(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240731BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240731BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240731BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240731BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240731BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/013
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2019229542
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐貴
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-087173(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038768(WO,A1)
【文献】特開2010-144011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
ジブチルフタレート吸収量が150~170mL/100gであり、圧縮ジブチルフタレート吸収量が
112~115mL/100gであり、前記ジブチルフタレート吸収量と前記圧縮ジブチルフタレート吸収量との差が35~60mL/100gであり、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が90~130m
2/gであり、水素発生量が3000~4000ppmであり、遠心沈降法で得られる凝集体分布で最多頻度を与えるストークス相当径D
st及び当該D
stを含むピークの半値幅ΔD
50との比(ΔD
50/D
st)が0.65~0.75であるカーボンブラックと
を含有するゴム組成物であって、
前記ゴム成分が、天然ゴムおよびポリブタジエンゴムからなり、
さらに、前記ゴム成分100質量部に対して、1~20質量部のシリカを含む、ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~100質量部である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物、及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー、省資源の社会的要請の下、自動車の燃料消費量を節約するため、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。このような要求に対し、タイヤの転がり抵抗を減少させる手法としては、カーボンブラックの使用量を低減したり、低級カーボンブラックを使用する等して、ヒステリシスロスの低下した、すなわち発熱性の低いゴム組成物をタイヤ部材、特にトレッドゴムに用いる方法が知られている。
しかしながら、使用するカーボンブラックの単純な減量は、加硫ゴムの耐摩耗性を低下させることがある。また、ゴム成分中に占めるポリブタジエンゴムの割合を増大させたり、加硫ゴムを高弾性化することによって、タイヤの転がり抵抗を改善することもできるが、この場合、タイヤの耐引裂き性に検討の余地があった。このような問題を改善するために種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、トレッドのようなタイヤ用部材に適用した際、高い低発熱性、耐摩耗性及び耐カット性を有すると共に、優れた耐疲労亀裂性を実現したタイヤを得るために、下記関係式(1)~(3)を満たすカーボンブラックを含んだゴム組成物を用いることが開示されている(特許文献1参照)。
8350≦62.5×24M4DBP+水素発生量≦9000 ・・・(1)
24M4DBP+0.25×CTAB≧62.5 ・・・(2)
Dst+0.75×ΔD50≧152.5 ・・・(3)
ここで、24M4DBPは圧縮DBP吸収量(mL/100g)、CTABはCTAB吸着比表面積(m2/g)、Dstはストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(nm)、ΔD50はDstに対する分布曲線の半値幅(nm)を示し、水素発生量の単位は質量ppmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明では、タイヤの耐摩耗性と転がり抵抗の減少について改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑み、耐摩耗性を損ねず、転がり抵抗の小さいタイヤ、並びに、該当タイヤが得られるゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> ゴム成分と、
ジブチルフタレート吸収量が150~170mL/100gであり、圧縮ジブチルフタレート吸収量が110~120mL/100gであり、前記ジブチルフタレート吸収量と前記圧縮ジブチルフタレート吸収量との差が35~60mL/100gであり、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が90~130m2/gであり、水素発生量が3000~4000ppmであり、遠心沈降法で得られる凝集体分布で最多頻度を与えるストークス相当径Dst及び当該Dstを含むピークの半値幅ΔD50との比(ΔD50/Dst)が0.65~0.75であるカーボンブラックと
を含有するゴム組成物。
【0007】
<2> 前記ゴム成分が、ジエン系ゴムを含む<1>に記載のゴム組成物。
<3> 前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、及びイソブチレンイソプレンゴムからなる群より選択される少なくとも1つを含む<2>に記載のゴム組成物。
【0008】
<4> 前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~100質量部である<1>~<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<5> 更に、前記ゴム成分100質量部に対して、1~80質量部のシリカを含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0009】
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム組成物。
【0010】
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐摩耗性を損ねず、転がり抵抗の小さいタイヤ、並びに、該当タイヤが得られるゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】カーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の部分縦断正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ゴム成分及び、充填剤として、カーボンブラックを含み、当該カーボンブラックは、次の(1)~(6)の特性を有する。
(1)ジブチルフタレート吸収量が150~170mL/100gである。
(2)圧縮ジブチルフタレート吸収量が110~120mL/100gである。
(3)ジブチルフタレート吸収量と前記圧縮ジブチルフタレート吸収量との差が35~60mL/100gである。
(4)セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積が90~130m2/gである。
(5)水素発生量が3000~4000ppmである。
(6)遠心沈降法で得られる凝集体分布で最多頻度を与えるストークス相当径Dst及び当該Dstを含むピークの半値幅ΔD50との比(ΔD50/Dst)が0.65~0.75である。
【0014】
(1)~(6)の特性を有するカーボンブラックを「本発明のカーボンブラック」と称することがある。
また、「ジブチルフタレート吸収量」を、「DBP吸収量」と称するか、または、単に「DBP」と略記することがある。
「圧縮ジブチルフタレート吸収量」を「圧縮DBP吸収量」と称するか、または、単に「24M4DBP」と略記することがある。
「ジブチルフタレート吸収量と圧縮ジブチルフタレート吸収量との差」を「ΔDBP」と称することがある。
「セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積」を、「CTAB比表面積」と称するか、または、単に「CTAB」と略記することがある。
【0015】
従来のカーボンブラックは、DBP高にすると24M4DBPも高くなり、ΔDBPの変動制御は困難であった。また、DBP高の為の反応時間の影響で、凝集体分布を均一にするのは困難であった。
これに対し、本発明のゴム組成物は、(1)~(6)を同時に満たす上記構成であることで、耐摩耗性を損なわずに、転がり抵抗の小さいタイヤが得られる。この理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
各特性の詳細な意義については後述するが、高水素化、高ΔDBP及び分布シャープ化による耐摩耗性向上、それらとバランスしたDBP、CTABの調整といった複数要因の集積によって、本発明効果が得られると考えられる。
以上より、本発明のゴム組成物を用いることで、耐摩耗性を損なわずに、転がり抵抗の小さいタイヤが得られると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物及びタイヤの詳細について説明する。
【0016】
〔ゴム成分〕
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含有する。
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のジエン系ゴムが挙げられる。
合成ジエン系ゴムとして、具体的には、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等が挙げられる。
ジエン系ゴムは、天然ゴム、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、及びイソブチレンイソプレンゴムが好ましく、天然ゴム及びブタジエンゴムがより好ましい。ジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0017】
ゴム成分は、天然ゴムと合成ジエン系ゴムのいずれか一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよいが、耐摩耗性をより向上し、転がり抵抗をより小さくする観点から、ゴム成分は、少なくとも天然ゴムを含むことが好ましい。
同様の観点から、ゴム成分中の天然ゴムの割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
【0018】
〔カーボンブラック〕
本発明のゴム組成物が含有する本発明のカーボンブラックは、既述の(1)~(6)の特性を有すれば、特に制限されず、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
(1)DBP吸収量
本発明のカーボンブラックは、ジブチルフタレート吸収量(DBP吸収量)が150~170mL/100gである。
DBP吸収量は、カーボンブラック100g当たりに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の体積〔mL〕であり、カーボンブラックの一次粒子によって成る、凝集体の発達度合いの指標となる。
DBP吸収量が150mL/100g未満であると、ストラクチャーの発達が不十分で、補強性が得られず、タイヤの耐摩耗性を損ねる。170mL/100gを超えると、ストラクチャーの発達が過度な為、ゴム組成物中でのカーボンブラックの分散性が悪化する。そのため、作業性が損なわれる。
かかる観点から、カーボンブラックのDBP吸収量は152~170mL/100gであることが好ましく、155~168mL/100gであることがより好ましく、165~168mL/100gであることが更に好ましい。
【0020】
(2)圧縮DBP吸収量
本発明のカーボンブラックは、圧縮ジブチルフタレート吸収量(圧縮DBP吸収量)が110~120mL/100gである。
圧縮DBP吸収量(mL/100g)は、24,000psiの圧力で4回繰り返し圧力を加えた後、DBP(ジブチルフタレート)吸収量を測定した値である。DBP吸収量及び圧縮DBP吸収量(24M4DBP)は、ASTM D2414-88(JIS K6217-4:2001)に記載の方法により測定される。
【0021】
この圧縮DBP吸収量は、いわゆるファンデルワールス力により生じている変形性又は破壊性の構造形態(2次ストラクチャー)によるDBP吸収量を排除し、非破壊性の真のストラクチャーの構造形態(1次ストラクチャー)に基づくDBP吸収量を求めるときに用いる、1次ストラクチャーを主体とするカーボンブラックの骨格的構造特定を評価する指標である。
【0022】
圧縮DBP吸収量が110mL/100g未満であると、ゴム補足力が強まりにくく、タイヤの耐摩耗性を損ねる。一方、圧縮DBP吸収量が120mL/100gを超えると、発熱性が低くなりにくく、タイヤの転がり抵抗を低減することができない。
かかる観点から、圧縮DBP吸収量は、110~118mL/100gであることが好ましく、111~117mL/100gであることがより好ましく、112~116mL/100gであることが更に好ましい。
【0023】
(3)ΔDBP
本発明のカーボンブラックは、ジブチルフタレート吸収量と前記圧縮ジブチルフタレート吸収量との差(ΔDBP)が35~60mL/100gである。
ΔDBPは、カーボンブラックの表面活性の指標となる。ΔDBPが35mL/100g未満であると、表面活性が低く、ゴム成分とカーボンブラックとの相互作用が低くなるため、加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。ΔDBPが60mL/100gを超えると、表面活性が高すぎて、ゴムとの過度な相互作用により、加硫ゴムが柔らかさを失い、発熱性が悪化する。また、ゴム組成物中でのカーボンブラックの分散性が低下し、加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。
かかる観点から、ΔDBPは、37~58mL/100gであることが好ましく、40~57mL/100gであることがより好ましく、45~56mL/100gであることが更に好ましい。
【0024】
(4)CTAB比表面積
本発明のカーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積(CTAB比表面積)が90~130m2/gである。
カーボンブラックのCTAB比表面積が90m2/g未満であると、タイヤが耐摩耗性に優れず、130m2/gを超えるとタイヤが低発熱性に優れず、転がり抵抗を低減することができない。耐摩耗性をより向上し、転がり抵抗をより小さくする観点から、カーボンブラックのCTAB比表面積は93~130m2/gであることが好ましく、95~125m2/gであることがより好ましく、98~120m2/gであることが更に好ましい。
カーボンブラックのCTAB比表面積は、JIS K 6217-3:2001(比表面積の求め方-CTAB吸着法)に準拠した方法で測定することができる。
【0025】
(5)水素発生量
本発明のカーボンブラックは、水素発生量が3000~4000ppmである。
水素発生量が3000ppm未満であると、表面活性が低く、ゴム成分とカーボンブラックとの相互作用が低くなるため、加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。4000ppmを超えると、表面活性が高すぎて、ゴムとの過度な相互作用により、加硫ゴムが柔らかさを失い、発熱性が悪化する。また、ゴム組成物中でのカーボンブラックの分散性が低下し、加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。
かかる観点から、水素発生量は、3100~4000ppmであることが好ましく、3200~3800ppmであることがより好ましく、3400~3800ppmであることが更に好ましい。
【0026】
本発明において、水素発生量は、ガスクロマトグラフ装置を用いて、カーボンブラックを不活性ガス雰囲気中2000℃で15分間加熱した場合の、水素ガス発生量(質量ppm)を意味する。
水素発生量の測定は、より具体的には、次の(i)~(iii)に基づいて行うことができる。(i)カーボンブラックを105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温(23℃)まで冷却する。(ii)(i)で得たカーボンブラック約10mgを精秤し、スズ製のチューブ状サンプル容器に圧着して密栓する。(iii)ガスクロマトグラフ装置を使用して、アルゴン気流下、2000℃で15分間サンプル容器を加熱したときの水素ガス発生量を測定する。
【0027】
(6)ΔD50、Dst
本発明のカーボンブラックは、遠心沈降法で得られる凝集体分布で最多頻度を与えるストークス相当径Dst及び当該Dstを含むピークの半値幅ΔD50との比(ΔD50/Dst)が0.65~0.75である。
ΔD50(nm)は、遠心沈降法で得られた凝集体分布曲線において、その頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅である。
Dstは、JIS K6217-6記載の方法に従って遠心沈降法を用いて得られた凝集体最頻径を指す。このDstをカーボンブラック凝集体の平均径とする。
なお、本発明において、カーボンブラックの凝集体分布とは、体積基準での凝集体分布を意味する。
【0028】
ΔD50/Dstが0.75を超えると、破壊性能が維持できない可能性があり、ΔD50/Dstを0.65未満とすることは困難である。
タイヤの転がり抵抗をより小さくする観点から、ΔD50/Dstは0.65~0.73であることが好ましく、0.66~0.71であることがより好ましく、0.67~0.70であることが更に好ましい。
【0029】
本発明のカーボンブラックの特性について、より具体的な態様に基づき説明する。
【0030】
【0031】
表1に示すカーボンブラックのうち、CB1~CB4のカーボンブラックは、本発明における(1)~(6)の特性要件を全て満たし、CB1~CB4を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性を損ねず、転がり抵抗が小さいと考えられる。
【0032】
これに対し、CB100~CB109のカーボンブラックは、本発明における(1)~(6)の特性要件の1つ以上を満たさない。そのため、これらのカーボンブラックを含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性及び転がり抵抗について、本発明の基準を満たさないと考えられる。具体的には、次の理由によるものと考えられる。
【0033】
CB101は、特性要件(2)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に(4)の特性要件を満たさないため、カーボンブラック同士の擦れ合いが多く、タイヤの転がり抵抗が悪化すると考えられる。従って、CB101を含むゴム組成物から得られるタイヤは、転がり抵抗の低減について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0034】
CB102は、特性要件(1)、(2)及び(6)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に、水素発生量が少ない為、表面活性に劣り、補強性が得られず、また、(5)の特性要件を満たさないため、ゴムとの相互作用力が小さく、耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB102を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0035】
CB103は、特性要件(2)、(4)及び(5)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に、凝集体分布がブロードで、分散性に悪影響を及ぼし、(3)の特性要件を満たさないため、ゴムとの補強力を強くしにくく耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB103を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0036】
CB104は、特性要件(5)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に、DBPが低く、補強性が得られないため、また、(3)の特性要件を満たさないため、ゴムとの補強力を強くしにくく耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB104を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0037】
CB105は、特性要件(5)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に(4)の特性要件を満たさないため、ゴムとの相互作用力が小さく、耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB105を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0038】
CB106は、特性要件(2)及び(4)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。(3)の特性要件を満たさないため、ゴムとの補強力を強くしにくく耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB106を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性 について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0039】
CB107は、特性要件(2)の範囲の上限を上回るため、凝集体の分布が大きくなり、より大きな凝集体成分が破壊核となり耐摩耗性を低下させると考えられる。従って、CB107を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0040】
CB108は、特性要件(5)の範囲の下限を下回り、また、特性要件(6)の範囲の上限を上回るため、ゴムとの相互作用力が小さく、耐摩耗性が低下したと考えられる。従って、CB108を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0041】
CB109は、特許文献1に記載のカーボンブラック5に相当する。
CB109は、特性要件(4)及び(5)を満たすものの、その他の特性要件を満たさない。特に(3)の特性要件を満たさないため、ゴムとの補強力を強くしにくく耐摩耗性は低下すると考えられる。従って、CB109を含むゴム組成物から得られるタイヤは、耐摩耗性 について本発明の基準を満たさず、改善の余地があると考えられる。
【0042】
カーボンブラックのゴム組成物中の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましい。
カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることで、タイヤの耐摩耗性をより向上することができ、100質量部以下であることで、タイヤの転がり抵抗をより小さくすることができる。
耐摩耗性をより向上し、転がり抵抗をより小さくする観点から、カーボンブラックのゴム組成物中の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20~80質量部であることがより好ましく、30~70質量部であることが更に好ましく、35~65質量部であることがより更に好ましい。
【0043】
(カーボンブラックの製造方法)
本発明のカーボンブラックは、上記(1)~(6)の特性を備えるカーボンブラックを製造し得る方法であれば、特に制限されないが、以下に説明する製法に従うことが好ましい。
カーボンブラック製造炉内部は、燃焼帯域と反応帯域と反応停止帯域とを連接した構造であり、その全体は耐火物で覆われている。
カーボンブラック製造炉は、燃焼帯域として、可燃性流体導入室と、炉頭部外周から酸素含有ガス導入管によって導入された酸素含有ガスを、整流板を用いて整流して可燃性流体導入室へ導入する酸素含有ガス導入用円筒と、酸素含有ガス導入用円筒の中心軸に設置され、可燃性流体導入室へ燃料用炭化水素を導入する燃料油噴霧装置導入管とを備える。燃焼帯域内では、燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成する。
【0044】
カーボンブラック製造炉は、反応帯域として、円筒が次第に収れんする収れん室と、収れん室の下流側に例えば4つの原料油噴霧口を含む原料油導入室と、原料油導入室の下流側に反応室とを備える。原料油噴霧口は、燃焼帯域からの高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入する。反応帯域内では、高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼又は熱分解反応により、原料炭化水素をカーボンブラックに転化する。
【0045】
図1は、当該ゴム配合用カーボンブラックを製造するためのカーボンブラック製造炉の一例の部分縦断正面説明図であって、カーボンブラックの原料(原料炭化水素)を含んだ高温ガスが導入される反応室10及び反応継続兼冷却室11を示す。
図1に示すように、カーボンブラック製造炉1は、反応停止帯域として、多段急冷媒体導入手段12を有する反応継続兼冷却室11を備える。多段急冷媒体導入手段12は、反応帯域からの高温燃焼ガス流に対して、水などの急冷媒体を噴霧する。反応停止帯域内では、高温燃焼ガス流を急冷媒体により急冷して反応を終結する。
また、カーボンブラック製造炉1は、反応帯域あるいは反応停止帯域において、ガス体を導入する装置を更に備えてもよい。ここで、「ガス体」としては、空気、酸素と炭化水素の混合物、これらの燃焼反応による燃焼ガス等が使用可能である。
【0046】
燃焼帯域とは、燃料と空気との反応により高温ガス流が生成される領域であり、この下流端は原料油が反応装置内に導入される点(複数位置で導入される場合は最も上流側)、例えば原料油が導入される点よりも上流側(
図1では左側)を指す。
また、反応帯域とは、原料炭化水素が導入された点(複数位置の場合は最も上流側)から反応継続兼冷却室11内の多段急冷水噴霧手段12(これらの手段は反応継続兼冷却室11内で抜き差し自在であり、生産する品種、特性により使用位置は選択される)の作動(水等の冷媒体を導入する)点までを指す。すなわち、例えば第3番目の原料油噴霧口で原料油を導入し、多段急冷媒体導入手段12で水を導入した場合、この間の領域が反応帯域となる。反応停止帯域とは、急冷水圧入噴霧手段を作動させた点よりも下側(
図1では右側)の帯域を指す。
図1において、反応継続兼冷却室11という名称を用いたのは、原料導入時点から前記反応停止用急冷水圧入噴霧手段の作動時点までが反応帯域、それ以降が反応停止帯域であり、この急冷水導入位置が要求されるカーボンブラック性能により移動することがあるためである。
【0047】
ここで、KOH量を減らすことで、DBP吸収量を大きくし易く、圧縮DBP吸収量を大きくし易い。クエンチ量を増やすことで、ΔDBPを大きくし易い。原料炭化水素を増やすことで、CTAB比表面積を大きく(粒子径としては大きく)し易い。反応時間を短くすることで、水素発生量を大きくし易い。空気量を増やすことでシャープ化し、ΔD50/Dstを小さくし易い。
【0048】
〔シリカ〕
本発明のゴム組成物は、充填剤として、更にシリカを含んでいてもよい。
ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~80質量部であることが好ましい。
ゴム組成物がゴム成分100質量部に対して、1~80質量部のシリカを含むことで、耐摩耗性をより向上し、転がり抵抗をより小さくすることができる。
かかる観点から、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1~60質量部であることがより好ましく、1~40質量部であることが更に好ましく、1~20質量部であることがより更に好ましく、1~10質量部であることがより更に好ましく、2~8質量部であることがより更に好ましい。
【0049】
シリカとしては、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロウダルシリカ等が挙げられる。シリカは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
シリカは、タイヤの耐摩耗性をより向上する観点から、CTAB比表面積が、120~200m2/gであることが好ましく、130~180m2/gであることがより好ましく、135~165m2/gであることが更に好ましい。
シリカのCTAB比表面積は、ASTM-D3765-80の方法に準拠した方法で測定することができる。
【0051】
同様の観点から、シリカは、BET比表面積が100~300m2/gであることが好ましく、150~250m2/gであることがより好ましい。BET比表面積を100~300m2/gとすることで、シリカ同士の凝集を抑えるとともに、ゴムの補強性に要する表面積を確保することで、加硫ゴム及びタイヤの耐摩耗性をより向上し易くなる。
シリカのBET比表面積は、ISO 5794/1に準拠した方法で測定することができる。
【0052】
[シランカップリング剤]
本発明のゴム組成物がシリカを含有する場合、ゴム組成物は、更に、シランカップリング剤を用いてもよい。ゴム組成物がシリカと共にシランカップリング剤を含むことで、シリカ-ゴム成分間の結合を強化して補強性をさらに高めた上で、シリカのゴム組成物中の分散性を向上させることができる
本発明のゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量に対して5~15質量%以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量がシリカの含有量に対して15質量%以下であることで、ゴム成分の補強性及び分散性を改良する効果が得られ、経済性も損ないにくい。また、シランカップリング剤の含有量が、シリカの含有量に対して5質量%以上であることで、ごゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができる。
【0053】
なお、シランカップリング剤としては、特に制限されず、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールトリスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が好適に挙げられる。
【0054】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及びシリカ以外の充填剤を含んでいてもよく、かかる充填剤としては、例えば、アルミナ、チタニア等の金属酸化物が挙げられる。
【0055】
(各種成分)
本発明のゴム組成物には、既述のゴム成分、カーボンブラック及びシリカ以外に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤等のゴム業界で通常使用される各種成分を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら各種成分としては、市販品を好適に使用することができる。また、上記ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、適宜選択した各種成分とを配合して、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、インテンシブミキサーなどの密閉型混練り装置、ロールなどの非密閉型混練り装置等を用いて混練り後、熱入れ、押出等することにより調製することができる。
【0056】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、既述の本発明のゴム組成物を含む。
本発明のゴム組成物から得られる加硫ゴムは、耐摩耗性を損ねず、低発熱性に優れることから、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホースなどの種々のゴム製品に用いることができる。
本発明のゴム組成物から得られるタイヤは耐摩耗性を損ねず、転がり抵抗を小さくすることができるので、本発明のゴム組成物はタイヤ用ゴム組成物であることが好ましい。
【0057】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いてなる。
タイヤの構成は、本発明のゴム組成物を用いたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。かかるタイヤは、耐摩耗性が損なわれず、転がり抵抗が小さい。
タイヤにおける本発明のゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タイヤケース、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられる。
タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に本発明のゴム組成物及びコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱し、加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<ゴム組成物の調製>
表3及び4に示す成分を用い、常法に従ってゴム組成物を調製した。
表3及び4中の各成分の詳細は下記のとおりである。
NR:天然ゴム、RSS#1
BR:ブタジエンゴム、JSR社製、商品名「BR01」
カーボンブラック:表3又は4に示す特性を有するN234、CB1~CB3
ここで、N234は、N234級カーボンブラックであり、CB1~CB3は、後述する製法に基づいて製造したカーボンブラックである。
【0060】
シリカ:日本シリカ工業社製、商品名「ニップシールAQ」(CTAB比表面積=150m2/g、BET表面積=220m2/g)
【0061】
ゴム組成物は、表3及び4に示す配合剤の他、ステアリン酸2質量部;酸化亜鉛3.5質量部;大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック 6C」を含む老化防止剤合計1.8質量部;硫黄1.05質量部;その他薬品(ワックス、樹脂、加硫遅延剤を含む)合計2.1質量部;及び加硫促進剤パッケージ1.4質量部を含む。
【0062】
〔CB1~3の製造方法〕
図1に示すカーボンブラック製造炉を用いて、カーボンブラックCB1~3を製造した。製造条件を表2に示す。カーボンブラックCB1~3は表1に示すCB1~3と同じである。
なお、本実施例及び本比較例では用いなかったが、表1に示すカーボンブラックCB4及びCB100~108の製造条件も表2に示す。
【0063】
【0064】
比較例及び実施例で用いたN234及びCB1~3の特性、並びに、表1に示すCB4及びCB100~108の特性は、以下の方法にて求めた。
【0065】
(1)DBP吸収量と(2)圧縮DBP吸収量
DBP吸収量と圧縮DBP吸収量(24M4DBP)ASTM D2414-88(JIS K6217-4:2001)に記載の方法により測定した。
【0066】
(3)ΔDBP
ΔDBPは、測定により得られたDBP吸収量と圧縮DBP吸収量との差分として算出した。
【0067】
(4)CTAB比表面積
CTAB比表面積(m2/g)は、JIS K 6217-3:2001(比表面積の求め方-CTAB吸着法)に準拠した方法で測定した。
【0068】
(5)水素発生量
カーボンブラックを105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温(23℃)まで冷却した。得られたカーボンブラック約10mgを精秤し、スズ製のチューブ状サンプル容器に圧着して密栓した。ガスクロマトグラフ装置を使用して、アルゴン気流下、2000℃で15分間サンプル容器を加熱したときの水素ガス発生量を測定した。
【0069】
(6)遠心沈降法による凝集体分布(ΔD50/Dst)
測定装置としては、Disk Centrifuge Photosedimentometer(DCP)「BI-DCP Particle sizer」(Brookhaven社製)を用いた。また、以下のとおり、ISO/CD 15825-3に準拠して測定した。
若干の界面活性剤を加えた25容量%エタノール水溶液中に、0.05~0.1質量%のカーボンブラックを加え、超音波処理(1/2インチ発振チップ、出力50W)を施して完全に分散させて分散液とした。沈殿液(スピン液)として蒸留水17.5mlを注加した回転ディスクの回転数を8,000rpmとし、上記分散液0.02~0.03mlを注加した。上記分散液の注加と同時に記録計を作動させ、回転ディスクの外周近傍の一定点を沈降により通過するカーボンブラック凝集体量を光学的に測定し、その吸光度(頻度)を時間に対する連続曲線として記録した。沈降時間を下記のストークスの一般式(i)によってストークス相当径dに換算し、凝集体のストークス相当径とその頻度との対応曲線を得た。
d=K/√t (i)
【0070】
上記式(i)において、dは沈殿開始t分後における回転ディスクの光学測定点を通過するカーボンブラック凝集体のストークス相当径(nm)である。定数Kは、測定時におけるスピン液の温度、粘度、カーボンブラックとの密度差(カーボンブラックの真密度を1.86g/cm3とする)、及び回転ディスクの回転数により決定される値である。本実施例及び比較例では、スピン液として蒸留水17.5mlを用い、測定温度23.5℃、ディスク回転数8,000rpmとしたため、定数Kは261.75となった。
この測定結果から、モード径Dst(nm)及び半値幅ΔD50(nm)を得て、比(ΔD50/Dst)を算出した。なお、モード径Dst及び半値幅ΔD50の定義は以下のとおりである。
モード径Dst:上記の凝集体のストークス相当径とその頻度との対応曲線において、最多頻度を与えるストークス相当径のことをいう。
半値幅ΔD50:上記の凝集体のストークス相当径とその頻度との対応曲線において、その頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅のことをいう。
【0071】
<タイヤの製造と評価>
調製したゴム組成物を加硫して試験片とし、加硫ゴムの耐摩耗性及び転がり抵抗(発熱性)を評価した。結果を表3及び4に示す。
【0072】
1.耐摩耗性
試験片を用い、JIS K 6264-2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機を使用して、研磨輪にサンドペーパーを貼り付け、スリップ率6~30%で、室温で摩耗量を測定した。
ゴム成分がNR単独系の比較例1及び実施例1~3においては、比較例1の摩耗量の逆数を100として下記式にて指数表示した。結果を表3に示す。
ゴム成分がNRとBRとの混合系の比較例2~3及び実施例4~8においては、比較例2の摩耗量の逆数を100として下記式にて指数表示した。結果を表4に示す。
指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。
許容範囲は100以上である。
耐摩耗性指数=
{(比較例1のゴム組成物の摩耗量)/(供試ゴム組成物の摩耗量)}×100
【0073】
2.転がり抵抗
加硫ゴムの発熱性から、加硫ゴムから得られるタイヤの転がり抵抗を算出した。
試験片について、粘弾性測定装置を使用し、温度60℃、歪2%、周波数52Hzでtanδを測定した。
ゴム成分がNR単独系の比較例1及び実施例1~3においては、比較例1のtanδを100として下記式にて指数表示した。結果を表3に示す。
ゴム成分がNRとBRとの混合系の比較例2~3及び実施例4~8においては、比較例2のtanδを100として下記式にて指数表示した。結果を表4に示す。
指数値が大きいほど、加硫ゴムは発熱性が低く、加硫ゴムから得られるタイヤは転がり抵抗が小さいことを示す。許容範囲は105以上である。
転がり抵抗指数={(比較例2の加硫ゴム組成物のtanδ)/(供試加硫ゴム組成物のtanδ)}×100
【0074】
3.耐摩耗性と転がり抵抗とのバランス
耐摩耗性指数と転がり抵抗指数との平均値を算出した。結果を表3及び4に示す。
許容範囲は103以上である。
【0075】
【0076】
【0077】
表3及び4から明らかなように、実施例の加硫ゴムは耐摩耗性評価の指数が100以上であり、かつ、転がり抵抗評価の指数が105以上であった。すなわち、実施例のゴム組成物を用いて得られるタイヤは、耐摩耗性を損ねずに、転がり抵抗を低減し得ることを意味する。
比較例の加硫ゴムは、実施例の加硫ゴムに比べ、転がり抵抗評価の指数が小さかった。これは、比較例のゴム組成物を用いて得られるタイヤは、耐摩耗性を向上することができても、転がり抵抗の低減を同時に達成することができないことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のゴム組成物を用いることで、耐摩耗性を損なわずに、転がり抵抗の小さいタイヤが得られるため、本発明のゴム組成物は、乗用車用、軽乗用車用、軽トラック用及び重荷重用{トラック・バス用、オフザロードタイヤ用(鉱山用車両用、建設車両用、小型トラック用等)}等の各種タイヤのタイヤケース、トレッド部材等の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0079】
1 カーボンブラック製造炉
10 反応室
11 反応継続兼冷却室
12 多段急冷媒体導入手段