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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】長尺部材の保持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/08 20060101AFI20240731BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20240731BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20240731BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20240731BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20240731BHJP
   F16B 37/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F16L3/08 D
F16B2/22 C
F16B5/07 L
F16B5/06 D
F16B7/04 302B
F16B37/02 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021050554
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022096576
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2020209572
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 知之
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-241569(JP,A)
【文献】特開2003-214559(JP,A)
【文献】特開2004-036725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0309305(US,A1)
【文献】中国実用新案第214889692(CN,U)
【文献】国際公開第2020/250683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/08
F16B 2/22
F16B 5/07
F16B 5/06
F16B 7/04
F16B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材を有する被固定部材に、前記軸部材を介して固定されて、長尺部材を保持する保持具であって、
前記長尺部材を保持する保持部が連結された枠状本体部を有する保持部材と、
弾性材料からなり、前記枠状本体部の内側に挿入される枠状部を有する防振部材と、
前記枠状部の内側に挿入されると共に、前記軸部材を受け入れる挿入部を有し、該挿入部の内側に前記軸部材に係止する係止部を設けた固定部材とを備え、
前記枠状本体部の内側に、第1係合面を有する第1係合部が設けられており、
前記挿入部の外面には、前記第1係合面に係合可能な第2係合面を有する第2係合部が設けられており、
前記枠状部には、前記第2係合部を外方に露出させる開口部が設けられており、
前記保持部材に前記防振部材及び前記固定部材が組付けられた状態で、前記第1係合面と前記第2係合面とが、クリアランスを介して対向配置されることを特徴とする長尺部材の保持具。
【請求項2】
前記枠状部には、前記被固定部材とは反対側の端面から延びるスリットが形成されており、このスリットが前記開口部をなしており、
前記枠状本体部の内側に、前記被固定部材側から前記枠状部を挿入して、前記保持部材と前記防振部材とを組付けるときに、前記スリット内を前記第1係合部が移動し、前記枠状部の内側に、前記被固定部材とは反対側から前記挿入部を挿入して、前記防振部材と前記固定部材とを組付けるときに、前記スリット内を前記第2係合部が移動するように構成されている、請求項1記載の長尺部材の保持具。
【請求項3】
前記枠状部の外面の、前記スリットの両側に、前記枠状本体部の内面に当接する突条部が設けられている請求項2記載の長尺部材の保持具。
【請求項4】
前記枠状本体部の対向する壁部の内側には、少なくとも一対の第3係合部が設けられており、
前記スリットは、前記枠状部の対向する一対の壁部に形成されており、該一対の壁部に交差する一対の壁部の外面に、前記第3係合部に係合する、第4係合部がそれぞれ設けられている請求項2又は3記載の長尺部材の保持具。
【請求項5】
前記枠状本体部の対向する壁部の内側には、少なくとも一対の第3係合部が設けられており、
前記枠状部は、対向して配置された一対の壁部と、各壁部に形成された一対の前記スリットと、該一対の前記スリットを介して形成された板状片と、各板状片の外面にそれぞれ設けられ、前記第3係合部に係合する第4係合部とを有しており、
前記枠状本体部には、前記枠状部の各スリットに挿入される4つの前記第1係合部が設けられ、前記挿入部には、前記枠状部の各スリットに挿入される4つの前記第2係合部が設けられている請求項2又は3記載の長尺部材の保持具。
【請求項6】
前記防振部材と前記固定部材との間には、前記第1係合面と前記第2係合面とが係合したときに、前記第1係合面と前記第2係合面との間にクリアランスが生じるように、前記挿入部を前記被固定部材に近接する方向に移動させる、第5係合部及び該第5係合部に係合する第6係合部が設けられている請求項1~5のいずれか1つに記載の長尺部材の保持具。
【請求項7】
前記第1係合部は、前記枠状本体部の内面から前記挿入部の外面に至らないように突出する突起状をなし、前記第1係合面は平坦面状をなしており、
前記第2係合部は、前記挿入部の外面から前記枠状本体部の内面に至らないように突出する突起状をなし、前記第2係合面は平坦面状をなしている請求項1~6のいずれか1つに記載の長尺部材の保持具。
【請求項8】
前記挿入部は、対向する一対の壁部を有しており、
該一対の壁部の対向方向に交差する側縁部に、前記第2係合部が形成されている請求項1~7のいずれか1つに記載の長尺部材の保持具。
【請求項9】
前記防振部材と前記固定部材との間には、前記第1係合面と前記第2係合面とが係合したときに、前記第1係合面と前記第2係合面との間にクリアランスが生じるように、前記挿入部を前記被固定部材に近接する方向に移動させる、第5係合部及び該第5係合部に係合する第6係合部が設けられており、
前記第6係合部は、前記挿入部を構成する前記壁部の前記側縁部であって、前記第2係合部よりも、前記被固定部材に近い位置に、設けられている請求項8記載の長尺部材の保持具。
【請求項10】
前記枠状本体部は、対向する一対の壁部を有しており、
各壁部の外面の一部に凹部が形成されており、該凹部を介して各壁部の内面から、前記枠状本体部の内方に向けて突出する、突出部が設けられており、該突出部に前記第1係合部が形成されており、
前記枠状部は、前記枠状本体部の、前記被固定部材側の端面に当接する当接部を有している請求項1~9のいずれか1つに記載の長尺部材の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状、管状又は棒状の長尺部材を保持するための、長尺部材の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車には、パイプや、チューブ、ワイヤ、ケーブル、ハーネス等が用いられているが、これらは絡まったり、他部材と干渉したり、破損したり等の不都合が生じることがあるため、通常は何らかの保持具に収容保持されて、該保持具を介して車内の所定位置に配設されることが多い。
【0003】
従来のこの種のものとして、例えば、下記特許文献1には、配管を保持する配管保持部材と、この配管保持部材の挿通孔に挿入されて装着され、筒状の弾性部材と、この弾性部材の筒内孔に挿入されて、車体の係合部材(スタッドボルト等)に係止される係止部材とからなる、配管支持部材が記載されている。
【0004】
上記配管支持部材は、以下のようにして車体パネル等の被固定部材に固定される。まず、配管保持部材の挿通孔に弾性部材を挿入し、同弾性部材の筒内孔に係止部材を挿入して、配管支持部材を組付けておく。そして、係止部材の中心が、スタッドボルトの軸心に概ね整合するように位置合わせした後、車体パネルに対して配管支持部材を押し込んでいく。すると、弾性部材の下端開口側からスタッドボルトが挿入されて、係止部材の複数の突起がスタッドボルトに係止することで、車体パネルに配管支持部材が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-241569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、係止部材の中心を、スタッドボルトの軸心に位置合わせした後、車体パネルに対して配管支持部材を押し込んでいくようになっている。この際、係止部材の中心に対して、スタッドボルトの軸心が位置ずれした状態で、配管支持部材を押し込んでいくと、スタッドボルトによって、弾性部材や係止部材が押し上げられてしまうことがあった。この場合、配管保持部材の挿通孔の上方開口から、弾性部材が浮き上がったり、弾性部材の筒孔内の上方開口から、係止部材が浮き上がったりして、車体パネルに配管支持部材を安定して固定することが難しい。また、配管保持部材の挿通孔の上方開口から、弾性部材が浮き上がった場合には、弾性部材による防振性能を十分に確保しにくい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、被固定部材に対する固定時に、枠状本体部からの枠状部や挿入部の浮き上がりを防止して、被固定部材に安定して固定することできると共に、十分な防振性能を確保することができる、長尺部材の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、軸部材を有する被固定部材に、前記軸部材を介して固定されて、長尺部材を保持する保持具であって、前記長尺部材を保持する保持部が連結された枠状本体部を有する保持部材と、弾性材料からなり、前記枠状本体部の内側に挿入される枠状部を有する防振部材と、前記枠状部の内側に挿入されると共に、前記軸部材を受け入れる挿入部を有し、該挿入部の内側に前記軸部材に係止する係止部を設けた固定部材とを備え、前記枠状本体部の内側に、第1係合面を有する第1係合部が設けられており、前記挿入部の外面には、前記第1係合面に係合可能な第2係合面を有する第2係合部が設けられており、前記枠状部には、前記第2係合部を外方に露出させる開口部が設けられており、前記保持部材に前記防振部材及び前記固定部材が組付けられた状態で、前記第1係合面と前記第2係合面とが、クリアランスを介して対向配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、保持部材に防振部材及び固定部材が組付けられた状態で、軸部材を挿入部内に挿入していく際に、挿入部の中心と軸部材の軸心とが位置ずれして挿入されて、軸部材により挿入部が押し上げられても、第1係合面と第2係合面とが係合することにより、枠状本体部から挿入部が浮き上がることを防止できる。その結果、被固定部材に対して保持具を安定して固定することができる。また、枠状本体部からの挿入部の浮き上がりが防止されるので、防振部材の浮き上がりも抑制することができ、防振性能を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る長尺部材の保持具の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同保持具の斜視図である。
図3図2のA-A矢示線における断面図である。
図4図2のB-B矢示線における断面図である。
図5図1のD-D矢視線における枠状部の断面図、及び、枠状部に挿入される挿入部の断面図である。
図6図1のE-E矢示線における断面図である。
図7】同保持具を構成する防振部材の底面図である。
図8】軸部材の軸心と挿入部の中心とが位置ずれした状態で、保持具を被固定部材に固定する際の説明図である。
図9】軸部材の軸心と挿入部の中心とが位置ずれした状態で、保持具を被固定部材に固定する際の、図8とは異なる角度における説明図である。
図10】本発明に係る長尺部材の保持具の、他の実施形態を示す分解斜視図である。
図11】同保持具の斜視図である。
図12】同保持具を構成する保持部材の要部拡大平面図である。
図13】同保持具を構成する防振部材の平面図である。
図14】同保持具を構成する固定部材の底面図である。
図15図11のG-G矢示線における断面図である。
図16図11のH-H矢示線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(長尺部材の保持具の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る長尺部材の保持具の一実施形態について説明する。
【0012】
図3に示すように、この実施形態の長尺部材の保持具10(以下、単に「保持具10」ともいう)は、軸部材5を有する被固定部材1に、軸部材5を介して固定されて、長尺部材P(図2参照)を保持するものである。
【0013】
また、図3に示すように、この実施形態では、車体パネルや車体フレーム等の、被固定部材1の被固定面3(被固定部材1の厚さ方向の一側部であり、保持具が配置される側の面を意味する)から軸部材5が突出している。
【0014】
上記の軸部材5としては、例えば、被固定面3から一体又は別体で立設し、外周面にネジ溝を設けたいわゆるスタッドボルトが挙げられる。また、この実施形態における軸部材5は、その軸方向(軸心C1に沿った方向を意味する)が、前記被固定面3の面方向に対して垂直となっている。なお、軸部材5は、スタッドボルトに限定されるものではなく、例えば、角柱状や円柱状をなした柱状部材であってもよく、固定部材70の固定手段(これについては後述する)が係合可能であればよい。
【0015】
前記長尺部材Pは、例えば、パイプや、チューブ、ホース、ロッド、ワイヤ、ケーブル、ハーネス、コード等の、線状、管状又は棒状の部材である。
【0016】
図1に示すように、この保持具10は、保持部21及び枠状本体部30を有する保持部材20と、枠状部51を有する防振部材50と、挿入部71及び係止部89を有する固定部材70とから主として構成されている。そして、枠状本体部30の内側に枠状部51が挿入されると共に、この枠状部51の内側に挿入部71が挿入されることで、図3~5に示すように、保持部材20に防振部材50及び固定部材70が組付けられるようになっている。
【0017】
なお、上記の保持部材20に防振部材50及び固定部材70が組付けられた状態とは、枠状部51が枠状本体部30に最大挿入位置まで挿入され、かつ、挿入部71が枠状部51に最大挿入位置まで挿入された状態であることを意味する。この実施形態では、図3に示すように、枠状部51の後述する当接部61のフランジ部62が、枠状本体部30の一端35に当接することで、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置が規制されるようになっており、また、挿入部71の後述する押し込み部75が、枠状部51の他端59に当接することで、枠状部51に対する挿入部71の最大挿入位置が規制されるようになっている。
【0018】
すなわち、図4に示すように、保持部材20の枠状本体部30には、第3係合部45が設けられており、防振部材50の枠状部51には、第4係合部67が設けられている。そして、図1の矢印F1に示すように、枠状本体部30の内側に、被固定部材1側から枠状部51が挿入されると、図4に示すように、第3係合部45及び第4係合部67が互いに係合して、保持部材20に防振部材50が組付けられるようになっている。
【0019】
また、図3に示すように、保持部材20の枠状本体部30には、第1係合部41が設けられており、固定部材70の挿入部71には、第2係合部85が設けられている。更に図5に示すように、防振部材50の枠状部51には、第5係合部69が設けられており、固定部材70の挿入部71には、第6係合部87が設けられている。
【0020】
そして、図1の矢印F2に示すように、枠状部51の内側に、被固定部材1と反対側から挿入部71が挿入されると、図3に示すように、第1係合部41及び第2係合部85がクリアランスCLを介して対向配置されると共に、図5に示すように、第5係合部69及び第6係合部87が互いに係合して、防振部材50に固定部材70が組付けられるようになっている。
【0021】
次に、保持具10を構成する各部材について説明する。
【0022】
まず、保持部材20について説明する。図1に示すように、この保持部材20は、長尺部材Pを保持する保持部21が連結された枠状本体部30を有している。
【0023】
この実施形態における枠状本体部30は、互いに平行に対向配置された一対の壁部31,31と、これらの一対の壁部31,31に対して直交するように対向配置された一対の壁部33,33とを有しており、一端35側及び他端37側が開口した略四角枠状をなしている。壁部31の幅(一対の壁部31,31の配列方向に直交する方向の長さ)、及び、壁部33の幅(一対の壁部33,33の配列方向に直交する方向の長さ)は、同一となっている。そのため、枠状本体部30は、正方形の四角枠状をなしている。
【0024】
なお、枠状本体部30の一端35側とは、被固定部材1に近接した側(被固定部材1の被固定面3に向く側)を意味する。また、枠状本体部30の他端37側とは、一端35側とは反対側であって、被固定部材1から離反する側を意味する。これは、上記の軸部材5や、以下に説明する、防振部材50の各部(枠状部51等)や固定部材70の各部(挿入部71等)における「一端側」や「他端側」も同様の意味である。
【0025】
そして、枠状本体部30の一端35側の開口から、枠状部51が挿入されるようになっている。また、各壁部31の一端35側には、一対の切欠き31a,31aがそれぞれ形成されている。
【0026】
また、図1に示すように、枠状本体部30の内側には、第1係合面41c(図3参照)を有する第1係合部41が設けられている。
【0027】
この実施形態では、各壁部31の他端37側の内面であって、その幅方向中央に、コ字状スリット39を介して、撓み変形可能な第1係合部41がそれぞれ形成されている。各第1係合部41は、壁部31の内面から、枠状本体部30の中心C2(図3参照)に向けて突出し、且つ、固定部材70の挿入部71の外面に至らないように突出する、突起状をなしている。
【0028】
また、図3に示すように、各第1係合部41は、壁部31の内面から最も突出した頂部41aと、該頂部41aから他端37側に向けて次第に突出量が小さくなるテーパ面41bと、該テーパ面41bの反対側に配置された前記第1係合面41cとからなる。なお、第1係合面41cは、枠状本体部30の軸方向(枠状本体部30の両端開口を通過する方向)に対して直交する平坦面状をなしている。
【0029】
また、図3に示すように、各第1係合部41は、挿入部71の外面に至らないように突出しているので、第1係合部41の頂部41a及び両面41b,41cと、挿入部71の外面との間に、所定の隙間S1が形成されるようになっている。更に、各第1係合部41は、挿入部71の外面に至らないが、第2係合部85には重なるように(ラップするように)突出している(図3参照)。
【0030】
また、枠状本体部30の内側には、少なくとも一対の第3係合部45,45が設けられている。
【0031】
具体的に説明すると、図1及び図6に示すように、各壁部33の内面側からは、一端35から他端37に亘って、互いに平行に延びる一対の第1突条部43,43が設けられており、これらの第1突条部43,43の間に、第3係合部45が突設されている。
【0032】
図4に示すように、この第3係合部45は、壁部33の内面から最も突出した頂部45aと、該頂部41aから一端35側に向けて次第に突出量が小さくなるテーパ面45bと、該テーパ面45bの反対側に配置された第3係合面45cとからなる。また、第3係合面45cは、枠状本体部30の軸方向に対して直交する平坦面状をなしている。なお、この第3係合部45は、枠状部51の第4係合部67に係合する(図4参照)。
【0033】
一方、前記保持部21は、枠状本体部30の一方の壁部31側に連設されている。この保持部21は、前記壁部31の、被固定面3側の箇所から、枠状本体部30の軸方向に直交する方向に所定長さで延びる底壁23と、該底壁23から所定間隔をあけて、枠状本体部30の軸方向に沿って延びる複数の保持壁25とを有している。また、図8に示すように、底壁23と、複数の保持壁25とによって、長尺部材Pを保持するための保持空間27が、複数画成されている。また、各保持壁25の内面(保持空間27側に向く面)からは、複数の保持爪29が、前記底壁23側に向けて斜め内方に延出している。その結果、複数の保持空間27に、複数の長尺部材Pを、抜け止め保持可能となっている。なお、保持部の形状や構造は、長尺部材Pを保持可能であれば、特に限定はされない。
【0034】
以上説明した保持部材は、この実施形態の場合、全ての部分(保持部、枠状本体部、第1係合部、第1突条部、第3係合部等)は、周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、保持部材の各部分(保持部、枠状本体部、第1係合部、第1突条部、第3係合部等)の形状や構造等は、特に限定されない。また、この実施形態では、一対の第1係合部41,41及び一対の第3係合部45,45を有しているが、第1係合部や第3係合部は単独(1個)でも良いし、2対以上であってもよい。
【0035】
次に、防振部材50について説明する。
【0036】
この防振部材50は、弾性材料からなり、枠状本体部30の内側に、被固定部材1側から挿入される枠状部51を有している。また、枠状部51の一端57側に、枠状本体部30よりも突出して、被固定部材1に当接するようになっている。
【0037】
図1図4、及び図5を参照すると、この実施形態の枠状部51は、互いに平行に対向配置された一対の壁部53,53と、これらの一対の壁部53,53に対して直交するように対向配置された一対の壁部55,55とを有しており、一端57側及び他端59側が開口した略四角枠状をなしている。
【0038】
なお、図1に示すように、壁部53の幅(一対の壁部53,53の配列方向に直交する方向の長さ)は、壁部55の幅(一対の壁部55,55の配列方向に直交する方向の長さ))よりも小さく形成されている。そのため、枠状部51は、長方形の四角枠状となっている。また、枠状部51の各壁部53の幅は、枠状本体部30の各壁部31の幅よりも小さく、かつ、枠状部51の各壁部55の幅は、枠状本体部30の各壁部33の幅よりも小さく形成されている。その結果、枠状本体部30の内側に枠状部51が挿入可能で、且つ、その挿入状態では、枠状本体部30の内周全周と、枠状部51の外周全周との間に、所定の隙間が形成されるようになっている。
【0039】
また、枠状部51は、その一端57側が枠状本体部30よりも突出して被固定部材1に当接する、当接部61を有している。なお、この当接部61は、枠状本体部30の、被固定部材1側の端面(枠状本体部30の一端35側の端面)にも当接する。この当接部61は、枠状部51の一端57側の外周から、薄肉板状をなして外方に向けて張り出した、フランジ部62と、該フランジ部62の一端57側の面から突出した突部63とからなる。
【0040】
この実施形態では、一方の壁部53及びその両側の壁部55,55に亘って、一つのフランジ部62が張り出すと共に、他方の壁部53及びその両側の壁部55,55に亘って、もう一つのフランジ部62が張り出しており、両フランジ部62,62の間には隙間が形成されている。
【0041】
また、図7に示すように、一対のフランジ部62,62の、各角部近傍から、一端57側の開口57aの対応する角部に向けて広がるようにして、複数の突部63が設けられている。また、各突部63の内周63a(枠状部51の中心C3に向く周面)は、円弧状をなしており、開口57aの角部との干渉を防ぎつつ、突部63の、被固定面3に対する当接面積を、最大限に確保可能となっている。
【0042】
そして、図1の矢印F1に示すように、枠状本体部30の内側に、被固定部材1側から枠状部51を挿入して、保持部材20に防振部材50を組付ける際に、枠状本体部30の一端35側の端面に、枠状部51の当接部61のフランジ部62が当接することで、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置が規制されるようになっている(図3参照)。すなわち、この実施形態では、当接部61を構成するフランジ部62が、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置を規制する部分となっている。また、突部63が、被固定部材1の被固定面3に当接するようになっている。
【0043】
更に図1に示すように、各壁部53の一端57側の外面と、対応するフランジ部62の他端59側の面との間には、一対の突起64,64が突設されている。これらの一対の突起64,64は、枠状本体部30の内側に枠状部51が挿入されるときに、枠状本体部30側の一対の切欠き31a,31aにそれぞれ嵌合するようになっている。そのため、保持部材20に対する防振部材50の誤組付けが防止されるようになっている。なお、枠状部51に設けた突起64が、枠状本体部30の切欠き31aに嵌合することによっても、上述したフランジ部62と枠状本体部30の一端35側の端面とのように、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置が規制される。
【0044】
図1及び図3に示すように、防振部材50には、挿入部71に設けた第2係合部85を、枠状部51の外方に露出させる開口部が設けられている。
【0045】
図1に示すように、この実施形態では、枠状部51を構成する一対の壁部53,53の幅方向中央であって、被固定部材1とは反対側の端面(他端59側の端面)から、被固定部材1側に向けて一定幅で延びるスリット65がそれぞれ形成されている。このスリット65が、本発明における「開口部」をなしている。また、スリット65は、壁部53の外面側、内面側、及び、他端59側が開口すると共に、一端57側が閉塞しており、この閉塞した壁面を、スリット一端面65aとする。
【0046】
そして、図1の矢印F1に示すように、枠状本体部30の内側に、被固定部材1側から枠状部51を挿入して、保持部材20と防振部材50とを組付けるときに、スリット65内を第1係合部41が移動し、図1の矢印F2に示すように、枠状部51の内側に、被固定部材1とは反対側から挿入部71を挿入して、防振部材50と固定部材70とを組付けるときに、スリット65内を、挿入部71に設けた第2係合部85が移動するように構成されている。
【0047】
また、枠状部51を構成する壁部53の、スリット65の両側に、枠状本体部30の内面に当接する、一対の第2突条部65a,65aが設けられている。各第2突条部67は、他端59から一端57側に向けて延びており、一端57側の端部が、前記フランジ部62の他端59側の面に連結されている。この第2突条部65bが、本発明における「突条部」をなしている。なお、一対の第2突条部65b,65bの間の間隙も、上記スリット65の一部をなしている。
【0048】
図1に示すように、枠状部51を構成する一対の壁部55,55の外面であって、他端59側の幅方向中央には、枠状本体部30に設けた一対の第3係合部45,45に係合する、第4係合部67がそれぞれ設けられている。
【0049】
図4に示すように、各第4係合部67は、壁部55の外面から最も突出した頂部67aと、該頂部67aから他端59側に向けて次第に突出量が小さくなるテーパ面67bと、該テーパ面67bの反対側に配置された第4係合面67cとからなる。なお、第4係合面67cは、枠状部51の軸方向(枠状部51の両端開口を通過する方向)に対して直交する平坦面状をなしている。
【0050】
また、図5に示すように、枠状部51を構成する一対の壁部55,55の内面であって、一端57寄りの位置には、固定部材70の後述する第6係合部87に係合する、第5係合部69が設けられている。図7を併せて参照すると、各壁部55の内面の幅方向両側から、一対の第5係合部69,69がそれぞれ突設されている。なお、各第5係合部69は、隣接する壁部53にも連結されている。
【0051】
図5に示すように、各第5係合部69は、壁部55の内面から最も突出した頂部69aと、該頂部69aから他端59側に向けて次第に突出量が小さくなるテーパ面69bと、該テーパ面69bの反対側に配置された第5係合面69cとからなる。なお、第5係合面69cは、枠状部51の軸方向に対して直交する平坦面状をなしている。
【0052】
以上説明した防振部材50は、この実施形態の場合、全ての部分(枠状部、フランジ部、当接部、第2突条部、第4係合部、第5係合部等)が、例えば、ゴムや弾性エラストマー等の、防振性能を有する弾性樹脂材料によって、一体形成されている。また、防振部材の各部分(枠状部、フランジ部、当接部、第2突条部、第4係合部、第5係合部等)の形状や構造等は、特に限定されない。また、この実施形態では、一対の第4係合部67,67、及び、一対の第5係合部69,69を有しているが、これらの第4係合部や第5係合部は単独(1個)でも良いし、2対以上であってもよい。更に、この実施形態における「開口部」は、スリット65となっているが、開口部としては、例えば、長孔や楕円形孔等であってもよい。また、この実施形態では、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置を規制する部分は、フランジ部62や突起64となっているが、枠状部の最大挿入位置を規制する形状や構造としては、これに限定されるものではない。
【0053】
次に、固定部材70について説明する。
【0054】
この固定部材70は、枠状部51の内側に挿入されると共に、軸部材5を受け入れて同軸部材5に固定される挿入部71と、被固定部材1に係合する係止部89とを有している。
【0055】
この実施形態における挿入部71は、所定長さで延びる長板状をなし、互いに平行に対向配置された一対の壁部73,73と、これらの壁部73,73の他端83側に連結され、保持具10の組付け作業者に押し込まれる部分となる略四角板状をなした押し込み部75と、一対の壁部73,73一端81側に連結された先端部77とを有している。
【0056】
また、押し込み部75及び先端部77の中央には、軸部材5が挿入される、円形状の軸孔75a,77aがそれぞれ形成されている。なお、これらの軸孔75a,77aの中心を通過する部分が、挿入部71の中心C4となっている。更に、押し込み部75と先端部77との間であって、軸孔73a,77aに挿入される軸部材5に干渉しない位置には、複数の補強部79が設けられており、固定部材70全体の補強が図られている。
【0057】
図1及び図3に示すように、挿入部71の外面には、第1係合面41cに係合する第2係合面85cを有する第2係合部85が設けられている。
【0058】
この実施形態では、挿入部71を構成する一対の壁部73,73の外面側であって、壁部73の幅方向(一対の壁部73,73の配列方向に直交する方向)の中央で、且つ、やや一端81寄りの位置に、第2係合部85がそれぞれ突設されている。また、各第2係合部85は、挿入部71の外面から、枠状本体部30の内面に至らないように突出する、突起状をなしている。
【0059】
図3に示すように、各第2係合部85は、壁部73の外面から最も突出した頂部85aと、該頂部85aから一端81側に向けて次第に突出量が小さくなるテーパ面85bと、該テーパ面85bの反対側に配置された前記第2係合面85cとからなる。なお、第2係合面85cは、挿入部71の軸方向(挿入部71の両端軸孔を通過する方向)に対して直交する平坦面状をなしている。
【0060】
また、図3に示すように、各第2係合部85は、枠状本体部30の内面に至らないように突出しているので、第2係合部85の頂部85a及び両面85b,85cと、枠状本体部30の内面との間に、所定の隙間S2が形成されるようになっている。
【0061】
更に図3に示すように、各第2係合部85は、枠状本体部30の内面には至らないが、第1係合部41には重なるように(ラップするように)突出している。そして、図3に示すように、保持部材20に防振部材50及び固定部材70が組付けられた状態(枠状部51が枠状本体部30に最大挿入位置まで挿入され、かつ、挿入部71が枠状部51に最大挿入位置まで挿入された状態)で、第1係合面41cと第2係合部85cとが、クリアランスCLを介して対向配置されている。なお、第1係合部41は、第2係合部85よりも、軸部材5の他端寄りに位置ずれした状態で、両係合部41,85が対向して配置されている。
【0062】
その結果、枠状本体部30に対して、挿入部71が被固定部材1から離反する方向に移動したとき、すなわち、保持具10の挿入部71中心C4に対して、軸部材5の軸心C1が位置ずれした状態で挿入されて、軸部材5により挿入部71や枠状部51が押し上げられたときに(図9参照)、図9の二点鎖線で示すように、第1係合面41cと第2係合面85cとが係合するように構成されている。
【0063】
また、図3に示すように、保持部材20に防振部材50及び固定部材70が組付けられて、第1係合面41cと第2係合部85cとが、クリアランスCLを介して対向配置された状態では、スリット65のスリット一端面65aが、第2係合部85のテーパ面85bの最も低い位置に係合可能に配置されている。
【0064】
更に、挿入部71を構成する各壁部73の一端81側であって、その幅方向両側には、防振部材50に設けた第5係合部69に係合する、第6係合部87,87が形成されている。
【0065】
図5に示すように、各第6係合部87は、壁部73の幅方向側縁部から最も凹んだ底部87aと、該底部87aから他端83側に向けて次第に突出量が大きくなるテーパ面87bと、該テーパ面87bの反対側に配置された第6係合面87cとからなる。なお、第6係合面87cは、挿入部71の軸方向に対して直交する平坦面状をなしている。
【0066】
そして、図1の矢印F2に示すように、枠状部51の内側に、被固定部材1とは反対側から挿入部71を挿入して、防振部材50に固定部材70を組付ける際に、枠状部51の他端59側の端面に、挿入部71の押し込み部75が当接して、枠状部51に対する挿入部71の最大挿入位置が規制されるようになっている(図3参照)。すなわち、この実施形態では、押し込み部75が、枠状部51に対する挿入部71の最大挿入位置を規制する部分となっている。
【0067】
その後、図5に示すように、第6係合部87内に第5係合部69が入り込むと、第5係合部69の頂部69aが、第6係合部87の底部87aに当接し、第5係合部69のテーパ面69bが、第6係合部87のテーパ面87bに当接すると共に、第5係合部69の第5係合面69cが、第6係合部87の第6係合面87cに係合して、防振部材50に固定部材70が組付けられるようになっている。
【0068】
この状態で、スタッドボルト等の軸部材5に挿入部71が押し上げられて、枠状本体部30に対して、挿入部71が被固定部材1から離反する方向に移動すると、それに伴って挿入部71の第6係合面87cによって、枠状部51の第5係合面69cが押し上げられて、第5係合部69が弾性変形する。その結果、第1係合面41cと第2係合面85cとが係合するが(図9の二点鎖線参照)、枠状部51は弾性材料からなるので、その第5係合部69が弾性復元して、第5係合面67cによって、挿入部71の第6係合面87cを押し下げる。その結果、図3に示すように、第1係合面41cと第2係合面85cとの間に、再度クリアランスCLが生じるように、挿入部71を被固定部材1に近接する方向に移動させることが可能となっている。
【0069】
また、図3に示すように、固定部材70には、軸部材5に係止する係止部89を有している。この実施形態の係止部89は、壁部73の内面(挿入部71の内部空間に向く面)から、他端83側に向けて斜め内方に延出した形状をなしており、各壁部73に複数設けられている。そして、図3に示すように、各係止部89の延出方向の先端部89aが軸部材5に係止する(ここでは先端部89aが軸部材5であるスタッドボルトのネジ溝に係止する)。その結果、軸部材5を介して、被固定部材1に保持具10が固定されるようになっている(図3参照)。なお、係止部としては、軸部材に係止可能であれば、その形状や構造は特に限定されない。
【0070】
以上説明した固定部材70は、この実施形態の場合、全ての部分(挿入部、第2係合部、第6係合部、係止部等)は、周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、固定部材の各部分(挿入部、第2係合部、第6係合部、係止部等)の形状や構造等は、特に限定されない。また、この実施形態では、一対の第2係合部85,85、及び、一対の第6係合部87,87を有しているが、これらの第2係合部や第6係合部は単独(1個)でも良いし、2対以上であってもよい。
【0071】
(作用効果)
次に、上記構成からなる保持具10の使用方法について説明する。
【0072】
まず、保持部材20と防振部材50と固定部材70とからなる、保持具10を組立てる。すなわち、枠状本体部30の壁部31,31に設けた、各一対の切欠き31a,31aに、枠状部51の、対応する一対の突起64,64を位置合わせした状態で、図1の矢印F1に示すように、枠状本体部30の内側に被固定部材1から枠状部51を挿入、すなわち、枠状本体部30の一端35側の開口から、枠状部51を、その他端59側から枠状本体部30内に挿入していく。
【0073】
すると、枠状本体部30に設けた一対の第1突条部43,43の間に、枠状部51の各第4係合部67が入り込んでガイドされつつ、各第4係合部67のテーパ面67bが、枠状本体部30の各壁部33の内面に押圧されて、枠状部51が、スリット65,65を介して、一対の壁部55,55の他端59側が互いに近づくように撓み変形しながら挿入されていく。また、枠状部51の一対のスリット65,65内を、枠状本体部30の一対の第1係合部41,41が移動していく。
【0074】
そして、枠状本体部30の一対の切欠き31a,31aに、枠状部51の突起64,64が嵌合し、且つ、枠状部51の当接部61のフランジ部62が、枠状本体部30の一端35側の端面に当接するまで、枠状部51を押し込む。すると、第4係合部67の頂部67aが、枠状本体部30の第3係合部45の頂部45aを乗り越えて、撓み変形した枠状部51が弾性復帰して、図4に示すように、第3係合部45の第3係合面45cと第4係合部67の第4係合面68cとが互いに係合し、保持部材20に防振部材50を組付けることができる。この状態では、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置が規制されると共に、スリット65の両側に設けた一対の第2突条部65a,65aが、枠状本体部30の内面(ここでは壁部33の内面)に当接するようになっている。
【0075】
その後、枠状本体部30の内側に挿入配置された枠状部51の一対のスリット65,65に、挿入部71の一対の第2係合部85,85をそれぞれ位置合わせし、図1の矢印F2に示すように、枠状部51の内側に被固定部材1とは反対側から挿入部71を挿入、すなわち、枠状部51の他端59側の開口から、挿入部71を、その一端81側から枠状部51内に挿入していく。
【0076】
すると、枠状部51の一対のスリット65,65内を、挿入部71の一対の第2係合部85,85が移動して、各第2係合部85のテーパ面85bが、枠状本体部30の各第1係合部41のテーパ面41bを押圧して、各第1係合部41を枠状本体部30の外方に撓み変形させる。それと共に、挿入部71の一端81側の幅方向両側角部が、枠状部51の各第5係合部69のテーパ面69bを押圧して、枠状部51の一対の壁部55,55の一端57側を互いに離反する方向にやや撓み変形させる。
【0077】
更に、枠状部51の他端59側の端面に、押し込み部75が当接するまで、挿入部71を押し込むと、枠状部51に対する挿入部71の最大挿入位置が規制されると共に、挿入部71の各第6係合部87内に、枠状部51の第5係合部69が入り込んで、第5係合部69の第5係合面69cが、第6係合部87の第6係合面87cに係合して(図5参照)、防振部材50に固定部材70を組付けることができる。それと共に、各第2係合部85の頂部85aが、各第1係合部41の頂部41aを乗り越えることで、各第1係合部41が弾性復帰して、図3に示すように、第1係合部41の第1係合面41cと、第2係合部85の第2係合面85cとが、クリアランスCLを介して対向配置される。
【0078】
こうして、図2に示すように、保持部材20に防振部材50及び固定部材70をそれぞれ組付けて、保持具10を組立てることができる。
【0079】
この実施形態では、上記のように、保持部材20と防振部材50とを組付けるとき、及び、防振部材50と固定部材70とを組付けるときに、枠状部51に形成したスリット65内を第1係合部41及び第2係合部85が移動するようになっている。そのため、スリット65内において、両係合部41,85をガイドしつつ移動させることができ、各部材間の組付け作業性を向上させることができる。また、保持部材20の枠状本体部30に、被固定部材1側から防振部材50の枠状部51を挿入するときに、上記スリット65によって、枠状部51の挿入方向先端側を窄ませることができるので、保持部材20に対する防振部材50の組付け作業性を向上させることができる。
【0080】
その後、保持具10を、軸部材5を介して被固定部材1に固定する。すなわち、軸部材5の軸心C1に、固定部材70の挿入部71の中心C4を位置合わせした状態で、保持具10を、被固定面3に近接する方向となるように、被固定部材1に向けて押し込んでいく。すると、軸部材5が、その他端側から、枠状部51の一端57側の開口57aを通過して、挿入部71の内側に受け入れられて、複数の係止部89に係止していく。その後、枠状部51の当接部61の突部63が、被固定面3に当接するまで、保持具10を押し込むことで、軸部材5を介して、被固定部材1に保持具10を固定することができる。
【0081】
そして、保持部材20の保持部21の保持空間27に、長尺部材Pを挿入することで、同長尺部材Pが保持爪29によって保持されて、保持具10を介して被固定部材1に、長尺部材Pを配設することができる。なお、長尺部材Pは、保持具10を被固定部材1に固定した後で、保持するようにしてもよい。
【0082】
ところで、上記のように、保持具10を被固定部材1に固定すべく、軸部材5の軸心C1に、挿入部71の中心C4を位置合わせした状態で、保持具10を被固定部材1に向けて押し込む際に、図8に示すように、軸部材5の軸心C1と挿入部71の中心C4とが位置ずれしてしまうことがある。この場合、図9に示すように、軸部材5が挿入部71内に受け入れられずに、軸部材5の他端によって、挿入部71の一端81側の端面が押し上げられることになる(図9の紙面上、右側の軸部材5を参照)。
【0083】
しかし、この保持具10においては、図9の二点鎖線で示すように、クリアランスCLを介して対向配置された第1係合面41cと第2係合面85cとが互いに係合するので、、枠状本体部30の他端37側の開口から、挿入部71が浮き上がることを防止することができる。また、この実施形態では、第5係合部69及び第6係合部87が係合するようになっているので(図5参照)、枠状本体部30からの挿入部71の浮き上がりが防止されることで、防振部材50の浮き上がりも抑制することができる。
【0084】
更に、挿入部71の中心C4に対して位置ずれした軸部材5が、枠状部51を押し上げることもある(図9の紙面上、左側の軸部材5を参照)。この場合、枠状部51は、その当接部61のフランジ部62が、枠状本体部30の一端35側の端面に当接して、枠状本体部30に対する枠状部51の最大挿入位置が規制されるので、枠状本体部30の他端37側の開口から、枠状部51が浮き上がることを防止することができる。
【0085】
上記のようにして、この保持具10においては、枠状本体部30の他端37側の開口からの、挿入部71や枠状部51の浮き上がりを防止することができるので、被固定部材1に対して保持具10を安定して固定することができる。
【0086】
また、枠状本体部30の他端37側の開口からの、枠状部51の浮き上がりが防止されるので、防振部材50の防振性能を十分に確保することができる(枠状部51が浮き上がると、所定の防振性能が発揮させにくくなる)。
【0087】
更に、保持部材20に防振部材50及び固定部材70が組付けられた状態で、第1係合面41cと第2係合面85cとの間にクリアランスCLが存在するため、被固定部材1から防振部材50に伝達される振動を、枠状本体部30に伝達させにくくすることができ、保持部材20のガタツキ等を抑制することができる。
【0088】
また、この実施形態においては、枠状部51の外面の、スリット65の両側に、枠状本体部30の内面に当接する突条部(ここでは第2突条部65b)が設けられている。
【0089】
この態様によれば、スリット65の両側に設けた一対の第2突条部65b,65bが、枠状本体部30の内面に当接するので(図3参照)、防振部材50の防振性能をより高めることができる。また、第2突条部65bによって、枠状部51にスリット65を形成したことによる、枠状部51の強度低下を抑制することができる。更に、第2突条部65bによって、スリット65内を移動する両係合部41,85に対する、接触可能な面積量を増大させることができ、両係合部41,85が、スリット65内を移動する際のガイド性を高めることができる。
【0090】
更に、この実施形態においては、枠状本体部30の対向する壁部33,33の内側には、一対の第3係合部45,45が設けられており、スリット65は、枠状部51の対向する一対の壁部53,53に形成されており、該一対の壁部53,53に交差する一対の壁部55,55の外面に、第3係合部45に係合する、第4係合部67がそれぞれ設けられている。
【0091】
上記態様によれば、枠状本体部30の内側に枠状部51を挿入することで、図4に示すように、一対の第3係合部45,45に一対の第4係合部67,67がそれぞれ係合するので、保持部材20に防振部材50を抜け止め状態で組付けることができる。この際、スリット65は、枠状部51の対向する一対の壁部53,53に形成されているため、スリット65を形成した一対の壁部53,53に交差する一対の壁部55,55を、スリット65を介して互いに近づくように撓み変形させやすくすることができる。その結果、枠状本体部30の内側への枠状部51の挿入時に、一対の第3係合部45,45と一対の第4係合部67,67とを係合させやすくして、枠状本体部30に対する枠状部51の組付け作業性を高めることができる。
【0092】
また、この実施形態においては、防振部材50と固定部材70との間には、第1係合面41cと第2係合面85cとが係合したときに、第1係合面41cと第2係合面85cとの間にクリアランスCLが生じるように、挿入部71を被固定部材1に近接する方向に移動させる、第5係合部69及び該第5係合部69に係合する第6係合部87が設けられている。
【0093】
上記態様によれば、枠状本体部30に対して、挿入部71が被固定部材1から離反する方向に移動して、第1係合面41cと第2係合面85cとが係合しても(図9の二点鎖線参照)、図5に示すように、第5係合部69及び第6係合部87が係合することで、第1係合面41cと第2係合面85cとの間にクリアランスCLが生じるように、挿入部71を被固定部材1に近接する方向に移動させるので、第1係合面41cと第2係合面85cとの間にクリアランスCLが生じた状態にすることができ、防振部材50の防振性能を高めた状態に維持することができる。
【0094】
更に図3に示すように、この実施形態においては、第1係合部41は、挿入部71の外面から枠状本体部30の内面に至らないように突出する突起状をなし、第1係合面41cは平坦面状をなしており、第2係合部85は、枠状本体部30の内面から挿入部71の外面に至らないように突出する突起状をなし、第2係合面85cは平坦面状をなしている。
【0095】
上記態様によれば、両係合部41,85が突起状をなし、且つ、両係合面41c,85cが平坦面状をなしているので、枠状本体部30に対して、挿入部71が被固定部材1から離反する方向に移動したときに、両係合面41c,85cどうしを広い接触面積で互いに接触させて係合力を高めることができ、枠状本体部30の他端37側の開口からの、挿入部71の浮き上がりを、より確実に防止することができる。
【0096】
また、図3に示すように、第1係合部41は、枠状本体部30の内面から挿入部71の外面に至らないように突出する突起状をなしているので、第1係合部41と挿入部71の外面との間に、隙間S1を生じさせることができると共に、第2係合部85は、挿入部71の外面から枠状本体部30の内面に至らないように突出する突起状をなしているので、第2係合部85と枠状本体部30の内面との間に、隙間S2を生じさせることができる。上記のような隙間S1,S2を設けることで、保持部材20と固定部材70とが直接当接することを防ぐことができる。その結果、被固定部材1から発生して長尺部材Pに伝達される振動や、長尺部材Pから発生して被固定部材1に伝達される振動を、必ず防振部材50に介在させることができるので、防振部材50の防振性能を、より十分に発揮させることができる。
【0097】
(長尺部材の保持具の他の実施形態)
図10~16には、本発明に係る長尺部材の保持具の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0098】
この実施形態の長尺部材の保持具10A(以下、単に「保持具10A」ともいう)は、保持部材20A、防振部材50A、及び固定部材80Aを有している。この実施形態では、前記実施形態に対して、スリット65や、第1係合部41、第2係合部85の個数や配置等が、主として異なっている。
【0099】
すなわち、防振部材50Aの枠状部51Aに4つのスリット66が形成されており、保持部材20Aの枠状本体部30Aに4つの第1係合部41が形成されており、固定部材70Aの挿入部71Aに4つの第2係合部85が形成されている。以下、各部材について詳述する。
【0100】
図10及び図12に示すように、保持部材20Aを構成する枠状本体部30Aは、互いに平行に対向配置された一対の壁部31,31を有している。各壁部31は、その外面31bの一部に凹部40が形成されており、この凹部40を介して各壁部31の内面31cから、枠状本体部30Aの内方に向けて突出する、突出部46が設けられており、この突出部46に第1係合部41が形成されている。
【0101】
より具体的には、各壁部31の外面31b側であって、幅方向(一対の壁部31,31の配列方向に直交する方向)の両側部において、外面31bから所定深さで凹んだ凹溝状をなした、一対の凹部40,40が形成されている。各凹部40は、枠状本体部30Aの他端37側が開口する一方、一端35側は閉塞し、他端37側から一端35側に向けて一定幅で延びている。
【0102】
また、図12に示すように、各凹部40を介して、壁部31の内面31cから、枠状本体部30Aの内方に向けて、一対の突出部46,46が突出している。各突出部46の、枠状本体部30Aの他端37側に、コ字状スリット39を介して第1係合部41が設けられている。それによって、枠状本体部30Aには、4つの第1係合部41が形成される。
【0103】
また、各壁部31に設けられた一対の突出部46,46の、対向する内側面46a,46aどうしは、互いに平行となっている(図12参照)。これらの内側面46a,46aの間に、第3係合部45がそれぞれ突設されている。また、各第3係合部45は、枠状本体部30Aの軸方向において、一対の第1係合部41,41に対してほぼ整合した位置に配置され、且つ、一対の第1係合部41,41の間に配置されている。
【0104】
なお、この実施形態の枠状本体部30Aに形成された一対の第3係合部45,45は、前記実施形態の枠状本体部30に形成された一対の第3係合部45,45に対して、90度回転した位置に設けられた構成となっている(図10及び図1参照)。
【0105】
図10及び図13に示すように、防振部材50Aを構成する枠状部51Aは、対向して配置された一対の壁部53,53と、各壁部53に形成された一対のスリット65,65と、該一対のスリット65,65を介して形成された板状片58と、各板状片58の外面にそれぞれ設けられ、第3係合部45に係合する第4係合部67とを有している。
【0106】
より具体的には、枠状部51Aは、前記実施形態と同様に、互いに平行に対向配置された一対の壁部53,53と、これらの一対の壁部53,53に対して直交するように対向配置された一対の壁部55,55とを有している。
【0107】
各壁部53の幅方向(一対の壁部53,53の配列方向に直交する方向)の両側には、被固定部材1とは反対側の端面(他端59側の端面)から、被固定部材1側に向けて一定幅で延びるスリット65がそれぞれ形成されている。それによって、枠状部51Aには、4つのスリット65が形成される。なお、枠状部51Aの各壁部53に設けた一対のスリット65,65は、枠状本体部30Aの各壁部31に設けた一対の第1係合部41,41に整合し、且つ、挿入部71Aの一対の壁部73,73の、一方の側縁部74,74に設けた第2係合部85,85及び第6係合部87,87に整合する位置に形成されている。
【0108】
また、各壁部53には、上記の一対のスリット65,65を介して、撓み変形可能な板状片58がそれぞれ設けられており、各板状片58の外面であって、他端59側の幅方向中央に、枠状本体部30Aに設けた第3係合部45に係合する、第4係合部67がそれぞれ突設している。
【0109】
更に、前記一対の壁部55,55の外面には、他端59から一端57側に向けて、互いに平行に延びる、一対の突条部68,68が設けられている。各突条部68の一端57側の端部は、当接部61を構成するフランジ部62の他端59側の面に連結されている。これらの一対の突条部68,68は、枠状本体部30Aの内側に枠状部51Aが挿入されて、保持部材20Aと防振部材50Aとが組付けられたときに、枠状本体部30Aの内面に当接する。なお、前記実施形態と同様に、壁部53に形成したスリット65の両側に、枠状本体部30Aの内面に当接する、一対の突条部を設けてもよい。
【0110】
また、当接部61を構成するフランジ部62は、壁部55の幅方向全域に亘って延びる部分と、壁部53の幅方向一側部に設けられた部分とからなる、略コ字状をなしている(図13参照)。
【0111】
更に、この実施形態の枠状部51Aに形成された一対の第4係合部67,67は、前記実施形態の枠状部51に形成された一対の第4係合部67,67に対して、90度回転した位置に設けられた構成となっている(図10及び図1参照)。そして、枠状本体部30Aの内側に、被固定部材1側から枠状部51Aを挿入して、保持部材20Aに防振部材50Aを組付けた状態では、枠状本体部30Aの一対の壁部31,31の内側に、枠状部51Aの一対の壁部53,53が配置されると共に、枠状本体部30Aの一対の壁部33,33の内側に、枠状部51Aの一対の壁部55,55が配置されるようになっている。
【0112】
図10及び図14に示すように、固定部材70Aを構成する挿入部71Aは、対向する一対の壁部73,73を有しており、一対の壁部73,73の対向方向に交差する両側縁部74,74に、第2係合部85,85がそれぞれ形成されている。
【0113】
より具体的には、挿入部71Aは、所定長さで延びる長板状をなし、互いに平行に対向配置された一対の壁部73,73を有している。また、各壁部73の幅方向(一対の壁部73,73の配列方向に直交する方向)の両側に位置する両側縁部74,74の所定位置から、各壁部73の面方向(一対の壁部73,73の配列方向に直交し、且つ、壁部73の外面74aに沿った方向)に沿って、第2係合部85,85がそれぞれ突設されている。それによって、挿入部71Aには、4つの第2係合部85が形成される。
【0114】
また、各壁部73の両側縁部74,74であって、第2係合部85よりも、被固定部材1に近い位置、具体的には、枠状部51Aの内側に対する挿入部71Aの挿入方向(矢印F2参照)側の端部(先端部77)に近い位置に、第5係合部69に係合する、第6係合部87が設けられている。それによって、挿入部71Aには、4つの第6係合部87が形成される。
【0115】
なお、この実施形態の挿入部71Aに形成された一対の壁部73,73は、前記実施形態の挿入部71に形成された一対の壁部73,73に対して、90度回転した位置に設けられた構成となっている(図10及び図1参照)。更に、挿入部71Aの一対の壁部73,73の、一方の側縁部74,74に設けた第2係合部85,85及び第6係合部87,87は、枠状本体部30Aの各壁部31に設けた一対の第1係合部41,41に整合し、且つ、枠状部51Aの各壁部53に設けた一対のスリット65,65に整合する位置に形成されている。そして、枠状部51Aの内側に、被固定部材1とは反対側から挿入部71Aを挿入して、防振部材50Aに固定部材70Aを組付けた状態では、枠状部51Aの一対の壁部55,55の内側に、挿入部71Aの一対の壁部73,73が配置されるようになっている。
【0116】
次に、上記構成からなる保持具10Aの作用効果について説明する。
【0117】
まず、保持部材20Aに防振部材50Aを組付ける際には、枠状本体部30Aの4つの第1係合部41に、枠状部51Aの対応する4つのスリット65,65を位置合わせした状態で、図10の矢印F1に示すように、枠状本体部30Aの一端35側の開口から、枠状部51Aを、その他端59側から枠状本体部30A内に挿入していく。
【0118】
すると、枠状本体部30Aの、一対の突出部46,46の対向する内側面46a,46aの間(図12参照)に、第4係合部67が入り込むと共に、そのテーパ面67bが、枠状本体部30Aの各壁部33の内面に押圧される。それによって、スリット65,65を介して、一対の板状片58,58が、その他端59側を互いに近づくように撓み変形しながら挿入されると共に、枠状部51Aの各スリット65内を、枠状本体部30Aの対応する第1係合部41が移動していく。
【0119】
そして、枠状部51Aの当接部61のフランジ部62が、枠状本体部30Aの一端35側の端面に当接するまで、枠状部51を押し込むと、第4係合部67の頂部67aが、第3係合部45の頂部45aを乗り越えて、撓み変形した一対の板状片58,58が弾性復帰して、図15に示すように、第3係合部45の第3係合面45cと第4係合部67の第4係合面68cとが互いに係合し、保持部材20Aに防振部材50Aを組付けることができる。
【0120】
その後、枠状本体部30Aの内側に挿入配置された枠状部51Aの4つのスリット65に、挿入部71Aの対応する4つの第2係合部85を位置合わせし、図10の矢印F2に示すように、枠状部51Aの他端59側の開口から、挿入部71Aを、その一端81側から枠状部51A内に挿入していく。
【0121】
すると、枠状部51Aの各スリット65内を、挿入部71Aの各第2係合部85が移動して、各第2係合部85のテーパ面85bが、枠状本体部30Aの各第1係合部41のテーパ面41bを押圧して、各第1係合部41を枠状本体部30Aの外方に撓み変形させる。そして、枠状部51Aの他端59側の端面に、押し込み部75が当接するまで、挿入部71Aを押し込むと、図16に示すように、挿入部71Aの各第6係合部87に、枠状部51Aの第5係合部69が入り込んで係合し、防振部材50Aに固定部材70Aを組付けることができる。それと共に、各第2係合部85の頂部85aが、各第1係合部41の頂部41aを乗り越えることで、各第1係合部41が弾性復帰して、第1係合部41の第1係合面41cと、第2係合部85の第2係合面85cとが、クリアランスCLを介して対向配置される(図16参照)。
【0122】
こうして、図11に示すように、保持部材20Aに防振部材50A及び固定部材70Aをそれぞれ組付けて、保持具10Aを組立てることができる。なお、この状態では、図15図16に示すように、当接部61のフランジ部62が、枠状本体部30Aの一端35側の端面に当接している。
【0123】
そして、この実施形態においては、枠状部51Aは、対向して配置された一対の壁部53,53と、各壁部53に形成された一対のスリット65,65と、一対のスリット65,65を介して形成された板状片58と、各板状片58の外面にそれぞれ設けられ、第3係合部45に係合する第4係合部67とを有しており、枠状本体部30Aには、枠状部51Aの各スリット65に挿入される4つの第1係合部41が設けられ、挿入部71Aには、枠状部51Aの各スリット65に挿入される4つの第2係合部85が設けられている。
【0124】
上記態様によれば、枠状部51Aは4つのスリット65を有しており、枠状本体部30A及び挿入部71Aに、4つのスリット65に挿入される、4つの第1係合部41及び第2係合部85がそれぞれ設けられているので、4つのスリット65のそれぞれに、4つの第1係合部41及び4つの第2係合部85が挿入されて、互いに係合可能となる。
【0125】
そのため、保持部材20Aに防振部材50A及び固定部材70Aが組付けられた状態で、軸部材5を挿入部71A内に挿入していく際に、挿入部71Aの中心C4と軸部材5の軸心C1とが位置ずれして挿入されて、軸部材5により挿入部71Aが押し上げられた場合に、枠状本体部30Aからの挿入部71Aの浮き上がりをより確実に防止することができる。
【0126】
また、枠状本体部30Aからの挿入部71Aの浮き上がりがより確実に防止されるので、防振部材50Aの浮き上がりも、より効果的に抑制することができ、より十分な防振性能を確保することができる。
【0127】
更に、例えば、保持部21を介して枠状本体部30Aに外力が作用して、枠状本体部30Aが、被固定部材1に対して転んだり傾いたりしても、4つずつ設けた第1係合部41及び第2係合部85によって、枠状本体部30Aの転びや傾きを、抑制しやすくすることができる(種々の方向の外力に対応しやすくなる)。
【0128】
また、枠状部51Aに設けた各板状片58を、一対のスリット65,65によって撓み変形させやすくすることができるので、枠状本体部30Aの内側に、枠状部51Aを挿入しやすくすることができると共に、第4係合部67を第3係合部45に係合させやすくすることができる。
【0129】
更に図10に示すように、この実施形態においては、挿入部71Aは、対向する一対の壁部73,73を有しており、一対の壁部73,73の対向方向に交差する側縁部74に、第2係合部85が形成されている。
【0130】
上記態様によれば、保持部材20Aに防振部材50A及び固定部材70Aが組付けられた状態で、軸部材5を挿入部71A内に挿入していく際に、挿入部71Aの中心C4と軸部材5の軸心C1とが位置ずれして挿入されて、軸部材5により挿入部71Aが押し上げられた場合に、第2係合部85に作用する、軸部材5からの押上げ力が、挿入部71Aの壁部73の面に沿った方向となるため、壁部73を変形させにくくすることができ、第2係合部85の、第1係合部41に対する係合力を維持することができる(仮に、第2係合部85が、挿入部71Aの壁部73の外面74aから突出している場合、軸部材5からの押し上げ力により壁部73が変形しやすくなる)。
【0131】
また、図10に示すように、この実施形態においては、第6係合部87は、挿入部71Aを構成する壁部73の側縁部74であって、第2係合部85よりも、被固定部材1に近い位置に、設けられている。
【0132】
上記態様によれば、第6係合部81は、第2係合部85を設けた部分である、挿入部71Aの壁部73の側縁部74であって、第2係合部85よりも被固定部材1に近い位置に設けられており、第2係合部85と第6係合部87との距離が近いので、枠状本体部30Aに対して、挿入部71Aが被固定部材1から離反する方向に移動して、第1係合部41の第1係合面41cと第2係合部85の第2係合面85cとが係合した際に、第5係合部69に第6係合部85が係合することによる(図16参照)、挿入部71Aの引き戻し力(挿入部71Aを被固定部材1に近接させる方向の力)を大きくすることができ、第1係合面41cと第2係合面85cとの間により確実にクリアランスを生じさせることができる。
【0133】
更に、この実施形態においては、枠状本体部30Aは、対向する一対の壁部31,31を有しており、各壁部31の外面31bの一部に凹部40が形成されており、該凹部40を介して各壁部31の内面31cから、枠状本体部30Aの内方に向けて突出する、突出部46が設けられており、この突出部46に第1係合部41が形成されている(図12参照)。
【0134】
上記態様によれば、枠状本体部30Aの内方に突出する突出部46に、第1係合部41が形成されているので、第1係合部41を、枠状本体部30Aの内方寄りに設けることができ、第1係合部41の、第2係合部85に対する係合しろを増大させることができる。その結果、枠状本体部30Aからの挿入部71Aの浮き上がりや、防振部材50Aの浮き上がりを、より一層効果的に抑制することができる。
【0135】
また、枠状部51Aに設けた当接部61が、枠状本体部30Aの被固定部材1側の端面(枠状本体部30Aの一端35側の端面)に当接する場合に、枠状本体部30Aの内方に突出する突出部46と、当接部61との、当接面積を増大させることができる。その結果、保持部材20Aに防振部材50Aを組付ける際に、防振部材50Aが、枠状本体部30Aの他端37側に向けて押し込まれすぎることを防止できる。また、軸部材5を挿入部71A内に挿入していく場合に、挿入部71Aの中心C4から位置ずれした軸部材5によって、枠状部51Aが押し上げられたときに、枠状本体部30Aから枠状部51Aを浮き上がりにくくすることができる。
【0136】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1 被固定部材
5 軸部材
10,10A 長尺部材の保持具(保持具)
20,20A 保持部材
21 保持部
30,30A 枠状本体部
31,33 壁部
40 凹部
41 第1係合部
41c 第1係合面
45 第3係合部
45c 第3係合面
46 突出部
50,50A 防振部材
51,51A 枠状部
53,55 壁部
57 一端
58 板状片
65 スリット
65b 第2突条部(突条部)
67 第4係合部
67c 第4係合面
69 第5係合部
69c 第5係合面
70,70A 固定部材
71,71A 挿入部
73 壁部
85 第2係合部
85c 第2係合面
87 第6係合部
87a 第6係合面
89 係止部
P 長尺部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16