IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本オクラロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図1
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図2
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図3
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図4
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図5
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図6
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図7
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図8
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図9
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図10
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図11
  • 特許-半導体光素子及びその製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】半導体光素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
H01S5/042 612
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020139167
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022007851
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020109389
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康
(72)【発明者】
【氏名】浜田 重剛
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332676(JP,A)
【文献】特開2012-248746(JP,A)
【文献】特開2010-245502(JP,A)
【文献】特開2010-226094(JP,A)
【文献】特開2016-167486(JP,A)
【文献】特開2010-016281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
第1方向にストライプ状に延びるメサ部を有し、前記第1方向に直交する第2方向に前記メサ部に隣り合う台座部を有し、前記半導体基板の上にある化合物半導体層と、
上面及び側面を有して前記上面及び前記側面の間の内角が鈍角で、前記化合物半導体層の前記台座部の上にある付加絶縁膜と、
前記付加絶縁膜に重なって隆起する凸部を有し、前記メサ部の少なくとも一部を避けて前記化合物半導体層及び前記付加絶縁膜を覆うパッシベーション膜と、
前記メサ部の前記少なくとも一部の上にあるメサ電極と、
前記凸部の範囲内で前記パッシベーション膜の上にあるパッド電極と、
前記凸部の範囲内及び外側で連続的に前記パッシベーション膜の上にあって前記パッド電極及び前記メサ電極を接続し、前記パッド電極よりも幅において細い引出電極と、
を有し、
前記パッシベーション膜は、前記付加絶縁膜の前記上面に接触する第1部分と、前記付加絶縁膜の前記側面に接触して前記第1部分よりも低い第2部分と、を含み、
前記第1部分及び前記第2部分は、少なくとも部分的に分離されている半導体光素子。
【請求項2】
請求項に記載された半導体光素子であって、
前記第1部分は、前記第2部分とは完全に分離されて前記付加絶縁膜の前記上面の範囲内に位置する半導体光素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された半導体光素子であって、
前記パッシベーション膜及び前記付加絶縁膜の少なくとも一方は、積層された複数層からなる半導体光素子。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載された半導体光素子であって、
前記パッシベーション膜は、厚みにおいて前記付加絶縁膜と等しい半導体光素子。
【請求項5】
第1方向にストライプ状に延びるメサ部を有し、前記第1方向に直交する第2方向に前記メサ部に隣り合う台座部を有する化合物半導体層を、半導体基板の上に形成すること、
上面及び側面を有して前記上面及び前記側面の間の内角が鈍角である付加絶縁膜を、前記化合物半導体層の前記台座部の上に形成すること、
前記付加絶縁膜に重なって隆起する凸部を有し、前記メサ部の少なくとも一部を避けて前記化合物半導体層及び前記付加絶縁膜を覆うパッシベーション膜を、化学蒸着によって形成すること、及び、
電極を形成すること、
を含み、
前記パッシベーション膜を、前記付加絶縁膜の前記上面に接触する第1部分と、前記付加絶縁膜の前記側面に接触して前記第1部分よりも低い第2部分と、を含むように形成し、
前記第1部分及び前記第2部分を、少なくとも部分的に分離されるように形成し、
前記電極は、前記メサ部の前記少なくとも一部の上にあるメサ電極と、前記凸部の範囲内で前記パッシベーション膜の上にあるパッド電極と、前記凸部の範囲内及び外側で連続的に前記パッシベーション膜の上にあって前記パッド電極及び前記メサ電極を接続して前記パッド電極よりも幅において細い引出電極と、を含む半導体光素子の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載された半導体光素子の製造方法であって、
前記パッシベーション膜を形成する工程で、膜材料は、前記付加絶縁膜の前記側面の上方にせり出さないように、前記上面に堆積する半導体光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された半導体光素子の製造方法であって、
前記パッシベーション膜及び前記付加絶縁膜の少なくとも一方を、積層された複数層で形成する半導体光素子の製造方法。
【請求項8】
請求項からのいずれか1項に記載された半導体光素子の製造方法であって、
前記パッシベーション膜を、厚みにおいて前記付加絶縁膜と等しくなるように形成する半導体光素子の製造方法。
【請求項9】
請求項からのいずれか1項に記載された半導体光素子の製造方法であって、
前記付加絶縁膜を形成する工程は、ドライエッチングを含む半導体光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる半導体光素子には高速応答性が求められている。高速応答性を向上させるためには、寄生容量を低減することが有効である。半導体光素子は、外部との電気的接続のためのパッド電極を有する。パッド電極は、他の電極と比較すると面積が広く、大きな寄生容量の原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-32819号公報
【文献】特開2011-09294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、パッド電極とパッシベーション膜の間に、絶縁膜を介在させて、寄生容量を低減することが開示されている。絶縁膜は、局所的に形成されており、絶縁膜を超えてパッド電極から引出電極が形成されている。絶縁膜のエッジは、急峻に立ち上がる形状であるため、引出電極の切断の可能性がある。なお、特許文献2には、表面に段差のある絶縁層が開示されているが、絶縁層の一部を厚くして寄生容量を低減することの開示はない。
【0005】
本発明は、パッド電極の寄生容量を低減し、引出電極の切断可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る半導体光素子は、半導体基板と、第1方向にストライプ状に延びるメサ部を有し、前記第1方向に直交する第2方向に前記メサ部に隣り合う台座部を有し、前記半導体基板の上にある化合物半導体層と、上面及び側面を有して前記上面及び前記側面の間の内角が鈍角で、前記化合物半導体層の前記台座部の上にある付加絶縁膜と、前記付加絶縁膜に重なって隆起する凸部を有し、前記メサ部の少なくとも一部を避けて前記化合物半導体層及び前記付加絶縁膜を覆うパッシベーション膜と、前記メサ部の前記少なくとも一部の上にあるメサ電極と、前記凸部の範囲内で前記パッシベーション膜の上にあるパッド電極と、前記凸部の範囲内及び外側で連続的に前記パッシベーション膜の上にあって前記パッド電極及び前記メサ電極を接続し、前記パッド電極よりも幅において細い引出電極と、を有する。
【0007】
本発明によれば、付加絶縁膜があることでパッド電極の寄生容量が低減される。また、付加絶縁膜の上面及び側面の間の内角が鈍角であり、この形状に対応して、パッシベーション膜の凸部が形成されるので、引出電極の切断可能性を低減することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された半導体光素子であって、前記パッシベーション膜は、前記付加絶縁膜の前記上面に接触する第1部分と、前記付加絶縁膜の前記側面に接触して前記第1部分よりも低い第2部分と、を含むことを特徴としてもよい。
【0009】
(3)(2)に記載された半導体光素子であって、前記第1部分及び前記第2部分は、全体的に途切れなく一体的に連続していることを特徴としてもよい。
【0010】
(4)(2)に記載された半導体光素子であって、前記第1部分及び前記第2部分は、少なくとも部分的に分離されていることを特徴としてもよい。
【0011】
(5)(4)に記載された半導体光素子であって、前記第1部分は、前記第2部分とは完全に分離されて前記付加絶縁膜の前記上面の範囲内に位置することを特徴としてもよい。
【0012】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された半導体光素子であって、前記パッシベーション膜及び前記付加絶縁膜の少なくとも一方は、積層された複数層からなることを特徴としてもよい。
【0013】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載された半導体光素子であって、前記パッシベーション膜は、厚みにおいて前記付加絶縁膜と等しいことを特徴としてもよい。
【0014】
(8)本発明に係る半導体光素子の製造方法は、第1方向にストライプ状に延びるメサ部を有し、前記第1方向に直交する第2方向に前記メサ部に隣り合う台座部を有する化合物半導体層を、半導体基板の上に形成すること、上面及び側面を有して前記上面及び前記側面の間の内角が鈍角である付加絶縁膜を、前記化合物半導体層の前記台座部の上に形成すること、前記付加絶縁膜に重なって隆起する凸部を有し、前記メサ部の少なくとも一部を避けて前記化合物半導体層及び前記付加絶縁膜を覆うパッシベーション膜を、化学蒸着によって形成すること、及び、電極を形成すること、を含み、前記電極は、前記メサ部の前記少なくとも一部の上にあるメサ電極と、前記凸部の範囲内で前記パッシベーション膜の上にあるパッド電極と、前記凸部の範囲内及び外側で連続的に前記パッシベーション膜の上にあって前記パッド電極及び前記メサ電極を接続して前記パッド電極よりも幅において細い引出電極と、を含む。
【0015】
本発明によれば、付加絶縁膜があることでパッド電極の寄生容量が低減される。また、付加絶縁膜の上面及び側面の間の内角が鈍角であり、この形状に対応して、パッシベーション膜の凸部が形成されるので、引出電極の切断可能性を低減することができる。
【0016】
(9)(8)に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記パッシベーション膜を形成する工程で、膜材料は、前記付加絶縁膜の前記側面の上方にせり出さないように、前記上面に堆積することを特徴としてもよい。
【0017】
(10)(9)に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記膜材料は、前記上面に堆積して第1部分を形成し、前記付加絶縁膜の周囲に堆積して第2部分を形成することを特徴としてもよい。
【0018】
(11)(10)に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記パッシベーション膜を形成する工程は、前記第2部分が前記第1部分に少なくとも部分的に接触しない厚みで終了されることを特徴としてもよい。
【0019】
(12)(10)に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記パッシベーション膜を形成する工程は、前記第2部分が全体的に前記第1部分に接触する厚みになるまで行われることを特徴としてもよい。
【0020】
(13)(1)から(12)のいずれか1項に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記パッシベーション膜及び前記付加絶縁膜の少なくとも一方を、積層された複数層で形成することを特徴としてもよい。
【0021】
(14)(1)から(13)のいずれか1項に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記パッシベーション膜を、厚みにおいて前記付加絶縁膜と等しくなるように形成することを特徴としてもよい。
【0022】
(15)(1)から(14)のいずれか1項に記載された半導体光素子の製造方法であって、前記付加絶縁膜を形成する工程は、ドライエッチングを含むことを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図2図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。
図3図2において一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
図4】実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。
図5】実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。
図6】実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。
図7】実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。
図8】実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。
図9】変形例に係る付加絶縁膜及びパッシベーション膜の断面図である。
図10】比較例に係る付加絶縁膜及びパッシベーション膜の断面図である。
図11】第2の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図12図11に示す半導体光素子のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図2は、図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。半導体光素子は、リッジ型半導体レーザである。
【0026】
[半導体基板]
半導体光素子は、半導体基板10を有する。半導体基板10は、n型InP基板、p型InP基板又は半絶縁性半導体基板である。半導体基板10の裏面には下電極12(例えばカソード)がある。下電極12は、複数層(Ti層、Pt層及びAu層の3層構造など)からなる。
【0027】
[化合物半導体層]
半導体光素子は、化合物半導体層14を有する。化合物半導体層14は、半導体基板10の上にあって複数層からなる。複数層の最下層は、下クラッド層16である。下クラッド層16は、導電型(例えばn型)において半導体基板10と同じである。下クラッド層16の上に活性層18がある。活性層18は、多重量子井戸層及びこれを上下で挟んだ光閉じ込め層で構成される。活性層18の上に、上クラッド層20がある。上クラッド層20の導電型(例えばp型)は、半導体基板10の導電型(例えばn型)とは反対である。活性層18と上クラッド層20との間には、回折格子が形成されており、他の半導体層(例えば、エッチング停止層)があっても構わない。上クラッド層20の上にコンタクト層22がある。
【0028】
上クラッド層20及びコンタクト層22は、複数の部分に分離されている。化合物半導体層14は、第1方向D1にストライプ状に延びるメサ部24を有する。メサ部24は、上クラッド層20の一部及びコンタクト層22の一部で構成される。メサ部24の下に活性層18がある。
【0029】
化合物半導体層14は、第1方向D1に直交する第2方向D2にメサ部24に隣り合う台座部26を有する。メサ部24の両側のそれぞれに台座部26がある。一方の台座部26(左側)が他方の台座部26(右側)よりも大きくなっている。台座部26は、上クラッド層20の一部及びコンタクト層22の一部から構成される。台座部26とメサ部24は、溝28によって分離されている。
【0030】
[付加絶縁膜]
図3は、図2において一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。半導体光素子は、付加絶縁膜30を有する。付加絶縁膜30は、コンタクト層22の上に局所的に形成されている。付加絶縁膜30は、上面32及び側面34を有する。上面32及び側面34の間の内角αは鈍角である。付加絶縁膜30は、上面32が下面36よりも小さくなっており、縦断面で台形になっている。付加絶縁膜30は、大きい方(図2の左側)の台座部26の上にある。付加絶縁膜30は、積層された複数層からなる。上層38は、例えばSiO膜である。SiO膜は化合物半導体層14(コンタクト層22)との密着性が低いために、密着性を確保するために下層40としてPSG(Phosphorus Silicon Glass)膜を配置している。
【0031】
[パッシベーション膜]
半導体光素子は、パッシベーション膜42を有する。パッシベーション膜42は、積層された複数層(例えばPSG膜及びSiO膜)からなる。パッシベーション膜42は、厚みにおいて付加絶縁膜30と等しい。
【0032】
パッシベーション膜42は、化合物半導体層14及び付加絶縁膜30を覆い、溝28の内側面44(例えば上クラッド層20の端面及びコンタクト層22の端面)及び底面(例えば活性層18の上面の一部)も覆う。パッシベーション膜42は、メサ部24の側面も覆うが、メサ部24の一部(例えば上面)を避ける(露出させる)ように開口を有する。メサ部24の上面は、コンタクト層22の一部である。
【0033】
パッシベーション膜42は、付加絶縁膜30に重なって隆起する凸部46を有する。凸部46では、パッシベーション膜42は化合物半導体層14(コンタクト層22)に接触しない。パッシベーション膜42は、付加絶縁膜30の上面32に接触する第1部分48を含む。パッシベーション膜42は、付加絶縁膜30の側面34に接触して第1部分48よりも低い第2部分50を含む。第2部分50は、化合物半導体層14(コンタクト層22)に接触する。第1部分48及び第2部分50は、図3に示すように、少なくとも部分的に分離されている。例えば、第1部分48は、第2部分50とは完全に分離されて付加絶縁膜30の上面32の範囲内に位置してもよい。その場合、第1部分48は、第2部分50の内側で島状になる。あるいは、第1部分48の周囲に、断続的にスリットが形成されていてもよい。
【0034】
[上電極]
半導体光素子は、上電極52(例えばアノード)を有する。上電極52は、複数層(Ti層、Pt層及びAu層の3層構造など)からなり、全体的に均一な構造であってもよい。上電極52は、パッシベーション膜42の上にあり、一部(メサ部24)を除いて、化合物半導体層14とは絶縁されている。
【0035】
上電極52は、メサ電極54を有する。メサ電極54は第1方向D1に延びている。メサ電極54は、メサ部24の少なくとも一部(パッシベーション膜42が覆わない部分)の上にある。メサ電極54は、パッシベーション膜42の開口を介して、メサ部24の上面(コンタクト層22)に接触して電気的に接続されている。
【0036】
上電極52は、パッド電極56を有する。パッド電極56は、大きい方(図2の左側)の台座部26の上にある。パッド電極56は、凸部46(又は付加絶縁膜30)の範囲内でパッシベーション膜42の上にある。パッド電極56は、外部との電気的な接続のために、図示しないワイヤがボンディングされる領域である。パッド電極56の平面形状は、円形、四角形、角丸四角形、又はその他の多角形であってもよい。パッド電極56は、上電極52の他の部分と比較して面積が大きいために寄生容量が大きい。しかし、パッド電極56の下方には、半導体よりも誘電率が小さい材料(PSG/SiO)からなる、パッシベーション膜42及び付加絶縁膜30が積層されているため、寄生容量を低減することができる。
【0037】
上電極52は、引出電極58を有する。引出電極58は、凸部46(又は付加絶縁膜30)の範囲内及び外側で連続的にパッシベーション膜42の上にある。引出電極58は、パッド電極56及びメサ電極54を接続する。引出電極58とパッド電極56の接続部は、凸部46(又は付加絶縁膜30)の範囲内にある。引出電極58とメサ電極54の接続部は凸部46(又は付加絶縁膜30)の外側にある。引出電極58は、第2方向D2に延びており、パッド電極56よりも、第1方向D1の幅において細い。
【0038】
[製造方法]
図4図8は、実施形態に係る半導体光素子の製造方法を説明するための図である。本実施形態では、半導体光素子の多面取り製造を行うため、半導体基板10をウエハ状で用意する。
【0039】
図4に示すように、化合物半導体層14を、半導体基板10の上に形成する。その形成には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を適用する。詳しくは、下クラッド層16、活性層18、上クラッド層20及びコンタクト層22を順に形成する。活性層18に、図示しない回折格子を形成した後に、上クラッド層20を形成してもよい。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって、SiO膜などの酸化膜からエッチングマスク60を形成する。
【0040】
図5に示すように、塩酸と燐酸の混合液によるウェットエッチングによって、化合物半導体層14に溝28を形成する。溝28は、コンタクト層22及び上クラッド層20を複数の部分に分離する。一対の溝28の間に、第1方向D1(図1)にストライプ状に延びるメサ部24が形成される。第1方向D1に直交する第2方向D2に、メサ部24の隣には、台座部26が形成される。第2方向D2において、メサ部24の上面の幅は約2.0μmであり、溝28の幅は約10μmである。その後、エッチングマスク60を除去する。
【0041】
図6に示すように、化学蒸着により、例えば厚さ0.5μmの付加絶縁膜30を、化合物半導体層14の表面(溝28の内側面44及び底面を含む)に形成する。付加絶縁膜30は、複数層で形成する。例えば、図3に示すように、下層40をPSGから形成し、上層38をSiOから形成する。
【0042】
図7に示すように、レジストマスク62を使用して、付加絶縁膜30をドライエッチングする。エッチャントはCである。こうして、付加絶縁膜30を、化合物半導体層14の台座部26の上にパターニングする。ドライエッチングを適応するので、付加絶縁膜30の側面34は、図3に示すようになる。つまり、付加絶縁膜30の上面32及び側面34の間の内角αは鈍角である。なお、付加絶縁膜30は、平面視で四角形となっている。その後、レジストマスク62を除去する。
【0043】
図8に示すように、化学蒸着によって、パッシベーション膜42を形成する。パッシベーション膜42は、複数層で形成し、例えば下層をPSGから形成し、上層をSiOから形成する。パッシベーション膜42は、化合物半導体層14及び付加絶縁膜30を覆うように形成する。これにより、パッシベーション膜42は、付加絶縁膜30に重なって隆起した凸部46を有する。
【0044】
図3に示すように、化学蒸着の膜材料は、付加絶縁膜30の側面34の上方にせり出さないように、付加絶縁膜30の上面32に堆積する。これは、付加絶縁膜30の上面32に堆積した膜材料が、付加絶縁膜30の上面32から側面34を伝って、コンタクト層22の上にマイグレーションしたからとも考えられる。
【0045】
膜材料は、上面32に堆積して第1部分48を形成し、付加絶縁膜30の周囲に堆積して第2部分50を形成する。パッシベーション膜42を形成する工程は、第2部分50が第1部分48に少なくとも部分的に接触しない厚みで終了する。例えば、パッシベーション膜42を、厚み(例えば0.5μm)において、付加絶縁膜30と等しくなるように形成する。これにより、半導体層への応力を抑えることができる。
【0046】
図2に示すように、メサ部24の一部の上で、パッシベーション膜42に開口を形成する。形成にはエッチングを適用する。これにより、コンタクト層22をメサ部24の上で露出させることができる。その後、図1及び図2に示すように、上電極52を形成する。上電極52の形成は、電子ビーム蒸着によって電極膜を形成し、これをエッチングすることで行う。電極膜は、複数層(Ti層、Pt層、Au層)で形成する。
【0047】
上電極52は、メサ部24の少なくとも一部の上にあるメサ電極54と、凸部46の範囲内でパッシベーション膜42の上にあるパッド電極56と、凸部46の範囲内及び外側で連続的にパッシベーション膜42の上にあってパッド電極56及びメサ電極54を接続してパッド電極56よりも幅において細い引出電極58と、を含む。
【0048】
図3に示すように、付加絶縁膜30の有無によって段差が生じるので、その上のパッシベーション膜42が切れてしまうことがある。しかし、付加絶縁膜30の上面32及び側面34の間の内角αが鈍角であるために、その上に形成する引出電極58は、なだらかに下降傾斜し、切断されない。
【0049】
その後、半導体基板10を裏面から所望の厚さになるまで研磨し、下電極12を形成し、電極アロイ等の工程を経て、ウエハ状の半導体基板10を半導体光素子ごとに切断する。
【0050】
[変形例]
図9は、変形例に係る付加絶縁膜及びパッシベーション膜の断面図である。変形例では、パッシベーション膜66を形成する工程は、第2部分70が全体的に第1部分68に接触する(つながる)厚みになるまで行われる。その結果、第1部分48及び第2部分70は、全体的に途切れなく一体的に連続する。あるいは、付加絶縁膜72及びパッシベーション膜66の厚みに誤差が生じることで、パッシベーション膜66は、全体的に切れ目がなく連続することがある。このような構造であっても、付加絶縁膜72の上面74及び側面76の間の内角αが鈍角であれば、パッシベーション膜66は、表面がなだらかに傾斜するように形成され、その上の引出電極78も断線することなくなだらかに傾斜する形状となる。
【0051】
[比較例]
図10は、比較例に係る付加絶縁膜及びパッシベーション膜の断面図である。付加絶縁膜130の形成プロセスでは、化合物半導体層114の表面全体に、下層140(PSG膜)と上層138(SiO膜)を形成し、その後、これらをパターニングすることで、付加絶縁膜130を形成する。パターニングをウェットエッチングで行うと、下層140と上層138のエッチングレートの差に起因して、サイドエッチングによって、付加絶縁膜130の側面134に凹部が形成される。そのため、付加絶縁膜130の上面132と側面134の間の内角βは、鋭角になっている。
【0052】
この形状の付加絶縁膜130に、化学蒸着によって堆積させる膜材料は、マイグレーションによりコンタクト層22の上に移動しようとするが、上面132と側面134との間が鋭角であるため、側面134に沿って移動しづらく、表面張力の影響を受けて、パッシベーション膜142は付加絶縁膜130の上面132の縁からせり出した形状になる。このようなパッシベーション膜142の上に引出電極158を形成すると、パッシベーション膜142のせり出し部分は、金属膜の堆積時の庇となる。その結果、引出電極158は、付加絶縁膜130の上の部分と、その外側の部分とが分離されて断線する。もしくは部分的には接続されているとしても、その厚みは薄く、ワイヤボンディング時のパッド電極剥がれの一因となる恐れがある。
【0053】
なお、パッシベーション膜142を付加絶縁膜130の2倍以上の厚さで形成すれば、パッシベーション膜142は全体的に連続し、引出電極158も連続する。しかし、パッシベーション膜142が厚すぎると、化合物半導体層114への応力が増大し、特性面及び信頼性面で好ましくない。同様に、引出電極158をより厚くすることで接続性を向上させることができるが、金属膜による応力の増大を招き好ましくない。
【0054】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。図12は、図11に示す半導体光素子のXII-XII線断面図である。半導体光素子は、電界吸収型変調器であり、埋め込みヘテロ(BH: Burred Hetero)構造を有する。
【0055】
半導体光素子は、半導体基板210(例えばn型InP基板)を有する。半導体基板210の裏面には、下電極212(例えばカソード)ある。半導体光素子は、半導体基板210の上に化合物半導体層214を有する。
【0056】
化合物半導体層214は、第1方向D1(光軸方向)にストライプ状に延びるメサ部224を有する。メサ部224は、半導体基板210から順に、活性層218、クラッド層216、コンタクト層222が積層されて構成されている。活性層218は、多重量子井戸層を上下に挟んだ光閉じ込め層であり、ここでは吸収層として機能する。
【0057】
化合物半導体層214は、第1方向D1に直交する第2方向D2にメサ部224に隣り合う台座部226を有する。台座部226は、メサ部224の両側のそれぞれにあり、メサ部224の埋め込み層である。つまり、台座部226はメサ部224の側面に接触している。一方(図11で左側)の台座部226が、他方(図11で右側)の台座部226よりも大きい。台座部226は、メサ部224の上面に隣接する傾斜面264を有する。傾斜面264の下端が、メサ部224の上面に隣接する。傾斜面264は、メサ部224から離れる方向に高くなるように傾斜する。
【0058】
付加絶縁膜230の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。パッシベーション膜242は、付加絶縁膜230に重なって隆起する凸部246を有する。パッシベーション膜242は、化合物半導体層214(台座部226の上面)及び付加絶縁膜230を覆う。パッシベーション膜242は、メサ部224(全体)を覆わず、台座部226の傾斜面264を覆わない。パッシベーション膜242のその他の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0059】
パッシベーション膜242の上に、上電極252(例えばアノード)がある。上電極252は、全体的に、均一の構造(Ti層、Pt層及びAu層の3層構造など)を有する。メサ電極254は、メサ部224の少なくとも一部(例えば上面全体)の上にあり、メサ部224(コンタクト層222)に接触している。メサ電極254は、第1方向D1(メサ部224が延びる方向)に延びる。メサ部224の幅方向(第2方向D2)の端部は、台座部226の傾斜面264に接触していてもよい。パッド電極256は、凸部246の範囲内でパッシベーション膜242の上(又は付加絶縁膜230の上方)にある。パッド電極256は、大きい方(図11で左側)の台座部226の上方にある。パッド電極256のその他の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0060】
引出電極258は、凸部246の範囲内及び外側で連続的にパッシベーション膜242の上にあってパッド電極256及びメサ電極254を接続し、パッド電極256よりも幅において細い。引出電極258の一部は、台座部226の傾斜面264の上にあり、傾斜面264に接触していてもよい。引出電極258のその他の詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 半導体基板、12 下電極、14 化合物半導体層、16 下クラッド層、18 活性層、20 上クラッド層、22 コンタクト層、24 メサ部、26 台座部、28 溝、30 付加絶縁膜、32 上面、34 側面、36 下面、38 上層、40 下層、42 パッシベーション膜、44 内側面、46 凸部、48 第1部分、50 第2部分、52 上電極、54 メサ電極、56 パッド電極、58 引出電極、60 エッチングマスク、62 レジストマスク、66 パッシベーション膜、68 第1部分、70 第2部分、72 付加絶縁膜、74 上面、76 側面、78 引出電極、114 化合物半導体層、130 付加絶縁膜、132 上面、134 側面、138 上層、140 下層、142 パッシベーション膜、158 引出電極、210 半導体基板、212 下電極、214 化合物半導体層、216 クラッド層、218 活性層、222 コンタクト層、224 メサ部、226 台座部、230 付加絶縁膜、242 パッシベーション膜、246 凸部、252 上電極、254 メサ電極、256 パッド電極、258 引出電極、264 傾斜面、D1 第1方向、D2 第2方向。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12