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特許7530321二酸化炭素固定方法および二酸化炭素固定システム
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  • 特許-二酸化炭素固定方法および二酸化炭素固定システム 図1
  • 特許-二酸化炭素固定方法および二酸化炭素固定システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定方法および二酸化炭素固定システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240731BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240731BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240731BHJP
   C25B 1/18 20060101ALI20240731BHJP
   C25B 15/031 20210101ALI20240731BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C25B1/18
C25B15/031
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021046334
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022145080
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健二
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩久
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513944(JP,A)
【文献】特開2012-050905(JP,A)
【文献】特開2003-288955(JP,A)
【文献】特開2014-151270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/46-1/48
B01D53/00-53/96
C01B3/00-6/34
B01J10/00-19/32
C25B1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性溶媒にマグネシウム合金を浸漬する工程、
前記水性溶媒に酸を添加して、前記マグネシウム合金の一部を溶解可能な状態にする酸添加工程、
前記水性溶媒に二酸化炭素含有ガスを吹き込む、ガス吹き込み工程、
前記マグネシウム合金を電極の少なくともひとつとして、前記水性溶媒に通電して電解処理することにより、前記マグネシウム合金からマグネシウムイオンを溶出させ、炭酸マグネシウムを含む沈殿物を生成させる電解処理工程、
を含む、二酸化炭素固定方法であって、
前記電解処理工程において、条件を調整して、前記水性溶媒のpHを7~10に維持しながら電解処理を行う、方法
【請求項2】
前記ガス吹き込み工程において、二酸化炭素含有ガスの吹き込み後の前記水性溶媒のpHが4~6である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電解処理工程の前に、二酸化炭素ガスの吹き込みを停止する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性溶媒に電解質を添加する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記電解処理工程に用いる電極の少なくともひとつが炭素電極である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電解処理工程に用いられる電力が再生可能エネルギーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電解処理工程において発生する水素を回収する、水素ガス回収工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記沈殿物を回収する、沈殿物回収工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記マグネシウム合金が、スクラップまたは廃材である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素含有ガスが、プラントから排出される排気ガスに由来するものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
マグネシウム合金を処理するための水性溶媒を貯留する処理槽と、
前記水性溶媒に酸を添加する酸導入部材と、
前記水性溶媒に二酸化炭素含有ガスを吹き込むガス導入部材と、
前記水性溶媒に電圧を印加して電解処理を行うための一対の電極と、
前記一対の電極に接続された電源制御部材と、
前記水性溶媒のpHを測定するpH測定部材と、
を具備する二酸化炭素固定システムであって、
前記一対の電極の少なくとも一方が、前記マグネシウム合金を含む電極であり、
前記マグネシウム合金からマグネシウムイオンを電解処理によって溶出させ、炭酸マグネシウムを含む沈殿物を析出させる、システム。
【請求項12】
前記処理槽に電解質を添加するための電解質導入部材をさらに具備する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
運転時に発生する水素を回収するための水素回収部材をさらに具備する、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
運転時に発生する沈殿物を回収するための沈殿物回収部材をさらに具備する、請求項111~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理槽が単一の槽である、請求項11~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記マグネシウム合金が、スクラップまたは廃材である、請求項11~15のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素固定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化による気象災害が頻発し、温室効果ガスである二酸化炭素(CO)の削減は人類にとって急務である。既に種々のCO削減方法が提案され、実行されているが、十分なものとはいえない。例えばCCS(Carbon Capture and Storage)システムでは、火力発電所などで排出されるCOをアミン水溶液で吸収させている。COを吸収したアミン水溶液はその後に加熱されて、COは再び分離される。分離されて回収されたCOは再利用されて消費されることもあるが、余剰のCOも発生する。このような余剰のCOは、地中奥深くに放出して地層に貯留することが検討されているが、この方式で貯留できる地層はそう多くはない。また電気化学的にCOを還元して、有価物にして回収しようという研究も進められているが、いまだに実用には至っていない。
【0003】
また、COを鉄炭酸塩として固定化をする技術も検討されている。具体的には、鉄廃材を利用し、その鉄廃材をボールミルなどで粉砕させた後、COと反応させて、鉄炭酸塩としてCOを固定化する技術である。しかし、このような方法では、工程で使用するエネルギーの大きさが莫大なものとなり、そのエネルギーを得るために二酸化炭素が排出されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-012392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大気中COの削減方法は各種の方法が検討されているが、それらの方法の実施には一般的にエネルギーが利用される。したがって、非効的な方法ではかえってエネルギーを過大に消費して、結果的に、削減できるCOの量よりも多いCOを放出してしまうというリスクがある。例えばCCSでもCOを吸収したアミンからCOを分離する際にはエネルギーを消費する。その結果、発電所で放出されるCOを回収して分離するためのエネルギーが、発電所で発電される電力の40%に及ぶという試算もある。さらに遠方の地下貯留地にCOを輸送するためのエネルギー、あるいはそのための設備建設を含めると、必要とされるエネルギーは膨大なものになる。そのために、COの削減のためにはCOの発生を伴うというジレンマがあった。このために、COを安定かつ無害な形で固定化し、その処理を容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による二酸化炭素固定方法は、
水性溶媒にマグネシウム合金を浸漬する工程、
前記水性溶媒に二酸化炭素含有ガスを吹き込む、ガス吹き込み工程、
前記水性溶媒に通電して電解処理することにより炭酸マグネシウムを含む沈殿物を生成させる電解処理工程、
を含むものである。
【0007】
また、実施形態による二酸化炭素固定システムは、
マグネシウム合金を処理するための水性溶媒を貯留する処理槽と、
前記水性溶媒に二酸化炭素含有ガスを吹き込むガス導入部材と、
前記水性溶媒に電圧を印加して電解処理を行うための一対の電極と、
前記電極に接続された電源制御部材と、
を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態による二酸化炭素固定システムの概念図。
図2】実施形態による他の二酸化炭素固定システムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態では、COを固定化するための材料としてマグネシウム合金を用い、電解処理を組み合わせて、容易に実施可能であるCOの固定化方法と、その方法を簡便に運用することができるシステムを提供するものである。以下に、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0010】
マグネシウム合金を塩酸などの酸水溶液に接触させると、式(1)に示されるように溶解して、マグネシウムイオンを発生する。
Mg + 2HCl → Mg2+ + 2Cl + H↑ (1)
【0011】
このマグネシウムイオンを含む水溶液にCOを溶存させ、電解処理をすると炭酸マグネシウムを生成する。
Mg2+ + CO+ 2OH → MgCO↓+ HO (2)
【0012】
生成する炭酸マグネシウムは水に対して難溶性であるために沈殿として析出する。また、炭酸マグネシウムは毒性も低いので取り扱いが容易である。したがって、このような処理をすることでCOを無害な固形物として固定化することができる。
【0013】
このような反応を進行させるために、
まず、水性溶媒にマグネシウム合金を浸漬し、その水性溶媒に二酸化炭素含有ガスを吹き込み、
次いで、前記水性溶媒に通電して電解処理することにより炭酸マグネシウムを含む沈殿物を生成させる。
【0014】
まず、電解処理を行うために水性溶媒を用いる。水性溶媒は電解処理を行うことができるものであれば特に限定されず、有機溶媒等を含んでいてもよいが、一般的には水を主成分とする水性溶媒が用いられる。特に純度が高い必要はなく、水道水や地下水などを採用できる。なお、電解処理を効率的に行うために、マグネシウム合金を溶解可能にするための酸とは別に、塩類などの電解質を含むことが好ましい。そのような塩類は、もとから塩類を含む水性溶媒に含まれていてもよいし、最初に水性溶媒に添加されていてもよいし、電解処理の前、あるいは途中で添加されてもよい。
【0015】
マグネシウム合金はマグネシウムを含んでいるものであれば、どのような合金組成のものであってもよく、また不純物を含んでいてもよい。特に、マグネシウム合金を含むスクラップや廃材を利用することは、コストおよび環境保全の観点から好ましい。なお、用いられるマグネシウム合金の合金組成や、用いられるスクラップ等に含まれる成分によっては、(2)式の反応の進行を妨げられることがある。そのような場合には、(2)式が優先的に進行するような電解処理条件に調整することが好ましい。
【0016】
マグネシウム合金は、どのような形状であってもよく、それを水性溶媒に浸漬する方法も特に限定されない。水性溶媒中に水没させてもよいし、水性溶媒に接触するように吊り下げてもよい。また、マグネシウム合金を電解処理の際の電極とすることもできる。
【0017】
必要に応じて、あらかじめ水性溶媒に酸を添加しておくことができる。水性溶媒のpHを低くすることによって、(1)式によってマグネシウムの一部が溶解可能となってマグネシウムイオンを生成する。このとき、マグネシウム合金を浸漬する前の水性溶媒のpHを強酸性にすることが好ましく、具体的には、pHが2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。このとき、マグネシウム合金は完全に溶解する必要はない。マグネシウム合金を溶解させるには時間を要すること、および電解処理が進行すると、順次マグネシウムの溶解が進行することが理由である。なお、実施形態において、pHは実際に処理が行われている状態におけるpHである。したがって、温度は特定されない。pHが所望の範囲にない場合には、その処理時におけるpHを所望の範囲内に調整することが好ましい。
【0018】
用いられる酸は、塩酸に限定されず、硫酸、リン酸、硝酸、有機酸などの他の酸でも可能である。プラントなどから排出される余剰塩酸や余剰塩類を用いることもできる。
【0019】
なお、必ずしも酸を添加しなくても、pHが適当な水性溶媒を用いることでマグネシウム合金の一部を溶解可能な状態にすることができる。さらに、電解処理条件を調整することで、水性溶媒のpHを調整してマグネシウム合金を溶解させることもできる。なお、水性溶媒にマグネシウム合金を浸漬してから酸を添加してもよい。マグネシウム合金を浸漬すると、マグネシウムが溶解して酸が消費されるのでpHが上昇し、例えばpHが4~5程度になる。
【0020】
なお、この際に、(1)式からわかるように水素ガスが発生する。この水素ガスを回収して、エネルギー資源として再利用することもできる。
【0021】
次に、水性溶媒中に二酸化炭素含有ガスを吹き込む。二酸化炭素含有ガスが含む二酸化炭素濃度は1質量%以上が好ましい。より好ましくは10質量%以上である。ここで導入する二酸化炭素含有ガスは、プラントなどから排出される排気ガスなど、そのまま環境に放出されることが望ましくないガスであることが好ましい。このガス吹き込みによって、pHが変動するが、二酸化炭素含有ガスの吹き込み後の水性溶媒のpHが4~6となることが好ましい。このようなpHであると、COの溶解性が高くなり、より多くのCOの固定が可能となる。
【0022】
次いで、マグネシウムイオンとCOとが溶解している水性溶液を電解処理するが、その前に二酸化炭素含有ガスの導入を停止することが好ましい。二酸化炭素含有ガスの導入しながら電解処理をすることもできるが、この場合、最終的な沈殿物の生成効率が悪くなる傾向にあるためである。
【0023】
電解処理を行うに当たって、水性溶媒中に一対の電極を配置する。このとき、電極材料は、(2)式の反応が進行するものであれば特に限定されないが、好ましいもののひとつは炭素電極である。また、水性溶媒中に浸漬されているマグネシウム合金を電極とすることも好ましい。
【0024】
次いで、電極に電源を接続して電解処理を行うことによって、(2)式の反応を進行させて、炭酸マグネシウムを生成させる。このとき、利用する電力は、太陽光発電や風力発電などによる再生可能エネルギーであることが好ましい。また、グリッド上で余剰となった電力エネルギーを用いることも好ましい。
【0025】
電解処理は水性溶媒のpHが7~10の間にあることが好ましい。ここで、電解処理を行うことで、二酸化炭素含有ガス吹込み後の水性溶媒のpHは反応が進行することによって変動することがあるが、電解処理の条件を調整して、pHがこの範囲内になるようにすることが好ましい。このため、pH測定を行いながら電解条件を調整することが好ましい。なお、前述したように、電解処理に先立って、導電性を上げるために塩類などの電解質を水性溶媒に添加することもできる。
【0026】
電解処理の進行に伴い、炭酸マグネシウムを主成分とする沈殿物が生成する。電解処理は水性溶媒のpHが7~10の間にあることで効率よく沈殿物を生成することができる。この沈殿物は、水溶性が低いため、電解による反応に大きな影響を与えないが、電解処理を行う槽内に蓄積されているので、必要に応じて槽内から回収することが好ましい。回収された沈殿物は毒性が低いので、そのまま地中に埋設するなどの簡単な廃棄処理をすることが可能である。
【0027】
(第1の実施形態)
廃棄されたパーソナルコンピュータの筐体を分解し、5.7g重量を有する合金材料を切り取った。この筐体はマグネシウム合金であり、90%以上がマグネシウムである。2N(2mol/L)塩酸100mlにこの合金材料を投入し、泡の発生が少なくなるまで放置した。このときpH=1以下であった水性溶媒がpH=4.3になっていた。合金材料の1.57gが溶解していた。
【0028】
この水性溶媒にCOを30分吹き込んで溶解させた。この水性溶媒に電解質として濃度が3.5%になるようにNaClを添加した。
【0029】
引き続き合金材料を陽極に炭素電極を陰極として、pHを測定しながら、この水性溶媒に通電して電解処理を行った。pH=8を超えてから白色沈殿が生成した。生成した白色沈殿を濾過して乾燥したところ、重量は0.42gであった。この白色沈殿のIRスペクトルは、炭酸ナトリウムと塩化マグネシウムを水中で混合して生成する白色沈殿と完全一致していたことから、マグネシウム水酸化物と炭酸マグネシウムの混合体である塩基性炭酸マグネシウムMg(OH)・3MgCO・3HOであると判定した。この混合体に含まれる水酸化マグネシウムは、大気中のCO2を吸収して炭酸マグネシウムに変化するので、最終的に混合体のすべてが炭酸マグネシウムとなる。
【0030】
このようにしてマグネシウム合金廃材を利用してマグネシウム炭酸塩を簡単に生成させて、二酸化炭素の固定ができることが確認された。そのため、マグネシウム合金を含むスクラップおよび再生可能エネルギーを用いてこの方法を実施すれば、環境に優しく、かつさらなるCOの発生を抑制しながら、プラントから排出される二酸化炭素含有ガスに含まれるCOを固定化することができる。
【0031】
(第2-1の実施形態)
次に、実施形態によるシステムについて説明する。図1に、やや大型のマグネシウム合金スクラップを用いる、ひとつ目の実施形態の概念図を示す。
【0032】
処理槽101には、水性溶媒102が導入されている。水性溶媒102は、外部から配管102bを介して導入される。導入量は、バルブ102aで制御される。
【0033】
この水性溶媒102に、例えば車のボディーなどで使われたスクラップ(マグネシウム合金103)をクレーン(図示せず)で処理槽101中の水性溶媒102に投入する。スクラップは完全に水没させてもよいし、図1に示すように吊り下げられた状態であってもよい。
【0034】
スクラップの投入の前または後に、必要に応じて、水性溶媒102に、酸導入部材104から、バルブ104aおよび配管104bを介して酸を導入することができる。この酸によって、スクラップの一部が溶解可能となって、水性溶媒中にマグネシウムイオンが生成する。なお、この際に水素ガスが発生するので、水素回収部材(図示せず)で水素ガスを回収することもできる。
【0035】
次いで、水性溶媒102中に、二酸化炭素含有ガス導入部材105からバルブ105aおよび配管105bを介してCOを吹き込んで、水性溶媒102中にCOを溶解させる。
【0036】
所定の時間COを吹きこんだあと、またはpH測定部材108によりpHを測定し、適切なpH、例えばpH=4になったら、COの吹き込みを停止する。
【0037】
次いで、電力源109から配線109aを介して供給される、再生エネルギーを用いて、この水性溶媒に通電して電解処理をする。電解処理に先立って、水性溶媒にはあらかじめ適当な電解質を添加して電導度を調整しておくこともできる。電解質としては、例えばNaClを用いることができる。このときスクラップを陽極として使用し電解することができる。したがって、マグネシウム合金103と電極107に配線107aを介して電源制御部106から電力を供給して電解処理を行う。電解条件は、塩素が発生せず、かつ、電極に用いたスクラップのマグネシウム合金103からマグネシウムイオンが溶出するように、公知の条件に基づいて調整することができる。なお、電解処理中にもpH測定部材108でpHを測定し、逐次条件を調整することもできる。この電解処理によって、水性溶液102は次第に塩基性になり、炭酸マグネシウム、あるいは塩基性炭酸マグネシウムの沈殿物を生成する。
【0038】
このシステムは、必要に応じて、さらに生成した沈殿物を回収するための沈殿物回収部材110を備えることもできる。
【0039】
(第2-2の実施形態)
次に、実施形態によるもうひとつのシステムについて説明する。図2にその実施形態の概念図を示す。
【0040】
処理槽101aには、水性溶媒102が導入されている。水性溶媒102は、外部から配管102bを介して導入される。導入量は、バルブ102aで制御される。
【0041】
この水性溶媒102に、例えば車のボディーなどで使われたスクラップ(マグネシウム合金103)を処理槽101中の水性溶媒102に投入する。スクラップは図2に示すように完全に水没させてもよいし、一部が吊り下げられた状態であってもよい。
【0042】
スクラップの投入の前または後に、水性溶媒102に、酸導入部材104から、バルブ104aおよび配管104bを介して酸を導入する。この酸によって、スクラップの一部が溶解可能となり、水性溶媒中にマグネシウムイオンが生成する。なお、この際に水素ガスが発生するので、水素回収部材(図示せず)で水素ガスを回収することもできる。
【0043】
次いで、水性溶媒102中に、二酸化炭素含有ガス導入部材105からバルブ105aおよび配管105bを介してCOを吹き込んで、水性溶媒102中にCOを溶解させる。
【0044】
所定の時間COを吹きこんだあと、COの吹き込みを停止する。なお、処理槽101aに、別のpH測定部材を設けてpHを測定し、適切なpH、例えばpH=4になったときにCOの吹き込みを停止することもできる。
【0045】
pH吹き込み後、水性溶媒をバルブ101dを開放し、配管101cを通じて、処理槽101bに送液する。
【0046】
次いで、電力源109から配線109aを介して供給される、再生エネルギーを用いて、この処理槽101b中の水性溶媒に通電して電解処理をする。電解処理に先立って、水性溶媒にはあらかじめ適当な電解質を添加して電導度を調整しておくこともでき、その場合は電解質導入部材(図示せず)を通して水性溶媒に添加することができる。電解質としては、例えばNaClを用いることができる。このとき、電極107としては炭素電極を用いることが好ましい。電解条件は、塩素が発生せず、かつ、電極に用いたスクラップのマグネシウム合金103からマグネシウムイオンが溶出するように、公知の条件に基づいて調整することができる。なお、電解処理中にもpH測定部材108でpHを測定し、逐次条件を調整することもできる。この電解処理によって、水性溶液102は次第に塩基性になり、炭酸マグネシウム、あるいは塩基性炭酸マグネシウムの沈殿物を生成する。
【0047】
このシステムは、必要に応じて、さらに生成した沈殿物を回収するための沈殿物回収部材110を備えることもできる。
【0048】
以上の通り、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
101・・・処理槽
101a・・・第1槽
101b・・・第2層
101c・・・送液配管
102・・・水性溶媒
103・・・マグネシウム合金
104・・・酸導入部材
105・・・二酸化炭素導入部材
106・・・電源制御部
107・・・電極
108・・・pH測定部材
109・・・電力源
110・・・・沈殿物回収部材
101d、102a、104a、105a・・・バルブ
106a、107a、108a、109a・・・配線
図1
図2