(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240731BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240731BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/34 B
(21)【出願番号】P 2021000702
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】福見 渉
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/150376(JP,A1)
【文献】特開2020-156238(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098083(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0183436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続され、当該電力系統との接続点における電力である接続点電力の電力制御を行う電力システムであって、
前記接続点電力の値を検出する検出装置と、
前記接続点電力の値を設定された調整目標値にするための誘導指令値を導出する処理装置と、
各々が、蓄電池が接続され、当該蓄電池の充放電を制御する複数の充放電制御装置と、
を備えており、
前記複数の充放電制御装置の各々は、前記処理装置との通信により前記誘導指令値を受信する通信部、前記通信部が受信した前記誘導指令値を用いた最適化問題に基づき出力目標値を算出する算出部、前記算出部が算出した前記出力目標値に基づいて前記接続点への出力電力を制御することで前記蓄電池の充放電を行う出力制御部、および、接続された前記蓄電池の充電率を取得する取得部を含んでおり、強制充電条件を満たすと前記蓄電池を所定充電量で充電し、
前記強制充電条件は、前記充電率が残量閾値以下であり、かつ、前記出力目標値が、前記所定充電量以上で前記蓄電池を充電させる値でないときに満たされる、
ことを特徴とする電力システム。
【請求項2】
前記最適化問題は、評価関数を含み、
前記算出部は、前記評価関数から導出される演算式により前記出力目標値を求める演算部と、前記出力目標値を補正する補正部とを含み、
前記補正部は、前記強制充電条件を満たす場合に、前記出力目標値を強制充電出力値に補正し、
前記強制充電出力値は、前記所定充電量で前記蓄電池を充電させる値である、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記最適化問題は、さらに1以上の制約条件を含み、
前記補正部は、前記1以上の制約条件によって前記出力目標値を補正しており、当該1以上の制約条件に前記蓄電池の充電がされないように前記出力目標値を制約する条件が含まれる場合、当該制約条件に基づく補正後に、前記強制充電条件を満たすか否かを判断する、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記出力目標値が、前記蓄電池を充電させる値であり、かつ、前記蓄電池の充電限度値よりも充電量を大きくさせるとき、前記出力目標値を前記充電限度値に補正し、前記出力目標値が、前記蓄電池を放電させる値であり、かつ、前記蓄電池の放電限度値よりも放電量を大きくさせるとき、前記出力目標値を前記放電限度値に補正し、
前記充電限度値は、前記蓄電池に入力可能な電力の最大値であり、
前記放電限度値は、前記蓄電池から出力可能な電力の最大値である、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記複数の充放電制御装置の各々は、前記出力制御部と前記接続点との間に接続された開閉器をさらに備えており、
前記複数の充放電制御装置の各々は、前記出力目標値の絶対値が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合、前記開閉器を開放しつつ、前記出力制御部による前記蓄電池の充放電を休止する、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力装置を管理して、電力系統との間での送受電の制御を行う電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1および特許文献2には、複数の電力装置と処理装置(集中管理装置)とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、所定の調整対象電力を目標電力に制御するための指標(誘導指令値)を算出する。各電力装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148627号公報
【文献】特開2018-170901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力システムにおいて、複数の電力装置は、例えば蓄電装置を含む。蓄電装置は、蓄電池が接続され、蓄電池の充放電を行う。蓄電装置は、接続された蓄電池を電源としているので、放電を行っていないときでも、蓄電池の充電量を減少させる。したがって、充放電していない場合や充電していても充電量が少ししかない場合、蓄電池の充電量が減少することがある。蓄電池の充電量が減少すると、蓄電装置の動作用の電力が不足し、蓄電装置が停止する可能性がある。そのため、蓄電装置を備える電力システムにおいて、蓄電池の充電率の的確な管理が求められる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、蓄電池の充電率を管理して、蓄電池の充電量不足による蓄電装置の停止を抑制できる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される電力システムは、電力系統に接続され、当該電力系統との接続点における電力である接続点電力の電力制御を行う電力システムであって、前記接続点電力の値を検出する検出装置と、前記接続点電力の値を設定された調整目標値にするための誘導指令値を導出する処理装置と、各々が、蓄電池が接続され、当該蓄電池の充放電を制御する複数の充放電制御装置と、を備えており、前記複数の充放電制御装置の各々は、前記処理装置との通信により前記誘導指令値を受信する通信部、前記通信部が受信した前記誘導指令値を用いた最適化問題に基づき出力目標値を算出する算出部、前記算出部が算出した前記出力目標値に基づいて前記接続点への出力電力を制御することで前記蓄電池の充放電を行う出力制御部、および、接続された前記蓄電池の充電率を取得する取得部を含んでおり、強制充電条件を満たすと前記蓄電池を所定充電量で充電し、前記強制充電条件は、前記充電率が残量閾値以下であり、かつ、前記出力目標値が、前記所定充電量以上で前記蓄電池を充電させる値でないときに満たされることを特徴とする。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記最適化問題は、評価関数を含み、前記算出部は、前記評価関数から導出される演算式により前記出力目標値を求める演算部と、前記出力目標値を補正する補正部とを含み、前記補正部は、前記強制充電条件を満たす場合に、前記出力目標値を強制充電出力値に補正し、前記強制充電出力値は、前記所定充電量で前記蓄電池を充電させる値である。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記最適化問題は、さらに1以上の制約条件を含み、前記補正部は、前記1以上の制約条件によって前記出力目標値を補正しており、当該1以上の制約条件に前記蓄電池の充電がされないように前記出力目標値を制約する条件が含まれる場合、当該制約条件に基づく補正後に、前記強制充電条件を満たすか否かを判断する。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記算出部は、前記出力目標値が、前記蓄電池を充電させる値であり、かつ、前記蓄電池の充電限度値よりも充電量を大きくさせるとき、前記出力目標値を前記充電限度値に補正し、前記出力目標値が、前記蓄電池を放電させる値であり、かつ、前記蓄電池の放電限度値よりも放電量を大きくさせるとき、前記出力目標値を前記放電限度値に補正し、前記充電限度値は、前記蓄電池に入力可能な電力の最大値であり、前記放電限度値は、前記蓄電池から出力可能な電力の最大値である。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の充放電制御装置の各々は、前記出力制御部と前記接続点との間に接続された開閉器をさらに備えており、前記複数の充放電制御装置の各々は、前記出力目標値の絶対値が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合、前記開閉器を開放しつつ、前記出力制御部による前記蓄電池の充放電を休止する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電力システムによれば、前記強制充電条件を満たす場合、前記蓄電池を前記所定充電量で充電するので、蓄電池の充電率が残量閾値以下となり、蓄電池の充電率が不足している状況において、蓄電池への充電量が足りないと、蓄電池が強制的に充電される。したがって、電力システムは、蓄電池の充電率を管理して、蓄電池の充電量不足による蓄電装置の停止を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の電力システムを示す全体構成例を示す図である。
【
図2】充放電制御装置の詳細な構成例を示す図である。
【
図3】強制充電処理による補正のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】充電率に応じた最大充放電量制約による補正範囲を示す図である。
【
図5】充放電制御装置が行う電力制御を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下の説明において、同一または類似の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本開示の電力システムS1の全体構成例を示している。
図1において、太線は電力ネットワークを示し、破線は通信ネットワークを示している。本開示にかかる電力システムS1は、
図1に示すように、電力線90、処理装置A1、複数の電力制御装置B1および検出装置C1を備える。複数の電力制御装置B1は、蓄電池19が接続された充放電制御装置10を含む。
図1に示す例では、複数の電力制御装置B1はすべて、充放電制御装置10であるが、これに限定されず、複数の充放電制御装置10の他に、太陽電池が接続されたPV(Photovoltaics)制御装置、電気自動車が接続されたEV(Electric Vehicle)用の充放電制御装置、発電機が接続された発電機制御装置などを含んでいてもよい。
【0015】
電力システムS1は、接続点Kに接続され、電力系統Dに連系されている。電力システムS1は、電力系統Dに送電可能(逆潮流可能)であり、かつ、電力系統Dから受電可能である。本開示において、電力システムS1から電力系統Dに電力が出力されているとき、すなわち、逆潮流しているとき、接続点電力が正の値となるものとする。一方、電力系統Dから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kにおける電力のことである。
【0016】
電力システムS1は、処理装置A1と複数の電力制御装置B1とが協調して、接続点電力が目標電力となるように電力制御を行う。目標電力とは、接続点電力の目標値(調整目標値)のことである。電力システムS1の電力制御において、処理装置A1は、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための指標を算出する。本開示では、この指標を「誘導指令値」という。各電力制御装置B1は、処理装置A1が算出した誘導指令値に基づいて、制御対象(蓄電池19)の出力目標値を算出する。そして、各電力制御装置B1は、算出した出力目標値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。このように、電力システムS1は、複数の電力制御装置B1が分散的に出力電力の制御を行うことで、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御している。誘導指令値は、各電力制御装置B1が出力目標値を算出するためのものでもある。
【0017】
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものである。電力負荷Lは、電力系統Dや各電力制御装置B1から電力が供給される。電力負荷Lは、一般負荷と重要負荷とを含む。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。重要負荷は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明や空調機器などが含まれる。
【0018】
電力線90は、電力系統Dと、電力負荷Lと、複数の電力制御装置B1とに適宜接続されている。電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築する。
【0019】
検出装置C1は、接続点電力を検出する。検出装置C1は、検出部81および通信部82を含む。検出部81は、接続点Kと電力系統Dとの間に設置され、接続点電力を検出する。検出部81は、例えば電力トランスデューサである。検出部81は、通信部82と通信可能であり、接続点電力の検出値を通信部82に出力する。通信部82は、検出部81から入力される接続点電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換するAD変換器であり、変換後の接続点電力の検出値(デジタル値)を、処理装置A1に送信する。検出装置C1には、適宜、電力システムS1を電力系統Dに連系するための各種保護装置(例えば逆電流継電器や地絡継電器、逆電力継電器など)がさらに設置される。
【0020】
処理装置A1は、複数の電力制御装置B1および検出装置C1のそれぞれと通信可能である。処理装置A1は、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための誘導指令値を算出する。接続点電力は、検出装置C1が検出した検出値を用いてもよいし、各電力制御装置B1から通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。なお、処理装置A1に設定される制御モードに応じて接続点電力として、検出値あるいは推算値のいずれかが用いられる。制御モードは、電力システムS1のシステム機能を決定する設定である。電力システムS1における制御モードには、例えば、特許文献2に記載の制御モードと同様に、出力抑制モード、スケジュールモード、ピークカットモードおよび逆潮流回避モードなどを含む。制御モードは、上記したものに限定されない。また、目標電力(調整目標値)は、制御モードに応じて適宜予め設定されている。例えば、目標電力は、制御モードに応じて、予め処理装置A1に設定された値やユーザ操作により設定された値、上位装置(例えば電力会社など)から指示された値などが設定されうる。処理装置A1は、算出した誘導指令値を、複数の電力制御装置B1(複数の充放電制御装置10)のそれぞれに送信する。処理装置A1は、例えば、下記(1)式および下記(2)式に示す状態方程式(連立微分方程式)が設定されており、この状態方程式を解くことで、誘導指令値pr(t)を算出する。処理装置A1は、誘導指令値の算出を所定時間(例えば1[sec])毎に行う。下記(1)式および下記(2)式において、P(t)は接続点電力、P
C(t)は目標電力、λ(t)は状態変数、pr(t)は誘導指令値、εは勾配係数である。
【数1】
【0021】
複数の電力制御装置B1はそれぞれ、接続点Kに電気的に接続される。複数の電力制御装置B1はそれぞれ、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、自装置の出力電力を制御する。複数の電力制御装置B1は、上述の通り、複数の充放電制御装置10を含む。
【0022】
複数の充放電制御装置10はそれぞれ、蓄電池19が接続されている。
図1では、複数の充放電制御装置10のそれぞれに、1つの蓄電池19が接続されているが、複数の蓄電池19が接続されていてもよい。蓄電池19は、例えば二次電池あるいはコンデンサである。各充放電制御装置10は、
図2に示すように、蓄電池パワーコンディショナ11、中継装置12および開閉器13を含んでいる。
図2は、各充放電制御装置10の詳細な構成例を示している。
図2において、太線は電力ネットワークを示し、破線は通信ネットワークを示している。本開示では、パワーコンディショナを「PCS」と記載する。蓄電池PCS11と中継装置12とは、双方向通信を行う。蓄電池PCS11と中継装置12とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。例えば蓄電池PCS11に中継装置12の各構成要素を設けてもよい。
【0023】
蓄電池PCS11は、接続される蓄電池19の充放電を行う。
図1および
図2に示すように、蓄電池PCS11は、蓄電池19が接続されている。また、蓄電池PCS11は、電力線90によって開閉器13を介して接続点Kに接続されている。蓄電池PCS11は、接続点Kから入力される電力を蓄電池19に供給することで、蓄電池19を充電する。また、蓄電池PCS11は、蓄電池19に蓄積された電力を接続点Kに出力することで、蓄電池19を放電させる。蓄電池PCS11は、中継装置12から受信する出力目標値に基づいて、蓄電池19の充電量および放電量を制御する。これにより、制御対象(蓄電池19)の出力電力を制御する。本開示では、蓄電池PCS11は、受信した出力目標値が正の値のとき、蓄電池19を放電させ、受信した出力目標値が負の値のとき、蓄電池19を充電する。
【0024】
蓄電池PCS11は、通信部111および出力制御部112を含む。通信部111は、中継装置12との通信を行う。通信部111は、中継装置12から送信された出力目標値を受信する。通信部111は、受信した出力目標値を出力制御部112に出力する。出力制御部112は、通信部111から出力目標値が入力され、出力電力を出力目標値に制御する。出力制御部112は、インバータ回路112a、検出回路112bおよび制御回路112cを含む。インバータ回路112aは、交流から直流および直流から交流の双方向に電力を変換する。検出回路112bは、インバータ回路112aの出力電力を検出する。検出回路112bは、検出した出力電力の値を、制御回路112cに出力し、また、通信部111を介して中継装置12に送信する。制御回路112cは、検出回路112bが検出した出力電力に基づいて、出力電力を出力目標値にするための制御信号(例えばPWM信号)を生成し、生成した制御信号をインバータ回路112aに入力する。これにより、出力制御部112は、出力電力が出力目標値となるように制御している。なお、各出力制御部112の構成は、上記したものに限定されない。
【0025】
開閉器13は、例えば蓄電池PCS11と接続点Kとの間に配置される。開閉器13が閉状態のとき、蓄電池PCS11が電力系統Dに連系し、開閉器13が開状態のとき、蓄電池PCS11が電力系統Dから切り離される。開閉器13は、例えば電磁接触器で構成されるが、これに限定されない。
【0026】
中継装置12は、処理装置A1および蓄電池PCS11と通信する。中継装置12は、取得部121、通信部122、算出部123および休止制御部126を含む。
【0027】
取得部121は、蓄電池19の状態を取得する。取得部121は、蓄電池19の充電率(SoC:States Of Charge)を取得し、これを算出部123に出力する。また、取得部121は、蓄電池19の放電限度値(後述)および充電限度値(後述)を取得し、これらを算出部123に出力する。電力システムS1では、充電率を蓄電池19から直接取得するのではなく、蓄電池PCS11を介して取得してもよい。また、放電限度値および充電限度値を、蓄電池19から直接取得するのではなく、蓄電池PCS11を介して取得してもよいし、処理装置A1から受信してもよい。
【0028】
通信部122は、処理装置A1および蓄電池PCS11とそれぞれ通信を行う。通信部122は、処理装置A1との通信において、例えば誘導指令値を受信し、蓄電池PCS11の出力電力を送信する。また、通信部122は、蓄電池PCS11との通信において、例えば蓄電池PCS11の出力電力の値を受信し、蓄電池PCS11の出力目標値を送信する。
【0029】
算出部123は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力目標値を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含む。本実施形態では、算出部123は、評価関数から導出される所定の演算式での演算を行い、その演算結果を制約条件によって補正することで、出力目標値を算出する。これとは異なり、算出部123は、制約条件の下で評価関数を解くことで出力目標値を算出してもよい。当該評価関数は、例えば特許文献1に記載されたものと同等である。算出部123は、算出した出力目標値を通信部122に出力し、通信部122を介して蓄電池PCS11に送信する。算出部123は、演算部124および補正部125を含む。
【0030】
演算部124は、上記評価関数から導出される下記(3)式および下記(4)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって、出力目標値の演算値を求める。下記(3)式および下記(4)式において、P
refは蓄電池PCS11の出力目標値、prは誘導指令値、pr
lmtは誘導指令値限界、a
1~a
4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界pr
lmtは、電力システムS1で用いる誘導指令値prの最大値および最小値を定義する値である。下記(4)式で算出される値Λは、誘導指令値prの最小値(-pr
lmt)と誘導指令値prの最大値(pr
lmt)との間の値に制限される。設計パラメータa
1は、主に誘導指令値prの変化に応じた出力電力の変化量を調整するパラメータである。設計パラメータa
2は、主に誘導指令値prが0付近での出力電力を調整するパラメータである。設計パラメータa
3は、主に出力電力が変化し始める誘導指令値prを調整するパラメータである。設計パラメータa
4は、接続される蓄電池19の充電率(SoC)に応じたパラメータである。設計パラメータa
4には、下記(5)式の演算値が設定される。下記(5)式において、ω
SoCは、下記(6)式で算出され、ω
SoC_
tmpは、下記(7)式あるいは下記(8)式のうちいずれか小さい方が用いられる。下記(6)式ないし下記(8)式において、A
SoCは重みw
SoCのオフセット、K
SoCは重みw
SoCのゲイン、s
swは重みw
SoCのオン/オフスイッチ(例えば、オンのとき1,オフのとき0)、SoC
pは蓄電池19の現在の充電率、SoC
dは基準となる充電率をそれぞれ示している。これらの各設計パラメータa
1~a
4は、中継装置12にそれぞれ設定されている。
【数2】
【0031】
補正部125は、強制充電処理による補正および上記制約条件による補正によって、出力目標値を補正する。上記制約条件により補正には、Cレート制約による補正、充電率に応じた最大充放電量制約による補正、蓄電池19の定格出力制約による補正、および、蓄電池PCS11の定格出力制約による補正などがある。
【0032】
強制充電処理による補正では、補正部125は、強制充電条件を満たす場合、出力目標値を、強制充電出力値に補正する。強制充電出力値は、所定充電量(以下「強制充電量と」いう)で蓄電池19を充電させる値である。これにより、充放電制御装置10は、強制充電条件を満たす場合、強制充電量で蓄電池19を充電させる。なお、強制充電出力値は、本実施形態のように出力目標値が負の値のときに蓄電池19を充電させる例では負の値であるが、出力目標値が正の値のときに蓄電池19を充電させる例では正の値である。そして、強制充電条件は、例えば取得部121が取得した蓄電池19の充電率が残量閾値以下であり、かつ、出力目標値が強制充電量以上で蓄電池19を充電させる値でないとき(つまり、出力目標値が強制充電量未満で蓄電池19を充電させる値であるか、出力目標値が蓄電池19を放電させる値であるか、出力目標値が蓄電池19を充電も放電もさせない値であるとき)に満たされる。本実施形態では、出力目標値が負の値のときに蓄電池19が充電され、正の値のときに蓄電池19が放電されるので、補正部125は、出力目標値が強制充電出力値よりも大きいときに、出力目標値が強制充電量以上で蓄電池19を充電させる値でないと判断する。一方、補正部125は、出力目標値が強制充電出力値以下であるとき、出力目標値が強制充電量以上で蓄電池19を充電させる値であると判断する。なお、出力目標値が正の値のときに蓄電池19が充電され、負の値のときに蓄電池19が放電される場合には、補正部125は、出力目標値が強制充電出力値よりも小さいときに、出力目標値が強制充電量以上で蓄電池19を充電させる値でないと判断する。強制充電処理は、蓄電池19の充電率が復帰閾値(復帰閾値は残量閾値よりも大きい値である)となるか、あるいは、出力目標値が強制充電量以上で蓄電池19を充電させる値であるとき(本実施形態では、出力目標値が強制充電出力値以下であるとき)のいずれかを満たすまで行われる。
図3は、強制充電処理のシミュレーション結果を示している。
図3(a)は、蓄電池19の充電率の時間変化を示し、充電率を縦軸に、時間を横軸にとっている。
図3(b)は、蓄電池PCS11の出力電力の変化を示し、出力電力を縦軸に、時間を横軸に取っている。当該シミュレーションでは、残量閾値を10%、強制充電出力値を-25kW、復帰閾値を30%としている。また、強制充電処理による補正以外の補正は考慮していない。
図3に示すように、時刻T0から時刻T1までは、少なくとも充電率が残量閾値(10%)よりも大きいため、強制充電処理は実行されず、誘導指令値から算出される出力目標値によって出力電力が制御される。なお、このとき、
図3(b)から理解されるように、出力電力が正の値であることから、出力目標値は蓄電池19を放電させる値(正の値)である。その後、時刻T1で充電率が残量閾値(10%)以下となる。このとき、出力電力は正の値であり、出力目標値が蓄電池19を放電させる値(つまり強制充電出力値よりも大きい値)であるため、出力目標値が強制充電出力値に補正される。これにより、
図3(b)に示すように、出力電力が-25kWで制御される(つまり25kWで充電が行われる)。その後、
図3(a)に示すように、時刻T2で充電率が復帰閾値(例えば30%)以上となると、強制充電処理による補正(出力目標値を強制充電出力値にする補正)が解除され、誘導指令値から求められた出力目標値による出力電力の制御が再開される。
【0033】
Cレート制約による補正では、補正部125は、出力目標値が、充電時のCレート(充電Cレート)および放電時のCレート(放電Cレート)に基づく下記(9)式を満たすように補正する。下記(9)式において、WHS
lmtは蓄電池19の定格容量であり、Crate
Pは充電Cレート、Crate
Mは放電Cレートである。充電Cレートおよび放電Cレートは、例えば処理装置A1から送信されており、通信部122により受信される。充電Cレートおよび放電Cレートは、処理装置A1から送信されるのではなく、各中継装置12に設定されていてもよい。例えば、蓄電池19の定格容量が250kWhであり、充電Cレートが0.5C、放電Cレートが0.7Cである場合、出力目標値は-125kW以上175kW以下に制限される。
-Crate
P×WHS
lmt≦Pref≦Crate
M×WHS
lmt ・・・(9)
【0034】
蓄電池19の充電率に応じた最大充放電量制約による補正では、補正部125は、出力目標値が蓄電池19の充電率の上限設定値および下限設定値に基づく下記(10)式を満たすように、出力目標値を補正する。下記(10)式において、α
k,β
kは、蓄電池19の残量によって調整できる調整パラメータである。例えば、蓄電池19の充電率が上限設定値(例えば90%)以上のとき、蓄電池PCS11の定格出力(出力限界)をP
lmtとすると、α
kを0(ゼロ)、β
kをP
lmtと設定することで、下記(10)式により出力目標値が正の値に制限される。つまり、蓄電池19の放電のみを行うように出力目標値が補正される。また、蓄電池19の充電率が上限設定値(例えば10%)以下のとき、α
kを-P
lmt、β
kを0(ゼロ)と設定することで、下記(10)式により出力目標値が負の値に制限される。つまり、蓄電池19の充電のみを行うように出力目標値が補正される。さらに、蓄電池19の充電率がこれらの間(10%より大きく90%未満)であるとき、α
kを-P
lmt、β
kをP
lmtと設定することで、蓄電池PCS11の定格出力の範囲内に制限される。さらに、電力システムS1では、下記(10)式による制限に加え、上限設定値に対する上限側制限開始点および下限設定値に対する下限側制限開始点を設けておき、上限設定値と上限側制限開始点との間、および、下限設定値と下限側制限開始点との間において、充放電量の制限を徐々に変化させている。
図4は、上限側制限開始点および下限側制限開始点による充放電量の制限を説明するための図であり、本実施形態にかかる充電率に応じた最大充放電量制約によって制限される出力電力の範囲(ドット描画の範囲)を示している。
図4においては、出力電力を縦軸に、充電率を横軸にとっている。
図4に示す例では、上限側制限開始点を上限設定値(90%)の-10pt(ポイント)つまり80%として、蓄電池19の充電率が上限側制限開始点(80%)から上限設定値(90%)に向かうほど、最大充電量が徐々に小さくなるように制限される。一方、下限側制限開始点を下限設定値(10%)の+10pt(ポイント)つまり20%として、蓄電池19の充電率が下側制限開始点(20%)から下限設定値(10%)に向かうほど、最大放電量が徐々に小さくなるように制限される。
図4に示す例では、充放電量の変化が線形的であるが、段階的であってもよい。なお、蓄電池19の充電率に応じた最大充放電量制約において、上限側制限開始点および下限側制限開始点による充放電量の制限はなくてもよい。
α
k≦P
ref≦β
k ・・・(10)
【0035】
蓄電池19の出力制約による補正では、補正部125は、出力目標値が蓄電池19の充電限度値および放電限度値に基づく下記(11)式を満たすように、出力目標値を補正する。下記(11)式において、PCmaxは充電限度値であり、PDmaxは放電限度値である。充電限度値とは、蓄電池19に入力可能な電力の最大値(つまり、蓄電池19の充電電力の最大値)であり、放電限度値とは、蓄電池19から出力可能な電力の最大値(つまり、蓄電池19の放電電力の最大値)である。充電限度値および放電限度値は、例えば取得部121によって蓄電池19から取得される。なお、蓄電池19の出力制約による補正は、蓄電池PCS11の充電時の変換効率および放電時の変換効率を考慮して、下記(12)式を満たすように、出力目標値を補正してもよい。下記(12)式において、ηCは充電効率係数であり、ηDは放電効率係数である。また、蓄電池19の出力制約による補正は、充電限度値および放電限度値の代わりに(または追加して)、充電時の蓄電池19への最大電流値または放電時の蓄電池19からの最大電流値を考慮してもよい。さらに、蓄電池19の温度を考慮してもよい。例えば、蓄電池19の温度が低いときは充電限度値をより小さくしてもよい。
-PCmax≦Pref≦PDmax ・・・(11)
-PCmax/ηC≦Pref≦ηD×PDmax ・・・(12)
【0036】
蓄電池PCS11の定格出力制約による補正では、補正部125は、出力目標値が蓄電池PCS11の定格皮相電力に基づく下記(13)式を満たすように、出力目標値を補正する。下記(13)式において、Qrefは、蓄電池PCS11の無効電力の出力目標値、Sdは蓄電池PCS11の出力可能な最大の皮相電力である。蓄電池PCS11の定格出力制約による補正において、蓄電池PCS11の定格皮相電力ではなく、蓄電池PCS11の定格出力電流に基づいて、出力目標値を補正してもよい。この場合、補正部125は、出力目標値が下記(14)式を満たすように出力目標値を補正する。下記(14)式において、V0は設計時における接続点Kの基準電圧、Vは蓄電池PCS11の接続点Kへの出力電圧である。なお、下記(13)式および下記(14)式のそれぞれにおいて、無効電力を考慮しているが、無効電力を考慮しなくてもよい。
Pref^2+Qref^2≦Sd^2 ・・・(13)
Pref^2+Qref^2≦(Sd×(V/V0))^2 ・・・(14)
【0037】
算出部123は、補正部125により演算部124の演算値が補正された場合、補正後の値を出力目標値として算出する。一方、補正部125により演算値が補正されなかった場合、上記演算値を出力目標値として算出する。算出部123は、算出した出力目標値を通信部122に出力し、通信部122を介して蓄電池PCS11に送信する。
【0038】
休止制御部126は、運転休止条件を満たすか否かを判断し、当該運転休止条件を満たす場合、運転休止処理を行う。運転休止条件は、算出部123によって算出された出力目標値の絶対値が所定値(例えば各蓄電池PCS11の定格出力の±2~3%程度)以下の状態が所定時間(例えば5分から1時間程度)以上継続した時に満たされる。運転休止処理では、休止制御部126は、開閉器13を開放して、蓄電池PCS11を電力系統Dから切り離し、かつ、出力制御部112(蓄電池PCS11)の出力電力を0(ゼロ)にし、出力制御部112(蓄電池PCS11)による蓄電池19の充放電を休止する。休止制御部126は、出力目標値の絶対値が所定値よりも大きくなった場合、開閉器13を閉状態にして蓄電池PCS11を電力系統Dに連系させ、かつ、出力制御部112(蓄電池PCS11)に出力目標値による出力電力の制御を再開させて、蓄電池19の充放電を再開させる。
【0039】
次に、電力システムS1において、各充放電制御装置10が行う電力制御を、
図5を参照して説明する。
図5は、各充放電制御装置10が行う電力制御を示すフロー図である。当該電力制御は、
図5に示すように、各充放電制御装置10が処理装置A1から誘導指令値を受信すると開始され、処理装置A1から誘導指令値を受信する度に実行される。
【0040】
各充放電制御装置10において、中継装置12の通信部122が、処理装置A1から誘導指令値を受信すると、算出部123の演算部124は、受信した誘導指令値を用いて出力目標値の演算値を求める(ステップS101)。演算部124は、上記(3)式および上記(4)式の演算を行うことで、出力目標値の演算値を求める。
【0041】
次いで、補正部125は、強制充電処理による出力目標値の補正を行う(ステップS102)。これにより、強制充電条件を満たす場合、出力目標値(
図5に示す例では演算部124が演算した演算値)が強制充電出力値に補正される。なお、強制充電条件を満たさない場合、強制充電出力値への補正は行われない。
【0042】
次いで、補正部125は、Cレート制約による出力目標値の補正を行う(ステップS103)。これにより、出力目標値(
図5に示す例ではステップS102までに算出された値)が、Cレート制約の範囲外のとき、当該制約の範囲内に補正される。具体的には、補正部125は、現段階での出力目標値が、上記(9)式で示す範囲の下限よりも小さい場合、出力目標値を当該下限に補正し、上記(9)式で示す範囲の上限よりも大きい場合、出力目標値を当該上限に補正する。なお、現段階での出力目標値が上記(9)式で示す範囲内の場合、出力目標値の補正は行われない。
【0043】
次いで、補正部125は、蓄電池19の充電率に応じた最大充放電量制約による出力目標値の補正を行う(ステップS104)。これにより、出力目標値(
図5に示す例ではステップS103までに算出された値)が、充電率に応じた最大充放電量制約の範囲外のとき、当該制約の範囲内に補正される。具体的には、補正部125は、現段階での出力目標値が、上記(10)式で示す範囲の下限よりも小さい場合、出力目標値を当該下限に補正し、上記(10)式で示す範囲の上限よりも大きい場合、出力目標値を当該上限に補正する。なお、現段階での出力目標値が上記(10)式で示す範囲内の場合、出力目標値の補正は行われない。
【0044】
次いで、補正部125は、ステップS103,S104にて出力目標値が蓄電池19を充電させない値に補正された場合に備え、強制充電処理による出力目標値の補正を再度行う(ステップS105)。ステップS105における強制充電処理は、ステップS102における強制充電処理と同様に行われる。ただし、ステップS105で対象とする出力目標値は、S101で求めた演算値ではなく、ステップS104までに適宜補正された値である。これにより、強制充電条件を満たす場合、出力目標値(
図5に示す例ではステップS104までに算出された値)が強制充電出力値に補正される。なお、強制充電条件を満たさない場合、強制充電出力値への補正は行われない。
【0045】
次いで、補正部125は、蓄電池19の出力制約による出力目標値の補正を行う(ステップS106)。これにより、出力目標値(
図5に示す例ではステップS105までに算出された値)が、蓄電池19の出力制約の範囲外のとき、当該制約の範囲内に補正される。具体的には、補正部125は、現段階の出力目標値が、上記(11)式で示す範囲の下限よりも小さい場合、出力目標値を当該下限に補正し、上記(11)式で示す範囲の上限よりも大きい場合、出力目標値を当該上限に補正する。なお、現段階での出力目標値が上記(11)式で示す範囲内の場合、出力目標値の補正は行われない。
【0046】
次いで、補正部125は、蓄電池PCS11の定格容量制約による出力目標値の補正を行う(ステップS107)。これにより、出力目標値(
図5に示す例ではステップS106までに算出された値)が、定格容量制約の範囲外のとき、当該制約の範囲内に補正される。具体的には、補正部125は、現段階の出力目標値が、上記(13)式で示す範囲の下限よりも小さい場合、出力目標値を当該下限に補正し、上記(13)式で示す範囲の上限よりも大きい場合、出力目標値を当該上限に補正する。なお、現段階での出力目標値が上記(13)式で示す範囲内の場合、出力目標値の補正は行われない。
【0047】
次いで、休止制御部126は、上記運転休止条件を満たすか否かを判断し(ステップS108)、運転休止条件を満たす場合(S108のYES)、上記運転休止処理を行う(ステップS109)。一方、運転休止条件を満たさない場合(S108のNO)、運転休止処理を行わない。ステップS108での運転休止条件の判断では、休止制御部126は、ステップS107までに適宜補正された出力目標値の絶対値が、所定値以下の状態が所定時間継続したか否かを判断する。
【0048】
最後に、算出部123は、ステップS107までに算出した出力目標値を、通信部122を介して、蓄電池PCS11に送信する。蓄電池PCS11は、通信部111を介して当該出力目標値を受信し、出力制御部112が出力目標値に基づいて出力電力を制御する(ステップS110)。以上の処理(S101~S110)が実行され、電力制御が終了する。
【0049】
本開示の電力システムS1の作用および効果は、次の通りである。
【0050】
電力システムS1では、各充放電制御装置10は、強制充電条件を満たす場合、つまり、蓄電池19の充電率が残量閾値以下であり、かつ、出力目標値が所定充電量(強制充電量)以上で蓄電池19を充電させる値でない場合、蓄電池19を所定充電量で充電する。この構成によると、蓄電池19の充電率が残量閾値以下となり、蓄電池19の充電率が不足している状況において、蓄電池19への充電量が足りないと、蓄電池19が強制的に所定充電量で充電される。これにより、電力システムS1は、充放電制御装置10の動作用の電力を蓄電池19に補充して、蓄電池19の充電率を確保することができる。例えば、蓄電池PCS11の制御電源が蓄電池19である構成においては、蓄電池19に蓄積された電力が、蓄電池PCS11の起動電力以下となることを抑制できるため、蓄電池PCS11が起動できない事態を抑制できる。したがって、電力システムS1は、蓄電池19の充電率を管理して、蓄電池19の充電量不足による蓄電池PCS11の停止を抑制できる。
【0051】
電力システムS1では、算出部123は、補正部125を含んでおり、補正部125は、強制充電条件を満たす場合に、出力目標値を強制充電出力値に補正する。強制充電出力値は、所定充電量(強制充電量)で蓄電池19を充電させる値である。この構成によると、強制充電条件を満たす場合に、出力目標値が補正部125によって強制充電出力値に補正される。これにより、出力制御部112は、当該強制充電出力値に補正された出力目標値によって出力電力を制御する。したがって、電力システムS1は、強制充電条件を満たす場合、強制充電量で蓄電池19を充電できる。
【0052】
電力システムS1では、各充放電制御装置10が行う電力制御において、最適化問題に含まれる複数の制約条件に、蓄電池19の充電がされないように出力目標値を制約することが可能な条件が含まれている。例えば、補正部125は、Cレート制約による補正において、充電Cレートに0(ゼロ)Cが設定されていると、出力目標値が蓄電池19を充電させる値(負の値)にならない。この場合、蓄電池19の充電ができないため、蓄電池19の充電率を十分に確保できない可能性がある。そこで、電力システムS1では、Cレート制約による補正(
図5のステップS103)の後に、強制充電条件を満たすか否かを判断することで強制充電処理による補正(
図5のステップS105)を行う。これにより、蓄電池19を充電しない値に出力目標値が補正されても、強制充電条件を満たしていると、その後に強制充電出力値に補正される。したがって、電力システムS1では、蓄電池19の充電率を確保できる。
【0053】
電力システムS1では、各充放電制御装置10が行う電力制御において、蓄電池19の出力制約による補正(
図5のステップS106)を含む。この補正では、出力目標値が、蓄電池19を充電させる値(負の値)であり、かつ、蓄電池19の充電限度値よりも充電量を大きくさせる値のとき、出力目標値を充電限度値に補正する。一方、出力目標値が、蓄電池19を放電させる値(正の値)であり、かつ、蓄電池19の放電限度値よりも放電量を大きくさせる値のとき、出力目標値を放電限度値に補正する。この構成によれば、算出部123によって算出される出力目標値が、蓄電池19の充電限度値(蓄電池19に入力可能な電力の最大値)および蓄電池19の放電限度値(蓄電池19から出力可能な電力の最大値)を超えない。これにより、電力システムS1は、蓄電池19が無理な充放電を行うことが抑制されるため、蓄電池19の損壊や性能低下を抑制できる。
【0054】
電力システムS1では、各充放電制御装置10が行う電力制御において、運転休止条件を満たす場合、運転休止処理を行う(
図5のステップS109)。運転休止条件は、算出部123が算出した出力目標値の絶対値が所定値(正の値)以下である状態が所定時間以上継続した場合に満たされる。運転休止処理では、休止制御部126が開閉器13を開放しつつ、出力制御部112による蓄電池19の充放電を停止する。例えば、蓄電池PCS11の制御電源を蓄電池19としている場合、出力目標値が0kWでも、蓄電池PCS11の補機損失により蓄電池19の充電率が減少する。このような状況が継続すれば、蓄電池19の電力量が、蓄電池PCS11の動作電力以下となり、蓄電池PCS11が動作不能となる。そこで、電力システムS1では、出力目標値が所定値以下の状態が所定時間継続すると、蓄電池PCS11を電力系統Dから切り離しつつ、出力制御部112による蓄電池19の充放電を停止させることで、当該蓄電池PCS11の補機損失を抑制している。これにより、蓄電池19の過放電を抑制できるので、電力システムS1は、蓄電池19の充電率をできるだけ保持させて、蓄電池19を保全できる。
【0055】
上記実施形態では、電力システムS1は、各充放電制御装置10が行う電力制御において、強制充電処理による補正を2回(
図5のステップS102とステップS105)行う例を示したが、いずれか一方のみを行ってもよいし、当該補正をさらに追加して合計3回以上行ってもよい。
【0056】
上記実施形態では、算出部123が補正部125を含み、補正部125は、強制充電条件を満たすときに、出力目標値を強制充電出力値に補正する例を示したが、これに限定されず、次のように構成してもよい。それは、補正部125が、強制充電処理による補正を行わずに(他の制約に基づく補正は行って)、出力目標値を蓄電池PCS11に送信し、蓄電池PCS11が、強制充電処理による補正を行うようにしてもよい。あるいは、補正部125が、算出部123ではなく蓄電池PCS11に備えられており、算出部123が、演算部124による出力目標値の演算結果を蓄電池PCS11に送信し、蓄電池PCS11が、強制充電処理による補正を含むすべての補正を行うようにしてもよい。あるいは、蓄電池PCS11が、強制充電条件を満たす場合、中継装置12から受信する出力目標値を無視して、出力電力を強制充電出力値に制御してもよい。
【0057】
上記実施形態では、休止制御部126が中継装置12に設けられた例を示したが、これに限定されず、蓄電池PCS11に設けられていてもよいし、開閉器13に設けられていてもよい。
【0058】
本開示にかかる電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0059】
S1:電力システム、A1:処理装置、B1:電力制御装置、10:充放電制御装置、11:蓄電池パワーコンディショナ、112:出力制御部、12:中継装置、121:取得部、122:通信部、123:算出部、124:演算部、125:補正部、126:休止制御部、19:蓄電池、13:開閉器、C1:検出装置