IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイアール サイエンティフィック インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特許-ガラス組成物 図1
  • 特許-ガラス組成物 図2
  • 特許-ガラス組成物 図3
  • 特許-ガラス組成物 図4
  • 特許-ガラス組成物 図5
  • 特許-ガラス組成物 図6
  • 特許-ガラス組成物 図7
  • 特許-ガラス組成物 図8
  • 特許-ガラス組成物 図9
  • 特許-ガラス組成物 図10
  • 特許-ガラス組成物 図11
  • 特許-ガラス組成物 図12
  • 特許-ガラス組成物 図13
  • 特許-ガラス組成物 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/23 20060101AFI20240731BHJP
   A61K 6/17 20200101ALI20240731BHJP
   A61K 6/77 20200101ALI20240731BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20240731BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20240731BHJP
   A61K 33/22 20060101ALI20240731BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240731BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240731BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240731BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240731BHJP
   C03C 3/14 20060101ALI20240731BHJP
   C03C 12/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C03C3/23
A61K6/17
A61K6/77
A61K33/08
A61K33/16
A61K33/22
A61P1/02
A61P25/02
A61P29/02
A61Q11/00
C03C3/14
C03C12/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021512902
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CA2019051237
(87)【国際公開番号】W WO2020047662
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】62/727,377
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/847,807
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521091664
【氏名又は名称】アイアール サイエンティフィック インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ボイド
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン オコンネル
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン ナオミ マクドナルド-パーソンズ
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103936281(CN,A)
【文献】特開昭58-084144(JP,A)
【文献】特開2015-227311(JP,A)
【文献】特開2011-168516(JP,A)
【文献】Deva Prasad Rajuら,Structural and optical investigations of Eu3+ ions in lead containing alkali fluoroborate glasses,Optical Materials,2012年,Vol. 34, No. 8,p. 1251-1260
【文献】大田陸夫ら,オキシフルオロホウ酸塩ガラスの結晶化挙動,日本セラミックス協会学術論文誌,1990年,98巻,p. 1125-1131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
A61K 6/00-6/90,33/00-33/44,
A61Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
;Na O、CaO、MgO又はそれらの任意の組み合わせ;フッ化物の供給源;場合によりZnO;及び場合によりSrO
からなるガラスであって、
は、約50mol%~約95mol%の量で存在し
NaO、CaO、及びMgOが、約5mol%~約50mol%の量で存在し
フッ化物の供給源が、約1mol%~約10mol%であり、CaF、NaF、NaPOF、KF、SnF、又はそれらの任意の組み合わせの形態であり;
ガラスは、少なくとも四成分系であり;
ガラスは、約1~約50μmのサイズである粒子を含む粒子状材料であり;及び
ガラス組成物は、緩衝化生理食塩水溶液に曝露された場合、24時間以内に少なくとも5質量%を失う、上記ガラス。
【請求項2】
a) が、約50mol%の、又は約50mol%~約80mol%の量で存在し
b)Na O、CaO、及びMgOが約5mol%~約40mol%の量で存在し、又は
c)上記両方
である、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
ガラスが、ZnO及び又はSrO含む、請求項1又は2に記載のガラス。
【請求項4】
a)ZnOが、約5mol%~約30mol%の量で存在し
b)SrOが、約5mol%~約30mol%の量で存在し、又は
c)ZnOが、約5mol%~約30mol%の量で存在し、及びSrOが、約5mol%~約30mol%の量で存在する、請求項に記載のガラス。
【請求項5】
フッ化物の供給源が約1mol%~約5mol%、約15mol%、又は約30mol%のガラス組成物の量で存在する、請求項1~のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項6】
粒子の少なくとも75%、少なくとも85%、又は少なくとも95%が50μmより小さいサイズであり、及び又は粒子の少なくとも5%が7μmより小さいサイズである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項7】
a)粒子の少なくとも5%が35μmよりも小さいサイズであり、
粒子の少なくとも5%が15μmより小さいサイズであり、
粒子の少なくとも5%が7μmより小さいサイズであり;又は
b)粒子の少なくとも5%が約15μm~約35μmのサイズであり、
粒子の少なくとも5%が約6μm~約15μmのサイズであり、
粒子の少なくとも5%が約3μm約7μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項8】
粒子の約10%が5μmより小さいサイズであり、
粒子の約50%が15μmより小さいサイズであり、
粒子の約90%が30μmより小さいサイズである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス。
【請求項9】
請求項のいずれか1項に記載のガラスを含む歯磨き粉、予防ペースト、又は歯科用ワニス。
【請求項10】
(i)請求項のいずれか項に記載のガラス;及び
(ii)無水の経口適合性担体
を含む象牙質脱感作組成物。
【請求項11】
組成物が、口腔洗浄剤、歯磨き粉、歯科用ゲル、予防ペースト、歯科用ワニス、又は接着剤である、請求項10に記載の象牙質脱感作組成物。
【請求項12】
経口適合性担体が、30℃で約100cP~30℃で約150,000cpの粘性を有する経口適合性粘性担体である、請求項10又は11に記載の象牙質脱感作組成物。
【請求項13】
少なくとも一時的に個体における感受性歯に関連する疼痛を緩和するための方法であって、請求項に記載の歯磨き粉、予防ペースト、又は歯科用ワニスを個体の象牙質に塗布することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、象牙質脱感作組成物のためのガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の段落は、それらの中で論じられているものが先行技術又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0003】
象牙質の感受性は、熱的、蒸発的、触覚的、浸透圧的、化学的、又は電気的な刺激に反応して露出した象牙質表面から生じる歯の痛みである。象牙質の感受性は、歯根表面の露出を伴う歯肉退縮(後退歯肉)、セメント層及び塗抹層の喪失、歯の磨耗、酸性侵食、歯根の平坦化、又は歯の白化によって引き起こされる。
【0004】
象牙質は、パルプから外側に放射状に広がる数千の微細な管状構造を有する。象牙細管に存在する血漿様の体液の流れの変化は、歯髄側の神経に存在する機械受容器を誘発し、それによって疼痛反応を引き起こす。この流体力学的流れは、冷気圧、乾燥、砂糖、酸味(脱水薬品)、又は歯に作用する力によって増加させることができる。熱い又は冷たい食べ物や飲み物、及び身体的圧力は、歯の感受性をもつ人の典型的な誘因である。
【0005】
長期的に歯科過敏症の疼痛を確実に緩和する、世界的に受け入れられているゴールドスタンダード治療は存在しない。しかしながら、治療は、院内(すなわち、歯科医又は歯科療法士によって適用されることを意図したもの)、又は自宅、市販薬若しくは処方箋で実施できる治療に分けることができる。
【0006】
これらの治療の作用機序は、象牙細管の閉塞、又は神経線維の脱感作/神経伝達の遮断のいずれかであると考えられている。
【発明の概要】
【0007】
導入
以下の導入は、本明細書の読者を紹介することを意図しているが、いかなる発明も定義するものではない。1以上の発明は、以下に記載する装置要素又は方法ステップの組み合わせ又はサブコンビネーション、又は本明細書の他の部分に存在することができる。発明者は、当該他の発明をクレームに記載しないことによってのみ、本明細書において開示された発明に対する権利を放棄又は放棄しない。
【0008】
当該技術分野で公知の象牙質脱感作組成物の一例は、PCT公開WO2007144662A1に開示されている。開示された歯磨き粉は、ストロンチウムを含む生物活性ガラスを含む。開示された生物活性ガラスは象牙質管を閉塞し、炭酸化ヒドロキシアパタイトの沈殿及び結晶化を誘発する。開示された生物活性ガラスは、誘導された組織内成長の速度と同じ速度で分解するように設計される。
【0009】
当該技術分野で公知の象牙質脱感作組成物の一例は、米国特許5,735,942に開示されている。開示された歯磨き粉は、CaO、NaO、P及びSiOからなる鉱物成分を含む。開示された鉱物組成物は象牙質の表面と化学的に反応し、歯構造と密接に結合する。
【0010】
1つ以上の記載された実施形態は、象牙細管を閉塞する非分解性微粒子材料を含む象牙質脱感作組成物に関連する1つ以上の欠点に対処するか、又は改善することを試みる。いくつかの実施形態において、開示された粒子状物質は、環境条件下で12~24時間にわたって実質的に分解する。いくつかの実施形態において、開示された粒子状物質は、同じ期間にわたってフッ化物の制御された放出を提供する。
【0011】
いくつかの実施態様において、本開示は、LiO、RbO、KO、NaO、SrO、CaO、MgO、ZnO及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるガラス成分の約50mol%~約5mol%;CuOの0mol%;BaOの0.1mol%未満;及びPの0.1mol%未満を含むガラス組成物であって、ガラス組成物は、RbOの30mol%未満を含む;ガラス組成物は、緩衝生理食塩水溶液に曝露されると24時間以内に少なくとも5mol%を失い、ガラス組成物は、約1~約50μmのサイズの粒子を含む粒子材料である、ガラス組成物を提供する。ガラス組成物は、B及びNaOのみからなるものではない。
【0012】
本開示によるガラス組成物のいくつかの例において、20mol%未満、例えば15mol未満、10mol%未満、又は5mol%未満のガラス組成物は、CaO、MgO、及びNaOである。
【0013】
ガラス組成物はさらに、約30mol%までのフッ化物を含んでもよく、ここで、フッ化物は、CaF、NaF、NaPOF、KF、又はSnFの形態である。
【0014】
他の実施形態では、本開示は、象牙質を脱感作するためのガラス組成物を提供し、ガラス組成物は、約50mol%~約95mol%のB;LiO、RbO、KO、NaO、SrO、CaO、MgO、ZnO、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される約50mol%~約95mol%のガラス成分を含み、ここで、ガラス組成物は、30mol%未満のRbOを含む。ガラス組成物は、緩衝食塩水に曝露されると、24時間以内に少なくとも5質量%を失い、ガラス組成物は、約1~約50μmのサイズの粒子を含む粒子状材料である。
【0015】
ガラス組成物のいくつかの例において、20mol%未満、例えば15mol未満、10mol%未満、又は5mol%未満のガラス組成物は、CaO、MgO、及びNaOである。
【0016】
ガラス組成物はさらに、約30mol%までのフッ化物を含んでもよく、ここで、フッ化物は、CaF、NaF、NaPOF、KF、又はSnFの形態である。
【0017】
他の実施形態では、本開示は、約5mol%~約10mol%のCaF、SnF、NaF、KF、又はそれらの任意の組合せとして提供されるフッ化物;及び約90mol%~約95mol%のB、NaO、MgO、及びCaOの組合せを含むガラス組成物を提供し、ここで、ホウ素、マグネシウム、Naと任意のKの組合せ、及びガラス組成物中のCaと任意のSnの組合せは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する。
【0018】
本開示によるそのような特異的ガラス組成物の一例は、約50mol%のB、約15mol%のNaO、約20mol%のMgO、約10mol%のCaOC、及び約5mol%のCaFを含む。
【0019】
本開示によるガラス組成物は、歯磨き粉、予防ペースト、歯科用ワニス、口腔洗浄剤、歯科用ゲル、又は接着剤のような象牙質脱感作組成物に処方することができる。本開示による象牙質-脱感作組成物は、実質的に無水である。
【0020】
本開示によるガラス組成物は、例えば、本開示による歯磨き粉、予防ペースト、歯科用ワニス、口腔洗浄剤、歯科用ゲル、又は接着剤を個人の象牙質に塗布することを含む方法において、象牙質を脱感作するために使用することができる。
【0021】
本開示によるガラス組成物は、対応するバルクガラスから調製することができる。化学的製剤はバルクガラスと粒子状物質との間で同じである。本開示の別の態様は、本明細書に開示されるような化学処方を有するバルクガラスである。
【0022】
ここで、本開示の実施形態を、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示のガラス組成物(「ゲル+添加剤」)で製剤化されたゲル7HT歯磨き粉(「ゲル」)対ゲル7HT歯磨き粉(「ゲル」)による20,000回のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットの表面プロファイルの平均を示す。
図2図2は、ガラス組成物(「コルゲート EN+添加剤」)と共に配合された、Gel7HT(「Gel」)歯磨き粉対コルゲート(商標)Enamel Health Sensitivity Relief(商標)歯磨き粉の20,000回のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットの表面プロファイルの平均を示す。
図3図3は、Gel7HT歯磨き粉(「Gel」)対コルゲート(商標)オプティックホワイト(商標)歯磨き粉(「コルゲート オプティック」)を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットの表面プロファイルの平均を示す図である。
図4図4は、Gel7HT(「Gel」)歯磨き粉対コルゲート(商標)Enamel Health Sensitivity Relief(商標)歯磨き粉(「コルゲート EN」)による20,000回のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットレジンの表面プロファイルの平均を示す図である。
図5図5は、Gel7HT歯磨き粉(「Gel」)とセンソダイン(商標)ホワイトニング修復及びProtect(商標)歯磨き粉(「センソダイン」)を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットの表面プロファイルの平均を示す図である。
図6図6は、ガラス組成物(「ゲル+添加剤」)対センソダイン(商標)ホワイトニング修復及びProtect(商標)歯磨き粉(「センソダイン」)を配合したGel7HT歯磨き粉(「センソダイン」)による20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の表面プロファイルの平均を示す。
図7図7は、ガラス組成物(「Gel+添加剤」)対ガラス組成物(「コルゲート+添加剤」)で製剤化されたGel7HT歯磨き粉対ガラス組成物(「コルゲート EN+添加剤」)で製剤化されたコルゲート(商標)Enamel Health Sensitivity Relief(商標)歯磨き粉を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の表面プロファイルの平均を示す。
図8図8は、ガラス組成物(「ゲル+添加剤」)と共に配合されたゲル7HT歯磨き粉(「ゲル」)とゲル7HT歯磨き粉との20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の表面プロファイルの平均を示す。
図9図9は、ガラス組成物(「ゲル+添加剤」)対コルゲート(商標)オプティックホワイト(商標)歯磨き粉(「コルゲート オプティック」)で製剤化されたGel7HT歯磨き粉を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の表面プロファイルの平均を示す。
図10図10は、ガラス組成物(「ゲル+添加剤」)対コルゲート(商標)Enamel Health Sensitivity Relief(商標)歯磨き粉(「コルゲート EN」)で製剤化されたGel7HT歯磨き粉を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の表面プロファイルの平均を示す図である。
図11図11は、模擬体液(SBF)中で37℃で30分後の本開示の模範的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの像である。
図12図12は、37℃における模擬体液(SBF)中での3時間後の本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの像である。
図13図13は、37℃における模擬体液(SBF)中での12時間後の本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの像である。
図14図14は、37℃での模擬体液(SBF)中での12時間後の、本開示による例示的なガラス組成物の走査型電子顕微鏡からの別の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示によるガラス組成物は、少なくとも四成分系である。ガラス組成物は、約50mol%~約95mol%のB;及びLiO、RbO、KO、NaO、SrO、CaO、MgO、及びZnOからなる群から選択される1つ以上のガラス成分の約5mol%~約50mol%を含む。ガラス組成物は、30mol%未満のRbOを含む。本開示によるガラス組成物は、生理学的条件下で分解し、緩衝化生理食塩水に曝露すると24時間以内に少なくとも5質量%を失う。
【0025】
ガラス組成物は、約1~約50μmのサイズの粒子を含む粒子状物質である。ガラス組成物は、象牙細管を閉塞し、それによって象牙質を脱感作するサイズの少なくともいくつかの粒子を含む。本開示の文脈において、象牙細管を閉塞するサイズの粒子は、象牙細管の中又は上に粒子が存在し、象牙質液の移動を減少させることを意味すると理解されるべきである。
【0026】
本開示の文脈において、「少なくとも四成分系」であるガラス組成物は、4つ以上の異なる要素を有するガラスを指すと理解されるべきである。例えば、ガラスはホウ素、リチウム、亜鉛、及び酸素を含むため、B、LiO、及びZnOのみからなるガラス組成物は、四成分系と考えられる。同様に、ガラスはホウ素、カルシウム、フッ素及び酸素を含むので、B、CaO及びCaFのみからなるガラス組成物は、四成分系と考えられる。対照的に、B及びNaOのみからなるガラス組成物は、ホウ素、ナトリウム、及び酸素元素を含むため、三成分系と考えられる。
【0027】
「1つ以上のガラス成分の約5mol%~約50mol%」は、ガラス成分の総mol%を指し、各成分のmol%を指すものではないことを理解されたい。例えば、本開示によるガラス組成物は、列挙された5mol%の追加のガラス成分を提供するために、2.5mol%のLiO及び2.5mol%のZnOを含むことができる。
【0028】
「約Xmol%」とは、報告されたパーセンテージの±2%以内の値を指すことを理解されたい。例えば、「約10mol%」とは、8mol%~12mol%の値を指し、なぜならこれらの値は全て報告された10%の±2%以内であるからである;「約50mol%」とは、48mol%~52mol%の値を指し、これらの値は全て報告された50%の±2%以内であるからである。
【0029】
粒子サイズの文脈における「約Xμm」は、注目されたサイズの試験ふるいについてのASTMに従って容認された公差に基づいて決定されることを理解されたい。例えば、50μm試験ふるいの許容公差は3μmである。従って、「約50μm」とは、サイズが47μm~53μmの粒子を指す。別の例では、35μm試験ふるいの許容公差は2.6μmである。従って、「約35μm」とは、サイズが32.4μm~38.6μmの粒子を指す。25μmふるいのASTM許容公差は2.2μmである。標準的な許容差のない試験用ふるい(例えば、20μm未満の試験用ふるい)については、「約Xμm」という表現は、5~15μmのサイズについては±15%、5μm未満のサイズについては±50%を指す。例えば、「約1μm」とは、0.5~1.5μmのサイズの粒子を指す。
【0030】
ガラス組成物
本開示によるガラス組成物は、CaF、NaF、NaPOF、KF、又はSnFのようなフッ化物源を含むことができる。ガラス組成物にフッ化物を含めると、ガラスが劣化するとフッ化物が放出される。放出されたフッ化物は象牙細管内又はその周囲にフッ化アパタイト(Ca(POF)を形成し、保護沈殿物を形成し、象牙質感受性をさらに低下させる。フッ化物を含むガラス組成物においては、フッ化物の供給源は、ガラス組成物の最大30mol%であってもよい。いくつかの例において、フッ化物の供給源は、ガラス組成物の約1mol%~約10mol%、例えば約1mol%~約5mol%であり得る。特定の例では、フッ化物の供給源は組成物の約15mol%である。CaF又はSnFを含む組成物は、NaF、NaPOF、又はKFを用いる組成物と比較して、出発物質1mol当たりのフッ化物の量を2倍にする。
【0031】
いくつかの例では、ガラス組成物は、約1mol%~約10mol%のフッ化物を含む。いくつかの例では、ガラス組成物は、約1mol%~約5mol%のフッ化物を含む。
【0032】
いくつかの例では、ガラス組成物は、0.1gの粒子状物質が、1、2、4、8、12、18又は24時間にわたって約1ppm/hr~約15ppm/hrの平均速度で、10mLの緩衝生理食塩水中にフッ化物を放出する十分なフッ化物を含む。本開示の文脈において、ppmは質量/質量として測定される。特別な例では、ガラス組成物は、1時間にわたって1時間当たり約4~約6ppmのフッ化物が放出される十分なフッ化物を含む。
【0033】
本開示によるガラス組成物のいくつかの例において、20mol%未満、例えば15mol未満、10mol%未満、又は5mol%未満のガラス組成物は、CaO、MgO、及びNaOである。
【0034】
本開示によるガラス組成物の一例において、ガラス組成物は、CuOを含まず、0.1mol%未満のBaO、及び0.1mol%未満のPを含む。特に、ガラス組成物は、CuO、BaO、又はPを含まない。
【0035】
本開示によるガラス組成物は、LiO、RbO、KO、NaO、SrO、及びZnOからなる群から選択される1つ以上のガラス成分の約5mol%~約50mol%を含んでもよく、ガラス組成物は、0.1mol%未満のCaO及び0.1mol%未満のMgOを含む。
【0036】
本開示によるガラス組成物は、LiO、RbO、KO、SrO及びZnOからなる群から選択される1つ以上のガラス成分の約5mol%~約50mol%を含んでもよく、ガラス組成物は、0.1mol%未満のCaO、0.1mol%未満のMgO、及び0.1mol%未満のNaOを含む。
【0037】
本開示によるガラス組成物は、約50mol%~約80mol%のB、例えば約50mol%のBを含むことができる。
【0038】
本開示によるガラス組成物は、LiO、RbO、KO、NaO、SrO、CaO、MgO、及びZnOからなる群から選択される1つ以上のガラス成分の約5mol%~約40mol%、例えば約20mol%~約40mol%を含むことができる。
【0039】
本開示によるガラス組成物は、B、LiO、及びZnO、並びに場合によりRbO、NaO、及び/又はフッ化物源を含んでもよい。具体的には、ガラス組成物は、約5mol%~約25mol%のLiO、約5mol%~約25mol%のRbO、又は約5mol%~約25mol%のLiO、約5mol%~約15mol%のZnO、及び任意に約5mol%~約15mol%のNaOを含み、ガラス組成物は、約50mol%のB、又は約70mol%のBを含むことができる。
【0040】
本開示によるガラス組成物は、B、及びZnO、並びに場合によりRbO及び/又はフッ化物源を含むことができる。特に、ガラス組成物は、約5mol%~約30mol%のZnOを含む。存在する場合、RbOは、約5mol%~約30mol%の量で含まれ得る。ガラス組成物は、約50mol%のBを含むことができる。
【0041】
本開示によるガラス組成物は、B、SrO、及び任意にZnO及び/又はフッ化物源を含んでもよい。特に、ガラス組成物は、約5mol%~約30mol%のSrOを含む。存在する場合、ZnOは、約5mol%~約30mol%の量で含まれてもよい。ガラス組成物は、約50mol%のBを含むことができる。
【0042】
上述したように、本開示はまた、約5mol%~約10mol%のCaF、SnF、NaF、KF、又はそれらの任意の組合せとして提供されるフッ化物;及び約90mol%~約95mol%のB、NaO、MgO、及びCaOの組合せを含むガラス組成物を提供し、ここで、ホウ素、マグネシウム、Naと任意のKの組合せ、及びガラス組成物中のCaと任意のSnの組合せは、それぞれ約20:約4:約6:約3の元素比で存在する。
【0043】
このようなガラス組成物の1つの具体例は、約50mol%のB、約15mol%のNaO、約20mol%のMgO、約10mol%のCaO、及び約5mol%のCaFを含む。この組成物は、本明細書では組成物「PBF1」と称することができる。
【0044】
このようなガラス組成物の別の具体例は、約48mol%のB、約9mol%のNaO、約19mol%のMgO、約14mol%のCaO、及び約10mol%のNaFを含む。この組成物は、本明細書では組成物「PBF1-Na」と称することができる。
【0045】
粒子径分布
本開示によるガラス組成物は、約1~約50μmのサイズの粒子を含む粒子状物質である。少なくともいくつかの粒子は象牙細管の中又は上に座るサイズである。象牙細管は、直径の自然な変動を有し、主として、約0.5~約8μmの大きさ、例えば、約0.5~約5μmの大きさである。従って、本開示のガラス組成物は、感受性歯に関連する疼痛を一時的に軽減することができる象牙質の脱感作に使用することができる。
【0046】
いくつかの実施例では、粒子材料を構成する粒子の少なくとも75%は、50μmより小さいサイズである。他の実施例では、粒子の少なくとも85%又は少なくとも95%は、50μmより小さいサイズである。いくつかの実施例では、粒子材料を構成する粒子の少なくとも5%は、サイズが7μm未満である。
【0047】
特定の実施例では、粒子材料は、粒子の少なくとも5%が35μmより小さく、粒子の少なくとも5%が15μmより小さく、粒子の少なくとも5%が7μmより小さい複数の粒子から構成される。
【0048】
特定の実施例では、粒子材料は、粒子の少なくとも5%がサイズ約15μm~約35μmであり、粒子の少なくとも5%がサイズ約6μm~約15μmであり、粒子の少なくとも5%がサイズ約3μm~約7μmである複数の粒子から構成される。
【0049】
いくつかの特定の例において、粒子材料は、粒子サイズ分布が約5μmのDx10、約15μmのDx50、及び約30μmのDx90である複数の粒子から構成される。
【0050】
分解
本開示によるガラス組成物は、生理学的条件下で分解し、緩衝化生理食塩水溶液に曝露すると24時間以内に少なくとも5質量%を失う。いくつかの例において、ガラス組成物は、緩衝化生理食塩水溶液に曝露されると、24時間以内に、少なくとも20質量%、少なくとも40質量%、少なくとも60質量%、又は少なくとも80質量%を失うことができる。
【0051】
象牙質脱感作組成物
本開示によるガラス組成物は、無水、経口適合性担体を含む象牙質脱感作組成物中に処方することができる。本開示による象牙質脱感作組成物は、ガラス組成物が水に曝されると劣化するので、水を含まない。
【0052】
本開示の文脈において、「無水」とは、象牙質脱感作組成物が非常に少ない水を含み、ガラス組成物が生成物の予想寿命にわたって象牙質感受性を低下させることができるままであることを意味するものと理解されるべきである。製品の予想される寿命は、象牙質脱感作組成物が生成された時から象牙質脱感作組成物が完全に使い切られた時、又は廃棄された時までの最も長い予想される時間を指す。
【0053】
象牙質脱感作組成物に使用される経口適合性担体は、マウスウォッシュ、マウスウォッシュを形成するために追加の成分と混合するように製剤化された担体、又は歯磨き粉、歯科用ゲル、予防用ペースト、歯科用ワニス、接着剤、又は歯磨き粉を形成するために追加の成分と混合するように製剤化された担体のような経口適合性粘性担体であってもよい。経口適合性の粘性担体は、30℃で約100cP~30℃で約150,000cpの粘性を有することができる。
【0054】
象牙質脱感作組成物は、上述したように、ガラス組成物が、脱感作組成物が約100ppm~約5,000ppmのフッ化物を含むのに十分な量で存在するフッ化物を含む、本開示によるガラス組成物を含んでもよい。
【0055】
本開示による象牙質脱感作組成物の一例は、研磨剤と、ラウリル硫酸ナトリウムのような洗剤と、フッ化物源と、抗菌剤と、香料と、再ミネラル化剤と、グリセロール、ソルビトール又はキシリトールのような糖アルコールと、別の象牙質脱感作剤と、ポリエチレングリコールのような親水性ポリマーと、又はそれらの任意の組合せとを含む歯磨き粉である。ガラス組成物は、歯磨き粉の約0.5~約15質量%であってもよい。
【0056】
本開示による象牙質脱感作組成物の特定の例は、本開示によるガラス組成物と、グリセリン、シリカ、ポリエチレングリコール(PEG400など)、二酸化チタン、カルボマー、及び甘味料(アセスルファメカリウム又はサッカリンナトリウムなど)とを含む歯磨き粉である。
【0057】
本開示による象牙質脱感作組成物の別の特定の例は、本開示によるガラス組成物と、α-カルボマー、DL-リモネン、グリセリン、ミントフレーバー、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-8)、シリカ、二酸化チタン、ラウリル硫酸ナトリウム、及び甘味料(例えば、アセスルファムカリウム又はサッカリンナトリウム)とを含む歯磨き粉である。
【0058】
本開示による象牙質脱感作組成物の別の例は、本開示によるガラス組成物を含む担体であり、ここで、担体は、歯磨き粉を形成するために追加の成分と混合されるように製剤化される。
【0059】
本開示による象牙質脱感作組成物のさらに別の例は、さらなる成分と混合して口洗浄を形成するように製剤化された担体である。担体の特定の例には、本開示によるガラス組成物、及び:無水アルコール、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、精油、安息香酸、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、香味剤、着色剤、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。マウスウォッシュを形成するために担体と混合される/混合される追加の成分としては、水、過酸化物、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、精油、アルコール、安息香酸、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、香味剤、着色剤、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。担体及び追加の成分は、別々のコンパートメントに保持され、混合物が口洗浄として使用される前に一緒に混合されてもよい。別個のコンパートメントは、分岐ボトルのような多室ボトルの形態であってもよい。
【0060】
本開示による象牙質脱感作組成物の別の例は、本開示によるガラス組成物を含む予防ペースト(「プロフィーペースト」とも呼ばれる)である。意図される腐生ペーストの特定の例としては、本開示によるガラス組成物、及び:軽石、グリセリン、珪藻土(好ましくは細粒)、ケイ酸ナトリウム、サリチル酸メチル、リン酸一ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、甘味料(例えば、アセスルファムカリウム又はサッカリンナトリウム)、香味料、着色料、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0061】
方法
本開示によるガラス組成物は、適切なモル量の出発試薬を混合すること;前駆体ブレンドを白金るつぼ(ジョンソン・マッセイ社、ノーブル・メタルズ、ペンシルバニア州)に充填すること;充填されたるつぼを炉(Carbolite、RHF1600)内に室温で置くこと;炉(例えば、25℃/分の速度で)を600℃の初期滞留温度に加熱すること;温度を60分間保持すること;温度を1,100℃の滞留温度に上昇させること;温度を60分間保持すること;及び2つのステンレス鋼板の間でガラス溶融物を急冷することによって合成することができる。
【0062】
上記の特定のランプ速度、時間、及び温度は、ガラスが溶融する限り、修正することができることを理解されたい。ランプ速度が10~20度/分であり、滞留温度に保持することによって、ガラスから少なくともいくつかの気泡を除去することができる。
【0063】
得られたクエンチされたガラスは、遊星マイクロミル(Pulverisette 7、Fritsch、ドイツ)内で別々に粉砕/粉砕され、ASTM E-11準拠ふるい(Cole Palmer、U.S.A.)でふるいにかけて<25μmの粒子を得ることができる。ガラスは、ガラスシンチレーションバイアル中で真空下で保存することができる。
【0064】
得られたガラス組成物は酸化物を含むが、出発試薬は酸化物、炭酸塩、又はその両方を含むことができる。例えば、出発試薬は、酸化ホウ素、炭酸ルビジウム、炭酸リチウム、及びフッ化カルシウムを含み得る。炭酸ルビジウムと炭酸リチウムは、炉内で分解してCOを放出し、対応する酸化物を発生する。
【0065】
粒子サイズは、Malvern Mastersizer(MS)3000レーザー回折粒子サイズ分析器を用いて測定する。ガラス粉末を別々に脱イオン水に懸濁し、懸濁液の不明瞭度を5~8%にする。懸濁液は、青色レーザー(λ=470nm)及び赤色レーザー(λ=632.8nm)の両方を用いて測定し、5回(n=5)測定する。
【0066】
フッ化物放出は、0.1gのガラス組成物を10mlのTRIS緩衝生理食塩水(BioUltra,Sigma Aldrich,Canada)中に15mlのFalconチューブに入れることにより測定する。溶液を120rpmで攪拌し、所望の放出期間、例えば1、3、6、12又は24時間、37℃の温度に維持する。完了後、液体部分を傾斜させ、0.22μmフィルター(Sarstedtシリンジフィルター、カナダ)を用いて新しい清浄な15mlのFalconチューブに濾過し、これをキャップし、フッ化物の量が定量されるまで4℃で保存した。放出されたフッ化物の濃度は、フッ化物電極の組み合わせを備えたAccμmet(登録商標)AB250pH/イオン選択電極計(Accumet(登録商標))を用いて定量される。標準溶液は、イオン選択電極(NaF、0.1M F、Sigma Aldrich、Canada)専用のフッ化物分析標準を用いて調製され、較正キュアは、分析前に回収される。各組成物の抽出から誘導された液体抽出物を、電極製造説明書に従ってイオン分析のために調製した。イオン濃度はn=3±SDの平均として報告される。
【0067】
本開示の文脈において、ガラス組成物の質量損失は、長さ6mm、直径4mmの固体ガラス円筒との関係である。ガラス円筒は、上述のように溶融ガラスを製造し、溶融ガラスをステンレス鋼製の型(長さ6mm、直径4mm)に入れ、2枚のステンレス鋼板の間にセットして焼入れすることによって調製される。シリンダー上の余分なガラスは、スピーディーなシャープ器具によって注意深くエッチングされ、残りの余分なガラスは、240のサンドペーパーを有する研削/研磨ホイールを用いて除去され、ホイール上の型/ガラスに圧力を加えられる。エッジ、気泡、チップが不均一なガラス製のシリンダーは除く。
【0068】
所定のガラス組成物の質量損失は、3つの円筒を用いて測定される。各シリンダーの長さと直径を3回測定・記録し(測定位置の変更)、平均値±SDとして記録する。各シリンダーの質量を別々に測定する(Sartorius Cubis、モデルMSU-224S 100DI、Cole Palmer)。3本のシリンダーを、各チューブに20mLのTRIS緩衝生理食塩水(BioUltra,Sigma Aldrich,Canada)を入れた別々の50mLファルコンチューブに入れる。次に、チューブを振盪インキュベーター(Thermos Scientific,MaxQ 4000)に37℃で入れ、120rpmで24時間攪拌する。24時間後、シリンダーを溶液から濾過し、冷蒸留HOで洗浄し、37℃のオーブン中で一晩乾燥させる。乾燥後、長さ、直径、質量を測定する。
【0069】
組成物の摩耗性は、組成物でブラッシングした後のレジン複合材料又はエナメル表面の光沢及び表面粗さを測定することによって決定される。ESPE Filtek Supreme Ultra Universal Restorative,shade A2B(3M,St.Paul,Minnesota,USA)は、直径12.7mm、厚さ2mmの金属スプリットモールドで硬化される。マイラーシートはモールドの上下に配置され、ガラス板は複合材料の平坦部をプレスし、余分な材料を絞り出すために使用される。広帯域多波LED光硬化ユニット(Valo Grand,Ultradent Products,South Jordan,Utah,Utah,USA)を試験片の上に直接置き、標準設定で20秒間硬化させる。余分な材料は手で取り除いてから、ブラシに供する検体を取り付ける。
【0070】
試料は、使用前に最低24時間、暗所で37℃で保存する。エナメル質試料の表面は、平坦で滑らかな表面を生成するために、様々なレベルのグリットで研磨することによって調製される。低グリットサンドペーパーを用いて、初期平面(P800C、Klingspor、Haiger、ドイツ)を作り、次いで、大量のグリットを使用し、次いで、研磨する。最終的な研磨工程は、3μm、次いで0.3μmのアルミナ酸化物粉末スラリー(Buehler Ltd.、米国イリノイ州Lake Bluff)を有する布パッド上で実施される。各研磨工程は、手で加圧した状態で約1分間行われる。
【0071】
オーダーメイドのブラッシングマシン(Ultradent,South Jordan,USA)は、10試料の歯ブラッシングを同時にシミュレートする。歯ブラシ(GΜMブランド459PC,Sunstar,Guelph,Ontario,Canada)は、ブラッシング中に176gの一定負荷をかけた歯ブラシを備えている。歯ブラシは、10,000回のブラシサイクル後に交換する。試料は、ブラッシングの間、蒸留水で5:8重量比の歯磨き粉スラリーの最低3mmで覆われる。2,500回のブラシサイクルごとに試料を別の位置に回転させる(試料を動かすたびに同じ歯磨き粉でブラシをかけるようにする)。20,000回のブラシサイクルは、約2年間のブラシ研磨を表す。機械内の歯磨き粉の繰り返しと位置は、(各基板材料について)乱数発生器で無作為に割り付けられ、一方、歯ブラシの回転を確実にするために、1回の運転中に同じ歯磨き粉の最低2回の繰り返しがあることを手動で保証する。
【0072】
光沢計(Novo-Curve G、Rhopoint Instrμments、Hastings、UK)を用いて、複合材料及びエナメル質表面の光沢を測定する。光沢を3つのランダムな点で測定し、表面の平均値を作成する。光沢計較正は、高反射率と低反射率のトレーサブル較正タイルを用いて毎日検証される。光沢を0、5,000、10,000、15,000、20,000回のブラシサイクルで測定し、光沢を測定した後、新しい歯磨きスラリーを使用する。
【0073】
表面の平均粗さも、ブラッシング前及び20,000回のブラッシングサイクル後に測定した。原子間力顕微鏡(nGauge,ICSPI Corporation,Rev.1.0,Waterroo,Ontario,Canada)を用いて、3つの異なる位置における平均粗さを測定し、表面の平均を形成する。25×25μmの領域を1200μs/ピクセルの速度で走査する。Gwyddion(http://gwyddion.net)ソフトウエアを用いて解析した。
【実施例
【0074】
表1に示すガラス組成物はすべて、分析グレードの試薬(酸化ホウ素、炭酸ルビジウム、炭酸リチウム、及びフッ化カルシウム)(カナダ、Sigma Aldrich)の定量量を秤量することにより合成した。均一性を確保するために、個々の製剤を60分間混合した。各前駆体ブレンドを置き、50mLの白金るつぼ(Johnson Matthery,Noble Metals,Pennsylvania)に充填した。次いで、パックるつぼを室温で炉(Carbolite,RHF 1600)に入れた。炉を600℃の初期居住温度まで加熱し(25℃/分)、60分間保持した。次いで、温度を1,100℃の最終的な居住温度に上昇させ(20℃/分)、60分間保持した。除去すると、各ガラス溶融物を2つのステンレス鋼板の間でクエンチした。得られたクエンチされたガラスは、遊星マイクロミル(Pulverisette 7,Fritsch,Germany)内で別々に粉砕/粉砕し、ASTM E-11準拠ふるい(Cole Palmer,U.S.A.)でふるいにかけて<25μmの粒子を得た。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の例示的なガラスの粒度分布を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
ここで、「Dx(#)」は、注記された値よりもサイズが小さい粒子の#%を指すことを理解されたい。例えば、BCF100は、5.16ミクロンのDx(10)を有し、これは、粒子の10%が5.16ミクロン未満のサイズであることを意味する。
【0079】
表1の例示的ガラスの粒子を、上記の方法を用いて12時間及び24時間にわたって緩衝化生理食塩水溶液中のフッ化物放出について評価した。放出されたフッ化物のppm値を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
BCF201を2つの歯磨き粉に配合し、ガラス粒子の研磨効果を試験し、センソダイン(商標)ホワイトニング修復及びProtect(商標)歯磨き粉(「センソダイン」)及びコルゲート(商標)オプティックホワイト(商標)歯磨き粉(「コルゲートオプティック」)の研磨効果と比較した。例示的なガラスは、(a)コルゲート(商標)エナメル健康感受性レリーフ(商標)(コルゲート-パルモリブ、Toronto、ON、Canada)(「コルゲートEN」)又は(b)Gel7HT(Germiphene、Brantford、ON、Canada)(「Gel」)、いずれの研磨材料も含有しない中性pHフッ化物ゲル歯磨き粉で製剤化された。
【0082】
研磨試験の結果を以下の表及び図1~10に示す。表4は、異なる歯磨き粉を使用した異なる数のブラッシングサイクル後のレジン複合材表面の光沢度を示す。表5は、異なる歯磨き粉を使用した異なる数のブラッシングサイクル後のレジンコンポジットの光沢度を示す。表6は、異なる歯磨き粉を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のレジン複合材料表面の粗さを示している。表7は、異なる歯磨き粉を用いた20,000回のブラッシングサイクル後のエナメル表面の粗さを示す。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
本開示によるさらなる例示的なガラス組成物は、異なる成分のmolパーセンテージを示す本開示の例ではないガラス組成物と共に表8に示されている。
【0088】
【表8-1】
【0089】
【表8-2】
【0090】
表8に示される例示的なガラス組成物及び追加組成物は、混合物の設計に基づいて選択され(設計専門家8.0.4、Stat-Ease Inc.)、ガラス組成物に対する種々の範囲の成分の効果を評価した。
【0091】
ガラス組成物を上記のように合成した。簡単に説明すると、上記組成物の各々を形成するのに必要な十分量の分析グレード試薬(Sigma Aldrich、Canada)を秤量した。均一性を確保するために、個々の製剤を60分間混合した。各前駆体ブレンドを置き、50mLの白金るつぼ(Johnson Matthery,Noble Metals,Pennsylvania)に充填した。次いで、パックるつぼを室温で炉(Carbolite,RHF 1600)に入れた。炉を600℃の初期居住温度まで加熱し(25℃/分)、60分間保持した。次いで、温度を1,100℃の最終的な居住温度に上昇させ(20℃/分)、60分間保持した。除去すると、各ガラス溶融物を2つのステンレス鋼板の間でクエンチした。
【0092】
以下の組成物は、上述のクエンチ条件下でガラスを形成した組成物の具体例であり、このような条件は、製造スケールプロセスに適した標準的なクエンチ条件のための1つのオプションを表す。
【0093】
【表9】
【0094】
表9に列挙された例示的組成物のための得られたクエンチされたガラスは、以下のバルク特性を有した。
【0095】
【表10】
【0096】
表9に列挙された例示的組成物のための得られた急冷ガラスは、遊星マイクロミル(Pulverisette 7、Fritsch、ドイツ)内で別々に粉砕/粉砕され、<25μmの粒子を得るためにASTM E-11準拠ふるい(Cole Palmer、米国)でふるいにかけられた。
【0097】
表9に列挙された例示的なガラスの粒度分布を表11に示す。BCF315、BCF326は、脱イオン水中で迅速に分解しすぎて、正確な粒度測定値を得ることができなかった。
【0098】
【表11】
【0099】
表9に列挙した例示的なガラスの粒子を、1、4及び24時間における緩衝化生理食塩水溶液中の質量損失及びフッ化物放出について評価した。試料を15mLの三角試験管(n=3)中で調製し、秤量し、記録した。0.1グラムの各ガラス粉末(<25ミクロン)を別々に秤量し、計量した15mL Falconチューブ中の10mL TRIS緩衝生理食塩水(BioUltra,Sigma Aldrich,Canada)に入れた。チューブをパラフィルムでシールした後、振盪インキュベーター内に37℃で置き、120rpmで4つの別々の時点:5分間、30分間、1時間、3時間、24時間及び48時間撹拌した。所定の時間経過後、チューブをインキュベーターから取り出し、溶液を直ちに3.0 RCF/4.4 RPMで15分間遠心分離した(Eppendorf、Centrifuge 5702)。上清を、新鮮な15mLファルコンチューブにデカントした。さらに、48時間インキュベートされた粉末の試料を、ボルテックス混合により10mLの新鮮なTRIS緩衝生理食塩水中に再懸濁し、さらに8時間インキュベートした(合計56時間のインキュベーションの間)。再インキュベートした粉末を他の試料と同じ方法で処理した。ペレットを、それぞれのFalconチューブ中で50℃のオーブン中で乾燥した。
【0100】
フッ化物イオンの放出を、フッ化物電極(Fisher Scientific)を備えたAccμmet AB250pH/イオン選択性メーターを用いて測定した。プローブを較正するために、イオン選択電極(NaF、0.1F、Sigma Aldrich、カナダ)用のフッ化物分析標準を用いて6種の標準溶液を調製した。フッ化物濃度がそれぞれ1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、0.1ppm、0.01ppmの標準品は、溶媒としてTRIS緩衝生理食塩水(BioUltra,Sigma Aldrich,Canada)を用いて合成された。校正前に各標準品にTISAB濃縮液(4.5mL)を添加した(製造者の指示に従う)。プローブが較正されると、標準の勾配をチェックして、使用説明書からの範囲内であることを確認した。TISAB濃縮物(1.0mL)をデカント上清に加え、次いで、較正されたプローブを用いてそのフッ化物濃度について測定した。イオン濃度は平均±SDとして報告される。
【0101】
放出されたフッ化物の質量損失とppm値を表12に示す。BCF314は、1時間時点前に緩衝生理食塩水溶液中で完全に分解し、さらにフッ化物源は含まれなかった。
【0102】
【表12】
【0103】
表8に列挙された組成物は、デザインスペースを反映する。試験された組成物の結果は、異なる組成物の相対比較を可能にすることができ、及び/又は組成物の異なる成分に関連する傾向を同定するのに有用であり得る以下の式を提供した。実験誤差及びモデリング誤差は、ガラス特性の絶対的予測を妨げるが、この方程式は、ガラス組成設計のガイド及び改良に使用することができる。これらのモデルを一緒に使用すると、これらのモデルは、試験された組成物空間内での多成分組成物の調整において、どの因子がトレードオフされ得るかを示唆するのに役立つであろう。次の式では、リストされている成分の値はパーセンテージ(小数点以下ではなく)で示さる。例えば、50mol%のBは「50」(「0.5」ではなく)である。
【0104】
ガラスは、以下の式が1.60以下である場合、試験されたクエンチ条件下で形成されることが一般的に予想される:
(2.01×e+0.99)/(1+e
ここで、y=-0.086622×[B]+0.14169×[LiO]-0.565849×[ZnO]+0.192175×[NaO]-0.461537×[CaF]+0.036636×[KF]+0.00365×[NaF]+0.191201×[SnF]+0.192612×[RbO]+0.199999×[SrO]+0.01393×[B]×[ZnO]+0.012239×[B]×[CaF]-0.012412×[LiO]×[CaF]-0.013904×[LiO]×[RbO]-0.010857×[ZnO]×[CaF]-0.013296×[ZnO]×[RbO]-0.010699×[ZnO]×[SrO]+0.010128×[CaF]×[KF]-0.012103×[CaF]×[SrO]である。
【0105】
ガラスの密度は、一般に、次の式を用いて予測することができる:
ρ=0.018783×[B]+0.026444×[LiO]+0.046191×[ZnO]+0.033814×[NaO]+0.039196×[CaF]+0.026997×[KF]+0.029458×[NaF]+0.049441×[SnF]+0.047057×[R]+0.054984×[SrO]
約1.3g/cmから約2.2g/cmまでのガラス密度は、非水性口腔ケア製剤において特に有益であり得る。グリセロール及びシリカは、非水性歯磨き粉の主要な液状成分及び固形成分であり、それぞれ1.3及び2.2g/cmの密度を有する。
【0106】
ガラス転移温度(T)は、一般に、以下の式を用いて予測することができる:
=3.49398×[B]+3.66342×[LiO]+6.38755×[ZnO]+6.23689×[NaO]+6.43079×[CaF]+3.31695×[KF]+5.04074×[NaF]+9.88761×[SnF]+3.29777×[RbO]+10.51264×[SrO]
相分離されたガラスは、多重ガラス遷移を呈することができ、その大きさは、必ずしも相の体積分布を表すとは限らないことを理解されたい。上記の式はガラス転移の開始を予測するが、相分離が起こる場合、予測される開始は組成物の主要なガラス転移ではない場合がある。従って、予測されるガラス転移温度は、測定された主なガラス転移温度と著しく異なる場合がある。
【0107】
試験条件下での1時間後の質量損失率に関する式は、次のとおりである:
(100×e)/(1+e
ここで、y=0.088098×[B]+0.062481×[LiO]-0.262486×[ZnO]+0.05542×[NaO]-0.165517×[CaF]+0.089171×[KF]+0.075875×[NaF]+0.10439×[SnF]+0.109897×[RbO]-0.089987×[SrO]
上記の式は、試験された条件下で1時間以内に完全に溶解することを示すガラス組成物を同定するのに非常に予測的であり、この時間枠下で劣化する他のガラスを同定するのに有用であり得る。さらに、この方程式は、より遅い分解組成物についての正確な質量損失推定値を提供しないが、この方程式は、組成の変化に伴って生じると予想される分解の相対的変化を予測するのに有用であり得る。このような相対的変化は、ガラス組成設計のガイドとして使用することができる。
【0108】
試験条件下での1時間後のフッ化物の放出(ppm)に関する式は、次のとおりである:
(2750×e)/(1+e
ここで、y=-0.05785×[B]-0.15837×[LiO]-0.170872×[ZnO]-0.184773×[NaO]+0.05638×[CaF]+0.101381×[KF]+0.053886×[NaF]-0.307462×[SnF]-0.183034×[RbO]-0.184126×[SrO]
上記の式は、全てのガラス組成物について放出されたフッ化物の量の正確な推定値を提供しないが、このモデルは、組成の変化に伴って生じると予想されるフッ化物放出の相対的な変化を予測するのに依然として有用である。
【0109】
PBF1は、重量11.60gのB、5.30gのNaCO、2.69gのMgO、3.33gのCaCO、及び0.7gのCaF(Sigma Aldrich、Canada)によって合成した。均一性を確保するために、出発物質を60分間混合した。ブレンドを置き、50mLの白金るつぼ(ジョンソン・マッセイ社、ノーブル・メタルズ社、ペンシルベニア州)に充填した。次いで、パックるつぼを室温で炉(Carbolite、RHF 1600)に入れた。炉を600℃の初期居住温度まで加熱し(25℃/分)、60分間保持した。次いで、温度を(20℃/分)1,200℃の最終的な居住温度に上昇させ、60分間保持した。除去すると、ガラス溶融物を2つのステンレス鋼板の間でクエンチした。得られたクエンチされたガラスは、遊星マイクロミル(Pulverisette 7,Fritsch,Germany)内で別々に粉砕/粉砕し、ASTM E-11準拠ふるい(Cole Palmer,U.S.A.)でふるいにかけて<25μmの粒子を得た。
【0110】
比較ガラス組成物(比較実施例(CE)1及び2と称する)は、5.80gのB、23.66gのP、5.30gのNaCO、1.34gのMgO、6.67gのCaCo、及び0.70gのCaFを用いて同様に合成され、CE1は、約25mol%のB、約25mol%のP、約15mol%のNaO、約10mol%のMgO、約20mol%のCaO、及び約5mol%のCaFを有した;ならびに5.80gのB、23.66gのP、7.07のNaCO、1.34gのMgO、5.00gのCaCO、及び0.70gのCaFを用いて合成され、CE2は、約25mol%のB、約25mol%のP、約20mol%のNaO、約10mol%のMgO、約15mol%のCaO、及び約5mol%のCaFを有した。
【0111】
ガラス粉末の密度は、1cm挿入物を備えたAccuPyc 1340ヘリウムピクノメーター(米国マイクロメリックス社)を用いて測定した。使用前に、容量0.718512cmのスタンダードを用いてピクノメーターを較正した。ガラス分析のために、インサートに約0.5~0.7グラムのガラス粉末を充填した。各ガラスの3つの試料を測定し、各測定値は10読み取りの平均値である。
【0112】
PBF1の密度は2.5951±0.0072g/cmと測定した。CE1の密度は2.7079±0.0021g/cmとして測定した。CE2密度は2.6749±0.0013g/cmと測定した。
【0113】
PBF1、CE1及びCE2について、フッ化物の放出及び質量損失を測定した。試料を15mLの三角試験管(n=3)中で調製し、秤量し、記録した。0.1グラムの各ガラス粉末(<25ミクロン)を別々に秤量し、計量した15mL Falconチューブ中の10mL TRIS緩衝生理食塩水(BioUltra,Sigma Aldrich,Canada)に入れた。チューブをパラフィルムでシールした後、振盪インキュベーター内に37℃で置き、120rpmで4つの別々の時点:5分間、30分間、1時間、3時間、24時間及び48時間撹拌した。所定の時間経過後、チューブをインキュベーターから取り出し、溶液を直ちに3.0RCF/4.4 RPMで15分間遠心分離した(Eppendorf、Centrifuge 5702)。上清を、新鮮な15mLファルコンチューブにデカントした。さらに、48時間インキュベートされた粉末の試料を、ボルテックス混合により10mLの新鮮なTRIS緩衝生理食塩水中に再懸濁し、さらに8時間インキュベートした(合計56時間のインキュベーションの間)。再インキュベートした粉末を他の試料と同じ方法で処理した。ペレットを、それぞれのFalconチューブ中で50℃のオーブン中で乾燥した。
【0114】
フッ化物イオンの放出を、フッ化物電極(Fisher Scientific)を備えたAccμmet AB250pH/イオン選択性メーターを用いて測定した。プローブを較正するために、イオン選択電極(NaF、0.1F、Sigma Aldrich、Canada)用のフッ化物分析標準を用いて6種の標準溶液を調製した。標準品のフッ化ナトリウム濃度は、溶媒としてTRIS緩衝生理食塩水(BioUltra、Sigma Aldrich、Canada)を用いて、それぞれ1000ppm、100ppm、10ppm、1ppm、0.01ppm、0.001と合成した。校正前に各標準品にTISAB濃縮液(4.5mL)を添加した(製造者の指示に従って)。プローブが較正されると、標準の勾配をチェックして、使用説明書からの範囲内であることを確認した。TISAB濃縮物(1.0mL)をデカント上清に加え、次いで、較正されたプローブを用いてそのフッ化物濃度について測定した。イオン濃度は平均±SDとして報告される。
【0115】
PBF1によって放出されるフッ化物イオンの量は、5分で89±2ppm、30分で94±3ppm、1時間で105±5ppm、3時間で94±7ppmと測定された。CE1又はCE2によって放出されるフッ化物イオンは測定可能ではなかった。
【0116】
質量損失は、TRIS緩衝生理食塩水への曝露後の乾燥試料の質量を試料の初期質量と比較することによって計算した。PBF1の質量損失は、5分後42.0±2.1%、30分後47.3±2.7%、1時間後51.5±4.3%、3時間後41.7±5.7%、24時間後70.1±6.8%、48時間後100%であった。
【0117】
PBF1の7つの異なる試料の粒子サイズを、Malvern Mastersizer 3000モデルレーザー回折粒子サイズ分析器を用いて測定した。ガラス粒子を蒸留水中に別々に懸濁させ、2~5%の不明瞭度を得た。分析に先立って、ガラス粉末を真空デシケーター中に保存し、分析のために除去し、3×5回、約20秒/回継続した。懸濁液は、青色(λ=470nm)及び赤色(λ=632.8nm)レーザー(n=5)の両方を用いて測定した。
【0118】
【表13】
【0119】
模擬体液中のアパタイト形成はPBF1で確認されたが、CE1又はCE2では明らかではなかった。模擬体液は、Kokubo及びTakadama(Kokubo,T.and Takadama,H.Biomaterials(2006)27:15,pp 2907-2915)によって発表された方法及び指示に従って合成した。
【0120】
1LバッチのSBFを1000mL Nalgeneボトル(FEPボトル)中で調製した。調製したSBFは、実験的使用前の安定性を確保するために合成直後24時間室温で保存した。SBFは、蓋をしっかりとしたNalgeneボトルに保存し、直ちに必要でない場合は6℃に保った(実験的使用の場合は最大30日間)。
【0121】
TCO4法(Mason,A.L.B.,Kim,T.B.,Valliant,E.M.et al.J Mater Sci:Mater Med(2015)26:115に発表)に従って、各ガラス組成物(n=3)の0.75gのガラス粉末を、上記で合成したように、ポリエチレン容器にSBF50mLに浸漬した。次いで、容器をインキュベート軌道振盪器中に37℃で置き、120rpmで3時点:30分、3時間及び12時間撹拌した。経過時間後、各試料をWhatman 42又は5グレードの濾紙(粒子保持率2.5μm)で真空ろ過し、溶液から固体物質を回収した。固体を直ちに蒸留水及びアセトンで洗浄して、さらなる反応を停止した。
【0122】
濾過された試料を真空デシケーター中で乾燥させ、さらなる分析を行った。各試料のイメージングは、1000×及び10000×の倍率で3KV及び15mAで操作する日立S-4700 FEG(Hitachi,Chula Vista,Ca)走査型電子顕微鏡を用いて行った。試料を両面カーボンテープを用いてスタブ上に取り付け、70秒間金-パラジウムで被覆したスパッタを用いた(Leica EM ACE200、Wetzlar、Germany)。30分、3時間、12時間のPBF1の走査型電子顕微鏡像を図11~14に示す。
【0123】
PBF1はまた、適用プロトコールを開発し、カテゴリー閉塞尺度に従って2人の評価者により等級付けされたSEM画像の統計解析により象牙質細管閉塞について評価した。ヒト象牙質(厚さ約1~1.5mm)の切片を、ダイヤモンドディスクソーを用いて、根の長軸に垂直な、う蝕のない、貯蔵されていない大臼歯の歯冠から調製した。各切片を10%クエン酸で2分間エッチングし、続いて60秒間水ですすぎ、2分間超音波処理し、さらに60秒間水ですすいだ。各切片を直径25mmの型に入れ、3mmの深さのアクリル樹脂で覆った。樹脂が硬化すると、象牙質面は、ミラー仕上げのために、800及び2500粒紙で順次研磨された。脱イオン水ですすぎの後、表面をエッチングし、超音波処理し、再度すすいだ。試料の完全性、尿細管密度及び開存性を、再度光学顕微鏡下で、次いでSEMで検査した。
【0124】
象牙質試料1個を各治療群に割り付けた。象牙質試料を、(i)例示的なガラス粒子の非形成混合物、(ii)例示的なガラス粒子の混合物を含む試験歯磨き粉、又は(iii)追加のガラス粒子を含まない対照歯磨き粉で処理した。非粉末ニトリル手袋付きフィンガーを用いて、形成されていない混合物を10秒間適用した。試験歯磨き粉及び対照歯磨き粉を、10秒間電気歯ブラシを用いて試料に適用した。歯磨き粉を30秒間放置した後、目に見えるペーストがすべて除去されるまですすいだ。これを、歯磨き粉の合計4回の塗布に対して繰り返した。
【0125】
デンチン試料をオーブン中で37℃で1時間乾燥し、金で被覆し、Phenom ProX走査電子顕微鏡を用いて可視化した。3000倍の5つの画像を、各試料の異なる部分で撮影した。この部分では、尿細管は表面に対して垂直であった。それぞれの3000倍の顕微鏡写真を、5点カテゴリー尺度に基づいて象牙細管閉塞の延長に関して2名の単盲検評価者によって調べた。悪性度分類は以下のように定義した。
1.閉塞(100%閉塞)
2.ほぼ閉塞(75%閉塞)
3.同等(50%の閉塞)
4.ほぼ非閉塞(25%閉塞)
5.非閉塞(0%閉塞)
【0126】
各画像の平均スコアは2名の評価者のスコアから算出した。標準偏差を計算したが、治療群ごとに象牙質検体が1つしか使用されなかったため、正式な統計的比較は行われなかった。
【0127】
表14に概説したように、7つの異なる治療群を試験した。
【0128】
【表14】
【0129】
上述のように、各試料処理群を象牙質試料で試験し、各試料の5つのSEM顕微鏡写真を×3000で撮像した。各顕微鏡写真は2名の評価者によって分類的に評価された。各顕微鏡写真の平均スコアと試料あたりの5枚の顕微鏡写真を組み合わせて、群平均スコアと標準偏差を求めた(表15参照)。
【0130】
【表15】
【0131】
治療群1のベースラインの平均スコア4.90は、実質的に全ての象牙細管が非閉塞であったことを示している。象牙質試料中に直接擦り込まれた形のないPBF1の平均スコア1.50は、ほぼ完全な細管閉塞を示している。
【0132】
治療群5、6及び7(本開示によるPBF1又は他のガラス組成物を欠く対照群)は、平均閉塞スコアが3.2~3.6であった。投与群3及び4(5%又は15%のPBF1 w/wを配合した市販の歯磨き粉)では平均閉塞スコアが低く、尿細管閉塞の程度が高いことが示された。市販の歯磨き粉センソダイン(商標)Complete Protectionの閉塞の程度は、PBF1の15%w/wを加えると約30%の閉塞(スコア3.6)から約50%の閉塞(スコア2.5)に増加した。
【0133】
PBF1はさらに、5%w/wのPBF1ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)ペーストを用いて象牙質細管閉塞について評価した。この評価では、PBF1歯磨き粉と対照歯磨き粉を各治療群の3つの異なる象牙質試料に適用した。各試料は、処理歯磨き粉で2分間、1回ブラシにかけた。具体的には、各象牙質試料を、0.25gの処理歯磨き粉で120秒間ブラッシングし、続いてDI水で30秒間洗浄した。5%PBF1-SLSペーストは2.7±0.84の平均閉塞スコアをもたらした。PBF1無しのSLSペーストは、平均閉塞スコア3.80±1.03をもたらした。センソダイン(商標)Repair & Protectを用いた対照試験の結果、平均閉塞スコアは3.90±0.66であった。
【0134】
PBF1-Naは、上述のプロトコールに従って調製した。簡単に述べると、ガラスは、重量11.05gのB、3.36gのNaCO、2.56gのMgO、4.77gのCaCO、及び1.33gのNaF(Sigma Aldrich、Canada)によって合成された。均一性を確保するために、出発物質を60分間混合した。ブレンドを置き、50mLの白金るつぼ(Johnson Matthey、Noble Metals、Pennsylvania)に充填した。次いで、パックるつぼを室温で炉(Carbolite,RHF 1400)に入れた。炉を600℃の初期居住温度まで加熱し(25℃/分)、60分間保持した。次いで、温度を(20℃/分)1,200℃の最終的な居住温度に上昇させ、60分間保持した。除去すると、ガラス溶融物を2つのステンレス鋼板の間でクエンチした。得られたクエンチされたガラスは、遊星マイクロミル(Pulverisette 6,Fritsch,Germany)内で別々に粉砕/粉砕し、ASTM E-11準拠ふるい(Cole Palmer,U.S.A.)でふるいにかけて<25μmの粒子を得た。
【0135】
PBF1-Naの10種の異なる試料の粒径を上記のように測定した。
【0136】
【表16】
【0137】
上述のように、10種類の試料の密度、%結晶度、及びガラス転移温度も測定した。
【0138】
【表17】
【0139】
10種の異なる試料について、24時間後の質量損失及びフッ化物放出も、上記のように測定した。
【0140】
【表18】
【0141】
前述の説明では、説明の目的のために、実施例を完全に理解するために、多数の詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細が必要とされないことは当業者には明らかであろう。従って、説明されたものは、説明された実施例の適用を単に例示するものであり、上述の教示に照らして、多数の修正及び変形が可能である。
【0142】
上述の説明は実施例を提供するので、修正及び変形は当業者によって特定の実施例に対して行うことができることが理解されるであろう。従って、特許請求の範囲は、本明細書に記載される特定の実施例によって限定されるべきではなく、全体として明細書と一致する方法で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14