(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
A61M5/168 500
(21)【出願番号】P 2020015127
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-524361(JP,A)
【文献】特開2005-296092(JP,A)
【文献】特開2009-285150(JP,A)
【文献】特開平03-070577(JP,A)
【文献】特開2013-063127(JP,A)
【文献】特開2005-323813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入装置であって、
内側に薬液を収容するルーメンが形成された中空シャフトを有するカテーテルと、
前記ルーメンに挿入されるワイヤと、
制御信号に基づき、前記ワイヤを前記ルーメン内で基端から先端側に向かって前進させることにより、前記ワイヤの前進量に応じて予め定められた量の前記薬液を前記中空シャフトの先端から吐出させるワイヤ移動装置と、
を備え
、
前記ワイヤ移動装置は、
前記ワイヤを前進させるワイヤ駆動部と、
前記ワイヤの前進距離を検出する距離検出センサと、
制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記距離検出センサの検出結果に基づいて得られた前記ワイヤの前記前進距離が、前記予め定められた量に相当する距離であると判定したとき、前記ワイヤ駆動部の作動を停止させる処理を実行する、薬液注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記カテーテルは、前記中空シャフトの先端に、中空の針部を有する、
薬液注入装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ移動装置において、前記ワイヤ駆動部と前記制御装置とは、着脱可能に構成されている、
薬液注入装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項3までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ駆動部は、前記ルーメンへ前記ワイヤを送り出すことで前記ワイヤを前進させ、かつ、前記ルーメンから前記ワイヤを巻き取ることで前記ワイヤを後退させる、
薬液注入装置。
【請求項5】
請求項
1から請求項
4までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ駆動部は、
前記ワイヤの基端側の一部分が巻回されたワイヤ巻回部と、
前記ワイヤ巻回部に接続されたハンドル部と、を有し、
前記ワイヤ巻回部は、前記ハンドル部の回転量に応じた長さの前記ワイヤを送り出し、かつ、巻き取る、薬液注入装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の薬液注入装置であって、
前記カテーテルの基端部に接続され、前記ワイヤの基端側の一部分および前記ワイヤ駆動部の一部分を収納する収納部を備える、
薬液注入装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ移動装置は、さらに、前記ワイヤ巻回部から送り出された前記ワイヤを、前記ルーメンに向かって押し出すワイヤ押出部を備え、
前記ワイヤ押出部は、前記ハンドル部の回転に応じて回転する第1のローラと第2のローラとを含んでおり、前記第1のローラと前記第2のローラとによって前記ワイヤを挟持して押し出す、
薬液注入装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の薬液注入装置であって、
前記収納部は、さらに、前記ワイヤ押出部と前記カテーテルの基端部との間に設けられ、前記ルーメン内の薬液の前記収納部内への移動を規制する弁部材を備える、
薬液注入装置。
【請求項9】
請求項
5から請求項
8のいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記カテーテルは、さらに、前記中空シャフトの基端部に接続され、前記ルーメンに連通した、前記ルーメンに薬液を供給するための薬液供給口と、前記ルーメンに前記ワイヤを挿入するためのワイヤ挿入口と、を有するコネクタを備え、
前記薬液供給口は、前記ハンドル部の回転によって、前記ワイヤ巻回部に前記ワイヤが最大限巻き取られた際の前記ワイヤの先端よりも、先端側に設けられている、
薬液注入装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の薬液注入装置であって、
前記コネクタは、さらに、
前記カテーテルの長手方向に延びる第1延伸部と、
前記第1延伸部の先端側において、前記第1延伸部の側面から前記第1延伸部とは異なる方向に延びる第2延伸部と、
を備え、
前記薬液供給口は、前記第2延伸部の先端部に形成され、前記ワイヤ挿入口は、前記第1延伸部の基端部に形成されている、
薬液注入装置。
【請求項11】
請求項1から請求項
10までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤの外径は、先端から基端にかけて略一定である、
薬液注入装置。
【請求項12】
請求項1から請求項
11までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記ルーメンの横断面形状および前記ワイヤの横断面形状は、それぞれ略円形であり、
前記ワイヤの外径は、前記ルーメンの内径と略同一である、
薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体管腔内に挿入可能なカテーテルを利用して、患者の体内に薬液を注入する装置が知られている。例えば、特許文献1には、注入カテーテルと、注入カテーテルの基端に連結されたハンドポンプとを備える注入装置が開示されている。例えば、特許文献2には、輸液チューブと連通するカテーテルと、駆動モータと、駆動モータのロータの正回転により、輸液チューブを押して輸液チューブ内の薬液をカテーテルへと送る送液駆動部とを備える輸液ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-519212号公報
【文献】国際公開第2014/049661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、患者の体内に注入される薬液には、様々な用量が存在する。この点、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、薬液の注入量の精密な制御ができないため、患者の体内に微少の薬液を注入したいという要望には対応できないという課題があった。また、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、使用後において、注入カテーテルや輸液チューブ内に薬液が残存するため、薬液の無駄が生じるという課題があった。さらに、特許文献2に記載の技術では、薬液注入装置が大がかりになり、設置や設定が容易でないという課題があった。
【0005】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決しつつ、術者の施術負担の軽減や効率化を実現すべく、自動化された薬液注入装置を提供することを目的とする。
することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される薬液注入装置は、薬液注入装置であって、内側に薬液を収容するルーメンが形成された中空シャフトを有するカテーテルと、前記ルーメンに挿入されるワイヤと、制御信号に基づき、前記ワイヤを前記ルーメン内で基端から先端側に向かって前進させることにより、予め定められた量の前記薬液を前記中空シャフトの先端から吐出させるワイヤ移動装置と、を備える。
【0008】
本薬液注入装置では、薬液を収容するルーメンに挿入されるワイヤであって、ルーメンの基端から先端側に向かって前進させることで、ルーメン内の薬液を中空シャフトの先端から吐出させるワイヤを備えている。すなわち、本構成では、ルーメン内の薬液をワイヤによって押し出すことで、中空シャフトの先端から吐出させる。このため、吐出させる薬液の量をワイヤの体積分と同量にできるため、薬液の注入量の精密な制御ができる。また、本構成では、ルーメン内の薬液をワイヤによって押し出すことで、ルーメン内の薬液を使い切ることができる。このため、薬液の無駄を抑制できる。また、本薬液注入装置では、制御信号に基づき、ワイヤをルーメン内へと前進させるワイヤ移動装置を備えている。このため、本薬液注入装置は、ワイヤのルーメン内への前進を、自動により実行することができる。従って、本薬液注入装置によれば、薬液の注入量を精密に制御して薬液の無駄を低減しつつ、自動で薬液の注入を行うことができる。
【0009】
(2)上記薬液注入装置において、前記カテーテルは、前記中空シャフトの先端に、中空の針部を有する構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置では、患者の体内の目的位置(例えば、患部)に薬液を注入する際に、当該目的位置を針部で穿刺することができる。従って、本薬液注入装置によれば、患者の体内の目的位置に針部を固定することができるため、当該目的位置に正確に薬液を注入しつつ、当該目的位置の内部に薬液を注入することができる。
【0010】
(3)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ移動装置は、前記ワイヤを前進させるワイヤ駆動部と、前記ワイヤの前進距離を検出する距離検出センサと、制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記距離検出センサの検出結果に基づいて得られた前記ワイヤの前記前進距離が、前記予め定められた量に相当する距離であると判定したとき、前記ワイヤ駆動部の作動を停止させる構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ワイヤ駆動部の作動を停止させる際に、距離検出センサの検出結果に基づいて得られたワイヤの前進距離を用いることにより、より精度良くワイヤ駆動部の作動を停止させることができる。
【0011】
(4)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ移動装置において、前記ワイヤ駆動部と前記制御装置とは、着脱可能に構成されている構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ワイヤ駆動部に制御装置を取り付けている構成においては、ワイヤをルーメン内へと自動で前進させることができるとともに、ワイヤ駆動部から制御装置を取り外している構成においては、ワイヤをルーメン内へと手動で前進させることができる。術者は、例えば、患者の体内における患部の表面または内部(以下、「表面等」という)に薬液を注入する際に、手動でワイヤをルーメンへと前進させることで、当該患部の表面等の感触を得ることができる。術者は、当該感触に基づいて、当該患部の表面等が薬液を注入するのに適しているかどうかを把握することができる。例えば、手動でワイヤをルーメンへと前進させる際の、薬液の注入圧により、当該患部の表面等の硬さの感触を得、当該感触に基づいて、当該患部の表面等の硬さが硬い(薬液を注入するのに適していない硬さである)とき、当該患部の他の位置へと薬液を注入する位置を移動させることができる。
【0012】
(5)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ駆動部は、前記ルーメンへ前記ワイヤを送り出すことで前記ワイヤを前進させ、かつ、前記ルーメンから前記ワイヤを巻き取ることで前記ワイヤを後退させる構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ワイヤ駆動部は、ルーメンへワイヤを送り出すことでワイヤを前進させ、および、ルーメンからワイヤを巻き取ることでワイヤを後退させるため、ワイヤの前進および後退を確実に実施できる。また、ワイヤを巻き取って収納するため、ワイヤの収納に要するスペース(後述の収納部)を小型化できる。
【0013】
(6)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ駆動部は、前記ワイヤの基端側の一部分が巻回されたワイヤ巻回部と、前記ワイヤ巻回部に接続されたハンドル部と、を有し、前記ワイヤ巻回部は、前記ハンドル部の回転量に応じた長さの前記ワイヤを送り出し、かつ、巻き取る構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ハンドル部を回転させることによって、ワイヤの送り出しおよび巻き取りができるため、薬液注入装置を簡易な構成とすることができる。
【0014】
(7)上記薬液注入装置において、前記カテーテルの基端部に接続され、前記ワイヤの基端側の一部分および前記ワイヤ駆動部の一部分を収納する収納部を備える構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置では、カテーテルの基端部に接続され、ワイヤの基端側の一部分を収納しつつ、ルーメン内におけるワイヤの前進および後退を可能とするワイヤ駆動部の一部分を収納する収納部を備える。このため、術者がワイヤに直接触れることなく、ワイヤを前進および後退させることができる。
【0015】
(8)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ移動装置は、さらに、前記ワイヤ巻回部から送り出された前記ワイヤを、前記ルーメンに向かって押し出すワイヤ押出部を備え、前記ワイヤ押出部は、前記ハンドル部の回転に応じて回転する第1ローラと第2ローラとを含んでおり、前記第1ローラと前記第2ローラとによって前記ワイヤを挟持して押し出す構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置では、ワイヤ移動装置は、ワイヤ巻回部から送り出されたワイヤを、ルーメンに向かって押し出すワイヤ押出部を備えるため、ワイヤをルーメン内に確実に押し進めることができる。
【0016】
(9)上記薬液注入装置において、前記収納部は、さらに、前記ワイヤ押出部と前記カテーテルの基端部との間に設けられ、前記ルーメン内の薬液の前記収納部内への移動を規制する弁部材を備える構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ルーメン内の薬液が収納部内に進入することを抑制することができ、収納部内を気密に維持できる。
【0017】
(10)上記薬液注入装置において、前記カテーテルは、さらに、前記中空シャフトの基端部に接続され、前記ルーメンに連通した、前記ルーメンに薬液を供給するための薬液供給口と、前記ルーメンに前記ワイヤを挿入するためのワイヤ挿入口と、を有するコネクタを備え、前記薬液供給口は、前記ハンドル部の回転によって、前記ワイヤ巻回部に前記ワイヤが最大限巻き取られた際の前記ワイヤの先端よりも、先端側に設けられている構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置では、コネクタの薬液供給口は、ワイヤ巻回部にワイヤが最大限巻き取られた際のワイヤの先端よりも、先端側に設けられている。このため、ハンドル部を回転させて、ワイヤ巻回部にワイヤを最大限巻き取った状態とした場合に、薬液供給口からの薬液の供給をワイヤにより阻害されることなく実施できる。
【0018】
(11)上記薬液注入装置において、前記コネクタは、さらに、前記カテーテルの長手方向に延びる第1延伸部と、前記第1延伸部の先端側において、前記第1延伸部の側面から前記第1延伸部とは異なる方向に延びる第2延伸部と、を備え、前記薬液供給口は、前記第2延伸部の先端部に形成され、前記ワイヤ挿入口は、前記第1延伸部の基端部に形成されている構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置では、コネクタにおいて、ワイヤ挿入口は第1延伸部の基端部に形成され、薬液供給口は第1延伸部の先端側において第1延伸部の側面から延びる第2延伸部の先端部に形成されている。このため、ワイヤ挿入口へのワイヤの挿入、および、薬液供給口からの薬液の供給をスムーズに実施できる。
【0019】
(12)上記薬液注入装置において、前記ワイヤの外径は、先端から基端にかけて略一定である構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ルーメン内を進めるワイヤの長さに応じて、中空シャフト(または針部)の先端から吐出させる薬液の量を容易に把握できる。
【0020】
(13)上記薬液注入装置において、前記ルーメンの横断面形状および前記ワイヤの横断面形状は、それぞれ略円形であり、前記ワイヤの外径は、前記ルーメンの内径と略同一である構成としてもよい。このような構成を備える薬液注入装置によれば、ルーメン内におけるワイヤの摺動性を維持しつつ、ルーメン内の薬液をワイヤによって押し出すことができる。
【0021】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、薬液注入装置、薬液注入のためのカテーテルおよびワイヤ、薬液注入のためのワイヤおよびワイヤ移動装置、薬液注入装置を含むシステム、ワイヤおよびワイヤ移動装置を含むシステム、これらの装置およびシステムを製造する方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態における薬液注入装置1の構成を例示した説明図である。
【
図2】カテーテル10の断面構成を示す説明図である。
【
図5】ワイヤ移動装置50および収納部60の構成を例示した説明図である。
【
図6】ワイヤ巻回部511、歯車513、およびワイヤ押出部514の構成を例示した説明図である。
【
図8】CPU内蔵ケース53の構成を例示した説明図である。
【
図9】駆動制御装置533の構成の一例を示す図である。
【
図10】駆動制御装置533の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図11】ステップS21の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図12】ワイヤ80の前進および薬液の吐出について説明する図である。
【
図13】ワイヤ80の後退について説明する図である。
【
図14】第2実施形態における薬液注入装置1Aの構成を例示した説明図である。
【
図15】ワイヤ80Aの構成を例示した説明図である。
【
図16】第3実施形態における薬液注入装置1Bの構成を例示した説明図である。
【
図17】CPU内蔵ケース53Bの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施形態:
A-1.薬液注入装置1の構成:
図1は、第1実施形態における薬液注入装置1の構成を例示した説明図である。薬液注入装置1は、生体管腔内に挿入可能なカテーテルを利用して、患者の体内に薬液を注入するために用いられる装置である。ここで、生体管腔とは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺および生殖器官といった種々の管腔を含む。薬液注入装置1は、カテーテル10と、ワイヤ移動装置50と、収納部60と、ワイヤ80とを備えている。
【0024】
図1では、薬液注入装置1におけるカテーテル10(より具体的には、後述の針部12および中空シャフト11)の中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。
図1の例では、軸線Oは、ワイヤ移動装置50を構成する後述のワイヤ巻回部511、ハンドル部512および歯車513の各中心を通る軸と一致している。しかし、軸線Oは、カテーテル10およびワイヤ移動装置50の各中心軸と相違していてもよい。
図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は薬液注入装置1の長さ方向に対応し、Y軸は薬液注入装置1の高さ方向に対応し、Z軸は薬液注入装置1の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)を薬液注入装置1および各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)を薬液注入装置1および各構成部材の「基端側」と呼ぶ。薬液注入装置1および各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端およびその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端およびその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0025】
A-2.カテーテル10の構成:
図2は、カテーテル10の断面構成を示す説明図である。
図2は、カテーテル10の先端側の一部分1pa(
図1:破線枠)の断面構成を表す。
図2のXYZ軸は、
図1のXYZ軸に対応している。カテーテル10は、患者の生体管腔内に挿入され、患者の体内の所望の位置まで薬液を運搬し、患者の体内の所望の位置に薬液を注入するために使用される。カテーテル10は、中空シャフト11と、針部12と、コネクタ13とを備えている。
【0026】
中空シャフト11は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。中空シャフト11には、内側に薬液を収容するルーメン10Lが形成されている。より詳しくは、中空シャフト11は、先端部と基端部にそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(ルーメン10L)が形成された中空の略円筒形状である。なお、中空シャフト11の肉厚部には、柔軟性、トルク伝達性、押し込み性、耐キンク性、血管追従性、病変通過性、および、ガイドワイヤの操作性のうちの少なくとも一部を向上させるために、コイル体や編組体が埋設されていてもよい。また、中空シャフト11は、同一または異なる材料により形成された複数の層により構成されていてもよい。なお、ルーメン10Lの横断面形状は、略円形状である。
【0027】
針部12は、先端部12dと基端部12pにそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔が形成された中空針である(
図2参照)。針部12の内腔は、中空シャフト11の内腔と一体となってルーメン10Lを構成する。針部12は、先端部12dに鋭利な針先が形成されており、基端部12pは中空シャフト11の先端部11dに接合されている。針部12の接合は、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤により実施することができる。ここで、針部12は、針部12の内腔と中空シャフト11の内腔とを連通させた状態で、中空シャフト11に接合されており、針部12の内腔と中空シャフト11の内腔とは、共に略一定の内径Φ1を有している。
【0028】
コネクタ13は、中空シャフト11の基端部に接続されており、カテーテル10(より具体的には、中空シャフト11および針部12)への薬液の供給およびカテーテル10(より具体的には、中空シャフト11および針部12)へのワイヤ80の挿入のために使用される。コネクタ13は、第1延伸部131と、羽根部132と、第2延伸部133とを備えている。
【0029】
第1延伸部131は、中空シャフト11の基端部に接続され、軸線O(すなわち、カテーテル10の長手方向)に沿って延びる略円筒形状の部材である。第1延伸部131の内部には、軸線Oに沿って延びる内腔が形成されている。
図1の例では、上述した針部12の内腔と中空シャフト11の内腔に加えてさらに、第1延伸部131の内腔も、ルーメン10Lを構成している。第1延伸部131の基端部には、ルーメン10Lと外部とを連通するワイヤ挿入口131oが形成されている。第2延伸部133は、第1延伸部131の先端側において、第1延伸部131の側面から、第1延伸部131とは異なる方向に延びる略円筒形状の部材である。第2延伸部133の内部には、ルーメン10Lと連通した内腔が形成されている。第2延伸部133の先端部には、ルーメン10Lと第2延伸部133の内腔とを連通する薬液供給口133oが形成されている。
【0030】
図1に示すように、本実施形態のカテーテル10において、薬液供給口133oの位置P1は、ワイヤ挿入口131oの位置P2よりも先端側とされている。また、薬液供給口133oの位置P1は、後述するワイヤ移動装置50のワイヤ巻回部511に、ワイヤ80を最大限巻き取った際のワイヤ80の先端の位置P3よりも先端側とされている。羽根部132は、第1延伸部131の基端側において、第1延伸部131の側面から±Y軸方向へと伸びた2枚の羽根状部材である。羽根部132は、術者がコネクタ13を把持する際に使用される。なお、コネクタ13を構成する第1延伸部131と、羽根部132と、第2延伸部133とのうちの少なくとも一部分の部材は、一体的に構成されてもよい。
【0031】
中空シャフト11は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。針部12は、抗血栓性および生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等の金属材料で形成することができる。コネクタ13は、樹脂材料、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等により形成することができる。
【0032】
A-3.ワイヤ80の詳細構成:
図3および
図4を用いて、ワイヤ80の構成を詳細に説明する。
図3および
図4は、ワイヤ80の先端部における構成を例示した説明図である。
図3には、ワイヤ80の先端部におけるXY断面構成が示されている。
図4には、ワイヤ80のZ軸方向視における外観構成が示されている。
【0033】
図3に示すように、ワイヤ80は、外表面S80を有し、コアシャフト81と、被覆部85とを備えている。コアシャフト81は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材であり、先端から基端にかけて略一定の外径を有している。コアシャフト81のYZ断面形状は、略円形状である。被覆部85は、コアシャフト81の表面に施されたコーティング層である。ワイヤ80のYZ断面形状は、コアシャフト81と同様に略円形状となる。コアシャフト81は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金等の金属材料により形成することができる。被覆部85は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン、およびウレタン系の樹脂により形成することができる。本実施形態のワイヤ80は、先端から基端にかけて略一定の外径Φ2を有している。ワイヤ80の外径Φ2は、カテーテル10のルーメン10Lの内径Φ1(
図2参照)と略同一(クリアランス:100μm以下)である。好ましくは、ワイヤ80の外径Φ2は、カテーテル10のルーメン10Lの内径Φ1の80%以上である。
【0034】
図4に示すように、ワイヤ80は、外表面S80にマーカ部86を有している。換言すれば、外表面S80は、被覆部85が露出している表面とマーカ部86が付されている表面とにより構成されている。マーカ部86は、被覆部85上において、所定幅、所定間隔で付されている。本実施形態において、マーカ部86は、1mm幅、1mm間隔で、被覆部85上に付されている。すなわち、
図4において、被覆部85が露出している部分の幅L85およびマーカ部86が付されている部分の幅L86は、ともに1mmである。マーカ部86は、例えば、被覆部85上に、所定の材料を塗布することにより形成することができる。当該所定の材料は、耐薬品性を有し、かつ、被覆部85の形成材料における反射光の波長と異なる波長を有する材料であれば特に限定されず、例えば、被覆部85の形成材料の色と異なる色を有する材料等とすることができる。このような材料であれば、被覆部85が露出している表面が吸収する波長と、マーカ部86が付されている表面が吸収する波長とが異なるため、反射光の波長を異ならせることができる。マーカ部86は、例えば、このような材料から形成された金属シールを貼付することにより構成されうる。
【0035】
A-4.ワイヤ移動装置50および収納部60の構成:
図5は、ワイヤ移動装置50および収納部60の構成を例示した説明図である。ワイヤ移動装置50は、制御信号に基づき、ワイヤ80をルーメン10L内で基端から先端側に向かって前進させることにより、予め定められた量の薬液を中空シャフト11の先端から吐出させる。本実施形態において、ワイヤ移動装置50は、ワイヤ駆動部51と、距離検出センサ52と、CPU内蔵ケース53とを備えている。なお、
図5では、便宜上、後述のCPU内蔵ケース53の図示を省略している。また、収納部60は、カテーテル10の基端部に接続され、ワイヤ移動装置50の一部分およびワイヤ80の基端側の一部分を収納している。本実施形態において、収納部60は、筐体61と、弁部材62とを備えている。
【0036】
筐体61は、ワイヤ移動装置50の一部(より具体的には、ワイヤ駆動部51の一部(後述のワイヤ巻回部511、歯車513、ワイヤ押出部514)および距離検出センサ52)および弁部材62を内側(内部)に収容したケースである。なお、
図1および
図5では、図示の便宜上、筐体61を透明な部材として輪郭のみを表し、筐体61に収容されている各部材を実線で表している。
【0037】
弁部材62は、
図5に示すように、ワイヤ駆動部51(より具体的には、後述のワイヤ押出部514)と、筐体61の開口61oとの間に設けられ、筐体61内への薬液の移動を規制するための部材である。
図7は、弁部材62の構成を例示した説明図である。
図7では、
図5のB方向から見た筐体61、弁部材62およびワイヤ80について表している。なお、
図7のXYZ軸は、
図1のXYZ軸にそれぞれ対応している。
図7に示すように、弁部材62は、ワイヤ押出部514と開口61oとの間において、ワイヤ80の周囲を取り囲んでいる。
【0038】
ワイヤ駆動部51は、カテーテル10のルーメン10Lへのワイヤ80の前進、および、ルーメン10Lからのワイヤ80の後退を実現するために使用される。より具体的には、ワイヤ駆動部51は、ルーメン10Lへワイヤ80を送り出すことでワイヤ80を前進させ、かつ、ルーメン10Lからワイヤ80を巻き取ることでワイヤ80を後退させる。ワイヤ駆動部51は、ワイヤ巻回部511と、ハンドル部512と、歯車513と、ワイヤ押出部514とを有している。
【0039】
図6は、ワイヤ巻回部511、歯車513、およびワイヤ押出部514の構成を例示した説明図である。
図6には、
図5のA方向から見たワイヤ巻回部511、歯車513、ワイヤ押出部514、およびワイヤ80について表している。
図6の破線枠内には、
図6のC方向から見た回転軸O1、ワイヤ巻回部511、および第1歯車513aについて表している。なお、
図6のXYZ軸は、
図1のXYZ軸にそれぞれ対応している。
【0040】
図5に示すように、歯車513は、第1歯車513aと、第2歯車513bと、第3歯車513cとを備えている。
図6に示すように、第1歯車513aは凸形状の歯車であり、外歯513aeと、内歯513aiとを有している。同様に、第3歯車513cは凸形状の歯車であり、外歯513ceと、内歯513ciとを有している。第1歯車513aは、回転軸O1を介してハンドル部512に接続されている。第2歯車513bは、第1歯車513aの外歯513aeと、第3歯車513cの外歯513ceとにそれぞれ噛み合っており、ハンドル部512から第1歯車513aに伝達された回転力を、第3歯車513cに伝達する。第1歯車513aの外歯513aeの基準円直径L11は、第3歯車513cの外歯513ceの基準円直径L31よりも大きい(
図6参照)。換言すれば、第1歯車513aの外歯513aeの歯数は、第3歯車513cの外歯513ceの歯数よりも多い。なお、本実施形態において、歯車の基準円直径とは、歯先円直径と、歯底円直径との平均を意味する。
【0041】
ワイヤ巻回部511は、ハンドル部512の回転量に応じた長さのワイヤ80を送り出し、かつ、巻き取る。より具体的には、ワイヤ巻回部511は、第1歯車513aの内歯513aiに嵌め込まれた略円筒形状の部材であり、第1歯車513aの回転に応じて回転する(
図6下段参照)。ワイヤ巻回部511の外径はL12である(
図6参照)。ワイヤ巻回部511には、ワイヤ80の基端側の一部分が予め巻回されている。なお、ワイヤ80の基端部は、ワイヤ巻回部511に固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。また、ワイヤ巻回部511と第1歯車513aとは、一体的に形成されていてもよい。
【0042】
ワイヤ押出部514は、ワイヤ巻回部511から送り出されたワイヤ80を、ルーメン10Lに向かって押し出す。より具体的には、ワイヤ押出部514は、第1ローラ514aと、第2ローラ514bとを備えており、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bによってワイヤ80を挟持して押し出す。第1ローラ514aは、第3歯車513cの内歯513ciに嵌め込まれた略円筒形状の部材であり、第3歯車513cの回転に応じて回転する。換言すれば、第1ローラ514aは、ハンドル部512の回転に応じて回転する。第1ローラ514aの外径はL32である(
図6参照)。第1ローラ514aの側面は、被覆部519によって被覆されている。なお、第1ローラ514aと第3歯車513cとは、一体的に形成されていてもよい。第2ローラ514bは、第1ローラ514aに隣接して設けられた略円筒形状または略円柱形状の部材であり、第1ローラ514aの回転に応じて回転する。換言すれば、第2ローラ514bは、ハンドル部512の回転に応じて回転する。第2ローラ514bの側面は、第1ローラ514aと同様に被覆部519によって被覆されている。
【0043】
図1および
図5に示すように、ワイヤ80は、基端側の一部分がワイヤ巻回部511に巻回されており、先端側の一部分が筐体61の開口61oを通過して外部に露出している。また、ワイヤ80は、ワイヤ巻回部511と開口61oとの間において、第1ローラ514aと第2ローラ514bとに挟持されている。ワイヤ80は、ワイヤ押出部514と開口61oとの間において、弁部材62によって周囲を取り囲まれている(
図7参照)。
【0044】
ハンドル部512は、ワイヤ巻回部511に接続されている。より具体的には、ハンドル部512は、筐体61の外側に設けられ、回転軸O1を中心として矢印で表す第1の方向D1と、第2の方向D2とに、それぞれ回転させることが可能な持ち手である。ハンドル部512の回転軸O1は、筐体61の内側に延伸し、上述の通り、歯車513(第1歯車513a)に接続されている。上述の通り、回転軸O1によって、ハンドル部512に加えられた回転力が歯車513に伝達される。
【0045】
上述の筐体61、ハンドル部512、ワイヤ巻回部511、歯車513、およびワイヤ押出部514は、樹脂材料、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等により形成することができる。なお、筐体61、ハンドル部512、ワイヤ巻回部511、歯車513、およびワイヤ押出部514は、同一の材料により形成されていてもよく、少なくとも一部が異なる材料により形成されていてもよい。弁部材62、およびワイヤ押出部514の被覆部519は、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム等の弾性体により形成することができる。
【0046】
距離検出センサ52は、ワイヤ80の前進距離Dを検出する。本実施形態において、距離検出センサ52は、ワイヤ80へとレーザ光を投光し、投光したレーザ光の反射により、ワイヤ80の前進距離Dを検出する。距離検出センサ52としては、ワイヤ80の前進距離Dを検出可能なセンサであればよく、従来公知の距離検出センサを使用することができる。本実施形態において、距離検出センサ52は、例えば、ワイヤ80に向かってレーザ光を投光する投光部と、投光したレーザ光がワイヤ80によって反射された反射光を受光する受光部と、受光した反射光の波長に関する情報を後述の駆動制御装置533へと送信する送信部と、を備えている。投光部は、赤外等の波長域に設定されたレーザ光を発生する光源を有している。受光部は、ワイヤ80からの反射光を受光するとともに、受光した反射光の波長情報を取得する。送信部は、取得した反射光の波長が所定閾値以上変化したときの当該波長の変化情報や、取得した反射光の波長情報を駆動制御装置533へと送信する。
【0047】
CPU内蔵ケース53は、ハンドル部512と嵌合する円筒状の部材である。
図8は、CPU内蔵ケース53の構成を例示した説明図である。
図8には、CPU内蔵ケース53の斜視図が示されている。なお、
図8のXYZ軸は、
図1のXYZ軸にそれぞれ対応している。より具体的には、CPU内蔵ケース53は、外側ケース531と、内側回転部532と、駆動制御装置533(
図9参照)と、モータ534(
図9参照)とを備えている。すなわち、CPU内蔵ケース53(より具体的には、駆動制御装置533)は、ワイヤ駆動部51と、着脱可能に構成されている。
【0048】
外側ケース531は、内側回転部532を収容し、保護するケースである。本実施形態において、外側ケース531は、その内部に駆動制御装置533と、モータ534とを備えている。また、外側ケース531は、その外表面に操作パネル31(
図9参照)を有している。
【0049】
モータ534は、内側回転部532を回転させる動力として機能する。
【0050】
内側回転部532は、外側ケース531に収容され、ハンドル部512と対向する表面に、ハンドル部512と嵌合する凹部532aを有している(
図8参照)。内側回転部532は、外側ケース531に電気的に接続されている。このため、内側回転部532は、モータ534からの動力により、その円周方向へ回転する。換言すれば、内側回転部532に嵌合されたハンドル部512は、内側回転部532の回転により、上述の第1の方向D1と、第2の方向D2とに、それぞれ回転する。内側回転部532の回転は、駆動制御装置533により制御される。
【0051】
操作パネル31は、駆動制御装置533に対する各情報を入力するためのインターフェースである。操作パネル31は、タッチパネルや操作ボタン等の任意の態様で実現できる。駆動制御装置533に対する情報としては、例えば、薬液の総投与量Vt、1回当たりの投与量V、薬液の投与開始指令等が挙げられる。総投与量Vtは、患者の体内の目的位置に投与すべき薬液の総量であり、具体的には、カテーテル10のルーメン10L内に充填された(換言すれば、カテーテル10内に収容された)薬液の総量である。1回当たりの投与量V(以下、「投与量V」ともいう)は、総投与量Vtのうち、上記目的位置に対して、針部12を1回穿刺するときに投与すべき薬液の量である。薬液の投与開始指令は、駆動制御装置533の作動開始指令であり、より具体的には、ワイヤ80の送り出し指令である。また、上記各情報として、他に、薬液の投与速度、ワイヤ80の半径r(すなわち、ワイヤ80の外径Φ2/2)、マーカ部86のピッチ情報、駆動制御装置533の作動停止指令等が挙げられる。当該入力された各情報は、適宜、駆動制御装置533へと送信される。
【0052】
駆動制御装置533は、距離検出センサ52の検出結果に基づいて得られたワイヤ80の前進距離が、予め定められた薬液の投与量に相当する距離であると判定したとき、ワイヤ駆動部51の作動を停止させる処理を実行する。駆動制御装置533は、特許請求の範囲における制御装置の一例である。
【0053】
図9を用いて、駆動制御装置533の概略を説明する。
図9は、本実施形態の駆動制御装置533の構成の一例を示す図である。
図9に示すように、駆動制御装置533は、通信部535と、記憶部536と、制御部537とを有している。
【0054】
通信部535は、距離検出センサ52の送信部から送信された情報を受信し、後述の記憶部536へ記憶する。
【0055】
記憶部536には、例えば、操作パネル31を介して入力された各情報、通信部535で受信した距離検出センサ52からの情報、ワイヤ80の前進距離Dを演算するための数式、予め定められたワイヤ80の前進速度、ワイヤ80に付されたマーカ部86に関する情報等が記憶されている。上記数式としては、薬液の投与量とワイヤ80の径とに基づき、ワイヤ80の前進距離Dを演算するための数式等が挙げられる。また、マーカ部86に関する情報としては、例えば、マーカ部86のピッチ情報、より具体的には、被覆部85が露出している部分の幅L85や、マーカ部86が付されている部分の幅L86等が挙げられる。
【0056】
制御部537は、プログラム内のコードや命令によって所定の機能を実行するための機能を備え、例えば、中央処理装置(CPU)である。また、制御部537は、例えば、マイクロプロセッサやマルチプロセッサ等であってもよい。制御部537は、例えば、以下に説明する情報取得処理と、第1演算処理と、設定処理と、指令取得処理と、薬液投与処理と、ワイヤ回収処理とを実行することができる。
【0057】
情報取得処理として、制御部537は、操作パネル31を介して入力された薬液の総投与量Vt、1回当たりの投与量V等の各情報を取得する。本実施形態において、他に、薬液の投与速度、ワイヤ80の半径r(すなわち、ワイヤ80の外径Φ2/2)、マーカ部86のピッチ情報等の情報を取得する。
【0058】
第1演算処理として、制御部537は、情報取得処理で取得された総投与量Vtおよび投与量Vに基づき、分割投与回数Ttおよびワイヤ80が前進すべき距離d(以下、「ワイヤ80の前進距離d」という)を演算する。分割投与回数Ttは、針部12を1回穿刺する毎に投与量Vを投与する場合において、総投与量Vtを投与するために必要な投与回数であり、(総投与量Vt)/(投与量V)の式により演算される。また、ワイヤ80の前進距離dは、投与量Vを投与するためにワイヤ80が前進すべき距離であり、(投与量V)/(π×ワイヤ80の半径r2)の式により演算される。
【0059】
設定処理として、制御部537は、現在の投与回数Tに「1」を設定する。
【0060】
指令取得処理として、制御部537は、操作パネル31を介して入力された投与開始指令を取得する。
【0061】
薬液投与処理として、制御部537は、指令取得処理で取得された投与開始指令に基づき、患者の体内の目的位置への薬液投与を実行する。
【0062】
薬液投与処理は、例えば、以下に説明する駆動開始指令処理と、判定処理と、第2演算処理と、比較処理と、駆動停止指令処理とを備えることができる。
【0063】
駆動開始指令処理として、制御部537は、操作パネル31を介して入力された投与開始指令(ワイヤ80の送り出し指令)に基づき、モータ534を駆動することにより、内側回転部532を第1の方向D1へ回転させる。内側回転部532の第1の方向D1への回転に伴い、ハンドル部512も第1の方向D1へと回転する。すなわち、駆動開始指令処理により、ワイヤ80はワイヤ巻回部511から送り出される。
【0064】
判定処理として、制御部537は、記憶部536に記憶された反射光の波長情報を参照して、ワイヤ80の前進距離Dを監視し、通信部535で受信したワイヤ80の反射光の波長と、直前に受信した波長とを比較して、その差(以下、「波長差」ともいう)が所定閾値以上であるか否かを判定する。波長差が所定閾値以上であるとき、ワイヤ80の外表面S80における、被覆部85が露出している部分と、マーカ部86が付されている部分との境界が、距離検出センサ52を通過したと判定することができる。
【0065】
第2演算処理として、制御部537は、記憶部536に記憶されたマーカ部86のピッチ情報に基づいて、ワイヤ80の前進距離Dを演算する。例えば、制御部537は、上記波長差が所定閾値以上であると判定される毎に、ワイヤ80において、被覆部85が露出している部分の幅L85、または、マーカ部86が付されている部分の幅L86を、ワイヤ80の前進距離Dに加算して、ワイヤ80の合計の前進距離Dを演算することができる。
【0066】
比較処理として、制御部537は、第1演算処理で演算されたワイヤ80の前進距離dと、第2演算処理で演算されたワイヤ80の前進距離Dとを比較する。
【0067】
駆動停止指令処理として、制御部537は、比較処理において、ワイヤ80の前進距離dと前進距離Dとが一致するとき、内側回転部532(ハンドル部512)の回転を停止させる。
【0068】
本実施形態において、駆動制御装置533は、さらに、ワイヤ回収処理を実行する。ワイヤ回収処理として、制御部537は、駆動停止指令処理により内側回転部532の回転が停止した後、分割投与回数Ttの全回数が実行されたと判断されたとき、モータ534を駆動させることにより、内側回転部532を第2の方向D2へ回転させる。内側回転部532の第2の方向D2への回転に伴い、ハンドル部512も第2の方向D2へと回転する。すなわち、ワイヤ80はワイヤ巻回部511に巻き取られる。
【0069】
A-5.駆動制御装置533の処理フロー:
図10および
図11を用いて、駆動制御装置533の処理フローの概略を説明する。
図10は、本実施形態の駆動制御装置533の処理フローの一例を示すフローチャートであり、
図11は、本実施形態のステップS21の処理フローの一例を示すフローチャートである。本実施形態の駆動制御装置533の処理フローは、例えば、ステップS11~ステップS27を有する。
【0070】
ステップS11では、制御部537は、操作パネル31を介して入力された各情報を取得し、記憶部536に記憶する(情報取得処理)。当該各情報としては、例えば、薬液の総投与量Vt、1回当たりの投与量Vが挙げられる。また、上記各情報として、他に、薬液の投与速度、ワイヤ80の半径r(すなわち、ワイヤ80の外径Φ2/2)、マーカ部86のピッチ情報等が挙げられる。本実施形態において、例えば、記憶部536に、総投与量Vtを「5ml」、投与量Vを「1ml」、ワイヤ80の半径rが記憶されたものとする。
【0071】
ステップS13では、制御部537は、記憶部536を参照して、分割投与回数Ttおよびワイヤ80の前進距離dを演算する(第1演算処理)。本実施形態において、例えば、分割投与回数Ttとして「5回」が演算されたものとする。
【0072】
ステップS15では、制御部537は、現在の投与回数Tに「1」を設定する(設定処理)。
【0073】
ステップS17では、術者は、第T回目の分割投与(第T分割投与)を実行するため、カテーテル10を移動させ、針部12を目的位置(具体的には、目的位置のうちの第Tターゲット部位)へ穿刺する。ステップS15に続いて実行されるステップS17では、第1分割投与を実行するための第1ターゲット部位への針部12の穿刺が行われる。
【0074】
ステップS19では、制御部537は、操作パネル31を介して入力された投与開始指令を取得する(指令取得処理)。
【0075】
ステップS21では、ステップS19の投与開始指令に基づき、薬液投与を実行する。具体的には、ステップS21では、第1分割投与を実行する(薬液投与処理)。
【0076】
図11を用いて、ステップS21の処理フローを詳細に説明する。ステップS210では、制御部537は、操作パネル31を介して入力された投与開始指令(ワイヤ80の送り出し指令)に基づき、モータ534を駆動することにより、内側回転部532を第1の方向D1へ回転させる(駆動開始指令処理)。
【0077】
ステップS211では、通信部535は、距離検出センサ52の送信部から、距離検出センサ52の受光部が受光した反射光の波長情報を受信し、記憶部536に記憶する。
【0078】
ステップS213では、制御部537は、記憶部536に記憶された反射光の波長情報を参照して、ワイヤ80の前進距離Dを監視し、ステップS211で受信した波長と、直前に受信した波長とを比較して、波長差が所定閾値以上であるか否かを判定する(判定処理)。波長差が所定閾値以上であるとき(ステップS213:Yes)、ステップS215へと進む。ステップS213において「No」であるとき、ステップS211へと戻る。
【0079】
ステップS215では、制御部537は、記憶部536に記憶されたマーカ部86のピッチ情報に基づいて、ワイヤ80の前進距離Dを演算する(第2演算処理)。上述したように、本実施形態では、幅L85および幅L86は、ともに1mmであるため、制御部537は、上記波長差が所定閾値以上であると判定される毎に、ワイヤ80の前進距離Dに1mmを加算して、ワイヤ80の合計の前進距離Dを演算する。
【0080】
ステップS217では、制御部537は、ステップS13で演算されたワイヤ80の前進距離dと、ステップS215で演算されたワイヤ80の前進距離Dとを比較する(比較処理)。両者が一致するとき(ステップS217:Yes)、ステップS219へと進む。ステップS217において、「No」であるとき、ステップS211へと戻る。
【0081】
ステップS219では、制御部537は、ステップS210における内側回転部532(ハンドル部512)の回転を停止させる(駆動停止指令処理)。具体的には、制御部537は、モータ534の駆動を停止させる。以上の処理により、第Tターゲット部位への第T分割投与(例えば、第1ターゲット部位への第1分割投与)の実行が完了する。
【0082】
図10に戻り、ステップS13で演算された分割投与回数Ttの全回数につきステップS17~ステップS21を実行する(ステップS23、ステップ25)。ステップS23において、分割投与回数Ttの全回数が実行されたと判断されたとき(ステップS23:Yes)、ステップS27へと進む。本実施形態において、上述の通り、分割投与回数Ttは「5」であるため、ステップS17~ステップS21の処理は5回繰り返される。すなわち、第1~第5ターゲット部位に対して、それぞれ第1~第5分割投与が実行される。第1~第5ターゲット部位は、いずれも目的位置の範囲内に存在する部位であり、例えば、それぞれ異なる位置に存在する部位とすることができる。
【0083】
ステップS27では、ワイヤ80を回収する(ワイヤ回収処理)。以上の処理により、目的位置(例えば、患部)への総投与量Vtの薬液の投与およびワイヤ80の挿抜を完了させることができる。
【0084】
A-6.薬液注入装置1の作用:
本実施形態の薬液注入装置1によれば、上記構成を有することにより、ワイヤ移動装置50が、自動または手動にて、カテーテル10のルーメン10L内において、ワイヤ80を前進および後退させることを可能とする。具体的には、
図5に示すように、自動または手動にて、ワイヤ移動装置50のハンドル部512を第1の方向D1に回転させた際、ハンドル部512に加えられた回転力は、回転軸O1を通じて、第1歯車513aおよびワイヤ巻回部511に伝達される。これにより、ワイヤ巻回部511が第1の方向D1に回転し、ハンドル部512の回転量に応じた長さのワイヤ80が、ルーメン10Lに向けて送り出される(ルーメン10L内においてワイヤ80が前進する)。また、ワイヤ移動装置50のハンドル部512を第2の方向D2に回転させた際、同様に、ワイヤ巻回部511が第2の方向D2に回転し、ハンドル部512の回転量に応じた長さのワイヤ80が、ルーメン10Lから巻き取られる(ルーメン10L内においてワイヤ80が後退する)。
【0085】
また、ハンドル部512の回転に伴う第1歯車513aの回転は、第2歯車513bを通じて第3歯車513cに伝達される。これにより、第1ローラ514aと第2ローラ514bとが回転し、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bによって挟持されたワイヤ80が、ルーメン10Lに向けて押し出される。ここで、
図6に示すように、第3歯車513cの基準円直径L31と、第1ローラ514aの外径L32との比(L31/L32)は、第1歯車513aの基準円直径L11と、ワイヤ巻回部511の外径L12との比(L11/L12)よりも小さい。このため、同じハンドル部512の回転量に対して、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bが押し出そうとするワイヤ80の長さは、ワイヤ巻回部511が送り出すワイヤ80の長さよりも長くなる。換言すれば、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bは、ワイヤ80を挟持した状態で、空転を交えつつ、ワイヤ80をルーメン10Lの方向へ押し出す。
【0086】
さらに、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bの側面(ワイヤ80を挟持した面)は、弾性体により形成された被覆部519により被覆されているため、第1ローラ514aおよび第2ローラ514bは、ワイヤ80を挟持して、摩擦力によって、ワイヤ80をルーメン10Lの方向へ押し出すことができる。
【0087】
A-7.薬液注入装置1の使用方法:
図12は、ワイヤ80の前進および薬液の吐出について説明する図である。
図13は、ワイヤ80の後退について説明する図である。
図12および
図13では、上段にワイヤ移動装置50を図示し、下段にカテーテル10の先端側の一部分を図示する。
図1、
図12、および
図13を用いて、薬液注入装置1の使用方法について説明する。
【0088】
内視鏡を用いて薬液注入装置1を使用する場合、術者は、内視鏡にカテーテル10を挿入し、カテーテル10の針部12を、患者の体内の目的位置(薬液を投与しようとする位置)まで移動させる。その後、術者は、カテーテル10のワイヤ挿入口131oに対して、ワイヤ移動装置50が取り付けられた収納部60を取り付ける(
図1参照)。この時、収納部60の開口61oから突出しているワイヤ80の先端部を、カテーテル10のルーメン10Lに挿入した状態で、収納部60を取り付ける。その後、術者は、カテーテル10の薬液供給口133oから、薬液を供給する。例えば、第2延伸部133の基端部に対して、薬液が収容されたシリンジを取り付け、シリンジから薬液を供給する。第2延伸部133を介して、薬液供給口133oから供給された薬液は、カテーテル10のルーメン10L内に充填される。その後、術者は、患者の体内の目的位置を針部12で穿刺する。
【0089】
なお、内視鏡を用いずに薬液注入装置1を使用する場合、術者は、カテーテル10にワイヤ移動装置50が取り付けられた収納部60を取り付け、カテーテル10のルーメン10L内に予め薬液を充填した状態で、カテーテル10を患者の生体管腔内に挿入する。その後、術者は、カテーテル10の針部12を、患者の体内の目的位置まで移動させ、目的位置を針部12で穿刺する。
【0090】
術者は、操作パネル31を介して、患者に投与する薬液の総投与量Vt、1回当たりの投与量V、薬液の投与速度、ワイヤ80の半径r、マーカ部86のピッチ情報(より具体的には、ワイヤ80における被覆部85が露出している部分の幅L85およびマーカ部86が付されている部分の幅L86等)等の各情報を入力する。当該入力された各情報は、駆動制御装置533に送信される。駆動制御装置533の制御部537において、上記各情報に基づき、分割投与回数Ttおよびワイヤ80の前進距離dが演算される。
【0091】
まず、目的位置の第1ターゲット部位に第1分割投与を行う。より具体的には、第1ターゲット部位を針部12で穿刺した後、術者は、操作パネル31を介して薬液の投与開始指令を入力する。駆動制御装置533の薬液の投与開始指令が入力されると、駆動制御装置533の制御部537は、モータ534を駆動させ、
図12の上段に示すように、内側回転部532を、第1の方向D1に回転させる。すると、内側回転部532の回転に伴って、ハンドル部512も第1の方向D1に回転し、ハンドル部512の回転に伴って、第1歯車513aおよびワイヤ巻回部511が第1の方向D1に回転し、ワイヤ80がカテーテル10のルーメン10Lに送り出される(すなわち、ワイヤ80が前進する)。すると、
図12の下段に示すように、カテーテル10のルーメン10Lに充填された薬液DSが、前進したワイヤ80により押し出されて、前進したワイヤ80の体積分の薬液DSが、針部12の先端から吐出される。すなわち、ハンドル部512の回転量に応じた量の薬液DSが、針部12の先端から吐出される。なお、第1歯車513aの回転に伴って、第2歯車513bが第1の方向D1とは逆方向に回転し、第3歯車513cおよび第1ローラ514aが第1の方向D1に回転し、第2ローラ514bが第1の方向D1とは逆方向に回転する。これにより、ワイヤ80がカテーテル10のルーメン10Lに押し出される。
【0092】
ワイヤ80が前進する間、距離検出センサ52の投光部は、ワイヤ80の外表面S80へとレーザ光を投光し、受光部は、ワイヤ80からの反射光を受光する。送信部は、受光部が受光した反射光の波長情報を駆動制御装置533へと送信する。駆動制御装置533の制御部537は、反射光の波長情報と、ワイヤ80の前進距離dとに基づき、ワイヤ80がワイヤ80の前進距離dに至ったとき、駆動制御装置533の作動を停止させる。
【0093】
薬液DSを患者の体内の目的位置(第1ターゲット部位)に注入後、術者は、目的位置の第2ターゲット部位に第2分割投与を行うべく、第2ターゲット部位を針部12で穿刺し、操作パネル31を介して薬液の投与開始指令を入力する。
【0094】
上記分割投与回数Ttの全回数が実行されると、制御部537は、ワイヤ80を回収する。より具体的には、制御部537は、モータ534を駆動させ、
図13の上段に示すように、内側回転部532を、第2の方向D2に回転させる。すると、内側回転部532の回転に伴って、ハンドル部512も第2の方向D2に回転し、ハンドル部512の回転に伴って、第1歯車513aおよびワイヤ巻回部511が第2の方向D2に回転し、ワイヤ80がカテーテル10のルーメン10Lから巻き取られる(すなわち、ワイヤ80が後退する)。なお、第1歯車513aの回転に伴って、第2歯車513bが第2の方向D2とは逆方向に回転し、第3歯車513cおよび第1ローラ514aが第2の方向D2に回転し、第2ローラ514bが第2の方向D2とは逆方向に回転する。
【0095】
A-8.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の薬液注入装置1は、内側に薬液を収容するルーメン10Lが形成された中空シャフト11を有するカテーテル10と、ルーメン10Lに挿入されるワイヤ80と、ワイヤ移動装置50とを備えている。ワイヤ移動装置50は、駆動制御装置533からの制御信号に基づき、ワイヤ80をルーメン10L内で基端から先端側に向かって前進させる。これにより、予め定められた量の薬液を中空シャフト11の先端から吐出させる。
【0096】
本実施形態の薬液注入装置1では、薬液を収容するルーメン10Lに挿入されるワイヤ80であって、ルーメン10Lの基端から先端側に向かって前進させることで、ルーメン10L内の薬液を中空シャフト11の先端から吐出させるワイヤ80を備えている。すなわち、本実施形態の薬液注入装置1では、ルーメン10L内の薬液をワイヤ80によって押し出すことで、中空シャフト11の先端から吐出させる。このため、吐出させる薬液の量をワイヤ80の体積分と同量にできるため、薬液の注入量の精密な制御ができる。また、本実施形態の薬液注入装置1では、ルーメン10L内の薬液をワイヤ80によって押し出すことで、ルーメン10L内の薬液を使い切ることができる。このため、薬液の無駄を抑制できる。また、本実施形態の薬液注入装置1では、駆動制御装置533からの制御信号に基づき、ワイヤ80をルーメン10L内へと前進させるワイヤ移動装置50を備えている。このため、本実施形態の薬液注入装置1は、ワイヤ80のルーメン10L内への前進を、自動により実行することができる。従って、本実施形態の薬液注入装置1によれば、薬液の注入量を精密に制御して薬液の無駄を低減しつつ、自動で薬液の注入を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、カテーテル10は、中空シャフト11の先端に、中空の針部12を有している。このため、本実施形態の薬液注入装置1では、患者の体内の目的位置(例えば、患部)に薬液を注入する際に、当該目的位置を針部12で穿刺することができる。従って、本実施形態の薬液注入装置1によれば、患者の体内の目的位置に針部12を固定することができるため、当該目的位置に正確に薬液を注入しつつ、当該目的位置の内部に薬液を注入することができる。
【0098】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ移動装置50は、ワイヤ80を前進させるワイヤ駆動部51と、ワイヤ80の前進距離Dを検出する距離検出センサ52と、駆動制御装置533とを有している。また、駆動制御装置533は、距離検出センサ52の検出結果に演算されたワイヤ80の前進距離が、予め定められた量に相当する距離であると判定したとき、ワイヤ駆動部51の作動を停止させる。このため、本実施形態の薬液注入装置1によれば、ワイヤ駆動部51の作動を停止させる際に、距離検出センサ52の検出結果に演算されたワイヤ80の前進距離Dを用いることにより、より精度良くワイヤ駆動部51の作動を停止させることができる。
【0099】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ移動装置50において、ワイヤ駆動部51と駆動制御装置533とは、着脱可能に構成されている。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ワイヤ駆動部51に駆動制御装置533を取り付けている構成においては、ワイヤ80をルーメン10L内へと自動で前進させることができるとともに、ワイヤ駆動部51から駆動制御装置533を取り外している構成においては、ワイヤ80をルーメン10L内へと手動で前進させることができる。術者は、例えば、患者の体内における患部の表面または内部(以下、「表面等」という)に薬液を注入する際に、手動でワイヤ80をルーメン10Lへと前進させることで、当該患部の表面等の感触を得ることができる。術者は、当該感触に基づいて、当該患部の表面等が薬液を注入するのに適しているかどうかを把握することができる。例えば、手動でワイヤをルーメンへと前進させる際の、薬液の注入圧により、当該患部の表面等の硬さの感触を得、当該感触に基づいて、当該患部の表面等の硬さが硬い(薬液を注入するのに適していない硬さである)とき、当該患部の他の位置へと薬液を注入する位置を移動させることができる。
【0100】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ駆動部51は、ルーメン10Lへワイヤ80を送り出すことでワイヤ80を前進させ、かつ、ルーメン10Lからワイヤ80を巻き取ることでワイヤ80を後退させるよう構成されている。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ワイヤ駆動部51は、ルーメン10Lへワイヤ80を送り出すことでワイヤ80を前進させ、および、ルーメン10Lからワイヤ80を巻き取ることでワイヤ80を後退させるため、ワイヤ80の前進および後退を確実に実施できる。また、ワイヤ80を巻き取って収納するため、ワイヤ80の収納に要するスペース(後述の収納部60)を小型化できる。
【0101】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ駆動部51は、ワイヤ80の基端側の一部分が巻回されたワイヤ巻回部511と、ワイヤ巻回部511に接続されたハンドル部512とを有している。ワイヤ巻回部511は、ハンドル部512の回転量に応じた長さのワイヤ80を送り出し、かつ、巻き取るよう構成されている。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ハンドル部512を回転させることによって、ワイヤ80の送り出しおよび巻き取りができるため、薬液注入装置1を簡易な構成とすることができる。
【0102】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、カテーテル10の基端部に接続され、ワイヤ80の基端側の一部分およびワイヤ駆動部51の一部分を収納する収納部60を備えている。本実施形態の薬液注入装置1では、カテーテル10の基端部に接続され、ワイヤ80の基端側の一部分を収納しつつ、ルーメン10L内におけるワイヤ80の前進および後退を可能とするワイヤ駆動部51の一部分を収納する収納部60を備えている。このため、術者がワイヤ80に直接触れることなく、ワイヤ80を前進および後退させることができる。
【0103】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ移動装置50は、さらに、ワイヤ巻回部511から送り出されたワイヤ80を、ルーメン10Lに向かって押し出すワイヤ押出部514を備え、ワイヤ押出部514は、ハンドル部512の回転に応じて回転する第1ローラ514aと第2ローラ514bとを含んでおり、第1ローラ514aと第2ローラ514bとによってワイヤ80を挟持して押し出す。本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ移動装置50は、ワイヤ巻回部511から送り出されたワイヤ80を、ルーメン10Lに向かって押し出すワイヤ押出部514を備えるため、ワイヤ80をルーメン10L内に確実に押し進めることができる。
【0104】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、収納部60は、さらに、ワイヤ押出部514とカテーテル10の基端部との間に設けられ、ルーメン10L内の薬液の収納部60内への移動を規制する弁部材62を備えでいる。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ルーメン10L内の薬液が収納部60内に進入することを抑制することができ、収納部60内を気密に維持できる。
【0105】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、カテーテル10は、さらに、中空シャフト11の基端部に接続され、ルーメン10Lに連通した、ルーメン10Lに薬液を供給するための薬液供給口133oと、ルーメン10Lにワイヤ80を挿入するためのワイヤ挿入口131oとを有するコネクタ13を備えている。また、薬液供給口133oは、ハンドル部512の回転によって、ワイヤ巻回部511にワイヤ80が最大限巻き取られた際のワイヤ80の先端よりも、先端側に設けられている。本実施形態の薬液注入装置1では、コネクタ13の薬液供給口133oは、ワイヤ巻回部511にワイヤ80が最大限巻き取られた際のワイヤ80の先端よりも、先端側に設けられている。このため、ハンドル部512を回転させて、ワイヤ巻回部511にワイヤ80を最大限巻き取った状態とした場合に、薬液供給口133oからの薬液の供給をワイヤ80により阻害されることなく実施できる。
【0106】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、コネクタ13は、さらに、カテーテル10の長手方向に延びる第1延伸部131と、第1延伸部131の先端側において、第1延伸部131の側面から第1延伸部131とは異なる方向に延びる第2延伸部133とを備えている。また、薬液供給口133oは、第2延伸部133の先端部に形成され、ワイヤ挿入口131oは、第1延伸部131の基端部に形成されている。本実施形態の薬液注入装置1では、コネクタ13において、ワイヤ挿入口131oは第1延伸部131の基端部に形成され、薬液供給口133oは第1延伸部131の先端側において第1延伸部131の側面から延びる第2延伸部133の先端部に形成されている。このため、ワイヤ挿入口131oへのワイヤ80の挿入、および、薬液供給口133oからの薬液の供給をスムーズに実施できる。
【0107】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ワイヤ80の外径は、先端から基端にかけて略一定である。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ルーメン10L内を進めるワイヤ80の長さに応じて、中空シャフト11(すなわち、針部12)の先端から吐出させる薬液の量を容易に把握できる。
【0108】
また、本実施形態の薬液注入装置1では、ルーメン10Lの横断面形状およびワイヤ80の横断面形状は、それぞれ略円形である。また、ワイヤ80の外径Φ2は、ルーメン10Lの内径Φ1と略同一である。本実施形態の薬液注入装置1によれば、ルーメン10L内におけるワイヤ80の摺動性を維持しつつ、ルーメン10L内の薬液をワイヤ80によって押し出すことができる。
【0109】
B.第2実施形態:
図14は、第2実施形態の薬液注入装置1Aが備えるワイヤ移動装置50Aおよび収納部60の構成を例示した説明図である。なお、
図14では、便宜上、CPU内蔵ケース53の図示を省略している。
図15は、ワイヤ80Aの先端部における構成を例示した説明図である。
図15には、ワイヤ80Aの先端部におけるXY断面構成が示されている。以下では、第2実施形態の薬液注入装置1Aの構成のうち、上述した第1実施形態の薬液注入装置1と同一の構成については、その説明を適宜省略する。
【0110】
第2実施形態の薬液注入装置1Aは、第1実施形態で説明したワイヤ移動装置50に代えて、ワイヤ移動装置50Aを備え、ワイヤ80に代えて、ワイヤ80Aを備えている。
【0111】
図15に示すように、ワイヤ80Aは、コアシャフト81と、被覆部85Aとを備えている。被覆部85Aは、第1実施形態の被覆部85と同様に、コアシャフト81の表面に施されたコーティング層である。ワイヤ80Aは、外表面S80Aにおいて、被覆部85A上に凸状に形成されたマーカ部86Aを有している。マーカ部86Aは、被覆部85A上において、所定幅、所定間隔で付されている。本実施形態において、マーカ部86Aは、1mm幅、1mm間隔で、被覆部85A上に形成されている。すなわち、
図15において、X軸方向におけるマーカ部86Aが形成されていない部分の幅L85Aおよびマーカ部86Aの幅L86Aは、ともに1mmである。マーカ部86Aは、例えば、被覆部85A上に、被覆部85Aと同様の材料により形成することができる。本実施形態のワイヤ80Aは、マーカ部86Aが形成されていない部分において外径Φ2を有し、マーカ部86Aが形成されている部分において外径Φ2Aを有している。ワイヤ80Aの外径Φ2Aは、カテーテル10のルーメン10Lの内径Φ1(
図2参照)と略同一(クリアランス:100μm以下)である。好ましくは、ワイヤ80Aの外径Φ2Aは、カテーテル10のルーメン10Lの内径Φ1の80%以上である。
【0112】
ワイヤ移動装置50Aは、第1実施形態で説明した距離検出センサ52に代えて、距離検出センサ52Aを備えている。距離検出センサ52Aは、ワイヤ80Aの前進距離Dを検出する。本実施形態において、距離検出センサ52Aは、圧力センサであり、ワイヤ80Aに形成された凸状のマーカ部86Aを利用することができる。より具体的には、距離検出センサ52Aは、マーカ部86Aが通過する際に変化する圧力を検出し、当該圧力の変化情報や、検出した圧力情報を駆動制御装置533へと送信する。
【0113】
駆動制御装置533は、距離検出センサ52Aの検出結果に基づいて演算されたワイヤ80Aの前進距離が、予め定められた薬液の投与量に相当する距離であると判定したとき、ワイヤ駆動部51の作動を停止させる処理を実行する。すなわち、このような第2実施形態の距離検出センサ52Aおよびワイヤ80Aを用いた薬液注入装置1Aによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0114】
C.第3実施形態:
図16は、第3実施形態の薬液注入装置1Bが備えるワイヤ移動装置50Bおよび収納部60の構成を例示した説明図である。
図17は、第3実施形態のワイヤ移動装置50Bが備えるCPU内蔵ケース53Bの構成を例示した説明図である。
図17には、CPU内蔵ケース53Bの斜視図が示されている。なお、
図16では、CPU内蔵ケース53Bを透明な部材として輪郭のみを表し、CPU内蔵ケース53Bを構成する各部材を省略している。
図16および
図17のXYZ軸は、
図1のXYZ軸にそれぞれ対応している。以下では、第3実施形態の薬液注入装置1Bの構成のうち、上述した第1実施形態および第2実施形態の薬液注入装置1,1Aと同一の構成については、その説明を適宜省略する。
【0115】
第3実施形態の薬液注入装置1Bは、第1実施形態で説明したワイヤ移動装置50に代えて、ワイヤ移動装置50Bを備えている。
【0116】
図16に示すように、ワイヤ移動装置50Bは、ワイヤ駆動部51Bと、距離検出センサ52と、CPU内蔵ケース53Bとを備えている。ワイヤ駆動部51Bは、ワイヤ巻回部511と、歯車513と、ワイヤ押出部514とを有している。CPU内蔵ケース53Bは、外側ケース531Bと、内側回転部532Bと、回転軸O1と、駆動制御装置533と、モータ534とを備えている。本実施形態では、CPU内蔵ケース53B(より具体的には、駆動制御装置533)は、ワイヤ駆動部51Bと一体に構成されている。より具体的には、本実施形態のCPU内蔵ケース53Bでは、内側回転部532Bに備えられた回転軸O1は、ワイヤ巻回部511(より具体的には、第1歯車513a)に接続されている。上述の通り、モータの駆動により、内側回転部532Bに加えられた回転力は、回転軸O1を介して、第1歯車513aに伝達される。すなわち、このような第3実施形態のワイヤ移動装置50Bを用いた薬液注入装置1Bによっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0117】
D.変形例
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0118】
[変形例1]
上記実施形態では、薬液注入装置1,1A,1Bの構成の一例を示した。しかし、薬液注入装置の構成は種々の変更が可能である。例えば、薬液注入装置は、収納部を備えていなくてもよい。例えば、薬液注入装置は、上記実施形態で説明しなかった他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素としては、例えば、薬液を注入するためのシリンジ、薬液注入装置の各部を制御するための制御部等を利用できる。
【0119】
[変形例2]
上記実施形態では、カテーテル10の構成の一例を示した。しかし、カテーテルの構成は種々の変更が可能である。例えば、カテーテルは、薬液用のルーメンとは異なる別途のルーメンを備える、マルチルーメンカテーテルとして構成されてもよい。例えば、カテーテルのルーメン内には、薬液の逆流(ワイヤ挿入口側や、薬液供給口側への移動)を規制するための弁部材が配置されていてもよい。例えば、カテーテルは、生体管腔内において針部の位置決めをするためのメッシュ部材を備えていてもよい。例えば、カテーテルは、生体管腔内を流れる体液(例えば血液)の流通を阻害し、かつ、針部の位置決めをするためのバルーン部材を備えていてもよい。
【0120】
例えば、軸線O方向において、コネクタの薬液供給口と、ワイヤ挿入口とは略同一の位置に設けられていてもよい。例えば、軸線O方向において、コネクタの薬液供給口は、ワイヤ挿入口よりも基端側に設けられていてもよい。例えば、軸線O方向において、コネクタの薬液供給口と、収納部にワイヤが最大限巻き取られた際のワイヤの先端とは略同一の位置であってもよい。例えば、軸線O方向において、コネクタの薬液供給口は、収納部にワイヤが最大限巻き取られた際のワイヤの先端よりも基端側に設けられていてもよい。
【0121】
例えば、コネクタは、薬液供給口が形成された第2延伸部を備えていなくてもよい。この場合、術者は、ワイヤ挿入口にシリンジを装着して薬液を充填した後、シリンジを取り外し、同じワイヤ挿入口に収納部を装着してワイヤの操作を行えばよい。
【0122】
[変形例3]
上記実施形態では、ワイヤ移動装置50,50Aの構成の一例を示した。しかし、ワイヤ移動装置の構成は種々の変更が可能である。例えば、第1歯車の基準円直径L11、第3歯車の基準円直径L31、ワイヤ巻回部の外径L12、及び第1ローラの外径L32は任意に決定できる。第3歯車の基準円直径L31と、第1ローラの外径L32との比(L31/L32)は、第1歯車の基準円直径L11と、ワイヤ巻回部の外径L12との比(L11/L12)よりも小さくなくてもよい。例えば、第1歯車と第3歯車とは、内歯及び外歯を有していなくてもよい。この場合、第1歯車とワイヤ巻回部とは、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤により接合されていてもよい。同様に、第3歯車と第1ローラとは、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤により接合されていてもよい。例えば、ワイヤ移動装置は、歯車以外の手段を用いて、ハンドル部等の回転力をワイヤ巻回部やワイヤ押出部に伝達してもよい。歯車以外の手段としては例えば、プーリとベルト、磁力等を利用できる。
【0123】
[変形例4]
上記実施形態では、ワイヤ80,80Aの構成の一例を示した。しかし、ワイヤの構成は種々の変更が可能である。例えば、ワイヤの外径は、先端から基端にかけて略一定でなくてもよい。この場合、ワイヤは、先端側の一部分が相対的に細径に形成され、基端側の一部分が相対的に太径に形成されていてもよい。例えば、ワイヤの外径は、ルーメンの内径の80%未満であってもよい。例えば、ワイヤの横断面形状は、略円形状でなくてもよい。
【0124】
[変形例5]
上記実施形態の記憶部536に、1回当たりの投与量Vを投与するためのワイヤ80の前進距離dに関する情報が予め格納されていてもよい。このような記憶部536を備える構成では、制御部537は、上記第1演算処理におけるワイヤ80の前進距離dの演算を省略することができる。すなわち、制御部は、第T分割投与のための投与開始指令を取得後、距離検出センサ52からの情報に基づき、上記判定処理および上記第2演算処理を実行し、上記比較処理において、記憶部536に格納されたワイヤ80の前進距離dと、第2演算処理で演算されたワイヤ80の前進距離Dとを比較し、両者が一致するとき、内側回転部532(ハンドル部512)の回転を停止させる処理を実行しうる。このような構成において、距離検出センサ52に代えて、距離検出センサ52A等の他の距離検出センサを用いてもよい。
【0125】
[変形例6]
上記実施形態の記憶部536に、内側回転部532の回転数とワイヤ80の前進距離とを関連付ける情報が予め格納されていてもよい。例えば、内側回転部532が1回転することにより前進するワイヤ80の前進距離が格納されていてもよい。このようなワイヤ80の前進距離は、内側回転部532と歯車513との歯車比、ワイヤ80におけるワイヤ巻回部511の回転軸O1からの距離等に基づき取得されうる。さらには、1回当たりの投与量Vを投与するために必要な内側回転部532の回転数(以下、「必要回転数」ともいう)が格納されていてもよい。このような記憶部536を備え、かつ、内側回転部532の回転数を検出可能なセンサ(以下、「回転数検出センサ」ともいう)を備える構成では、制御部537は、第1演算処理におけるワイヤ80の前進距離dの演算、判定処理、第2演算処理および比較処理を省略することができる。すなわち、制御部は、第T分割投与のための投与開始指令を取得後、上記回転数検出センサによって、内側回転部532が上記必要回転数回転したことが検出されたとき、内側回転部532(ハンドル部512)の回転を停止させる処理を実行しうる。
【0126】
上記変形例5および変形例6において、操作パネル31に投与回数を表示させることができる。また、分割投与回数Ttの全回数が実行された後、術者による操作パネル31を介して入力された指令に基づき、ワイヤ回収処理が実行されてもよい。また、ワイヤ回収処理に代えて、分割投与回数Ttの全回数が実行された後、ワイヤ回収処理を実行することなく、術者によりカテーテル10を抜去することによりワイヤ80を回収することとしてもよい。
【0127】
上記実施形態の薬液注入装置の構成、および、上記変形例の薬液注入装置、カテーテル、ワイヤ移動装置、収納部、ワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。
【0128】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0129】
1:薬液注入装置 1A:薬液注入装置 1B:薬液注入装置 10:カテーテル 10L:ルーメン 11:中空シャフト 11d:先端部 12:針部 12d:先端部 12p:基端部 13:コネクタ 31:操作パネル 50:ワイヤ移動装置 50A:ワイヤ移動装置 50B:ワイヤ移動装置 51:ワイヤ駆動部 51B:ワイヤ駆動部 52:距離検出センサ 52A:距離検出センサ 53:CPU内蔵ケース 53B:CPU内蔵ケース 60:収納部 61:筐体 61o:開口 62:弁部材 80:ワイヤ 80A:ワイヤ 81:コアシャフト 85:被覆部 85A:被覆部 86:マーカ部 86A:マーカ部 131:第1延伸部 131o:ワイヤ挿入口 132:羽根部 133:第2延伸部 133o:薬液供給口 511:ワイヤ巻回部 512:ハンドル部 513:歯車 513a:第1歯車 513ae:外歯 513ai:内歯 513b:第2歯車 513c:第3歯車 513ce:外歯 513ci:内歯 514:ワイヤ押出部 514a:第1ローラ 514b:第2ローラ 519:被覆部 531:外側ケース 531B:外側ケース 532:内側回転部 532B:内側回転部 532a:凹部 533:駆動制御装置 534:モータ 535:通信部 536:記憶部 537:制御部 D1:第1の方向 D2:第2の方向 DS:薬液 O1:回転軸 O:軸線