(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】若年哺乳動物の身体における神経芽細胞腫を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/549 20060101AFI20240731BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240731BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240731BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240731BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240731BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K31/549
A61P25/00
A61P35/00
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/60
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/282
A61K33/243
A61K31/675
A61K31/475
A61K31/4745
A61K31/198
(21)【出願番号】P 2021511655
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 US2019048579
(87)【国際公開番号】W WO2020047103
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518057435
【氏名又は名称】コーメディクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ライデンバーグ,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ディルッチオ,ロバート
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123635(WO,A1)
【文献】特表2003-515558(JP,A)
【文献】特表2003-515557(JP,A)
【文献】特開2001-010976(JP,A)
【文献】Taurolidine cooperates with antineoplastic drugs in neuroblastoma cells,Genes & Cancer,5(11-12),460-469
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/549
A61P 25/00
A61P 35/00
A61K 9/14
A61K 9/51
A61K 47/60
A61P 43/00
A61K 45/00
A61K 31/282
A61K 33/243
A61K 31/675
A61K 31/475
A61K 31/4745
A61K 31/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウロリジンを含む組成物であって、若年哺乳動物における神経芽細胞腫の治療の方法に用いるための
ものであり、前記方法において、タウロリジンが、個々の患者の応答に基づき、有効期間にわたって、5mg/kg~60mg/kgの投与量範囲でヒトに投与される、前記組成物。
【請求項2】
前記方法において、前記投与量が、1日1回から1週間に1回投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記方法において、前記組成物が全身投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記方法において、前記組成物が静脈内投与される、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
前記方法において、前記組成物が筋肉内投与される、請求項
3に記載の組成物。
【請求項6】
タウロリジンが、ナノ粒子に含められており、さらに、前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子が腫瘍部位に達するまでタウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されている、請求項
3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、タウロリジンコアと外側コーティングとを含み、前記外側コーティングが、前記ナノ粒子が前記腫瘍部位に到着する前のタウロリジンの露出を防ぐように構成されている、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記外側コーティングが、前記ナノ粒子が挿入部位から前記腫瘍部位へ移動するにつれて分解する吸収性ポリマーまたは脂質を含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記方法において、タウロリジンが、タウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されているポリマー系を使用して送達される、請求項
3に記載の組成物。
【請求項10】
タウロリジンが、タウロリジンの加水分解の早発を遅らせるために、ポリエチレングリコール(PEG)を使用して「ペグ化」されている、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記方法において、前記組成物が、乳幼児、小児および青年からなる群からの少なくとも1つに投与される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項12】
前記方法において、前記組成物が単剤として投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記方法において、前記組成物が、少なくとも1つの腫瘍崩壊剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの腫瘍崩壊剤が、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害剤)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン)、およびトポイソメラーゼI阻害剤(トポテカンおよびイリノテカン)からなる群から選択される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記方法において、前記組成物が、放射線療法と組み合わせて投与される、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願人
CorMedix Inc.
発明者
Bruce Reidenberg
Robert DiLuccio
係属中の先行特許出願の参照
本特許出願は、
(i)「神経芽細胞腫および他のがんの治療のための治療ナノ粒子(THERAPEUTIC NANOPARTICLES FOR THE TREATMENT OF NEUROBLASTOMA AND OTHER CANCERS)」(整理番号CORMEDIX-14)に関してCorMedix Inc.およびRobert DiLuccioによって2017年1月11日に出願された、係属中の先行米国特許出願第15/403,876号の一部継続であり、この特許出願は、「神経芽細胞腫の治療のためのナノ粒子系(NANOPARTICLE SYSTEM FOR THE TREATMENT OF NEUROBLASTOMA)」(整理番号CORMEDIX-14 PROV)に関してCorMedix Inc.およびRobert DiLuccioによって2016年1月11日に出願された、先行米国仮特許出願第62/277,243号の利益を主張するものであり;
(ii)「若年哺乳動物の身体における神経芽細胞腫を治療するための方法および組成物(METHODS AND COMPOSITIONS FOR TREATING NEUROBLASTOMA IN A JUVENILE MAMMALIAN BODY)」(整理番号CORMEDIX-32 PROV)に関してCorMedix Inc.およびBruce Reidenbergらによって2018年8月28日に出願された、係属中の先行米国仮特許出願第62/723,592号の利益を主張するものである。
3つの上記特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、全体として治療方法および組成物に関し、より詳細には若年(jevenile)哺乳動物の身体における神経芽細胞腫の治療のための治療方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
神経芽細胞腫(NB)は、小児期に最も多く見られる頭蓋外固形がんであり、幼児期に最も多く見られるがんである。米国では年間約650例、英国では年間100例が発症している。神経芽細胞腫例の半数近くが2歳未満の小児で発生する。神経芽細胞腫は、交感神経系(SNS)のいずれかの神経堤要素から生じる神経内分泌腫瘍である。神経芽細胞腫は副腎の一方から最も頻繁に発生するが、頸部、胸部、腹部、または骨盤の神経組織でも発生し得る。神経芽細胞腫は神経組織から生じるが、中枢神経系(CNS)の腫瘍ではないことに留意されたい。
【0004】
神経芽細胞腫は、未分化状態から完全に良性の細胞外観へと自然退縮を示すことが知られている数少ないヒト悪性腫瘍の1つである。
神経芽細胞腫は極度の多様性を示す疾患であり、3つのリスクカテゴリー、すなわち低リスク、中間リスク、および高リスクに層別化される。低リスク神経芽細胞腫は乳児に最も多く見られ、観察のみまたは手術により良好な転帰が一般的であるのに対し、高リスク神経芽細胞腫は、利用可能な最も集中的な集学的療法を用いても治療が成功しにくい。
【0005】
神経芽細胞腫病変が限局する場合、これは一般的に治癒可能である。しかし、疾患が進行した生後18カ月以上の小児の長期生存は、積極的な集学的療法、例えば、集中的化学療法、手術、放射線療法、幹細胞移植、分化剤イソトレチノイン(isotrentinoin)(13-シス-レチノイン酸とも呼ばれる)、および抗GD2モノクローナル抗体療法を用いた抗GD2免疫療法による高頻度の免疫療法にもかかわらず不良である。
【0006】
生物学的および遺伝学的特性が同定されており、これを古典的な臨床病期分類に加えると、治療強度を計画するために患者をリスク群に割り当てることが可能になった。これらの基準には、患者の年齢、疾患の広がりの程度、顕微鏡像、ならびにDNA倍数性およびN-mycがん遺伝子増幅(N-mycはマイクロRNAを制御する)を含む遺伝的特徴が含まれる。これらの基準は、神経芽細胞腫を低リスク、中間リスク、および高リスク疾患に分類するのに使用される。最近の生物学的試験(COG ANBL00B1)は、神経芽細胞腫患者2,687人を分析し、リスク割り当てのスペクトラムが決定された。神経芽細胞腫例の37%は低リスクであり、神経芽細胞腫例の18%は中間リスクであり、神経芽細胞腫例の45%は高リスクである。神経芽細胞腫の高リスクおよび低リスクタイプは異なる機序に起因し、単に同じ機序の2つの異なる発現程度だけではないいくつかの証拠があることに留意されたい。
【0007】
これらの異なるリスクカテゴリーに対する療法は、極めて異なる。
低リスク神経芽細胞腫はしばしば、治療を全くしないで観察され得、または手術単独で治癒され得る。
【0008】
中間リスク神経芽細胞腫は、一般的に手術および化学療法で治療される。
高リスク神経芽細胞腫は、一般的に、集中的化学療法、手術、放射線療法、骨髄/造血幹細胞移植、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノインまたはアキュテイン)を用いた生物製剤ベースの療法、および抗体療法(通常は、サイトカインGM-CSFおよびIL-2サイトカインと共に投与される)により治療される。
【0009】
現在の治療により、低リスク神経芽細胞腫および中間リスク神経芽細胞腫患者は予後が極めて良好であり、治癒率は低リスク神経芽細胞腫で90%を超え、中間リスク神経芽細胞腫では70~90%治癒率である。対照的に、過去20年間にわたる高リスク神経芽細胞腫に対する療法は、わずか約30%の治癒率をもたらしたにすぎない。抗体療法の追加により、高リスク神経芽細胞腫の生存率は有意に上昇した。2009年3月、226人の高リスク神経芽細胞腫患者による小児がん研究グループ(Children’s Oncology Group)(COG)試験の早期分析は、幹細胞移植の2年後、chl4.18抗体をGM-CSFおよびIL-2と共に受け取るように無作為化された群の66%が、抗体を受け取らなかった群のわずか46%と比べて生存しており、無疾患であることを示した。無作為化は中止され、そのため試験に登録している全ての患者が該抗体療法を受け取ることができた。
【0010】
組み合わせて使用される化学療法剤は、神経芽細胞腫に対して有効であることが見出されている。誘導および幹細胞移植前処置に一般的に使用される薬剤は、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害剤)およびビンカアルカロイド(ビンクリスチン)である。いくつかのより新しいレジメンには、誘導におけるトポイソメラーゼI阻害剤(トポテカンおよびイリノテカン)が含まれ、再発疾患に対して有効であることが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、若年哺乳動物の身体における神経芽細胞腫に対して有効な新たな方法および組成物に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、タウロリジンは、若年哺乳動物の身体における神経芽細胞腫を治療するのに使用される。
タウロリジンは、5mg/kg~280mg/kgの投与量範囲、好ましくは5mg/kg~60mg/kgの間の投与量範囲で与えられる。
【0013】
この投与量は、個々の患者の応答に基づき有効な期間にわたって、1日1回から1週間に1回投与される。
タウロリジンは全身的に、好ましくは静脈内(より好ましい)かまたは筋肉内のどちらかに送達される。
【0014】
本発明の1つの好ましい形態では、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解が起こる神経芽細胞腫の部位にタウロリジンが達するまでタウロリジンの加水分解が遅延されるように、「遮蔽形態」で全身的に送達される。
【0015】
タウロリジンは、単剤としてまたは1つもしくは複数の腫瘍崩壊剤(oncolytic agent)および/もしくは放射線療法と組み合わせて送達されてもよい。
本発明の1つの形態では、若年哺乳動物における神経芽細胞腫を治療するための方法であって、タウロリジンを若年哺乳動物に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0016】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、個々の患者の応答に基づき、有効期間にわたって、5mg/kg~280mg/kgの投与量範囲で投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、5mg/kg~60mg/kgの投与量範囲で投与される。
【0017】
本発明の1つの形態では、投与量は、1日1回から1週間に1回投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは全身投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは静脈内投与される。
【0018】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは筋肉内投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、ナノ粒子に含められており、ナノ粒子は、ナノ粒子が腫瘍部位に達するまでタウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されている。
【0019】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、ナノ粒子に含められており、ナノ粒子は、タウロリジンコアと外側コーティングとを含み、外側コーティングは、ナノ粒子が腫瘍部位に到着する前のタウロリジンの露出を防ぐように構成されている。
【0020】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、ナノ粒子に含められており、ナノ粒子は、タウロリジンコアと外側コーティングとを含み、外側コーティングは、ナノ粒子が挿入部位から腫瘍部位へ移動するにつれて分解する吸収性ポリマーまたは脂質を含む。
【0021】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されているポリマー系を使用して送達される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解の早発を遅らせるために、ポリエチレングリコール(PEG)を使用してタウロリジンが「ペグ化」されるポリマー系を使用して送達される。
【0022】
本発明の1つの形態では、タウロリジンはヒトに投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、乳幼児(infant)、小児(children)および青年(adolescent)からなる群からの少なくとも1つに投与される。
【0023】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは単剤として投与される。
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、少なくとも1つの腫瘍崩壊剤と組み合わせて投与される。
【0024】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、少なくとも1つの腫瘍崩壊剤と組み合わせて投与され、少なくとも1つの腫瘍崩壊剤は、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害剤)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン)、およびトポイソメラーゼI阻害剤(トポテカンおよびイリノテカン)からなる群から選択される。
【0025】
本発明の1つの形態では、タウロリジンは、放射線療法と組み合わせて投与される。
本発明のこれらのおよび他の目的および特徴は、同様の数字が同様の部分を指す添付図面と共に考慮されるべき本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明によって、より完全に開示されまたは明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、インビトロでの(インビボではなく)健康なリンパ球と比べて、白血病細胞株がタウロリジンの作用に対してより感受性であるらしいことを示すグラフである。
【
図2】
図2は、インビトロでの(インビボではなく)健康な線維芽細胞(グラフのBJ)と比べた場合、神経芽細胞腫細胞株が、タウロリジンによる生存率の低下に対してより感受性であることを示すグラフである。
【
図3】
図3は、CB57 SCIDマウスに皮下移植された神経芽細胞腫細胞株由来の測定可能な腫瘍を有するCB57 SCIDマウスに与えられたタウロリジンが、インビボで(インビトロではなく)IMR5腫瘍における効力、およびSK-N-AS腫瘍における測定可能な効力を有することを示すグラフまたは写真である。
【
図4】
図4は、CB57 SCIDマウスに皮下移植された神経芽細胞腫細胞株由来の測定可能な腫瘍を有するCB57 SCIDマウスに与えられたタウロリジンが、インビボで(インビトロではなく)IMR5腫瘍における効力、およびSK-N-AS腫瘍における測定可能な効力を有することを示すグラフまたは写真である。
【
図5】
図5は、CB57 SCIDマウスに皮下移植された神経芽細胞腫細胞株由来の測定可能な腫瘍を有するCB57 SCIDマウスに与えられたタウロリジンが、インビボで(インビトロではなく)IMR5腫瘍における効力、およびSK-N-AS腫瘍における測定可能な効力を有することを示すグラフまたは写真である。
【
図6】
図6は、CB57 SCIDマウスに皮下移植された神経芽細胞腫細胞株由来の測定可能な腫瘍を有するCB57 SCIDマウスに与えられたタウロリジンが、インビボで(インビトロではなく)IMR5腫瘍における効力、およびSK-N-AS腫瘍における測定可能な効力を有することを示すグラフまたは写真である。
【
図7】
図7は、同様に神経芽細胞腫に由来する異なる細胞株(SK-N-AS)を有するマウスを治療するためにタウロリジンが投与された場合、腫瘍サイズの統計的に有意な減少が達成されたが、全生存率は対照と有意には異ならなかったことを示すグラフである。
【
図8】
図8は、同様に神経芽細胞腫に由来する異なる細胞株(SK-N-AS)を有するマウスを治療するためにタウロリジンが投与された場合、腫瘍サイズの統計的に有意な減少が達成されたが、全生存率は対照と有意には異ならなかったことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
タウロリジンは、作用機序および抗菌スペクトルが公開されている周知の抗菌薬である。タウロリジンは循環中で不安定であり、それ故に全身性感染症に対する開発は成功していない。タウロリジンは、腹膜炎のための局所適用、およびカテーテルロック溶液として注入される場合は感染症の予防において効力を示している。
【0028】
タウロリジンは近年、腫瘍崩壊活性について研究されており、標準的な化学療法と組み合わせてまたは単独で培養細胞株に対して阻害効果を有することが見出された。インビトロ阻害濃度は臨床的に達成可能であるという主張にもかかわらず、唯一公開されているヒト薬物動態試験では、タウロリジン5グラムが20分間の注入によって静脈内に投与された場合、健康なボランティアにおいて測定可能な濃度のタウロリジンは示されなかった。これは、哺乳動物の身体に全身投与される場合、タウロリジンの迅速な加水分解によるものであると考えられている。
【0029】
インビトロでの(インビボではなく)健康なリンパ球と比べて、白血病細胞株は、タウロリジンの作用に対してより感受性であるらしいことが見出されている。
図1参照のこと。
【0030】
インビトロでの(インビボではなく)健康な線維芽細胞と比べた場合、神経芽細胞腫細胞株は、タウロリジンによる生存率の低下に対してより感受性であることも見出されている。
図2参照のこと。
【0031】
さらに、CB57 SCIDマウスに皮下移植された神経芽細胞腫細胞株由来の測定可能な腫瘍を有するCB57 SCIDマウスに与えられたタウロリジンは、インビボで(インビトロではなく)IMR5腫瘍における効力、およびSK-N-AS腫瘍における測定可能な効力を示した。
図3~6参照のこと。
【0032】
腫瘍サイズの統計的に有意な減少は、同様に神経芽細胞腫に由来する異なる細胞株(SK-N-AS)を有するマウスを治療するためにタウロリジンが投与された場合に達成されるが、該腫瘍を移植されたマウスの全生存率は、対照と統計的には異ならなかった。
図7および8参照のこと。
【0033】
現在、タウロリジンは、若年哺乳動物の身体における神経芽細胞腫を治療するのに使用され得ることが発見されている。
タウロリジンは、5mg/kg~280mg/kgの投与量範囲、好ましくは5mg/kg~60mg/kgの間の投与量範囲で与えられる。
【0034】
有効投与量は、以下の式:
ヒト等価用量=マウスmg/kg用量×1成人/12マウス×25小児BSA比/37成人BSA比=小児用量mg/kg
(https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm078932.pdf)
を使用して、有効マウス用量からヒト等価投与量を算出して算出された。
【0035】
投与量は、個々の患者の応答に基づき有効な期間にわたって、1日1回から1週間に1回投与される。
タウロリジンは、全身的に、好ましくは静脈内(より好ましい)かまたは筋肉内のどちらかに送達される。本発明の1つの好ましい形態では、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解が起こる神経芽細胞腫の部位にタウロリジンが達するまでタウロリジンの加水分解が遅延されるように、「遮蔽形態」で全身的に送達される。
【0036】
より具体的には、本発明の1つの好ましい形態では、タウロリジンはナノ粒子の形態で送達され、ナノ粒子は、タウロリジンコアと、ナノ粒子が腫瘍部位に到着する前のタウロリジンの早すぎる露出を防ぐように構成されている外側コーティングとを含む。外側コーティングは、腫瘍部位でタウロリジンを加水分解のために放出するように、ナノ粒子が挿入部位から腫瘍部位へ移動するにつれて分解する。本発明の1つの好ましい形態では、コーティングは、ナノ粒子が挿入部位から腫瘍部位へ移動するにつれて分解する吸収性(absorbable)ポリマーまたは脂質を含む。限定するものではないが例として、コーティングは、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートから構築されるポリマーに由来するコポリマーおよび多量体の組み合わせから作成することができる。コーティングはまた、ポリエチレングリコール(PEG)などのグリコールと結合されてもよく、グリコールは直鎖構造または分岐構造のどちらかであってもよい。
【0037】
所望であれば、ナノ粒子は、賦形剤(例えば、ナノ粒子内のタウロリジンの加水分解安定性を高める緩衝液)を含んでもよい。
さらに、所望であれば、ナノ粒子は、神経芽細胞腫の治療のためにタウロリジンの効力を改善するために、ナノ粒子の標的を神経芽細胞腫の部位に向けるように構成されているコーティングをさらに含むことができる。本発明の1つの好ましい形態では、コーティングは、ナノ粒子の送達標的を特定の組織に向けるように構成されている結合分子を含む。限定するものではないが例として、ナノ粒子のコーティングは、ナノ粒子を神経組織(例えば、神経芽細胞腫腫瘍)に結合させるための、N型カルシウムチャネルに対するモノクローナル抗体(例えば、抗N型カルシウムチャネル細胞外表面Fab断片)を含む。
【0038】
本発明の別の形態では、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解を遅らせるおよび/またはタウロリジンの放出特性を最適化するように構成されているポリマー系を使用して送達されてもよい。限定するものではないが例として、タウロリジンは、タウロリジンの加水分解の早発を遅らせるおよび/またはタウロリジンの放出特性を最適化するために、ポリエチレングリコール(PEG)を使用して「ペグ化」されてもよい。
【0039】
タウロリジンは、単剤としてまたは1つもしくは複数の腫瘍崩壊剤および/もしくは放射線療法と組み合わせて送達されてもよい。神経芽細胞腫を治療するために若年哺乳動物に送達するタウロリジンと組み合わせることができる腫瘍崩壊剤の例は、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害剤)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン)、およびトポイソメラーゼI阻害剤(トポテカンおよびイリノテカン)である。
【0040】
変更
本発明は、特定の例示的な好ましい実施形態に関して記載されてきたが、本発明がそのように限定されないこと、ならびに本発明の範囲内において、上記で論じられた好ましい実施形態への多くの追加、削除および変更がなされ得ることが、当業者には容易に理解され、認識されるであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
若年哺乳動物における神経芽細胞腫を治療するための方法であって、タウロリジンを若年哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
[請求項2]
タウロリジンが、個々の患者の応答に基づき、有効期間にわたって、5mg/kg~280mg/kgの投与量範囲で投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
投与量範囲が5mg/kg~60mg/kgである、請求項2に記載の方法。
[請求項4]
投与量が、1日1回から1週間に1回投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
タウロリジンが全身投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
タウロリジンが静脈内投与される、請求項5に記載の方法。
[請求項7]
タウロリジンが筋肉内投与される、請求項5に記載の方法。
[請求項8]
タウロリジンが、ナノ粒子に含められており、さらに、ナノ粒子が、ナノ粒子が腫瘍部位に達するまでタウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されている、請求項5に記載の方法。
[請求項9]
ナノ粒子が、タウロリジンコアと外側コーティングとを含み、外側コーティングが、ナノ粒子が腫瘍部位に到着する前のタウロリジンの露出を防ぐように構成されている、請求項8に記載の方法。
[請求項10]
外側コーティングが、ナノ粒子が挿入部位から腫瘍部位へ移動するにつれて分解する吸収性ポリマーまたは脂質を含む、請求項9に記載の方法。
[請求項11]
タウロリジンが、タウロリジンの加水分解を遅らせるように構成されているポリマー系を使用して送達される、請求項5に記載の方法。
[請求項12]
タウロリジンが、タウロリジンの加水分解の早発を遅らせるために、ポリエチレングリコール(PEG)を使用して「ペグ化」される、請求項11に記載の方法。
[請求項13]
タウロリジンがヒトに投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
タウロリジンが、乳幼児、小児および青年からなる群からの少なくとも1つに投与される、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
タウロリジンが単剤として投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項16]
タウロリジンが、少なくとも1つの腫瘍崩壊剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
[請求項17]
少なくとも1つの腫瘍崩壊剤が、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害剤)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン)、およびトポイソメラーゼI阻害剤(トポテカンおよびイリノテカン)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
タウロリジンが、放射線療法と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。