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特許7530283原価振替装置、原価振替方法および原価振替プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】原価振替装置、原価振替方法および原価振替プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240731BHJP
   G06Q 10/10 20230101ALI20240731BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240731BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G06Q10/10 310
G06Q50/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020210601
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097173
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼仲 祐史
(72)【発明者】
【氏名】大原 修治
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121197(JP,A)
【文献】特開2007-004386(JP,A)
【文献】特開2019-016242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替装置であって、
前記制御部は、
前記製造側で発生した原価金額と前記製造側で用いる原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された製番別かつ原価費目別の原価金額、当該原価金額に紐付く製番および当該原価金額に紐付く原価費目を取得する取得手段と、
前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから前記取得手段で取得した前記製番紐付くプロジェクト識別データを取得し、当該取得したプロジェクト識別データと、前記取得手段で取得した前記原価費目に対応する前記収支管理側で用いる原価費目と、前記取得手段で取得した前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成手段と、
を備えること、
を特徴とする原価振替装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記製番と前記製造側での製造に必要な手配毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む製番進捗データと、前記製番と前記製造側での製造に必要な経費毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む経費計上データと、を前記製番毎に統合することにより、前記製番原価元帳データを生成する原価元帳生成手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載の原価振替装置。
【請求項3】
前記プロジェクト生成手段は、
振替元の費目としての前記製造側で用いる前記原価費目と振替先の費目としての前記収支管理側で用いる前記原価費目とを含む変換マスタから、前記取得手段で取得した前記原価費目紐付く前記収支管理側で用いる原価費目を取得すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の原価振替装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記プロジェクト原価振替データ中の前記プロジェクト識別データで特定されるプロジェクトに関して、前記プロジェクト原価振替データ中の当該特定されるプロジェクトの前記原価金額の合算金額当該特定されるプロジェクトの予算額に占める割合を計算することにより、当該特定されるプロジェクトの進捗率を算出する進捗率算出手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の原価振替装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記製造側で発生した原価金額を計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む原価計上仕訳および前記製造側から振替された前記原価金額を前記収支管理側へ振替計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む振替計上仕訳を生成する仕訳生成手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の原価振替装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記製番原価元帳データが生成されたタイミング、前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングおよび前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記原価金額を表示することにより、前記原価金額の移動を捉えることを可能とする原価移動表示手段
を更に備えること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の原価振替装置。
【請求項7】
前記原価移動表示手段は、
前記製番原価元帳データが生成されたタイミングで、前記製番原価元帳データ中の前記原価金額を表示し、
前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングで、前記製番原価元帳データ中の前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額を表示し、
前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記プロジェクト原価振替データ中の前記収支管理側において売上原価へと振替された前記原価金額を表示すること、
を特徴とする請求項6に記載の原価振替装置。
【請求項8】
前記原価は、請負契約型の取引のもとに発生したこと、を特徴とする請求項1に記載の原価振替装置。
【請求項9】
制御部を備える情報処理装置で実行される、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替方法であって、
前記制御部で実行される、
前記製造側で発生した原価金額と前記製造側で用いる原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された製番別かつ原価費目別の原価金額、当該原価金額に紐付く製番および当該原価金額に紐付く原価費目を取得する取得ステップと、
前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから、前記取得ステップで取得した前記製番に紐付くプロジェクト識別データを取得し、当該取得したプロジェクト識別データと、前記取得ステップで取得した前記原価費目に対応する前記収支管理側で用いる原価費目と、前記取得ステップで取得した前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成ステップと、
を含むこと、
を特徴とする原価振替方法。
【請求項10】
制御部を備える情報処理装置に実行させるための、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替プログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
前記製造側で発生した原価金額と前記製造側で用いる原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された製番別かつ原価費目別の原価金額、当該原価金額に紐付く製番および当該原価金額に紐付く原価費目を取得する取得ステップと、
前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから、前記取得ステップで取得した前記製番に紐付くプロジェクト識別データを取得し、当該取得したプロジェクト識別データと、前記取得ステップで取得した前記原価費目に対応する前記収支管理側で用いる原価費目と、前記取得ステップで取得した前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成ステップと、
を含むこと、
を特徴とする原価振替プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原価振替装置、原価振替方法および原価振替プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現場担当者および経理担当者の負担を軽減して、他社物件および自社物件の工事で発生した原価を容易に管理する方法を、どのように実現するかが問題となる中で、会計管理を省力化できる会計処理プログラム、会計処理装置および会計処理方法が開示されている(特許文献1の0009段落および0010段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-203607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、工事等を行う際に原価を管理する分野においては、製造側(工場側)での原価の管理粒度と収支管理側(営業側)での原価の管理粒度とが異なることがある。このため、従来においては、以下のような問題があった。
【0005】
営業側であるプロジェクトを受注した場合、当該プロジェクト内で製造が必要な物については工場側に製造を依頼することとなるため、工場側においては、製造の単位、すなわち製番単位で原価を管理することとなる。一方で、営業側においては、製造側で発生した原価を営業側に振替する必要があるが、この際に、プロジェクト単位で振替を行う必要がある。例えば、PJ0001のプロジェクト内で、製番SZ0001については680,000円の原価、製番SZ0002については250,000円の原価、製番SZ0003については460,000円の原価が発生したとすると、営業側では、PJ0001のプロジェクトに振替する原価として、これら3つの原価すべてを正確に把握しなければならない。
【0006】
このため、営業担当者が、前記受注したプロジェクトに振替する原価を工場側の原価から調べて抽出および集計等する必要があるが、製番およびプロジェクトは、実際には前段落の例で示したような単純なものではなく多数存在し関係も入り組んでいるため、抽出および集計の作業に多大な労力がかかるという問題があった。すなわち、一言でいうと、製造側(工場側)で製番単位で管理する原価を収支管理側(営業側)でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替えるためには、従来においては、複雑な手作業を行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、製造側(工場側)で製番単位で管理する原価を収支管理側(営業側)でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替えることができる原価振替装置、原価振替方法および原価振替プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る原価振替装置は、制御部を備え、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替装置であって、前記制御部が、前記製造側で発生した原価金額と原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された前記原価金額と紐付く製番および原価費目を取得する製番等取得手段と、前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから取得した前記製番等取得手段で取得した前記製番と紐付くプロジェクト識別データと、前記製番等取得手段で取得した前記原価費目に対応する費目と、前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成手段と、を備えること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記制御部が、前記製番と前記製造側での製造に必要な手配毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む製番進捗データと、前記製番と前記製造側での製造に必要な経費毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む経費計上データと、を統合することにより、前記製番原価元帳データを生成する原価元帳生成手段を更に備えること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記プロジェクト生成手段が、振替元の費目としての前記原価費目と振替先の費目とを含む変換マスタから、前記製番等取得手段で取得した前記原価費目と紐付く振替先の費目を、前記対応する費目として取得すること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記制御部が、前記プロジェクト原価振替データ中の前記プロジェクト識別データで特定されるプロジェクトに関して、当該特定されるプロジェクトの予算額に対して前記プロジェクト原価振替データ中の振替された前記原価金額が占める割合を計算することにより、当該特定されるプロジェクトの進捗率を算出する進捗率算出手段を更に備えること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記制御部が、前記製造側で発生した原価金額を計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む原価計上仕訳および前記製造側から振替された前記原価金額を前記収支管理側へ振替計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む振替計上仕訳を生成する仕訳生成手段を更に備えること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記制御部が、前記原価金額が前記製造側で発生したタイミング、前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングおよび前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記原価金額を表示することにより、前記原価金額の移動を捉えることを可能とする原価移動表示手段を更に備えること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る原価振替装置は、前記原価移動表示手段が、前記原価金額が前記製造側で発生したタイミングで、前記製番原価元帳データ中の前記原価金額を表示し、前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングで、前記製番原価元帳データ中の前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額を表示し、前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記プロジェクト原価振替データ中の前記収支管理側において売上原価へと振替された前記原価金額を表示すること、を特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る原価振替方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替方法であって、前記制御部で実行される、前記製造側で発生した原価金額と原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された前記原価金額と紐付く製番および原価費目を取得する製番等取得ステップと、前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから取得した前記製番等取得ステップで取得した前記製番と紐付くプロジェクト識別データと、前記製番等取得ステップで取得した前記原価費目に対応する費目と、前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る原価振替プログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるための、製造側で製番単位で管理する原価を収支管理側でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替える原価振替プログラムであって、前記制御部に実行させるための、前記製造側で発生した原価金額と原価費目と前記製造側での各製造を識別するための番号である製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された前記原価金額と紐付く製番および原価費目を取得する製番等取得ステップと、前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから取得した前記製番等取得ステップで取得した前記製番と紐付くプロジェクト識別データと、前記製番等取得ステップで取得した前記原価費目に対応する費目と、前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造側(工場側)で製番単位で管理する原価を収支管理側(営業側)でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、原価振替装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、一括原価振替機能の概要の一例を示す図である。
図3図3は、プロジェクト基本情報データおよび受注データの一例を示す図である。
図4図4は、製番データおよび製番手配データの一例を示す図である。
図5図5は、製番進捗データおよび経費計上データの一例を示す図である。
図6図6は、製番原価元帳データおよび製番仕掛原価データの一例を示す図である。
図7図7は、製番データおよび変換マスタの一例を示す図である。
図8図8は、製番原価振替データの一例を示す図である。
図9図9は、原価の振替により更新された製番原価元帳データおよび製番仕掛原価データの一例を示す図である。
図10図10は、プロジェクト原価振替データの一例を示す図である。
図11図11は、プロジェクト基本情報データおよびプロジェクト進捗データの一例を示す図である。
図12図12は、完成振替済フラグが更新されたプロジェクト原価振替データの一例を示す図である。
図13図13は、製造工程で発生した原価を計上するための仕訳(原価計上仕訳)の一例を示す図である。
図14図14は、製造工程で発生した原価をプロジェクト原価へ振り替えるための仕訳(振替計上仕訳)の一例を示す図である。
図15図15は、売上を計上するための仕訳(売上計上仕訳)および売上に付随した原価を計上するための仕訳(売上付随原価計上仕訳)の一例を示す図である。
図16図16は、仕訳作成の元となるデータとしてのプロジェクト原価振替データの一例を示す図である。
図17図17は、製造側(工場側)での原価金額の発生を示している状態の集計表の一例を示す図である。
図18図18は、図17に示す集計表の表示のために必要なデータの一例を示す図である。
図19図19は、製造側(工場側)から収支管理側(営業側)への原価金額の振替を示している状態の集計表の一例を示す図である。
図20図20は、図19に示す集計表の表示のために必要なデータの一例を示す図である。
図21図21は、原価金額の収支管理側(営業側)における売上原価への振替を示している状態の集計表の一例を示す図である。
図22図22は、図21に示す集計表の表示のために必要なデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る原価振替装置、原価振替方法および原価振替プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
[1.概要]
製造業においては、顧客へ提供するサービスは、その範囲から以下の2パターンの取引に大別できる。一つ目は、売買契約型の取引である。売買契約型の取引とは、完成した製品を販売し、その数量に応じた対価を得る取引のことであり、例えば、小型部品メーカーは、契約した1点当たりの販売単価を基に、引渡した部品点数分の売上を計上する。二つ目は、請負契約型の取引である。請負契約型の取引とは、製造だけでなく、付帯する一連のサービス提供に応じた対価を得る取引のことであり、例えば、大型機械装置メーカーは、製品の引渡しに加え、据付工事および保守作業といったサービス一式で契約を行い、その進捗に応じて売上を計上する。
【0021】
ここで、売買契約型の取引においては、売上金額は、契約された単価(または定価)に、その引渡しを行った製品の数量を乗じることで算出され、あくまで仕掛途中ではなく、完成した物品をいくつ提供したかに応じて対価が得られる、というのが一般的な形である。これに対して、請負契約型の取引においては、特に建設工事業界で慣行となっている「進行基準」での売上計上のように、各請負契約の単位で見積もられた原価総額の「予算」に対して、現時点でどれだけの原価が発生しているかを「進捗度」として捉え、その進捗度に応じた売上金額(請負金額×進捗度)を計上することが多い。特に、提供する役務期間が複数月・年に跨るような場合には、このように進捗度に応じた売上金額を計上することが多い。
【0022】
このために、請負契約型の取引を採用する業界においては、決算の都度それぞれの役務で発生した原価を抽出および集計する必要があり、特にメーカー等においては、工場での生産管理を担うサブシステム等から、該当期間で発生した製造原価金額を製品(契約)毎に抽出し、更に、進捗売上計上時には、仕掛原価から売上原価(完成工事原価)へ勘定の振替を行う必要があり、非常に煩雑な会計処理を強いられてきた。
【0023】
そこで、本実施形態においては、複合事業を営み、各役務提供の過程でそれぞれ原価が生じるような請負契約型の取引において、顧客との契約管理およびその収益管理を担うシステムを「メインシステム」、各役務の原価管理を行うシステムを「サブシステム」と位置付けて、メインシステムに全工程の原価を集約し管理することで、進捗度の管理を効率的に行うことが可能であることに着目し、以下の3つの機能を実現した。
【0024】
一つ目は、一括原価振替機能である。この機能は、生産管理システム(サブシステム)から、プロジェクト管理システム(メインシステム)に対して、仕掛原価の振替を一括で実施する機能である。二つ目は、振替仕訳伝票作成機能である。この機能は、一括原価振替機能の原価振替に対応した財務仕訳を自動的に作成する機能である。三つ目は、振替済仕掛残高管理機能である。この機能は、一括原価振替機能で振替済の原価を含めた、現物仕掛残高の管理をする機能である。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0025】
[2.構成]
本実施形態に係る原価振替装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、原価振替装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
原価振替装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、原価振替装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0027】
原価振替装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。原価振替装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0028】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、原価振替装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、原価振替装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0029】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0030】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0031】
記憶部106は、例えば、プロジェクト基本情報データ106aと、受注データ106bと、製番データ106cと、製番手配データ106dと、製番進捗データ106eと、経費計上データ106fと、製番原価元帳データ106gと、製番仕掛原価データ106hと、変換マスタ106iと、製番原価振替データ106jと、プロジェクト原価振替データ106kと、プロジェクト進捗データ106mと、を備えている。各データおよび各マスタの内容の詳細については、以下の[3.処理の具体例]で説明する。
【0032】
制御部102は、原価振替装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0033】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)前記製造側での各製造を識別するための番号である製番と前記製造側での製造に必要な手配毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む製番進捗データと、前記製番と前記製造側での製造に必要な経費毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む経費計上データと、を統合することにより、前記製番原価元帳データを生成する原価元帳生成手段としての原価元帳生成部102aと、(2)前記製造側で発生した原価金額と原価費目と前記製番とを含む製番原価元帳データ中の前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されると、前記製番原価元帳データから、振替された前記原価金額と紐付く製番および原価費目を取得する製番等取得手段としての製番等取得部102bと、(3)前記収支管理側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データと前記製番とを含む製番データから取得した前記製番等取得手段で取得した前記製番と紐付くプロジェクト識別データと、前記製番等取得手段で取得した前記原価費目に対応する費目と、前記製造側から前記収支管理側に振替された前記原価金額と、を含むプロジェクト原価振替データを生成するプロジェクト生成手段としてのプロジェクト生成部102cと、(4)前記プロジェクト原価振替データ中の前記プロジェクト識別データで特定されるプロジェクトに関して、当該特定されるプロジェクトの予算額に対して前記プロジェクト原価振替データ中の振替された前記原価金額が占める割合を計算することにより、当該特定されるプロジェクトの進捗率を算出する進捗率算出手段としての進捗率算出部102dと、(5)前記製造側で発生した原価金額を計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む原価計上仕訳および前記製造側から振替された前記原価金額を前記収支管理側へ振替計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む振替計上仕訳を生成する仕訳生成手段としての仕訳生成部102eと、(6)前記原価金額が前記製造側で発生したタイミング、前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングおよび前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記原価金額を表示することにより、前記原価金額の移動を捉えることを可能とする原価移動表示手段としての原価移動表示部102fと、を備えている。各部が実行する処理内容の詳細については、以下の[3.処理の具体例]で説明する。
【0034】
[3.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例として、[1.概要]で説明した一括原価振替機能、振替仕訳伝票作成機能および振替済仕掛残高管理機能をこの順で項目立てて説明する。
【0035】
[3-1.一括原価振替機能]
一括原価振替機能においては、生産管理システム(サブシステム)から、プロジェクト管理システム(メインシステム)に対して、仕掛原価の振替を一括で実施する。以下、詳細な説明に入る前に、本機能の概要を図2を参照して説明する。
【0036】
生産管理システム(サブシステム)においては、工場等において日々発生する製造に関わる原価を管理できる。図2の例でいえば、実線四角枠Xで囲んで示すように、製造番号:S001~S00Xまでの製造中においてそれぞれ複数の原価が発生しているが、工場直販品等のプロジェクト管理外の製造原価は据置となり、生産管理システム(サブシステム)においては管理しない。
【0037】
ここで、本実施形態においては、製造番号とプロジェクト番号との紐付き関係を構築する。図2の例でいえば、点線四角枠Yで囲んで示すように、プロジェクト番号:001のプロジェクトについては製造番号:S001およびS002の製造と紐付けて管理し、一方で、プロジェクト番号:002のプロジェクトについては製造番号:S003およびS00Xの製造と紐付けて管理することができる。
【0038】
これにより、プロジェクト管理システム(メインシステム)において、プロジェクト全体で発生した原価を集約して管理することで、プロジェクト単位での原価の進捗を把握し、これにより、進捗に応じた売上計上を行うことができる。図2の例でいえば、実線四角枠Zで囲んで示すように、プロジェクト番号:001のプロジェクトについては、製造番号:S001およびS002の製造の原価を集計した結果、製造番号:S001およびS002の製造の原価予算の全体額に対して75%の原価が振替済であるとすると、プロジェクト番号:001の原価進捗度は75%となり、この進捗度に応じた売上計上を行うことができる。なお、プロジェクト管理システム(メインシステム)においては、製造工程以外で発生したプロジェクト原価(現地工事での労務費および工場からの製品運送費等)も併せて進捗管理の対象とすることができる。
【0039】
以下、一括原価振替機能の具体的な処理を、項目立てて手順に説明をする。
【0040】
(1)顧客との契約および予算の登録
(1-1)プロジェクト受注
まず、社内の営業部門等において、図3に示すように、プロジェクト基本情報入力により、プロジェクト基本情報データ106aが入力される。
【0041】
プロジェクト基本情報データ106aは、図3に示すように、例えば、収支管理(社内の営業部門等)側で管理するプロジェクトを識別するためのプロジェクト識別データ(プロジェクトNOおよびプロジェクト名)等を含む。前記プロジェクト識別データは、収支管理の単位で採番される。
【0042】
続いて、引き続き社内の営業部門等において、図3に示すように、受注入力により、前記プロジェクト識別データと紐付けて、受注データ106bが入力される。
【0043】
受注データ106bは、図3に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と、受注識別データ(受注NO)と、受注明細識別データ(受注明細NO)と、受注明細の内容(明細内容)と、受注数と、受注金額と、予算と、等を含む。前記受注識別データは、顧客との契約単位で採番される。
【0044】
ここで、工場(製造部門)への手配が不要な物の受注明細(受注NO-受注明細NO=JC001-002、JC001-003およびJC002-002の3明細とする)については、営業担当の者が、外注先等に手配をする。一方で、自社で製造が必要となる物の受注明細(受注NO-受注明細NO=JC001-001およびJC002-001の2明細とする)については、営業担当の者が、工場(製造部門)に対して製造を依頼する。
【0045】
(2)製造が必要な物の受注明細の工場(製造部門)での管理
(2-1)製番手配・・・収支管理の単位と紐付けを行う
次に、営業担当の者から製造を依頼された2つの受注明細について、工場(製造部門)において、図4に示すように、製番手配基本情報入力により、製番データ106cが入力される。
【0046】
製番データ106cは、図4に示すように、例えば、前記製造側(工場側)での各製造を識別するための番号である製番と、製番内容と、前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と、前記受注識別データ(受注NO)と、前記受注明細識別データ(受注明細NO)と、等を含む。前記製番は、製造(工場等)側での製造原価を集計するための単位である。なお、営業から依頼される製品と工場での製造段取りは、必ずしも同じ粒度とは限らない。図4の製番データ106cの例でいうと、1つの受注明細として契約しているJC001-001「生産ライン1号機 製造」に対して、製番は、A部分とB部分とに分けて発番されている。このため、工場(製造部門)に対して製造依頼された受注明細は2明細であるが、製番は、図4の製番データ106cに示すように、3つ(SZ0001、SZ0002およびSZ0003)発番されている。
【0047】
続いて、引き続き工場(製造部門)において、図4に示すように、製番手配入力により、製番手配データ106dが入力される。この入力により、工場で実際に発生する手配情報が作成される。
【0048】
製番手配データ106dは、図4に示すように、例えば、前記製番と、各手配を識別するための手配識別データ(手配NO)と、手配区分と、手配内容と、手配数と、手配納期と、等を含む。
【0049】
(2-2)製番進捗の管理・・・各製番で発生した原価を計上する
続いて、引き続き工場(製造部門)において、図5に示すように、製番進捗入力により、製番進捗データ106eが入力される。この入力により、各手配に対する進捗(投入した材料および作業時間等)が登録されて、これにより、原価の発生の認識が可能となる。
【0050】
製番進捗データ106eは、図5に示すように、例えば、前記製番と、前記手配識別データ(手配NO)と、前記手配区分と、前記手配内容と、前記手配数と、完了数と、各手配に対応する原価発生額と、各手配に対応する原価費目(図5では、材料費および労務費)と、等を含む。図5の製番進捗データ106eの例では、
(A)製番SZ0001については、手配NO:SZ0001-02に対しては原価発生額「300,000円」および原価費目「材料費」が入力され、手配NO:SZ0001-03に対しては原価発生額「100,000円」および原価費目「材料費」が入力され、手配NO:SZ0001-04に対しては原価発生額「200,000円」および原価費目「労務費」が入力され、
(B)製番SZ0002については、手配NO:SZ0002-01に対しては原価発生額「80,000円」および原価費目「材料費」が入力され、手配NO:SZ0002-02に対しては原価発生額「100,000円」および原価費目「労務費」が入力され、
(C)製番SZ0003については、手配NO:SZ0003-01に対しては原価発生額「120,000円」および原価費目「材料費」が入力され、手配NO:SZ0003-02に対しては原価発生額「240,000円」および原価費目「労務費」が入力されている。
【0051】
また、前記製番進捗入力においては、併せて、図5に示すように、経費計上データ106fが入力される。この入力により、各製番に対して発生した経費が計上されて、これにより、原価の発生の認識が可能となる。
【0052】
経費計上データ106fは、図5に示すように、例えば、前記製番と、各経費を識別するための経費識別データ(経費NO)と、経費内容と、各経費に対応する原価発生額と、各経費に対応する原価費目(図5では、経費)と、等を含む。図5の経費計上データ106fの例では、
(A)製番SZ0001については、経費NO:KK0001に対して原価発生額「80,000円」および原価費目「経費」が入力され、
(B)製番SZ0002については、経費NO:KK0002に対して原価発生額「70,000円」および原価費目「経費」が入力され、
(C)製番SZ0003については、経費NO:KK0003に対して原価発生額「100,000円」および原価費目「経費」が入力されている。
【0053】
次に、原価元帳生成部102aは、前記製番と前記製造側での製造に必要な手配毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む製番進捗データ106eと、前記製番と前記製造側での製造に必要な経費毎に入力された原価発生額および原価費目とを含む経費計上データ106fと、を統合することにより、製番原価元帳データ106gを生成する。
【0054】
製番原価元帳データ106gは、図6に示すように、例えば、前記製番と、前記原価費目(製番原価費目)と、前記原価発生額(金額)と、発生元データと、発生元伝票番号と、等を含む。図6の製番原価元帳データ106gは、
(A)製番SZ0001については、原価発生額「300,000円」および原価費目「材料費」、原価発生額「100,000円」および原価費目「材料費」、原価発生額「200,000円」および原価費目「労務費」、ならびに、原価発生額「80,000円」および原価費目「経費」を含み、
(B)製番SZ0002については、原価発生額「80,000円」および原価費目「材料費」、原価発生額「100,000円」および原価費目「労務費」、ならびに、原価発生額「70,000円」および原価費目「経費」を含み、
(C)製番SZ0003については、原価発生額「120,000円」および原価費目「材料費」、原価発生額「240,000円」および原価費目「労務費」、ならびに、原価発生額「100,000円」および原価費目「経費」を含む。
【0055】
次に、製番原価元帳データ106g中の原価発生額を、製番別かつ原価費目別に集計した製番仕掛原価データ106hが生成される。製番仕掛原価データ106hは、図6に示すように、例えば、月度と、前記製番と、前記原価費目(製番原価費目)と、集計した金額(仕掛金額)と、等を含む。図6の製番仕掛原価データ106hは、
(A)製番SZ0001および原価費目「材料費」について集計した金額である400,000円(300,000円+100,000円)と、製番SZ0001および原価費目「労務費」について集計した金額である200,000円(実質的には集計なし)と、製番SZ0001および原価費目「経費」について集計した金額である80,000円(実質的には集計なし)と、を含み、
(B)製番SZ0002および原価費目「材料費」について集計した金額である80,000円(実質的には集計なし)と、製番SZ0002および原価費目「労務費」について集計した金額である100,000円(実質的には集計なし)と、製番SZ0002および原価費目「経費」について集計した金額である70,000円(実質的には集計なし)と、を含み、
(C)製番SZ0003および原価費目「材料費」について集計した金額である120,000円(実質的には集計なし)と、製番SZ0003および原価費目「労務費」について集計した金額である240,000円(実質的には集計なし)と、製番SZ0003および原価費目「経費」について集計した金額である100,000円(実質的には集計なし)と、を含む。
【0056】
(3)製番の原価として計上した費用(仕掛原価)のプロジェクト原価への振替
次に、製番プロジェクト原価振替処理により、前記製番に投入された仕掛原価をプロジェクト管理側へ振替し、プロジェクト管理側でプロジェクトおよび受注の原価の進捗を把握できるようにする。
【0057】
製番プロジェクト原価振替処理を行う際の前提として、予め、図7に示すように、変換マスタ106iにおいて、製造側(工場側)で用いる振替元の原価費目と収支管理側(営業側)で用いる原価費目との紐付けの設定を行っておく必要がある。変換マスタ106iは、図7に示すように、例えば、振替元の費目としての前記原価費目(製番原価費目)と、振替先の費目(プロジェクト原価費目)と、等を含む。以下、製番プロジェクト原価振替処理の詳細を説明する。
【0058】
製番データ106cにおける製番とプロジェクトNOとの紐付けを用いて、
(I)工場における生産管理上、製番単位の原価を管理するための「払出」のデータとしての製番原価振替データ106jが生成され、また、
(II)プロジェクト収支管理上、プロジェクト単位の原価を管理するための「受入」データとしてのプロジェクト原価振替データ106kが生成される。
【0059】
まず、(I)の製番原価振替データ106jの生成について説明する。(2-2)において各製番に投入された原価が振替(本例では全額振替)されると、原価の払出と認識され、図8に示す製番原価振替データ106jが生成される。図8に示す製番原価振替データ106jにおいては、払出された原価の額にマイナスが付されている。
【0060】
製番原価振替データ106jは、図8に示すように、例えば、前記製番と、製番原価振替NOと、払出された原価科目と、払出された原価金額と、プロジェクト原価振替NOと、等を含む。製番原価振替データ106jを参照することで、プロジェクトへ振替後の原価の顛末を、工場側で確認することが可能となる。
【0061】
製番原価振替データ106jの生成と併せて、製番原価元帳データ106gおよび製番仕掛原価データhが以下のようにして更新される。製番原価元帳データ106gは、原価の受払実績が製番原価振替データ106jを参照して登録されることにより、図9に示すように更新される。図9の製番原価元帳データ106gにおいて、マイナスが付された金額を含むレコードが更新された部分である。また、製番原価元帳データ106g中の原価発生額が製番別かつ原価費目別に集計されることで、製番仕掛原価データ106hが、図9に示すように更新される。図9の製番仕掛原価データ106hにおいては、図9の製番原価元帳データ106gにおけるプラスの金額とマイナスの金額が相殺されることで、集計結果の金額(仕掛金額)はすべて0円となっている。
【0062】
次に、(II)のプロジェクト原価振替データ106kの生成について説明する。
【0063】
製番等取得部102bは、前記原価金額と前記原価費目と前記製造側での前記製番とを含む製番原価元帳データ106g(図6参照)中の前記原価金額が前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)に振替されると、製番原価元帳データ106g(図6参照)から、振替された前記原価金額と紐付く製番および原価費目を取得する。
【0064】
具体的には、製番等取得部102bは、図6の製番原価元帳データ106g中の原価金額が前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)に振替(本例では、全額振替)されると、振替された前記原価金額と紐付く製番として「SZ0001、SZ0002、SZ0003」を取得し、また、振替された前記原価金額と紐付く原価費目として「材料費、労務費、経費」を取得する。
【0065】
プロジェクト生成部102cは、前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と前記製番等とを含む製番データ106c(図4参照)から取得した製番等取得部102bで取得した製番と紐付くプロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と、製番等取得部102bで取得した原価費目に対応する費目と、前記振替された原価金額と、等を含むプロジェクト原価振替データ106k(図10参照)を生成する。
【0066】
プロジェクト原価振替データ106kは、図10に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と、前記受注識別データ(受注NO)と、前記受注明細識別データ(受注明細NO)と、前記プロジェクト原価振替NOと、原価費目と、原価金額と、摘要と、振替元部門と、振替先部門と、等を含む。以下、各項目の取得元を詳細に説明する。
【0067】
前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)、前記受注識別データ(受注NO)および前記受注明細識別データ(受注明細NO)は、製番データ106c(図4参照)から取得した情報である。具体的には、プロジェクト生成部102cは、製番データ106c(図4参照)から、製番等取得部102bで取得した製番SZ0001と紐づく情報として、
プロジェクトNO:PJ0001、受注NO:JC0001および受注明細NO:001を取得し、製番等取得部102bで取得した製番SZ0002と紐づく情報として、プロジェクトNO:PJ0001、受注NO:JC0001および受注明細NO:001を取得し、製番等取得部102bで取得した製番SZ0003と紐づく情報として、プロジェクトNO:PJ0001、受注NO:JC0002および受注明細NO:001を取得する。
【0068】
前記プロジェクト原価振替NOは、製番原価振替データ106j(図8参照)から取得した情報である。具体的には、プロジェクト生成部102cは、製番原価振替データ106j(図8参照)から、製番等取得部102bで取得した製番SZ0001と紐づくプロジェクト原価振替NOとして、PH0001-001、PH0001-002およびPH0001-003を取得し、製番等取得部102bで取得した製番SZ0002と紐づくプロジェクト原価振替NOとして、PH0002-001、PH0002-002およびPH0002-003を取得し、製番等取得部102bで取得した製番SZ0003と紐づくプロジェクト原価振替NOとして、PH0003-001、PH0003-002およびPH0003-003を取得する。
【0069】
原価費目は、変換マスタ106i(図7参照)から取得した情報である。プロジェクト生成部102cは、振替元の費目としての原価費目(製番原価費目)と振替先の費目(プロジェクト原価費目)とを含む変換マスタ106i(図7参照)から、製番等取得部102bで取得した原価費目(製番原価費目)と紐付く振替先の費目(プロジェクト原価費目)を、前記対応する費目として取得する。具体的には、プロジェクト生成部102cは、変換マスタ106i(図7参照)から、製番等取得部102bで取得した製番原価費目「材料費」の振替先の費目として「材料費」を取得し、製番等取得部102bで取得した製番原価費目「労務費」の振替先の費目として「労務費」を取得し、製番等取得部102bで取得した製番原価費目「経費」の振替先の費目として「経費」を取得する。本例においては、振替元の費目と振替先の費目とか完全一致している。
【0070】
前記原価金額は、製番原価元帳データ106g(図6参照)中の振替された原価金額(仕掛金額)と同額の金額である。摘要は、製番等取得部102bで取得した製番である。振替元部門および振替先部門は、別途マスタ等で設定することにより取得可能である。
【0071】
以上、本項目(3)で説明してきたように、製番原価元帳データ106g(図6参照)を起点としてプロジェクト原価振替データ106k(図10参照)を生成することで、製造側(工場側)では「製番単位」で管理していた原価金額を、収支管理側(営業側)では「プロジェクト単位(または、受注単位や受注明細単位)」で確認することができるようになる。これにより、営業担当者が、各プロジェクトで発生した原価金額を製造側(工場側)の情報を調べて抽出および集計するという従来行っていた煩雑な会計業務を大幅に簡略化することが可能となる。
【0072】
(4)進行基準による売上計上のための進捗率算出
次に、進行基準売上計算処理により、(1)で登録済の受注データ106b(図3参照)の予算額および(3)で各製番から振り替えたプロジェクト原価振替データ106k(図10参照)の集計結果に基づいて、進捗率が算出される。
【0073】
進捗率の算出のために必要な情報をまとめたプロジェクト進捗データ106mを図11に示す。プロジェクト進捗データ106mは、図11に示すように、例えば、前記プロジェクト識別データ(プロジェクトNO)と、前記受注識別データ(受注NO)と、前記受注明細識別データ(受注明細NO)と、(1)で登録済の受注データ106bの予算額()予算と、(3)で各製番から振り替えたプロジェクト原価振替データ106k(図10参照)の集計結果(発生原価金額)と、等を含む。
【0074】
ここで、進捗率の算出は、プロジェクト単位での進捗率の算出であってもよいし、受注明細単位での進捗率の算出であってもよいが、以下においてはこの両方の例を説明する。
【0075】
プロジェクト単位での進捗率の算出の場合、進捗率算出部102dは、プロジェクト原価振替データ106k中の前記プロジェクト識別データで特定されるプロジェクトに関して、当該特定されるプロジェクトの予算額に対してプロジェクト原価振替データ106k中の振替された前記原価金額が占める割合を計算することにより、当該特定されるプロジェクトの進捗度を算出する。
【0076】
具体的には、図3の受注データ106bを参照すると、PJ0001の予算額は、JC0001-001については1,240,000円、JC0002-001については920,000円であるため、プロジェクト全体での予算額は2,160,000円である。一方で、図10のプロジェクト原価振替データ106kを参照すると、PJ0001へ振替された原価額は、JC0001-001については合計で930,000円、JC0002-001については合計で460,000円であるため、プロジェクト全体での振替された原価額は、1,390,000円である。したがって、進捗率算出部102dは、プロジェクトNO:PJ0001のプロジェクトの進捗率を、(振替された原価額1,390,000円/予算額2,160,000円)×100≒64%と算出する。
【0077】
受注明細単位での進捗率の算出の場合、進捗率算出部102dは、プロジェクト原価振替データ106k中の前記受注明細識別データで特定される受注明細に関して、当該特定される受注明細の予算額に対してプロジェクト原価振替データ106k中の振替された前記原価金額が占める割合を計算することにより、当該特定される受注明細の進捗度を計算する。
【0078】
具体的には、前々段落で述べたように、PJ0001の予算額は、JC0001-001については1,240,000円、JC0002-001については920,000円であり、一方で、PJ0001の払出された原価額は、JC0001-001については合計で930,000円、JC0002-001については合計で460,000円である。したがって、進捗率算出部102dは、図11に示すように、JC0001-001で特定される受注明細の進捗率を、(振替された原価額930,000円/予算額1,240,000円)×100=75%と算出し、また、JC0002-001で特定される受注明細の進捗率を、(払出された原価額460,000円/予算額920,000円)×100=50%と算出する。
【0079】
そして、(3)で計上された原価が完成振替済(売上原価振替済)となると、図12のプロジェクト原価振替データ106kの一番右の列に示すように、「完成振替済フラグ」にチェック印が付される。
【0080】
[3-2.振替仕訳伝票作成機能]
次に、振替仕訳伝票作成機能においては、仕訳生成部102eが、[3-1]の(3)で生成したプロジェクト原価振替データ106k(図10参照)に対応した財務仕訳を以下のようにして生成する。
【0081】
(1)仕掛品の計上
仕訳生成部102eは、前記製造側(工場側)で発生した原価金額を計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む原価計上仕訳を生成する。
【0082】
具体的には、仕訳生成部102eは、図13に示すように、材料費に対応する原価計上仕訳、労務費に対応する原価計上仕訳および経費に対応する原価計上仕訳の3つを生成する。なお、図13には原価計上仕訳が含む金額は示していないが、プロジェクト原価振替データ106k(図10参照)が含む振替された前記金額(またはこれを集計した金額)が、原価計上仕訳が含む金額となる。すなわち、材料費に対応する原価計上仕訳は、600,000円(400,000円+80,000円+120,000円)を含み、労務費に対応する原価計上仕訳は、540,000円(200,000円+100,000円+240,000円)を含み、経費に対応する原価計上仕訳は、250,000円(80,000円+70,000円+100,000円)を含む。
【0083】
(2)製造原価のプロジェクト原価への振替
続いて、仕訳生成部102eは、前記製造側(工場側)から振替された前記原価金額を前記収支管理側(営業側)へ振替計上するための仕訳であって振替された前記原価金額を含む振替計上仕訳を生成する。具体的には、仕訳生成部102eは、借方科目として未成工事支出金(仕掛品)を含み(図14参照)、借方金額として(1)の原価計上仕訳が含む金額の合計額である1,390,000円を含み(図示せず)、貸方科目として仕掛品を含み(図14参照)、貸方金額として借方金額と同額の1,390,000円を含む(図示せず)振替計上仕訳を生成する。なお、借方科目として示した「未成工事支出金(仕掛品)」は、本例のように原価が工事に関係する金額である場合の科目の例示に過ぎず、仕掛中であることを示す科目であれば如何なるものであってもよい。
【0084】
(3)売上計上および売上原価計上
最後に、仕訳生成部102eは、図15に示すように、得意先に対して売上を計上するための仕訳である売上計上仕訳および売上に付随した原価を計上するための仕訳である売上付随原価計上仕訳を生成する。なお、売上計上仕訳については、本例のように進行基準による売上計上を行う場合には、予算金額に対しての原価進捗度に応じた金額算出が行われる。なお、図15に示す科目は、本例のように原価が工事に関係する金額である場合の科目の例示に過ぎず、売上計上および売上原価計上に関する科目であれば如何なるものであってもよい。
【0085】
[3-3.振替済仕掛残高管理機能]
振替済仕掛残高管理機能においては、生産管理の仕組みの中で、[3-1]で払出した原価を含めた「仕掛残高」の管理を可能とし、以下に示す集計表として確認することができる。本機能は、製造側(工場側)で進捗度を確認できるようにするための機能ともいえる。以下、詳細な説明に入る前に、本機能の概要を説明する。
【0086】
製造過程で発生した仕掛原価がプロジェクト仕掛原価へ振替えられると、その時点で製造仕掛の残高が0になってしまうが、プロジェクト全体としては、仕掛の残高を持っており、工場側からもその状況を確認できる方法が必要である。
【0087】
また、進行基準で売上を計上した場合には、その振替えた仕掛原価が、さらに売上原価へ振替わり、プロジェクトで保持する仕掛残高は減少することになり、現物がまだ存在する工場側でもその状況は把握しておきたいという要望がある。
【0088】
そこで、振替済仕掛残高管理機能においては、製造仕掛目線、プロジェクト仕掛目線およびこれらを合算した全社(全体)としての目線で、仕掛原価の推移状況および残高情報を集計表としてアウトプットして確認することができるようにした。
【0089】
以下、振替済仕掛残高管理機能の具体的な処理を説明する。原価移動表示部102fは、前記原価金額が前記製造側で発生したタイミング、前記原価金額が前記製造側から前記収支管理側に振替されたタイミングおよび前記原価金額が前記収支管理側において売上原価へと振替されたタイミングで、前記原価金額を表示することにより、前記原価金額の移動を捉えることを可能とする。以下、各タイミングで項目立てて説明する。
【0090】
(1)原価発生
原価移動表示部102fは、原価金額が前記製造側(工場側)で発生したタイミングで、製番原価元帳データ106g中の前記原価金額を表示する。以下、具体的な処理を説明する。
【0091】
図18には、製番原価元帳データ106gおよび製番仕掛原価データ106h(図6参照)のうち製番SZ0001に関する部分を示している。原価移動表示部102fは、図18の製番原価元帳データ106gにおいてに太枠Bで囲んで示す原価(材料費:300,000円、材料費:100,000円、労務費:200,000円、経費:80,000円)を製番別かつ経費別に集計する。そして、原価移動表示部102hは、図17に太枠Aで囲んで示すように、集計結果(材料費:400,000円、労務費:200,000円、経費:80,000円)を、製造仕掛品(工場側)での当月原価発生額として集計表に表示する。
【0092】
また、原価移動表示部102fは、図17に示すように、前記集計結果を、製造仕掛品(工場側)での当月末残高として集計表に表示する。当該表示により、仕掛原価の残高が「生産管理側(工場側)」に存在していることを認識することが可能となる。
【0093】
(2)プロジェクト原価振替
原価移動表示部102fは、原価金額が前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)に振替されたタイミングで、製番原価元帳データ106g中の前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)に振替された前記原価金額を表示する。以下、具体的な処理を説明する。
【0094】
図20には、前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)への原価金額の振替により更新された製番原価元帳データ106gおよび製番仕掛原価データ106h(図9参照)のうち製番SZ0001に関する部分を示している。原価移動表示部102fは、図20の製番原価元帳データ106gにおいて、「発生元データ」が「製番原価振替データ」である(=原価金額が工場側から営業側へ振替済である)太枠Dで囲んで示す原価(材料費:-400,000円、労務費:-200,000円、経費:-80,000円)を製番別かつ経費別に集計する。そして、原価移動表示部102hは、図19に太枠Cで囲んで示すように、集計結果(材料費:400,000円、労務費:200,000円、経費:80,000円)を、製造仕掛品(工場側)でのPJ原価振替済額およびPJ仕掛品(営業側)での当月原価発生額として集計表に表示する。
【0095】
また、原価移動表示部102fは、図19に示すように、前記集計結果を、PJ仕掛品(営業側)での当月末残高として集計表に表示する。当該表示により、仕掛原価の残高が「プロジェクト管理側(営業側)」に存在している(まだ社内に残っている)ことを認識することが可能となる。
【0096】
なお、図19の集計表に※1で示すように、当月原価発生額の集計額は、PJ振替額はカウントせず、製番の範囲内の純粋な発生額をカウントしている。また、図19の集計表に※2で示すように、当月末残高の集計額は、以下の(3)で説明する売上原価振替が済むまでは、仕掛残高として確認し続けることができるようにする。
【0097】
このように、製造仕掛(工場側)からプロジェクト仕掛(営業側)へ原価が振り替わることは、製造仕掛目線では原価の「払出」を意味しており、プロジェクト仕掛目線では原価の「受入」を意味している。しかしながら、このような振替は、飽くまで、社内で原価の所在が移動したに過ぎず、新しい費用が発生したわけではない。このため、図19の集計表に※1で示すように、当月原価発生額の集計額は、社内での振替金額を除外しており、これにより、純粋な原価発生のみを捉えることが可能となる。
【0098】
(3)売上原価振替
原価移動表示部102fは、原価金額が前記収支管理側(営業側)において売上原価へと振替されたタイミングで、プロジェクト原価振替データ106k中の前記収支管理側(営業側)において売上原価へと振替された前記原価金額を表示する。以下、具体的な処理を説明する。
【0099】
図22には、前記製造側(工場側)から前記収支管理側(営業側)への原価金額の振替により更新された製番原価元帳データ106gおよび製番仕掛原価データ106h(図9参照)のうち製番SZ0001に関する部分と、製番原価振替データ106jと、プロジェクト原価振替データ106k(図12参照)のうち製番SZ0001に関する部分と、を示している。原価移動表示部102fは、
(A)まず、図22の製番原価元帳データ106gにおいて、「発生元データ」が「製番原価振替データ」であるレコードの発生元伝票番号「GH0001-001、GH0001-002、GH0001-003」を取得し、
(B)次に、図22の製番原価振替データ106jから、(A)で取得した発生元伝票番号「GH0001-001、GH0001-002、GH0001-003」と紐付くプロジェクト原価振替NO「PH0001-001、PH0001-002、PH0001-003」を取得し、
(C)次に、図22のプロジェクト原価振替データ106kから、(B)で取得したプロジェクト原価振替NO「PH0001-001、PH0001-002、PH0001-003」と紐付き、かつ、完成振替済フラグにチェックが入っている(=原価金額が営業側において売上原価へ振替済である)図22に太枠Fで囲んで示す原価金額(400,000円、200,000円、80,000円)を取得し、
(D)最終的に、図21に太枠Eで囲んで示すように、(C)で取得した原価金額を製番別かつ経費別に集計した集計結果(材料費:400,000円、労務費:200,000円、経費:80,000円)を、PJ仕掛品(営業側)での売上原価振替済額として集計表に表示する。
【0100】
また、原価移動表示部102fは、原価金額の売上原価への振替が済むと、図21に示すように、社内合算(集計)での当月末残高として0円を集計表に表示する。当該表示により、仕掛原価が売上原価として出ていき、社内には残っていないことを認識することが可能となる。
【0101】
[4.本実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る原価振替装置100によれば、[3-1]で説明したように、製番原価元帳データ106gを起点としてプロジェクト原価振替データ106kを生成することで、製造側(工場側)で製番単位で管理する原価を収支管理側(営業側)でプロジェクト単位で管理する原価へと振り替えることができる。また、[3-2]で説明したように、生成したプロジェクト原価振替データ106kに基づいて、仕訳を生成することができる。そして、[3-3]で説明したように、製番原価元帳データ106gやプロジェクト原価振替データ106kを用いて、集計表に原価金額を表示することで、原価金額の社内での移動を(工場側からでも)捉えることが可能となる。
【0102】
[5.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0103】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0105】
[6.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0106】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0107】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0108】
また、原価振替装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0109】
例えば、原価振替装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて原価振替装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0110】
また、このコンピュータプログラムは、原価振替装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0111】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0112】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0113】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0114】
また、原価振替装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、原価振替装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0115】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、あらゆる業界および業種において有用であるが、特に、請負契約型の取引をする製造業や工事業等においては極めて有用である。
【符号の説明】
【0117】
100 原価振替装置
102 制御部
102a 原価元帳生成部
102b 製番等取得部
102c プロジェクト生成部
102d 進捗率算出部
102e 仕訳生成部
102f 原価移動表示部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a プロジェクト基本情報データ
106b 受注データ
106c 製番データ
106d 製番手配データ
106e 製番進捗データ
106f 経費計上データ
106g 製番原価元帳データ
106h 製番仕掛原価データ
106i 変換マスタ
106j 製番原価振替データ
106k プロジェクト原価振替データ
106m プロジェクト進捗データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22