(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】センサ固定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240731BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240731BHJP
B60R 21/01 20060101ALI20240731BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01S7/03 240
B60R19/48 B
B60R21/01 310
G01S7/481 Z
(21)【出願番号】P 2021072731
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊川 靖
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健一
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0079309(US,A1)
【文献】特開2015-209208(JP,A)
【文献】中国実用新案第210852264(CN,U)
【文献】中国実用新案第211335799(CN,U)
【文献】特開2012-181147(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2808694(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/64
G01S 13/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体部材にセンサを固定するためのセンサ固定装置であって、
車体部材に固定される車体部材固定用ブラケットと、
該車体部材固定用ブラケットに装着されるセンサ固定用ブラケットとを有しており、
前記車体部材固定用ブラケットは、前記車体部材に固定されるシート状をなしていると共に、開口が形成されたセンサ配置部と、該センサ配置部の両側に設けられ、複数のスリットを介して撓み変形可能とされ、前記車体部材に対して固着可能とされた固定部とを有しており、
前記センサ固定用ブラケットは、前記センサ配置部に、係合手段を介して着脱可能に装着されると共に、前記センサを収容可能なセンサ収容部を有することを特徴とするセンサ固定装置。
【請求項2】
前記車体部材固定用ブラケットは、前記車体部材に溶着可能な樹脂材料からなり、
前記センサ固定用ブラケットは、前記車体部材固定用ブラケットよりも熱伝導性の高い樹脂材料からなる請求項1記載のセンサ固定装置。
【請求項3】
前記センサ固定用ブラケットは、前記センサの外面に、直接又は間接的に当接するフィンを有する請求項1又は2記載のセンサ固定装置。
【請求項4】
前記センサ収容部は、一対の側壁部と、該一対の側壁部どうしを連結する板状壁と、前記板状壁に対して近接離反する蓋体とを有しており、
前記板状壁には、前記蓋体に向くように前記フィンが設けられており、
前記センサ収容部に前記センサが収容された状態で、前記板状壁に対して前記蓋体が近接したときに、前記フィンを押圧して前記板状壁が撓み変形し、同板状壁が前記センサの外面に当接するように構成されている請求項3記載のセンサ固定装置。
【請求項5】
前記センサ収容部は、一対の側壁部と、これらの間に形成され、前記センサを収容可能としたセンサ収容開口と、該センサ収容開口を開閉する蓋体とを有しており、
前記蓋体に前記フィンが設けられており、
前記センサ収容開口から前記センサ収容部に前記センサが収容された状態で、前記センサ収容開口に対して前記蓋体を閉じたときに、前記フィンが前記センサの外面に直接的に当接するように構成されている請求項3記載のセンサ固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体部材にセンサを固定するための、センサ固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のバンパーや、トリム、パネル等の車体部材に、自動運転システムや安全運転支援システム等に用いられる、ミリ波レーダーセンサー等のセンサを固定する際には、種々の固定装置が用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、センサ先端部がバンパ孔を通してバンパ外側へ露出した状態となるように、センサをバンパの内側面に取り付けるセンサ取付用のリテーナが記載されている。このリテーナは、センサを保持するリテーナ本体を有している。このリテーナ本体は、略正六角形状の底壁と、該底壁の周縁から立設した側壁と、対向する側壁から立設した一対の取付壁とからなる。また、リテーナ本体外周から、リテーナ本体をバンパ内側面に固定する複数の貼付部が延出しており、各貼付部は、切込部によって、その先端側にて複数の貼付面を有する分岐形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のリテーナでは、リテーナ本体外周の複数の貼付部は、切込部により撓み変形しやすいものの、リテーナ本体自体は撓み変形しにくいため、例えば、車体部材が曲面形状をなしている場合には、その形状に追従させにくい。その結果、車体部材に対してリテーナ本体は十分な追従性が得られないため、車体部材とリテーナ本体との間に隙間が生じてガタツキ等が発生しやすく、車体部材にセンサをしっかりと固定できないことがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、車体部材の形状に応じて十分な追従性を得ることができ、車体部材にしっかりとセンサを固定できる、センサ固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、車体部材にセンサを固定するためのセンサ固定装置であって、車体部材に固定される車体部材固定用ブラケットと、該車体部材固定用ブラケットに装着されるセンサ固定用ブラケットとを有しており、前記車体部材固定用ブラケットは、前記車体部材に固定されるシート状をなしていると共に、開口が形成されたセンサ配置部と、該センサ配置部の両側に設けられ、複数のスリットを介して撓み変形可能とされ、前記車体部材に対して固着可能とされた固定部とを有しており、前記センサ固定用ブラケットは、前記センサ配置部に、係合手段を介して着脱可能に装着されると共に、前記センサを収容可能なセンサ収容部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体部材固定用ブラケットはシート状をなし、固定部は複数のスリットを介して撓み変形可能とされているので、車体部材に対する追従性を高めることができる。すなわち、車体部材が湾曲したり屈曲したりしていても、固定部を、複数のスリットを介して適宜撓み変形させて、車体部材の形状に適合する形状とすることで、車体部材に対する追従性を高めることができるので、車体部材と車体部材固定用ブラケットとを密接しやすくして、車体部材にセンサをしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るセンサ固定装置の一実形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同センサ固定装置において、車体部材固定用ブラケットにセンサ固定用ブラケットを装着した状態の斜視図である。
【
図3】同センサ固定装置を構成する車体部材固定用ブラケットの正面図である。
【
図4】同センサ固定装置を構成するセンサ固定用ブラケットの正面図である。
【
図5】
図2に示す状態から、蓋体を閉じた状態の斜視図である。
【
図6】
図5に示す状態から、車体部材固定用ブラケットを、車体部材に固定した状態の斜視図である。
【
図8】本発明に係るセンサ固定装置の、他の実形態を示す分解斜視図である。
【
図9】同センサ固定装置において、蓋体を閉じた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(センサ固定装置の一実施形態)
以下、
図1~7を参照して、本発明に係るセンサ固定装置の、一実施形態について説明する。
【0011】
図6や
図7に示すように、この実施形態におけるセンサ固定装置10(以下、単に「固定装置10」ともいう)は、車体部材1にセンサ3を固定するためのものである。
【0012】
車体部材1としては、例えば、バンパーや、トリム(サイドトリム、ルーフトリム等)、車体パネル、車体フレーム等が挙げられる。ただし、車体部材としては、これらに限定されるものではない。
【0013】
一方、センサ3としては、例えば、自動車の自動運転システムや安全運転支援システム等に用いられる、ミリ波レーダーセンサや、LiDARセンサ、GPSセンサ、超音波センサ等が挙げられる。この実施形態におけるセンサ3は、一方向に長い長尺の四角箱状をなしており、長手方向一側部には、コネクタ接続部4が設けられており、コネクタ5が接続されるようになっている。なお、センサ3としては、対象物に対して、電波や光等を送信したり照射したりすることが可能であるか、及び/又は、対象物からの反射波や反射光等を受信したり受光したりすることが可能であるものが好ましい。
【0014】
そして、
図1及び
図2に示すように、この固定装置10は、車体部材1に固定される車体部材固定用ブラケット20(以下、単に「車体ブラケット20」ともいう)と、該車体ブラケット20に装着されるセンサ固定用ブラケット40(以下、単に「センサブラケット40」ともいう)とを有している。
【0015】
前記車体ブラケット20は、車体部材1の内面2側に固定されるようになっている。なお、車体部材1の「内面側」とは、車両内方に向く面を意味する。なお、
図1に示すように、この実施形態における車体部材1は、その一部が車両内方に向けて湾曲した形状となっている。
【0016】
まず、車体ブラケット20について詳述する。
【0017】
この車体ブラケット20は、車体部材1に固定されるシート状をなしていると共に、開口23が形成されたセンサ配置部21と、このセンサ配置部21の両側に設けられ、複数のスリット27,31を介して撓み変形可能とされ、車体部材1に対して固着可能とされた固定部25,25とを有している。
【0018】
この実施形態の車体ブラケット20は、一部が突出するものの(後述する係合片33や位置決めピン37)、全体として細長い板状に延びるシート状をなしている。また、車体ブラケット20は、一定厚さでもって所定方向に長く延びる、長板状のシートとなっている。更に、車体ブラケット20は、その裏面(厚さ方向の一方の面)が、車体部材1の内面2に当接して固定される。
【0019】
なお、以下の説明において、車体ブラケット20の、車体部材1に向く側を「裏側」とし、この裏側の面を「裏面」とする。また、車体ブラケット20の「表側」とは、上記の「裏側」とは反対側を意味し、この表側の面を「表面」とする。更に
図3に示すように、車体ブラケット20の延出方向に沿った方向を長手方向L1とし、この長手方向L1に直交する方向を幅方向W1とする。上記の「裏側」、「裏面」、「表側」、「表面」、及び、上記の方向L1,W1は、車体ブラケット20の他の部分(センサ配置部21、固定部25等)においても同様の意味である。
【0020】
また、車体ブラケット20は、その延出方向中央部に、開口23が形成されたセンサ配置部21を有している。この実施形態における開口23は、車体ブラケット20の幅方向W1には長く、長手方向L1には短い、略長孔状をなしている。
図7に示すように、前記開口23は、車体部材1の内面に対して、センサ3の外面6(厚さ方向の一方の面)を、障害物を極力少なくなるように対向配置させるためのものである。
【0021】
固定部25は、センサ配置部21の両側、すなわち、センサ配置部21の長手方向L1の一側部(
図5の紙面でセンサ配置部21の上側)及び他側部(
図5の紙面でセンサ配置部21の下側)にそれぞれ配置されている。言い換えると、一対の固定部25,25の間に、センサ配置部21が配置されている。更に、センサ配置部21に対して、所定の側部に固定部25が配置され、この固定部25に対して、センサ配置部21を挟んで反対側の側部に、固定部25が配置されている、とも言える。
【0022】
各固定部25の長手方向L1の外側縁部からは、車体ブラケット20の長手方向L1に沿って互いに平行に延びる複数の第1スリット27が形成されており、この第1スリット27を介して、長手方向L1に沿って帯状に延びる、複数の固定片29が撓み変形可能に形成されている。この実施形態では、
図3に示すように、一定幅で延びる一対の第1スリット27,27を介して、3つの固定片29が同一幅で延設されている。なお、複数の第1スリット27によって、各固定片29は、車体ブラケット20の面方向M(面に沿った方向を意味する。
図7参照)に対して交差する方向に撓み変形可能となっている(
図6中、右上の固定片29を参照)。
【0023】
更に各固定片29には、幅方向W1に沿って延びる第2スリット31が、固定片29の延出方向に対して所定間隔をあけて複数形成されている。この実施形態の場合、一定幅で延びる6つの第2スリット31が互いに平行に形成されている。そのため、各固定片29は、車体ブラケット20の幅方向W1に撓み変形可能となっている(
図6中、右上の固定片29を参照)。
【0024】
すなわち、各固定片29は、それぞれ独立して、上記方向(車体ブラケット20の面方向Mに対して交差する方向及び幅方向W1)に撓み変形するようになっている。そのため、各固定片29は、車体部材1の内面2に沿った形状となるように適宜撓み変形して、その裏面が車体部材1の内面2に当接するようになっている。そして、各固定片29の、スリット27,31以外の部分(フレーム部分)を、例えば、熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着等で溶着することで、車体部材1に固定されるようになっている。
【0025】
また、
図1や
図3に示すように、複数の固定片29のうち、車体ブラケット20の幅方向W1の中央に配置された固定片29であって、その延出方向基端側(センサ配置部21に近接した側)の表面(センサブラケット40の配置面)から、係合片33が突設されている。この係合片33は、第2スリット31の長手方向L1に沿った一側縁から突出しており、その突出方向先端部には、外面にテーパ面を有する係合突起35が設けられている。
図3に示すように、この実施形態では、センサ配置部21を挟んで、その長手方向L1の両側に、一対の係合片33,33が対向して配置されている。なお、係合片33,33の係合突起35,35は、互いに離間する向きに配置されており、第1スリット27に一部重なっている(ラップしている)。この係合片33の係合突起35が、センサブラケット40の後述する係合孔48に係脱可能に係合するようになっている(
図7参照)。
【0026】
また、
図1及び
図3に示すように、複数の固定片29のうち、車体ブラケット20の幅方向W1の両側に配置された一対の固定片29,29の延出方向基端側の表面からは、半円形状をなした位置決めピン37,37がそれぞれ突設されている。
【0027】
なお、以上説明した車体ブラケット20の各構成部分(センサ配置部21、一対の固定部25,25、係合片33、位置決めピン37等)は、全て一体形成されている。
【0028】
また、車体ブラケット20は、全体として車体部材1に溶着可能な樹脂材料からなるが、少なくとも固定部25が車体部材1に溶着可能な樹脂材料から形成されていればよい。更に、車体固定用ブラケットを構成する、センサ配置部や、開口、固定部、スリット、固定片、係合片、位置決めピン等の形状や、構造、個数、レイアウト等は、特に限定されない。例えば、センサ配置部の開口は、四角孔や、丸孔、楕円孔等であってもよく、1個ではなく複数配置してもよく、センサの形状や構造等に応じて、適宜定めることができる。
【0029】
また、この実施形態の場合、固定部25に複数のスリット27,31を設けることで、複数の固定片29をそれぞれ独立して撓み変形可能としたが、例えば、固定部に、三角形や、長方形、正方形、菱形、5角以上の多角形、円形、楕円形、小判形状、ラグビーボール型、水滴形状等をなしたスリットや、斜めに直線状に延びるスリット、円弧状に延びるスリット、湾曲して延びるスリット、屈曲して延びるスリット等を、単独或いは適宜組み合わせてもよく、固定部が撓み変形可能であれば、スリットの形状や個数、レイアウト等は限定されない。
【0030】
次に、センサブラケット40について詳述する。
【0031】
この実施形態のセンサブラケット40は、センサ配置部21に、係合手段を介して着脱可能に装着されると共に、センサ3を収容可能なセンサ収容部41を有する。また、このセンサ収容部41は、一対の側壁部43,43と、これらの一対の側壁部43,43どうしを連結する板状壁50と、この板状壁50に対して近接離反する蓋体60とを有している。
【0032】
図1及び
図2に示すように、この実施形態におけるセンサブラケット40を構成するセンサ収容部41は、所定方向に長く延びる略長箱状をなしており、その長手方向両側が開口し、且つ、天井部側(車体ブラケット20から離反する側)及び底部側(車体ブラケット20に近接する側)が開口した形状となっている。
【0033】
なお、以下の説明において、
図4に示すように、センサブラケット40のセンサ収容部41の延出方向に沿った方向を長手方向L2とし、この長手方向L2に直交する方向を幅方向W2とする。また、センサブラケット40において、車体部材1や車体ブラケット20に向く側を「裏側」とし、この裏側の面を「裏面」とする。また、センサブラケット40の「表側」とは、上記の「裏側」とは反対側を意味し、この表側の面を「表面」とする。上記の方向L2,W2、及び、「裏側」、「裏面」、「表側」、「表面」は、センサブラケット40の各部分(側壁部43、板状壁50等、但し蓋体60は除く)においても同様の意味である。
【0034】
より具体的に説明すると、
図2及び
図4に示すように、センサ配置部21を構成する一対の側壁部43,43は、センサ3の厚さ方向に所定高さで立設すると共に、互い平行に配置されて長手方向L2に沿って延びる一対の立壁43а,43аと、該立壁43а,43аの立設方向基端(車体ブラケット20に近接する端部)から互いに離間する方向に広がるフランジ部43b,43bとからなる。前記一対のフランジ部43b,43bは、センサ配置部21の、開口23の幅方向W1に沿った両側縁部の表面に当接する部分となる(
図2参照)。
【0035】
また、一対の立壁43а,43аの立設方向先端であって、長手方向L2の一端側は、細長い帯状をなし幅方向W2に沿って延びる連結板45によって互いに連結されている。この連結板45及び一対の立壁43а,43аの内側、すなわち、センサ収容部41の長手方向L2の一側部に、センサ挿入口46が画成され、このセンサ挿入口46から、センサ3をセンサ収容部41内に挿入可能となっている。
【0036】
各フランジ部43bの長手方向L2の中央部には、長孔状をなした係合孔48が形成されている。また、各フランジ部43bの、長手方向L2の中央部を挟んで、その両側には、丸孔状をなした一対の位置決め孔49,49が形成されている。
【0037】
そして、
図5~7に示すように、各フランジ部43bを、センサ配置部21の、開口23の幅方向両側縁部の表面に当接させると、車体ブラケット20の係合片33が、上記係合孔48に挿入されて、同係合孔48の表側周縁に、係合突起35が係合する。それによって、車体ブラケット20のセンサ配置部21に、センサブラケット40が固定されるようになっている。なお、
図5においては、便宜上、蓋体60を仮想線にて図示している。また、係合片33を適宜撓ませて、係合突起35を係合孔48の表側周縁から係合解除し、係合片33を係合孔48から抜き外すことで、センサ配置部21からセンサブラケット40を外すことが可能となっている。すなわち、この実施形態における係合孔48と係合片33とが、本発明における「係合手段」をなしている。
【0038】
なお、「係合手段」としては、例えば、車体固定用ブラケット側に係合孔を設け、センサ固定用ブラケット側に係合片を設けたり(但し、この場合は、車体部材側に係合片先端を受け入れる凹部等が必要となる)、或いは、両ブラケットに互いに係脱可能な係合片を設けたりしてもよく、車体固定用ブラケットに対してセンサ固定用ブラケットを着脱可能であれば、特に限定はされない。
【0039】
また、上記のように、各フランジ部43bを、センサ配置部21の、開口23の幅方向両側縁部の表面に当接させ、係合片33の係合突起35が、係合孔48の表側周縁に係合した状態で、各位置決め孔49に対応する位置決めピン37がそれぞれ挿入され、センサ配置部21に対してセンサブラケット40を所定位置となるように位置決めされるようになっている。
【0040】
更に
図2や
図4に示すように、各側壁部43の立壁43аの立設方向先端であって、長手方向L2の中央を挟んで、その両側からは、一対の係止片47,47が突設している。また、各係止片47の突出方向先端部には、外面にテーパ面を有する係止突起47аが設けられている。なお、各係止片47の係止突起47аは、センサ収容部41の内方(内部空間に向く方向)に突出している(
図4参照)。また、
図4に示すように、一方の側壁部43に設けた一対の係止片47,47と、他方の側壁部43に設けた一対の係止片47,47とは、センサ収容部41の幅方向W2において対向する位置に配置されている。
【0041】
図4に示すように、前記板状壁50は、センサブラケット40の幅方向W2に一定幅で、且つ、センサブラケット40の長手方向L2に沿って所定長さで延びる略四角板状をなしており、センサ収容部41の長手方向L2の中央部から、長手方向L2の他端側に僅かに位置ずれして配置されている。そして、板状壁50の幅方向W2の両端部が、一対の側壁部43,43の立壁43а,43аの立設方向先端に連結されている。その結果、センサ収容部41の天井部側に、板状壁50を挟んで、その長手方向L2の両側に、開口部分41а,41аが画成されるようなっている。なお、この開口部分41аの開口面積は、センサ3の外形寸法よりも小さくなっており、この開口部分41аからはセンサ3を収容不能となっている。また、センサブラケット40をセンサ配置部21に装着した状態における、板状壁50の裏面と、センサ配置部21の表面との間隔は、センサ3の厚さよりも大きく設定されており、センサ挿入口46からセンサ3をセンサ収容部41内に挿入する際に、板状壁50がセンサ3に干渉しないようになっている。
【0042】
更に、板状壁50の表面(蓋体60が近接する面)には、円柱状をなしたピン51аが所定間隙を空けて複数突設されており、これらのピン51аによって、センサ3の放熱用のフィン51が設けられている。すなわち、複数のピン51аを設けたことで、フィン51を介して、板状壁50の表面側の表面積が増大し、且つ、複数のピン51аの間が空気流通路となるため、板状壁50に当接したセンサ3の放熱性が高められている。
【0043】
また、この固定装置10においては、センサ収容部41にセンサ3が収容された状態で、板状壁50に対して蓋体60が近接したときに、フィン51を押圧して板状壁50が撓み変形して、
図7に示すように、板状壁50がセンサ3の外面7(厚さ方向の他方の面)に当接するように構成されている。すなわち、板状壁50は、上記のように、蓋体60によりフィン51を介して押圧されたきに、撓み変形可能となるような厚さや形状等で形成されている(例えば、板状壁を薄くしたり、板状壁に筋状溝等を形成したりしてもよい)。また、フィン51を構成するピン51аの、板状壁50の表面からの突出量は、蓋体60を板状壁50に近接させたときに、蓋体60の表面で押圧されたときに、板状壁50を撓み変形可能とさせる高さとなっている。なお、フィン51は、蓋体60がセンサ収容部41の開口部分41аを完全に閉塞した状態(センサ収容部41の係止片47の係止突起47аが、蓋体60の後述する係止溝67の内周縁部に係止した状態)でなくとも、蓋体60に当接して押圧されるようになっている。
【0044】
前記蓋体60は、一対の側壁部43,43の立壁43а,43аに適合する幅でもって、長手方向L2に沿って延びる略長板状をなしており、その長手方向L2の一端部61が、一対の立壁43а,43аの立設方向先端であって、長手方向L2の他端に連結されている(
図4参照)
【0045】
また、
図4に示すように、蓋体60の長手方向L2の一端部61に隣接した位置であって、その外面(蓋体60が板状壁50から離反するように、センサ収容部41の天井部側の開口部分41а,41аから開いた状態で、車体部材1の内面2に近接する面)には、凹状溝62аが形成されており、該凹状溝62аを介して、蓋体60の他部分よりも薄い薄肉ヒンジ部62が設けられている。蓋体60は、この薄肉ヒンジ部62を介して、板状壁50に対して近接離反可能となっており、その結果、センサ収容部41の天井部側の開口部分41а,41аが開閉可能となっている。
【0046】
また、
図2に示すように、蓋体60の内面63(蓋体60の外面とは反対側の面であって、板状壁50との対向面)の所定箇所には、複数のセンサ押さえ部64,65,66が突設されている。これらのセンサ押さえ部64,65,66は、蓋体60を板状壁50に対して近接させたときに、センサ収容部41に収容されたセンサ3の、所定の外周縁部に当接して(センサ3の長手方向一側の外周縁部にセンサ押さえ部64が当接し、長手方向他側の外周縁部にセンサ押さえ部65,66が当接する)、センサ3のガタツキを抑制する部分となっている。
【0047】
更に
図2や
図4に示すように、蓋体60の幅方向W2の一側縁部であって、長手方向L2の一端部寄りの位置及び他端部寄りの位置には、係止溝67,67が形成されており、また、蓋体60の幅方向W2の他側縁部であって、上記係止溝67,67に対向する位置にも、一対の係止溝67,67が形成されている。これらの係止溝67は、センサ収容部41の各側壁部43に設けた係止片47に整合する位置に配置されている。そして、蓋体60を、薄肉ヒンジ部62を介して、板状壁50に対して近接させたときに、各係止溝67の内周の表側周縁に、対応した係止片47の係止突起47аがそれぞれ係止することで(
図6及び
図7参照)、センサ収容部41の天井部側の開口部分41а,41аが閉じられた状態に保持される。
【0048】
また、この状態では、
図7に示すように、蓋体60の内面63によって、複数のピン51аの先端面が押圧されることで、フィン51が全体として押されて、板状壁50が撓み変形して、センサ収容部41に収容されたセンサ3の外面7に当接することとなる。なお、蓋体60を板状壁50に近接させていない状態では、板状壁50とセンサ3の外面7との間に、隙間が生じるようになっている。
【0049】
以上説明したセンサブラケット40の各構成部分(センサ収容部41、側壁部43、係止片47、板状壁50、フィン51、蓋体60等)は、全て一体形成されている。
【0050】
また、センサブラケット40は、車体ブラケット20よりも熱伝導性の高い樹脂材料からなる。
【0051】
また、センサ固定用ブラケットを構成する、センサ収容部、側壁部、係止片、板状壁、フィン、蓋体等の形状や、構造、個数、レイアウト等は、特に限定されない。
【0052】
例えば、この実施形態では、センサ収容部41の長手方向一側部のセンサ挿入口46から、センサ3を挿入する構成となっているが、センサ収容部の天井部側開口から、センサを挿入する構成としてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。また、蓋体60は、センサ収容部41と一体形成されているが、センサ収容部41とは別体としてもよい。更に、この実施形態では、センサ収容部41に係止片47を形成し、蓋体60に係止溝67を形成したが、例えば、蓋体側に係止片を形成し、センサ収容部側に係止溝を形成してもよく、センサ収容部と蓋体とを係止させる形状や構造は、特に限定されない。
【0053】
また、この実施形態では、センサブラケット40に設けたフィン51は、センサ3の外面7に間接的に当接するようになっているが(板状壁50を介して間接的に当接する)、フィンをセンサ外面に直接的に当接させてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。更に、この実施形態におけるフィン51は、複数の円柱状のピン51аからなるが、フィンとしては、例えば、薄板状のリブを所定間隔を空けて、板状壁表面から複数突出させたりしてもよく、センサの熱を放熱可能(熱交換可能)な形状や構造であればよい。
【0054】
(作用効果)
次に、上記構造からなる固定装置10の作用効果について説明する。
【0055】
センサ3は、例えば、以下の工程で、車体部材1に固定することができる。まず、車体ブラケット20の一対の係合片33,33や、複数の位置決めピン37に、センサブラケット40のセンサ収容部41の一対の係合孔48,48や、複数の位置決め孔49を位置決めした後、車体ブラケット20に対してセンサブラケット40を押し込んでいく。そして、センサ収容部41の一対の側壁部43,43のフランジ部43b,43bを、センサ配置部21の、開口23の幅方向両側縁部の表面に当接させると、車体ブラケット20の一対の係合片33,33の係合突起35,35が、センサ収容部41の一対の係合孔48,48の表側周縁にそれぞれ係合すると共に、車体ブラケット20の各位置決めピン37が、センサ収容部41の対応する位置決め孔49にそれぞれ挿入されて、センサ配置部21にセンサ収容部41を位置決めした状態で、センサ配置部21にセンサブラケット40が固定される(
図2参照)。
【0056】
その後、センサ収容部41のセンサ挿入口46から、センサ3を挿入することで、センサ収容部41内にセンサ3を収容する。この場合、センサ3の一方の外面6を、センサ配置部21の開口23に概ね整合した位置に保持しておく。次いで、蓋体60を、薄肉ヒンジ部62を介して、板状壁50に対して近接させる。すなわち、蓋体60の長手方向L2の他端部側を、センサ収容部41の連結板45に近接させ、センサ収容部41の天井部側の開口部分41а,41аを閉じていく。
【0057】
そして、蓋体60の、各係止溝67の内周の表側周縁に、対応した係止片47の係止突起47аがそれぞれ係止することで(
図6参照)、複数のセンサ押さえ部64,65,66が、センサ3の所定の外周縁部に当接し、そのガタツキが抑制されつつ、センサ収容部41の天井部側の開口部分41а,41аが閉じられる。それと共に、蓋体60の内面63に、複数のピン51аが押圧されてフィン51全体が押され、それによって、板状壁50が、センサ3の外面7に近づく方向に撓み変形して、同板状壁50の裏面が、センサ3の外面7に当接した状態で、センサ収容部41内にセンサ3が収容保持される(
図7参照)。
【0058】
その後、
図6に示すように、車体ブラケット20の裏面を、車体部材1の所定の固定箇所に押し付ける。すると、各固定片29が、車体部材1の内面2に沿った形状となるように適宜撓み変形して、その裏面が車体部材1の内面2に対して、隙間を少なくした状態(ほぼ密接した状態)で当接する。そして、各固定片29の、スリット27,31以外の部分(フレーム部分)を、熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着等で溶着することで、車体部材1に車体ブラケット20が固定される。その結果、車体ブラケット20に装着されたセンサブラケット40のセンサ収容部41に収容されたセンサ3が、車体部材1に固定される。その後、センサ収容部41のセンサ挿入口46から突出した、センサ3のコネクタ接続部4に、コネクタ5を接続する(
図6参照)。
【0059】
上記のように、この固定装置10においては、車体ブラケット20のセンサ配置部21に、係合手段(係合片33及び係合孔48)を介してセンサブラケット40を装着すると共に、センサ収容部41にセンサ3を収容し、車体ブラケット20の固定部25を、車体部材1に固定することで、車体ブラケット20及びセンサブラケット40を介して、車体部材1にセンサ3を固定することができる。
【0060】
そして、車体ブラケット20はシート状をなし、固定部25は複数のスリット27,31を介して撓み変形可能とされているので、車体部材1に対する追従性を高めることができる。すなわち、車体部材1が湾曲したり屈曲したりしていても、固定部25を、複数のスリット27,31を介して適宜撓み変形させて、車体部材1の形状に適合する形状とすることで、車体部材1に対する追従性を高めることができる。その結果、車体部材1と車体ブラケット20とを密接しやすくして、車体部材1にセンサ3をしっかりと固定することができる。
【0061】
また、センサブラケット40は、車体ブラケット20のセンサ配置部21に、係合手段を介して着脱可能に装着されるので、センサブラケット40を適宜変更することで、様々なセンサ3を固定することができる(汎用性が高まる)。更に、車体ブラケット20のセンサ配置部21から、センサブラケット40を取り外すこともできるので、センサ3のメンテンナンス性を高めることができる。
【0062】
また、バンパー等の車体部材1自体が破損し、それに追随して車体ブラケット20が破損したが、センサブラケット40は破損せず、その性能や品質等に特に問題がないような場合には、車体部材1ごと車体ブラケット20を交換することで、センサブラケット40を継続して利用することができる。
【0063】
更に、車種が変わり、車体ブラケット20が変更された場合でも、センサブラケット40を、引き続き流用しやすくすることができる。
【0064】
また、この実施形態においては、車体ブラケット20は、車体部材1に溶着可能な樹脂材料からなり、センサブラケット40は、車体ブラケット20よりも熱伝導性の高い樹脂材料からなる。
【0065】
この態様によれば、車体ブラケット20は、車体部材1に溶着可能な樹脂材料からなるので、車体部材1に対し、溶着によって車体ブラケット20を強固に固定することができる。また、センサブラケット40は、車体ブラケット20よりも熱伝導性の高い樹脂材料からなるので、センサ3の放熱性を高めることができる。
【0066】
更に、この実施形態においては、
図7に示すように、センサブラケット40は、センサ3の外面7に間接的に当接するフィン51を有しているので、センサ3の放熱性をより高めることができると共に、センサ収容部41に収容されたセンサ3のガタツキを抑えることができる。
【0067】
また、この実施形態においては、センサ収容部41は、一対の側壁部43,43と、一対の側壁部43,43どうしを連結する板状壁50と、板状壁50に対して近接離反する蓋体60とを有しており、板状壁50には、蓋体60に向くようにフィン51が設けられており、センサ収容部41にセンサ3が収容された状態で、板状壁50に対して蓋体60が近接したときに、フィン51を押圧して板状壁50が撓み変形し、板状壁50がセンサ3の外面7に当接するように構成されている(
図7参照)。
【0068】
この態様によれば、センサ収容部41にセンサ3が収容された状態で、板状壁50に対して蓋体60が近接したときに、フィン51を押圧して板状壁50が撓み変形し、板状壁50がセンサ3の外面7に当接するように構成されているので、センサ3の放熱性を高めつつ、センサ3のガタツキをより抑えることができる。また、板状壁50が撓み変形することで、センサ3の厚みに変動があっても、板状壁50をセンサ3の外面7にしっかりと当接させることができる。
【0069】
(センサ固定装置の、他の実施形態)
図8~10には、本発明に係るセンサ固定装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0070】
この実施形態におけるセンサ固定装置10A(以下、単に「固定装置10A」ともいう)は、センサ固定用ブラケット40A(以下、単に「センサブラケット40A」ともいう)が、前記実施形態と異なっている。
【0071】
すなわち、この固定装置10Aにおけるセンサ収容部41は、一対の側壁部43,43と、これらの間に形成され、センサ3を収容可能としたセンサ収容開口55と、センサ収容開口55を開閉する蓋体60とを有しており、蓋体60にフィン51が設けられている。
【0072】
より具体的に説明すると、この実施形態のセンサブラケット40Aのセンサ収容部41は、一対の側壁部43,43の長手方向L2の一側部が、連結壁53により連結され、一対の側壁部43,43の長手方向L2の他側部が、連結壁54により連結されている。また、一対の側壁部43,43の立壁43а,43аの立設方向先端には、板状壁50が連結されておらず、センサ収容部41の天井部側から、センサ3を収容可能なセンサ収容開口55が設けられている。なお、センサ収容部41の連結壁53には、センサ3のコネクタ接続部4を突出可能する、切欠き53аが形成されている。
【0073】
また、
図8に示すように、蓋体60の長手方向L2の中央部であって、その内面63側から、円柱状をなしたピン51аが所定間隙を空けて複数突設されて、フィン51が設けられている。
【0074】
更に、この固定装置10Aにおいては、センサ収容開口55からセンサ収容部41にセンサ3が収容された状態で、センサ収容開口55に対して蓋体60を閉じたときに、フィン51がセンサ3の外面7に直接的に当接するように構成されている(
図10参照)。
【0075】
そして、
図8に示すように、センサ3を、センサ収容開口55を通して、センサ収容部41内に収容した後、蓋体60を、薄肉ヒンジ部62を介して、板状壁50に対して近接させて、
図9に示すように、蓋体60の、各係止溝67の内周の表側周縁に、対応した係止片47の係止突起47аをそれぞれ係止させることで、センサ収容開口55を閉じた状態に保持する。その結果、
図7に示すように、フィン51を構成する複数のピン51аの先端面が、センサ3の外面7に直接的に当接するようになっている。
【0076】
この実施形態の固定装置10Aにおいては、センサ収容部41は、一対の側壁部43,43間に形成したセンサ収容開口55を有しているので、センサ収容部41内にセンサ3を収容しやすく、また、センサ収容開口55に対して蓋体60を閉じたときに、フィン51がセンサ3の外面7に直接的に当接するため、フィン51をセンサ3の外面7に確実に当接させて、センサ3の放熱性を高めることができる。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 車体部材
2 内面
3 センサ
6,7 外面
10,10A センサ固定装置(固定装置)
20 車体部材固定用ブラケット(車体ブラケット)
21 センサ配置部
23 開口
25 固定部
27 第1スリット
29 固定片
31 第2スリット
33 係合片
40,40A センサ固定用ブラケット(センサブラケット)
41 センサ収容部
43 側壁部
45 連結板
46 センサ挿入口
47係止片
50 板状壁
51 フィン
55 センサ収容開口
60 蓋体
63 内面