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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】両面粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240731BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240731BHJP
   C09J 133/24 20060101ALI20240731BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240731BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240731BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240731BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/24
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B7/022
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020094581
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2020196883
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019102630
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】炭井 佑一
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 克典
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068727(US,A1)
【文献】特開平05-043851(JP,A)
【文献】特開2016-199701(JP,A)
【文献】特開2018-159019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’が70kPa以上であり、かつ、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が0.8N/25mm以上である粘着剤層を有し、
前記粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有し、
前記粘着剤層は、架橋剤として、水酸基若しくはカルボキシ基と共有結合可能な官能基を分子内に2つ以上有する化合物、又は、水酸基若しくはカルボキシ基と共有結合可能な官能基を分子内に1つ以上有し、ラジカル重合性二重結合を分子内に1つ有する化合物を含む粘着剤組成物からなり、
前記粘着剤組成物は、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを更に含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位と、ポリカーボネート親和性基含有モノマーに由来する構成単位とを含み、
前記ポリカーボネート親和性基含有モノマーは、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-(ホスフォノオキシ)エチル(メタ)アクリレート、及び、2-スルホエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、両面粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、周波数1Hzで測定した25℃における剪断貯蔵弾性率G’が1000kPa以下である、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が8N/25mm以上である、請求項1又は2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、ゲル分率が85重量%以上、99.9重量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層は、110℃、2時間加熱後の重量減少率が5%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の両面粘着シート。
【請求項6】
前記ポリカーボネート親和性基含有モノマーは、アミノ基を有するモノマーである、請求項1~5のいずれかに記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となるモノマー混合物中、前記架橋性官能基含有モノマーの含有量は10重量%以上50重量%以下であり、前記ポリカーボネート親和性基含有モノマーの含有量は0.035重量%以上1重量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の両面粘着シート。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中の前記ポリカーボネート親和性基の含有量が2.5μmol/g以上、60μmol/g以下である、請求項1~のいずれかに記載の両面粘着シート。
【請求項9】
ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板と、前記ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板に貼付された請求項1~のいずれかに記載の両面粘着シートとを含む、積層体。
【請求項10】
前記ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板は、平面形状である、請求項に記載の積層体。
【請求項11】
前記積層体は、曲面形状である、請求項に記載の積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルは様々な分野で用いられており、特に携帯電話、携帯情報端末等においては画像表示装置だけではなく入力装置にも用いられている。このような入力装置においては、例えばアクリル系粘着剤等の透明性の高い粘着剤又は透明両面粘着シートを介して、タッチパネルと表面のカバーパネルとが貼り合わされている。従来、タッチパネルのカバーパネルとしてはガラス板が用いられてきた。しかしながら、近年では、意匠性の観点から、曲面形状のカバーパネルが用いられることがある。このような曲面形状のカバーパネルには、成型性の観点から、ポリカーボネート(PC)やポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂が用いられる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-255877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリカーボネート(PC)やポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる曲面形状カバーパネルを、接着剤や両面粘着シートを介してタッチパネル表面に貼り合わせるのは難度が高く、貼り合わせ不良が生じ易い。そこで、平面形状のカバーパネルを、接着剤や両面粘着シートを介してタッチパネル表面に貼り合わせた後に、全体を曲面形状に成型する手法が検討されている。しかしながら、曲面成形時には高温加熱(約150℃程度)が必要であり、貼り合わせた界面に発泡や剥離が生じて外観不良となってしまうことがあった。
【0005】
本発明は、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡や剥離の発生を抑制することができる両面粘着シート、及び、該両面粘着シートを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’が70kPa以上であり、かつ、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が0.8N/25mm以上である粘着剤層を有する、両面粘着シートである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形したときに生じる発泡と剥離とを詳細に検討した。その結果、発泡と剥離とは、そもそも現象及びその機序が異なることを見出した。
即ち、発泡とは、加熱時にポリカーボネートやポリメチルメタクリレートからなるカバーパネルから発生するアウトガスによって、カバーパネルと両面粘着シートとの界面に気泡が生じる現象である。図1に、カバーパネルと両面粘着シートとの界面に気泡が発生した状態を界面に垂直な方向から撮影した写真を示した。
一方、剥離とは、加熱時にポリカーボネートやポリメチルメタクリレートからなるカバーパネルから発生するアウトガスによって、カバーパネルと両面粘着シートとの界面が剥がれる現象である。図2に、カバーパネルと両面粘着シートとの界面が剥がれた状態を界面に垂直な方向から撮影した写真を示した。
【0008】
従って、発泡と剥離とを抑制するためには、各々の現象に着目した対策を同時に行う必要がある。本発明者らは、鋭意検討の結果、発泡を抑制するためには、高温加熱時において両面粘着シートが充分に硬いことが必要となることを、剥離を抑制するためには、高温加熱時において両面粘着シートが充分にカバーパネルに密着していることが必要となることを見出した。そして、更に鋭意検討の結果、周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’と、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力とを一定以上とすることにより、ポリカーボネート等に貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡や剥離の発生を抑制することができることを見出した。
【0009】
本発明の両面粘着シートは、周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’が70kPa以上である粘着剤層を有する。上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’が70kPa以上であることにより、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡を抑制することができる。上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’は、75kPa以上であることが好ましく、80kPa以上であることがより好ましい。上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’の上限は特に限定されないが、被着体との密着性を維持しやすいという観点からは、1000kPa以下であることが好ましい。
【0010】
上記粘着剤層は、周波数1Hzで測定した25℃における剪断貯蔵弾性率G’の好ましい上限が1000kPaである。上記周波数1Hzで測定した25℃における剪断貯蔵弾性率G’が1000kPa以下であることにより、常温において本発明の両面粘着シートを被着体に貼付したときに、充分に密着することができ、高温加熱して曲面形状に成形した場合の発泡や剥離の発生をより抑制することができる。上記周波数1Hzで測定した25℃における剪断貯蔵弾性率G’のより好ましい上限は500kPaである。上記周波数1Hzで測定した25℃における剪断貯蔵弾性率G’の下限は特に限定されないが、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に調整しやすいという観点からは、50kPa以上であることが好ましい。
【0011】
上記周波数1Hzで測定した150℃及び25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、アイティー計測制御社製の「DVA-200」等の動的粘弾性測定装置を用いて、測定モードを剪断モードとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分にて測定することができる。
【0012】
上記粘着剤層は、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が0.8N/25mm以上である。上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が0.8N/25mm以上であることにより、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、剥離を抑制することができる。上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力は、0.9N/25mm以上であることが好ましく、1.0N/25mm以上であることがより好ましい。上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力の上限は特に限定されないが、実質的には15N/25mm程度が上限である。
【0013】
上記粘着剤層は、25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が8N/25mm以上であることが好ましい。上記25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力が8N/25mm以上であることにより、常温において本発明の両面粘着シートを被着体に貼付したときに、充分に密着することができ、高温加熱して曲面形状に成形した場合の発泡や剥離の発生をより抑制することができる。上記25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力は、10N/25mm以上であることがより好ましい。上記25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力の上限は特に限定されないが、実質的には25N/25mm程度が上限である。
【0014】
上記150℃及び25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力は、150℃及び25℃の環境下において、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行うことにより測定することができる。
【0015】
上記粘着剤層は、ベースポリマーとして、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のモノマーの種類や含有量、重量平均分子量、架橋剤の種類や配合量、残存するモノマー成分等を調整することにより、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’及び上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を満たすことができる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となるモノマー混合物に含まれるモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状構造を有するモノマーも用いることができる。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、これらのモノマーのうち少なくとも1つのモノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となるモノマー混合物は、架橋性官能基含有モノマーを含有することが好ましい。即ち、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。上記架橋性官能基含有モノマーは、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に架橋性官能基を挿入する役割を有する。
上記架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリジシル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0018】
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを使う場合には、生産者の安全性を担保するために、毒劇物専用の管理が必要であり、かつ、例えばグローボックスのような密閉された状態での取扱いが推奨されるが、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使うことで、本発明の両面粘着シートをより簡便に作ることができる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
上記グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記アミド基を有するモノマーとしては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
上記ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0019】
上記モノマー混合物中の上記架橋性官能基含有モノマーの含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は50重量%である。上記架橋性官能基含有モノマーの含有量をこの範囲内とすることにより、上記粘着剤層のゲル分率を調整して、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に調整することが容易となる。上記架橋性官能基含有モノマーの含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となるモノマー混合物は、ポリカーボネート親和性基含有モノマーを含有することが好ましい。即ち、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、ポリカーボネート親和性基含有モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。上記ポリカーボネート親和性基含有モノマーは、粘着剤層のポリカーボネートに対する親和性を高め、上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整する役割を果たす。
上記ポリカーボネート親和性基としては、例えば、アミノ基(ただし、アミド基は含まない)、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも、特にポリカーボネートに対する親和性に優れ、かつ、酸化インジウムスズ層等の金属に貼り合わせて加湿熱時に晒された場合の金属腐食性を抑制することが容易となることから、アミノ基が好ましく、第3級アミノ基がより好ましい。
【0021】
上記アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。加湿熱時のポリカーボネート板の白化を抑制することが容易という観点から、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドがより好ましい。
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
上記リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-(ホスフォノオキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
上記モノマー混合物中の上記ポリカーボネート親和性基含有モノマーの含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.035重量%、好ましい上限は1重量%である。上記ポリカーボネート親和性基含有モノマーの含有量をこの範囲内とすることにより、上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となり、また、加湿熱時のポリカーボネート板の白化を抑制することが容易となる。上記ポリカーボネート親和性基含有モノマーの含有量のより好ましい下限は0.05重量%、更に好ましい下限は0.08重量%、より好ましい上限は0.5重量%、更に好ましい上限は0.3重量%である。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中の上記ポリカーボネート親和性基の含有量の好ましい下限は2.5μmol/g、好ましい上限は60μmol/gである。上記ポリカーボネート親和性基の含有量をこの範囲内とすることにより、上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となり、加湿熱時のポリカーボネート板の白化を抑制することも容易となる。上記ポリカーボネート親和性基の含有量のより好ましい下限は3μmol/g、更に好ましい下限は4.8μmol/g、より好ましい上限は30μmol/g、更に好ましい上限は18μmol/gである。なかでも、第3級アミノ基の含有量を2.5μmol/g以上とすることにより、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を特に高くすることができる。また、第3級アミノ基の含有量を60μmol/g以下とすることにより、加湿熱時のポリカーボネート板の白化を抑制することが容易となる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。上記重量平均分子量を100万以上とすることにより、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に調整することが容易となる。上記重量平均分子量は、120万以上であることがより好ましい。上記重量平均分子量の上限は特に限定されないが、実質的には200万程度が上限である。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量は、重合時における光重合開始剤の配合量や、光照射条件等により調整することができる。
なお、本明細書において重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算により測定した値を意味する。具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)により100倍に希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液をカラム(例えば、Waters社製の商品名「2690 Separations Model」等)を用いてGPC法により測定することができる。
【0025】
上記粘着剤組成物は、更に、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤を含有することで、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に架橋構造を形成することができる。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することで、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’及び上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となる。
【0026】
上記架橋剤としては、水酸基又はカルボキシ基と共有結合可能な官能基を分子内に2つ以上有する化合物、又は、水酸基又はカルボキシ基と共有結合可能な官能基を分子内に1つ以上有し、ラジカル重合性二重結合を分子内に1つ有する化合物が好適である(以下、これらを「特定架橋剤」ともいう)。上記特定架橋剤を配合することにより、150℃の高温時において架橋反応が進行して架橋密度が上昇し、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に容易に調整できる。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中の架橋性官能基が水酸基である場合、該水酸基と結合可能な官能基としては、例えば、シラノール基、イソシアネート基、カルボニル基、エポキシ基、アジリジン基、エピスルフィド基等が挙げられる。
【0027】
上記特定架橋剤としては、具体的には例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(例えば、昭和電工社製、カレンズAOI-BP(登録商標))、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(例えば、昭和電工社製、カレンズMOI-DEM(登録商標))、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート](例えば、日本触媒社製、ケミタイトPZ-33(登録商標))等が挙げられる。
【0028】
上記粘着剤組成物中の上記特定架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5重量部である。上記特定架橋剤の含有量をこの範囲内とすることにより、上記粘着剤層の架橋密度を調整して、高温加熱時において両面粘着シートを充分に硬くすることができ、発泡を抑制することができるだけでなく、粘着シートを長期間保管した後でも、時間経過による粘着力低下を抑制することができる。上記特定架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.15重量部、更に好ましい下限は0.2重量部、より好ましい上限は3.5重量部、更に好ましい上限は1重量部である。上記特定架橋剤の含有量を0.1重量部以上とすることにより、高温加熱時において両面粘着シートの発泡を抑制することが容易となる。上記特定架橋剤の含有量を5重量部以下とすることにより、粘着シートを長期間保管した後でも、時間経過による粘着力低下を抑制することが容易となる。
【0029】
上記架橋剤としては、上記特定架橋剤以外のその他の架橋剤を併用することが好ましい。
上記その他の架橋剤としては、例えば、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが好適である。多官能(メタ)アクリレートモノマーを配合することにより、上記粘着剤層のゲル分率を調整して、上記25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となる。
【0030】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されず、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、得られる粘着剤層の粘着性能に優れる点から、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。
【0031】
上記粘着剤組成物中の上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は0.5重量部である。上記多官能(メタ)アクリレートの含有量をこの範囲内とすることにより、上記粘着剤層のゲル分率を調整して、上記25℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となり、ひいては上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となる。上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は0.3重量部である。
【0032】
上記粘着剤層は、ゲル分率の好ましい下限が85重量%、好ましい上限が99.9重量%である。上記ゲル分率がこの範囲内であることにより、常温において本発明の両面粘着シートを被着体に貼付したときに、充分に密着することができ、高温加熱して曲面形状に成形した場合の発泡や剥離の発生をより抑制することができる。上記ゲル分率のより好ましい下限は90重量%、より好ましい上限は99.5重量%である。
【0033】
なお、上記ゲル分率は、下記の方法により測定することができる。
まず、本発明の両面粘着シートを50mm×25mmの平面長方形状に切断して試験片を作製する。得られた試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを介して試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。そして、乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片に用いた粘着テープには、離型紙又は離型フィルムは積層されていない。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W
式中、Wは基材の重量を表し、Wは浸漬前の試験片の重量を表し、Wは浸漬し乾燥した後の試験片の重量を表す。両面粘着シートが基材を有さない場合はW=0である。
【0034】
上記粘着剤層は、110℃、2時間加熱後の重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であることにより、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’及び上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に容易に調整できる。重量減少率が少ないということは、低分子量成分が少ないことを意味しており、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が充分に重合されており、かつ、充分に架橋されていることを意味すると考えられる。上記重量減少率は、3.5%以下であることがより好ましい。
【0035】
上記粘着剤層は、ガラス転移温度(Tg)の好ましい下限が-20℃、好ましい上限が20℃である。上記ガラス転移温度(Tg)が-20℃以上であることにより、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の主鎖の運動性が低くなり、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に調整することが容易となる。上記ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることにより、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のポリカーボネート板に対する濡れ性が高くなり、上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に調整することが容易となる。上記ガラス転移温度(Tg)のより好ましい下限は-15℃、より好ましい上限は15℃である。
【0036】
本発明の両面粘着シートは、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいし、基材の両面に粘着剤層が形成されたサポートタイプであってもよい。
上記基材は、透明性を有する基材であれば特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0037】
本発明の両面粘着シートを製造する方法は特に限定されないが、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重合度や架橋を制御しやすく、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’及び上記150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を所期の範囲に容易に調整できることから、下記の製造方法が好適である。
即ち、まず、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となる混合モノマーの一部を重合させて(メタ)アクリル酸エステル系共重合体前駆体を調整する。該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体前駆体に上記多官能(メタ)アクリレート、その他の架橋剤、必要に応じて添加する添加剤、及び、光重合開始剤を添加した組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成する。このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせる。次いで、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射等の光照射を行うことにより、上記混合モノマーをラジカル重合させて、両面粘着シートを得る。
【0038】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤や、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等のケトン系光重合開始剤や、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチル-アセトフェノン、メトキシアセトフェン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤や、ハロゲン化ケトンや、アシルホスフィノキシドや、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0039】
上記混合モノマー100重量部に対する上記光重合開始剤の配合量の好ましい下限は0.075重量部、好ましい上限は0.5重量部である。上記光重合開始剤の配合量によって、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を調整することができる。上記光重合開始剤の配合量をこの範囲内とすることにより、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を調整して、上記周波数1Hzで測定した150℃における剪断貯蔵弾性率G’を所期の範囲に調整することが容易となる。上記光重合開始剤の配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は0.3重量部である。
【0040】
上記光重合時の光照射に用いられるランプは特に限定されず、例えば、波長400nm以下に発光分布を有するランプ等が挙げられる。
上記波長400nm以下に発光分布を有するランプとして、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達して上記混合モノマーを効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。
【0041】
上記光照射における光照射強度は特に限定されず、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を左右する因子であることから、目的とする(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量に合わせて、適宜調整される。具体的には例えば、粘度等を目安にして、光照射強度を決定することができる。
【0042】
本発明の両面粘着シートは、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡や剥離の発生を抑制することができる。
本発明の両面粘着シートの用途は特に限定されないが、携帯電話、携帯情報端末等の画像表示装置を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着するのに好適に用いることができる。また、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる。とりわけ、上記カバーパネルがポリカーボネート板又はアクリル板であって、意匠性の高い曲面形状のカバーパネルが用いられる場合に特に好適である。
【0043】
ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板と、該ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板に貼付された本発明の両面粘着シートとを含む積層体もまた、本発明の1つである。
上記ポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板の形状は特に限定されないが、平面形状であることが好ましい。
平面形状のポリカーボネート板又はポリメチルメタクリレート板に本発明の両面粘着シートを貼付した後、全体を曲面形状に成型することにより、曲面形状の積層体を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡や剥離の発生を抑制することができる両面粘着シート、及び、該両面粘着シートを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】カバーパネルと両面粘着シートとの界面に気泡が発生した状態を界面に垂直な方向から撮影した写真である。
図2】カバーパネルと両面粘着シートとの界面が剥がれた状態を界面に垂直な方向から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
(1)両面粘着シートの製造
温度計、攪拌機、冷却管、紫外線照射装置を備えた反応器に、モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレート39.9重量部、シクロヘキシルアクリレート30重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート22重量部、ジメチルアクリルアミド8重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.1重量部を投入した。該モノマー混合物に、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.05重量部を投入し、窒素ガスを吹き込んで窒素置換した。次いで、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度25℃)が約4Pa・sになるまで反応器内に紫外線を照射して、モノマー混合物の一部が重合した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体前駆体を得た。
【0048】
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体前駆体に、特定架橋剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2重量部、その他の架橋剤として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部と、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.15重量部を加えて攪拌して組成物を得た。
なお、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとして信越化学工業社製、KBM-403を、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとして新中村化学工業社製、A-HD-Nを、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンとしてIGM RESINS B.V.社製、Omnirad651を用いた。
【0049】
得られた組成物を、離型ポリエチレンテレフタレートフィルム(SP3000、東洋クロス社製)の離型処理面上に、厚さ0.1mmになるように塗布した。該アクリル系粘着剤組成物の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された面とは反対の面に、離型ポリエチレンテレフタレートフィルム(SP4107、東洋クロス社製)を、離型処理面がアクリル系粘着剤組成物に接触するように積層させた。その後、ケミカルランプを用いて波長365nmの紫外線を照度2.4mW/cmで2分間照射し(積算光量290mJ/cm)、ノンサポートタイプの両面粘着シートを得た。
【0050】
(2)剪断貯蔵弾性率G’の測定
得られた両面粘着シートを重ね合わせることにより厚さ1mmの試験片を得た。得られた試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件にて、25℃及び150℃における剪断貯蔵弾性率G’を測定した。
【0051】
(3)ポリカーボネート板に対する粘着力の測定
両面粘着シートを25mm×100mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された両面粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させた。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、両面粘着シートの露出した面を貼り合わせた。更に、両面粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させ、ポリカーボネート板(PC板)上に両面粘着テープの露出した面を貼り合わせることにより、ポリカーボネート板(PC板)上に、両面粘着シートとポリエチレンテレフタレートフィルムとがこの順で積層されている積層サンプルを得た。その後、得られた積層サンプルのポリエチレンテレフタレートフィルム上に2.0kgのゴムローラを載せて、300mm/分の速度でゴムローラを一往復させることにより、ポリカーボネート板(PC板)と両面粘着シートとを貼り合わせ、23℃で20分間放置し、試験サンプルを用意した。
得られた試験サンプルについて、25℃及び150℃の環境下でJIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0052】
(4)ゲル分率の測定
得られた両面粘着シートを50mm×25mmの平面長方形状に切断して試験片を作製し、試験片の重量Wを測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを用いて試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量Wを測定し、上記式によりゲル分率を算出した。
【0053】
(5)ガラス転移温度(Tg)の測定
得られた両面粘着シートを重ね合わせることにより厚さ1mmの試験片を得た。得られた試験片について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件にて、-50~150℃の範囲の損失正接(tanδ=G’’/G’、G’’=剪断損失弾性率)を測定し、損失正接が最も高くなる温度をTgとした。
【0054】
(6)110℃、2時間加熱後の重量減少率の測定
得られた両面粘着シートを50mm×50mmの平面正方形状に切断して試験片を作製し、試験片の重量Xを測定した。その後、試験片を110℃の条件下で2時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量Xを測定し、下記式により重量減少率を算出した。
重量減少率(%)=100×(1-X/X
【0055】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量については、光重合開始剤の配合量、光照射条件から、高低を推測した。
【0056】
(実施例2~14、比較例1~9)
モノマー混合物、架橋剤の組成、光重合開始剤の配合量、光照射条件等を表1、2に示したようにした以外は実施例1と同様にして両面粘着シートを製造し、剪断貯蔵弾性率G’等を測定した。
なお、表1、2中、AOI-BPは、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズAOI-BP(登録商標))を表す。また、MOI-DEMは、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI-DEM(登録商標))を表す。PZ-33は、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート](日本触媒社製、ケミタイトPZ-33(登録商標))を表す。
【0057】
(評価)
実施例及び比較例で得た両面粘着シートについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1、2に示した。
【0058】
(1)150℃での発泡性評価、150℃での剥離性評価
両面粘着シートを60mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された両面粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させた。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、両面粘着シートの露出した面を貼り合わせた。更に、両面粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させ、ポリカーボネート板(PC板)上に両面粘着テープの露出した面を貼り合わせることにより、ポリカーボネート板(PC板)上に、両面粘着シートとポリエチレンテレフタレートフィルムとがこの順で積層されている積層サンプルを得た。その後、得られた積層サンプルのポリエチレンテレフタレートフィルム上に2.0kgのゴムローラを載せて、300mm/分の速度でゴムローラを一往復させることにより、ポリカーボネート板(PC板)と両面粘着シートとを貼り合わせ、23℃で20分間放置し、試験サンプルを用意した。
【0059】
得られた試験サンプルを150℃、10分間熱処理を行った後、25℃まで自然冷却した。その後、試験サンプルの両面粘着シートとポリカーボネート板(PC板)との界面に垂直な方向から光学顕微鏡にて観察し、以下の基準により評価した。
耐発泡性について、界面に直径0.01mm以上の気泡が観察されなかった場合を「○」と、界面に直径0.01mm以上の気泡が観察された場合を「×」と評価した。
耐剥離性について、界面に直径2mm以上の剥離が観察されなかった場合を「○」と、界面に直径2mm以上の剥離が観察された場合を「×」と評価した。
【0060】
(2)40℃、2カ月保管後のポリカーボネート板に対する粘着力の評価
得られた両面粘着シートを、40℃で2か月間静置した後に測定に用いたこと以外は、上記と同様の方法により、150℃におけるポリカーボネート板に対する粘着力を測定した。
【0061】
(3)耐白化性の評価
上記150℃での発泡性評価、150℃での剥離性評価と同様の方法により、試験サンプルを用意した。
得られた試験サンプルのヘーズ(%)を、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH4000)を用いてJIS K 7136に準じて測定した(ヘーズ)。その後、試験サンプルを85℃、85%Rhにて1000時間静置した後に、再度ヘーズを測定した(ヘーズ1000)。下記式に従いΔヘーズを算出し、Δヘーズが1.5%を超えた場合を「×」と、1%を超え、1.5%以下であった場合を「△」と、1%以下であった場合を「〇」と評価した。
Δヘーズ=ヘーズ1000-ヘーズ
【0062】
(4)耐金属腐食性の評価
両面粘着シートを60mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された両面粘着シートの一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させた。次いで、酸化インジウムスズ層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの酸化インジウムスズ層上に、両面粘着シートの露出した面を貼り合わせた。更に、両面粘着シートのもう一方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着剤層を露出させ、ポリカーボネート板(PC板)上に両面粘着テープの露出した面を貼り合わせた。これにより、ポリカーボネート板(PC板)上に、両面粘着シート、酸化インジウムスズ層、及びポリエチレンテレフタレートフィルムがこの順で積層されている積層サンプルを得た。その後、得られた積層サンプルのポリエチレンテレフタレートフィルム上に2.0kgのゴムローラを載せて、300mm/分の速度でゴムローラを一往復させることにより、ポリカーボネート板(PC板)と両面粘着シートとを貼り合わせ、23℃で20分間放置し、試験サンプルを用意した。
得られたサンプルの酸化インジウムスズ層のシート抵抗値(Ω/□)を、非接触抵抗測定器(ナプソン社製、EC-80P)を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム面から測定した(R)。その後、サンプルを85℃、85%Rhにて500時間静置した後に、再度シート抵抗値を測定した(R1000)。下記式に従いΔRを算出し、ΔRが20%を超えた場合を「×」と、20%以下であった場合を「○」と評価した。
ΔR=(R1000/R-1)×100
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートを被着体として貼付した後、高温加熱して曲面形状に成形した場合にでも、発泡や剥離の発生を抑制することができる両面粘着シート、及び、該両面粘着シートを用いた積層体を提供することができる。
図1
図2