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特許7530317マルチ電極アレイ・カテーテル用バスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】マルチ電極アレイ・カテーテル用バスケット
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240731BHJP
   A61M 25/095 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/095
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021036454
(22)【出願日】2021-03-08
(62)【分割の表示】P 2019027670の分割
【原出願日】2014-03-03
(65)【公開番号】P2021098094
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】13/790,110
(32)【優先日】2013-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506257180
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリアソン ブレーデン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デノ ディー. カーティス
(72)【発明者】
【氏名】ジャスト デイル イー.
(72)【発明者】
【氏名】ボス エリック ジェー.
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】安井 寿儀
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6086532(US,A)
【文献】米国特許第5549661(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0213231(US,A1)
【文献】特開平6-142106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を備えており、細長く変形可能なシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に結合されたバスケット電極組立体であって、圧縮状態および拡大状態を取るように構成されているバスケット電極組立体と、を備えており、
前記バスケット電極組立体は、さらに、内側構造体と外側構造体を備えており、
内側構造体は、螺旋形状の内側スプラインと、前記内側スプライン上に配置されている内側マッピング電極を有し、
外側構造体は、弓形形状の外側スプラインと、前記外側スプライン上に配置されている複数の外側電極を有し、
前記内側マッピング電極が、前記バスケット電極組立体が拡大状態のときに、前記シャフトに直交する方向の前記外側スプラインを前記シャフトの周りに回転させたときに前記外側スプラインによって形成される円形の内側に位置しているとともに前記複数の外側電極の夫々から離間しており、
前記内側マッピング電極は、組織内の電気的な活性をマッピングするように構成されている電気生理学カテーテル。
【請求項2】
内側構造体と外側構造体が、前記シャフトの前記遠位端に結合されている請求項1に記載の電気生理学カテーテル。
【請求項3】
前記シャフトが、液管腔を備える請求項1に記載の電気生理学カテーテル。
【請求項4】
前記液管腔が、前記シャフトの中心に位置している請求項3に記載の電気生理学カテーテル。
【請求項5】
前記内マッピング電極は、非接触マッピング電極を構成しており、外側構造体の内側で中心に位置している請求項1に記載の電気生理学カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月8日に出願された米国特許出願第13/790,110号の優先権を主張するものであり、その内容は、本明細書に完全に記載されているのと同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電気生理学カテーテルに関する。詳細には、本開示は、カテーテルが組織と接触しているとき、およびカテーテルが組織と接触していないときの両方で、電極のより均一な分布を可能にし、したがって、組織における電気的な活性のより均一なサンプリングを可能にする電気生理学カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
電気生理学(EP)マッピング・カテーテルは、関心領域における組織の電気生理学マップを生成するために使用される。体内組織の診断および治療においてEPマッピング・データを使用することはよく知られている。例えば、心臓組織のEPマップは、心臓内の関心領域に電気刺激を伝え、組織壊死を生成するために使用されるアブレーション・カテーテルをガイドするために使用することができる。アブレーション・カテーテルは、心臓組織に壊死を生成するために使用され、心房性不整脈および心室性不整脈(これだけに限らないが、異所性心房頻拍、心房細動、心房粗動、および心室頻拍を含む)などの症状を治すことができる。アブレーション・カテーテルをガイドすることに加えて、EPマップはまた、アブレーション治療の有効性を評価するために、または異所性源(ectopic source)もしくは危険のある峡部(critical isthmus)の位置を特定するために使用することができる。
【0004】
EPマッピング・カテーテルは、組織の電気的な活性をサンプリングする1つまたは複数の電極を遠位端に含む。多くのEPマッピング・カテーテルは、比較的広い関心領域にわたってサンプリングを可能にし、かつ治療時間を低減するために、比較的多数の電極または電極アレイを有する。図1を参照すると、現在使用されている1つのタイプのEPマッピング・カテーテル10は、カテーテル10の遠位端に配置された折りたたみ可能で拡大可能なバスケット電極組立体12を含む。バスケット電極組立体12は、カテーテルが、導入器シースを通って体内の関心領域へと移動されるときは圧縮状態を取り、カテーテルが、関心領域に達して、シースから出ると拡大状態を取る。バスケット電極組立体12は、電極16が配置される複数のスプライン14を含む。スプライン14は、近位端と遠位端で共に結合され、バスケット組立体12が拡大状態にあるとき、外方向に弓形に曲がる(すなわち、弓形になる)。
【0005】
前述の論議は、本分野を例示することを意図しているに過ぎず、特許請求の範囲を否定するものと解釈すべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電気生理学カテーテルに関する。詳細には、本開示は、カテーテルが組織と接触しているとき、およびカテーテルが組織と接触していないときの両方で、電極がより均一に分布することを可能にし、したがって、組織における電気的な活性のより均一なサンプリングを可能にする電気生理学カテーテルに関する。
【0007】
本教示の少なくとも1つの実施形態の電気生理学カテーテルは、近位端および遠位端を有する細長く変形可能なシャフトを含んでいる。そのカテーテルは、さらに、シャフトの遠位端に結合されたバスケット電極組立体を含んでいる。バスケット電極組立体は、近位端および遠位端を備えており、圧縮状態および拡大状態を取るように構成されている。バスケット電極組立体は、複数の電極がその上に配置されたスプラインを含んでいる。スプラインは、拡大状態で非平坦な形状を取るように構成されている。スプラインは、例えばねじれた形状であってよく、特に螺旋形状であってよい。
【0008】
本教示の少なくとも他の1つの実施形態の電気生理学カテーテルは、近位端および遠位端を有する細長く変形可能なシャフトを含んでいる。そのカテーテルは、さらに、シャフトの遠位端に結合されたバスケット電極組立体を含んでいる。バスケット電極組立体は、近位端および遠位端を備えており、圧縮状態および拡大状態を取るように構成されている。バスケット電極組立体は、複数の第1のスプラインを含んでいる。複数の第1のスプラインのそれぞれは、拡大状態において螺旋形状以外の形状を取るように構成されている。バスケット電極組立体は、さらに、第2のスプラインを含んでいる。第2のスプラインは、その第2のスプライン上に配置されている電極を備えており、拡大状態において螺旋形状を取るように構成されている。
【0009】
本教示の少なくとも他の1つの実施形態の電気生理学カテーテルは、近位端および遠位端を有する細長く変形可能なシャフトを含んでいる。そのカテーテルは、さらに、シャフトの遠位端に結合されたバスケット電極組立体を含んでいる。バスケット電極組立体は、近位端,遠位端および中心長手方向軸を備えており、圧縮状態および拡大状態を取るように構成されている。バスケット電極組立体は、第1のスプラインを含んでいる。第1のスプラインは、その第1のスプライン上に配置されている電極を備えており、拡大状態において上記軸に対して第1の最大径を備えている。バスケット電極組立体は、さらに、第2のスプラインを含んでいる。第2のスプラインは、その第2のスプライン上に配置されている電極を備えており、拡大状態において上記軸に対して第2の最大径を備えている。第2の最大径は、第1の最大径と異なっている。
【0010】
本教示の1つまたは複数のものによる電気生理学カテーテルは、カテーテルが組織と接触しているとき、およびカテーテルが組織と接触していないときの両方で、電極のより均一な分布を可能にし、したがって、組織における電気的な活性のより均一なサンプリングを可能にする。
【0011】
本開示の前述のもの、および他の態様、特徴、細部、効果、ならびに利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読み、かつ添付の図面を検討することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の電気生理学マッピング・カテーテルの斜視図である。
【0013】
図2】本教示の一実施形態による電気生理学カテーテルの斜視図である。
【0014】
図3図2の電気生理学カテーテルの一部の拡大斜視図である。
【0015】
図4図3の4-4線に沿った、図3の電気生理学カテーテルの横断面図である。
【0016】
図5】組立体がカテーテルの長手方向に圧縮されたときの、図3のカテーテルのバスケット電極組立体のスプラインの構成を示す図である。
【0017】
図6】本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテルの一部の拡大斜視図である。
【0018】
図7】本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテルの一部の拡大斜視図である。
【0019】
図8】本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテルの一部の拡大斜視図である。
【0020】
図9】本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテルの一部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な装置、システム、および/または方法に対する様々な実施形態が本明細書で述べられる。本明細書で述べられ、かつ添付の図面で示される実施形態の全体構造、機能、製作、および使用の十分な理解を提供するために、数多くの特有な細部が記載されている。しかしながら、当業者であれば、実施形態は、このような特有の細部を用いずに実施できることが理解されよう。他の例では、本明細書で述べる実施形態を不明確にしないように、よく知られた動作、構成要素、および要素は詳細に述べられていない。当業者であれば、本明細書で述べられ、かつ例示された実施形態は、非限定的な例であることが理解されよう。したがって、本明細書で開示される特有の構造的、かつ機能的な細部は、代表的なものであり、かつ実施形態の範囲を必ずしも限定するものではなく、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解されたい。
【0022】
本明細書の全体を通して、「様々な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、もしくは「実施形態」、または同様のものに対する参照は、その実施形態に関して述べられた特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の全体を通したいくつかの場所におけるフレーズ「様々な実施形態で」、「いくつかの実施形態で」、「一実施形態で」、もしくは「実施形態で」、または同様のものの記載は、必ずしもすべて同じ実施形態を参照するものではない。さらに特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。したがって、1つの実施形態と共に例示された、または述べられた特定の特徴、構造、または特性は、このような組合せが非論理的または非機能的なものでなければ、限定することなく、1つまたは複数の他の実施形態の特徴、構造、または特性と、全体的に、または部分的に組み合わせることができる。
【0023】
「近位の」および「遠位の」という用語は、臨床医が患者を治療するために使用される器具の一端を操作することに関して本明細書の全体を通して使用できることが理解されよう。「近位の」という用語は、器具の臨床医に最も近い部分を指し、また「遠位の」という用語は、臨床医から最も遠くに位置する部分を指す。簡潔化および明確化のために、「垂直の」、「水平の」、「上に」、および「下に」などの空間的な用語が、例示された実施形態に関して本明細書で使用できることがさらに理解されよう。しかしながら、手術用器具は、多くの方向および位置で使用することができ、これらの用語が限定的および絶対的なものであるようには意図していない。
【0024】
様々な図で、同様の参照数字が同一の構成要素を識別するために使用される。図面を参照すると、図2は、本教示による電気生理学カテーテル18の一実施形態を示している。組織の、特に心臓組織の電気生理学的マップを生成するのに使用するために、カテーテル18が提供される。しかしながら、カテーテル18は、心臓組織以外の組織で使用できることも理解されたい。カテーテル18は、ケーブル・コネクタもしくはインターフェース20、ハンドル22、近位端26および遠位端28を有するシャフト24、およびバスケット電極組立体30を含むことができる。カテーテル18はまた、偏向機構、さらなる電極、および対応する導体もしくはリードなど、本明細書で示されていない他の従来の構成要素を含むことができる。
【0025】
コネクタ20は、バスケット電極組立体30により生成された信号を受信するように構成された電子制御ユニット(ECU)(図示せず)または同様のデバイスから延びるケーブルのための機械的かつ電気的な接続(複数可)を提供する。コネクタ20は、当技術分野における従来品とすることができ、カテーテル18の近位端26に配置してもよい。
【0026】
ハンドル22は、医師がカテーテル18を保持するための位置を提供し、またシャフト24を体内で操縦またはガイドするための手段をさらに提供することができる。例えば、ハンドル22は、カテーテル18を通ってシャフト24の遠位端28まで延びるガイドワイヤの長さを変更して、遠位端28、したがって、シャフト24を操縦するための手段を含むことができる。ハンドル22もまた、当技術分野における従来品とすることができ、ハンドル22の構成は変わり得ることが理解されよう。
【0027】
シャフト24は、体内で移動するように構成された細長い、変形可能な部材である。シャフト24は、電極組立体30、関連する導体を支持し、さらにいくつかの実施形態では、信号処理もしくは調整に使用されるさらなる電子機器を支持する。シャフト24はまた、液(洗浄液、および体液を含む)、薬、および/または手術用ツールもしくは器具の移送、配送、および/または除去を可能にするように構成することができる。シャフト24は、ポリウレタンなどの従来の材料から作ることができ、かつ電気的な導体、液、薬、ガイドワイヤ、または手術用ツールもしくは器具を収容する、および/または移送するように構成された1つまたは複数の管腔を画定する。シャフト24は、導入器シースを通して血管、または体内の他の構造中に導くことができる。シャフト24は、次いで、遠隔制御のガイドシステムを含むガイドワイヤ、引張りワイヤ、または当業者に知られた他の手段を用いて関心領域の組織など、所望の位置へと体を通して操縦され、またはガイドされ得る。
【0028】
図3および図4を次に参照すると、電極組立体30は、組織の電気生理学的調査を行うための手段を提供する。組立体30は、シャフト24の遠位端に結合することができ、近位端32および遠位端34を含む。組立体30は、電極がその上に配置されかつ圧縮状態および拡大状態を取るように構成された、電極「バスケット」を形成する複数のスプライン36を含むことができる。組立体30は、組立体30に対して作用する外力がない場合、拡大状態を取ることができる(すなわち、組立体30を拡大状態に偏移させることができる)、または機械的手段(例えば、引っ張られた、または押されたワイヤ)により、拡大状態に強制され得る。組立体30は、例えば、カテーテル18が体内で導入器シースを通って関心領域へと移動すると、圧縮状態を取ることができ、またシースの遠位端から外に出ると拡大状態を取ることができる。スプライン36は、組織における電気的な活性の接触および/または非接触マッピングを可能にする所定の構成で電極を支持するように構成される。図4を参照すると、各スプライン36は、管状の本体38と、所定の形状を取るように本体38を支持し、かつ本体38を偏移させるためのワイヤ40などの手段と、1つまたは複数の電極42と、関連する導体44とを含むことができる。例えば、スプライン36など、スプラインに対する特定の実施形態がここで示されているが、スプライン(複数可)は、様々な方法で構成できることを理解されたい。一実施形態では、例えば、1つまたは複数のスプラインは、米国特許出願第12/958,992号(米国特許出願公開第2012/0143298A1号として公開されている)で述べられ、かつ示された可撓性のある回路を含むことができ、その開示の全体を参照により本明細書に組み込む。スプラインおよび/またはバスケット電極組立体のさらなる実施形態は、参照により本明細書にその開示全体が組み込まれる、米国特許出願第13/072,357号(米国特許出願公開第2011/0213231A1号として公開されている)、および米国特許出願第13/340,760号の1つまたは複数のもので述べられていることが分かる。
【0029】
本体38は、電極42に対する構造的な支持を提供し、かつ導体44を、体液および他の要素から絶縁する。図4を参照すると、本体38は、管状であり、環形状とすることができる。しかしながら、本体38の形状は変わり得うることを理解されたい。本体38は、ポリウレタンおよびナイロンなどの従来のポリマー材料、またはArkema、Inc.(アルケマ社)による登録商標「PEBAX」として販売されているエラストマーなどの熱可塑性エラストマー、ならびに金属製の網組みなどの補強材から作ることができる。本体38は、本体38の近位端48と遠位端50との間で伸びる中心管腔46を画定することができ、またワイヤ40および導体44を通すことができるように構成される。しかしながら、本体38は、代替的に、ワイヤ40または導体44をそれぞれが受け入れるように、それぞれが構成された1つまたは複数のチャネルを画定できることを理解されたい。例示の実施形態では、ワイヤ40は、導体44がワイヤ40の周りに円周方向に配置された状態で管腔46の中心に示されている。しかしながら、管腔46内におけるワイヤ40と導体44の相対的な配置は、変わり得ることを理解されたい。
【0030】
ワイヤ40は、本体38を支持し、かつ所定の形状を取るように本体38を偏移させるために提供される。ワイヤは、ニチノール(ニッケル・チタン)などの形状記憶合金から作ることができる。ワイヤは、本体38の近位端48から本体38の管腔46を通って遠位端50まで延び、また複数のスプライン36の本体38を通って延びて1つまたは複数のスプラインを共に結合することができる。代替的に、またはさらに、スプライン36は、ヒンジ・コネクタ52により、または本明細書にその開示全体が参照により組み込まれる、2011年12月30日に出願された米国特許出願第13/340,760号に記載され、かつ示された方法のいずれかにより遠位端50で結合され得る。バスケット電極組立体30の遠位端34は、カテーテル18の遠位部分が、組織に対して安全に押され得るように、小さいが先端のとがっていない機械的な接続点を形成するように特殊化することができる。
【0031】
図3を再度参照すると、電極42は、心臓組織などの組織における電気的な活性を診断し、感知し、かつ測定するように構成することができる。電極42の1つまたは複数のものはまた、組織にアブレーション治療を行うために使用することができる。電極42は、本体38の周りに配置されるリング電極を備えることができ、また白金または他の導電性材料から作ることができる。各電極42は、対応する導体44に結合される。本教示の一態様によれば、電極42は、スプライン36に沿って不均一な間隔で配置することができる。図5を参照すると、例えば、スプライン36A上の電極42A1、42A2などの一対の隣接する電極42の間の距離dは、同じスプライン36A上の電極42A2、42A3などの他の対の隣接する電極間の距離dと異なることができる。一実施形態によれば、スプライン36上の隣接する電極42間の距離は、スプライン36の中間点で、もしくはその近傍で最小になり、また各スプライン36の端部方向に移動すると増加することができる。この構成は、バスケット電極組立体10が完全に拡大したとき、電極42の比較的一様な分布を可能にする。特に、隣接するスプライン36上の電極42間の間隔は、組立体10が拡大状態にあるとき、スプライン36の中間点の近傍で大きく、組立体10が拡大状態にあるとき、スプライン36の端部の近傍で小さくなる。スプライン36の中間点付近における各スプライン36上の隣接する電極42間の間隔を減少させることにより、かつスプライン36の端部付近の各スプライン36上の隣接する電極間の間隔を増加させることにより、組立体10が拡大状態にあるとき、個々のスプライン36上の隣接する電極42間の変化する間隔が、隣接するスプライン36の電極42間の相対的な間隔を補償する。組立体30における異なるスプライン36に沿った電極42の配置もまた、異なることができる。特に、スプライン36A上の最も遠位の電極42A1とスプライン36Aの遠位端50との間の距離dは、他のスプライン36B上の最も遠位の電極42B1とスプライン36Bの遠位端50との間の距離dとは異なることができる。同様に、スプライン36の近位端48または遠位端50からの、スプライン36上の対応する電極42に対する距離は、変わり得る(したがって、例えば、スプライン36の近位端48と、スプライン36の近位端48からの第3の電極42との間の距離は、他のスプライン36の近位端48と、他のスプライン36の近位端48からの第3の電極42との間の距離とは異なる)。
【0032】
図4を再度参照すると、導体44は、電極42からカテーテル18のシャフト24を通って電子制御ユニットまたは同様のデバイスに電気信号を送信するように構成することができる。導体44は、ワイヤ、ケーブル、または信号を伝達するための他の手段を備えることができ、任意のスプライン36の本体38の管腔46を用いて配置することができる。各導体44は、対応する電極42に対して遠位端で結合され、管腔46を通って、バスケット電極組立体30の近位端32まで延びることができる。
【0033】
本明細書で上述したように、組立体30が拡大状態にあるとき、各スプライン36の本体38を、所定の形状を取るように偏移させることができる。本教示の一態様によれば、各スプライン36は、組立体30が拡大状態にあるとき、ねじられた形状(例えば、螺旋形状)などの非平坦な形状を取るように構成することができる。例えば、螺旋形状を用いることは、電極のより均一な分布を可能にし、したがって、接触および非接触マッピングの両方において、組織における電気的な活性のより均一なサンプリングを可能にする。螺旋形状を使用することはまた、例えば、医師が引っ張る、または押すことのできるワイヤを用いて、圧縮状態と拡大状態との間で、組立体30の制御されたシフトを可能にすることができる。例示の実施形態では、カテーテル18は、8本の螺旋状スプライン36を含む。図5を参照すると、組立体30が、組立体30およびカテーテル18の長手方向に圧縮されたとき、組立体30は、花の形をしたパターンを形成することができる。その結果、スプライン36上の電極42は、パターン全体を通してより均一に分散し、したがって、図1の従来技術の設計と比較して、組織との接触エリアの全体を通してより均一に分散されており、図1の従来技術の設計では、図1の組立体12が長手方向に圧縮されたとき、電極16が、スプライン14の近位端および遠位端の近くでは接近した間隔で配置されるが、各スプライン14の中間点付近では比較的離れて配置される。例示されたカテーテル18は、例えば、渦巻き状電極またはフープ(hoop)電極組立体を用いて現在行われている肺静脈のマップを生成するのに有用であることが分かる。同様に、組立体30が組織との接触に起因して横方向に(例えば、カテーテルの長手方向に直角に)圧縮されたとき、スプライン36の螺旋形状は、接触点に最も近いいくつかのスプラインが図1で示した設計のように互いに離れて(かつ他の隣接するスプラインの方向に)移動させる傾向を減少させるが、それは、各スプライン36の一部が、接触点に対して組立体30の直径に沿って反対側に位置するからである。図5を再度参照すると、電極42は、個々のスプライン36に沿って不均一な間隔で配置することができるが、あるいは電極42のより均一な分布をさらに容易にするために、本明細書の上記で述べたように、任意の2つのスプラインに沿って異なる相対位置に位置することができる。複数の螺旋状スプライン36上に電極42を配置するための一方法は、電極42を、スプライン36の端部48もしくは50から第1の距離で1つのスプライン36上に配置することである。次の電極42は、第1の距離とは異なる、スプライン36の共通の端部48もしくは50からの第2の距離で異なるスプライン上に、すなわち、第1のスプライン36に隣接するスプライン上に、またはスプライン間の間隔が固定の回転角を画定する非隣接のスプライン36上に配置することができる。その後に続く電極42は、(i)最近配置された電極42を有するスプライン36に対して同じ固定角で回転させることにより、(ii)最近配置された電極42を有するスプライン36に対して共通の端部48もしくは50からの距離を増加させることにより、スプライン36上に配置することができる。他の方法は、スプライン36の共通の端部48もしくは50から第1の距離で、スプライン36のサブセット上に(例えば、図5で示すように1つおきのスプライン36に、または非隣接スプライン36の他の組合せに)電極42を配置し、次いで、第1の距離とは異なるスプライン36の共通の端部48もしくは50からの第2の距離で、スプライン36の他のサブセット上に電極42を配置し、かつその後の電極を、本明細書の上記で述べたものと同様な方法で配置することを含むことができる。
【0034】
図3を再度参照すると、本教示の一態様によれば、カテーテル18は、バスケット電極組立体30の他の端部32、34に対して、バスケット電極組立体30の一端32、34を回転させるための中心ポスト54などの手段をさらに含むことができる。ポスト54は、いくつかの実施形態では、ワイヤまたはケーブルを含むことができる。ポスト54は、バスケット組立体30の遠位端50にしっかりと結合することができ、かつコネクタ52に結合することができる。ポスト54は、シャフト24を貫通して延び、シャフト24に対して回転することができる。ハンドル22は、回転作動子などの手段を含むことができ、それにより、医師またはロボット・コントローラは、ポスト54を回転させて、組立体30の固定された近位端32に対して組立体30の遠位端34を回転させることができる。このようにして、医師は、スプライン36の螺旋ピッチ、組立体30の機械的な剛性、および電極42の間隔を制御することができる。ポスト54は、ポスト54の長さが、バスケット電極組立体30の圧縮または拡大で変化するように、シャフト24に対して軸方向に移動することができる。
【0035】
本明細書で上述したように、組立体30が拡大状態にあるとき、電極42のより均一な分布を達成するために、電極42を、スプライン36に沿って不均一な間隔に配置することができる。しかしながら、図6を参照すると、本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテル56が示されている。カテーテル56は、カテーテル18と実質的に同様のものであるが、各スプライン36上の電極42は、スプライン36に沿って均一な間隔で配置される、および/またはスプライン36のうちの1つ、または限られた数のものが、カテーテル56のより効率的な製作のために使用できるように、各スプライン36上で同一の位置に配置される。カテーテル56は、カテーテル18で達成された電極42の最適な配置を達成しないかもしれないが、カテーテル56上で螺旋状スプライン36を使用することは、従来技術の設計に対して、接触および非接触マッピングにおける電極42の改良された分布を提供する。
【0036】
図3で示す実施形態では、スプライン36のそれぞれは、同じ螺旋ピッチを有する。図7を次に参照すると、本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテル58が示されている。カテーテル58は、カテーテル18と実質的に同様のものであるが、異なるバスケット電極組立体60を含む。カテーテル18のバスケット電極組立体30におけるものと同様に、組立体60は、組立体60が拡大状態にあるとき、螺旋形状を取るように構成されたスプライン62、64を含む。しかしながら、組立体60では、スプライン62は、スプライン64とは異なる螺旋ピッチを有する。その結果、スプライン62は、組立体60が拡大状態にあるとき、1つの円周または球形の包絡線(破線66で示される)を画定することができ、一方、スプライン64は、他の円周または球形の包絡線(破線68で示される)を画定する。言い換えるとバスケット電極組立体60が拡大状態にあるとき、バスケット電極組立体60の中心の長手方向軸70からのスプライン62の最大半径距離は、軸70からのスプライン64の最大半径距離とは異なる。カテーテル58は、例えば、非接触マッピングにおいて利点を提供することができる。特に、組立体60の組織との横方向接触は、電気的な活性をサンプリングするために重要な位置を含む可能性のあるスプライン64の近位端と遠位端との間の特に中間点付近で、スプライン64を曲げて、その理想的な拡大状態から変形させる可能性がある。しかしながら、スプライン62はその理想的な拡大状態を維持し、望ましい位置でサンプリングを提供し続けることができる。例示の実施形態では、スプライン62、64は、軸70の周りで同じ方向に回転する。しかしながら、代替の実施形態では、スプライン62、64は、軸70の周りで反対方向に回転することができる。スプライン62、64の(例えば、図3で示されたポスト54を使用することによる)回転により、スプライン62、64の一方のピッチを増加させるが、軸70からのその最大半径距離を減少させることになり、またスプライン62、64の他方のピッチを減少させるが、軸70からのその最大半径距離を増加させることになる。この実施形態によるバスケット電極組立体は、バスケットの中心からの半径に関して、電極の分布を医師が変更できるようにする。
【0037】
図8を次に参照すると、本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテル72が示されている。カテーテル72は、カテーテル18およびカテーテル58と実質的に同様のものであるが、異なるバスケット電極組立体74を含む。カテーテル58のバスケット電極組立体60と同様に、組立体74は、異なる2つのタイプのスプライン76、78を含む。スプライン76は、組立体74が拡大状態にあるとき、螺旋形状を取るように構成される。しかしながら、スプライン78は、組立体74が拡大状態にあるとき、螺旋形以外の形状を取るように構成される。特にスプライン78は、図1の実施形態のスプライン14と同様の弓形に曲がった「経度線」または平坦な形状を取ることができる。スプライン76およびスプライン78は、再度、組立体74が拡大状態にあるとき、異なる円周もしくは球形包絡線80、82を画定する。例示的の実施形態で示すように、組立体74が拡大状態にあるとき、組立体74の中心長手方向軸84からのスプライン76の最大半径距離は、軸84からのスプライン78の最大半径距離よりも小さくなり得る。図8で示す実施形態では、スプライン76、78は共に電極を含む。図9を参照すると、本教示の他の実施形態による電気生理学カテーテル86は、電気生理学カテーテル72と実質的に同様であるが、異なるバスケット電極組立体88を含むことができる。組立体88は、組立体74と実質的に同様のものであるが、スプライン90を含む。スプライン90は、スプライン78と実質的に同様のものであるが、電極を含んでいない。
【0038】
本教示に伴ってシステムの複数の実施形態をある程度の特殊性とともに前述したが、当業者は、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えることができるだろう。すべての方向に関する言及(たとえば、上部、下部、上向き、下向き、左、右、左向き、右向き、最上部、底部、より上方に、より下方に、垂直の、水平の、時計回り、反時計回り)は、開示する実施形態についての読者の理解を助けるために、識別の目的で使用されているにすぎず、特に開示する実施形態の位置、向き又は使用に関して制限を与えるものではない。接合に関する言及(たとえば、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対的な動きとの間の中間メンバを含む場合がある。このように、接合に関する言及は、2つの要素が直接的に接続され、かつ互いに固定した関係にあることを必ずしも意味するものではない。上記の説明に含まれ、又は添付図面に示されるすべての内容は、限定的なものとしてではなく、単に例示的なものとして解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲で定義されている本教示の趣旨から逸脱することなく、細部又は構造に変更を加えることができる。
【0039】
本明細書中に参照により援用されると称される、いかなる特許、出版物、もしくはその他の開示マテリアルは全体として又はその一部として組み込まれたマテリアルは、既存の定義、記述、または本開示おけるその他の開示マテリアルと競合しない範囲においてのみ、参照により本明細書に組み込まれる。また、必要な範囲内において、本明細書に明示的に記載した開示は、本明細書に参照により組み込まれる全てのマテリアルよりも優先される。任意のマテリアル、またはその部分は、参照により本明細書に援用されると称されるが、既存の定義、記述、または本明細書に記載の他の開示マテリアルとその組み込まれたマテリアルとの間に衝突が生じない程度に組み入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9