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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】マルチ制御弁
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240731BHJP
   F15B 11/024 20060101ALI20240731BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F15B11/00 D
F15B11/024 B
F15B21/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021020556
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123324
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】東出 善之
(72)【発明者】
【氏名】村岡 英泰
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059568(US,A1)
【文献】特許第6450487(JP,B1)
【文献】特開平10-252704(JP,A)
【文献】特開2013-200023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00
F15B 11/024
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベルに用いられるマルチ制御弁であって、
アーム駆動用スプールと、
ブーム駆動用スプールと、
ブームサブスプールと、
前記アーム駆動用スプール、前記ブーム駆動用スプールおよび前記ブームサブスプールを摺動可能に保持するハウジングと、を備え、
前記ハウジングには、前記アーム駆動用スプールに開閉されるアーム用パラレル通路、アーム引き供給通路およびアーム押し供給通路と、前記ブーム駆動用スプールに開閉されるブーム用パラレル通路、ブーム上げ供給通路およびブーム下げ供給通路と、前記ブームサブスプールが挿入される摺動穴と、前記ブーム上げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るヘッド側通路と、前記ブーム下げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るロッド側通路と、前記摺動穴から前記アーム用パラレル通路に至る回生通路が設けられており、
前記ブームサブスプールは、
前記ヘッド側通路と前記ロッド側通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記ロッド側通路と連通させる再生位置との間で移動するブーム再生用スプールと、
前記ヘッド側通路と前記回生通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記回生通路と連通させる回生位置との間で移動するブーム回生用スプールのどちらかである、マルチ制御弁。
【請求項2】
前記ハウジングは、ポンプポートおよびタンクポートを有し、
前記ハウジングには、前記ポンプポートから前記摺動穴に至るポンプ通路と、前記タンクポートから前記摺動穴に至るタンク通路が設けられており、
前記アーム用パラレル通路および前記ブーム用パラレル通路は前記ポンプ通路から分岐しており、
前記摺動穴には、前記ポンプ通路と前記タンク通路の間の開口面積を調整するためのアンロードスプールが挿入されている、請求項1に記載のマルチ制御弁。
【請求項3】
前記ハウジングには、ブーム用タンク通路とアーム用タンク通路が設けられており、
前記ブーム駆動用スプールは、中立位置とブーム上げ位置とブーム下げ位置との間で移動し、前記ブーム上げ位置では前記ブーム用パラレル通路を前記ブーム上げ供給通路と連通させるとともに前記ブーム下げ供給通路を前記ブーム用タンク通路と連通させ、前記ブーム下げ位置では前記ブーム用パラレル通路を前記ブーム下げ供給通路と連通させるとともに前記ブーム上げ供給通路をブロックする、請求項1または2に記載のマルチ制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルに用いられるマルチ制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧ショベルには、複数のスプールを含むマルチ制御弁が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このマルチ制御弁は、油圧ポンプ、タンクおよび複数の油圧アクチュエータと接続され、それらと共に油圧回路を構成する。
【0003】
例えば、1つのポンプからブームシリンダおよびアームシリンダなどへ作動油を供給する油圧回路では、マルチ制御弁が、ブーム駆動用スプールおよびアーム駆動用スプールと、ブーム駆動用スプールおよびアーム駆動用スプールを摺動可能に保持するハウジングを含む。
【0004】
ブーム駆動用スプールは、ハウジングに設けられたブーム用パラレル通路、ブーム上げ供給通路およびブーム下げ供給通路を開閉する。つまり、ブーム駆動用スプールの移動によって、ハウジングに設けられたポンプ通路から分岐するブーム用パラレル通路が、ブーム上げ供給通路とブーム下げ供給通路のどちらかと連通される。
【0005】
アーム駆動用スプールは、ハウジングに設けられたアーム用パラレル通路、アーム引き供給通路およびアーム押し供給通路を開閉する。つまり、アーム駆動用スプールの移動によって、ハウジングに設けられたポンプ通路から分岐するアーム用パラレル通路が、アーム引き供給通路とアーム押し供給通路のどちらかと連通される。
【0006】
油圧ショベルの油圧回路は、ブーム下げ操作が行われたとき(すなわち、ブーム下げ時)に、ブーム上げ供給ラインに流れる作動油(つまり、ブームシリンダのヘッド側から排出された作動油)をブーム下げ供給ライン(つまり、ブームシリンダのロッド側)へ供給すること(いわゆるブーム再生)が可能となるように構成されることもある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、油圧ショベルの油圧回路は、ブーム下げ操作とアーム操作とが同時に行われたときに、ブームシリンダのヘッド側から排出された作動油をアームシリンダへ供給すること(いわゆるブーム回生)が可能となるように構成されることもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-78713号公報
【文献】特開2010-286074号公報
【文献】特開2018-105333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ブーム再生が可能な油圧回路に用いられるマルチ制御弁と、ブーム回生が可能な油圧回路に用いられるマルチ制御弁とは、全く異なるものであった。そのため、ブーム再生が可能な油圧回路をブーム回生が可能な油圧回路に変更する、またはそれとは逆にブーム回生が可能な油圧回路をブーム再生が可能な油圧回路に変更するには、マルチ制御弁そのものを交換する必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、マルチ制御弁そのもの、特にマルチ制御弁のハウジングを交換しなくても、ブーム再生が可能な油圧回路とブーム回生が可能な油圧回路の双方に対応可能なマルチ制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明のマルチ制御弁は、油圧ショベルに用いられるマルチ制御弁であって、アーム駆動用スプールと、ブーム駆動用スプールと、ブームサブスプールと、前記アーム駆動用スプール、前記ブーム駆動用スプールおよび前記ブームサブスプールを摺動可能に保持するハウジングと、を備え、前記ハウジングには、前記アーム駆動用スプールに開閉されるアーム用パラレル通路、アーム引き供給通路およびアーム押し供給通路と、前記ブーム駆動用スプールに開閉されるブーム用パラレル通路、ブーム上げ供給通路およびブーム下げ供給通路と、前記ブームサブスプールが挿入される摺動穴と、前記ブーム上げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るヘッド側通路と、前記ブーム下げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るロッド側通路と、前記摺動穴から前記アーム用パラレル通路に至る回生通路が設けられており、前記ブームサブスプールは、前記ヘッド側通路と前記ロッド側通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記ロッド側通路と連通させる再生位置との間で移動するブーム再生用スプールと、前記ヘッド側通路と前記回生通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記回生通路と連通させる回生位置との間で移動するブーム回生用スプールのどちらかである、ことを特徴とする。
【0012】
なお、「ブーム再生」とは、ブーム下げ操作時にブームシリンダのヘッド側から排出された作動油をブームシリンダのロッド側へ供給することをいい、「ブーム回生」とは、ブーム下げ操作とアーム操作とが同時に行われたときに、ブームシリンダのヘッド側から排出された作動油をアームシリンダへ供給することをいう。
【0013】
上記の構成によれば、摺動穴にブーム再生用スプールを挿入すればブーム再生が可能となり、摺動穴にブーム回生用スプールを挿入すればブーム回生が可能となる。従って、マルチ制御弁そのものを交換しなくても、ハウジングを交換することなくブームサブスプールを交換すれば、ブーム再生が可能な油圧回路とブーム回生が可能な油圧回路の双方に対応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マルチ制御弁そのものを交換しなくても、ブーム再生が可能な油圧回路とブーム回生が可能な油圧回路の双方に対応可能なマルチ制御弁が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るマルチ制御弁の概略構成図であり、ブーム再生用スプールを用いたときの油圧回路を示す。
図2】前記マルチ制御弁の概略構成図であり、ブーム回生用スプールを用いたときの油圧回路を示す。
図3】油圧ショベルの側面図である。
図4】ブーム再生用スプールを用いたときのマルチ制御弁の断面図である。
図5】ブーム回生用スプールを用いたときのマルチ制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係るマルチ制御弁1を示す。マルチ制御弁1は、図3に示す油圧ショベル10に用いられる。マルチ制御弁1は、油圧ポンプ17、タンク18および複数の油圧アクチュエータと接続され、これらと共に油圧回路を構成する。なお、図1は後述するブームサブスプール6として後述するブーム再生用スプール6Aを用いたときの油圧回路を示し、図2はブームサブスプール6として後述するブーム回生用スプール6Bを用いたときの油圧回路を示す。
【0017】
図3に示す油圧ショベル10は自走式であり、走行体11を含む。また、油圧ショベル10は、走行体11に旋回可能に支持された旋回体12と、旋回体12に対して俯仰するブームを含む。ブームの先端にはアームが揺動可能に連結されており、アームの先端にはバケットが揺動可能に連結されている。旋回体12には、運転席が設置されたキャビン16が設けられている。なお、油圧ショベル10は自走式でなくてもよい。
【0018】
油圧ショベル10は、油圧アクチュエータとして、ブームを俯仰させるブームシリンダ13と、アームを揺動させるアームシリンダ14と、バケットを揺動させるバケットシリンダ15を含む。また、図示は省略するが、油圧ショベル10は、油圧アクチュエータとして、走行体11の左クローラおよび右クローラをそれぞれ駆動する左走行モータおよび右走行モータと、旋回体12を旋回させる旋回モータも含む。
【0019】
なお、図1および図2では、図面の簡略化のために、ブームシリンダ13およびアームシリンダ14以外の油圧アクチュエータを省略する。また、以下では、ブーム及びアーム以外の部分を駆動するための構成についての説明を省略する。
【0020】
マルチ制御弁1は、ブーム駆動用スプール5およびアーム駆動用スプール4と、ブーム駆動用スプール5およびアーム駆動用スプール4を摺動可能に保持するハウジング2を含む。断面図は省略するが、ハウジング2には、ブーム駆動用スプール5が挿入される第1摺動穴21と、アーム駆動用スプール4が挿入される第2摺動穴22が設けられている。
【0021】
ハウジング2は、ポンプポート2aおよびタンクポート2bを有する。ポンプポート2aは配管により油圧ポンプ17と接続され、タンクポート2bは配管によりタンク18と接続される。
【0022】
さらに、ハウジング2は、一対のブーム用給排ポート2dおよび一対のアーム用給排ポート2cを有する。ブーム用給排ポート2dは配管によりブームシリンダ13と接続され、アーム用給排ポート2cは配管によりアームシリンダ14と接続される。
【0023】
本実施形態では、マルチ制御弁1がアンロードスプール7も含む。アンロードスプール7は、図4よび図5に示すように、ハウジング2に設けられた第3摺動穴23に挿入されている。つまり、アンロードスプール7は、ハウジング2に摺動可能に保持されている。
【0024】
図1および図2に示すように、ハウジング2には、ポンプポート2aから第3摺動穴23に至るポンプ通路31と、タンクポート2bから第3摺動穴23に至るタンク通路32が設けられている。
【0025】
ポンプ通路31からはブーム用パラレル通路51およびアーム用パラレル通路41が分岐している。ブーム用パラレル通路51は第1摺動穴21に至っており、アーム用パラレル通路41は第2摺動穴22に至っている。また、ハウジング2には、第1摺動穴21からタンク通路32に至るブーム用タンク通路52と、第2摺動穴22からタンク通路32に至るアーム用タンク通路42が設けられている。
【0026】
さらに、ハウジング2には、ブーム用給排ポート2dから第1摺動穴21に至るブーム上げ供給通路54およびブーム下げ供給通路53と、アーム用給排ポート2cから第2摺動穴22に至るアーム引き供給通路43およびアーム押し供給通路44が設けられている。
【0027】
ブーム駆動用スプール5は、ブーム用パラレル通路51、ブーム用タンク通路52、ブーム上げ供給通路54およびブーム下げ供給通路53を開閉する。具体的に、ブーム駆動用スプール5は、中立位置とブーム上げ位置とブーム下げ位置との間で移動する。
【0028】
中立位置では、ブーム駆動用スプール5がブーム用パラレル通路51、ブーム用タンク通路52、ブーム上げ供給通路54およびブーム下げ供給通路53をブロックする。ブーム上げ位置では、ブーム駆動用スプール5が、ブーム用パラレル通路51をブーム上げ供給通路54と連通させるとともに、ブーム下げ供給通路53をブーム用タンク通路52と連通させる。ブーム下げ位置では、ブーム駆動用スプールが、ブーム用パラレル通路51をブーム下げ供給通路53と連通させるとともに、ブーム上げ供給通路54およびブーム用タンク通路52をブロックする。
【0029】
本実施形態では、ブーム駆動用スプール5がパイロット圧により駆動される。ただし、ブーム駆動用スプール5は、電動アクチュエータと連結され、その電動アクチュエータにより駆動されてもよい。
【0030】
より詳しくは、ブーム駆動用スプール5の一端面および他端面はそれぞれ第1パイロット室5aおよび第2パイロット室5bに面しており、ブーム駆動用スプール5は、第1パイロット室5aに導入されるパイロット圧が高くなると中立位置からブーム上げ位置に移動し、第2パイロット室5bに導入されるパイロット圧が高くなると中立位置からブーム下げ位置に移動する。また、ブーム上げ位置でのブーム用パラレル通路51とブーム上げ供給通路54との間の開口面積は、第1パイロット室5aに導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなり、ブーム下げ位置でのブーム用パラレル通路51とブーム下げ供給通路53との間の開口面積は、第2パイロット室5bに導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなる。
【0031】
アーム駆動用スプール4は、アーム用パラレル通路41、アーム用タンク通路42、アーム引き供給通路43およびアーム押し供給通路44を開閉する。具体的に、アーム駆動用スプール4は、中立位置とアーム引き位置とアーム押し位置との間で移動する。
【0032】
中立位置では、アーム駆動用スプール4がアーム用パラレル通路41、アーム用タンク通路42、アーム引き供給通路43およびアーム押し供給通路44をブロックする。アーム引き位置では、アーム駆動用スプール4が、アーム用パラレル通路41をアーム引き供給通路43と連通させるとともに、アーム押し供給通路44をアーム用タンク通路42と連通させる。アーム押し位置では、アーム駆動用スプール4が、アーム用パラレル通路41をアーム押し供給通路44と連通させるとともに、アーム引き供給通路43をアーム用タンク通路42と連通させる。
【0033】
本実施形態では、アーム駆動用スプール4がパイロット圧により駆動される。ただし、アーム駆動用スプール4は、電動アクチュエータと連結され、その電動アクチュエータにより駆動されてもよい。
【0034】
より詳しくは、アーム駆動用スプール4の一端面および他端面はそれぞれ第1パイロット室4aおよび第2パイロット室4bに面しており、アーム駆動用スプール4は、第1パイロット室4aに導入されるパイロット圧が高くなると中立位置からアーム引き位置に移動し、第2パイロット室4bに導入されるパイロット圧が高くなると中立位置からアーム押し位置に移動する。また、アーム引き位置でのアーム用パラレル通路41とアーム引き供給通路43との間の開口面積は、第1パイロット室4aに導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなり、アーム押し位置でのアーム用パラレル通路41とアーム押し供給通路44との間の開口面積は、第2パイロット室4bに導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなる。
【0035】
上述したアンロードスプール7は、ポンプ通路31とタンク通路32の間の開口面積を調整するためのものである。アンロードスプール7は、ポンプ通路31とタンク通路32とを遮断する中立位置と、ポンプ通路31をタンク通路32と連通させる開位置との間で移動する。
【0036】
本実施形態では、アンロードスプール7がパイロット圧により駆動される。ただし、アンロードスプール7は、電動アクチュエータと連結され、その電動アクチュエータにより駆動されてもよい。
【0037】
より詳しくは、図4および図5に示すように、アンロードスプール7の一端面はパイロット室70に面しており、アンロードスプール7は、パイロット室70に導入されるパイロット圧が高くなると中立位置から開位置に移動する。また、ポンプ通路31とタンク通路32の間の開口面積は、パイロット室70に導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなる。
【0038】
なお、図4および図5では、ハウジング2に取り付けられた容器状のカバー37によってパイロット室70が形成されている。また、カバー37内には、アンロードスプール7を中立位置に維持するためのスプリング38が配置されている。
【0039】
さらに、本実施形態では、第3摺動穴23にブームサブスプール6が挿入される。つまり、ブームサブスプール6は、ハウジング2に摺動可能に保持される。ブームサブスプール6は、図1および図4に示すブーム再生用スプール6Aと、図2および図5に示すブーム回生用スプール6Bのどちらかである。
【0040】
ハウジング2には、ブーム上げ供給通路54から分岐して第3摺動穴23に至るヘッド側通路62と、ブーム下げ供給通路53から分岐して第3摺動穴23に至るロッド側通路61が設けられている。さらに、ハウジング2には、第3摺動穴23からタンク通路32に至る再生・回生用タンク通路63と、第3摺動穴23からアーム用パラレル通路41に至る回生通路64が設けられている。
【0041】
なお、アーム用パラレル通路41には、回生通路64がつながる位置よりも上流側(すなわちポンプ側)にチェック弁45が設けられている。チェック弁45は、ポンプ通路31から第2摺動穴22へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する。
【0042】
ブーム再生用スプール6Aは、図1に示すように、ヘッド側通路62とロッド側通路61とを遮断する中立位置と、ヘッド側通路62をロッド側通路61と連通させる再生位置との間で移動する。本実施形態では、再生位置でヘッド側通路62が再生・回生用タンク通路63とも連通する。
【0043】
本実施形態では、ブーム再生用スプール6Aがパイロット圧により駆動される。ただし、ブーム再生用スプール6Aは、電動アクチュエータと連結され、その電動アクチュエータにより駆動されてもよい。
【0044】
より詳しくは、図4に示すように、ブーム再生用スプール6Aの一端面はパイロット室60に面し、ブーム再生用スプール6Aは、パイロット室60に導入されるパイロット圧が高くなると中立位置から再生位置に移動する。また、ヘッド側通路62とロッド側通路61の間の開口面積は、パイロット室60に導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなる。
【0045】
なお、図4では、ハウジング2に取り付けられた容器状のカバー35によってパイロット室60が形成されている。また、カバー35内には、ブーム再生用スプール6Aを中立位置に維持するためのスプリング36が配置されている。
【0046】
上述したように、ブーム駆動用スプール5はブーム下げ位置ではブーム用タンク通路52をブロックするので、ブーム再生用スプール6Aが用いられる場合、ブーム再生用スプール6Aは、ブーム下げ時にブーム駆動用スプール5と同様に移動する。
【0047】
なお、図4では、ロッド側通路61にチェック弁9が設けられている(図1では省略)。チェック弁9は、ヘッド側通路62からロッド側通路61へ向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する。具体的に、チェック弁9は、ハウジング2に摺動可能に保持されたポペット91と、ハウジング2に固定された蓋体93と、ポペット91と蓋体93との間に配置されたスプリング92を含む。
【0048】
ブーム回生用スプール6Bは、図2に示すように、ヘッド側通路62と回生通路64とを遮断する中立位置と、ヘッド側通路62を回生通路64と連通させる回生位置との間で移動する。
【0049】
本実施形態では、ブーム回生用スプール6Bがパイロット圧により駆動される。ただし、ブーム回生用スプール6Bは、電動アクチュエータにより駆動されてもよい。
【0050】
より詳しくは、図5に示すように、ブーム回生用スプール6Bの一端面は上述したようにカバー35で形成されたパイロット室60に面し、ブーム回生用スプール6Bは、パイロット室60に導入されるパイロット圧が高くなると中立位置から回生位置に移動する。また、ヘッド側通路62と回生通路64の間の開口面積は、パイロット室60に導入されるパイロット圧が高くなるほど大きくなる。図2に示すように、パイロット室60に導入されるパイロット圧が設定値を上回ると、ヘッド側通路62は再生・回生用タンク通路63とも連通する。なお、カバー35内に配置されたスプリング36は、ブーム回生用スプール6Bを中立位置に維持する役割を果たす。
【0051】
上述したように、ブーム駆動用スプール5はブーム下げ位置ではブーム用タンク通路52をブロックするので、ブーム回生用スプール6Bが用いられる場合、ブーム回生用スプール6Bは、ブーム下げ時にブーム駆動用スプール5と同様に移動する。
【0052】
なお、図5では、チェック弁9のポペット91を利用してロッド側通路61を恒常的に閉塞するために、スプリング92および蓋体93に代えて、押え部材94および固定部材95などが採用されている。
【0053】
以上説明した構成のマルチ制御弁1では、第3摺動穴23にブーム再生用スプール6Aを挿入すればブーム再生が可能となり、第3摺動穴23にブーム回生用スプール6Bを挿入すればブーム回生が可能となる。すなわち、ブームサブスプール6としてブーム再生用スプール6Aを用いればブーム再生が可能な油圧回路を実現でき、ブームサブスプール6としてブーム回生用スプール6Bを用いればブーム回生が可能な油圧回路を実現できる。従って、マルチ制御弁1そのものを交換しなくても、ハウジング2を交換することなくブームサブスプール6を交換すれば、ブーム再生が可能な油圧回路とブーム回生が可能な油圧回路の双方に対応することができる。
【0054】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、ブーム再生用スプール6Aおよびブーム回生用スプール6Bは、必ずしもアンロードスプール7が挿入される摺動穴に挿入される必要はなく、アンロードスプール7が挿入される摺動穴とは別の摺動穴に挿入されてもよい。ただし、前記実施形態のような構成であれば、ブーム再生用スプール6Aまたはブーム回生用スプール6Bが挿入される摺動穴とは別にアンロードスプール7が挿入される摺動穴をハウジング2に設けた場合に比べて、ハウジング2を小型化することができる。これにより、コストを抑えたマルチ制御弁1を提供することができる。
【0056】
また、マルチ制御弁1はアンロードスプール7を含まなくてもよい。
【0057】
(まとめ)
本発明のマルチ制御弁は、油圧ショベルに用いられるマルチ制御弁であって、アーム駆動用スプールと、ブーム駆動用スプールと、ブームサブスプールと、前記アーム駆動用スプール、前記ブーム駆動用スプールおよび前記ブームサブスプールを摺動可能に保持するハウジングと、を備え、前記ハウジングには、前記アーム駆動用スプールに開閉されるアーム用パラレル通路、アーム引き供給通路およびアーム押し供給通路と、前記ブーム駆動用スプールに開閉されるブーム用パラレル通路、ブーム上げ供給通路およびブーム下げ供給通路と、前記ブームサブスプールが挿入される摺動穴と、前記ブーム上げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るヘッド側通路と、前記ブーム下げ供給通路から分岐して前記摺動穴に至るロッド側通路と、前記摺動穴から前記アーム用パラレル通路に至る回生通路が設けられており、前記ブームサブスプールは、前記ヘッド側通路と前記ロッド側通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記ロッド側通路と連通させる再生位置との間で移動するブーム再生用スプールと、前記ヘッド側通路と前記回生通路とを遮断する中立位置と、前記ヘッド側通路を前記回生通路と連通させる回生位置との間で移動するブーム回生用スプールのどちらかである、ことを特徴とする。
【0058】
上記の構成によれば、摺動穴にブーム再生用スプールを挿入すればブーム再生が可能となり、摺動穴にブーム回生用スプールを挿入すればブーム回生が可能となる。従って、マルチ制御弁そのものを交換しなくても、ハウジングを交換することなくブームサブスプールを交換すれば、ブーム再生が可能な油圧回路とブーム回生が可能な油圧回路の双方に対応することができる。
【0059】
前記ハウジングは、ポンプポートおよびタンクポートを有し、前記ハウジングには、前記ポンプポートから前記摺動穴に至るポンプ通路と、前記タンクポートから前記摺動穴に至るタンク通路が設けられており、前記アーム用パラレル通路および前記ブーム用パラレル通路は前記ポンプ通路から分岐しており、前記摺動穴には、前記ポンプ通路と前記タンク通路の間の開口面積を調整するためのアンロードスプールが挿入されてもよい。この構成によれば、ブーム再生用スプールまたはブーム回生用スプールが挿入される摺動穴とは別にアンロードスプールが挿入される摺動穴をハウジングに設けた場合に比べて、ハウジングを小型化することができる。これにより、コストを抑えたマルチ制御弁を提供することができる。
【0060】
例えば、前記ハウジングには、ブーム用タンク通路とアーム用タンク通路が設けられており、前記ブーム駆動用スプールは、中立位置とブーム上げ位置とブーム下げ位置との間で移動し、前記ブーム上げ位置では前記ブーム用パラレル通路を前記ブーム上げ供給通路と連通させるとともに前記ブーム下げ供給通路を前記ブーム用タンク通路と連通させ、前記ブーム下げ位置では前記ブーム用パラレル通路を前記ブーム下げ供給通路と連通させるとともに前記ブーム上げ供給通路をブロックしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 マルチ制御弁
2 ハウジング
2a ポンプポート
2b タンクポート
21~23 摺動穴
31 ポンプ通路
32 タンク通路
4 アーム駆動用スプール
41 アーム用パラレル通路
42 アーム用タンク通路
43 アーム引き供給通路
44 アーム押し供給通路
5 ブーム駆動用スプール
51 ブーム用パラレル通路
52 ブーム用タンク通路
53 ブーム下げ供給通路
54 ブーム上げ供給通路
6 ブームサブスプール
6A ブーム再生用スプール
6B ブーム回生用スプール
61 ロッド側通路
62 ヘッド側通路
64 回生通路
7 アンロードスプール
図1
図2
図3
図4
図5