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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20240731BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240731BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02J3/18
H02J3/38 110
H02J13/00 311R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191757
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080601
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148627(JP,A)
【文献】特開2016-082741(JP,A)
【文献】特開2020-182276(JP,A)
【文献】特開2018-019576(JP,A)
【文献】特開2011-061951(JP,A)
【文献】特開2021-083277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/18
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される電力システムであって、
複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナを管理する集中管理装置と、
を備えており、
前記集中管理装置は、
前記複数のパワーコンディショナと前記電力系統との接続点における接続点無効電力を検出する検出部と、
前記接続点無効電力が目標無効電力となるように、前記各パワーコンディショナに自装置の個別出力無効電力を制御させるための共通の無効電力指標を算出する指標算出部と、
前記無効電力指標を前記複数のパワーコンディショナのそれぞれに送信する送信部と、を備え、
前記複数のパワーコンディショナはそれぞれ、
前記無効電力指標を受信する受信部と、
前記無効電力指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の前記個別出力無効電力の目標値である個別目標無効電力を算出する目標電力算出部と、
前記個別目標無効電力となるように前記個別出力無効電力を制御する出力制御部と、
を備えている、
電力システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記接続点における接続点有効電力をさらに検出し、
前記指標算出部は、前記接続点有効電力が目標有効電力となるように、前記各パワーコンディショナに自装置の個別出力有効電力を制御させるための共通の有効電力指標をさらに算出し、
前記送信部は、前記有効電力指標を前記複数のパワーコンディショナのそれぞれにさらに送信し、
前記受信部は、前記有効電力指標をさらに受信し、
前記目標電力算出部は、前記有効電力指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の前記個別出力有効電力の目標値である個別目標有効電力をさらに算出し、
前記出力制御部は、前記個別目標有効電力となるように前記個別出力有効電力をさらに制御する、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
目標力率を取得し、当該目標力率と、前記検出部が検出した前記接続点有効電力とに基づいて前記目標無効電力を算出する目標無効電力取得部をさらに備える、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記目標無効電力を取得する目標無効電力取得部をさらに備え、
前記検出部は、前記接続点における接続点電圧をさらに検出し、
前記目標無効電力取得部は、前記接続点電圧に応じて前記目標無効電力を設定する、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項5】
前記目標電力算出部は、
前記無効電力指標に基づいて前記個別目標無効電力を算出し、
前記有効電力指標に基づいて前記個別目標有効電力を算出し、
前記個別目標無効電力をゼロとして、前記個別目標有効電力を有効電力についての制約条件に応じて補正し、
前記個別目標無効電力を無効電力についての制約条件に応じて補正する、
請求項2ないし4のいずれかに記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統に接続された複数の電力装置を管理して、電力系統との間で送受される電力の制御を行う電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、集中管理装置と複数の電力装置とを備え、自律分散協調制御方式により出力電力の制御を行う電力システムの一例が開示されている。集中管理装置は、電力システム全体の出力電力を目標電力に制御するための指標を算出する。複数の電力装置は、集中管理装置が算出した共通の指標を用いて、それぞれ設定されている最適化問題に基づいて、自装置の出力電力の目標値を算出する。そして、各電力装置は、当該目標値となるように、自装置の出力電力を制御する。各電力装置が、共通の指標に基づいて自律的に出力電力を制御することで、電力システム全体の出力電力が目標電力に制御される。集中管理装置は、各電力装置の状態などを把握することなく、指標を算出して送信するだけなので、演算や通信の負担が小さい。したがって、高性能で高価な集中管理装置は必要でなく、初期導入費用を軽減できる。また、電力システムを拡張する場合に、集中管理装置の大きな改修が必要にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年、再生可能エネルギーを利用した電力システムが増加している。このような電力システムが増加すると、電力系統が不安定になる。したがって、電力システム自身に、電力系統の周波数や電圧、力率等の状態に応じて、電力系統を安定化させる機能を持たせることが、今後必要になると言われている。また、離島の小規模電力系統などでは、発電機の運用において負荷やインバータ機器等の変動影響が大きい。このような電力系統に対して再生可能エネルギーを利用した電力システムや蓄電池システムなどを効率良く導入するためには、各インバータ機器や電力システムに、発電機と連携して電力系統を安定化させる機能が必要である。しかしながら、特許文献1に開示された電力システムは、電力系統を安定化させる機能を有していない。
【0005】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電力系統を安定化させる機能を有する電力システムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される電力システムは、電力系統に接続される電力システムであって、複数のパワーコンディショナと、前記複数のパワーコンディショナを管理する集中管理装置とを備えており、前記集中管理装置は、前記複数のパワーコンディショナと前記電力系統との接続点における接続点無効電力を検出する検出部と、前記接続点無効電力が目標無効電力となるように、前記各パワーコンディショナに自装置の個別出力無効電力を制御させるための共通の無効電力指標を算出する指標算出部と、前記無効電力指標を前記複数のパワーコンディショナのそれぞれに送信する送信部とを備え、前記複数のパワーコンディショナはそれぞれ、前記無効電力指標を受信する受信部と、前記無効電力指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の前記個別出力無効電力の目標値である個別目標無効電力を算出する目標電力算出部と、前記個別目標無効電力となるように前記個別出力無効電力を制御する出力制御部とを備えている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記接続点における接続点有効電力をさらに検出し、前記指標算出部は、前記接続点有効電力が目標有効電力となるように、前記各パワーコンディショナに自装置の個別出力有効電力を制御させるための共通の有効電力指標をさらに算出し、前記送信部は、前記有効電力指標を前記複数のパワーコンディショナのそれぞれにさらに送信し、前記受信部は、前記有効電力指標をさらに受信し、前記目標電力算出部は、前記有効電力指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の前記個別出力有効電力の目標値である個別目標有効電力をさらに算出し、前記出力制御部は、前記個別目標有効電力となるように前記個別出力有効電力をさらに制御する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、目標力率を取得し、当該目標力率と、前記検出部が検出した前記接続点有効電力とに基づいて前記目標無効電力を算出する目標無効電力取得部をさらに備える。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記目標無効電力を取得する目標無効電力取得部をさらに備え、前記検出部は、前記接続点における接続点電圧をさらに検出し、前記目標無効電力取得部は、前記接続点電圧に応じて前記目標無効電力を設定する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記目標電力算出部は、前記無効電力指標に基づいて前記個別目標無効電力を算出し、前記有効電力指標に基づいて前記個別目標有効電力を算出し、前記個別目標無効電力をゼロとして、前記個別目標有効電力を有効電力についての制約条件に応じて補正し、前記個別目標無効電力を無効電力についての制約条件に応じて補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、集中管理装置は、接続点無効電力が目標無効電力となるように無効電力指標を算出して送信する。各パワーコンディショナはそれぞれ、受信した無効電力指標に基づいて個別目標無効電力を算出して、個別出力無効電力を制御する。各パワーコンディショナが、共通の無効電力指標に基づいて自律的に個別出力無効電力を制御することで、電力システム全体の出力無効電力(接続点無効電力)が目標無効電力に制御される。集中管理装置が、電力系統の周波数や電圧、力率等の状態に応じて目標無効電力を設定することで、接続点無効電力が目標無効電力に制御される。このように、本発明に係る電力システムは、電力系統を安定化させる機能を有する。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る電力システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】制約条件を満たすように、個別目標有効電力および個別目標無効電力を補正する方法について説明するための図である。
図3】目標電力算出処理の一例を示すフローチャートである。
図4】電力システムのシミュレーションのためのモデルを示すブロック図である。
図5】シミュレーションにおいて負荷を変動させたときの各検出値の時間変化を示すタイムチャートである。
図6】第2実施形態に係る電力システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る電力システムの全体構成を示すブロック図である。電力システムA1は、電力系統Fに連系しており、電力系統Fから送受電可能である。電力システムA1は、電力システムA1と電力系統Fとの接続点における有効電力(以下「接続点有効電力」とする)が目標有効電力となるように、自律分散協調制御方式により出力有効電力の制御を行う。また、電力システムA1は、上記接続点における無効電力(以下「接続点無効電力」とする)が目標無効電力となるように、自律分散協調制御方式により出力無効電力の制御を行う。なお、以下の説明において、電力系統Fが電力システムA1に有効電力を供給している場合(順潮流)、接続点有効電力を正の値とする。一方、電力システムA1が電力系統Fに有効電力を供給している場合(逆潮流)、接続点有効電力を負の値とする。また、電圧に対して電流の位相が進んでいる場合(進み位相)、接続点無効電力を正の値とする。一方、電圧に対して電流の位相が遅れている場合(遅れ位相)、接続点無効電力を負の値とする。
【0017】
電力システムA1は、集中管理装置B、複数のパワーコンディショナC、複数のパワーコンディショナD、および負荷Eを備えている。負荷Eにおける有効電力および無効電力の正負は、接続点における有効電力および無効電力の正負と同様である。すなわち、負荷Eが有効電力を受電している場合(順潮流)、負荷の有効電力を正の値とする。また、電圧に対して電流の位相が進んでいる場合(進み位相)、負荷Eの無効電力を正の値とする。一方、電圧に対して電流の位相が遅れている場合(遅れ位相)、負荷Eの無効電力を負の値とする。
【0018】
集中管理装置Bは、複数のパワーコンディショナCおよび複数のパワーコンディショナDを管理する。集中管理装置Bは、接続点有効電力を監視し、接続点有効電力を目標有効電力に瞬時値制御するための有効電力指標prP(以下では、「指標prP」と記載する)を算出する。また、集中管理装置Bは、接続点無効電力を監視し、接続点無効電力を目標無効電力に瞬時値制御するための無効電力指標prQ(以下では、「指標prQ」と記載する)を算出する。集中管理装置Bは、検出部11、目標有効電力取得部12、目標無効電力取得部13、指標算出部14、および送信部15を備えている。
【0019】
検出部11は、電力システムAと電力系統Fとの接続点で、接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)を検出する。なお、検出部11は、各パワーコンディショナC,Dがそれぞれ検出した個別出力有効電力および個別出力無効電力の検出値と、負荷Eの受電有効電力および受電無効電力の検出値とを受信して、これらの検出値から算出される推算値を接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)として算出してもよい。つまり、検出部11は、接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)を直接検出するものに限定されず、間接的に検出するものも含まれる。検出部11は、検出した接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)を指標算出部14に出力する。また、検出部11は、検出した接続点有効電力P(t)を目標無効電力取得部13に出力する。なお、検出部11は、集中管理装置Bとは別の検出装置であってもよい。この場合、当該検出装置(検出部11)が、無線通信または有線通信により、接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)を集中管理装置Bに送信する。
【0020】
目標有効電力取得部12は、接続点有効電力P(t)の目標値である目標有効電力PCを取得する。目標有効電力取得部12は、例えば、電力会社から目標有効電力PCを取得する。なお、目標有効電力取得部12は、例えば、無線通信により目標有効電力PCを取得してもよいし、管理者が目標有効電力PCを手入力で入力してもよい。なお、目標有効電力取得部12は、目標有効電力PCを直接取得する代わりに、出力抑制率[%]の情報を取得してもよい。この場合、目標有効電力取得部12は、取得した出力抑制率[%]と電力システムAの定格出力とを用いた演算により、目標有効電力PCを取得する。目標有効電力取得部12は、取得した目標有効電力PCを指標算出部14に出力する。
【0021】
目標無効電力取得部13は、接続点無効電力Q(t)の目標値である目標無効電力QCを取得する。目標無効電力取得部13は、例えば、電力会社から目標力率を取得する。目標無効電力取得部13は、取得した目標力率と、検出部11から入力された接続点有効電力P(t)とを用いた演算により、目標無効電力QCを取得する。目標力率をXとした場合、目標無効電力取得部13は、下記(1)式に基づいて、目標無効電力QCを演算する。
C=P(t)・√(1/X2-1) ・・・ (1)
【0022】
なお、目標無効電力QCの演算方法は限定されない。例えば、目標無効電力取得部13は、検出部11から入力された接続点有効電力P(t)を用いる代わりに、目標有効電力取得部12が取得した目標有効電力PCを用いて、目標無効電力QCを演算してもよい。また、目標無効電力取得部13は、目標力率を取得する代わりに、目標無効電力QCを直接取得してもよい。目標無効電力取得部13は、取得した目標無効電力QCを指標算出部14に出力する。
【0023】
また、検出部11が接続点の電圧(以下「接続点電圧」とする)を検出し、目標無効電力取得部13が接続点電圧に応じて目標無効電力QCを設定する、いわゆるVolt-Var制御を行ってもよい。また、検出部11が接続点の周波数(以下「接続点周波数」とする)を検出し、目標無効電力取得部13が接続点周波数に応じて目標無効電力QCを設定してもよい。また、検出部11が接続点での電流と電圧との位相差(以下「接続点位相差」とする)を検出し、目標無効電力取得部13が接続点位相差に応じて目標無効電力QCを設定してもよい。
【0024】
指標算出部14は、接続点有効電力P(t)を目標有効電力PCに制御するための指標prP、および、接続点無効電力Q(t)を目標無効電力QCに制御するための指標prQを算出する。
【0025】
指標算出部14は、検出部11から入力された接続点有効電力P(t)と、目標有効電力取得部12から入力された目標有効電力PCとから、下記(2),(3)式に基づいて、指標prPを算出する。εPは勾配係数である。なお、指標prPの算出式はこれに限定されない。指標算出部14は、算出した指標prPを送信部15に出力する。
【数1】
【0026】
指標算出部14は、検出部11から入力された接続点無効電力Q(t)と、目標無効電力取得部13から入力された目標無効電力QCとから、下記(4),(5)式に基づいて、指標prQを算出する。εQは勾配係数である。なお、指標prQの算出式はこれに限定されない。指標算出部14は、算出した指標prQを送信部15に出力する。
【数2】
【0027】
送信部15は、指標算出部14から入力された指標prPおよび指標prQを、各パワーコンディショナC,Dに送信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0028】
各パワーコンディショナCは、それぞれ蓄電池が接続され、蓄電池の充放電を行う。各パワーコンディショナCは、受信部21、目標電力算出部22、および出力制御部23を備えている。受信部21は、集中管理装置Bから送信される指標prPおよび指標prQを受信する。各パワーコンディショナCにおいては、有効電力を放電している場合(逆潮流)、個別出力有効電力を正の値とする。一方、有効電力を充電している場合(順潮流)、個別出力有効電力を負の値とする。また、電圧に対して電流の位相が進んでいる場合(進み位相)、個別出力無効電力を正の値とする。一方、電圧に対して電流の位相が遅れている場合(遅れ位相)、個別出力無効電力を負の値とする。
【0029】
目標電力算出部22は、受信部21が集中管理装置Bから受信した指標prPを用いて、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、自装置の個別出力有効電力の目標値である個別目標有効電力Prefを算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含んでいる。
【0030】
目標電力算出部22は、設定されている評価関数から導出される下記(6)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって個別目標有効電力Prefを算出する。指標限界prPlmtは、集中管理装置Bが算出する指標prPの最大値および最小値を定義する値である。p1,p2,p3は設定パラメータであり、接続された蓄電池の特性や優先順位などに応じて設定される。パラメータp1は、主に指標prPの変化に応じた個別目標有効電力Prefの変化量を調整する値であり、0より大きい値が設定される。パラメータp2は、主に、優先順位を設定する値である。パラメータp2は、-1以上1以下の値が設定される。パラメータp3は、主に、個別目標有効電力Prefが変化し始める指標prPを調整する値である。パラメータp1,p2,p3は、受信する指標prPが正の値の時と負の値の時とで異なった値が設定されてもよい。なお、目標電力算出部22は、下記(6)式で示す演算式ではなく、設定されている評価関数を解くことで、個別目標有効電力Prefを算出してもよい。また、評価関数は限定されない。
【数3】
【0031】
制約条件は、各パワーコンディショナCの有効電力の定格出力や定格容量などに基づいて設定されている。また、各パワーコンディショナCに接続されている蓄電池のCレートに応じた制約条件、および、接続されている蓄電池の充電率に応じた制約条件なども設定されている。なお、目標電力算出部22に設定されている制約条件は限定されない。目標電力算出部22は、上記(6)式に示す演算式によって算出された個別目標有効電力Prefが、設定された制約条件を満たしていない場合には、制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefの補正を行う。例えば、算出された個別目標有効電力Prefが、当該パワーコンディショナCの出力可能な最大の有効電力Pmaxよりも大きかった場合、目標電力算出部22は、個別目標有効電力PrefをPmaxに補正する。
【0032】
また、目標電力算出部22は、集中管理装置Bから受信した指標prQを用いて、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、自装置の個別出力無効電力の目標値である個別目標無効電力Qrefを算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含んでいる。
【0033】
目標電力算出部22は、設定されている評価関数から導出される下記(7)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって、個別目標無効電力Qrefを算出する。指標限界prQlmtは、集中管理装置Bが算出する指標prQの最大値および最小値を定義する値である。q1,q2,q3は設定パラメータであり、接続された蓄電池の特性などに応じて設定される。パラメータq1は、主に指標prQの変化に応じた個別目標無効電力Qrefの変化量を調整する値であり、0より大きい値が設定される。パラメータq2は、主に、優先順位を設定する値である。パラメータq2は、-1以上1以下の値が設定される。パラメータq3は、主に、個別目標無効電力Qrefが変化し始める指標prQを調整する値である。パラメータq1,q2,q3は、受信する指標prQが正の値の時と負の値の時とで異なった値が設定されてもよい。なお、目標電力算出部22は、下記(7)式で示す演算式ではなく、設定されている評価関数を解くことで、個別目標無効電力Qrefを算出してもよい。また、評価関数は限定されない。
【数4】
【0034】
制約条件は、各パワーコンディショナCの無効電力の定格出力や定格容量などに基づいて設定されている。なお、目標電力算出部22に設定されている制約条件は限定されない。目標電力算出部22は、上記(7)式に示す演算式によって算出された個別目標無効電力Qrefが、設定された制約条件を満たしていない場合には、制約条件を満たすように、個別目標無効電力Qrefの補正を行う。例えば、算出された個別目標無効電力Qrefが、当該パワーコンディショナCの出力可能な最大の無効電力Qmaxよりも大きかった場合、目標電力算出部22は、個別目標無効電力QrefをQmaxに補正する。
【0035】
本実施形態では、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefの両方にかかわる制約条件として、下記(8)式で示す制約条件が設定されている。当該制約条件は、各パワーコンディショナCが出力する皮相電力の制限についての制約条件である。Smaxは、各パワーコンディショナCの出力可能な最大の皮相電力である。個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefは、当該制約条件によって制約される。
【数5】
【0036】
図2は、制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを補正する方法について説明するための図である。図2(a)は、制約条件の一例を図示したものである。横軸(実軸)は個別目標有効電力Prefを示し、縦軸(虚軸)は個別目標無効電力Qrefを示している。図2(a)に示す円は、上記(8)式の制約条件を示しており、半径がSmaxの円である。図2(a)にハッチングで示す領域は、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが制約条件を満たす領域である。目標電力算出部22は、座標(Pref,Qref)で示す点がハッチングで示す領域に位置するように、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを制約する。例えば、上記(6)式で示す演算式で算出された個別目標有効電力PrefがPxで、上記(7)式で示す演算式で算出された個別目標無効電力QrefがQxであった場合、座標(Px,Qx)で示す点Xは、ハッチングで示す領域に入っておらず、制約条件に抵触している。目標電力算出部22は、点xをハッチングで示す領域に移動させるように、PxおよびQxの少なくともいずれか一方を補正する。
【0037】
本実施形態では、目標電力算出部22は、あらかじめ優先項目が設定されており、設定されている優先項目に応じて、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを補正する。優先項目には、(i)有効電力の制御、(ii)無効電力の制御、(iii)力率の制御の3種類がある。優先項目の設定方法は限定されない。なお、各パワーコンディショナCに設定される優先項目は、固定されもよい。
【0038】
目標電力算出部22は、上記(i)の優先項目が設定されていた場合、算出した個別目標有効電力Prefをできるだけ変更しないように先に決定し、その後に個別目標無効電力Qrefを決定する。具体的には、目標電力算出部22は、まず、個別目標無効電力Qrefを仮に「0」として、個別目標有効電力Prefが制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefを補正する。そして、補正後の個別目標有効電力Prefに基づいて、個別目標無効電力Qrefが制約条件を満たすように、個別目標無効電力Qrefを補正する。上記(i)の優先項目が設定されていた場合、図2(a)の点Xは、図2(b)の点X’に変更される。すなわち、Qxが「0」の場合、座標(Px,0)の点はハッチングで示す領域に入っているので、個別目標有効電力Prefは、制約条件を満たし、Pxに決定される。そして、個別目標無効電力Qrefが、制約条件を満たし、かつ、できるだけQxに近いQx’に決定される。これにより、目標電力算出部22は、出力制御部23に、有効電力の制御を優先させ、余力で無効電力を出力させることができる。
【0039】
目標電力算出部22は、上記(ii)の優先項目が設定されていた場合、算出した個別目標無効電力Qrefをできるだけ変更しないように先に決定し、その後に個別目標有効電力Prefを決定する。具体的には、目標電力算出部22は、まず、個別目標有効電力Prefを仮に「0」として、個別目標無効電力Qrefが制約条件を満たすように、個別目標無効電力Qrefを補正する。そして、補正後の個別目標無効電力Qrefに基づいて、個別目標有効電力Prefが制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefを補正する。上記(ii)の優先項目が設定されていた場合、図2(a)の点Xは、図2(c)の点X’に変更される。すなわち、Pxが「0」の場合、座標(0,Qx)の点はハッチングで示す領域に入っているので、個別目標無効電力Qrefは、制約条件を満たし、Qxに決定される。そして、個別目標有効電力Prefが、制約条件を満たし、かつ、できるだけPxに近いPx’に決定される。これにより、目標電力算出部22は、出力制御部23に、無効電力の制御を優先させ、余力で有効電力を出力させることができる。
【0040】
目標電力算出部22は、上記(iii)の優先項目が設定されていた場合、力率をできるだけ変更しないように、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを決定する。具体的には、目標電力算出部22は、まず、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefから個別目標力率を算出する。そして、個別目標力率を固定した状態で、制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを補正する。上記(iii)の優先項目が設定されていた場合、図2(a)の点Xは、図2(d)の点X’に変更される。すなわち、まず、PxおよびQxから個別目標力率cosθが算出される。そして、個別目標力率cosθが固定されたまま、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが変更され、制約条件を満たし、かつ、できるだけ点Xに近い点X’(Px’,Qx’)に決定される。これにより、目標電力算出部22は、出力制御部23に、力率の制御を優先させて、有効電力および無効電力を出力させることができる。
【0041】
図3は、目標電力算出部22が行う目標電力算出処理の一例を示すフローチャートである。当該目標電力算出処理は、所定のタイミング毎に実行される。
【0042】
まず、個別目標有効電力Prefが算出される(S1)。具体的には、目標電力算出部22は、受信部21から入力される指標prPと、上記(6)式で示す演算式とに基づいていて、個別目標有効電力Prefを算出する。次に、個別目標無効電力Qrefが算出される(S2)。具体的には、目標電力算出部22は、受信部21から入力される指標prQと、上記(7)式で示す演算式とに基づいていて、個別目標無効電力Qrefを算出する。
【0043】
次に、設定されている優先項目が「(i)有効電力の制御」であるか否かが判別される(S3)。優先項目が(i)の場合(S3:YES)、個別目標無効電力Qrefが仮に「0」に変更され(S4)、個別目標有効電力Prefが制約条件を満たすように補正される(S5)。次に、個別目標無効電力Qrefが元の算出値に戻されて(S6)、制約条件を満たすように補正される(S7)。次に、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが出力制御部23に出力されて(S8)、目標電力算出処理は終了される。
【0044】
ステップS3において、優先項目が(i)でない場合(S3:NO)、設定されている優先項目が「(ii)無効電力の制御」であるか否かが判別される(S9)。優先項目が(ii)の場合(S9:YES)、個別目標有効電力Prefが仮に「0」に変更され(S10)、個別目標無効電力Qrefが制約条件を満たすように補正される(S11)。次に、個別目標有効電力Prefが元の算出値に戻されて(S12)、制約条件を満たすように補正される(S13)。次に、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが出力制御部23に出力されて(S8)、目標電力算出処理は終了される。
【0045】
ステップS9において、優先項目が(ii)でない場合(S9:NO)、設定されている優先項目が「(iii)力率の制御」であると判断され、個別目標力率が算出される(S14)。次に、個別目標力率を固定した状態で、制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが補正される(S15)。次に、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefが出力制御部23に出力されて(S8)、目標電力算出処理は終了される。
【0046】
なお、図3のフローチャートに示す処理は一例であって、目標電力算出部22が行う目標電力算出処理は、上述したものに限定されない。
【0047】
出力制御部23は、目標電力算出部22が算出した個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefに基づいて、個別出力有効電力および個別出力無効電力の制御を行う。出力制御部23は、図示しないインバータ回路を制御して、パワーコンディショナCの個別出力有効電力を、目標電力算出部22が算出した個別目標有効電力Prefに制御する。また、出力制御部23は、パワーコンディショナCの個別出力無効電力を、目標電力算出部22が算出した個別目標無効電力Qrefに制御する。
【0048】
各パワーコンディショナDは、それぞれ太陽電池が接続され、太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換して出力する。図1においては省略しているが、各パワーコンディショナDは、パワーコンディショナCと同様、受信部21、目標電力算出部22、および出力制御部23を備えている。パワーコンディショナDの目標電力算出部22には、太陽電池に適した最適化問題があらかじめ設定されている。
【0049】
次に、電力システムA1のシミュレーションについて説明する。図4は、電力システムA1のシミュレーションのためのモデルA1’を示すブロック図である。モデルA1’は、太陽電池が接続されたパワーコンディショナDを備えず、蓄電池が接続されたパワーコンディショナC1,C2を備えている。パワーコンディショナC1は、有効電力の定格出力が250kWであり、無効電力の定格出力が125kVarである。パワーコンディショナC2は、有効電力の定格出力が250kWであり、無効電力の定格出力が50kVarである。集中管理装置Bは、目標有効電力PCが300kWに設定され、目標力率が(-95)%(遅れ位相)に設定されている。
【0050】
図5は、シミュレーションにおいて負荷Eを変動させたときの各検出値の時間変化を示すタイムチャートである。図5(a)において、波形a1は負荷Eが受電する有効電力を示し、波形a2はパワーコンディショナC1,C2の個別出力有効電力の合計を示し、波形a3はモデルA1’の接続点有効電力P(t)を示している。また、波形a4はパワーコンディショナC1,C2の個別出力無効電力の合計を示し、波形a5はモデルA1’の接続点無効電力Q(t)を示している。図5(b)において、波形b1は集中管理装置Bが送信する指標prPを示し、波形b2は指標prQを示している。図5(c)において、波形c1はモデルA1’の接続点力率を示している。図5(d)において、波形d1はパワーコンディショナC1の個別出力有効電力を示し、波形d2はパワーコンディショナC2の個別出力有効電力を示している。なお、波形d1と波形d2とは完全に重なっている。また、波形d3はパワーコンディショナC1の個別出力無効電力を示し、波形d4はパワーコンディショナC2の個別出力無効電力を示している。
【0051】
時刻t1までは、負荷Eが受電する有効電力は400kW(図5(a)a1参照)、無効電力は(-50)kVar(遅れ位相)に設定されている。このとき、パワーコンディショナC1,C2が個別出力有効電力としてそれぞれ50kW(図5(d)d1、d2参照)、合計100kWを出力し(図5(a)a2参照)、接続点有効電力P(t)が目標有効電力PCである300kWになっている(図5(a)a3参照)。また、パワーコンディショナC1,C2が個別出力無効電力としてそれぞれ25kVar(図5(d)d3、d4参照)、合計50kVarを出力し(図5(a)a4参照)、接続点無効電力Q(t)が(-100)kVarになっている(図5(a)a5参照)。これにより、モデルA1’の接続点力率は、目標力率である(-95)%になっている(図5(c)c1参照)。
【0052】
時刻t1において、負荷Eが受電する有効電力が500kWに変更され(a1参照)、接続点有効電力P(t)が増加している(a3参照)。これにより、指標prPが減少し(b1参照)、パワーコンディショナC1,C2の個別出力有効電力がそれぞれ100kW(d1、d2参照)、合計200kWに変化して(a2参照)、接続点有効電力P(t)が目標有効電力PCである300kWに戻っている(a3参照)。このように、負荷Eの有効電力の変動に合わせて、パワーコンディショナC1,C2が個別出力有効電力を変化させ、接続点有効電力P(t)を制御していることがわかる。なお、時刻t1における接続点有効電力P(t)の一時的な変化により、P(t)に基づいて算出される目標無効電力QCも一時的に変化する。これにより、指標prQも一時的に変化し(b2参照)、パワーコンディショナC1,C2の個別出力無効電力も一時的に変化し(d3、d4参照)、接続点無効電力Q(t)も一時的に変化している(a5参照)。また、モデルA1’の接続点力率は、接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)の一時的な変化により変化するが、目標力率である(-95)%に戻っている(c1参照)。
【0053】
時刻t2において、負荷Eが受電する無効電力が20kVar(進み位相)に変更され、接続点無効電力Q(t)が増加している(a5参照)。これにより、指標prQが減少し(b2参照)、パワーコンディショナC1,C2の個別出力無効電力の合計が120kVarに変化して(a4参照)、接続点無効電力Q(t)が目標無効電力QCである(-100)kVarに戻っている(a5参照)。また、モデルA1’の接続点力率は、接続点無効電力Q(t)の一時的な変化により、変化するが、目標力率である(-95)%に戻っている(c1参照)。このように、負荷Eの無効電力の変動に合わせて、パワーコンディショナC1,C2が個別出力無効電力を変化させ、接続点無効電力Q(t)を制御していることがわかる。また、負荷Eが受電する無効電力が20kVarに変更された際、パワーコンディショナC2の個別出力無効電力は定格出力の制約条件により50kVarまでしか増加しないが(d4参照)、パワーコンディショナC1の個別出力無効電力は70kVarまで増加して不足分を補っている(d3参照)。このように、パワーコンディショナC1,C2は、同じ指標prQを受信しても、それぞれに設定された制約条件に応じて異なる個別出力無効電力の出力を行い、全体として接続点無効電力Q(t)の制御が達成できていることがわかる。
【0054】
次に、本実施形態に係る電力システムA1の作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態によると、集中管理装置Bにおいて、目標無効電力取得部13が目標力率に対応した目標無効電力QCを取得し、指標算出部14が接続点無効電力Q(t)を目標無効電力QCに制御するための指標prQを算出し、送信部15が指標prQを各パワーコンディショナC,Dに送信する。また、各パワーコンディショナC,Dにおいて、 目標電力算出部22が指標prQに基づいて個別目標無効電力Qrefを算出し、出力制御部23が個別目標無効電力Qrefに基づいて個別出力無効電力の制御を行う。各パワーコンディショナC,Dが、共通の指標prQに基づいて自律的に個別出力無効電力を制御することで、電力システムA1全体の出力無効電力(接続点無効電力Q(t))が目標無効電力QCに制御される。これにより、接続点力率が目標力率に制御される。このように、電力システムA1は、電力系統Fを安定化させる機能を有する。
【0056】
また、本実施形態によると、集中管理装置Bにおいて、目標有効電力取得部12が目標有効電力PCを取得し、指標算出部14が接続点有効電力P(t)を目標有効電力PCに制御するための指標prPを算出し、送信部15が指標prPを各パワーコンディショナC,Dに送信する。また、各パワーコンディショナC,Dにおいて、 目標電力算出部22が指標prPに基づいて個別目標有効電力Prefを算出し、出力制御部23が個別目標有効電力Prefに基づいて個別出力有効電力の制御を行う。各パワーコンディショナC,Dが、共通の指標prPに基づいて自律的に個別出力有効電力を制御することで、電力システムA1全体の出力有効電力(接続点有効電力P(t))が目標有効電力PCに制御される。このように、電力システムA1は、接続点有効電力P(t)を目標有効電力PCに制御できる。また、集中管理装置Bは、各パワーコンディショナC,Dごとに個別の目標値を算出する必要がなく、指標prPおよび指標prQを算出して送信するだけなので、演算や通信の負担が小さい。集中管理装置Bとして、高性能で高価な処理装置を用意する必要がないので、初期導入費用を軽減できる。また、電力システムA1を拡張する場合に、集中管理装置Bの大きな改修が必要にならない。
【0057】
また、本実施形態によると、目標無効電力取得部13は、取得した目標力率と検出部11から入力された接続点有効電力P(t)とを用いた演算により目標無効電力QCを取得する。そして、電力システムA1は、接続点無効電力Q(t)を目標無効電力QCに制御する。これにより、電力システムA1は、接続点力率を目標力率に制御することができる。
【0058】
また、本実施形態によると、目標電力算出部22は、設定された優先項目に応じて、個別目標有効電力Prefおよび個別目標無効電力Qrefを補正する。これにより、パワーコンディショナCは、設定された優先項目に応じた制御を行うことができる。例えば、「(i)有効電力の制御」の優先項目が設定されていた場合、目標電力算出部22は、まず、個別目標無効電力Qrefを仮に「0」として、個別目標有効電力Prefが制約条件を満たすように、個別目標有効電力Prefを補正する。そして、補正後の個別目標有効電力Prefに基づいて、個別目標無効電力Qrefが制約条件を満たすように、個別目標無効電力Qrefを補正する。これにより、目標電力算出部22は、出力制御部23に、有効電力の制御を優先させ、余力で無効電力を出力させることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、電力システムA1が複数のパワーコンディショナCおよび複数のパワーコンディショナDを備えている場合について説明したが、これに限られない。電力システムA1は、パワーコンディショナCを1個だけ備えてもよいし、パワーコンディショナDを1個だけ備えてもよい。また、電力システムA1は、パワーコンディショナCを備えなくてもよいし、パワーコンディショナDを備えなくてもよい。また、電力システムA1は、パワーコンディショナC,D以外の電力装置を備えてもよい。このような電力装置としては、例えば、風力発電機や燃料電池などの出力を制御するパワーコンディショナ、電気自動車の充電スタンドなどで入出力を制御するパワーコンディショナ、回転機形の発電機を制御する制御装置、負荷のオンオフを個別に制御する切り替え装置、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)、および、HEMS(Home Energy Management System)などの需要家での受電電力を制御する電力管理システムなどが含まれる。これらの電力装置のうち無効電力を制御する機能を有さない電力装置は、集中管理装置Bから指標prQを受信しても指標prQに応じた動作を行わず、指標prPに応じて個別出力有効電力の制御だけを行えばよい。
【0060】
また、本実施形態では、電力システムA1が接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)の両方を制御する場合について説明したが、これに限られない。電力システムA1は、接続点無効電力Q(t)だけを制御してもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、電力システムA1が電力系統Fに接続している場合について説明したが、これに限られない。例えば、電力システムA1は、発電機に直接接続してもよい。この場合も、発電機とこれに接続する接続線を電力系統とみなすことができる。この場合、電力システムA1は、発電機と連携して電力の制御を行うことができる。
【0062】
図6は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。
【0063】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る電力システムA2の全体構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電力システムA2は、異常時(例えば電力系統Fの停電時など)に発電機が起動し、電力の供給源が切り替わる点で、第1実施形態に係る電力システムA1と異なる。
【0064】
電力システムA2は、接続先を電力系統Fと発電機Gとで切り替える切替装置Hをさらに備えている。切替装置Hは、通常時は電力システムA2を電力系統Fに接続させており、集中管理装置Bから切替指令を受信した場合に、電力システムA2を発電機Gに接続させる。第2実施形態に係る集中管理装置Bは、切替部16をさらに備えている。切替部16は、電力系統Fの停電などの異常を検出する機能を有する。切替部16は、異常を検出したときには、切替装置Hに切替指令を送信して、電力システムA2の接続先を発電機Gに切り替えさせ、発電機Gを起動させる。また、切替部16は、検出部11が電力システムAと発電機Gとの接続点で、接続点有効電力P(t)および接続点無効電力Q(t)を検出するように切り替える。
【0065】
本実施形態においても、集中管理装置Bが指標prQを算出して各パワーコンディショナC,Dに送信し、各パワーコンディショナC,Dが指標prQに基づいて個別目標無効電力Qrefを算出して個別出力無効電力の制御を行う。各パワーコンディショナC,Dが、共通の指標prQに基づいて自律的に個別出力無効電力を制御することで、電力システムA2全体の出力無効電力(接続点無効電力Q(t))が目標無効電力QCに制御され、接続点力率が目標力率に制御される。このように、電力システムA2は、電力系統Fを安定化させる機能を有する。また、電力システムA2は、電力システムA1と共通する構成により、電力システムA1と同等の効果を奏する。さらに、本実施形態によると、切替部16は、異常を検出したときに、切替装置Hに電力システムA2の接続先を発電機Gに切り替えさせ、検出部11が電力システムAと発電機Gとの接続点で検出を行うように切り替える。これにより、電力システムA2は、異常時においても負荷Eへの電力供給を継続し、発電機Gとの接続点における接続点有効電力P(t)および接続点有効電力P(t)の制御を行うことができる。
【0066】
本発明に係る電力システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0067】
A1~A2:電力システム、B:集中管理装置、11:検出部、13:目標無効電力取得部、14:指標算出部、15:送信部、C,D:パワーコンディショナ、21:受信部、22:目標電力算出部、23:出力制御部、F:電力系統、12:DC/DC変換装置、121:DC/DC変換回路、122:制御回路、13:制御装置、2:太陽電池、3:パワーコンディショナ、4:直流バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6