(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/12 20060101AFI20240731BHJP
B41F 35/00 20060101ALI20240731BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20240731BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B41F15/12 A
B41F35/00 C
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2020190172
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅之
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039786(JP,A)
【文献】特開平08-001920(JP,A)
【文献】特開平07-125173(JP,A)
【文献】特開平05-229110(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139745(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第03928525(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00-15/46
31/00-35/06
H05K 3/32- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
マスクを用いて基板上にスクリーン印刷を行う印刷部と、
前記マスクを洗浄する洗浄部と、
前記マスクを格納する格納部と、
前記マスクを搬送する搬送部と、含み、
前記洗浄部と前記格納部は並んで配設され、
前記洗浄部又は前記格納部は、前記印刷部と並んで配設され、
前記搬送部は、前記印刷部、前記洗浄部、及び前記格納部のうち、それぞれ並ぶもの同士の間でマスクを搬送し、
前記格納部は、前記印刷部及び前記洗浄部の双方に隣接し、洗浄済みの第1マスクと、前記印刷部から搬出される未洗浄の第2マスクと、を格納する格納領域を有し、
前記格納部は、上下方向に複数の格納領域を有しており、
前記格納領域に、前記第1マスクが格納されている場合、
前記印刷部から前記格納部に搬送される前記第2マスクは、
前記第1マスクよりも下段の前記格納領域に格納され、
前記格納部は、前記第1マスクが格納されている前記格納領域よりも下段の前記格納領域が空いていない場合は、前記第1マスクのうち最も下段の前記格納領域に格納されている前記第1マスクを前記洗浄部に搬出した後に、搬出前の前記格納領域よりも上段の前記格納領域に格納し、搬出前の前記格納領域に、前記印刷部から搬送される前記第2マスクを格納する、印刷装置。
【請求項2】
印刷装置であって、
マスクを用いて基板上にスクリーン印刷を行う印刷部と、
前記マスクを洗浄する洗浄部と、
前記マスクを格納する格納部と、
前記マスクを搬送する搬送部と、含み、
前記洗浄部と前記格納部は並んで配設され、
前記洗浄部又は前記格納部は、前記印刷部と並んで配設され、
前記搬送部は、前記印刷部、前記洗浄部、及び前記格納部のうち、それぞれ並ぶもの同士の間でマスクを搬送し、
前記格納部は、前記印刷部及び前記洗浄部の双方に隣接し、洗浄済みの第1マスクと、前記印刷部から搬出される未洗浄の第2マスクと、を格納する格納領域を有し、
前記格納部は、上下方向に複数の格納領域を有しており、
前記格納領域に、前記第1マスクが格納されている場合、
前記印刷部から前記格納部に搬送される前記第2マスクは、
前記第1マスクよりも下段の前記格納領域に格納され、
前記印刷部から前記格納部に向かうマスクの搬送経路上において、1以上のマスクを格納できるプリセット部を有し、
前記格納部は、前記第1マスクが格納されている格納領域よりも下段の前記格納領域が空いていない場合は、前記第1マスクのうち最も下段の前記格納領域に格納されている前記第1マスクを前記プリセット部に搬出した後に、搬出前の前記格納領域よりも上段の前記格納領域に格納し、搬出前の前記格納領域に、前記印刷部から搬送される前記第2マスクを格納する、印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置であって、
最下段の前記格納領域が空いているときは、前記第2マスクを最下段の前記格納領域に格納する、印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記洗浄部で洗浄された前記第1マスクは、最下段以外の前記格納領域に格納される、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にクリームはんだ等を印刷する際に用いられる印刷装置として、自動でマスクを交換可能な印刷機と、自動でマスクの格納や払い出しが可能なストッカー(格納部)がそれぞれ知られている。これらを組み合わせ、印刷機とストッカーの間で必要に応じてマスクを運搬する印刷装置が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン印刷に用いられるマスクは、使用により汚れるため、使用後に洗浄する必要がある。本発明では、使用済みマスクの搬送、及び洗浄を自動化することにより、作業者の負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
印刷装置であって、マスクを用いて基板上にスクリーン印刷を行う印刷部と、前記マスクを洗浄する洗浄部と、前記マスクを格納する格納部と、前記マスクを搬送する搬送部と、含み、前記洗浄部と前記格納部は並んで配設され、前記洗浄部又は前記格納部は、前記印刷部と並んで配設され、前記搬送部は、前記印刷部、前記洗浄部、及び前記格納部のうち、それぞれ並ぶもの同士の間でマスクを搬送する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用済みマスクの搬送とその洗浄を自動化することにより、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5A】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図5B】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図5C】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図5D】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図5E】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図5F】搬送部によるマスクの搬送を工程ごとに示す図
【
図6A】実施形態1に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図6B】実施形態1に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図6C】実施形態1に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図6D】実施形態1に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図6E】実施形態1に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図7】実施形態1に係る印刷装置の工程を説明するフローチャート
【
図8A】実施形態2に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図8B】実施形態2に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図8C】実施形態2に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図9】実施形態2に係る印刷装置の工程を説明するフローチャート
【
図10A】実施形態3に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図10B】実施形態3に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図10C】実施形態3に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図10D】実施形態3に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図10E】実施形態3に係る印刷装置における、マスクの移動を説明する図
【
図11】実施形態3に係る印刷装置の工程を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の1の実施形態を、実施形態1として
図1から
図7を参照して説明する。
【0010】
1.印刷装置10の構成
1.1 全体構成
図1及び
図2に示すように、印刷装置10は、基板Bにはんだをスクリーン印刷(以下、単に「印刷」ともいう)する印刷部20と、マスクM1~M4(以下、各マスクを単にマスクMともいう)を格納するマスクストッカー40と、印刷部20とマスクストッカー40の間でマスクMをY軸方向に沿って搬送する搬送部60と、を有している。以下の説明において、一対のコンベア12(ベルトコンベア)による基板Bの搬送方向(X1方向)及びその逆方向(X2方向)をX方向とし、水平面内においてX方向に略直交する方向をY方向とする。また、X方向及びY方向に略直交する方向をZ方向(上下方向)とする。なお、Y方向(Y1方向及びY2方向)は、特許請求の範囲の、「搬送方向」の一例である。
【0011】
1.2 印刷部20の構成
印刷部20は、基板Bに対してクリームはんだ(以下、はんだとも記載する)をスクリーン印刷する印刷部20である。印刷部20は、搬入コンベア13により基板Bを搬入し、搬入した基板Bの表面に対してマスクMに形成された印刷パターンPaにより印刷作業を行った後、印刷作業が行われた基板Bを搬出コンベア14により搬出するように構成されている。
【0012】
マスクMは、平面視において(Z1方向側から見て)矩形形状の平板形状を有する。マスクMは、印刷パターンPaを形成する複数の開口P1と、複数の開口P1以外の領域である非開口部P2とを有する。また、マスクMには、外周部にフレームFが取り付けられている。
【0013】
印刷部20は、
図2に示すように、基台2と、印刷テーブルユニット3と、マスククランプ部材5と、スキージユニット6と、を備えている。
【0014】
印刷テーブルユニット3は、基台2上に設けられ、基板Bを保持するとともに、マスクMに対して位置合わせするように構成されている。具体的には、印刷テーブルユニット3は、X軸移動機構と、Y軸移動機構と、R軸移動機構と、Z軸移動機構34と、印刷テーブル11と、一対のコンベア12(
図1参照)と、を含む。
【0015】
X軸移動機構は、印刷テーブル11をX方向に移動させる。Y軸移動機構は、印刷テーブル11をY方向に移動させる。R軸移動機構は、印刷テーブル11をZ方向に伸びる回転軸(R軸)に対して軸周りに回転させる。Z軸移動機構34は、印刷テーブル11をZ方向に移動させる。これらの移動機構により、XYZRの各軸に対して印刷テーブル11を移動及び回転させて、マスクMに対する位置合わせを行う。
【0016】
そして、図示しない撮像素子(例えば光学カメラ)によってマスクMと基板Bの相対位置を認識し、印刷テーブルユニット3のX軸移動機構、Y軸移動機構、R軸移動機構によってマスクMに対する基板Bの相対位置(水平面内の位置及び傾き)が正確に位置決めされる。そして、マスクMに対する基板Bの相対位置を正確に位置決めした状態で、印刷テーブルユニット3のZ軸移動機構34によって印刷テーブル11ごと基板Bが上昇されてマスクMの下面に当接される。これにより、マスクMに対して基板Bの版合わせが行われる。
【0017】
図3に示すように、マスククランプ部材5は、マスクMを印刷位置Wからずれないように着脱可能に取り付ける。具体的には、マスククランプ部材5は、マスクMのX1方向及びX2方向にそれぞれ設けられており、マスクMを両側から挟み込むように押圧する。
【0018】
スキージユニット6は、Y方向に往復移動することにより、マスクMの上面上に供給されたはんだを、マスクMの上面に沿って掻きながら移動させる。具体的には、スキージユニット6は、スキージ61と、スキージ61を印刷方向(Y方向)に移動させるスキージY軸駆動部62と、スキージ61を上下方向(Z方向)に移動させるスキージZ軸駆動部63と、を含む。
【0019】
スキージ61は、X方向に延びるように形成されている。スキージ61は、マスクMに対して所定の印圧(荷重)をかけながらマスクMに沿って移動して、マスクM上のはんだを、開口P1を通じて基板Bに印刷する。スキージY軸駆動部62は、Y軸モータ62aと、Y方向に延びるボールねじ62bと、を有する。
図3に示すように、スキージZ軸駆動部63は、Z軸モータ63aと、Z軸モータ63aの動力を伝達するベルト63bと、Z方向に延びるボールねじ63cと、を有する。
【0020】
1.3 マスクストッカー40の構成
図1及び
図2に示すように、マスクストッカー40は、印刷部20に対し、Y方向に並んで配置される。マスクストッカー40は、洗浄部50と格納部70を含み、洗浄部50が印刷部20と隣り合うように配されている。言い換えると、後述する搬送部60によって印刷部20と格納部70との間でマスクMがY方向に沿って搬送される搬送経路上に、洗浄部50が配置されている。
【0021】
<洗浄部>
印刷部20において、基板Bの品種が変更される際には、印刷に用いられるマスクMは品種に応じて交換される。このとき、変更前のマスクMの表面に残るクリームはんだは、印刷部20が有する移載装置(図示しない)によって大部分が回収され、マスクMが交換されると新たなマスクMの上に移載される。しかし、印刷パターンPaの孔の内部やマスクMの表面には一部のクリームはんだが回収しきれずに残留している。残留したクリームはんだは時間の経過により乾燥して硬化するため、硬化したクリームはんだが印刷パターンPaの孔を塞いだり、次回印刷時のクリームはんだに混入したりすると、印刷不良の原因になる。したがって、クリームはんだを回収した後は、マスクMの表面を洗浄して、残留しているクリームはんだを除去する必要がある。
【0022】
図2に示すように、洗浄部50は、ハウジングHと、ハウジングHの内部においてマスクMの上下に対称に配される2つのクリーニングユニット51、52を有する。ハウジングHのY1方向及びY2方向の側面には、マスクMを搬入及び搬出するためのハウジング開口部HO1及びHO2がそれぞれ貫設されている。2つのハウジング開口部HO1、HO2は、印刷位置Wに配されたマスクMがY方向に水平に移動する際に、マスクMが通過できる高さ位置に設けられている。2つのハウジング開口部HO1、HO2の間には、ハウジングHの内部を通過するマスクMが印刷位置Wと同じ高さを維持したままY方向に沿って水平に移動できるように、X方向への変位を規制しつつマスクMのフレームFを下方から支持するレール(図示しない)が設けられている。
【0023】
クリーニングユニット51、52は同一の構造であり、それぞれマスクMの上面及び下面の洗浄を行う。以下、上方のクリーニングユニット51について説明する。
【0024】
クリーニングユニット51は、ハウジングHの内部で回転可能に支持された操出ローラー53aと、巻取ローラー53bとを有している。操出ローラー53a及び巻取ローラー53bは、Y方向に間隔を空けて配されており、両者の回転軸はともにX方向に平行である。操出ローラー53aと巻取ローラー53bには、X方向を短手方向、Y方向を長手方向とする帯状の洗浄シートSがロール状に巻き付けられている。洗浄シートSは、マスクMに付着した異物(主としてクリームはんだ)を拭き取ることができ、かつ、マスクMを傷つけない材質のものが用いられる。洗浄シートSは例えば不織布、織物、紙等からなる。
【0025】
操出ローラー53aと巻取ローラー53bを同方向(例えば
図2において時計回り)に回転させると、ロールツーロールで洗浄シートSをY2方向に搬送する。操出ローラー53aは、ロール状に巻き付けられた清浄な洗浄シートSを支持し、巻取ローラー53bは、操出ローラー53aから繰り出されてマスクMのクリーニングに使用された洗浄シートSを巻き取る。巻取ローラー53bは、クリーニングの実施後、又はクリーニングの実施中に、クリーニングに使用されて異物が付着した洗浄シートSを巻取ローラー53bで巻き取る。操出ローラー53aは、未使用の清浄な洗浄シートSをクリーニングローラー54に適宜供給する。
【0026】
クリーニングユニット51は、上方から洗浄シートSをマスクMに押圧するクリーニングローラー54と、クリーニングローラー54をZ方向に駆動するローラー駆動部55とを備える。クリーニングローラー54は、Y方向において繰出ローラー53aと巻取ローラー53bの間であって、操出ローラー53a及び巻取ローラー53bよりも下方(Z2方向)に配置される。ローラー駆動部55は、例えばシリンダからなる。ローラー駆動部55を動作させると、クリーニングローラー54がZ2方向(下方)に変位して、洗浄シートSをマスクMに押し当てることができる。
【0027】
具体的には、ローラー駆動部55を動作させていないとき、
図6Aに示すように、クリーニングローラー54は、洗浄部50の内部でマスクMが通過する空間とは間隔を空けた上方の位置にあり、マスクMは洗浄シートSに触れずに、上下の洗浄シートSの間をY方向に移動できる。一方、ローラー駆動部55を動作させてシリンダのロッド55aをZ方向に伸ばすと、
図6Cに示すように、上下のクリーニングローラー54がそれぞれZ方向に変位して、洗浄シートSが上下から挟み込むようにしてマスクMを押圧する。したがって、ロッド55aを伸ばした状態で操出ローラー53aと巻取ローラー53bを同方向に回転させつつマスクMをY方向に変位させると、マスクMの上下両面に付着した異物を洗浄シートSで拭き取ることができる。言い換えると、洗浄部50では、マスクMをY方向に搬送しつつ洗浄することができる。
【0028】
なお、ハウジングHの内部空間の大きさは、クリーニングユニット51、52が収容できる大きさであればよく、Y方向の長さがマスクM全体を収容できるほど大きくなくてもよい。実施形態1に係るハウジングHのY方向の長さ、つまり洗浄部50のY方向の長さL2は、
図2に示すように、マスクMのY方向の長さL1よりも小さい。
【0029】
<格納部>
格納部70は、
図2及び
図4に示すように、複数のマスクMを格納可能である。格納部70は、基台2の上面に載置されており、ラック71と、一対の昇降部72とを含む。ラック71は、4つの格納領域71a~71dからなり、各格納領域71a~71dはそれぞれ1枚のマスクMを略水平な姿勢のまま収容できる。各格納領域71a~71dは、それぞれ特許請求の範囲における「格納領域」の例である。実施形態1及び後述する実施形態2、3に係る格納部70、170、270は、最大4枚のマスクMを格納できる。
【0030】
図2及び
図4に示すように、各格納領域71a~71dは、上下方向に重なるように配置されている。具体的には、格納部70において、格納領域71aが最も上段に配置されており、格納領域71bは、格納領域71aに対して下段に配置されている。以下、格納領域71bの下方に格納領域71cが、格納領域71cの下方に格納領域71dがそれぞれ配置されている。
【0031】
各格納領域71a~71dは、
図4に示すように、X方向の両端に1つずつ、マスク案内部73を有している。マスク案内部73は、Y方向から見て水平部73aと垂直部73bからなるL字型の断面形状を有しており、Y軸に沿って延設されている。格納領域71aのX方向両端にそれぞれ配されるマスク案内部73は、垂直部73bの間隔が、マスクMのX方向の寸法L3よりもわずかに大きい。したがって、格納領域71aに格納されたマスクMは、2つの水平部73aによって下方から支持され、かつ、2つの水平部73aによってX方向の変位が規制される。Y方向の変位は規制されていないため、後述する搬送部60によってマスクMのフレームFにY方向の力が加えられると、マスクMは水平部73aの上面に沿ってY方向に変位することができる。
【0032】
昇降部72は、ラック71の側面に連結されたナット72aと、ナット72aに螺合し、Z方向を軸とするするボールねじ72bと、ボールねじ72bをZ軸周りに回転させるモータ72cと、を有している。モータ72cを正逆方向に回転させるとラック71を昇降させることができ、ラック71の昇降に伴って、各格納領域71a~71dが一体的に昇降する。
【0033】
ボールねじ72bを回転させてラック71を昇降させると、任意の格納領域の高さをハウジング開口部HO1、HO2の高さと合わせることができる。そして、後述する搬送部60を用いて、その任意の格納領域に格納されているマスクMを、ハウジング開口部HO2を通過させて、洗浄部50や印刷部20へと搬送できる。また、印刷部20等からマスクMが搬出される際には、昇降部72によりラック71を昇降させて、任意の格納領域の高さをハウジング開口部HO1、HO2の高さと合わせることで、搬出されたマスクMを任意の格納領域に格納することができる。
【0034】
例えば、
図2におけるラック71は、格納領域71dとハウジング開口部HO2の高さが同じになっている。そのため、印刷部20から搬出されたマスクMは搬送部60によりY1方向に搬送され、ハウジング開口部HO1及びHO2を通過して格納領域71dに格納される。
【0035】
1.4 搬送部60の構成
また、実施形態1に係る印刷装置10は、印刷部20と格納部70の間でマスクMをY方向にスライド移動させる、搬送部60を有している。実施形態1では、後述するように、搬送部60が印刷部20に含まれている場合を例示している。しかし、搬送部60は、マスクストッカー40や洗浄部50、格納部70に含まれていてもよい。また、搬送部60が印刷部20等とは独立した存在であってもよい。
【0036】
搬送部60は、
図2に示すように、スキージユニット6に含まれるスキージY軸駆動部62と、マスク摺動子65と、を含んでいる。
【0037】
マスク摺動子65は、Z方向(上下方向)に変位可能なスライド部65aと、スライド部65aを収容する収容部65bと、を有する。マスク摺動子65は、例えばエアシリンダとされる。スライド部65aはエアシリンダのロッドに相当し、収容部65bはエアシリンダのシリンダに相当する。マスク摺動子65、及びマスク摺動子65を移動させるスキージY軸駆動部62は、併せて特許請求の範囲の「搬送部」の一例である。
【0038】
マスク摺動子65は、スキージY軸駆動部62によるスキージ61のY方向の変位に伴い、スキージ61と一体的にY方向に変位する。以下に、
図5A~
図5Fを用いて搬送部60によるマスクMの搬送について説明する。なお、
図5A~
図5Fは、印刷位置Wに配されたマスクMを洗浄部50に向けてY1方向(右方向)に搬送する場合の、搬送部60及びマスクMの状態を段階的に図示したものである。
図5A~
図5Fは、搬送部60をX1方向から見た模式図であり、スキージ61や洗浄部50等、搬送に無関係の部分は図示省略している。
【0039】
まず、スライド部65aを収容部65bに収容した状態で、マスクMの右側(Y1側)のフレームFRよりも、スライド部65aがY2側になる位置に、マスク摺動子65を変位させる(
図5A)。
【0040】
次に、フレームFRに対してスライド部65aが水平方向(Y方向)に当接可能になる位置まで、収容部65bからスライド部65aを下方向(Z2方向)に突出させる。(
図5B)。
【0041】
次に、スキージY軸駆動部62を動作させ、マスク摺動子65をボールねじ62bに沿ってY1方向に変位させる。このとき、スライド部65aとフレームFRが水平方向に当接する。さらにマスク摺動子65をY1方向に変位させると、フレームFRがスライド部65aによりY1方向に押され、マスクMがY1方向に引きずられながら変位する(
図5C)。
【0042】
次に、マスクMの左側(Y2側)のフレームFLに対して水平方向に当接しない位置まで、スライド部65aを収容部65bに収容する。そして、スライド部65aが、フレームFLよりもY2側になる位置にマスク摺動子65を変位させる(
図5D)。
【0043】
次に、フレームFLに対してスライド部65aが水平方向に当接する位置まで、スライド部65aをZ2方向(下方向)に突出させる。そして、マスク摺動子65をY1側に変位させると、スライド部65aとフレームFLが水平方向に当接する。マスク摺動子65をさらにY1側に変位させると、スライド部65aとマスクMがY1方向に一体的に変位する(
図5E)。
【0044】
このように、マスク摺動子65を用いて、マスクMを印刷部20内部の印刷位置WからY1方向に変位させることができる。ボールねじ62bをY1方向に延伸すれば、マスクMをさらにY1方向に変位させることができる。実施形態1では、
図1に示すように、ボールねじ62bは印刷部20から洗浄部50を経て格納部70にまで至る長さであり、マスク摺動子65は印刷部20から格納部70までマスクMを変位させることができる。
【0045】
また、ボールねじ62bを延伸する以外の方法で、マスクMのY方向の変位量を大きくするため方法として、
図5Fに示すように、ボールねじ62bのY1方向に、もう一組のマスク摺動子66及びボールねじ67を配した構成とすることが考えられる。この場合、マスク摺動子66及びボールねじ67は、例えばマスクストッカー40に含まれるものとすることができる。このようにすると、マスク摺動子65が
図5Eに示す位置までマスクMを変位させた後、
図5Fに示すように、もう1つのマスク摺動子66を用いて、さらにY1方向にマスクMを変位させることができる。
【0046】
以上説明したように、実施形態1に係る搬送部60は、マスク摺動子65を用いて、印刷部20の内部の印刷位置WからマスクMをY1方向へ搬出し、洗浄部50の内部を通過させ、格納部70の格納領域71a等に到達するまでY方向に変位させることができるようになっている。また、突出させたスライド部65aでフレームFを引っ掛けて、マスク摺動子65をY2方向に引き寄せることで、格納領域71a等に格納されているマスクMを、洗浄部50を経由させて印刷位置Wまで変位させることもできる。
【0047】
すなわち、搬送部60によるマスクMのY方向の変位と、昇降部72によるラック71のX方向の変位(昇降)を組み合わせることで、印刷位置Wで印刷に使用したマスクMを任意の格納領域に格納することができる。また、任意の格納領域に格納されているマスクMを印刷位置Wまで移動させて、印刷部20にセットすることができる。
【0048】
なお、以降の記述において、マスクMを搬送する際における、搬送部60の具体的な動作についての説明は省略するが、上述した工程を経てマスクMは搬送されている。
【0049】
2.マスクMの交換処理
図6A~
図6E、及び
図7は、印刷処理に用いるマスクMの交換の工程を説明する図、及びフローチャートである。なお、生産開始時点(以下、初期状態)において、全てのマスクMは洗浄された状態で格納部70のいずれかの格納領域71a~71dに格納されており、格納部70以外の場所(例えば印刷部20、洗浄部50)にマスクMはないものとする(
図6A)。
【0050】
生産開始指示などに伴い処理がスタートすると、まず、印刷に用いるマスクM(例えばマスクM4とする)は、マスクストッカー40内の格納部70から印刷部20に搬入される(
図6A、S11)。具体的には、昇降部72によりラック71をZ方向に変位させ、マスクM4が格納されている格納領域71dの高さ位置が、印刷位置Wと同じになるように調整する。次いで、搬送部60のマスク摺動子65がマスクM4をY2方向へ変位させる。これにより、マスクM4は印刷部20の印刷位置Wに移動する。
【0051】
印刷に使用されるマスクM4が、印刷部20の印刷位置Wに移動すると、マスクM4はマスククランプ部材5(
図3参照)により固定される。これにより、印刷部20にて、はんだ印刷が可能となり、その後、基板Bに対するはんだ印刷が開始される(
図6B、S12)。
【0052】
印刷開始後、格納部70は、格納部70の格納領域71a~71dに空き領域があるか否かを判断する(S13)。マスクM4の搬出により、通常は、マスクM4を格納していた格納領域71dが空き領域となるため、S13では、YES判定される。
【0053】
格納領域71dが空き領域であるため(S13:YES)、印刷処理の開始後、印刷枚数(印刷した基板Bの枚数)が規定回数に達すると、一旦、印刷処理を終了する(S15)。
【0054】
印刷処理が終了すると、マスククランプ部材5は、使用済みマスクM4の保持を解除する。その後、使用済みのマスクM4は印刷部20から搬出され、格納部70の空き領域である格納領域71dに格納される(S16、S17)。
【0055】
S16及びS17を詳細に説明すると、まず、搬送部60のマスク摺動子65をマスクM4の内周面にまで移動して、スライド部65aを内周面に係合させる。その後、マスク摺動子65をボールねじ62bに沿ってY1方向に移動させる。これにより、使用済みのマスクM4をY1方向に移動して印刷部20から搬出することができる。
【0056】
洗浄部50は、印刷部20とY方向に隣り合っているため、印刷部20から搬出されたマスクM4は、洗浄部50を通過して格納部70に搬入される。マスクM4は、洗浄部50を通過する過程で、上下のクリーニングユニット51、52により洗浄され、上下両面の異物が除去される(
図6C、S16)。
【0057】
マスクM4を格納していた格納領域71dは、S11にてマスクM4を搬出した後は空き領域になっており、印刷位置Wの高さと同じ高さにある。そのため、洗浄部50を通過したマスクM4が格納部70まで移動すると、格納領域71dに搬入され、格納される(S17)。つまり、マスクM4は、元の格納領域71dに格納される。
【0058】
なお、マスクM4のY1側の端部がクリーニングローラー54を通過すると、クリーニングユニット51、52は停止する。
【0059】
その後、印刷部20にて、スクリーン印刷を続行するか否かを判断する(S18)。続行しないと判断した場合(S18:NO)、フローは終了する(エンド)。
【0060】
印刷を続行すると判断した場合(S18:YES)、昇降部72によりラック71をZ方向に変位させ、印刷に使用するマスク(例えば、マスクM2)が格納されている格納領域71bの高さ位置が、印刷位置Wと同じになるように調整する(
図6D)。
【0061】
その後、搬送部60によりマスクM2を印刷位置WまでY2方向へ変位させる(
図6E、S19)。そして、上述したフローと同様に印刷が開始される(S12~)。
【0062】
図7に示すフローチャートの実行により、作業者の人手を介さずに、印刷を終了するまで自動的に繰り返しはんだ印刷を行うことができる。したがって、基板Bの品種の変更によりマスクMを交換する必要が生じても、それまで使用していたマスクMを洗浄して格納部70に格納した後、新たに使用するマスクMを印刷部20にセットして、はんだ印刷を続行することができる。
【0063】
なお、印刷に使用するマスクMを印刷部20から搬出したにも拘わらず、格納部70に空き領域がない場合(S13:NO)、S15に移行して、格納部70は、空き領域の確保要求(例えば、空き領域が無いことを通知するメッセージ等を表示部に表示する)を行う(S14)。空き領域の確保要求がなされ、作業者が印刷予定のないマスクMを格納部70から取り出す等すれば、格納部70において空き領域を確保することができる。S13でNOと判断されるケースとして、初期状態においてマスクM4が格納されていた空き領域に、作業者が外部から持ち込んだマスクMを格納した場合を挙げることができる。
【0064】
3.本発明の効果
続いて、実施形態1に係る印刷装置10の効果について説明する。
【0065】
実施形態1に係る印刷装置10は、マスクMを用いて基板B上にスクリーン印刷を行う印刷部20と、マスクMを洗浄する洗浄部50と、マスクMを格納する格納部70と、マスクMを搬送する搬送部60と、含み、洗浄部50と格納部70は並んで配設され、洗浄部50又は格納部70は、印刷部20と並んで配設され、搬送部60は、印刷部20、洗浄部50、及び格納部70のうち、それぞれ並ぶもの同士の間でマスクMを搬送する。
【0066】
このような構成では、マスクMを用いたスクリーン印刷が終了すると、印刷部20の内部にある使用済みのマスクMを、搬送部60によってマスクストッカー40に向けて搬出して、その後洗浄部50でのマスクMの洗浄や、格納部70へのマスクMの格納ができる。このようにすると、印刷装置10のみでスクリーン印刷、マスクMの洗浄、マスクMの格納を行うことができる。そして、使用済みのマスクMを印刷部20から搬出した後は、搬送部60により、格納部70から印刷部20まで他のマスクMを搬送して、そのマスクMによる印刷を再開することができる。したがって、作業者が印刷部20、洗浄部50、及び格納部70にそれぞれ手作業でマスクMを運搬せずとも、マスクMを交換しつつ継続的にスクリーン印刷を実行できる。これにより、作業者の負担を低減することができる。
【0067】
また、実施形態1に係る印刷装置10では、洗浄部50は、搬送部60によるマスクMの搬送経路上において、印刷部20及び格納部70の両方に隣接し、印刷部20から搬出されるマスクMは、洗浄部50を経由して格納部70に搬送される。
【0068】
このような構成では、印刷部20において使用されたマスクMが印刷部20から搬出される過程において、印刷部20から搬出されるマスクMの一部は、まず、搬送経路上にある洗浄部50に搬入される。そして、マスクMは洗浄部50に搬入された部分から順次洗浄される。これにより、印刷部20からマスクMを搬出しつつ、同時に、洗浄部50での洗浄が行われるため、マスクM全体が洗浄部50に搬入されてから洗浄を開始する場合と比べて、洗浄が完了するまでの時間を短縮できる。
【0069】
また、マスクMは洗浄部50を経由して、最終的に格納部70に到達する。ここで、格納部70に到達した時点でマスクMは洗浄済みであるため、印刷の直後にマスクMに付着していた異物は除去されている。したがって、このような構成では、異物が格納部70に持ち込まれることがない。
【0070】
格納部70のラック71の内部では、複数の格納領域が上下方向に重なって配されている。そのため、上方の格納領域に異物が付着したままのマスクMが格納されると、落下した異物が下方の格納領域に格納されているマスクMに付着するおそれがあった。実施形態1の構成では、格納部70に異物が付着したままのマスクMが搬入されることはない。そのため、ラック71の内部の空間を、格納領域ごとに水平方向に仕切る仕切り板を設ける必要はなく、格納部70の構造を単純にできるため、コストの低減やメンテナンスを簡易にすることができる。
【0071】
また、実施形態1に係る印刷装置10では、搬送方向(Y方向)における洗浄部50の長さL2は、搬送方向におけるマスクMの長さL1よりも小さい。
【0072】
例えば、洗浄部の内部にマスクM全体を一旦取り込み、搬送を停止してからマスクMを洗浄するタイプの洗浄部では、洗浄部の搬送方向の長さL2をマスクMの長さL1よりも小さくすることはできない。これに対し、実施形態1に係る洗浄部50は、マスクMを搬送しながらクリーニングユニット51、52による洗浄が可能である。そのため、洗浄部50の長さL2をマスクMの長さL1よりも小さくすることができる(
図2参照)。これにより、洗浄部50の搬送方向(Y方向)の長さを小さくでき、印刷装置10を、搬送方向において小型化することができる。また、洗浄部50の長さL2が小さいと、洗浄部50を短時間で通過させることができるため、マスクMの洗浄に要する時間を短縮することができる。
【0073】
<実施形態2>
次に、実施形態2の印刷装置110について
図8A~
図8C(正面図)、及び
図9(フローチャート)を参照して説明する。実施形態2は、洗浄部150と格納部170(併せてマスクストッカー140を構成する)の配置が、実施形態1とは異なる。実施形態1と共通する構成、作用、及び効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については、同一の符号を用いるものとする。
【0074】
実施形態2の印刷装置110では、
図8Aに示すように、Y2側、つまり印刷部120に隣接する側に格納部170が配され、Y1側に洗浄部150が配されている。つまり、格納部170は印刷部120と洗浄部150の双方に隣接しつつ、Y2側から順に印刷部120、格納部170、洗浄部150の順に一列に並んでいることになる。また、実施形態2では、実施形態1とは異なり、洗浄部150のY方向の長さL4は、少なくともマスクMのY方向の長さL1よりも大きく、ハウジングHの内部にマスクM全体を収容することができる。
【0075】
図8のS11~S14と、
図9のS31~S34は同じ内容であるため説明を省略し、主に実施形態2に特有のS35以降について以下に説明する。なお、S35の時点(
図8A)では、印刷位置WにはマスクM13がセットされており、マスクM13による印刷が実行中である。マスクM13は使用中、つまり洗浄はされておらず、異物が付着している可能性のある、第2マスク(未洗浄のマスク)の一例である。
【0076】
また、格納領域171a~171dのうち、格納領域171cのみが空き領域であり、各格納領域171a、171b、171dにはそれぞれマスクM11、M12、M14が格納されている。マスクM11、M12、M14はすべて異物の付着がない洗浄済みのマスクであり、第1マスクの一例である。
【0077】
格納部170に空き領域がある場合は(S33:YES)、次に、現在使用中である未洗浄のマスクM13を格納するための、最下段の格納領域171dが空き領域であるか否かを判断する(S35)。仮に、これから未洗浄のマスクM13を格納しようとする格納領域(例えば格納領域171c)より下方の格納領域(例えば格納領域171d)に、すでに洗浄済みのマスクM14が格納されていれば、格納領域171cへのマスクM13の格納により、付着している異物が落下してマスクM14が汚染されるおそれがあるからである。
【0078】
最下段の格納領域171dが空き領域ではない場合は(S35:NO)、最下段の格納領域171dに格納されているM14を洗浄部150に搬送して(
図8A、S36)、最下段の格納領域171dを空き領域にする。この時点では、格納領域171c及び171dが空き領域となっており、マスクM13は印刷位置Wで使用中であり、マスクM14は洗浄部150の内部に収容されている。
【0079】
続いて、洗浄部150に収容されているマスクM14を最下段以外の空き領域に格納する(S37)。実施形態2ではマスクM14を下から2段目の格納領域171cに格納する(
図8B)。これにより、洗浄部150はマスクMが収容されていない状態になり、かつ、最下段の格納領域171dが空き領域になる。格納部170及び洗浄部150は、この状態のまま、マスクM13による規定回数の印刷が終了するまで待機する。
【0080】
上述したS33~S37が実行されている間も印刷部120において印刷は継続して実行されており、規定回数の印刷が終了すると(S38)、それまで使用されていたマスクM13は最下段の格納領域171dに格納される(
図8C、S39)。
【0081】
マスクM13を最下段の格納領域171dに格納した後、印刷を続行するか否かを判断する(S42)。印刷を続行する場合(S42:YES)、次に使用するマスクM11を印刷位置Wへ搬送して(S43)、次のマスクM11による印刷を開始する(S32)。
【0082】
印刷を続行しない場合は(S43:NO)、
図9のフローは終了する(エンド)。
【0083】
また、印刷を続行するか否かに関わらず、マスクM13は洗浄部150に搬送されて洗浄され、洗浄が終了すると任意の空き領域に格納される(S40、S41)。
【0084】
なお、S35において、最下段の格納領域171dが空き領域であれば(S35:YES)、S36及びS37の工程を飛ばして、印刷の終了後、未洗浄のマスクM13はそのまま空き領域である格納領域171dに格納される(S38、S39)。
【0085】
以下、実施形態2に係る印刷装置110の効果について説明する。実施形態2の構成では、格納部170は印刷部120及び洗浄部150に共に隣接するように配されている。そのため、印刷部120で使用された直後の未洗浄のマスク(第2マスク)M13は、隣接する格納部170に格納され、次に使用するマスクM11が印刷位置Wへ搬送されて印刷が開始される。さらに、マスクM13は、格納部170に隣接する洗浄部150に搬送されて洗浄される。
【0086】
これにより、次に使用するマスクM11による印刷と、使用済みのマスクM13の洗浄を同時並行的に実行することができるため、使用済みのマスクM13の洗浄が終了するのを待って次のマスクM11を印刷位置Wにセットする場合と比べて、次のマスクM11による印刷を早期に開始できるため、印刷部120のタクトの低下を抑制できる。
【0087】
また、実施形態2に係る印刷装置110では、格納部170は上下方向に並ぶ4つの格納領域171a~171dを有しており、印刷部120から格納部170に搬送される使用済みのマスク(第2マスク)M13は、常に第1マスクよりも下段の格納領域(例えば最下段の格納領域171d)に格納される。
【0088】
マスクM13は直前まで印刷部120で印刷に用いられていたマスクであり、クリームはんだ等の異物が付着している可能性がある。そのため、マスクM13を格納する格納領域よりも下段に洗浄済みのマスク(第1マスク)が格納されていると、マスクM13に付着している異物が落下して、下方の第1マスクMを汚染するおそれがある。したがって、使用済みの第2マスクM13を、どの第1マスクMよりも下段(例えば最下段の格納領域171d)に格納することで、仮に第2マスクM13から異物が落下しても、第1マスクMが汚染されることを回避できる。
【0089】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る印刷装置210について、
図10A~E(正面図)、
図11(フローチャート)を参照して説明する。実施形態3は、印刷部220がプリセット部21を有する点で実施形態2とは異なっているが、その他は同じ構成である。実施形態1及び実施形態2と共通する構成、作用、及び効果については、重複するため説明を省略する。また、実施形態1及び実施形態2と同じ構成要素については、同一の符号を用いるものとする。
【0090】
実施形態3の印刷装置210は、
図10Aに示すように、Y2方向に印刷部220を備え、印刷部220及び格納部270の双方に隣接するプリセット部21を備える。プリセット部21は、上下方向に並ぶ2つのプリセット領域(上方がプリセット領域22a、下方がプリセット領域22b)を有している。プリセット部21は、マスクMを格納するプリセット領域22a、22b(格納部270における格納領域271a等に相当)が2つであることを除けば、格納部270と同様の構造をしており、ラック22及び昇降部23をそれぞれ有している。プリセット部21は、昇降部23により、プリセット領域22a、22bをZ方向に一体的に変位させることができる。任意のプリセット領域を印刷位置Wと同じ高さにすることで、印刷部220又は格納部270から搬送されるマスクMを、その任意のプリセット領域に格納できる。また、任意のプリセット領域に格納されているマスクMを、印刷部220又は格納部270に向けて搬送することもできる。
【0091】
図11に示す実施形態3のS51~S55は、
図9に示す実施形態2のS31~S35と同じ内容であるため、説明を省略し、主に実施形態3に特有のS56以降について以下に説明する。なお、S56の時点においては、
図10Aに示すように、印刷部220の内部ではマスクM23を使用して印刷が行われている。マスクM23は未洗浄であり、第2マスク(未洗浄のマスク)の一例である。プリセット領域22a、22bにはマスクMは格納されていない。さらに、格納部270の4つの格納領域271a~271dのうち、格納領域271a、271b、271dには、それぞれ洗浄済みのマスク(第1マスク)M21、M22、M24が格納されており、格納領域271cのみが空き領域となっている。次に使用するマスクはマスクM21であるとする。
【0092】
図10Aの状態では最下段の格納領域271dが空き領域でないため(S55:NO)、格納領域271dに格納されているマスクM24を上方のプリセット領域22aに搬送する(
図10A、S56)。
【0093】
続いて、マスクM23の次に使用するマスクが、現在プリセット領域22aに格納されているマスクM24か否かを判断する(S57)。次に使用するマスクがM24以外のマスクである場合(S57:NO)、
図10Bに示すように、プリセット領域22aに格納されているマスク(M24)を最下段以外の格納領域である格納領域271cに格納する(S58)。この状態では、最下段の格納領域271dが空き領域となっている。
【0094】
続いて、
図10Cに示すように、次に使用するマスク(M21)を、上方のプリセット領域22aに格納する(S59)。この状態では、下方のプリセット領域22b及び最下段の格納領域271dが共に空き領域となっている。そして、S52から始まっていたマスクM23による印刷が終了するまでこの状態で待機する。
【0095】
マスクM23による規定回数の印刷が終了すると(S60)、使用済みのマスクM23は、下方のプリセット領域22bに格納される(S61、
図10D)。次に、印刷を続行するか否かの判断を行い(S64)、印刷を続行する場合には(S64:YES)次に使用するマスクM21を、プリセット領域22aから印刷位置Wに搬送して(S65、
図10E)、マスクM21による印刷が開始される(S52)。
【0096】
また、使用済みのマスクM23をプリセット領域22bに格納した後は(S61)、マスクM23は最下段の格納領域271dを経由して洗浄部250に搬送され、洗浄される(S62)。洗浄後、マスクM23は格納部270の任意の格納領域に格納される(S63)。
【0097】
なお、S55において、最下段の格納領域271dがすでに空き領域である場合は(S55:YES)、格納領域271dを空き領域にするステップ(S56~S58)は不要になる。
【0098】
また、S57において、次に使用するマスクMがプリセット領域22aに格納されている場合は(S57:YES、
図10C)、最下段の格納領域271dが空き領域であり、かつ、上方のプリセット領域22aにマスクM21が格納されている状態になっている。したがって、規定回数の印刷が終了するまでそのままの状態で待機すればよい。
【0099】
このようにすると、印刷部220でマスクM23による印刷を実行している間に、次に使用するマスクM21をプリセット領域22aに格納することができる。プリセット領域22aは印刷部220に隣接しているため、マスクM23による印刷が終了してマスクM23を印刷部220から搬出した後、短い移動距離で、すなわち短時間で、次に使用するマスクM21を印刷位置Wまで搬送できる。これにより、印刷部220におけるマスクMの入れ替えを短時間で完了させて、効率よく印刷部220を稼働させることができる。
【0100】
また、上述したように、マスクM23による印刷の終了後、マスクM23はまず印刷位置Wから下方のプリセット領域22bに搬送される(S61)。そして、マスクM21による印刷を行う場合には、マスクM23がプリセット領域22bに格納された状態のままで、上方のプリセット領域22aに格納されているマスクM21を印刷位置Wに搬送して印刷を開始できる。つまり、使用済みのマスクM23が格納部270に格納されたり、洗浄されたりするのを待たずに、次に使用するマスクM21による印刷を開始できる。これにより、印刷部220が休止している時間を短縮でき、効率よく印刷部220を稼働させることができる。
【0101】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0102】
(1)上記した各実施形態では、印刷部に含まれるスキージニユット6が搬送部を兼ねた構成となっているが、スキージユニット6と搬送部はそれぞれ別個の構成要素であってもよい。
【0103】
(2)上記した各実施形態では、搬送部はマスク摺動子とボールねじによってマスクを移動させる。しかし、搬送部はマスクをY方向に移動させることができる構成であればよく、例えばコンベアや、回転ローラーであってもよい。
【0104】
(3)上記した各実施形態では、マスクの上面及び下面に付着した汚れを乾燥した洗浄シートSで拭き取る方式の洗浄部を例示した。しかし、クリームはんだを溶解する洗浄液を洗浄シートに含侵させてからマスクの異物を拭き取る方式の洗浄部であってもよい。
【0105】
(4)また、洗浄部は、マスクに洗浄液を吹き付けて洗浄する方式や、マスクを洗浄液に浸漬させて洗浄する方式であってもよい。このような洗浄部では、洗浄力をさらに高めるために、洗浄液の噴射や浸漬後にマスクに超音波振動を印加する構成を有していてもよい。洗浄液を用いて洗浄する場合、マスクを乾燥させるためのエアブロー等の機能が印刷装置に含まれていてもよい。
【0106】
(5)上記した各実施形態では、印刷に使用したマスクを洗浄した後、次に使用する他のマスクに交換する場合を例示したが、使用したマスクを洗浄した後、同じマスクを再度印刷位置セットして印刷を継続してもよい。
【0107】
(6)実施形態2及び実施形態3では、印刷部で使用された未洗浄のマスクを、最下段の格納領域に格納する場合について説明している。しかし、例えば下から二段目の格納領域イが空き領域であり、最下段の格納領域ロに、未洗浄のマスクが格納されている場合、印刷部で使用された未洗浄のマスクを、格納領域イに格納してもよい。この場合、格納領域ロのマスクに異物が落下して汚染されるおそれがあるが、その後どちらのマスクも洗浄されるため、問題にならない。ただし、洗浄を終えた一方のマスクの表面に、他方のマスクから異物が落下することを防ぐため、より上方の格納領域である格納領域イに格納されているマスクから先に洗浄する必要がある。
【0108】
(7)上述した実施形態3では、プリセット部は、2つのプリセット領域をZ方向に一体的に変位させる昇降部を有する場合について説明した。しかし、このような昇降部でなくとも、例えば、プリセット部の内部において、上方のプリセット領域に格納されているマスクを下方のプリセット領域に下降させる機構であってもよい。
【符号の説明】
【0109】
10:印刷装置、20:印刷部、40:マスクストッカー、50:洗浄部、60:搬送部、70:格納部、B:基板、M:マスク、M1~M4:マスク