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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B23K11/11
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020125023
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021460
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正和
(72)【発明者】
【氏名】安宅 佑貴
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-126286(JP,U)
【文献】特開2003-214402(JP,A)
【文献】特開平09-099373(JP,A)
【文献】特開2005-140172(JP,A)
【文献】特開平10-253420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネルを有する本体部筐体と、
前記第1パネルに固定された取付具と、
前記取付具を介して前記第1パネルに取り付けられた支持部材と、
を備えており、
前記取付具は、前記第1パネルに取り付けられた一対の第1ガイドレールを含み、
前記一対の第1ガイドレールは、各々が前記第1パネルの厚さ方向に直交する第1方向に延び、かつ、前記厚さ方向および前記第1方向に直交する第2方向に離間して配置されており、
前記支持部材は、前記第1パネルに対して前記一対の第1ガイドレールに沿って前記第1方向にスライド可能であり、
前記支持部材には、溶接に関する付帯部品が取り付けられている、
ことを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記取付具は、前記一対の第1ガイドレールに取り付けられた一対の第2ガイドレールをさらに含み、
前記一対の第2ガイドレールは、各々が前記第2方向に延び、かつ、互いに前記第1方向に離間して配置されており、
前記一対の第2ガイドレールは、前記第1パネルに対して前記一対の第1ガイドレールに沿って前記第1方向にスライド可能であり、
前記支持部材は、さらに、前記第1パネルに対して前記一対の第2ガイドレールに沿って前記第2方向にスライド可能である、
請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記本体部筐体は、前記溶接装置が設置される床に立設されており、
前記厚さ方向は、前記本体部筐体の幅方向であり、
前記第1方向は、前記本体部筐体の奥行き方向であり、
前記第2方向は、前記本体部筐体の高さ方向であり、
前記第1パネルは、前記本体部筐体における側面パネルである、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項4】
各々が前記本体部筐体から前記第1方向に突き出た一対のアーム部と、
各々が前記一対のアーム部の各先端部に取り付けられた一対の電極と、
入力される電力を加工電圧に変換し、前記一対の電極に供給する溶接トランスと、
をさらに備えており、
前記溶接トランスは、前記本体部筐体に収容されている、
請求項3に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記一対の電極に加圧力を付加するための加圧機構をさらに備えており、
前記加圧機構は、前記付帯部品として、エア供給源からのエアの圧力を調整するためのレギュレータを含んでおり、
前記レギュレータは、前記支持部材に取り付けられる、
請求項4に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの被溶接材を溶接する手法としてたとえば抵抗溶接があり、中でも定置式のスポット溶接機が広く使用されている。たとえば、特許文献1には、従来の定置式のスポット溶接機が開示されている。特許文献1に記載の溶接機は、一対の電極を上下に対向させて配置する。そして、一対の電極の間にワーク(2つの被溶接材)をセットした後、一対の電極でワークを挟み込み、ワークを加圧しつつワークに通電する。これにより、抵抗発熱によってワークが接合され、スポット溶接が行われる。特許文献1に記載の溶接機では、電極によりワークを加圧する際、上方に配置された電極をエアシリンダによって押し下げることで、ワークへの加圧力を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-121272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定置式のスポット溶接機では、その本体部分に、エアシリンダに供給するエアのエア圧を調整するためのレギュレータが取り付けられることがある。このレギュレータは、スポット溶接機の仕様に応じて、たとえばフィルタレギュレータや電空レギュレータなど適宜異なる種類のものが使い分けられるが、使用するレギュレータの種類により大きさや形状が異なることがある。よって、取り付けるレギュレータに応じて取り付け寸法や取り付け位置などが変わるため、事前にレギュレータの取り付け加工(たとえばボルト挿通用の穴あけ加工など)を行うことが困難であった。そのため、スポット溶接機を設置する現場での、溶接機筐体への追加工が必要であり、追加工の段取り、加工処理、および、加工後の塗装補修などの工数が増えていた。このような問題は、エア圧を調整するためのレギュレータだけでなく、溶接機に付帯される他の付帯部品においても共通する。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、付帯部品を取り付ける際に、溶接機筐体の汎用性を改善した溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の溶接装置は、第1パネルを有する本体部筐体と、前記第1パネルに固定された取付具と、前記取付具を介して前記第1パネルに取り付けられた支持部材とを備えており、前記取付具は、前記第1パネルに取り付けられた一対の第1ガイドレールを含み、前記一対の第1ガイドレールは、各々が前記第1パネルの厚さ方向に直交する第1方向に延び、かつ、前記厚さ方向および前記第1方向に直交する第2方向に離間して配置されており、前記支持部材は、前記第1パネルに対して前記一対の第1ガイドレールに沿って前記第1方向にスライド可能であることを特徴とする。
【0007】
前記溶接装置の好ましい実施の形態においては、前記取付具は、前記一対の第1ガイドレールに取り付けられた一対の第2ガイドレールをさらに含み、前記一対の第2ガイドレールは、各々が前記第2方向に延び、かつ、互いに前記第1方向に離間して配置されており、前記一対の第2ガイドレールは、前記第1パネルに対して前記一対の第1ガイドレールに沿って前記第1方向にスライド可能であり、前記支持部材は、さらに、前記第1パネルに対して前記一対の第2ガイドレールに沿って前記第2方向にスライド可能である。
【0008】
前記溶接装置の好ましい実施の形態においては、前記本体部筐体は、前記溶接装置が設置される床に立設されており、前記厚さ方向は、前記本体部筐体の幅方向であり、前記第1方向は、前記本体部筐体の奥行き方向であり、前記第2方向は、前記本体部筐体の高さ方向であり、前記第1パネルは、前記本体部筐体における側面パネルである。
【0009】
前記溶接装置の好ましい実施の形態においては、各々が前記本体部筐体から前記第1方向に突き出た一対のアーム部と、各々が前記一対のアーム部の各先端部に取り付けられた一対の電極と、入力される電力を加工電圧に変換し、前記一対の電極に供給する溶接トランスとをさらに備えており、前記溶接トランスは、前記本体部筐体に収容されている。
【0010】
前記溶接装置の好ましい実施の形態においては、前記一対の電極に加圧力を付加するための加圧機構をさらに備えており、前記加圧機構は、エア供給源からのエアの圧力を調整するためのレギュレータを含んでおり、前記レギュレータは、前記支持部材に取り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の溶接装置によれば、前記支持部材は、前記第1パネルに対して前記一対の第1ガイドレールに沿って前記第1方向にスライド可能である。これにより、付帯部品の取り付け寸法および取り付け位置などに応じて、前記支持部材を移動させることができる。したがって、溶接機の付帯部品を取り付ける際に、溶接機筐体の汎用性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかる溶接装置の全体構成を示している。
図2】第1実施形態にかかる溶接装置の本体部を示す側面図である。
図3図2の一部を拡大した要部拡大図である。
図4】第1実施形態にかかる溶接装置の本体部を示す正面図である。
図5図4の一部を拡大した要部拡大図である。
図6】第2実施形態にかかる溶接装置の本体部を示す要部拡大側面図である。
図7】第2実施形態にかかる溶接装置の本体部を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の溶接装置の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下の説明において、同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
第1実施形態にかかる溶接装置A1を、図1図5を参照して、説明する。溶接装置A1は、たとえば定置式のスポット溶接機である。本実施形態では、溶接装置A1は、たとえば直流方式である例を示すが、交流方式であってもよい。
【0015】
図1は、溶接装置A1の全体構成図の一例である。図1に示すように、溶接装置A1は、本体部1、一対の電極チップ2、操作ボックス3、溶接電源4および溶接スイッチ5を備えている。また、溶接装置A1は、エア供給源61および冷却水供給源62が接続されている。
【0016】
溶接装置A1は、溶接したい2つの被溶接材を一対の電極チップ2で両側から挟み込み、一対の電極チップ2によって2つの被溶接材を加圧しつつ通電させることで、2つの被溶接材に電気抵抗によるジュール熱を発生させる。これにより、2つの被溶接材を局部的に発熱・溶融させて、スポット溶接を行う。
【0017】
操作ボックス3は、溶接条件(溶接電流、加圧力、および、溶接時間など)の設定を行う。溶接条件は、被溶接材の材質、板厚、重ね枚数などに応じて適宜設定される。また、操作ボックス3は、溶接装置A1の機械的および電気的な溶接シーケンス制御を実行するタイマユニットを含んでいる。溶接装置A1では、当該溶接シーケンス制御によって、一対の電極チップ2への通電および一対の電極チップ2による加圧が適宜制御される。操作ボックス3は、たとえば本体部1に取り付けられている。
【0018】
上記ではタイマユニットを含んでいる操作ボックス3について述べたが、タイマユニットを電源(たとえば溶接電源4)に含んでいる方式であってもよい。
【0019】
溶接電源4は、系統電源P(商用電源)に接続されており、系統電源Pから交流電力(たとえば三相交流)が供給される。溶接電源4は、供給される交流電力を、高周波交流電力に変換する。溶接電源4は、たとえば整流回路およびインバータ回路を備えている。溶接電源4は、系統電源Pから供給される交流電力を、整流回路により直流電力に変換した後、インバータ回路により、高周波交流電力に変換する。インバータ回路は、たとえば、複数のスイッチング素子からなるブリッジ回路により構成され、各スイッチング素子のスイッチング動作によって、直流電力をパルス状の高周波交流電力に変換する。溶接電源4は、生成した高周波交流電力を本体部1に出力する。溶接電源4は、上記溶接シーケンス制御に基づいて、インバータ回路のスイッチング動作を制御する。
【0020】
上記では、系統電源Pから三相交流の電力が供給される場合について述べたが、系統電源Pから単相交流の電力が供給されてもよい。この場合、たとえばサイリスタ等の位相制御素子を用いて、整流回路を用いることなく交流の商用周波数電力に変換する方式であってもよい。
【0021】
溶接スイッチ5は、スポット溶接のオン・オフを操作する操作部である。溶接スイッチ5は、たとえば足踏み式であるが、これに限定されない。溶接スイッチ5をオン操作することで、溶接シーケンス制御が実行され、スポット溶接が実行される。一方、溶接スイッチ5をオフ操作することで、溶接シーケンス制御が停止し、スポット溶接が停止される。
【0022】
本体部1は、溶接装置A1が設置される床等に立設されている。図2図5は、本体部1の詳細な構成を示している。図2は、本体部1を示す側面図である。図3は、図2の一部を拡大した部分拡大図である。図4は、本体部1を示す正面図である。図5は、図4の一部を拡大した部分拡大図である。理解の便宜上、図3および図5においては、筐体11、取付具16および支持部材17を抽出し、また、図5においては、加圧機構14の一部(後述のレギュレータ142)を想像線(二点鎖線)で示している。本体部1は、図2および図3に示すように筐体11、一対のアーム部12、溶接トランス13、加圧機構14、冷却機構15、取付具16および支持部材17を備えている。
【0023】
筐体11は、たとえば溶接トランス13、各種ケーブル類、および、各配管類などが収容されている。筐体11に収容される物は、上記した例に限定されない。筐体11は、たとえば、幅方向xの寸法が260mm程度であり、奥行方向yの寸法が410mm程度であり、高さ方向zの寸法が1410mm程度である。なお、筐体11の各寸法は、この例に限定されない。筐体11は、図2および図4に示すように、一対の側面パネル111,112、正面パネル113および背面パネル114を有する。
【0024】
一対の側面パネル111,112は、図4に示すように、幅方向xに離間している。各側面パネル111,112は、奥行方向yおよび高さ方向zに沿って広がる板状部材である。各側面パネル111,112の厚さ(幅方向xの寸法)は、たとえば3.0mm~6.0mm(好ましくは3.2mm)程度である。側面パネル111には、図2図5に示すように、取付具16を介して、支持部材17が取り付けられている。側面パネル111には、取付具16を取り付けるための貫通孔が適宜設けられている。側面パネル112には、図4に示すように、操作ボックス3が取り付けられている。側面パネル112には、操作ボックス3を取り付けるための貫通孔などが適宜設けられている。正面パネル113および背面パネル114は、図2に示すように、奥行方向yに離間している。正面パネル113および背面パネル114は、幅方向xおよび高さ方向zに沿って広がる板状部材である。正面パネル113および背面パネル114は、一対の側面パネル111,112のそれぞれに対して、直交する。正面パネル113は、たとえば一対の側面パネル111,112と一体的に形成されている。背面パネル114は、たとえば、筐体11が開閉可能となるように、一対の側面パネル111,112に取り付けられている。
【0025】
一対のアーム部12はそれぞれ、図2に示すように、筐体11の正面パネル113から奥行方向yに突き出ている。一対のアーム部12はそれぞれ、高さ方向zに離間して配置されている。一対のアーム部12の各先端部には、チップホルダ121が配置されており、当該チップホルダ121を介して、一対の電極チップ2がそれぞれ取り付けている。
【0026】
溶接トランス13は、たとえば一次コイルと二次コイルとコアとを含んでいる。溶接電源4から本体部1に入力された高周波交流電力は、溶接トランス13の一次コイルに入力される。そして、二次コイルには、電圧が降圧された大電流の高周波交流電力が発生する。二次コイルに発生した高周波交流電力は、図示しない整流回路によって整流され、一対の電極チップ2間に直流電力(加工電圧)が供給される。なお、溶接装置A1が交流方式の場合、二次コイルに発生した商用周波数電力は、整流されず一対の電極チップ2間に交流電力(加工電圧)が供給される。
【0027】
加圧機構14は、2つの被溶接材を加圧する際の加圧力を発生させるためのものである。図2および図4に示す例では、加圧機構14は、たとえば、シリンダ141、レギュレータ142、および、ソレノイドバルブ143を含んでいる。シリンダ141は、レギュレータ142を介して供給されるエアの圧力に応じて、溶接実行中に一対の電極チップ2による2つの被溶接材への加圧力を生成する。シリンダ141は、一対の電極チップ2のそれぞれに対して設けられていてもよいし、いずれか一方に対して設けられていてもよい。図2および図3に示す例では、高さ方向z上方の電極チップ2に対して設けられている。レギュレータ142は、エア供給源61から供給されるエアの圧力(エア圧)を所定の圧力に調整する。レギュレータ142としては、溶接装置A1の仕様に応じて、たとえばフィルタレギュレータや電空レギュレータなどが用いられる。なお、レギュレータ142の種類は、例示した2つに限定されない。ソレノイドバルブ143は、操作ボックス3からの制御信号に応じてエアの流路の切替をする弁である。ソレノイドバルブ143により、スポット溶接機の電極の加圧および開放動作をさせることができる。
【0028】
冷却機構15は、筐体11の内部および一対のアーム部12の内部などに配置された部品(たとえば溶接トランス13やチップホルダ121など)を適宜冷却するものである。冷却機構15は、冷却水供給源62から供給される冷却水を、筐体11の内部および一対のアーム部12の内部などに循環させる。冷却機構15は、図2に示す例では、冷却水用ホース151、給水口152および排水口153を含んでいる。冷却水用ホース151は、筐体11の内部および一対のアーム部12の内部などを通るように配管されている。冷却水供給源62から供給された冷却水は、給水口152から冷却水用ホース151に流入する。そして、冷却水用ホース151を通って排水口153から排水され、冷却水供給源62に復水する。
【0029】
取付具16は、筐体11に固定されており、図2図5に示す例では、側面パネル111に固定されている。取付具16は、図2図5に示すように、一対のガイドレール161、複数の第1締結具162および複数の第2締結具163を含んでいる。
【0030】
一対のガイドレール161は、図5に示すように、複数の第1締結具162により、側面パネル111に取り付けられている。一対のガイドレール161はそれぞれ、図3に示すように、奥行方向yに延びている。一対のガイドレール161は、図3に示すように、高さ方向zに離間して配置されている。本実施形態では、一対のガイドレール161は、略平行に配置されている。一対のガイドレール161はそれぞれ、図5に示すように、奥行方向yに見て、略矩形状である。図5に示すように、一対のガイドレール161には、複数の溝161a~161dが形成されている。溝161aは、各ガイドレール161において、側面パネル111に対向する面から窪んでいる。溝161bは、各ガイドレール161において、支持部材17に対向する面から窪んでいる。溝161cは、各ガイドレール161の上面から窪んでいる。溝161dは、各ガイドレール161の下面から窪んでいる。なお、各ガイドレール161に、溝161c,161dが形成されていなくてもよい。複数の溝161a~161dはそれぞれ、奥行方向yに沿って延びている。
【0031】
複数の第1締結具162は、一対のガイドレール161を側面パネル111に固定するためのものである。複数の第1締結具162はそれぞれ、図5に示すように、先入れボルト162aおよびナット162bを含んでいる。先入れボルト162aは、溝161aに挿嵌されており、かつ、挿嵌された溝161aに沿って滑動自在である。先入れボルト162aは、ボルト部分が側面パネル111に設けられた貫通孔に挿通され、筐体11の内方からナット162bで締結される。これにより、各ガイドレール161が側面パネル111に固定される。各ガイドレール161が側面パネル111に固定された状態では、先入れボルト162aは、各ガイドレール161に対して係止される。なお、各第1締結具162は、先入れボルト162aの代わりに、後入れボルトを含んでいてもよい。
【0032】
複数の第2締結具163は、支持部材17を一対のガイドレール161に固定するためのものである。複数の第2締結具163はそれぞれ、図5に示すように、先入れナット163aおよびボルト163bを含んでいる。先入れナット163aは、溝161bに挿嵌されており、かつ、挿嵌された溝161bに沿って滑動自在である。ボルト163bは、支持部材17に設けられた貫通孔に挿通され、先入れナット163aに締結される。これにより、支持部材17が、各ガイドレール161に固定される。支持部材17が各ガイドレール161に固定された状態では、先入れナット163aは、各ガイドレール161に対して係止される。本実施形態とは異なり、支持部材17が各ガイドレール161に固定された状態においても、先入れナット163aが、各ガイドレール161に沿って滑動可能であってもよい。なお、各第2締結具163は、先入れナット163aの代わりに、後入れナットを含んでいてもよい。
【0033】
支持部材17は、図5に示すように、取付具16に取り付けられている。よって、支持部材17は、取付具16を介して、筐体11(側面パネル111)に取り付けられている。支持部材17は、各ガイドレール161に沿って、各ガイドレール161が延びる方向(奥行方向y)にスライド可能である。支持部材17は、たとえば、奥行方向yおよび高さ方向zに沿って広がる板状部材である。支持部材17は板状部材ではなく、ブロック状の部材であってもよい。支持部材17は、側面パネル111に略平行に配置されている。支持部材17の幅方向xに見た形状は、特に限定されないが、図3に示す例では、矩形状である。支持部材17は、幅方向xに見て、一対のガイドレール161に跨っている。支持部材17の板厚(幅方向xの寸法)は、たとえば1.0mm~9.0mm(好ましくは6mm)程度であるが、この値に限定されない。図2および図4に示す例では、支持部材17には、レギュレータ142(加圧機構14)が取り付けられている。レギュレータ142は、たとえばボルトなどの締結具によって、支持部材17に固定されている。
【0034】
溶接装置A1の作用および効果は、次の通りである。
【0035】
溶接装置A1は、支持部材17が取付具16を介して側面パネル111(本体部1の筐体11)に取り付けられている。取付具16は、一対のガイドレール161を含み、支持部材17は、側面パネル111に対して、一対のガイドレール161に沿ってたとえば奥行方向yにスライド可能である。この構成によると、筐体11に取り付ける付帯部品(たとえばレギュレータ142)の取り付け寸法および取り付け位置などに応じて、支持部材17を移動させることができる。このため、筐体11に追加工することなく、多種多様な付帯部品(たとえばレギュレータ142)の取り付けが可能となる。したがって、溶接装置A1は、溶接機の付帯部品を取り付ける際に、溶接機筐体の汎用性を改善できる。たとえば、溶接装置A1では、レギュレータ142がフィルタレギュレータでも電空レギュレータでも取り付けが可能となる。
【0036】
溶接装置A1では、側面パネル111に対して支持部材17を移動可能に構成したことで、多種多様な付帯部品(たとえばレギュレータ142)の取り付けを可能にしている。たとえば、多種多様な付帯部品を取り付けるために、筐体11の側面パネル111に、各付帯部品に対応した複数の貫通孔(ボルトなどの締結具を挿通させる穴)を事前に空けておくことで、追加工を不要にする対策も考えられる。しかしながら、この対策案では、筐体11に不要な貫通孔を設けることになり、この貫通孔からのホコリやチリ、水滴などの浸入が懸念される。一方、溶接装置A1では、この不要な貫通孔を設ける必要がないため、ホコリやチリ、水滴などの浸入を抑制できる上、穴加工の工数も低減できる。
【0037】
溶接装置A1は、レギュレータ142などの付帯部品を取り付けるための支持部材17を備えている。支持部材17は、たとえば板厚が6mm程度であり、側面パネル111の板厚(たとえば3.2mm程度)よりも大きい。この構成によれば、支持部材17に適度な板厚をもたせることで、支持部材17に直接雌ねじ加工を行うことができるので、レギュレータ142などの付帯部品を取り付けるためのナットが不要となる。一般的に、雌ねじなどの加工を行う鋼板の板厚は、レギュレータ142などの取り付けに用いるボルトの径(雄ねじ加工がされた部分の径)よりも大きい必要がある。たとえば、レギュレータ142の取り付けに用いるボルトは、ボルト径がM4~M8といったものが多用されており、本実施形態における支持部材17は、板厚がこのボルト径よりも大きい。そのため、上述の通り、支持部材17に直接雌ねじ加工を行うことができる。また、側面パネル111の板厚を大きくすることで、側面パネル111に直接雌ねじ加工を行うことも可能であるが、筐体11の重量が大きくなり、溶接装置A1の組み立てが苦労するという問題が生じる。一方、支持部材17は、側面パネル111に対して小さいため、上記重量増加の懸念がほとんどない。したがって、溶接装置A1は、組み立て時の苦労を増やすことなく、付帯部品の取り付けを容易にすることができる。なお、支持部材17の板厚により、重量が問題になるのであれば、支持部材17に2mm以下の板厚を用いて、付帯部品を取り付けるためにプロジェクションナットを代替することも可能である。
【0038】
第1実施形態では、一対のガイドレール161は、各々が奥行方向yに延び、かつ、高さ方向zに離間して配置された例を示したが、これに限定されない。たとえば、一対のガイドレール161は、各々が高さ方向zに延び、かつ、奥行方向yに離間して配置されていてもよい。この場合、支持部材17は、高さ方向zにスライド可能である。
【0039】
第2実施形態にかかる溶接装置A2を、図6および図7を参照して、説明する。溶接装置A2は、溶接装置A1と比較して、取付具16の構成が異なる。溶接装置A2の全体構成は、溶接装置A1の全体構成(図1参照)と同様である。
【0040】
図6および図7は、本実施形態にかかる取付具16を示している。図6は、溶接装置A2の本体部1を示す側面図であって、一部を拡大した要部拡大図である。図6においては、加圧機構14(レギュレータ142)の図示を省略している。図7は、溶接装置A2の本体部1を示す正面図であって、一部を拡大した要部拡大図である。図7においては、加圧機構14の一部(レギュレータ142)を想像線(二点鎖線)で示している。図6は、第1実施形態における図3に対応し、図7は、第1実施形態における図5に対応する。
【0041】
図6および図7に示すように、溶接装置A2の取付具16は、一対のガイドレール161、一対のガイドレール164、複数の第1締結具162、複数の第2締結具163および複数の第3締結具165を含んでいる。つまり、溶接装置A2の取付具16は、溶接装置A1の取付具16と比較して、一対のガイドレール164および複数の第3締結具165が追加されている。
【0042】
一対のガイドレール164は、図7に示すように、複数の第3締結具165により、一対のガイドレール161に取り付けられている。一対のガイドレール164は、図6に示すように、各々が高さ方向zに延びており、かつ、奥行方向yに離間して配置されている。一対のガイドレール164は、たとえば略平行に配置されている。一対のガイドレール161と一対のガイドレール164とは、図6に示すように、幅方向xに見て、互いに直交している。一対のガイドレール164は、高さ方向zに見て、略矩形状である。図6および図7に示すように、一対のガイドレール164には、溝164aが形成されている。溝164aは、各ガイドレール164において、支持部材17に対向する面から窪んでいる。溝164aは、高さ方向zに沿って延びている。なお、各ガイドレール164の構造は、上記したものに限定されず、各ガイドレール161と同じ構造であってもよい。
【0043】
複数の第3締結具165は、図7に示すように、各ガイドレール164を各ガイドレール161に固定するためのものである。各ガイドレール164は、複数の第3締結具165により、一対のガイドレール161の両方にそれぞれ取り付けられている。複数の第3締結具165はそれぞれ、図7に示すように、ボルト165aおよび先入れナット165bを含んでいる。先入れナット165bは、各ガイドレール161の溝161bに挿嵌されており、かつ、挿嵌合された溝161bに沿って滑動自在である。ボルト165aの頭部は、各ガイドレール164の溝164aに嵌っている。ボルト165aのボルト部分は、各ガイドレール164の各ガイドレール161に対向する面を貫通している。例えば、各ガイドレール164の各ガイドレール161に対向する面には、溝164aに繋がる貫通孔が形成されており、ボルト165aのボルト部分は、当該貫通孔に挿通されている。また、ボルト165aのボルト部分は、先入れナット165bに締結される。これにより、各ガイドレール164が各ガイドレール161に固定される。各ガイドレール164が各ガイドレール161に固定された状態では、ボルト165aは、各ガイドレール161に対して係止される。各第3締結具165は、先入れナット165bの代わりに後入れナットを含んでいてもよい。
【0044】
本実施形態の複数の第2締結具163は、支持部材17を一対のガイドレール164に固定するためのものである。複数の第2締結具163はそれぞれ、第1実施形態と同様に、先入れナット163aおよびボルト163bを含んでいる。ただし、先入れナット163aは、各ガイドレール164の溝164aに挿嵌されており、かつ、挿嵌された溝164aに沿って滑動自在である。支持部材17が各ガイドレール164に固定された状態では、先入れナット163aは、各ガイドレール164に対して係止される。
【0045】
本実施形態の支持部材17は、幅方向xに見て、一対のガイドレール164に跨っている。支持部材17は、一対のガイドレール161に沿って奥行方向yにスライド可能であるとともに、一対のガイドレール164に沿って高さ方向zにスライド可能である。
【0046】
溶接装置A2の作用および効果は、次の通りである。
【0047】
溶接装置A2においても、溶接装置A1と同様に、支持部材17が取付具16を介して側面パネル111(本体部1の筐体11)に取り付けられている。そして、取付具16は、一対のガイドレール161を含み、支持部材17は、側面パネル111に対して、一対のガイドレール161に沿ってたとえば奥行方向yにスライド可能である。したがって、溶接装置A2においても、溶接装置A1と同様に、溶接機の付帯部品を取り付ける際に、溶接機筐体の汎用性を改善できる。
【0048】
溶接装置A2では、取付具16は、一対のガイドレール164をさらに含んでいる。この構成によれば、支持部材17は、側面パネル111に対して、一対のガイドレール161に沿って奥行方向yにスライド可能であるとともに、一対のガイドレール164に沿って高さ方向zにスライド可能である。したがって、溶接装置A2は、支持部材17の可動域が広がるため、レギュレータ142などの付帯部品の取り付け寸法や取り付け位置に応じて、支持部材17の位置を変えることができる。つまり、溶接装置A2は、付帯部品を取り付ける際の汎用性をさらに改善することができる。また、レギュレータ142には、エア圧を確認するための圧力計が備えられていることがあり、この場合、当該圧力計を、作業者の目線の高さに応じて高さ方向zに移動にさせることができる。
【0049】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、支持部材17には、付帯部品としてのレギュレータ142を取り付ける例を示したが、これに限定されず、レギュレータ142以外の付帯部品を取り付けてもよい。たとえば、操作ボックス3を筐体11に取り付ける際に、取付具16および支持部材17を用いてもよい。
【0050】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、側面パネル111に支持部材17を取り付けた例を示したが、これに限定されない。たとえば、側面パネル112においては、操作ボックス3の下方部分が空いているので、この部分に取り付けてもよい。また、第1実施形態および第2実施形態においては、各溶接装置A1,A2は、支持部材17と取付具16とのセットを1セット備えるものに限定されず、複数セット備えていてもよい。
【0051】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、各溶接装置A1,A2が、直流方式である例を示したが、これに限定されず、交流方式であってもよい。交流方式においては、溶接電源4を設けず、系統電源Pから直接本体部1に交流電力が供給される場合もある。
【0052】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、各溶接装置A1,A2が、スポット溶接機である例を示したが、これに限定されない。たとえば、プロジェクション溶接機やシーム溶接機などの他の抵抗溶接機、あるいは、アーク溶接機などであってもよい。シーム溶接機の場合、一対の電極チップ2の代わりに、一対のローラ電極が用いられる。アーク溶接機の場合、付帯部品としてたとえばシールドガスを供給する際に用いられるレギュレータなどが支持部材17に取り付けられてもよい。また、上記第1実施形態および第2実施形態では、各溶接装置A1,A2が、定置式である場合を示したが、これに限定されず、ポータブル式の溶接装置であってもよい。ただし、追加工に伴う煩雑さ(工数の増加など)は、ポータブル式の溶接装置よりも定置式の溶接装置の方が顕著である。そのため、付帯部品を取り付ける際の汎用性を改善することは、ポータブル式の溶接装置よりも定置式の溶接装置において有効である。また、抵抗溶接機は、アーク溶接機よりも定置式が多用されるため、付帯部品を取り付ける際の汎用性を改善することは、アーク溶接機よりも抵抗溶接機において有効である。
【0053】
本開示にかかる溶接装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の溶接装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0054】
A1,A2:溶接装置、1:本体部、11:筐体、111:側面パネル、12:アーム部、13:溶接トランス、14:加圧機構、142:レギュレータ、16:取付具、161,164:ガイドレール、17:支持部材、2:電極チップ、3:操作ボックス、4:溶接電源、5:溶接スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7