IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホヤ レンズ タイランド リミテッドの特許一覧

特許7530167光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法
<>
  • 特許-光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法 図1
  • 特許-光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法 図2
  • 特許-光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法 図3
  • 特許-光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法 図4
  • 特許-光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240731BHJP
   B01D 19/02 20060101ALI20240731BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240731BHJP
   B01F 27/91 20220101ALI20240731BHJP
   B01F 27/906 20220101ALI20240731BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C08G18/00 D
B01D19/02
B01D19/00 101
B01F27/91
B01F27/906
C08G18/38 076
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019177882
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054914
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 良夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 智文
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167197(JP,A)
【文献】特開昭63-062507(JP,A)
【文献】特開2003-103110(JP,A)
【文献】実開昭55-137928(JP,U)
【文献】米国特許第06008296(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106823477(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
71/00- 71/04
B01D 19/00- 19/04
B01F 27/00- 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法であって、
前記原料は、重合性材料と離型剤とを少なくとも含んでおり、
前記容器内に、前記重合性材料を投入した後、及び、前記重合性材料に前記離型剤を投入した後に、それぞれ、前記撹拌、減圧及び泡破壊を順次実行し、
前記重合性材料に前記離型剤を投入した後に、前記撹拌、減圧及び泡破壊を順次実行する際において、前記減圧を30~60分継続し、前記容器内が40~60Paの真空度に到達した後、前記減圧を終了する、光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記原料が10~20℃となるように温度制御を行う、請求項1に記載の光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項3】
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法であって、
前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材は、前記容器内に回転自在に配置された回転軸よりも遅い回転速度で、前記回転軸の回転方向に回転する、光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項4】
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法であって、
前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材は、前記容器内に回転自在に配置された回転軸の軸方向に固定され、前記回転軸の回転方向に対して回転自在に保持される、光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項5】
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法であって、
前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材は、前記原料の液面に対して水平方向に広がる網部を有する、光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項6】
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法であって、
前記容器の内部の気体を外部へ排気するための排気口に排気管を介して排気装置が接続され、前記排気管は吸引物をトラップするためのトラップを有する、光学部材用重合性組成物の製造方法。
【請求項7】
液体状の原料を収容するための容器と、
駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、
前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、
前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有し、
前記消泡部材は、前記回転軸よりも遅い回転速度で、前記回転軸の回転方向に回転する、光学部材用重合性組成物の製造装置。
【請求項8】
液体状の原料を収容するための容器と、
駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、
前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、
前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有し、
前記消泡部材は、前記回転軸の軸方向に固定され、前記回転軸の回転方向に対して回転自在に保持される、光学部材用重合性組成物の製造装置。
【請求項9】
液体状の原料を収容するための容器と、
駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、
前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、
前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有し、
前記消泡部材は、前記原料の液面に対して水平方向に広がる網部を有する、光学部材用重合性組成物の製造装置。
【請求項10】
液体状の原料を収容するための容器と、
駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、
前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、
前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有し、
前記排気口に排気管を介して排気装置が接続され、前記排気管は吸引物をトラップするためのトラップを有する、光学部材用重合性組成物の製造装置。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学部材用重合性組成物の製造方法によって得られる光学部材用重合性組成物を用いて光学部材を成形する、光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材用重合性組成物の製造方法、光学部材用重合性組成物の製造装置、及び、光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のレンズは、無機ガラス等の無機材料からなるレンズに比べて軽量で割れ難く、染色が可能であるという利点を有する。このため、現在、眼鏡レンズやカメラレンズ等の光学部材として、樹脂製のレンズが用いられることが主流となっている。
特許文献1では、所定の環状構造を有するイソシアネート化合物(A)と、炭素数4~11の脂肪族イソシアネート化合物(B)と、チオール化合物(C)と、を含んでなる重合性組成物が記載されている。当該重合性組成物によれば、耐衝撃性に優れ、屈折率、アッベ数等の光学特性、ハンドリング性、透明性、耐熱性のバランスに優れ、アルカリ耐性にも優れ、更に基材層とハードコート層または反射防止コート層との間にプライマー層を有さない場合においても、耐衝撃性に優れた成形体を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/021680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるように光学部材の製造時には、ポリチオール成分とポリイソシアナート成分とを含む重合性組成物を重合するために、成形型内に注入し、重合することで光学部材が製造される。多数の光学部材を製造すると、それらの製造物に泡の発生が確認されることがあった。
また、組成物の調製にあたっては、各原料を撹拌して混合するとともに、組成物中に含まれる水分等の不要な成分を除去するために、原料を減圧環境下に配する処理が行われている。一方、樹脂製レンズを成形型から離型するために、組成物に離型剤を添加することが知られている。しかし、重合性組成物を調製する際に、重合性単量体などの原料に離型剤等の添加剤を添加すると、減圧環境下に配している間に泡が発生しやすくなり、特に撹拌しながら減圧すると大量の泡が発生して原料の液面に堆積する課題があった。
そして、原料の液面上に堆積した泡が真空ラインに設置したフィルター、トラップ、または真空ポンプに吸引されると、真空ポンプが十分な性能を発揮できなくなって真空度が低下し原料から不要成分を十分除去できなくなったり、真空ポンプが故障したりする原因となる。このため、過度の泡が発生しないように、操作者が撹拌の状況を監視し、手動、または自動によりリークさせる、または撹拌速度を適宜調整するなどして、緩やかな条件で重合性組成物の調製を行っているのが実情である。その結果、製造時間が概して長くなり、生産効率の低下や重合性組成物の品質低下を招きやすくなっていた。この課題を解決するため、操作者による監視や撹拌条件の調整を必須とせず、また、製造時間が長くならず、しかも高品質の組成物、延いては高品質の光学部材が得られる光学部材用重合性組成物の製造方法が求められている。
【0005】
そこで、本開示の一実施形態は、原料を減圧下で撹拌する際に泡が発生しても、製造時間が長くならず、高品質の光学部材用重合性組成物を得ることができる光学材料用重合性組成物の製造方法等に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造方法は、光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、前記容器内の前記原料を撹拌し、前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法である。
また、本開示の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造装置は、液体状の原料を収容するための容器と、駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有している。
更に、本開示の一実施形態に係る光学部材の製造方法は、上記光学部材用重合性組成物の製造方法によって得られる光学部材用重合性組成物を用いて光学部材を成形する光学部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態に係る光学材料用重合性組成物の製造方法によれば、製造時間が長くならず、高品質の光学部材用重合性組成物を得ることができる。
また、本開示の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造装置によれば、製造時間が長くならず、高品質の光学部材用重合性組成物を得ることができる
更に、本開示の一実施形態に係る光学部材の製造方法によれば、高品質の光学部材を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光学部材用重合性組成物の製造装置の第1の実施形態を示す断面模式図である。図1(A)は、第1の実施形態に係る製造装置の縦断面図を示し、図1(B)は図1(A)のIB-IB線で示す横断面図を示す。
図2】光学部材用重合性組成物の撹拌時の製造装置内の様子を示す図である。
図3】光学部材用重合性組成物の撹拌時に泡が発生した状態の製造装置内の様子を示す図である。
図4】光学部材用重合性組成物の製造装置の第2の実施形態を示す断面模式図である。図4(A)は、第2の実施形態に係る製造装置の縦断面図を示し、図4(B)は図4(A)のIIB-IIB線で示す横断面図を示し、図4(C)は泡破壊部材の構成を説明するための外観模式図である。
図5】光学部材用重合性組成物の製造装置の第3の実施形態を示す断面模式図である。図5(A)は、第3の実施形態に係る製造装置の縦断面図であり、図5(B)は、図5(A)のIIIB-IIIB線で示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0010】
[光学部材用重合性組成物の製造方法]
本開示の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造方法は、
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法である。
【0011】
本開示の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造方法は、上記の各工程を備えることにより、減圧下で撹拌中に原料から発生する泡が機械的に破壊されるので、泡の発生を抑えるための撹拌条件の調整等の制御が必須ではなくなる。したがって、製造時間が長くなることが回避される。また、製造時間が長くなると、組成物の変質が生じたり、場合によっては配合成分間の比率に偏りが生じたりする恐れがあるが、製造時間が長くなることが回避されるため、このような不具合を防止することができ、延いては、高品質の光学部材用重合性組成物を得ることができる。また、光学部材用重合性組成物を重合させることで、高品質の光学部材を得ることができる。
以下、光学部材用重合性組成物の製造方法の実施形態について詳しく説明する。なお、以下の説明において、撹拌しながら減圧を行うことにより、原料から水などの不要成分を除去する処理を「脱気処理」という。また、光学部材用重合性組成物の原料については後で詳しく説明する。
【0012】
一態様において、原料は、少なくとも2種類の材料を含む。例えば、2種類以上の重合性単量体を含む原料である。あるいは、重合性単量体と添加剤とを含む原料である。
そして、一方の原料を容器に投入した後、他方の原料を容器内の原料に添加してもよいし、両者を同時に容器内に投入してもよい。一般的に、添加剤に比べて重合性単量体の使用量が多いため、重合性単量体を先に容器に投入しておくことが望ましい。
前者の場合、一方の原料を容器に投入した後のタイミング、及び、更に他方の原料を添加した後のタイミングのうち少なくとも一方のタイミングで脱気処理を行う。
後者の場合(つまり、少なくとも2種類の原料を同時に投入する場合)は、一括投入後に脱気処理を行う。
重合性単量体が水分などを多く含む場合は、重合性単量体の投入又は添加の後に脱気処理を行うことで、この水分等を気化して除去することができる。
添加剤を添加した後に脱気処理を行うと、添加剤に含まれる不要成分を除去できることに加えて、添加剤が添加されることによって、それ以前に容器に投入されていた原料から抜けやすくなる水分等を除去することができる。
【0013】
一態様において、原料は重合性単量体と離型剤とを含む。そして、重合性単量体に続いて離型剤を容器内に投入し、離型剤の投入後に原料の撹拌を開始し、次いで、容器内の減圧及び泡破壊を行う。
離型剤の添加により、減圧下での撹拌時の泡の発生が顕著になりやすいが、これを機械的に破壊することで、製造時間が長くなることをより確実に回避することができる。離型剤については後述する。
【0014】
また、一態様において、原料は第1の材料と第2の材料と第3の材料とを含んでいる。そして、容器内に、第1の材料と第2の材料とを投入した後、及び、第1の材料と第2の材料の混合物に第3の材料を投入した後に、それぞれ、前記撹拌、減圧及び泡破壊を順次実行する。
原料を構成する材料を投入する都度、撹拌、減圧及び泡破壊を順次実行することにより、より確実に泡を破壊することができ、製造時間が長くなることをより確実に防止することができる。
第1の材料、第2の材料、及び、第3の材料としては、例えば、
(1)3種類の重合性単量体の組合せ
(2)2種類の重合性単量体と添加剤との組合せ
(3)重合性単量体と2種類の添加剤との組合せ
等が挙げられる。いずれかが離型剤であってもよく、例えば、第1の材料が第1の重合性単量体、第2の材料が第2の重合性単量体、第3の材料が離型剤である。
【0015】
他の一態様において、原料は4種類以上の材料を含む。例えば、
(a)2種類の重合性単量体と2種類の添加剤との組合せ
(b)3種類以上の重合性単量体と2種類の添加剤との組合せ
(c)2種類の重合性単量体と3種類以上の添加剤との組合せ
(d)3種類以上の重合性単量体と3種類の添加剤との組合せ、
等が挙げられる。
重合性単量体が2種類以上の場合、第1の重合性単量体をまず容器内に投入する。次いで、第2の重合性単量体及び添加剤のうちの一方を投入し、更に第2の重合性単量体及び添加剤のうちの他方を投入するか、第2の重合性単量体と添加剤とを同時に投入する。
【0016】
添加剤は、複数のタイミングに分けて投入してもよいし、一度に投入してもよい。また、2種類以上の添加剤を用いる場合は、それぞれ別のタイミングで投入してもよいし、一度に複数種類の添加剤を投入してもよい。
添加剤を添加した後、また、複数種類の重合性単量体を用いる場合は2番目以降に重合性単量体を添加した後に脱気処理を行う。添加剤や重合性単量体の添加毎に脱気処理を行ってもよいし、一部のみで脱気処理を行ってもよい。
【0017】
<光学部材用重合性組成物の製造方法の第1実施形態>
光学部材用重合性組成物の製造方法の第1実施形態について説明する。本実施形態の製造方法は、以下の工程(1A)~工程(6A)を有する。
・工程(1A):第1の重合性単量体を含む組成物に、第1の添加剤(例えば、紫外線吸収剤)を加えて撹拌する工程。
・工程(2A):工程(1A)に続いて第2の重合性単量体を含む組成物を添加して撹拌する工程。
・工程(3A):工程(2A)に続いて第2の添加剤(例えば、重合触媒及び着色剤のうち少なくとも一つ)を添加して撹拌する工程。
・工程(4A):工程(3A)に続いて1回目の脱気処理を行う工程。
・工程(5A):工程(4A)に続いて第3の添加剤として離型剤を加えて撹拌する工程。
・工程(6A):工程(5A)に続いて2回目の脱気処理を行う工程。
【0018】
<光学部材用重合性組成物の製造方法の第2実施形態>
光学部材用重合性組成物の製造方法の第1実施形態について説明する。本実施形態の製造方法は、以下の工程(1B)~工程(7B)を有する。
・工程(1B):第1の重合性単量体を含む組成物に第1の添加剤(例えば、紫外線吸収剤)を加えて撹拌する工程。
・工程(2B):工程(1B)に続いて1回目の脱気処理を行う工程。
・工程(3B):工程(2B)に続いて第2の重合性単量体を含む組成物を添加して撹拌する工程。
・工程(4B):工程(3B)に続いて第2の添加剤(例えば、重合触媒及び着色剤のうち少なくとも一つ)を添加して撹拌する工程。
・工程(5B):工程(4B)に続いて2回目の脱気処理を行う工程。
・工程(6B):工程(5B)に続いて第3の添加剤として離型剤を加えて撹拌する工程。
・工程(7B):工程(6B)に続いて3回目の脱気処理を行う工程。
【0019】
<光学部材用重合性組成物の製造方法の第3実施形態>
光学部材用重合性組成物の製造方法の第3実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法は、以下の工程(1C)~工程(5C)を有する。
・工程(1C):第1の重合性単量体を含む組成物に、第1の添加剤(例えば、紫外線吸収剤及び重合触媒のうち少なくとも一つ)を加えて撹拌する工程。
・工程(2C):工程(1C)に続いて第2の重合性単量体を含む組成物を添加して撹拌する工程。
・工程(3C):工程(2C)に続いて1回目の脱気処理を行う工程。
・工程(4C):工程(3C)に続いて第2の添加剤として、離型剤、又は、離型剤及び着色剤を添加して撹拌する工程。
・工程(5C):工程(4C)に続いて2回目の脱気処理を行う工程。
【0020】
<光学部材用重合性組成物の製造方法の第4実施形態>
光学部材用重合性組成物の製造方法の第4実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法は、以下の工程(1D)~工程(6D)を有する。
・工程(1D):第1の重合性単量体を含む組成物に、第1の添加剤(例えば、紫外線吸収剤及び重合触媒のうち少なくとも一つ)を加えて撹拌する工程。
・工程(2D):工程(1D)に続いて1回目の脱気処理を行う工程。
・工程(3D):工程(2D)に続いて第2の重合性単量体を含む組成物を添加して撹拌する工程。
・工程(4D):工程(3D)に続いて2回目の脱気処理を行う工程。
・工程(5D):工程(4D)に続いて第2の添加剤として、離型剤、又は、離型剤及び着色剤を添加して撹拌する工程。
・工程(6D):工程(5D)に続いて3回目の脱気処理を行う工程。
【0021】
上記実施形態1~4においては、脱気処理を複数回に分けて実行することにより、より確実に原料から不要成分を除去することができる。また、離型剤の添加を工程全体の終盤に実行することにより、原料の液面に泡が堆積する時間が長くなるのが防止され、泡の発生による真空ポンプの動作不良等を極力回避しやすくなる。
【0022】
また、上記実施形態1~4において、複数の脱気処理のうち最後に行う脱気処理は、直前に離型剤が添加されるため特に泡が発生しやすいことから、他の脱気処理に比べて脱気時間を長くし、また、他の脱気処理に比べて到達真空度の値を小さく設定することが好ましい。なお、他の脱気処理は、その段階で用いられている原料に含まれる水分等の不要成分が十分少ないことが判っている場合には、省略することもできる。
【0023】
なお、工程(3A)、工程(4B)、工程(4C)及び工程(5D)等において着色剤を添加する場合、予め第2の重合性単量体を含有する組成物に着色剤を添加したもの(マスター液)を調製しておき、このマスター液を添加するようにしてもよい。
また、工程(3A)、工程(4B)、工程(1C)及び工程(1D)等において重合触媒を添加する場合、予め第1の重合性単量体を含む組成物に重合触媒を添加した混合物を調製しておき、この混合物を添加するようにしてもよい。
一態様においては、工程(4C)及び工程(5D)で、離型剤と着色剤とを、重合性単量体を含む原料に対して同時に添加する。離型剤と着色剤とを同時に添加することにより、離型剤の存在によって着色剤の分解を防止しやすくなる。
【0024】
(撹拌)
上記各態様及び各実施形態において、各原料を添加した後に行う撹拌方法には、特に制限はなく、例えば、後述する製造装置に用いられるような、回転する撹拌羽根を用いて行うことができる。撹拌速度は、均一性の観点から、好ましくは100~1000rpm、より好ましくは200~600rpm、更に好ましくは300~500rpmである。撹拌時の原料の温度は、固体添加物溶解性の観点から、好ましくは5~30℃、より好ましくは5~20℃、更に好ましくは5~10℃である。
【0025】
(脱気処理)
上記各態様及び各実施形態の脱気処理は、耐圧性を有する容器内に原料を入れて、原料を撹拌しながら容器内を真空ポンプによって減圧することにより行うことができる。脱気処理においては、撹拌及び減圧を所定時間継続し、容器内が所定の真空度(以下、到達真空度という)に到達した後、前記撹拌及び減圧を終了する。
組成物に含まれる水分等の不要成分の含有量が、光学部材の製造に影響を与えない程度となるような所定の真空度を予め測定しておき、この所定の真空度に到達したときに撹拌及び減圧を終了することで、製造時間が過度に長くなることを防止することができる。
脱気処理における到達真空度は、泡の発生をできるだけ抑制する観点から、好ましくは800Pa以下、より好ましくは400Pa以下、更に好ましくは200Pa以下である。また、作業効率を高める観点から、好ましくは10Pa以上、より好ましくは20Pa以上、更に好ましくは40Pa以上である。
離型剤以外の添加剤を添加した後、及び、第2の重合性単量体を添加した後における脱気処理では、生産性の観点から、10~20Paが特に好ましい。また、離型剤を添加した後における脱気処理では、均一性の観点から、10~40Paが特に好ましい。
【0026】
脱気処理の時間は、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは10分以上110分以下、更に好ましくは20分以上110分以下、より更に好ましくは25分以上100分以下である。脱気時間をこの範囲とすることにより、粘度上昇を抑えることができる。
離型剤以外の添加剤を添加した後、及び、第2の重合性単量体を添加した後における脱気処理では、粘度上昇防止の観点から、10~40分が特に好ましい。また、離型剤を添加した後における脱気処理では、20~60分が特に好ましい。
脱気処理中における原料の撹拌は、離型剤以外の添加剤を添加した後、第2の重合性単量体を添加した後、及び、離型剤を添加した後のいずれの脱気処理においても、上述した脱気処理以外の工程で行う原料の撹拌条件と同様の撹拌条件で行うことができる。
【0027】
また、原料の混合や不要成分の除去を効率的に進めるために、撹拌や減圧の操作を行う際に、前記原料が所定温度となるように温度制御を行うことが好ましい。脱気処理中の原料の温度は、好ましくは0~20℃、より好ましくは5~15℃、更に好ましくは5~10℃である。
なお、温度制御は、容器に内蔵又は容器近傍に、冷却素子やヒーター等を配置し、これらの出力を適宜切り替えたり、オンオフしたりすることにより行うことができる。
【0028】
[製造装置]
次に、光学部材用重合性組成物の製造方法に用いる製造装置について説明する。
本発明の実施形態に係る光学部材用重合性組成物の製造装置は、液体状の原料を収容するための容器と、駆動源に連結され、前記容器内に回転自在に配置された回転軸と、前記回転軸に取り付けられた撹拌翼と、前記撹拌翼より上方に配置され、前記原料から発生する泡に接触して泡を破壊する消泡部材と、を備え、前記容器は、内部の気体を外部へ排気するための排気口を有するものである。
以下、図面を用いて、製造装置の具体的な実施形態を説明する。
【0029】
(製造装置の第1実施形態)
図1は、光学部材用重合性組成物の製造装置の第1の実施形態を示す断面模式図である。図1(A)は、第1の実施形態に係る製造装置の縦断面図を示し、図1(B)は図1(A)のIB-IB線で示す横断面図を示す。なお、理解を容易にするため、図1(A)においては、後述する回転軸、撹拌翼、消泡部材は側面から見た図として図示し、また、原料20の液面S0の位置を示すために原料を網点で図示している。後述する図2図3図4(A)、図5(A)についても同様である。
【0030】
図1に示すように、製造装置100Aは、光学部材用重合性組成物の原料20を収容するための容器1と、容器1内に配置された撹拌翼2と、撹拌翼2を回転させるための回転軸4と、回転軸4が接続された、モーター等を含む駆動源5とを備えている。撹拌翼2は、原料20を撹拌できるように、容器1内の下方に設けられている。
容器1は少なくとも減圧に耐え得る強度を有している。容器1には、排気口1aと、排出口1bとが設けられており、排気口1aには容器1内の気体を容器外に排気するための排気ライン6が接続され、排出口1bには容器1内の液体を容器外に排出するための液排出ライン7が接続されている。排気ライン6は、前後に排気管が接続されたトラップ9を含んでおり、トラップ9を経由して真空ポンプ8に接続されている。
容器1の上部は、ヒンジ11によって開閉可能に保持されており、ロック10によって、容器1の上部を固定することで容器1が密閉されるように構成されている。
回転軸4には、原料20から発生する泡を機械的に破壊するためのプロペラ状の消泡部材30が設けられている。消泡部材30は、撹拌翼2より上方に配置されている。
なお、図1(B)に示す例では、消泡部材30は2枚羽根で撹拌翼2は3枚羽根としているが、羽根の数、形状、回転軸に対する羽根の角度等に特に制限はなく、原料の粘性等に合わせて適宜のものを採用することができる。羽根の数に関しては、例えば、消泡部材30の羽根の数を3以上としてもよいし、撹拌翼の羽根の数を2あるいは4以上としてもよい。後述する各実施形態においても同様である。
【0031】
図2は、光学部材用重合性組成物の撹拌時の製造装置内の様子を示す図である。図2に示すように、撹拌翼2を高速で回転させることにより、回転軸4付近を中心にして原料20が渦状になり、原料20の液面S1は、回転軸4付近で最も低下し、容器1付近になるほど上昇する。
消泡部材30は、その最も低い位置の高さが、撹拌翼2による原料20の撹拌時における原料20の液面S1の最上位の位置h1以上の高さh2となるように配置されている。このような位置関係で消泡部材30を配置することにより、消泡部材30が原料20の液面S1に接触することが防止できる。
【0032】
原料20を撹拌しているときに、真空ポンプ8を作動して容器1内を減圧して、原料20を脱気することにより、原料20内に含まれていた水分等の不要な成分を除去することができる。
このとき、例えば、原料20に混入していた水分等が泡となって液面S1上に現れる。特に、離型剤を原料に添加すると泡の発生が顕著となる。
図3は、光学部材用重合性組成物の撹拌時に泡が発生した状態の製造装置内の様子を示す図である。図3に示すように、原料20を撹拌・減圧している際に、原料20の液面S1上に泡21が厚く堆積することがある。堆積した泡21が排気口1a付近に到達すると、真空ライン6を経由して真空ポンプ8に侵入する場合があり、真空ポンプ8を傷める恐れがある。
【0033】
本実施形態の製造装置100Aにおいては、消泡部材30が泡21に接触することで泡21が機械的に破壊される。また、消泡部材30が回転軸4の回転によって回転するので、泡が原料の液面S1のどの位置で発生しても、継続的に消泡部材30によって泡が破壊される。こうして、液面S1に堆積した泡21が排気口1aに到達することが防止される。
【0034】
本実施形態において、消泡部材30はプロペラ状である。後述するように、消泡部材が棒状であってもよい。
【0035】
排気口1aには、排気管を含む排気ライン6を介して、排気装置である減圧ポンプ8が接続され、排気ライン6に含まれる排気管は、真空ポンプ8によって吸引される、気体や泡などの吸引物をトラップするためのトラップ9を有する。
【0036】
(製造装置の第2実施形態)
消泡部材を、回転軸よりも遅い回転速度で、回転軸の回転方向に回転するようにしてもよい。
消泡部材の回転速度を回転軸の回転速度とは異ならせることにより、原料の撹拌と泡の機械的破壊とを切り離して制御することができる。具体的には、消泡部材の回転速度を回転軸の回転速度よりも遅くすることにより、原料を適切に撹拌しつつ、確実に泡を破壊しやすくなる。また、泡を飛散させにくくすることができる。
この場合、消泡部材の回転速度は、好ましくは15~400rpm、より好ましくは30~200rpm、更に好ましくは60~100rpmである。
【0037】
図4は、光学部材用重合性組成物の製造装置の第2の実施形態を示す断面模式図である。図4(A)は、第2の実施形態に係る製造装置100Bの縦断面図を示し、図4(B)は図4(A)のIIB-IIB線で示す横断面図を示し、図4(C)は泡破壊部材の構成を説明するための外観模式図である。
【0038】
製造装置100Bは、消泡部材31とその保持方法が製造装置100Aのものとは異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
製造装置100Bの消泡部材31は、可動フランジ32に設けられた棒状のものであり、可動フランジ32の開口に回転軸4が貫装されている。可動フランジ32の直下には軸4に固定フランジ40が設けられている。固定フランジ40は、例えば、図4(C)に示されるように、固定ネジ41を締め付けることによって回転軸4に固定される。
消泡部材31は、回転軸4の回転方向に対して回転自在に、かつ、回転軸4の軸方向においては固定フランジ40によって固定された状態で保持される。これにより、回転軸4が回転すると消泡部材31も回転することになるが、消泡部材31は回転軸4との間の摩擦力によって連れて回転するので、撹拌翼2の回転速度よりも遅い速度で回転する。泡21の破壊には撹拌翼2に求められるほどの高速回転は必ずしも必要ではないため、回転速度が遅くても泡21の破壊には特に支障がない。また、消泡部材31が必要以上に高速で回転しないため、泡21を飛散させることもない。
【0039】
製造装置100Bの消泡部材31は棒状のシンプルな形状としているが、製造装置100Aの消泡部材30のようにプロペラ状のものでもよい。また、製造装置100Bにおいて、固定フランジ40はネジ41を締め付けることによって回転軸4に固定されているが、これに限るものではなく、例えば、固定フランジを回転軸に溶着したり、フランジ部分が一体化された回転軸を用いたりしてもよい。
【0040】
(製造装置の第3実施形態)
図5は、光学部材用重合性組成物の製造装置の第3の実施形態を示す断面模式図である。図5(A)は、第3の実施形態に係る製造装置100Cの縦断面図を示し、図5(B)は図5(A)のIIIB-IIIB線で示す横断面図を示す。図5(C)は、
製造装置100Cは、消泡部材の形状が他の実施形態とものとは異なっている。図5(A)、図5(B)に示すように、製造装置100Cの消泡部材50は、原料20の液面S0に対して二次元的に広がる網部を有している。製造装置100Cの容器1の内壁には、回転軸4と交差する方向に突起部12が設けられており、この突起部12に消泡部材50が固定されている。図5(B)には、突起部12を複数箇所に設けた例を示しているが、突起部12を環状に連続した構造としてもよい。
消泡部材50の網部の中央には開口51が形成されており、この開口51を回転軸4が貫通している。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0041】
本実施形態においても、消泡部材50は、その最も低い位置の高さが、撹拌翼2による原料20の撹拌時における原料20の液面の最上位の位置以上の高さとなるように配置されている。
そして、原料20の撹拌によって発生した泡21が消泡部材50の網部に到達すると、消泡部材50によって機械的に破壊される。消泡部材50の網部は二次元状に広がっているため、泡21の発生する位置や形状に関わらず、確実に泡21を破壊することができる。製造装置100Cの消泡部材50には可動部がないため、装置構成を簡素化することができる。
【0042】
[光学部材用重合性組成物]
本発明の一実施形態に係る光学部材用重合性組成物は、光学部材を形成する樹脂成分の原料となる重合性単量体を含む。光学部材を形成する樹脂成分として、(チオ)ウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、したがって、これらの樹脂成分を生成し得る重合性単量体を含むことが好ましい。光学部材用重合性組成物を重合させて得られる光学部材がレンズ又はレンズ用基材である場合は、高い屈折率を発現させる観点から、光学部材用重合性組成物が、(チオ)ウレタン樹脂及びエピスルフィド樹脂の少なくとも一つを生成し得る重合性単量体を含むことがより好ましい。
なお、(チオ)ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂及びチオウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種を意味する。
(チオ)ウレタン樹脂を生成し得る重合性単量体としては、ポリイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、ポリチオール化合物(B)の組合せが挙げられる。
【0043】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
ポリイソシアネート化合物(A)としては、例えば、芳香環を有するポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0044】
芳香環を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル-4,4’-ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、2-イソシアナトフェニル-4-イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-6-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メトキシ-4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メトキシ-3-イソシアナトフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0045】
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-2-メチル-1,3-ジチオラン等が挙げられる。
【0046】
直鎖又は分岐の脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアネート-2-イソシアナトメチル-3-ペンタン、1,2,3-トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5-ジチア-1,2,6,7-ヘプタンテトライソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチル-3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジイソシネート、2,5-ジイソシアネートメチルチオフェン、4-イソシアナトエチルチオ-2,6-ジチア-1,8-オクタンジイソシアネート、1,2-ジイソチオシアナトエタン、1,6-ジイソチオシアナトヘキサンが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(A)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0047】
ポリイソシアネート化合物(A)は、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタンからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタンからなる群より選ばれる1種以上である。
【0048】
<ポリチオール化合物(B)>
ポリチオール化合物(B)としては、例えば、ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物、脂環構造を有するポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物等が挙げられる。
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物において、ポリオール化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
メルカプト基含有カルボン酸化合物としては、例えば、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸化合物、チオサリチル酸等が挙げられる。
ポリオール化合物とメルカプト基含有カルボン酸化合物とのエステル化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、プロパントリオールトリス(2-メルカプトアセテート)、プロパンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレンビス(ヒドロキシエチルスルフィド)ビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
直鎖又は分岐の脂肪族ポリチオール化合物としては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2-メルカプトエチル)ジスルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオールが挙げられる。
【0049】
脂環構造を有するポリチオール化合物としては、例えば、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、メチルシクロヘキサンジチオール、ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、ビス(メルカプトメチル)ジチアン等が挙げられる。
芳香族ポリチオール化合物としては、例えば、ジメルカプトベンゼン、ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、トリメルカプトベンゼン、トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、4,4’-ジメルカプトビベンジル、2,5-トルエンジチオール、ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ビス(p-メルカプトフェニル)ペンタン等が挙げられる。
これらのポリチオール化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリチオール化合物(B)は、好ましくは、ビス(メルカプトメチル)ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオール、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、からなる群より選ばれる1種以上である。
なお、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカンジチオールは、好ましくは、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、及び5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物である。
【0050】
ポリチオール化合物(B)の一態様は、2以上のスルフィド結合と、2以上のメルカプト基とを有するポリチオール化合物を含む。
また、ポリチオール化合物(B)の一態様は、2以上のスルフィド結合と、3以上のメルカプト基とを有するポリチオール化合物を含む。
また、ポリチオール化合物(B)の一態様は、複数種類のポリチオール化合物の混合物である。
【0051】
ポリチオール化合物(B)は、好ましくは、以下の各混合物からなる群から選択される。
[1]2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアンと、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)との混合物
[2]4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンと、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)との混合物
[3]4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、及び、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物
【0052】
ポリイソシアネート化合物(A)とポリチオール化合物(B)との組合せの好適例としては、以下の[1]~[3]が挙げられる。
[1]1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、及び、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物
[2]1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及び、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン及びペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)の混合物
[3]2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物、及び、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)の混合物
【0053】
<添加剤>
光学部材用重合性組成物には、添加剤として、紫外線吸収剤、重合触媒、離型剤、抗酸化剤、着色防止剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0054】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、好ましくは、クロロホルム溶液中において、345nm以上の極大吸収波長を有する。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン及び2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール及び2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
紫外線吸収剤の添加量は、ポリチオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0055】
(重合触媒)
重合触媒は、好ましくは有機スズ化合物であり、より好ましくはアルキルスズハライド化合物又アルキルスズ化合物である。
アルキルスズハライド化合物としては、例えば、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、モノメチルスズトリクロライド、トリメチルスズクロライド、トリブチルスズクロライド、トリブチルスズフロライド、ジメチルスズジブロマイド等が挙げられる。
アルキルスズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。
これらの中でも、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
重合触媒の添加量は、ポリチオール化合物及びポリイソシアネート化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
【0056】
(離型剤)
離型剤としては、例えば、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、ノニルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、プロピルフェニルアシッドフォスフェート、ブチルフェニルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェートなどのリン酸エステル化合物等が挙げられる。リン酸エステル化合物は、リン酸モノエステル化合物、リン酸ジエステル化合物のいずれであってもよいが、リン酸モノエステル化合物、及びリン酸ジエステル化合物の混合物が好ましい。
離型剤の添加量は、ポリイソシアネート化合物(A)及びポリチオール化合物(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、好ましくは1.00質量部以下、好ましくは0.50質量部以下である。
【0057】
(着色剤)
着色剤としては、例えば、青系と赤系の染料又は顔料が挙げられる。着色剤の添加量は、イソ(チオ)シアネート化合物に対して、好ましくは2~20ppm、より好ましくは3~35ppm、更に好ましくは6~30ppmである。
【0058】
[光学部材]
上述した光学部材用重合性組成物を重合させて重合物を生成することにより、光学部材を得ることができる。
光学部材としては、眼鏡レンズ、カメラレンズ、プリズム、光ファイバ、及び、これらに用いられる基材、光ディスク若しくは磁気ディスク等に用いられる記録媒体用基板、コンピュータのディスプレイに付設する光学フィルター等が挙げられる。これらの中でも、眼鏡レンズや眼鏡レンズの基材が好ましく、眼鏡レンズの基材がより好ましい。
光学部材用重合性組成物の重合条件は、重合性組成物に応じて、適宜設定することができる。
重合開始温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。重合開始温度から昇温し、その後、加熱して硬化形成することが好ましい。例えば、昇温最高温度は、通常110℃以上130℃以下である。
重合終了後、眼鏡レンズを離型して、アニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は、好ましくは100~150℃である。
光学部材が眼鏡レンズである場合、重合は、注型重合法であることが好ましい。眼鏡レンズは、例えば、重合性組成物を、ガラス又は金属製のモールドと、テープ又はガスケットとを組み合わせたモールド型に注入して重合を行うことで得られる。
【0059】
(眼鏡レンズ)
上記光学部材を眼鏡レンズとする場合、光学部材をそのまま眼鏡レンズとして用いてもよいし、眼鏡レンズ用基材に機能層を形成したり加工したりして眼鏡レンズとしてもよい。
眼鏡レンズの表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
眼鏡レンズは、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。例えば、一例として、累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が、下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
眼鏡レンズは、フィニッシュ型眼鏡レンズであってもセミフィニッシュ型眼鏡レンズであってもよい。なお、セミフィニッシュ型眼鏡レンズは、研磨や研削によって実使用される眼鏡レンズへと加工されるものであるため、概して厚くなる。しかし、本発明の実施形態に係る光学部材用重合性組成物を用いると、肉厚のセミフィニッシュ型眼鏡レンズであっても脈理の発生を十分抑制することができる。
眼鏡レンズの厚さ及び直径は、特に限定されるものではないが、厚さは通常1~30mm程度、直径は通常50~100mm程度である。
眼鏡レンズの屈折率neは、好ましくは1.53以上、より好ましくは1.55以上、より好ましくは1.58以上、更に好ましくは1.60以上、更に好ましくは1.67以上、更に好ましくは1.70以上であり、好ましくは1.80以下である。
眼鏡レンズに設け得る機能層としては、更に、ハードコート層、プライマー層、反射防止膜及び撥水膜からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ハードコート層は、耐擦傷性向上のために設けられ、好ましくは有機ケイ素化合物、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子状無機物等を有するコーティング液を塗工して形成することができる。
プライマー層は、耐衝撃性を向上させるために設けられ、例えば、ポリウレタンを主成分とする。ここでポリウレタンの含有量は、プライマー層中、好ましくは50質量%以上である。
反射防止膜としては、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等を積層した膜が挙げられる。
撥水膜としては、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を用いて形成することができる。
【0060】
[光学部材の製造方法]
本実施形態に係る光学部材の製造方法においては、上述した光学部材用重合性組成物の製造方法によって得られる光学部材用重合性組成物を用いて、成形型によって光学部材を成形する。
【0061】
本発明は、上述の各成分の例、含有量、各種物性については、発明の詳細な説明に例示又は好ましい範囲として記載された事項を任意に組み合わせてもよい。
また、実施例に記載した組成に対し、発明の詳細な説明に記載した組成に調整を行えば、クレームした組成範囲全域にわたって実施例と同様に発明を実施することができる。
【実施例
【0062】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。光学部材用重合性組成物の重合物である光学部材における泡不良の評価、外周欠けの評価、及び、脈理抑制性の評価は、以下の手順で行った。
【0063】
<泡不良の評価>
暗箱内で蛍光灯下に眼鏡用レンズ基材の幾何学中心から直径30mm以内を目視で観察し、泡の存在が確認できるものを不合格とした。検査は、各条件にて製造した眼鏡レンズ基材に対して行い、不合格品の発生割合を表に示した。
【0064】
<外周欠けの評価>
眼鏡用レンズ基材の端部(外周)の全体を目視と顕微鏡で確認し、欠けが見つかったものを不良品とした。そして、欠けのないもの(良品)と前記不良品との合計に対する不良品の割合を算出して、外周欠けの評価とした。この割合ができるだけ小さいことが好ましく、1%以下であれば実用上問題ないレベルである。
【0065】
<脈理の評価>
ウシオ電機株式会社製 オプティカルモデュレックスSX-UI251HQを用いて投影検査を行った。光源として高圧UVランプ USH-102Dを用いて1mの距離に白色のスクリーンを設置し、被検樹脂を光源とスクリーンの間に挿入し、スクリーン上の投影像を観察し、下記の基準に基づいて判定を行った。A~Cを合格、D及びEを不合格とした。
A:投影像に線状の不整が全くない。
B:投影像に線状のごく薄い不整がある。
C:投影像に線状の薄い不整がある。
D:投影像に線状の濃い不整がある。
E:投影像に線状の著しい不整がある。
そして、合格のもの(良品)と不合格のもの(不良品)との合計に対する不良品の割合を算出して、脈理の評価とした。
【0066】
<実施例1>
ポリイソシアネート化合物(A)として1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン50.6質量部を、図1に示すタイプの製造装置の、減圧に耐え得る容器(容量100L)の内部に投入し、更に、紫外線吸収剤として0.50質量部のシプロ化成株式会社製シーソーブ701、及び、重合触媒として、ジメチルスズジクロライド0.01質量部を添加し、撹拌速度500rpmで15分間撹拌することにより、これらの添加物を混合して溶解させた。更に、ポリチオール化合物(B)として、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、及び、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオールの混合物49.4質量部を添加し、撹拌速度500rpmで5分間撹拌した。
この後、容器内を密閉し、混合液の撹拌を継続しながら真空ポンプを作動させて容器内を減圧し、原料温度を20℃として、30分で80Paに到達させる(つまり、到達真空度を80Paとする)ことにより、第1回目の脱気処理を行った。
容器内を常圧に戻した後、離型剤としてブトキシエチルアシッドフォスフェート(城北化学工業株式会社製JP-506H)0.10質量部を添加し、撹拌速度500rpmで5分間撹拌した。この後、容器内を再度密閉し、撹拌を継続しながら真空ポンプを作動させて容器内を減圧し、30分で40Paに到達させる(つまり、到達真空度を40Paとする)ことにより、第2回目の脱気処理を行った。
こうして得られた溶液を、孔径5.0μmのポリプロピレン(PP)製のフィルターにて濾過することにより、光学部材用重合性組成物1を得た。
得られた光学部材用重合性組成物1を、-4.00Dのレンズ形状を有するガラスモールドとガスケットからなる成形型に注入し、成形型を重合炉に投入して15℃から120℃まで昇温し、24時間かけて光学部材用重合性組成物を重合させた。重合終了後、重合炉から成形型を取り出し、離型してアニール処理前の眼鏡用レンズ基材を得た。得られたアニール処理前の眼鏡用レンズ基材を、更に炉内温度120℃のアニール炉に入れて、3時間アニールを行うことにより、眼鏡レンズ用基材を作製した。
【0067】
<実施例2~9>
使用する製造装置の種類、脱気時間、到達真空度、原料の温度、及び、撹拌速度を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の手順で、実施例1と同様の形状を有する眼鏡用レンズ基材を作製した。なお、表1の「装置タイプ」の欄に示される数値は、使用した製造装置が上述した第1~第3実施形態のいずれのタイプに相当するものであったかを示しており、「1」は第1実施形態に示したタイプの製造装置を、「2」は第2実施形態に示したタイプの製造装置を、「3」は第3実施形態に示したタイプの製造装置を用いたことを意味する。なお、第2実施形態に示したタイプの製造装置を用いた実施例2、5、8において、消泡部材はおよそ120rpmで回転していた。
【0068】
<比較例1~3>
脱気時間、到達真空度、原料の温度、及び、撹拌速度を表1に示す値とし、第1実施形態に示したタイプの製造装置から消泡部材を取り外した製造装置の容器に原料を投入して、光学部材用重合性組成物を調製した。そして、この光学部材用重合性組成物を用いて、実施例1と同様の手順で、実施例1と同様の形状を有する眼鏡用レンズ基材を作製した。
【0069】
実施例及び比較例の測定結果を、製造条件とともに表1に示す。
【表1】
【0070】
表1から明らかなように、実施例1~9は、脱気時間が比較例1~3に比べて短いにもかかわらず、得られる眼鏡用レンズ基材に、泡不良や外周欠けの評価において不良は見られず、高品質な光学部材を効率よく製造できていることが判る。実施例1~9の脈理の評価は、原料を撹拌する際の温度が低くなるほど、光学部材用重合性組成物の重合温度との差が大きくなることに起因して、若干不良率が上昇するものの、比較例1~3に比べると良好な結果が得られている。
一方、比較例1~3は、原料から発生する泡が液面に堆積しづらくなるように、撹拌速度を下げて脱気時間を長くし真空到達度を高くして脱気処理を行ったにもかかわらず、泡、外周欠け、脈理のいずれかが生じた不良品の発生率が実施例に比べて高くなっていることが判る。また、比較例1~3では、脱気処理に要する時間を短くすることができず、結果的に光学部材の製造に長時間を要することが判る。比較例1~3には消泡部材が配置されていないため、光学部材用重合性組成物の製造中に発生した泡をうまく除去できなかったり、製造に時間を要することによって重合性組成物が変質したりすることが影響を与えているものと考えられる。
【0071】
最後に、本開示の実施の形態を総括する。本開示の実施の形態である光学部材用重合性組成物の製造方法は、
光学部材用重合性組成物の原料を容器内に投入し、
前記容器内の前記原料を撹拌し、
前記原料を撹拌しながら前記容器内を減圧し、
減圧された前記容器内で撹拌を行っている間に前記原料から発生する泡を機械的に破壊する、光学部材用重合性組成物の製造方法である。
上述した実施の態様によれば、製造時間が長くならず、高品質の光学部材用重合性組成物が得られる、光学部材用重合性組成物の製造方法とすることができる。
【0072】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本開示は、上記各成分の例、含有量、各種物性については、発明の詳細な説明に例示又は好ましい範囲として記載された事項を任意に組み合わせてもよい。
また、実施例に記載した組成に対し、発明の詳細な説明に記載した組成となるように調整を行えば、クレームした組成範囲全域にわたって実施例と同様に開示の実施の形態を実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
1:容器
1a:排気口
1b:排出口
2:撹拌翼
4:回転軸
5:駆動源
6:排気ライン
7:液排出ライン
8:真空ポンプ
9:トラップ
10:ロック
11:ヒンジ
20:光学部材用重合性組成物の原料
21:堆積した泡
30:プロペラ状の消泡部材
31:棒状の消泡部材
32:可動フランジ
40:固定フランジ
41:ネジ
50:網部を有する消泡部材
51:開口
S0、S1:液面
100A、100B、100C:製造装置
図1
図2
図3
図4
図5