(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】注射デバイス用のフィードバック機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20240731BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61M5/20 500
A61M5/315 550G
A61M5/315 550V
(21)【出願番号】P 2019522835
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2017076048
(87)【国際公開番号】W WO2018082886
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・バウマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ノーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート・フートマッハー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヤニアク
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】安井 寿儀
【審判官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519135(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって、
リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように使用中に第1の位置から第2の位置へ動くプランジャを有する薬剤送達機構と、
使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイス用のフィードバック機構であって:
遅延要素に力を加えるように配置された付勢部材、ならびに前記力を受けて変形および/または破断するように構成された該遅延要素と;
該遅延要素が変形および/または破断した後に可聴および/または触覚使用者フィードバックを生成するように配置されたインジケータとを含み;
ここで、遅延要素は、変形および/または破断して、力を加えることと使用者フィードバックの生成の間に時間の遅延を生み出すように構成される、前記フィードバック機構とを含み、
前記フィードバック機構は、遅延要素に取り付けられた可動部材を含み、付勢部材は、遅延要素に力が加えられるように、可動部材に力を加え、
前記プランジャは、第1の位置で、プランジャが可動部材に係合して可動部材の動きを防止し、第2の位置で、プランジャが可動部材を係合解除するように配置される、
前記注射デバイス。
【請求項2】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された細いセクションを有する部材を含む、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された弾性変形可能な部材を含む、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された塑性変形可能な部材を含む、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項5】
フィードバック機構は、可動部材を含み、遅延要素は、可動部材および固定具に取り付けられ、付勢部材は、遅延要素に力が加えられるように、可動部材を前記固定具に対して付勢する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
インジケータは、遅延要素が変形および/または破断して可動部材が動いた後に前記使用者に対するフィードバックを生成する可動部材を含む、請求項
5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
可動部材は、ピボットに旋回式に取り付けられたアームを含み、付勢部材は、アームを付勢してピボットの周りで回転させるように配置される、請求項
5または
6に記載の注射デバイス。
【請求項8】
インジケータは、遅延要素が変形および/または破断した後に可動部材に衝突されて音を生成するように配置された音発生器を含む、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
インジケータは、プリストレス要素を含み、該プリストレス要素は、可動部材がプリストレス要素を偏向状態で保持するように配置され、可動部材が動かされた時点で、プリストレス要素は非偏向状態へ動き、可動部材が動かされて、使用者フィードバックを生成する、請求項
5~
8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
保持機構は、前記注射デバイスのプランジャを含む、請求項
5~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
遅延要素は、可動部材および固定具に取り付けられる、請求項1~
10のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
プランジャの第2の位置は、注射デバイスが前記使用者への薬剤の送達を完了した後のプランジャの位置に対応する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
シリンジは、薬剤を収容する、請求項1~
12のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイス用のフィードバック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器などの注射デバイスは、典型的にはシリンジを有しており、シリンジにプランジャを押し込んで、針を介してシリンジから患者へ薬剤を投薬する。この注射プロセスは、プランジャがシリンジ内へ適当な距離だけ押し込まれると完了する。適当な体積の薬剤が注射されたことを使用者に示すフィードバック機構を提供することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、遅延使用者フィードバックを提供する注射デバイス用のフィードバック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイス用のフィードバック機構であって:
遅延要素に力を加えるように配置された付勢部材、ならびに前記力を受けて変形および/または破断するように構成された遅延要素と;
遅延要素が変形および/または破断した後に使用者フィードバックを生成するように配置されたインジケータとを含み;
ここで、遅延要素は、付勢部材によって力が加えられた後のある時点で変形および/または破断し、使用者フィードバックが生成される前に遅延を生み出すように構成される、フィードバック機構が提供される。
【0005】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された細いセクションを有する部材を含むことができる。
【0006】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された弾性変形可能な部材を含むことができる。
【0007】
別法として、遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された塑性変形可能な部材を含むことができる。
【0008】
遅延要素は、付勢部材の力によって変形および/または破断するように構成された可撓性テザーを含むことができる。
【0009】
フィードバック機構はまた、可動部材を含むことができ、遅延要素は、可動部材および固定具に取り付けることができる。付勢部材は、遅延要素に力が加えられるように、可動部材を前記固定具に対して付勢することができる。
【0010】
インジケータは、遅延要素が変形および/または破断して可動部材が動いた後に前記使用者に対するフィードバックを生成する可動部材を含むことができる。
【0011】
可動部材は、ピボットに旋回式に取り付けられたアームを含むことができ、付勢部材は、アームを付勢してピボットの周りで回転させるように配置することができる。
【0012】
可動部材は、板を含むことができ、付勢部材は、板に作用するように配置することができる。
【0013】
インジケータは、遅延要素が変形および/または破断した後に可動部材に衝突されて音を生成するように配置された音発生器を含むことができる。
【0014】
インジケータは、プリストレス要素を含むことができ、プリストレス要素は、可動部材が動かされるまで、可動部材がプリストレス要素を偏向状態で保持するように配置され、可動部材が動かされた時点で、プリストレス要素は非偏向状態へ動き、使用者フィードバックを生成する。
【0015】
フィードバック機構は、遅延要素が変形または破断しないように、可動部材を保持するように配置された保持機構をさらに含むことができ、保持機構は、遅延要素が付勢部材の力によって変形および/または破断するように、可動部材を解放するようにさらに配置することができる。
【0016】
保持機構は、前記注射デバイスが前記使用者への薬剤の送達を完了した後に可動部材を解放するように構成することができる。
【0017】
保持機構は、前記注射デバイスのプランジャを含むことができる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、薬剤送達機構を含む注射デバイスであって、薬剤送達機構は、リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように動くプランジャと、上述したフィードバック機構とを有する、注射デバイスも提供される。使用中、プランジャは、第1の位置から第2の位置へ動くことができる。第1の位置は、プランジャの開始位置に対応することができる。第2の位置は、注射デバイスが前記使用者への薬剤の送達を完了した後のプランジャの位置に対応することができる。
【0019】
一例では、フィードバック機構は、遅延要素に取り付けられた可動部材を含むことができ、付勢部材は、遅延要素に力が加えられるように、可動部材に力を加えることができる。
【0020】
プランジャは、第1の位置で、プランジャが可動部材に係合して可動部材の動きを防止し、第2の位置で、プランジャが可動部材を係合解除するように配置することができる。
【0021】
一例では、遅延要素は、可動部材および固定具に取り付けることができる。別法として、遅延要素は、可動部材およびプランジャに取り付けることができる。
【0022】
可動部材は、板を含むことができ、付勢部材は、板に作用するように配置することができる。
【0023】
注射デバイスは、板に係合するロッキングアームをさらに含むことができ、ロッキングアームは、第1の位置で、プランジャがロッキングアームの回転を防止し、板がロッキングアームによって保持され、第2の位置で、ロッキングアームが自由に回転して板を解放することができるように旋回式に取り付けられる。
【0024】
遅延要素は、遅延要素が変形および/または破断するまで、ロッキングアームの回転に抵抗するように配置することができる。
【0025】
シリンジは、場合により、薬剤を収容することができる。
【0026】
一例では、薬剤送達機構およびフィードバック機構を含む注射デバイスが提供される。薬剤送達機構は、リザーバと、使用中に第1の位置から第2の位置へ動き、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するための薬剤をリザーバから変位させるプランジャとを含むことができる。フィードバック機構は、可動部材、付勢部材、および遅延要素を含むことができ、付勢部材は、遅延要素に力が加えられるように、可動部材に作用するように配置され、遅延要素は、付勢部材によって力が加えられた後のある時点で変形および/または破断するように構成される。フィードバック機構はまた、遅延要素が変形および/または破断した後に使用者フィードバックを生成するように配置されたインジケータを含むことができる。プランジャは、第1の位置で、プランジャが可動部材の動きを防止し、第2の位置で、前記力が付勢部材によって遅延要素に加えられるようにプランジャが可動部材を解放するように配置することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、注射デバイスを使用する方法であって:
使用者に薬剤を送達することと;
遅延要素に力を加えて遅延要素を変形および/または破断させることと;
遅延要素が変形および/または破断した後に使用者フィードバックを生成することとを含み;
ここで、力が加えられた後のある時点で遅延要素が変形および/または破断するように、遅延が提供される、方法も提供される。
【0028】
本発明の上記その他の態様は、後述する実施形態から明らかになり、これらの実施形態を参照することによって解明される。
【0029】
本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本発明を実施する注射デバイスおよび取外し可能なキャップの概略側面図である。
【
図1B】キャップがハウジングから取り外された、
図1Aの注射デバイスの概略側面図である。
【
図2A】遅延機構が、旋回式に取り付けられたアームと、遅延要素とを有し、遅延機構は、注射デバイスが使用される前の状態で示されている、注射デバイス用の遅延機構の側断面図である。
【
図2B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、
図2Aの遅延機構の側断面図である。
【
図4A】遅延機構が、旋回式に取り付けられたアームと、遅延要素とを有し、遅延機構は、注射デバイスが使用される前の状態で示されている、注射デバイス用の遅延機構の側断面図である。
【
図4B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、
図4Aの遅延機構の側断面図である。
【
図5A】遅延機構が、キャリアおよび破断可能な遅延要素を有し、遅延機構は、注射デバイスが使用される前の状態で示されている、注射デバイス用の遅延機構の側断面図である。
【
図5B】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、
図5Aの遅延機構の側断面図である。
【
図6A】遅延機構が、キャリアと、遅延要素である破断可能なテザーとを有し、遅延機構は、注射デバイスが使用される前の状態で示されている、注射デバイス用の遅延機構の側断面図である。
【
図6B】注射デバイスの使用中の状態で示されている、
図6Aの遅延機構の側断面図である。
【
図6C】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、
図6Aおよび
図6Bの遅延機構の側断面図である。
【
図7A】遅延機構は、キャリアと、遅延要素が一体化された回転可能なアームとを有し、遅延機構は、注射デバイスが使用される前の状態で示されている、注射デバイス用の遅延機構の側断面図である。
【
図7B】注射デバイスの使用中の状態で示されている、
図7Aの遅延機構の側断面図である。
【
図7C】注射デバイスが使用された後の状態で示されている、
図7Aおよび
図7Bの遅延機構の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に記載する薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスの使用者は、患者、または看護師もしくは医師などの医療従事者であり、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要のあるカートリッジ式のシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、「大きい」体積の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するために一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に粘着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0032】
特定の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要な仕様で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、ある期間(たとえば、自動注射器の場合は最大約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約1cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因により生じることがある。したがって、薬物送達デバイスは、多くの場合、サイズが約25~約31ゲージの中空針を含む。一般的なサイズは、17、29、および31ゲージである。
【0033】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0034】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、アクチュエータ、たとえばボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1つの工程または複数の工程からなるプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1つの工程からなるプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを自分の体に押し当てることで、薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能を複数の工程によって起動することを必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させることが必要となることがある。
【0035】
追加として、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の後続の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特定の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスで動作することができる。
【0036】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的にはペン注射器に見られる)とを含むことができる。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が
図1Aおよび
図1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、患者の体に薬剤を注射するように構成される。デバイス10は、典型的には注射予定の薬剤を収容するシリンジ18を収容するハウジング11と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを含む。また、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップ12が設けられる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、ハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0038】
図示のように、ハウジング11は実質上円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
【0039】
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ19を含むことができ、ハウジング11に対するスリーブ19の動きが可能にされるようになっている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに対して平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ19が近位方向に動くことで、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びることを可能にすることができる。
【0040】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定して配置することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ19内に位置することができる。スリーブ19の遠位端を患者の体に当て、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ19が近位に動くことで、針17の遠位端が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ19に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0041】
別の形態の挿入は「自動化」されており、それによって針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ19の動きまたはたとえばボタン13などの別の形態の起動によってトリガすることができる。
図1Aおよび
図1Bに示すように、ボタン13は、ハウジング11の近位端に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン13がハウジング11の側面に位置することもできる。
【0042】
他の手動または自動機能は、薬物の注射もしくは針の後退または両方を含むことができる。注射とは、栓14をシリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位の位置へ動かし、針17を通って薬剤をシリンジ18から押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、栓14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されたエネルギーの少なくとも一部を栓14の近位面に加えることができる。この圧縮力は、栓14に作用して栓14を遠位方向に動かすことができる。そのような遠位運動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
【0043】
注射後は、針17をスリーブ19またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者が患者の体からデバイス10を取り外すにつれてスリーブ19が遠位に動くときに行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定して配置されたままであるために行うことができる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を越え、針17が覆われた後、スリーブ19をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19のあらゆる近位運動をロックすることを含むことができる。
【0044】
別の形態の針の後退は、針17がハウジング11に対して動かされた場合に行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のシリンジ18がハウジング11に対して近位方向に動かされた場合に行うことができる。この近位運動は、遠位領域D内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、シリンジ18を近位方向に動かすのに十分な力をシリンジ18に供給することができる。十分な後退後は、ロッキング機構により、針17とハウジング11との間のあらゆる相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、デバイス10のボタン13または他の構成要素をロックすることができる。
【0045】
図2Aおよび
図2Bは、
図1Aおよび
図1Bを参照して記載したものなどの注射デバイス用のフィードバック機構20の第1の例を示す。
図2Aおよび
図2Bは、注射デバイスのプランジャ21を示し、プランジャ21は、注射デバイスの使用中に薬剤を投薬するために、
図2Aに示す位置から、
図2Bに示す位置へ動く。特に、
図1Aおよび
図1Bを参照して記載したように、プランジャ21は、プランジャ21が動くにつれて栓をシリンジ内へ押し込むことができ、これにより、たとえば針を通って、シリンジから薬剤を投薬することができる。
【0046】
図示のように、プランジャ21を動かすために、駆動ばね22が設けられる。駆動ばね22は予荷重されたものとすることができ、プランジャ21を解放するための解放機構を設けることができ、したがって駆動ばね22は、前述したように、プランジャ21を動かして、薬剤を投薬することができる。注射デバイスのハウジング23が、
図2Aおよび
図2Bに部分的に示されている。
【0047】
図示のように、フィードバック機構20はアーム24を含み、アーム24は、ハウジング23上の固定具26に旋回式に取り付けられた第1の端部25を有する。アーム24の第1の端部25は、ピボット27によって固定具26に旋回式に取り付けられる。アーム24の第2の端部28は、遅延要素30を介して、ハウジング23の隣接部材上の固定具29に取り付けられる。アーム24を付勢してピボット27の周りを
図2Aおよび
図2Bで時計回り方向に回転させる付勢部材(図示せず)が設けられる。付勢部材は、ねじりばねとすることができる。したがって、付勢部材は、アーム24を付勢してピボット27の周りで回転させ、
図2Aに示すように、注射デバイスが使用される前、アーム24はプランジャ21の側面に当接し、回転が防止される。この位置で、アーム24および遅延要素30は安定した位置にある。
【0048】
しかし、プランジャ21が薬剤の送達中に動いたとき、プランジャ21はアーム24を係合解除し、このとき遅延要素30のみがピボット27の周りのアーム24の回転を防止する。特に、付勢部材の回転力により、遅延要素30は引張荷重を受け、
図2Bに示すように、この引張荷重は、遅延要素30を破断してアーム24が回転することを可能にするのに十分である。
【0049】
アーム24の回転により、使用者フィードバックが提供される。特に、アーム24は、アーム24の一部がプランジャ21の側面および/または駆動ばね22の一部に接触するように回転することができる。この衝突により、使用者にフィードバックを提供する音または触覚作用を生み出すことができる。他の例では、アーム24の回転により、スイッチを閉じることができ、またはアーム24が可視位置へ動いて、使用者フィードバックを提供することができる。この例では、説明したように、アーム24、ならびにアーム24が衝突するハウジング23および/または駆動ばね22が、使用者フィードバックを生成するインジケータを形成する。
【0050】
上記で説明したように、引張荷重が遅延要素30に加えられ、遅延要素30は破断してアーム24の回転を可能にする。遅延要素30は、引張荷重が加えられた後のある時点で破断して、プランジャ21がアーム24から係合解除されてから使用者フィードバックが生成されるまでの間に、遅延を生み出すように構成される。
【0051】
特に、遅延要素30は、材料クリープ性(material creep tendency)を有するように設計され、したがって遅延要素30は、破損してアーム24の回転を可能にするまで、引張荷重によりゆっくりと変形して細長くなる。これにより、負荷が遅延要素30に加えられてから遅延要素30が破断して使用者フィードバックが生成されるまでの間に、時間遅延が生み出される。
【0052】
この例では、アーム24およびプランジャ21は、すべてまたはほぼすべての薬剤が注射された後にプランジャ21がアーム24から係合解除されるように配置される。このようにして、注射の終了時または終了頃にのみ、引張荷重が遅延要素30にかかる。遅延要素30によって提供される使用者フィードバックが生成される前のさらなる遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0053】
遅延要素30は、使用される材料および遅延要素30の形態に応じて、締付け、溶接、もしくは接着、または別の好適な形態の取付けによって、固定具29に取り付けることができる。
【0054】
図3Aに示すように、遅延要素30の第1の例は、遅延要素30の端部32より断面が小さい細いセクション31を含む。細いセクション31は、遅延要素30のうち使用中に遅延要素30に加えられる引張荷重によって破断される部分になるように構成される。
【0055】
遅延要素30によって提供される遅延の持続時間は、細いセクション31の断面、加えられる力、および遅延要素30の材料特性を含むいくつかの要因に依存する。異なる特徴、たとえば送達用量サイズまたは薬剤粘性を有するデバイスおよび薬剤に対して、異なる断面積を有する異なる遅延要素を提供することができる。
【0056】
図3Bは、
図3Aの例の細いセクション31より断面積が大きい細いセクション31を有する別の例示的な遅延要素30を示す。材料および引張荷重が同じ場合、この遅延要素30は、アーム24を解放するためにより多くの材料を破断しなければならないため、
図3Aの遅延要素30より長い遅延を生み出す。
【0057】
図3Aおよび
図3Bの例の場合、強い衝突力を必要とすることなく引張荷重により遅延要素30が破断するように、粘弾性のクリープ特性を有する材料を選択することが好ましい。
【0058】
好適な材料の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーが挙げられる。
【0059】
他の例では、遅延要素30は、使用中に加えられる力によって細長くなった後も破損しない変形可能な材料から作ることができる。このようにして、遅延要素30は、付勢部材の引張荷重を受けると変形し、アーム24が回転することが可能になり、前述したように使用者フィードバックを生成することができる。この例では、遅延要素30は、弾性バンドとすることができ、または遅延要素30は、エラストマー、たとえばイソブチレンイソプレンブチル、アクリロニトリルブタジエン、もしくはシリコーンゴムなどのゴムを含むことができる。遅延要素30は、弾性または塑性変形可能とすることができる。
【0060】
図3Cは、そのような変形可能な遅延要素30の一例を示し、遅延要素30は、ハウジング23上の固定具29およびアーム24の第2の端部28の周りに巻かれたエラストマー材料のバンド33の形態である。プランジャ21が動いて薬剤を投薬した後、使用者フィードバックが生成されるまで、付勢部材によって提供される引張荷重により、変形可能な遅延要素30が引き伸ばされる。変形可能な遅延要素30は、アーム24の回転運動を抑制し、使用者フィードバックが生成される前に遅延を生み出す。
【0061】
図4Aおよび
図4Bは、
図2Aおよび
図2Bのものに類似している注射デバイス向けの例示的なフィードバック機構20を示し、フィードバック機構20は、注射デバイスから薬剤を投薬するように駆動ばね22によって動かされるプランジャ21と、ハウジング23に旋回式に取り付けられたアーム24とを有している。
図4Aおよび
図4Bに示すように、アーム24の第1の端部25は、ハウジング23上の固定具26に旋回式に取り付けられており、付勢部材(図示せず)がアーム24に回転力を加えて、アーム24を時計回り方向に付勢する。付勢部材はねじりばねとすることができる。
【0062】
この例では、ハウジング23の隣接部材が、固定具34および棒材35を有し、遅延要素30が、アーム24を固定具34に取り付け、棒材35の周りに延びる。特に、遅延要素30は、棒材35、固定具34、およびアーム24の第2の端部28を覆うように曲げられまたは巻き付けられている。この例では、遅延要素30は、
図3Cに示したものに類似している変形可能な材料、たとえばエラストマー材料のバンド33である。バンド33の端部は、固定具34およびアーム24の第2の端部28の周りに巻き付けられ、バンド33は棒材35を覆うように巻き付けられる。
【0063】
図4Aに示すように、最初の位置で、プランジャ21は、アーム24が回転するのを防止し、アーム24は、音発生器36を偏向状態で保持する。
【0064】
音発生器36はプリストレス要素であり、最初は偏向状態(
図4A)で保持されており、次いでアーム24が音発生器36を解放すると非偏向状態(
図4B)へ動く。図示のように、ハウジング23は突起37を含んでおり、アーム24は、アーム24が音発生器36を解放するまで、音発生器36を突起37に押し付けて偏向状態で保持する。音発生器36を定位置で保持するために、保持部材38が位置する。この音発生器36の状態変化により、可聴音、たとえばクリック音が生成され、使用者フィードバックが提供される。この例では、音発生器36は、使用者フィードバックを生成するインジケータである。
【0065】
したがって、プランジャ21が動いて薬剤を投薬した後、アーム24は解放されて回転し、音発生器36が解放され、使用者フィードバックを生成する。アーム24の回転は、アーム24が音発生器36を解放するのに十分なほど回転するために引き伸ばさなければならない遅延要素30によって抑制される。
【0066】
この例では、遅延要素30は、上述したように弾性バンド33とすることができ、または遅延要素30は、別法として、エラストマー、たとえばイソブチレンイソプレンブチル、アクリロニトリルブタジエン、もしくはシリコーンゴムなどのゴムを含むことができる。
【0067】
この例では、アーム24およびプランジャ21は、すべてまたはほぼすべての薬剤が注射された後にプランジャ21がアーム24から係合解除されるように配置される。このようにして、注射の終了時または終了頃にのみ、引張荷重が遅延要素30にかかる。遅延要素30によって提供される使用者フィードバックが生成される前のさらなる遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0068】
代替の例では、遅延要素30は、アーム24の回転によって提供される力を受けて破断するように構成することができる。
【0069】
代替の例では、音発生器36は、アーム24が回転するように付勢する付勢力を提供することができ、したがってアーム24に作用する追加の付勢部材は必要ない。
【0070】
図5Aおよび
図5Bは、注射デバイス用の遅延要素30の別の例を示し、注射デバイスは、プランジャ21と、注射デバイスの使用中にプランジャ21を動かして薬剤を投薬する駆動ばね22とを含む。
【0071】
この例では、プランジャ21のそれぞれの側で、ピボット40上にロッキングアーム39が取り付けられ、したがってプランジャ21は、プランジャ21が薬剤を投薬するときにロッキングアーム39の端部41を越えるまで、ロッキングアーム39の回転を防止する。
【0072】
ロッキングアーム39の近位端42は、板44に係合して保持する反り43を含む。駆動ばね22は、板44とプランジャ21との間に作用して、これらを離すように付勢し、したがってプランジャ21が動いて薬剤を投薬する。
【0073】
しかし、
図5Bに示すように、駆動ばね22がロッキングアーム39の端部41を越えるまでプランジャ21を押した後、ロッキングアーム39は自由に回転することができ、駆動ばね22の力が板44を通って内向きの反り43に作用することで、ロッキングアーム39が回転して板44を解放する。ここで駆動ばね22は、板44を近位方向に付勢する。
【0074】
板44と注射デバイスのハウジング23との間には、駆動ばね22とは板44の反対側に、遅延要素45が配置される。したがって、板44がロッキングアーム39によって解放された後、駆動ばね22の力が遅延要素45を圧縮する。
【0075】
図示のように、遅延要素45は、駆動ばね22の圧縮力を受けて変形し、次いで破断するように構成され、遅延要素45の破断により、可聴音を生成し、使用者フィードバックを提供することができる。この例では、遅延要素45は、破断したときに使用者フィードバックを生成するインジケータである。
【0076】
遅延要素45は、ロッキングアーム39によって板44が解放されてもすぐには破断せず、したがって薬剤投薬の終了(プランジャ21がロッキングアーム39を解放する)から使用者にフィードバックが提供される(遅延要素45が破断する)までの間に遅延が生み出される。
【0077】
遅延要素45は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーを含むことができる。別法として、遅延要素45は、金属、たとえば鋼または銅を含むことができる。
【0078】
図示のように、遅延要素45は、1対の対向する傾斜板46、47を含み、傾斜板46、47は、傾斜板46、47が交わる点48を画成するように配置される。このようにして、圧縮負荷が加えられたとき、遅延要素45はこの点48で折り畳まれ、その後点48の材料が破損して、使用者フィードバックを生成する。
【0079】
この例の遅延要素45は、圧縮負荷が遅延要素45にかけられた後のある時点で破断するように構成され、したがってプランジャ21がロッキングアーム39を解放してから使用者フィードバックが生成されるまでの間に遅延が生み出される。遅延は、遅延要素45の変形中、遅延要素45が破損するまでとすることができる。
【0080】
図6A、
図6B、および
図6Cは、
図5Aおよび
図5Bのものに類似している注射デバイス用のさらなる例示的なフィードバック機構20を示す。特に、
図6Aに示すように、注射デバイスはプランジャ21を含み、プランジャ21を動かして薬剤を投薬するように、駆動ばね22が配置される。
図5Aおよび
図5Bの例と同様に、ロッキングアーム39および板49が配置され、板49は、駆動ばね22によって押されて、ロッキングアーム39によって(内向きの反り43を介して)把持されており、その後プランジャ21がロッキングアーム39を越え(
図6B)、次いで回転して板49を解放する(
図6C)。
【0081】
この例では、遅延要素50がプランジャ21を板49につないでいる。特に、図示のように、遅延要素50は、板49からプランジャ21へ延びるテザーであり、両方につながれている。テザー50は可撓性であり、ロープまたは糸に類似している。テザー50は、板49内の孔51を通って延び、他方の側には保持部材52が設けられ、テザー50は、プランジャ21内の孔53を通って延び、他方の側には保持部材54が設けられる。
【0082】
したがって、板49がロッキングアーム39によって解放された後、駆動ばね22の力がすべてテザー50に加えられる。テザー50は遅延後に張力を受け、
図6Cに示すようにテザー50は破断する。
【0083】
テザー50は、引き伸ばされて変形してから破断することができ、または引張荷重を受けて伸長なく破断することができる。テザー50が破断したとき、板49は遠位にハウジング23の内側に押し付けられ、板49とハウジング23との間の衝突により、使用者に対する可聴および/または触覚フィードバックが生成される。この例では、板49、および板49が衝突するハウジング23が、使用者フィードバックを生成するインジケータをともに形成する。
【0084】
この例のテザー50は、引張荷重がテザー50にかかった後のある時点で破断するように構成され、したがってプランジャ21がロッキングアーム39を解放してから使用者フィードバックが生成されるまでの間に遅延が生み出される。テザー50は、クリープ性を有する材料から作ることができ、したがって切れて破断する前に、テザー50の一部が変形して引き伸ばされる。テザー50は、駆動ばね22の引張荷重を受けて所定の時間後に切れるように設計されている弱くした領域、たとえば薄くした領域を含むことができる。
【0085】
テザー50は、可撓性ポリマーを含むことができ、巻いた繊維から作ることができる。たとえば、テザー50は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、またはポリエチレンの繊維を含むことができる。
【0086】
プランジャ21がロッキングアーム39を越えてはじめて板49が解放されるため、注射デバイスの使用中に薬剤が注射された後のある時点で使用者フィードバックが提供される。したがって、この遅延により、使用者フィードバックが生成される前に、薬剤が注射部位から分散する時間を提供することができ、使用者フィードバックが生成された時点で、使用者は注射デバイスを取り外すことを知る。
【0087】
代替の例では、テザー50は、板49がハウジング23に到達するまで変形する。板49がハウジング23に当接した後、板49はスイッチに接触することができ、または使用者に見えることができ、それによって使用者フィードバックが提供される。
【0088】
図7A、
図7B、および
図7Cは、注射デバイス用のさらなる例示的なフィードバック機構20を示す。
図7Aに示すように、注射デバイスはプランジャ21を含み、プランジャ21を動かして薬剤を投薬するように、駆動ばね22が配置される。
図5Aおよび
図5Bの例と同様に、ロッキングアーム55および板56が配置され、板56は、駆動ばね22によって押されて、ロッキングアーム55によって(内向きの反り43を介して)把持されており、
図7Bおよび
図7Cに示すように、その後プランジャ21がロッキングアーム55を越え、次いで回転して板56を解放する。
【0089】
この例では、ロッキングアーム55と注射デバイスのハウジング23の部材58との間に遅延要素57が設けられる。特に、
図7Aに示すように、遅延要素57は、各ロッキングアーム55の端部とハウジング23の隣接部材58との間に延びる。これらの遅延要素57は、プランジャ21がロッキングアーム55を越えた後、ロッキングアーム55の回転を遅延させるように作用する。
【0090】
図7Bおよび
図7Cに示すように、アーム55が回転した後、板56は解放され、駆動ばね22によって遠位にハウジング23の内側に押し付けられ、板56とハウジング23との間の衝突により、使用者に対する可聴および/または触覚フィードバックが生成される。この例では、板56、および板56が衝突するハウジング23が、使用者フィードバックを生成するインジケータをともに形成する。
【0091】
図7Bの例では、駆動ばね22および板56がロッキングアーム55を付勢して回転させると、遅延要素57は、ロッキングアーム55によって遅延要素57に加えられる剪断力によって破断される。すなわち、プランジャ21がロッキングアーム55を越えた後、駆動ばね22の力により、板56が内向きの反り43に対して付勢され、ロッキングアーム55が付勢されてピボット40の周りで回転する。これにより、遅延要素57に剪断負荷が加えられる。
【0092】
遅延要素57は、遅延後、この剪断負荷を受けて破断するように構成される。遅延要素57は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーを含むことができる。別法として、遅延要素57は、金属、たとえば鋼または銅を含むことができる。遅延要素57は、剪断負荷によって破断する箔を含むことができる。
【0093】
図7Cの例では、駆動ばね22および板56がロッキングアーム55を付勢して回転させると、遅延要素57は、ロッキングアーム55によって遅延要素57に加えられる剪断力によって変形される。すなわち、プランジャ21がロッキングアーム55を越えた後、駆動ばね22の力により、板56が内向きの反り43に対して付勢され、ロッキングアーム55が付勢されてピボット40の周りで回転する。これにより、遅延要素57に剪断負荷が加えられる。遅延要素57は、板56が内向きの反り43を越えるのに十分なだけロッキングアーム55が回転することを可能にするのに十分に変形するだけでよい。
【0094】
遅延要素57は、遅延後、この剪断負荷を受けて変形するように構成される。遅延要素57は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーを含むことができる。別法として、遅延要素57は、金属、たとえば鋼または銅を含むことができる。遅延要素57は、剪断負荷によって変形する箔を含むことができる。
【0095】
プランジャ21がロッキングアーム55を越えてから板56が解放されるまでの間に生み出される、遅延要素57によって提供される遅延により、使用者フィードバックが注射デバイスを使用者から取り外すことができることを示す前に、薬剤が注射部位から分散する時間が可能になる。
【0096】
図5A~
図5B、
図6A~
図6C、および
図7A~
図7Cを参照して説明したものに類似している代替の例では、ロッキングアーム39、55を付勢して回転させるために、付勢部材を設けることができる。プランジャ21は、プランジャ21がロッキングアーム39、55を越え、付勢部材が遅延要素45、50、57に力を加えるまで、ロッキングアーム39、55の回転を防止する。付勢部材は、ねじりばねとすることができる。遅延要素45、50、57が変形および/または破断した後、付勢部材により、ロッキングアーム39、55が回転してハウジング23に衝突し、可聴および/または触覚使用者フィードバックが生成される。ロッキングアーム39、55に作用するこの付勢部材は、
図5A~
図5B、
図6A~
図6C、および
図7A~
図7Cを参照して説明した板44、49、56に対する追加または代替として設けることができる。
【0097】
本明細書に記載する例のそれぞれにおいて、遅延要素30、45、50、57に力が加えられ、遅延要素30、45、50、57は、遅延後に破断および/または変形する。遅延要素30、45、50、57は、予測可能および反復可能な遅延、または最小の遅延を提供するように構成される。遅延の持続時間は、注射デバイスのタイプ、注射される薬剤の特性、および他のそのような要因に基づいて選択することができる。
【0098】
様々な例では、遅延の持続時間は、2秒を超え、または5秒を超え、または10秒を超え、または20秒を超え、または30秒を超えることができる。他の例では、遅延の持続時間は、5秒~30秒とすることができ、または遅延は、5秒~20秒とすることができ、または遅延は、5秒~15秒とすることができる。さらなる例では、遅延の持続時間は、1分未満、または45秒未満、または30秒未満とすることができる。
【0099】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0100】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0101】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0102】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0103】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0104】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0105】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0106】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0107】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0108】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0109】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0110】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0111】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0112】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0113】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0114】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0115】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0116】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0117】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。