(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ケーブルシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20240731BHJP
H01R 11/24 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01R31/54
H01R11/24
(21)【出願番号】P 2021022535
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520039179
【氏名又は名称】NTTアノードエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後川 知仁
(72)【発明者】
【氏名】庭 正樹
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140791(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112201969(CN,A)
【文献】特開2008-130297(JP,A)
【文献】中国実用新案第205657388(CN,U)
【文献】中国実用新案第205016793(CN,U)
【文献】中国実用新案第207021399(CN,U)
【文献】特開2008-160919(JP,A)
【文献】特開2003-223833(JP,A)
【文献】特開平03-289309(JP,A)
【文献】実開平03-062429(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
H01R 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するケーブルと、
前記ケーブルの端部に設けられ、所定の接続箇所に着脱自在に固定されて前記ケーブルと前記接続箇所を電気的に接続する接続部と、
前記接続部の状態を識別する識別部と、
を備えたケーブルシステムであって、
前記接続部は、
使用者による操作によって開閉する開閉部と、
前記開閉部に配置され、前記接続箇所に固定される際に前記接続箇所と電気的に接触する接触部と、
前記開閉部に配置され、前記接触部が前記接続箇所と電気的に接触する際に、前記接続箇所から作用される圧力を検知する圧力検知部と、
を備え、
前記開閉部は、前記接続部が前記接続箇所に固定される際に、前記接続箇所の一方の側に配置される第1接続片と、前記一方の側とは反対側に配置される第2接続片と、を備え、前記第1接続片と前記第2接続片とが近接して前記第1接続片の少なくとも一部が前記第2接続片の対応する部分に接触して閉じた状態となり、前記第1接続片と前記第2接続片とが離間して前記第1接続片の少なくとも一部と前記第2接続片の対応する部分とが離れて開いた状態となることで開閉するものであり、
前記識別部は、
前記圧力検知部からの信号に基づいて、前記接続部の状態を識別するものであり、
前記圧力検知部からの信号が、前記圧力検知部に圧力が作用されていない開状態圧力を示す信号である場合には、前記接続部が、前記開閉部が開いた開状態であると識別し、
前記圧力検知部からの信号が、前記第1接続片の少なくとも一部と、前記第2接続片の対応する部分とが接触した状態の圧力
であって、常に一定の大きさである通常圧力を示す信号である場合には、前記接続部が、前記開閉部が閉じた閉状態と識別し、
前記圧力検知部からの信号が、前記開状態圧力及び前記通常圧力のいずれとも異なる圧力を示す信号であり、当該信号が所定の時間以上維持された場合には、前記接触部が前記接続箇所と接触している導通状態と識別する、
ケーブルシステム。
【請求項2】
前記圧力検知部は、前記圧力の分布を検出可能なものであり、
前記識別部は、前記圧力検知部からの信号に基づいて、前記接触部と前記接続箇所との接触状態を識別する、
請求項1に記載のケーブルシステム。
【請求項3】
前記圧力検知部は、前記開閉部の内側に面状に配置されている、
請求項1または請求項2に記載のケーブルシステム。
【請求項4】
前記圧力検知部は、複数の圧力センサから構成されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のケーブルシステム。
【請求項5】
前記接続部の状態を通知する通知部を備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のケーブルシステム。
【請求項6】
前記接触状態を通知する通知部を備える、
請求項2に記載のケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる二つの箇所を電気的に接続可能なケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの両端に、簡易な操作で接続箇所への取り付け、取り外しを容易に行うことが可能なクリップを備えたケーブルが知られている。このケーブルは、導電性を有する二つの部分を電気的に接続する際などに使用される。例えば、電気回路の所定の箇所に測定器を接続したり、あるいは二つの電気回路を一次的に接続したりする際に用いられる(例えば特許文献1参照。)。また、電源設備の点検作業を行う際に、作業者の感電防止を目的として、商用電力系統から切り離された電源設備の電気回路の所定箇所を一時的に接地するために用いられたりもする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このケーブル端部に設けられたクリップは、接続箇所への取り付けや取り外しの作業が容易である一方、外部から力が加えられた場合などに、意図せずに接続箇所から脱落してしまう場合があるという問題がある。例えば、電源設備の点検作業などにおいて、電源設備の電気回路の所定箇所を接地するために用いられているケーブルが意図せずに脱落してしまうと、本来の感電防止対策がとられていない状態となってしまう。
【0005】
また、電源設備の点検などの作業は、予め定められた手順に従って作業員によって行われる。これらの作業が適切に行われるか否かは、作業員による手順の徹底と、作業員による目視確認等に依存している。このため、例えば作業員が、本来作業開始前に取り付けるべき、接地用のケーブルの取り付けを忘れてしまったり、あるいは作業終了後に取り外すべき、接地用のケーブルの取り外しを忘れてしまったりするようなミスの発生を完全に防ぐことは難しい。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ケーブルを所定の接続箇所に接続する接続部の状態を検知することが可能なケーブルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のケーブルシステムは、導電性を有するケーブルと、前記ケーブルの端部に設けられ、所定の接続箇所に着脱自在に固定されて前記ケーブルと前記接続箇所を電気的に接続する接続部と、前記接続部の状態を識別する識別部とを備えたケーブルシステムであって、前記接続部は、使用者による操作によって開閉する開閉部と、前記開閉部に配置され、前記接続箇所に固定される際に前記接続箇所と電気的に接触する接触部と、前記開閉部に配置され、前記接触部が前記接続箇所と電気的に接触する際に、前記接続箇所から作用される圧力を検知する圧力検知部を備え、前記識別部は、前記圧力検知部からの信号に基づいて、前記接続部の状態が、前記開閉部が開き、前記接触部が前記接続箇所と接触していない開状態と、前記開閉部が閉じ、前記接触部が前記接続箇所と接触していない閉状態と、前記接触部が前記接続箇所と接触している導通状態とのいずれかの状態であるかを識別する。
【0008】
本発明のケーブルシステムによれば、使用者によって接続部が所望の接続箇所に固定され、接触部が接続箇所と接触した状態となると、圧力検知部が、接続箇所から作用される力を検知する。そして識別部が、圧力検知部からの信号に従って接続部の状態を識別する。このため、例えば当該ケーブルが所定の接続箇所に適切に接続されている状態や、取り付け作業が行われている状態、あるいは接続箇所に接続されていない状態などのケーブルの状態が識別される。
【0009】
上記発明においては、前記圧力検知部は、前記圧力の分布を検出可能なものであり、前記識別部は、前記圧力検知部からの信号に基づいて、前記接触部と前記接続箇所との接触状態を識別することが好ましい。
【0010】
このようにすることにより、識別部が、接続箇所から加えられる圧力の分布の状態に基づいて、接触部と接続箇所との接触状態を識別する。即ち、接触部が接続箇所に適切に接触している状態であるか否かが識別され、ケーブルが、接続箇所に適切な状態で電気的に接続されているか否かを識別することが可能となる。
【0011】
上記発明においては、前記圧力検知部は、前記開閉部の内側に面状に配置されていることが好ましい。
このようにすることで、接続部を所定の接続箇所に固定し、接触部が接続箇所と接触した状態となると、圧力検知部が接続箇所から作用される力を検出する。圧力検知部は、面状に配置されているため、この力を適切に検出することができる。即ち、接触部が接続箇所に適切に接触している状態であるか否かを検出することが可能となる。
【0012】
上記発明においては、前記圧力検知部は、複数の圧力センサから構成されていることが好ましい。
このようにすることにより、接触部と接続箇所が接触している状態をより正確に識別することが可能となる。
【0013】
上記発明においては、前記識別部は、前記圧力検知部が所定時間以上の間、前記圧力を検知した際に、前記接続部の状態が前記導通状態であると識別することが好ましい。
このようにすることにより、接続部が接続箇所と接触している状態をより正確に識別することができる。このため、ケーブルが接続箇所と適切に接続されている状態であるか否かを正確に識別することが可能となる。
【0014】
上記発明においては、前記接続部の状態を通知する通知部を備えていることが好ましい。
このようにすることにより、接続部の状態が外部に通知される。このため、例えばケーブルが接続されている状態であるか、あるいは接続されていない状態であるかなどの状態を容易に知ることができる。また通知に従って、例えば作業者に所定の手順に従った作業を行わせるような処理を行わせたりすることもできるようになる。
【0015】
上記発明においては、前記接触状態を通知する通知部を備えていることが好ましい。
このようにすることにより、接触部と接続箇所の接触状態が通知される。このため、例えば使用者が、接続部が接続箇所と適切に接触し、ケーブルが適切に接続箇所と電気的に接続されている状態であるか否かを知ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケーブルシステムによれば、ケーブルの接続箇所との接続状態が識別可能なケーブルシステムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるケーブルシステムと当該ケーブルシステムを用いた誤操作防止装置の使用状態を説明する概略図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明によるケーブルシステムを構成する接続部の外観図である。
図2(b)は、本発明によるケーブルシステムを構成する接続部の他の外観図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明によるケーブルシステムの接続部を説明する外観図である。
図3(b)は、本発明によるケーブルシステムの接続部を説明する断面図である。
図3(c)は、本発明によるケーブルシステムの接続部を説明する側面図である。
【
図4】本発明によるケーブルシステムを用いた誤操作防止装置の作動を説明するフロー図である。
【
図5】本発明の変形例にかかるケーブルシステムを用いた誤操作防止装置の作動を説明するフロー図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の変形例のケーブルシステムの接続部の外観図である。
図6(b)は、本発明の変形例のケーブルシステムの接続部を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るケーブルシステム10について
図1から
図4を参照しながら説明を行う。本実施形態では、ケーブルシステム10が、需要家の電力設備の点検作業の際に用いられる誤操作防止装置1に用いられる例に適用して以降の説明を行う。
【0019】
<1-1 構成の説明>
はじめに、
図1から
図3を参照してケーブルシステム10の構成について説明を行う。
【0020】
ケーブルシステム10は、短絡接地金具11と制御ユニット40から主に構成されている。短絡接地金具11は、ケーブル12と、ケーブル12の端部にそれぞれ設けられた一組の接続部13から構成されている。本実施形態において短絡接地金具11は、所定の箇所を接地するために用いられる短絡接地用のケーブルとして用いられる。
【0021】
接続部13は、導電性を有する所望の箇所に着脱自在に固定され、ケーブル12を当該箇所に電気的に接続するものである。接続部13は、作業者の操作によって開閉する公知の電気接続用クリップに、外部から作用される力を検知する圧力センサ部22が備えられたものである。またケーブル12は、導電性を有する公知のケーブルである。なお本実施形態において接続部13は、第1接続片16aと第2接続片16bが、ジョイント17を軸として相互に回転できるように接続されたクリップである例に適用して以降の説明を行う。接続部13の形状は、公知の電気接続用クリップと同様であり、その用途に応じた様々な形状とすることができる(
図2(a)、
図2(b)参照。)。なお接続部13は、所望の箇所に着脱自在に固定でき、ケーブル12を当該箇所に電気的に接続できるとともに、圧力センサ部22を備えたものであれば、上記とは異なるものであってもよい。
【0022】
第1接続片16aと第2接続片16bは、導電性を有した金属材料からできており、第1接続片16aと第2接続片16bの少なくとも一方に、ケーブル12の端部が電気的に接続されている。本実施形態において第1接続片16aは、一方の側に開口を有する部分を有するように、導電性を有する金属板材断面が略U字の形状となるように折り曲げられて形成されたものである例に適用して以降の説明を行う。なお第1接続片16aは、その開口の部分が、第2接続片16bの側を向くように配置されている(
図2(a)、
図2(b)参照。)。
【0023】
また第2接続片16bは、金属板材が第1接続片16aと同様に折り曲げられて形成されている。第2接続片16bは、その開口の部分が第1接続片16aの側を向くように配置されている。以降において、第1接続片16a、及び第2接続片16bの、上記の折り曲げられた金属板材にて囲まれた領域を、「内部」とも記載する。なお、第1接続片16aと第2接続片16bは、詳細は後述する圧力センサ部22を所望の位置に配置可能な構成であれば、上記に限定される訳ではない。
【0024】
第1接続片16aと第2接続片16bの、ケーブル12の側のそれぞれの部分は、非導電性の素材で覆われている。この非導電性の素材で覆われた部分は、使用者が接続部13の操作を行う際に保持されるハンドル部15a,15bである。以降においてハンドル部15a,15bを総称して「ハンドル部15」とも記載する。また、第1接続片16a、及び第2接続片16bのハンドル部15の側を「元側」と、その反対の側を「先側」とも記載する。更に第1接続片16a、及び第2接続片16bのジョイント17よりも先側の部分を、それぞれ先側部18a,18bとも記載する。本実施形態の先側部18a,18bが、開閉部の一例である。
【0025】
第1接続片16aと第2接続片16bの内部には、図示されていない公知のバネが配置されている。このバネは、先側部18aと先側部18bが互いに近接する方向に、第1接続片16aと第2接続片16bに力を加えるように配置されている。このバネによって、接続部13は、先側部18aと先側部18bとの間に何も配置されず、ハンドル部15が操作されていない状態において、少なくとも先側部18a,18bの先側の部分が接触した状態となる(
図2(a)、
図2(b)参照。)。以降において、この少なくとも先側部18a,18bの先側の部分が接触した接続部13の状態を「閉じた状態」あるいは「閉状態」とも記載する。また、閉じた状態において互いに接触した状態となる先側部18a,18bのそれぞれの先側の部分を「先端部21」とも記載する。
【0026】
接続部13は、ハンドル部15aとハンドル部15bが互いに近接する方向に上述のバネによる力よりも大きな力が加えられると、先側部18aと先側部18bの先端部21が離れた状態となる。以降において、この先側部18aと先側部18bが離れた接続部13の状態を「開いた状態」あるいは「開状態」とも記載する。また、開いた状態における接続部13の先側部18aと先側部18bの間の領域を「開口部14」とも記載する。さらに先側部18a、及び先側部18bの開口部14の側の部分を「内側」とも記載する。
【0027】
開口部14に、接続部13を接続する所望の部分を配置した状態で、作業者がハンドル部15の操作をやめると、先側部18a,18bがバネの力に従って当該部分を挟み込む。この際、接続部13は、上述のバネの力によって当該箇所に固定された状態となる。以降において、接続部13を接続する所望の部分を「接続箇所」とも記載する。また、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込み、接続箇所に固定された接続部13の状態を「導通状態」とも記載する。
【0028】
圧力センサ部22は、接続部13が接続箇所から作用を受ける力や、閉じた状態において他方の先端部21から作用される力など、外部から作用される力を検知して、その作用された力の大きさに応じた信号を出力する部分である。換言すれば、圧力センサ部22は、先側部18a、又は先側部18bの少なくともいずれか一方の内側を向く部分が、外部から受ける力を検知して、その力の大きさに応じた信号を出力する部分である。本実施形態において圧力センサ部22が、先端部18aに配置されている例に適用して以降の説明を行う。接続部13は、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込み、接続箇所に固定される電気接続用クリップであるため、先端部18a、又は先端部18bのいずれか一方に配置されていれば、接続部13が外部から作用される力を検知することができる。なお圧力センサ部22は、先端部18bの側に配置されていてもよい。あるいは、接続部13と接続箇所との接続の妨げにならなければ、先端部18aと先端部18bの両方に配置されていてもよい。
【0029】
圧力センサ部22は、圧力検知部23と信号送信部24から主に構成されている。圧力検知部23は、作用された力を検出し、その力の大きさに応じた信号を出力する公知の圧力センサである。信号送信部24は、圧力検知部23の出力信号を外部に出力する機能を有する部分である。本実施形態において信号送信部24はハンドル部15の内側に配置されており、図示されていない。
【0030】
本実施形態において圧力検知部23は、半導体素子が用いられた公知の半導体式圧力センサである例に適用して以降の説明を行う。なお圧力検知部23は、他の公知の圧力センサであってもよい。
【0031】
本実施形態において信号送信部24は、圧力検知部23の出力を公知の通信規格に従った無線信号として送信する機能を有している例に適用して以降の説明を行う。信号送信部24は、有線などのその他の公知の手段によって検出した信号を出力してもよい。信号送信部24は、接続部13の他の部分に配置されていたり、あるいは接続部13とは独立した異なる部分に設けられていたりしてもよい。以降において圧力検知部23が検出し、信号送信部24が送信する力に関する信号を「圧力信号」とも記載する。
【0032】
本実施形態において圧力検知部23は、先側部18aの内側を向く部分である接触部19c,19dに沿って面状に設けられている(
図3(b)、
図3(c)参照)。換言すれば、圧力検知部23は、接触部19c,19dに沿って先側部18aの内側の面の少なくとも一部を形成するように配置されている。ここで接触部19c,19dは、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込む際に、少なくともその一部が接続箇所と接触する部分である。
【0033】
本実施形態において接触部19c,19dは、先側部18a,18bの内側を向く開口の縁の部分である。なお、以降において接触部19c,19dを総称して「接触部19」とも記載する。接触部19は、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込む際に、接続箇所と接触する部分であれば、上記に限定される訳ではない。
【0034】
具体的に説明を行うと、圧力検知部23は、先側部18aの接触部19cと接触部19dとの間に面状に配置されている(
図3(b)参照。)。圧力検知部23は、第1接続片16aを側面の側、即ちジョイント17を貫く軸が伸びる方向の側から見ると、接触部19に沿うように配置されている。即ち、圧力検知部23は、先側部18aの先端側からジョイント17の近傍まで、先側部18aの内側の面を形成するように配置されている(
図3(c)参照。)。
【0035】
圧力検知部23が上記のように配置されると、接触部19が接続箇所などに接触すると、圧力検知部23も同様に当該箇所と接触し、接触部19に作用されている力と略同じ力を検出する。換言すれば圧力検知部23は、接触部19に、接続箇所や先側部18bの先端部21から作用される力などを検知可能な位置に配置されている。
【0036】
なお圧力検知部23は、接触部19に作用される力を適切に検出することができれば、上記とは異なる位置に配置されていてもよい。例えば圧力検知部23は、先側部18aを側面から見た際に、その内側を向く面の少なくとも一部が、接触部19よりもわずかに外側にずれた位置に配置されていてもよい。あるいは圧力検知部23は、接触部19よりもわずかに内側に突出した位置に設けられたりしてもよい。この際、圧力検知部23と先側部18aとの間に弾力性のある素材などが配置され、外部から力が作用された際に、圧力検知部23がその力に応じて外側に移動する構成としてもよい。あるいは、圧力検知部23は、接触部19に作用される力を適切に検出することができれば、その全ての部分が接触部19に沿って配置されていなくてもよい。
【0037】
制御ユニット40は、通信部41、識別部42、通知部43、及びネットワーク接続部44から主に構成されている。本実施形態において、制御ユニット40は、PCなどの公知の電子計算機器に、専用のプログラムがインストールされたものである例に適用して以降の説明を行う。即ち、ソフトウェアとハードウェアが協働して、以降にて説明する各部の機能を実現している例に適用して以降の説明を行う。なお制御ユニット40は、専用のハードウェアによって各部の機能が実現されたものであってもよい。
【0038】
通信部41は、公知の通信規格に従って通信を行う通信インターフェースであり、信号送信部24と通信を行って圧力信号を受信する機能を有する部分である。
【0039】
識別部42は、通信部41が受信した圧力信号に基づいて、接続部13の状態を識別する機能を主に有する部分である。識別部42は、圧力信号に基づいて、接続部13が、閉状態、開状態、導通状態のいずれかの状態であるかを識別する。
【0040】
具体的に説明を行うと、接続部13が閉じた状態の場合には、先側部18a,18bの先端部21が互いに接触した状態となる。この際、先側部18aの先端部21には、先側部18bの先端部21からバネによる力が作用される。そして、圧力検知部23の先端部21に対応する部分が、その力を検知する。この際に圧力検知部23が検知する力は、先側部18bの先端部21から直接作用される力であるため、常に一定の大きさである。以降において、接続部13が閉じた状態において圧力検知部23が検知する圧力を「通常圧力」とも記載する。本実施形態では、識別部42が、この通常圧力の値を予め記憶している例に適用して以降の説明を行う。なお、識別部42は、作業者による操作によって設定された値を記憶してもよい。
【0041】
作業者の操作によって接続部13が開状態となると、圧力検知部23は、圧力を検知しない状態となる。即ち、圧力信号はゼロとなる。以降において、この接続部13が開状態において圧力検知部23が検知する圧力を「開状態圧力」とも記載する。
【0042】
そして接続部13が接続箇所に接続され、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込んだ状態となると、接続箇所と接触している先側部18aの接触部19の部分に対応する圧力検知部23の部分が接続箇所と接触する。この際、圧力検知部23は、先側部18aの接触部19が接続箇所から受けている力と略同一の大きさの力を検知する。以降において、この際に圧力検知部23が検知する圧力を「導通状態圧力」とも記載する。なお、導通状態圧力は、接続箇所から作用される力であるため、開状態圧力や通常圧力とは異なる大きさとなる。
【0043】
識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号が通常圧力である場合には、接続部13は閉状態であり、圧力検知部23からの圧力信号が開状態圧力である場合には、開状態であると識別する。そして識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号が、開状態圧力や通常圧力と異なる場合には、接続部13は導通状態であると識別する。
【0044】
なお、識別部42は、所定の値が予め設定され、圧力信号がその所定の値となった際に、接続部13が導通状態であると識別する構成としてもよい。あるいは識別部42は、所定の範囲が予め設定され、圧力信号がその所定の範囲内となった際に、接続部13が導通状態であると識別する構成としてもよい。
【0045】
更に識別部42は、接続部13の状態に基づいて、その接続部13を備える短絡接地金具11が所定の箇所に接続された接地状態にあるか否かを識別する機能も有している。即ち所定の短絡接地金具11の両側の接続部13が導通状態である場合に、短絡接地金具11が、所定の箇所を接地している接地状態であると識別する機能を有している。また識別部42は、誤操作防止装置1に複数の短絡接地金具11が用いられている場合に、全ての短絡接地金具11が接地状態であるか否かを識別する機能も有している。更に識別部42は、識別した状態を通知部43やネットワーク接続部44に通知させる機能も有している。
【0046】
通知部43は、識別部42が識別した接続部13の状態や短絡接地金具11の状態を外部に通知する部分である。具体的に通知部43は、図示されていないランプなどを作動させて、作業者にそれらの状態を通知したり、詳細は後述する測距ユニット45や電子手順端末60と通信を行って、それらの状態を通知したりする。
【0047】
ネットワーク接続部44は、図示されていないインターネットや専用回線などのネットワークと通信を行うインターフェースである。本実施形態においてネットワーク接続部44は、図示されていない専用回線に接続されて、中央監視センターのサーバ70と通信を行うものである例に適用して以降の説明を行う。
【0048】
続いて、本発明のケーブルシステム10が用いられた誤操作防止装置1について説明を行う。誤操作防止装置1は、ケーブルシステム10、測距ユニット45、及び電子手順端末60から主に構成されている(
図1参照。)。
【0049】
本実施形態の誤操作防止装置1は、需要家に設けられた高圧受電設備5などの電力設備の点検作業の際に用いられ、点検作業において、作業者が誤った操作を行うことを防止することを目的とする装置である。具体的には、作業者が、定められた手順とは異なる手順で作業を行うことを防ぐことを目的とした装置である。
【0050】
なお、高圧受電設備5は、需要家に設けられた公知の電力設備であり、断路器51の他、真空しゃ断機52が主に備えられている。以降において断路器51を「DS51」、真空しゃ断機52を「VCB52」とも記載する。
【0051】
測距ユニット45は、作業者と、柱上気中開閉器3の操作を行うための操作紐31との間の距離を計測し、その距離が所定の条件を満たす場合に、そのことを作業者などに通知する機能を有する部分である。本実施形態において測距ユニット45は、制御ユニット40から通知を受けると、距離の計測を開始したり、停止したりする機能を有している例に適用して以降の説明を行う。
【0052】
ここで柱上気中開閉器3は、商用電源系統と需要家の高圧受電設備5との間に設けられ、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離すための公知の器具である。柱上気中開閉器3には、スイッチ33が設けられており、作業者による操作によって、需要家の設備に対して電力の供給が行われる通電状態と、電力の供給が停止される停電状態とが切り替えられる。この切替操作は、作業者がスイッチ33に取り付けられた操作紐31の端側の保持操作部32を作業者が保持し、操作紐31を所定の方向に引っ張ることによって行われる。なお
図1では、説明のために柱上気中開閉器3と高圧受電設備5の間が一つの線にて結ばれている様子を示しているが、柱上気中開閉器3と高圧受電設備5の間は、三線にて接続されている。
【0053】
本実施形態において測距ユニット45は、送信部45a、受信部45b、及び距離通知部45cから主に構成されている。送信部45aは、操作紐31の端部の保持操作部32に取り付けられて、公知の通信規格に従った無線信号を送信する部分である。
【0054】
受信部45bは、送信部45aから送信された信号を受信して、公知の距離算定方法によって送信部45aとの間の距離を算出し、算出した距離が所定の条件を満たす場合に距離通知部45cを作動させる機能を有する部分である。距離通知部45cは、受信部45bからの信号に従って作動して、作業者に通知する部分である。なお、測距ユニット45は、操作紐31と作業者との間の距離を計測し、作業者に通知する機能を有するものであれば、上記と異なる構成であってもよい。
【0055】
電子手順端末60は、タブレット型PCなどの公知の電子形態端末に、専用のプログラム等がインストールされたもので、作業者に点検作業の手順を示す電子手順書として用いられるものである。電子手順端末60は、図示されていない表示部や操作部を備えており、作業者による操作に従って、点検作業の手順を順次表示する機能を有している。電子手順端末60は、公知の通信規格によって、制御ユニット40などと通信を行う通信機能も備えている。
【0056】
<1-2 作用の説明>
続いてケーブルシステム10の作用について、誤操作防止装置1の操作に従って説明を行う。
【0057】
はじめに作業者が、電子手順端末60を操作して停電作業に関する手順を表示させ、表示された手順に従って需要家の施設の停電作業を行う(S10)。即ち、所定の手順に従って、需要家の自家用構内を商用電力系統から切り離す作業を行う。具体的に説明すると、高圧受電設備5の真空しゃ断機52を開放(OFF)し、続いて操作紐31を操作して柱上気中開閉器3を開放状態(停電状態)に切り替える。そして、高圧受電設備5の断路器51を開放(OFF)する。なお、需要家の施設の停電作業が行われて、需要家の施設が停電すると、図示されていない需要家の施設の管理装置などから、停電が行われたことが、中央監視センターのサーバ70に通知される。
【0058】
作業者は、少なくとも柱上気中開閉器3の操作が行われるまでに、測距ユニット45を使用可能な状態にセッティングしておく。具体的には、送信部45aが保持操作部32に取り付けられ、受信部45bと距離通知部45cが作業者に装着された状態としておく。また作業者は、ケーブルシステム10を作動可能な状態としておく。
【0059】
ケーブルシステム10は、作動可能な状態となると、圧力センサ部22が作動し、信号送信部24が圧力検知部23からの圧力信号を逐次出力する。識別部42は、通信部41が受信した圧力信号に基づいて、接続部13の状態を逐次識別する。
【0060】
作業開始時において接続部13は閉じた状態であるため、圧力検知部23は通常圧力に対応した圧力信号を出力する。そして識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号が通常圧力であることから、接続部13が閉状態であると識別する。
【0061】
停電作業が完了したら、作業者は、電子手順端末60に表示された手順を確認し、断路器51の一次側の各相に短絡接地金具11を接続する(S20)。具体的には、短絡接地金具11の一方の接続部13を断路器51の一次側に接続し、他方の接続部13を接地端子53などに接続する。作業者は、接地された接続可能な他の部分に接続部13を接続してもよい。なお電子手順端末60は、需要家の施設が停電した時点において、作業者が次の手順を確認するための操作を行っても、次の手順が表示されない規制状態となる。即ち、短絡接地金具11を接続する手順以降の手順の表示が規制された状態となる。
【0062】
作業者が短絡接地金具11を接続するために、接続部13のハンドル部15を操作して、接続部13を開状態とすると、圧力検知部23は、開状態圧力に対応した圧力信号を出力する。識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号に基づいて、接続部13が開状態であると識別する。
【0063】
さらに作業者が、接続部13の開口部14に断路器51の一次側の所定の箇所や接地端子53などの接続箇所を配置して、ハンドル部15への操作をやめると、接続部13の先側部18a,18bが接続箇所を挟み込んだ状態となる。第1接続片16aと第2接続片16bは、導電性を有する素材からできているため、接続部13は、接続箇所に電気的に接続される。より具体的に説明を行うと、接触部19の対応する部分が接続箇所と接触し、第1接続片16aと第2接続片16bが接続箇所に電気的に接続された状態となる。
【0064】
この際、圧力検知部23は、接続部13が接続された接続箇所に接触し、作用される力を検出して圧力信号を出力する。識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号に基づいて、接続部13が導通状態であると識別する。
【0065】
即ち作業者が、接続部13を接続箇所に接続する作業を行うと、圧力信号は、接続部13の状態に応じて、通常圧力、開状態圧力、導通状態圧力の順番で遷移する。そして識別部42は、信号送信部24から送信された圧力信号に基づいて、接続部13の状態を逐次識別する。なお識別部42は、接続部13の状態が通常状態から開状態を経ずに導通状態に遷移するなど、その遷移の様子が異常な場合には、異常が発生したと判断して通知させる機能を備えてもよい。
【0066】
識別部42は、接続部13が導通状態以外の場合には(S30にてNo)、そのことを通知部43に通知させる処理を行う。通知部43は、図示されていないランプを点灯させるなどして、作業者に接続部13が接続されていない状態であることを通知する(S35)。なお通知部43は、通常状態や開状態など、他の識別された状態を通知する処理を行ってもよい。
【0067】
識別部42が、すべての短絡接地金具11が接地状態となったことを識別すると(S30にてYes)、通知部43、及びネットワーク接続部44が、そのことを通知する処理をおこなう。通知部43は、測距ユニット45、及び電子手順端末60と通信を行って、それぞれに短絡接地金具11が接地状態となったことを通知する。またネットワーク接続部44は、専用回線を介して中央監視センターのサーバ70にそのことを通知する処理を行う。
【0068】
電子手順端末60は、すべての短絡接地金具11が接地状態となった旨の通知を通知部43から受けるまでは、規制状態を維持する。一方、通知部43から上記の通知を受信すると規制状態を解除して、作業者による操作を受け付けて、以降の作業手順を表示する状態に移行する。作業者は、電子手順端末60に表示された続きの手順を確認して、引き続き点検作業を行う。なお電子手順端末60は、作業者が所定の手順まで進めると、以降の手順を表示しない規制状態に再び移行する。具体的には、作業者が、復電作業の直前まで手順を進め、短絡接地金具11を取り外す手順まで表示させると、以降の手順を表示しない規制状態となる。
【0069】
中央監視センターのサーバ70は、ネットワーク接続部44からの信号を受信すると、中央監視センターの職員等にそのことを通知するなどの所定の処理を行う。なおサーバ70は、当該需要家の施設が停電してから、予め定められた時間以内に、短絡接地金具11が接地状態となった旨の通知を受けない場合に、需要家の施設の管理装置などに警報を発出させる処理などを行う。即ちサーバ70は、作業者に注意を促すための処理を行う。
【0070】
測距ユニット45は、通知部43からの通知を受けると、距離を測定する処理を開始する(S40)。具体的には、送信部45aが、測定に利用される信号の出力を開始し、受信部45bがその信号を受信して操作紐31と作業者との間の距離の測定を開始する。
【0071】
受信部45bは、測定した距離が所定の範囲内であるか判断する処理を行う(S50)。測定した距離が所定の範囲外であった場合には(S50にてNo)、受信部45bは距離の測定を継続する。
【0072】
測定した距離が所定の範囲内であった場合には(S50にてYes)、受信部45bは、作業者が保持操作部32に近接していると判断し、そのことを距離通知部45cに通知させる信号を出力する。受信部45bからの信号を受信すると距離通知部45cは、作業者が保持操作部32に近接していることを、アラーム音を鳴動させるなどして作業者に通知する(S60)。
【0073】
なお識別部42は、圧力検知部23からの圧力信号に基づいて接続部13の接続状態を継続的に識別する。このため識別部42は、例えばいずれか1つの接続部13が外れるなどして、対応する圧力検知部23からの圧力信号が、導通状態圧力から、開状態圧力や通常圧力に変化した場合には、通知部43にそのことを通知させる処理を行う。
【0074】
点検作業の終了後に、作業者は、電子手順端末60に表示された手順に従って、復電の準備作業を行う。具体的には、断路器51の一次側を地絡していた短絡接地金具11を取り外す(S70)。短絡接地金具11を取り外すために、作業者が接続部13を操作すると、圧力検知部23からの圧力信号は、導通状態圧力、開状態圧力、通常圧力の順番に遷移する。全ての圧力検知部23からの圧力信号が通常圧力となると、識別部42は、全ての短絡接地金具11が取り外されたと判断し、通知部43とネットワーク接続部44にそのことを通知させる処理を行う。
【0075】
通知部43は、短絡接地金具11が取り外されたことを、測距ユニット45と電子手順端末60に通知する。測距ユニット45は、通知部43から通知を受けると、距離を測定する処理を停止する。また電子手順端末60は、規制状態を解除する。即ち、作業者の操作に従って、次の作業である復電作業の手順を表示可能な状態となる。ネットワーク接続部44は、専用回線を介して、中央監視センターのサーバ70に短絡接地金具11が取り外されたことを通知する。
【0076】
全ての短絡接地金具11が取り外されたら、作業者は、電子手順端末60に表示されている手順に従って復電作業を行う(S80)。具体的に作業者は、断路器51を投入(ON)する。続いて操作紐31を操作して、柱上気中開閉器3を投入する。即ち、柱上気中開閉器3を通電状態に切り替える。この際、測距ユニット45は距離の測定を停止しているため、作業者が保持操作部32に近づいても、距離通知部45cは作動しない。更に作業者は、真空しゃ断機52を投入(ON)して、施設への電力の供給を再開する。
【0077】
上記のケーブルシステム10によれば、圧力検知部23が、接続部13の状態に応じた圧力信号を出力する。そして、識別部42が、圧力検知部23からの圧力信号に基づいて、接続部13が、開状態、閉状態、及び導通状態のいずれかの状態であるかを識別する。このため、短絡接地金具11に設けられた接続部13の状態が識別されて、短絡接地金具11が所望の接続箇所に接続されている状態であるか否かを識別することができる。
【0078】
更にケーブルシステム10の圧力検知部23は、接続部13の先側部18aの内側に面状に配置されている。具体的には、先側部18aの接触部19の間に、接触部19に沿って面状に配置されている。このように圧力検知部23が配置されると、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込むと、接続箇所から受ける圧力をより正確に検出することができる。即ち、導通状態圧力をより正確に検出することができるため、接続部13の状態を正確に識別することができる。
【0079】
また通知部43が、識別部42によって識別された状態を通知する処理を行う。具体的には通知部43が、短絡接地金具11が接地状態となった際、あるいは短絡接地金具11が取り外された際に、そのことを測距ユニット45や電子手順端末60に通知する処理を行う。このためケーブルシステム10は、識別部42によって識別された状態に応じた処理を、測距ユニット45や電子手順端末60に行わせることができる。即ち、誤操作防止装置1に、接続部13の状態に応じた処理を行わせて、作業者に適切な作業を行わせることができるようになる。
【0080】
例えばケーブルシステム10は、識別部42によって識別された状態に応じて、測距ユニット45の距離の計測処理を開始させたり、停止させたりすることができる。このため、作業者は安全な状態で作業を行うことができるようになる。また、測距ユニット45の作動に必要な電源の浪費を防ぐこともできる。
【0081】
またケーブルシステム10は、通知部43からの通知に基づいて、電子手順端末60による手順書の表示状態を規制させたり、あるいはその規制を解除させたりすることができる。即ち、所定の作業が完了しないと、電子手順端末60に次の手順を表示させない処理を行わせたり、所定の作業が完了すると、電子手順端末60に次の手順を表示させたりすることができる。このため、作業者が手順書を読み飛ばしてしまい、短絡接地金具11を接続せずに作業を行ってしまうなどの誤操作の発生を未然に防止することが期待できる。
【0082】
<第1の変形例>
以下、本実施形態の第1の変形例について、主に
図5を参照して説明を行う。
本実施形態におけるケーブルシステム10Aは、識別部42Aによる接続部13の状態の識別の処理が、上記の実施形態とは相違する。このため、以降の説明において、上記実施形態と同一の構成、及び同一の処理については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態のケーブルシステム10Aの制御ユニット40Aは、識別部42Aを備えている。識別部42Aは、圧力センサ部22からの圧力信号と、その圧力信号が出力されている時間の長さに基づいて、接続部13の状態を識別する。より具体的に説明を行うと、識別部42Aは、圧力センサ部22からの圧力信号が導通状態圧力に遷移した後に、遷移後の圧力信号が、予め設定された所定の時間だけ維持された場合に、接続部13が導通状態であると識別する機能を有している。
【0084】
図5を参照して具体的に説明を行う。作業者が短絡接地金具11を接続するために、ハンドル部15を操作して接続部13を、所定の接続箇所に接続する。この際、圧力検知部23は接続箇所と接触して圧力信号を出力する。
【0085】
識別部42Aは、圧力検知部23からの圧力信号が、導通状態圧力であるか否かを識別し、圧力信号が導通状態圧力と異なる場合には(S30AにてNo)、通知部43にそのことを通知させる処理を行う(S35A)。
【0086】
識別部42Aは、圧力検知部23からの圧力信号が、導通状態圧力である場合には、その導通状態圧力が維持されている時間を測定し、予め設定された時間Tと比較する処理を行う。具体的には、圧力検知部23からの圧力信号が、通常圧力あるいは開状態圧力から導通状態圧力に遷移した時から経過した時間を計測し、その時間の長さが所定の時間T以上であるか否かを判断する処理を行う(S32A)。なお、予め設定された時間Tは、識別部42Aに記憶されていても、他の部分に記憶されていてもよい。
【0087】
識別部42Aは、導通状態圧力が維持されている時間が、予め設定された時間Tを経過したと判断した場合には(S32Aにてyes)、接続部13が導通状態であると識別する。即ち、圧力検知部23がT時間以上継続して導通状態圧力に対応する圧力信号を出力した際に、識別部42Aは、接続部13が適切に接続された導通状態であると識別する。
【0088】
識別部42Aは、圧力検知部23からの圧力信号が、所定の時間Tを経過する前に導通状態圧力から、通常圧力あるいは開状態圧力に遷移した場合には、接続部13が導通状態ではないと識別し、S30Aからの処理を繰り返す。この際、識別部42Aは、通知部43にそのことを通知させる処理を行ってもよい。
【0089】
上記のケーブルシステム10Aによれば、導通状態圧力が所定の時間T以上、維持された場合に、識別部42Aは、接続部13が導通状態であると識別する。このため識別部42Aは、接続部13が接続箇所に適切に接続されていることをより正確に識別することができる。
【0090】
例えば、開口部14に配置された接続箇所が、適切に配置されていないと、先側部18aと先側部18bが接続箇所を十分に挟み込むことができず、接続部13が接続箇所に適切に接続されない。その様な場合には、時間の経過に伴って、接続部13がその自重により接続箇所から外れてしまったりする場合がある。その様な場合には、導通状態であると通知された接続部13が、その後に外れた状態となるため、作業者がそのことに気がつかずに作業を進めてしまうなど、好ましくない状態が発生してしまうおそれがある。
【0091】
一方、本実施形態のケーブルシステム10Aによれば、圧力検知部23が導通状態圧力を出力しても、それが所定の時間以上だけ維持されないと、識別部42Aは、接続部13が導通状態であると識別しない。即ち接続部13が接続箇所に適切に接続されていると判断できる場合にだけ、識別部42Aは、接続部13が導通状態にあると識別する。このため、接続部13が導通状態であることをより正確に識別することができ、更には、導通状態にあると識別された後に接続部13が接続箇所から外れてしまうといった状態の発生を防ぐことが期待できる。
【0092】
なお識別部42Aは、圧力検知部23からの圧力信号が、予め設定された所定の範囲内の値を所定の時間以上維持した場合に、接続部13が導通状態にあると識別する構成としてもよい。即ち識別部42Aは、圧力検知部23からの圧力信号が、所定の範囲内の値を所定の時間以上維持することができず、範囲外の値となった場合には、接続部13が導通状態ではないと識別する構成としてもよい。
【0093】
このような構成とすれば、例えば先側部18aと先側部18bによる接続箇所の挟み込みが十分ではなく、先側部18aと先側部18bによる挟み込みが不安定になっているなどの状態を、識別部42Aが識別することができるようになる。あるいは、接触部19と接続箇所との接触が十分ではなく、電気的な接続が十分に行われていないような状態も、識別部42Aが識別できるようになる。
【0094】
<第2の変形例>
以下、第2の変形例について説明を行う。
本実施形態のケーブルシステム10Bの基本構成は、上記の実施形態と同様であるが、圧力検知部23Bと識別部42Bの構成が主に相違している。従って、本実施形態においては、主に
図6を参照して、上記実施形態と相違する部分について説明を行い、同一の部分、及び同一の処理が行われる部分についてはその説明を省略する。
【0095】
本実施形態のケーブルシステム10Bは、短絡接地金具11Bと制御ユニット40Bから主に構成されている。短絡接地金具11Bは、ケーブル12と、一組の接続部13Bから構成されている。
【0096】
接続部13Bの第1接続片16aの先側部18aの内側の面には、圧力検知部23Bが配置されている。この圧力検知部23Bは、作用される力の分布を識別可能な圧力センサである。本実施形態において圧力検知部23Bは、複数の圧力センサデバイス25a~25iによって構成されている例に適用して以降の説明を行う。本実施形態において圧力センサデバイス25a~25iは、先側部18aの先側から元側に向かって並んで面状に配置されている(
図6(b)参照。)。
【0097】
以降において圧力センサデバイス25a~25iを総称して「圧力センサデバイス25」とも記載する。なお、圧力センサデバイス25の数は例示であってこれに限定される訳ではない。また、圧力センサデバイス25の大きさや配置位置は、例示であって、
図6(a)や
図6(b)に示す形態や位置に限定される訳ではない。
【0098】
本実施形態において圧力センサデバイス25は、それぞれ半導体素子が用いられた公知の半導体式圧力センサが用いられる例に適用して以降の説明を行う。圧力センサデバイス25は、他の公知の圧力センサが用いられていてもよい。また圧力検知部23Bは、作用される力の分布の識別が可能であれば、一つの圧力センサデバイスから構成されたものであってもよい。また、圧力検知部23Bは、作用される力や、その力の分布を適切に検出可能であれば、圧力センサデバイス25が間隔を開けて並んで配置されていてもよい。
【0099】
圧力センサデバイス25は、それぞれが独立して外部から作用された力を検出し、その力の大きさに応じた圧力信号を出力する。即ち圧力センサデバイス25は、それぞれが配置された場所において作用された圧力を検知して、それぞれ独立した圧力信号として出力を行う。このため圧力検知部23Bは、作用された圧力の分布を識別可能な圧力信号を出力することができる。
【0100】
制御ユニット40Bの識別部42Bは、受信した圧力信号に従って、接続部13Bの状態を識別するとともに、接触部19と接続箇所との接触状態を識別する機能を有している。具体的には、圧力検知部23Bを構成する圧力センサデバイス25からの圧力信号に従って算出した圧力の分布状態にもとづいて、接触部19が接続箇所と十分に接触している状態であるか否かを識別する機能も有している。更に、識別部42Bは、その識別した接触状態を通知部43に通知させる機能を有している。
【0101】
具体的に説明を行うと、先側部18a,18bが接続箇所を挟み込むと、圧力検知部23Bの対応する部分が接続箇所と接触して圧力を検出する。具体的には、接続箇所に対応する部分に配置されている圧力センサデバイス25が、接続箇所と接触して圧力を検出する。識別部42Bは、この圧力信号に基づいて、接続部13Bが導通状態であると識別する。
【0102】
さらに識別部42Bは、圧力センサデバイス25から得られた圧力の分布の状態から、接触部19と接続箇所の接触状態を識別する。例えば接続箇所の大きさが開口部14に比べて非常に小さい場合など、先側部18a,18bが適切に接続箇所を挟み込むことができていない場合には、接続部13は閉じた状態、あるいはそれに近い状態となる。この様な場合には、先側部18aの先側に配置されている圧力センサデバイス25a,25d、25eが、元側に配置されている圧力センサデバイス25f~25iよりも大きな力を検知する。即ち、圧力信号から求められる圧力分布の様子は、先側部18aの先側に圧力が集中した状態となる。
【0103】
このような場合には、識別部42Bは、先側部18a,18bが接続箇所を十分に挟み込んでおらず、接触部19と接続箇所との接触が十分ではないと識別する。即ち識別部42Bは、接続部13Bが接続箇所に適切に接続されていない接続不良状態であると識別する。
【0104】
あるいは、先側部18a,18bが適切に接続箇所を挟み込んでいる場合には、接続箇所と接触している部分を中心として、先側や元側に離れるにつれて圧力が徐々に減少するような分布となる。このような場合には、少なくとも先側部18aの内側の部分は適切に接続箇所と接触していると考えられることから、識別部42Bは、接続部13Bが接続箇所に適切に接続された接続良好状態であると識別する。
【0105】
なお、上記に記載した圧力の分布の状態は例示であって、これに限定される訳ではない。圧力検知部23Bによって検出される圧力の分布は、接続箇所の形状や大きさなどによって異なるため、識別部42Bは、接続箇所の形状や大きさなどに応じた圧力分布に従って、接続部13の接触状態を識別する。
【0106】
識別部42Bは、識別した接続部13Bの状態、及び接触状態を識別すると、識別した状態を通知部43に送信させる処理を行う。なお識別部42Bは、識別した接続部13Bの状態、及び接触状態のいずれか一方の状態を通知部43に通知させる処理をおこなってもよい。
【0107】
上記のように構成されたケーブルシステム10Bによれば、圧力検知部23Bが検知した圧力の分布の状態に基づいて、識別部42Bが、接触部19と接続箇所との接触状態を識別する。このため、接続部13が接続箇所に適切な状態で接続されているか否かが識別される。即ち、接続部13が接続箇所に適切な状態で電気的に接続されているか否かが識別され、短絡接地金具11によって、所望の箇所が適切に接地されている状態を確実にすることができる。
【0108】
また、識別部42Bが識別した接触状態は、通知部43から外部に通知される。このため、ケーブルシステム10Bを用いた誤操作防止装置1などのシステムに、識別された接触状態に応じた処理を行わせることも可能となる。このため、より適切な作動を外部のケーブルシステム10Bを用いたシステムができるようになる。
【0109】
また圧力検知部23Bは、複数の圧力センサデバイス25から構成されている。このため、作用された圧力の分布の状態をより正確に検知することができる。即ち識別部42Bが、接続部13が接続箇所に適切な状態で接続されているか否かをより正確に識別することができる。また、それぞれの圧力センサデバイス25からの圧力信号は独立して送信されるため、圧力の分布の状態をより簡単な処理で知ることができる。例えば、先端部21の部分に対応する部分に、対応する圧力センサデバイス25を配置した構成とすれば、識別部42Bは、先端部21に対応する部分の圧力センサデバイス25が圧力を検知し、他の圧力センサデバイス25が圧力を検知していない場合には、接続部13が閉状態であると識別することができる。また、先端部21に対応する部分の圧力センサデバイス25が圧力を検知せず、他の圧力センサデバイス25のいずれかが圧力を検知している場合には、識別部42Bは、接続部13が導通状態であると識別することができる。
【0110】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、識別部42Bが、予め記憶された導通状態における標準的な圧力の分布のパターンや、接触不良状態における標準的な圧力の分布のパターンと、圧力検知部23Bが検知した圧力の分布を比較して、接触状態を識別する構成としてもよい。あるいは、その他の公知の手段に従って、圧力の分布状態に基づいて接触状態を識別する構成としてもよい。
【0111】
また例えば、圧力検知部23,23Bの内側を向く側の面に導電性メッキを施すなどして、その内側を向く面が導電性を有する構成とし、更にその内側の導電性を有する部分を先側部18aと電気的に接続した構成としてもよい。このようにすれば、接続部13,13Bと接続箇所との電気的な接続をより確実に行うことができる。またそのように構成すれば、圧力検知部23,23Bが、接続部13,13Bと接続箇所との電気的な接続の妨げとなることを防ぐことができるため、例えば先側部18aと先側部18bの両方に圧力検知部23,23Bを設けた構成とすることできる。
【0112】
なお本発明は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…誤操作防止装置 3…柱上気中開閉器 5…高圧受電設備
10,10A,10B…ケーブルシステム 11,11B…短絡接地金具
12…ケーブル 13,13B…接続部 14…開口部
15a,15b…ハンドル部 16a…第1接続片 16b…第2接続片
17…ジョイント 18a,18b…先側部 19c,19d…接触部
21…先端部 22…圧力センサ部 23,23B…圧力検知部
24…信号送信部 25a~25i…圧力センサデバイス 31…操作紐
32…保持操作部 33…スイッチ 40,40A,40B…制御ユニット
41…通信部 42,42A,42B…識別部 43…通知部
44…ネットワーク接続部 45…測距ユニット 45a…送信部
45b…受信部 45c…距離通知部 51…断路器 52…真空しゃ断機
53…接地端子 60…電子手順端末 70…サーバ