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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】警報システムおよび警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/00 20060101AFI20240731BHJP
   G08B 5/36 20060101ALI20240731BHJP
   E01F 9/608 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B5/36
E01F9/608
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020088742
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184136
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】509274407
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002376
【氏名又は名称】弁理士法人ALGIP
(72)【発明者】
【氏名】小池 克尊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直和
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07230546(US,B1)
【文献】特開2020-066870(JP,A)
【文献】特開2019-085769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
G08B 5/36
E01F 9/608
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報信号を無線送信可能な複数の警報装置と、前記警報信号を受信可能な報知器と、を有する警報システムにおいて、
複数の前記警報装置のそれぞれは、検査光を射出する光線射出部と、他の前記警報装置から射出された前記検査光を受光する受光部と、前記警報信号を送受信可能な通信部と、発光部と、前記発光部を第1発光形態および前記第1発光形態と異なる第2発光形態で発光させる制御部と、を備え、
前記通信部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行すると前記警報信号を無線送信する信号送信部と、前記警報信号を受信すると当該警報信号を無線送信する信号中継部と、を備え、
前記報知器は、鳴動部と、前記警報信号を受信すると前記鳴動部を鳴動させる報知部と、を備え、
前記制御部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態では前記発光部を前記第1発光形態で発光させ、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行した場合、および前記通信部が前記警報信号を受信した場合に前記発光部を前記第2発光形態で発光させることを特徴とする警報システム。
【請求項2】
前記受光部は、受光素子と、前記受光素子が前記検査光を受光すると発光するパイロットランプと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
複数の前記警報装置のそれぞれは、スイッチと、前記スイッチのオンに同期してカウントを開始するタイマーと、を有し、
前記制御部は、前記スイッチのオンの時点から所定の第1時間に達する前に前記受光部が前記検査光を検出した場合に、前記発光部を第1発光形態で発光させることを特徴とする請求項2に記載の警報システム。
【請求項4】
前記光線射出部は、前記スイッチがオンとなると前記検査光を射出し、
前記制御部は、前記スイッチのオンの時点から前記第1時間経過した時点で前記受光部が前記検査光を検出していない場合に、前記発光部を前記第1発光形態で発光させるとともに、前記信号送信部が前記警報信号を無線送信する機能を停止させることを特徴とする
請求項3に記載の警報システム。
【請求項5】
複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、および前記発光部を内部に収容する胴部と、前記胴部から下方に突出する柱状部と、を備え、
前記胴部は、内側から外側に光を透過させる透光部分を備え、
前記柱状部の外径寸法は、前記胴部よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の警報システム。
【請求項6】
前記柱状部は、前記胴部に近い側から外周側に広がる鍔部分を備えることを特徴とする請求項5に記載の警報システム。
【請求項7】
複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、前記発光部、および制御部に電力を供給するためのバッテリを有し、
前記バッテリは、前記柱状部に収容されていることを特徴とする請求項5または6に記載の警報システム。
【請求項8】
複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、および前記発光部を内部に収容する胴部と、前記胴部から下方に突出する柱状部と、所定の第1軸線回りに回転可能な状態で前記胴部に支持された第1可動部と、所定の第2軸線回りに回転可能な状態で前記胴部に支持された第2可動部と、を備え、
前記胴部は、内側から外側に光を透過させる透光部分を備え、
前記柱状部の外径寸法は、前記胴部よりも小さく、
前記光線射出部は、前記検査光の射出方向が前記第1軸線と直交する方向を向いた姿勢で前記第1可動部に保持され、
前記受光部は、前記受光素子の受光面が前記第2軸線と直交する方向を向いた姿勢で前記第2可動部に保持され、
前記第1軸線および前記第2軸線は、平行であることを特徴とする請求項2に記載の警報システム。
【請求項9】
前記通信部は、前記警報信号を送受信する周波数帯を、第1周波数帯と、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯との間で選択的に変更するチャンネル設定部を備えることを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の警報システム。
【請求項10】
前記報知器は、報知器側発光部を備え、
前記報知部は、前記警報信号を受信すると前記報知器側発光部を発光させることを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の警報システム。
【請求項11】
検査光を射出する光線射出部と、
外部からの前記検査光を受光する受光部と、
警報信号を無線で送受信可能な通信部と、
発光部と、
前記発光部を第1発光形態および前記第1発光形態と異なる第2発光形態で発光させる制御部と、を有し、
前記通信部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行すると前記警報信号を送信する信号送信部と、外部からの前記警報信号を受信すると当該警報信号を無線送信する信号中継部と、を備え、
前記制御部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態では前記発光部を前記第1発光形態で発光させ、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行した場合、および前記通信部が前記警報信号を受信した場合に前記発光部を前記第2発光形態で発光させることを特徴とする警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路などで車線規制を行う際に、規制車線に車両が侵入したことを報知する警報システム、および警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような警報装置システムは、特許文献1に記載されている。同文献の警報システムは、車線規制を行うための複数のコーンと、警報を発する制御装置と、オペレータが携行する携帯報知器と、を備える。複数コーンには、規制線を形成する赤外光の起点たる開始セーフティコーンと、規制線の終点たる終了セーフティコーンと、開始セーフティコーンと終了セーフティコーンとの間に配置されて赤外光を中継する複数の中間セーフティコーンと、が含まれる。
【0003】
終了セーフティコーンは、隣り合う2つのコーンの間に車両が侵入して赤外光が遮断されることにより規制線が途絶えると、制御装置に警報信号を送信する。警報信号を受信した制御装置は、鳴動などによって警報を発するとともに、無線通信により携帯報知器に警報を指令する。ここで、車両規制区域内にいるオペレータは、携帯報知器の発する警報によって車両侵入の危険を察知して、避難する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願平11-154291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速道路の車線規制は、数キロメートルに渡って行われる場合がある。このような車線規制に際して上記の警報装置を用いた場合には、開始セーフティコーンと終了セーフティコーンとの間の距離が数キロメートルとなる。
【0006】
ここで、制御装置は、終了セーフティコーンからの警報信号を受信する必要があるので、終了セーフティコーンに近い位置に設置される。従って、オペレータが開始セーフティコーンに近い位置にいる場合には、制御装置と、オペレータが携行する携帯報知器との間が数キロメートルに渡って離間してしまい、制御装置から携帯報知器への警報の指令が届かない場合が発生する。また、高速道路などにおいて、車両規制区間が山間を湾曲しながら延びる場合には、山などに遮蔽されて、制御装置から携帯報知器への警報の指令が届かない場合が発生する。制御装置からの警報の指令が携帯報知器に届かない場合には、オペレータが車両侵入の危険を察知できなくなるので、危険である。
【0007】
本発明の課題は、かかる点に鑑みて、報知器が規制領域内のどこにあっても、規制領域内への侵入があったことを報知できる警報システムを提供することにある。また、かかる警報システムの警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、警報信号を無線送信可能な複数の警報装置と、前記警報信号を受信可能な報知器と、を有する警報システムにおいて、複数の前記警報装置のそれぞれは、検査光を射出する光線射出部と、他の前記警報装置から射出された前記検査光を受光する受光部と、前記警報信号を送受信可能な通信部と、を備え、前記通信部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行
すると前記警報信号を無線送信する信号送信部と、前記警報信号を受信すると当該警報信号を無線送信する信号中継部と、を備え、前記報知器は、鳴動部と、前記警報信号を受信すると前記鳴動部を鳴動させる報知部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の警報システムを用いる際には、複数の警報装置のそれぞれを、侵入規制を行う規制領域の境界に沿って配置して、検査光による規制線を形成する。すなわち、規制領域の境界に沿って配置した各警報装置から、その隣に位置する警報装置に向けて検査光を射出して、隣に位置する警報装置に検査光を受光させて、検査光による規制線を設ける。また、規制領域を監視するオペレータなどに報知器を携行させる。ここで、規制線が破られた場合、すなわち、隣り合う2つの警報装置の間に車両などが侵入して検査光が遮蔽された場合には、検査光を受光している側の警報装置において、受光部が検査光を検出している状態から検査光を検出しない状態に移行する。従って、当該警報装置の信号送信部は、警報信号を無線送信する。また、一の警報装置から警報信号が無線送信されると、その警報信号を受信した他の警報装置からも警報信号が無線送信される。すなわち、他の警報装置では、通信部が警報信号を受信すると、信号中継部が警報信号を中継する。これにより、警報信号は、規制線を形成している全ての警報装置に伝搬して、全ての警報装置から無線信号が送信される。従って、オペレータが規制領域内のどこにいても、オペレータが携行する報知器は、いずれかの警報装置からの警報信号を受信して、鳴動部を鳴動させる。よって、オペレータは、規制線が破られたことを察知できる。
【0010】
また、本発明は、複数の前記警報装置のそれぞれは、発光部と、前記発光部を第1発光形態および前記第1発光形態と異なる第2発光形態で発光させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態では前記発光部を前記第1発光形態で発光させ、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行した場合、および前記通信部が前記警報信号を受信した場合に前記発光部を前記第2発光形態で発光させることを特徴とする。本発明によれば、発光部が第1発光形態となっている場合に、隣り合う2つの警報装置の間で検査光による規制線が形成されていることを確認できる。また、発光部が第1発光形態で発光することにより、規制領域の外部の者に、規制領域が設けられていることを喚起できる。ここで、規制線を突破する侵入があった場合には、全ての警報装置において通信部が警報信を受信する。従って、全ての警報装置において発光部が第1発光形態から第2発光形態に移行する。よって、オペレータは、規制領域内のどこにいても、近くに設置された警報装置の発光部の発光形態から、規制線が破られたことを察知できる。
【0011】
本発明において、前記受光部は、受光素子と、前記受光素子が前記検査光を受光すると発光するパイロットランプと、を備えるものとすることができる。このようにすれば、パイロットランプの発光により、受光部が検査光を受光したことを確認できる。
【0012】
本発明において、複数の前記警報装置のそれぞれは、スイッチと、前記スイッチのオンに同期してカウントを開始するタイマーと、を有し、前記制御部は、前記スイッチのオンの時点から所定の第1時間に達する前に前記受光部が前記検査光を検出した場合に、前記発光部を第1発光形態で発光させるものとすることができる。このようにすれば、オペレータは、発光部の発光形態によって、隣り合う2つの警報装置の間で規制線が形成されたことを確認できる。また、このようにすれば、発光部の発光形態によって、規制領域の外部の者に規制線が形成されていることを知らせることができる。
【0013】
本発明において、前記光線射出部は、前記スイッチがオンとなると前記検査光を射出し、前記制御部は、前記スイッチのオンの時点から前記第1時間経過した時点で前記受光部が前記検査光を検出していない場合に、前記発光部を前記第1発光形態で発光させるとともに、前記信号送信部が前記警報信号を無線送信する機能を停止させるものとすることが
できる。このようにすれば、規制領域を区画する規制線の一方側の端に位置する警報装置として、他の警報装置と同一の装置を用いることができる。言い替えれば、全ての警報装置を同一の装置とすることができる。
【0014】
すなわち、規制領域を区画する規制線の一方側の端に位置する警報装置は、検査光を射出するが、受光部において他の警報装置から射出された検査光を受光することはない。従って、規制領域を区画する規制線の一方側の端に位置する警報装置は、スイッチのオンの時点から第1時間経過した時点で受光部が検査光を検出していない場合でも、設置が完了する。よって、制御部が、スイッチのオンの時点から第1時間経過した時点で受光部が検査光を検出していない場合に発光部を第1発光形態で発光させれば、発光部の発光形態を、他の警報装置の発光形態と同様な形態とすることができる。また、規制領域を区画する規制線の一方側の端に位置する警報装置は、受光部において他の警報装置から射出された検査光を受光することはないので、受光部が検査光を検出している状態から検査光を検出しない状態に移行することがない。従って、信号送信部が警報信号を無線送信することもない。よって、スイッチのオンの時点から第1時間経過した時点で受光部が検査光を検出していない場合に制御部が信号送信部の機能を停止させれば、規制領域を区画する規制線の一方側の端に位置する警報装置が、受光部に入射する外部の光線に起因する誤動作によって警報信号を無線送信してしまうことを回避できる。
【0015】
本発明において、複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、および前記発光部を内部に収容する胴部と、前記胴部から下方に突出する柱状部と、を備え、前記胴部は、内側から外側に光を透過させる透光部分を備え、前記柱状部の外径寸法は、前記胴部よりも小さいものとすることができる。このようにすれば、例えば、道路上の特定の車線を車両規制領域とする車線規制を行う場合において、車両規制領域を区画するコーンに各警報装置を保持させることが容易となる。すなわち、コーンの上端に設けられた開口部に柱状部を挿入して胴部を開口縁に支持させれば、コーンに警報装置を保持させることができる。よって、車線規制を行う際に、道路上にペイントされた白線に沿ってコーンを配置すれば、コーンに保持させた警報装置によって車線に沿った規制線を設けることができる。
【0016】
この場合において、前記柱状部は、前記胴部に近い側から外周側に広がる鍔部分を備えるものとすることができる。このようにすれば、円錐形状のコーンの上端の開口部に柱状部を差し込んだときに、鍔部分をコーン上端の開口縁に当接させることができる。これにより、通信部、発光部、制御部などを収容した胴部が、コーンに、直接、当接することを回避できる。
【0017】
この場合において、複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、前記発光部、および制御部に電力を供給するためのバッテリを有し、前記バッテリは、前記柱状部に収容されているものとすることができる。このようにすれば、比較的重量のあるバッテリが柱状部に収容されるので、コーンの上端に形成された開口部に柱状部を挿入して警報装置をコーンの上端に支持させたときに、警報装置が安定する。
【0018】
本発明において、 複数の前記警報装置のそれぞれは、前記通信部、および前記発光部を内部に収容する胴部と、前記胴部から下方に突出する柱状部と、所定の第1軸線回りに回転可能な状態で前記胴部に支持された第1可動部と、所定の第2軸線回りに回転可能な状態で前記胴部に支持された第2可動部と、を備え、前記胴部は、内側から外側に光を透過させる透光部分を備え、前記柱状部の外径寸法は、前記胴部よりも小さく、前記光線射出部は、前記検査光の射出方向が前記第1軸線と直交する方向を向いた姿勢で前記第1可動部に保持され、前記受光部は、前記受光素子の受光面が前記第2軸線と直交する方向を向いた姿勢で前記第2可動部に保持され、前記第1軸線および前記第2軸線は、平行であるものとすることができる。このようにすれば、光線射出部から射出される検査光の射出方向、および、受光部の受光面が向いている方向を調整できる。従って、隣り合う2つの警報装置の間で、一方の警報装置の光線射出部から射出された検査光を、他方の警報装置の受光部で検出することが容易となる。
【0019】
本発明において、前記通信部は、前記警報信号を送受信する周波数帯を、第1周波数帯と、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯との間で選択的に変更するチャンネル設定部を備えるものとすることができる。このようにすれば、例えば、道路の対向車線のそれぞれにおいて車線規制を行う場合などに、一方の車両規制区間に配置された警報装置からの警報信号を、他方の車両規制区間に配置された警報装置が受信することを防止できる。
【0020】
本発明において、前記報知器は、報知器側発光部を備え、前記報知部は、前記警報信号を受信すると前記報知器側発光部を発光させるものとすることができる。このようにすれば、オペレータは、報知器側発光部の発光により、車両侵入の危険を察知できる。
【0021】
次に、本発明の警報装置は、検査光を射出する光線射出部と、外部からの前記検査光を受光する受光部と、警報信号を無線で送受信可能な通信部と、を有し、前記通信部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行すると前記警報信号を送信する信号送信部と、外部からの前記警報信号を受信すると当該警報信号を無線送信する信号中継部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、発光部と、前記発光部を第1発光形態および前記第1発光形態と異なる第2発光形態で発光させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記受光部が前記検査光を検出している状態では前記発光部を前記第1発光形態で発光させ、前記受光部が前記検査光を検出している状態から前記検査光を検出しない状態に移行した場合、および前記通信部が前記警報信号を受信した場合に前記発光部を前記第2発光形態で発光させるものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、隣り合う2つの警報装置の間に車両などが侵入して検査光が遮蔽された場合には、検査光を受光している側の警報装置の信号送信部が警報信号を無線送信する。ここで、各警報装置は信号中継部を備えている。従って、一の警報装置から警報信号が無線送信されると、この警報信号は、検査光による規制線を形成している全ての警報装置に伝搬して、全ての警報装置から無線信号が送信される。よって、オペレータが規制領域内のどこにいても、オペレータが携行する報知器は、いずれかの警報装置からの警報信号を受信して、鳴動部を鳴動させる。よって、オペレータは、規制線が破られたことを察知できる。また、本発明によれば、発光部が第1発光形態となっている場合に、隣り合う2つの警報装置の間で検査光による規制線が形成されていることを確認できる。また、発光部が第1発光形態で発光することにより、規制領域の外部の者に、規制領域が設けられていることを喚起できる。ここで、規制線を突破する侵入があった場合には、全ての警報装置において通信部が警報信を受信する。従って、全ての警報装置において発光部が第1発光形態から第2発光形態に移行する。よって、オペレータは、規制領域内のどこにいても、近くに設置された警報装置の発光部の発光形態から、規制線が破られたことを察知できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】警報システムの設置状態の説明図である。
図2】警報システムを構成する警報装置および報知器の説明図である。
図3】警報装置の斜視図である。
図4】警報装置の縦断面図である。
図5】警報システムの制御系の概略ブロック図である。
図6】警報システムを設置する設置動作の説明図である。
図7】車両が侵入した場合の警報システムの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明を適用した警報システムおよび警報装置の実施の形態を説明する。
【0026】
(警報システム)
図1は、警報システムの設置状態の説明図である。図2は、警報装置および報知器の設
置状態の説明図である。図3は、警報装置の斜視図である。図4は、警報装置の縦断面図である。本例の警報システム1は、道理工事などの作業や交通事故処理のために車線規制を行う際に、車両規制区間2に車両3が侵入したことを報知する。
【0027】
図1に示すように、警報システム1は、車線規制用のコーン5に取り付けられて車両規制区間2の境界に沿って配置された複数の警報装置11と、車両規制区間2を監視するオペレータPが携行する報知器12と、を有する。図2に示すように、車両規制用のコーン5は、円錐形状であり、上端に開口部5aを備えるものである。なお、以下の説明では、警報装置11を、コーン5に保持された姿勢で、説明する。
【0028】
図3に示すように、警報装置11は、全体として円柱形状をした胴部13と、胴部13の中央部分から下方に突出する柱状部14とを備える。胴部13は、上端が開口するカップ部16とカップ部16に上方から被せられた蓋部17と、を備える。カップ部16は、樹脂製であり、環状の外周壁部分16aが透光性を有する。図3図4に示すように、カップ部16には、基板18などが収容されている。カップ部16の底における柱状部14の外周側には、スイッチ19が固定されている。柱状部14には、警報装置11の電源となるバッテリ20が収容されている。本例では、バッテリ20は、複数の乾電池である。
【0029】
ここで、胴部13と柱状部14とは同軸に設けられている。柱状部14の外径寸法は胴部13の外径寸法よりも小さい。柱状部14は、上下方向における胴部13の側から外周側に広がる鍔部分14aを備える。鍔部分14aおよびカップ部16は、コーン5の上端の開口部5aの内径寸法よりも大きい外径寸法を備える。
【0030】
また、警報装置11は、胴部13から上方に突出する第1可動部21および第2可動部22を備える。第1可動部21および第2可動部22は、それぞれ、円盤形状の底部23と、底部23を上方から覆うカバー部24を、を備える。カバー部24は、上下方向で底部23に対向する天井板24aと、天井板24aの外周縁から下方に延びる筒部24bと、を備える。カバー部24は透光性を有する樹脂材料から形成されている。従って、天井板24aおよび筒部24bは、透光性を有する。第1可動部21は、柱状部14の軸線L0と平行な第1軸線L1回りに回転可能な状態で蓋部17に支持されている。第2可動部22は、柱状部14の軸線L0、および第1軸線L1と平行な第2軸線L2回りに回転可能な状態で蓋部17に支持されている。
【0031】
警報装置11は、柱状部14の下側が開口部5aに挿入された状態で、コーン5に支持される。本例では、柱状部14が鍔部分14aを備える。従って、鍔部分14aにコーン5の上端の開口部5aの開口縁が下方から当接する。警報装置11がコーン5に取り付けられた状態では、図2に示すように、胴部13、第1可動部21および第2可動部22は、コーン5から上方に突出する。ここで、胴部13から下方に延びる柱状部14には重量のあるバッテリ20が収容されている。従って、警報装置11をコーン5に保持させたときに、警報装置11は安定する。
【0032】
図2に示すように、報知器12は、直方体形状の本体部31と、LEDなどの報知器側発光部32が取り付けられたクリップ33と、本体部31とクリップ33との間を延びて本体部31と報知器側発光部32とを電気的に接続するケーブル34と、を備える。本体部31は、オペレータPが装着するヘルメット7の側面に固定される。クリップ33はヘルメット7のつば7aに固定される。ケーブル34は本体部31からヘルメット7の側面に沿って前方に引き出されている。クリップ33がつば7aに取り付けられたときに、報知器側発光部32は、つば7aの下面側に位置する。
【0033】
(警報システムの制御系)
図5は、警報システム1の制御系の概略ブロック図である。警報装置11の制御系は、バッテリ20から供給される電力により動作する。図5に示すように、警報装置11の制御系は、検査光40を射出する光線射出部41と、他の警報装置11から射出された検査光40を受光する受光部42と、警報信号Sを送受信可能な通信部43と、を備える。また、警報装置11は、発光部44と、スイッチ19と、スイッチ19のオンに同期してカウントを開始するタイマー45と、を備える。さらに、警報装置11は、光線射出部41、受光部42、通信部43、発光部44、およびタイマー45を駆動制御する制御部46を備える。
【0034】
光線射出部41は、検査光40として、赤色のレーザー光を射出する。図3図4に示すように、光線射出部41は、第1可動部21に保持されている。より具体的には、光線射出部41は、第1可動部21の底部23に支持されて、カバー部24の内側に収容されている。光線射出部41は、検査光40の射出方向D1を第1軸線L1と直交する方向に向けている。従って、第1可動部21が第1軸線L1回りに回転すると、光線射出部41が射出する検査光40の射出方向D1は、第1軸線L1回りに回転する。
【0035】
受光部42は、検査光40を受光する受光素子48と、受光素子48が検査光40を受光したときに点灯するパイロットランプ49と、を備える。パイロットランプ49は、LEDであり、受光部42が検査光40を受光すると点灯する。受光部42は、第2可動部22に保持されている。より具体的には、受光部42は、受光面42aが第2軸線L2と直交する方向を向いた姿勢で底部23に支持されて、カバー部24の内側に収容されている。従って、第2可動部22が第2軸線L2回りに回転すると、受光面42aが第2軸線L2回りに回転する。パイロットランプ49は、第2可動部22を上方から見た場合に、カバー部24を介して、その点灯状態を目視できる。
【0036】
通信部43は、基板18に構成されている。図5に示すように、通信部43は、信号送信部51と、信号中継部52と、を備える。信号送信部51は、受光部42が検査光40を検出している状態から検査光40を検出しない状態に移行すると警報信号Sを無線送信する。信号中継部52は、警報信号Sを受信すると当該警報信号Sを無線送信する。すなわち、信号中継部52は、警報信号Sを中継する。通信部43は、警報信号Sを送受信する周波数帯を、第1周波数帯と、前記第1周波数帯とは異なる第2周波数帯との間で選択的に変更するチャンネル設定部53を備える。チャンネル設定部53は、胴部13、または、基板18に固定された不図示の可変抵抗を備える。チャンネル設定部53は、可変抵抗が操作されると、周波数帯を変更する。なお、可変抵抗の操作により選択可能な周波数帯のチャンネル数は、2つに限られるものではない。
【0037】
発光部44は、基板18に固定されたLEDを備える。ここで、胴部13のカップ部16は光を内側から外側に透過させる。従って、発光部44が発光すると、発光部44の発光形態は、胴部13の外側から目視できる。スイッチ19は、リード線を介して基板18に接続されている。タイマー45は、基板18に設けられている。
【0038】
制御部46は、スイッチ19が操作されてオンとなると、スイッチ19のオンに同期してタイマー45を駆動する。また、制御部46は、スイッチ19がオンとなると、光線射出部41を駆動して検査光40を射出させる。
【0039】
さらに、制御部46は、発光部44を第1発光形態および第1発光形態と異なる第2発光形態で発光させる。本例において、第1発光形態は、発光部44が点滅した状態である。第2発光形態は、発光部44が点灯した状態である。より具体的には、制御部46は、タイマー45を監視しており、スイッチ19のオンの時点から第1時間に達する前に受光部42が検査光40を検出している場合に、発光部44を第1発光形態で発光させる。本
例では、第1時間は、1分に設定されている。
【0040】
また、制御部46は、受光部42が検査光40を検出している状態から検査光40を検出しない状態に移行した場合、および通信部43が警報信号Sを受信した場合に、発光部44を第2発光形態で発光させる。
【0041】
さらに、制御部46は、スイッチ19のオンの時点から第1時間が経過した時点で受光部42が検査光40を検出していない場合に、発光部44を第1発光形態で発光させるとともに、信号送信部51が警報信号Sを無線送信する機能を停止させる。
【0042】
次に、報知器12は、各警報装置11からの警報信号Sを受信可能な受信部56と、報知器側発光部32と、スピーカーなどを備える鳴動部57と、報知器側発光部32および鳴動部57を駆動制御する報知部58と、を備える。受信部56、鳴動部57、および報知部58は、本体部31に収容されている。
【0043】
受信部56は、警報信号Sを受信する周波数帯を、第1周波数帯と、第1周波数帯とは異なる第2周波数帯との間で選択的に変更する報知器側チャンネル設定部59を備える。チャンネル設定部53は、本体部31に固定された不図示の可変抵抗が操作されると、周波数帯を変更する。報知部58は、受信部56が警報信号Sを受信すると、鳴動部57を鳴動させるとともに、報知器側発光部32を発光させる。
【0044】
(警報システムの設置方法)
図6は、警報システムの設置方法の説明図である。車線規制に際して警報システム1を設置する場合には、車両規制用のコーン5を、車両規制区間2の境界に沿って配置する。すなわち、車両規制区間2を設ける場合には、道路上にペイントされたラインに沿って、車両規制用のコーン5を一定間隔で配置する。
【0045】
次に、図1に示すように、車両規制区間2の一方側の端から各コーン5に警報装置11を保持させながら、隣り合う2つのコーン5の間に検査光40による規制線Gを形成する。すなわち、車両規制区間2の一方側の端の第1のコーン5(1)に保持された第1の警報装置11(1)から、その隣に位置する第2のコーン5(2)に保持された第2の警報装置11(2)に向けて検査光40を射出して、第2の警報装置11(2)に検査光40を受光させる。これにより、車両規制区間2の一方側の端の第1のコーン5(1)とその一つ隣の第2のコーン5(2)との間に規制線Gを形成する。また、第2の警報装置11(2)から射出されている検査光40を、その隣に位置する第3のコーン5(3)に保持された第3の警報装置11(3)に受光させる。これにより、第2のコーン5(2)と第3のコーン5(3)との間に検査光40による規制線Gを形成する。かかる作業を、車両規制区間2の他方の端に配置されたコーン5(n)に至るまで、繰り返す。
【0046】
また、警報装置11の設置作業と並行して、オペレータPに、報知器12が取り付けられたヘルメット7を装着させる。ここで、各警報装置11において、警報信号Sを送受信する周波数帯は、同一に設定されている。また、報知器12が警報信号Sを受信する周波数帯も、各警報装置11が警報信号Sを送受信する周波数帯と同一に設定されている。
【0047】
より具体的には、オペレータPは、まず、第1のコーン5(1)に第1の警報装置11(1)を保持させる。そして、第1の警報装置11(1)のスイッチ19をオンとする。これにより、第1の警報装置11(1)の光線射出部41から検査光40が射出される。従って、オペレータPは、第1可動部21を回転させて、検査光40の射出方向D1を第2のコーン5(2)の側に向ける。
【0048】
ここで、車両規制区間2の一方側の端に位置する第1の警報装置11(1)は、他の警報装置11が射出する検査光40を受光しない。従って、第1の警報装置11(1)では、スイッチ19のオンの時点から第1時間が経過した時点で受光部42が検査光40を検出していない場合でも、設置が完了している。よって、制御部46は、スイッチ19のオンから第1時間が経過したときに受光部42が検査光40を検出していない場合に、発光部44を第1発光形態で発光させる。これにより、第1の警報装置11(1)は、発光部44を点滅させて、第1の警報装置11(1)の設置が完了したことを表示する。
【0049】
また、車両規制区間2の一方側の端に位置する第1の警報装置11(1)は、他の警報装置11が射出する検査光40を受光しない。従って、制御部46は、スイッチ19のオンの時点から第1時間経過した時点で受光部42が検査光40を検出していない場合に、信号送信部51が警報信号Sを無線送信する機能を停止させる。これにより、車両規制区間2を区画する規制線Gの一方側の端に位置する警報装置11では、受光部42に入射する外部の光線に起因する誤動作によって警報信号Sを無線送信してしまうことを防止できる。
【0050】
次に、オペレータPは、第2のコーン5(2)に第2の警報装置11(2)を保持させて、そのスイッチ19をオンとする。そして、オペレータPは、第1の警報装置11(1)からの検査光40を、第2の警報装置11(2)の受光部42に受光させる。すなわち、オペレータPは、第2可動部22を回転させて、受光部42の受光面42aを第1の警報装置11(1)の側に向ける。ここで、スイッチ19をオンとすると、第2の警報装置11(2)の光線射出部41からは検査光40が射出される。従って、オペレータPは、第1可動部21を回転させて、検査光40の射出方向D1を第3のコーン5(3)の側に向ける。
【0051】
第2の警報装置11(2)において、受光部42が第1の警報装置11(1)からの検査光40を受光すると、受光部42のパイロットランプ49が発光する。従って、オペレータPは、第2の警報装置11(2)が検査光40を受光したことを目視で確認できる。言い換えれば、オペレータPは、パイロットランプ49の発光により、警報装置11(1)と警報装置11(2)との間に、検査光40による規制線Gが形成されたことを確認できる。
【0052】
ここで、スイッチ19のオンの時点から第1時間に達する前に受光部42が第1の警報装置11(1)からの検査光40を検出すると、制御部46は、発光部44を第1発光形態で発光させる。これにより、第2の警報装置11(2)は、発光部44を点滅させる。従って、オペレータPは、発光部44の発光形態によっても、警報装置11(1)と警報装置11(2)との間に、検査光40による規制線Gが形成されたことを確認できる。
【0053】
なお、受光部42のパイロットランプ49が発光していないにも関わらず、発光部44が第1発光形態で発光した場合には、警報装置11(1)と警報装置11(2)との間に、検査光40による規制線Gは形成されていない。従って、オペレータPは、一旦、スイッチ19をオフにして、警報装置11(2)の設置作業をやり直す。
【0054】
しかる後に、オペレータPは、第3のコーン5(3)に第3の警報装置11(3)を保持させて、そのスイッチ19をオンとする。そして、オペレータPは、第2の警報装置11(2)からの検査光40を、受光部42に受光させる。すなわち、オペレータPは、第3の警報装置11(3)の第2可動部22を回転させて、受光部42の受光面42aを第2の警報装置11(2)の側に向ける。また、スイッチ19をオンとすると、第3の警報装置11(3)の光線射出部41から検査光40が射出される。従って、オペレータPは、第1可動部21を回転させて、検査光40の射出方向D1を次のコーン5の側に向ける
【0055】
第3の警報装置11(3)において、受光部42が第2の警報装置11(2)からの検査光40を受光すると、受光部42のパイロットランプ49が発光する。従って、オペレータPは、第3の警報装置11(3)が検査光40を受光したことを目視で確認できる。すなわち、オペレータPは、パイロットランプ49の発光により、警報装置11(1)と警報装置11(2)との間に、検査光40による規制線Gが形成されたことを確認できる。また、スイッチ19のオンの時点から第1時間に達する前に受光部42が第2の警報装置11(2)からの検査光40を検出すると、制御部46は、発光部44を第1発光形態で発光させる。これにより、第3の警報装置11(3)は、発光部44を点滅させる。従って、オペレータPは、発光部44の発光形態によっても、警報装置11(2)と警報装置11(3)との間に、検査光40による規制線Gが形成されたことを確認できる。
【0056】
かかる作業は、車両規制区間2の他方の端に配置されたコーン5(n)に保持された最後の警報装置11(n)に至るまで、繰り返される。すなわち、図1に示すように、最後の警報装置11(n)が、それよりも一つ前の警報装置11(n-1)から射出された検査光40を受光するまで繰り返される。
【0057】
最後の警報装置11(n)が検査光40を受光すると、コーン5が配列された車両規制区間2の全域に渡って、検査光40による規制線Gが形成された状態となる。また、各コーン5に保持された各警報装置11の発光部44は、第1発光形態で発光した状態となる。本例では、規制線Gが形成されると、コーン5の上方で警報装置11の発光部44が点滅する。従って、道路上を車両規制区間2に接近するドライバーに、車線規制が行われていることを、喚起できる。
【0058】
ここで、最後の警報装置11(n)からは検査光40が射出されているが、かかる検査光40を受光する警報装置11は存在しない。なお、最後の警報装置11(n)からは検査光40が射出されているので、車両規制区間2を延長したい場合には、最後の警報装置11(n)の隣に更に警報装置11(n+1)を配置し、警報装置11(n+1)により最後の警報装置11(n)からの検査光40を受光すればよい。従って、本例の警報システム1は、車両規制区間2の延長に対応することが容易である。
【0059】
(警報システムによる車両の侵入の報知)
次に、車両3が規制線Gを破って車両規制区間2に侵入した場合の警報システム1の動作を説明する。図7は、車両規制区間2に車両3が侵入した場合の警報システム1の動作の説明図である。
【0060】
図7(a)に示すように、規制線Gが破られた場合、すなわち、隣り合う2つの警報装置11の間に車両3などが侵入して検査光40が遮蔽された場合には、検査光40を受光している側の警報装置11(X)において、受光部42が検査光40を検出している状態から検査光40を検出しない状態に移行する。また、車両3が車両規制区間2に侵入してコーン5に接触した場合、或いは、コーン5を転倒させた場合にも、検査光40の射出方向D1が変化するので、検査光40が隣の警報装置11(X)の受光部42に届かなくなる。従って、これらの場合にも、検査光40を受光している側の警報装置11(X)において、受光部42が検査光40を検出している状態から検査光40を検出しない状態に移行する。
【0061】
ここで、受光部42が検査光40を検出している状態から検査光40を検出しない状態に移行すると、当該警報装置11(X)の信号送信部51は、警報信号Sを無線送信する。また、当該警報装置11(X)の制御部46は、発光部44の発光形態を第1発光形態
から第2発光形態に切り替える。すなわち、制御部46は、当該警報装置11(X)の発光部44を点滅状態から点灯状態に移行させる。
【0062】
ここで、一の警報装置11(X)から警報信号Sが無線送信されると、その警報信号Sを受信した他の警報装置11からも警報信号Sが無線送信される。すなわち、一の警報装置11(X)から警報信号Sを受信可能な位置に配置された他の警報装置11では、通信部43が警報信号Sを受信すると、信号中継部52が警報信号Sを中継する。従って、図7(b)に示すように、警報信号Sは、検査光40による規制線Gを形成している全ての警報装置11に伝搬して、全ての警報装置11から無線信号が送信される。
【0063】
これにより、オペレータPが携行する報知器12は、オペレータPが車両規制区間2内のどこにいても、いずれかの警報装置11からの警報信号Sを受信する。ここで、警報信号Sを受信した報知器12は、鳴動部57を鳴動させるとともに、報知器側発光部32を発光させる。よって、オペレータPは、車両規制区間2のどこにいても、車両3が規制線Gを越えて侵入したことを察知できる。
【0064】
また、警報信号Sが、検査光40による規制線Gを形成している全ての警報装置11に伝搬すると、警報装置11では、制御部46が発光部44の発光形態を第1発光形態から第2発光形態に切り替える。従って、全ての警報装置11において、発光部44が点滅状態から点灯状態に移行する。よって、オペレータPは、車両規制区間2のどこにいても、警報装置11を目視することにより、車両3が規制線Gを越えて侵入したことを察知できる。
【0065】
(作用効果)
本例の警報システム1によれば、隣り合う2つの警報装置11の間に車両3などが侵入して検査光40が遮蔽された場合には、検査光40を受光している側の警報装置11の信号送信部51が警報信号Sを無線送信する。また、各警報装置11は信号中継部52を備えるので、一の警報装置11から警報信号Sが無線送信されると、この警報信号Sは、検査光40による規制線Gを形成している全ての警報装置11に伝搬して、全ての警報装置11から無線信号が送信される。従って、オペレータPが携行する報知器12は、オペレータPが車両規制区間2内のどこにいても、いずれかの警報装置11からの警報信号Sを受信して、車両3が規制線Gを越えて車両規制区間2に侵入したことを報知する。よって、オペレータPは、車両規制区間2内のどこにいても、車両3の侵入を察知できる。
【0066】
また、本例の警報システム1では、規制線Gを突破する侵入があった場合には、車両規制区間2に沿って配置された全ての警報装置11の発光部44が第1発光形態から第2発光形態に移行する。従って、オペレータPは、車両規制区間2内のどこにいても、警報装置11の発光形態から、車両3の侵入を察知できる。
【0067】
ここで、複数の警報装置11のそれぞれの受光部42は、受光素子48と、受光素子48が検査光40を受光すると発光するパイロットランプ49と、を備える。従って、パイロットランプ49の発光により、受光部42が検査光40を受光したことを確認できる。
【0068】
また、複数の警報装置11のそれぞれは、スイッチ19と、スイッチ19のオンに同期してカウントを開始するタイマー45と、を有する。また、制御部46は、スイッチ19のオンの時点から所定の第1時間に達するまでに受光部42が検査光40を検出している場合に発光部44を第1発光形態で発光させる。従って、オペレータPは、発光部44の発光形態により、隣り合う警報装置11の間で検査光40による規制線Gが形成されていることを、確認できる。また、発光部44の発光形態により、車両規制区間2に接近する車両のドライバーに規制線Gが形成されていることを知らせることができる。
【0069】
さらに、本例では、警報装置11の制御部46は、スイッチ19のオンの時点から第1時間経過した時点で受光部42が検査光40を検出していない場合には、発光部44を第1形態で発光させるとともに、信号送信部51が警報信号Sを無線送信する機能を停止させる。従って、車両規制区間2を区画する規制線Gの一方側の端に位置する警報装置11と、他の警報装置11とで、同一の装置を用いることができる。言い換えれば、全ての警報装置11を同一の装置とすることができる。また、車両規制区間2の一方側の端に位置する警報装置11が、受光部42に入射する外部の光線に起因する誤動作によって警報信号Sを無線送信してしまうことを防止できる。
【0070】
また、警報装置11は、通信部43、発光部44、制御部46を内部に収容する胴部13と、胴部13から下方に突出する柱状部14と、を備える。胴部13は、光を内側から外側に透過させる透光部分を備える。柱状部14の外径寸法は、胴部13よりも小さい。従って、上端に開口部5aを備えるコーン5に警報装置11を保持させることが容易である。ここで、本例では、柱状部14は、上下方向における胴部13の側から外周側に広がる鍔部分14aを備える。従って、円錐形状のコーン5の上端の開口部5aに柱状部14を差し込んだときに、鍔部分14aをコーン5の上端の開口縁に当接させることができる。よって、通信部43、発光部44、制御部46などを収容した胴部13が、直接コーン5に当接することを回避できる。
【0071】
さらに、本例では、光線射出部41、受光部42、通信部43、発光部44、および制御部46に電力を供給するためのバッテリ20が柱状部14に収容されている。比較的重量があるバッテリ20が柱状部14に収容されるので、コーン5の上端の開口部5aに柱状部14を挿入して警報装置11をコーン5の上端に支持させたときに、警報装置11が安定する。
【0072】
また、各警報装置11において、光線射出部41は、第1軸線L1回りに回転可能な状態で胴部13に支持された第1可動部21に保持されている。受光部42は、第1軸線L1と平行な第2軸線L2回りに回転可能な状態で胴部13に支持された第2可動部22に保持されている。これにより、光線射出部41から射出される検査光40の射出方向D1、および、受光部42の受光面42aが向いている方向を調整できる。従って、隣り合う2つの警報装置11の間で、一方の警報装置11の光線射出部41から射出された検査光40を、他方の警報装置11の受光部42で検出することが容易である。
【0073】
また、通信部43は、警報信号Sを送受信する周波数帯を、第1周波数帯と、第1周波数帯とは異なる第2周波数帯との間で選択的に変更するチャンネル設定部53を備える。従って、例えば、道路の対向車線のそれぞれで車線規制を行う場合などに、一方の車両規制区間2に配置された警報装置11からの警報信号Sを、他方の車両規制区間2に配置された警報装置11が受信することを防止できる。
【0074】
ここで、報知器12は、鳴動部57を備え、報知部58は、警報信号Sを受信すると鳴動部57を鳴動させる。また、報知器12は、報知器側発光部32を備え、報知部58は、警報信号Sを受信すると報知器側発光部32を発光させる。従って、オペレータPは、鳴動および発光により、車両3の侵入による危険を察知できる。
【0075】
なお、警報システム1を道路上に設置する際には、予め各コーン5に警報装置11を保持させておき、道路にコーン5を配置する際に、警報装置11付きのコーン5を配置してもよい。
【0076】
また、警報装置11において、柱状部14の鍔部分14aを省略してもよい。この場合
には、円錐形状のコーン5の上端の開口部5aに柱状部14を差し込んだときに、胴部13がコーン5の上端の開口縁に当接する。このようにしても、警報装置11をコーン5に保持させることが容易である。
【0077】
さらに、警報装置11は、自立可能としてもよい。例えば、警報装置は、柱状部14の下端部分に、外周側に広がる台座部を設けてもよい。このようにすれば、警報装置11をコーン5に保持させることなく、路上などに設置できる。
【0078】
また、バッテリ20は、充放電可能なニ次電池としてもよい。この場合には、バッテリ20を収容する柱状部14を胴部12に対して着脱可能とする。また、柱状部14に、バッテリ20を充電するための端子部を設ける。このようにすれば、バッテリ20の残量が低下した場合などに、警報装置11から柱状部14を取り外して、柱状部14をそのまま充電器にセットできる。従って、バッテリ20の充電が容易である。
【0079】
ここで、倉庫などの大型の建造物や、作業場などの敷地を侵入規制領域とする場合にも、本例の警報システム1を用いることができる。この場合には、侵入規制領域の境界に沿って警報装置11を配置して、検査光40による規制線Gを形成する。また、規制領域内のオペレータPに報知器12を携行させる。このようにすれば、建造物への侵入や、敷地内への侵入を、警報システム1によって報知できる。
【符号の説明】
【0080】
1…警報システム、2…車両規制区間(規制領域)、3…車両、5…コーン、5a…開口部、7…ヘルメット、11…警報装置、12…胴部、12…報知器、13…胴部、14…柱状部、14a…鍔部分、16…カップ部、16a…カップ部の外周壁部分、17…蓋部、18…基板、19…スイッチ、20…バッテリ、21…第1可動部、22…第2可動部、23…底部、24…カバー部、24a…天井板、24b…筒部、31…本体部、32…報知器側発光部、33…クリップ、34…ケーブル、40…検査光、41…光線射出部、42…受光部、42a…受光面、43…通信部、44…発光部、44…報知器側発光部、45…タイマー、46…制御部、48…受光素子、49…パイロットランプ、51…信号送信部、52…信号中継部、53…チャンネル設定部、56…受信部、57…鳴動部、58…報知部、59…報知器側チャンネル設定部、D1…射出方向、L0…柱状部の軸線、L1…第1軸線、L2…第2軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7