器90aは、吸収塔20から排出された脱炭酸燃焼排ガス3が導入されるガス導入部90bを有している。このガス導入部90bは、整流部91の下方であって、洗浄塔容器90aの側面に設けられている。ガス導入部90bは、排ガスライン92を介して、吸収塔20の吸収塔容器20cの頂部に接続されている。
【0140】
ところで、上述した整流部91が設けられていない場合、洗浄塔容器90a内に導入される脱炭酸燃焼排ガス3の流れが、整流化されずに偏流している可能性が考えられる。例えば、図6に示すように、ガス導入部90bが洗浄塔容器90aの側面に設けられている場合には、洗浄回収空間21aに供給される脱炭酸燃焼排ガス3の流れが偏る可能性がある。この場合、噴射器21bから噴射された第1洗浄液11のミストが偏流し、第1洗浄部21の洗浄効率が低下することが懸念される。
【0141】
これに対して本実施の形態によれば、洗浄塔90内において、第1洗浄部21の下方に整流部91が設けられているため、洗浄回収空間21aに供給される脱炭酸燃焼排ガス3を整流化させることができる。このことにより、噴射器21bから噴射される第1洗浄液11のミストが偏流することを抑制でき、洗浄回収空間21aに第1洗浄液11のミストを均等に行き渡らせることができる。このため、第1洗浄液11にミスト状アミンを効果的に回収することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができる。この結果、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
【0142】
以上述べた実施の形態によれば、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0144】
1:二酸化炭素回収システム、2:燃焼排ガス、3:脱炭酸燃焼排ガス、4:リッチ液、5:リーン液、6:加熱媒体、8:二酸化炭素含有ガス、10:二酸化炭素ガス、11:第1洗浄液、12:第2洗浄液、20:吸収塔、20a:二酸化炭素回収部、20d:二酸化炭素回収充填層、21:第1洗浄部、21a:洗浄回収空間、21b:噴射器、21c:第1受け部、22:第2洗浄部、22a:洗浄回収部、22b:洗浄液分散器、22c:第2受け部、60:洗浄液ミスト回収部、60b:ミスト回収デミスター、61:バイパスライン、82:洗浄部出口デミスター、90:洗浄塔、91:整流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6